説明

高分子被覆粒子

【課題】様々な溶媒に対して良好な分散性を示すために、各種分野において工業的に好適に用いることができる高分子被覆粒子を提供する。
【解決手段】粒子、及び、該粒子表面の少なくとも一部を被覆する高分子被覆層からなる高分子被覆粒子であって、該高分子被覆層は、カルボン酸塩含有ポリマーを含むことを特徴とする高分子被覆粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子被覆粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粒子や有機樹脂粒子などの粒子は、例えば、各種の機能性を発現する微粒子として、それらを含む塗膜や成形物を形成するための材料として様々な工業分野において用いられている。その際、機能性を発現する微粒子として用いる場合には、粒子の柔軟性や他の成分との親和性等の特性を向上させ、塗膜等と接触する基材との密着性、塗膜等の平滑性、外観等を向上させる観点から、粒子の表面を高分子によって被覆することが行われている。
【0003】
そのような高分子によって表面を被覆した粒子としては、例えば、有機材料または有機無機複合材料からなるコア微粒子の表面に、開環および/または重縮合反応により形成された重合体被覆層を有する被覆微粒子が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、金属粒子、架橋剤及び溶媒を少なくとも含み、金属粒子の表面には硫黄、窒素、リンから選ばれる少なくとも1種の元素と親水性基とを有する化合物が前記の元素を介して化学結合しており、架橋剤が前記化合物の親水性基と反応し得る活性基を有する流動性組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−533212号公報
【特許文献2】特開2007−128864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のものを一例として、その用途等に合わせて様々な高分子被覆粒子が開発されている。ただしここで、工業生産上、高分子被覆粒子を含む塗膜や成型体を形成する場合、最終製品を製造するまでに何らかの溶媒に高分子被覆粒子を分散させる工程が必要不可欠であることが多い。したがって、高分子被覆粒子が性質の異なる様々な溶媒に対して良好な分散性を示すものであれば、それだけ各種用途への展開がより期待できることとなる。このように、様々な溶媒に対して良好な分散性を有する高分子被覆粒子は、潜在的なニーズを有するものであった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、様々な溶媒に対して良好な分散性を示すために、各種分野において工業的に好適に用いることができる高分子被覆粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、粒子、及び、その粒子の表面を被覆する高分子被覆層からなる高分子被覆粒子について、種々検討を行い、高分子被覆層の構成に着目した。そして、高分子被覆層を、カルボン酸塩含有ポリマーを含むものとすることによって、そのような高分子被覆層を有する高分子被覆粒子が様々な溶媒に対して良好な分散性を示すことを見出した。このように、高分子被覆粒子において、高分子被覆層を特定の構造を有するものとすることによって、上記課題を見事に解決できることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、粒子、及び、該粒子表面の少なくとも一部を被覆する高分子被覆層からなる高分子被覆粒子であって、上記高分子被覆層は、カルボン酸塩含有ポリマーを含むことを特徴とする高分子被覆粒子である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載される本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の好ましい形態である。
【0009】
本発明の高分子被覆粒子は、粒子と、その粒子の表面の少なくとも一部を被覆する高分子被覆層とからなるものである。
上記高分子被覆粒子の被覆状態としては、粒子表面の全て又は一部が高分子被覆層によって覆われている状態であればよく、高分子被覆層によって覆われることによる本発明の効果が発揮される程度に覆われているものであればよい。なお、本発明において「被覆」とは、粒子と高分子被覆層とにおいて、分子間力等により近接又は接触した状態、例えば、nmのオーダーで粒子と高分子被覆層とが近接及び/又は接触して存在している状態、共有結合等により結合した状態のいずれの状態であってもよい。接触した状態は、吸着、接着した状態ともいえる。また、高分子被覆層が粒子の中に浸入した形態となっていてもよい。
これらのことから、具体的には、本発明の高分子被覆粒子における粒子及び高分子被覆層の含有割合は、粒子/高分子被覆層(質量比)が、85/15〜99.8/0.2であることが好ましい。粒子及び高分子被覆層の含有割合がこのような範囲であると、高分子被覆粒子において粒子の有する性質が発揮されると共に、高分子被覆層によって覆われることにより発揮される効果も充分に得ることができる。粒子及び高分子被覆層の含有割合としてより好ましくは、90/10〜99.7/0.3であり、更に好ましくは95/5〜99.5/0.5、最も好ましくは97/3〜99.5/0.5である。
更に、本発明の高分子被覆粒子は、粒子の表面の主体的部分が高分子被覆層によって覆われていること、すなわち、平均して粒子の表面積の70〜100%が高分子被覆層で覆われていることが好ましい。より好ましくは、90〜100%である。
【0010】
また、本発明の高分子被覆粒子は、粒子と、高分子被覆層とを含む限り、その他の成分を含んでいてもよいが、高分子被覆粒子にその他の成分が含まれる場合には、高分子被覆粒子における粒子及び高分子被覆層の合計の含有量が、高分子被覆粒子の全量100質量%に対して、80〜100質量%であることが好ましい。
なお、上記粒子及び高分子被覆層はそれぞれ、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0011】
上記高分子被覆層は、カルボン酸塩含有ポリマーを含むものであるが、カルボン酸塩含有ポリマーを含むものである限り、その他の成分や、その他のポリマーを含んでいてもよい。特に、後述するように高分子被覆層がカルボン酸塩含有ポリマーに加え、更にオキサゾリン基含有ポリマーを含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。すなわち、本発明における高分子被覆層の好ましい形態としては、カルボン酸塩含有ポリマーからなる形態、並びに、カルボン酸塩含有ポリマー及びオキサゾリン基含有ポリマーからなる形態が挙げられる。
なお、本発明における高分子被覆層は、カルボン酸塩含有ポリマーを1種含むものであってもよいし、2種以上含むものであってもよい。
【0012】
上記高分子被覆層がカルボン酸塩含有ポリマーからなる形態である場合、高分子被覆層中の、カルボン酸塩含有ポリマーの含有量は、高分子被覆層の全量100質量%に対して、60〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは、75〜100質量%である。
【0013】
上記カルボン酸塩含有ポリマーは、カルボキシル基が塩を形成してカルボン酸塩となっている構造を分子中に少なくとも1つ有するものであればよい。このように、分子中にカルボン酸塩構造を有するカルボン酸塩含有ポリマーを高分子被覆層として用いると、高分子被覆層はカルボン酸塩構造に由来する親水性部分を有することとなり、そのような高分子被覆層によって粒子が覆われている高分子被覆粒子は、性質の異なる様々な溶媒、特には親水性の溶媒に対して良好な分散性を示すことができる。
【0014】
上記カルボン酸塩含有ポリマーは、その対応する中和されていないカルボン酸含有ポリマーの酸価が100mg(固形分1g/KOH換算)以上であって、かつ、当該カルボン酸含有ポリマーのうち酸価100mg以上のカルボン酸がカルボン酸塩の構造となっているものであることが好ましい。
【0015】
上記カルボン酸塩としては、例えば、カルボン酸金属塩、カルボン酸アンモニウム塩、カルボン酸アミン塩などが挙げられる。カルボン酸塩含有ポリマーはこれらカルボン酸塩構造を1種有していてもよいし、2種以上有していてもよい。
なかでも、本発明におけるカルボン酸塩含有ポリマーは、分子中にカルボン酸金属塩構造を少なくとも1つ有するカルボン酸金属塩含有ポリマーであることが特に好ましい。このように、分子中にカルボン酸金属塩構造を有するカルボン酸金属塩含有ポリマーを高分子被覆層として用いると、高分子被覆層はカルボン酸金属塩構造に由来する親水性部分を有することとなる。なお、カルボン酸金属塩以外のカルボン酸塩の中には熱等に弱く、加熱操作等を施すと、カルボン酸塩構造が親水性部分として機能しなくなる場合があるが、カルボン酸金属塩は熱等にも強いため、加熱操作等を施したとしても、親水性部分としての機能を充分に維持することが可能である。したがって、カルボン酸金属塩含有ポリマーを含む高分子被覆層によって粒子が覆われている高分子被覆粒子は、被覆工程で加熱操作等を加えたとしても、性質の異なる様々な溶媒、特には親水性の溶媒に対する良好な分散性を充分に保持することが可能である。そしてまた、カルボン酸金属塩含有ポリマーを用いることにより、高分子被覆粒子の水への分散性も充分なものとすることが可能となる。このように、本発明におけるカルボン酸塩含有ポリマーが、カルボン酸金属塩含有ポリマーであることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0016】
上記カルボン酸金属塩含有ポリマーは、カルボン酸金属塩構造に加えて、他の酸の塩構造を有していてもよいが、カルボン酸金属塩含有ポリマーの有する全ての酸塩構造に対するカルボン酸金属塩構造の割合は、全ての酸塩構造の全量100モル%に対して、70〜100モル%であることが好ましい。より好ましくは、80〜100モル%である。なかでも、カルボン酸金属塩含有ポリマー中の酸塩構造の全てがカルボン酸金属塩構造であることが特に好ましい。
【0017】
また、上記カルボン酸塩含有ポリマーは、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位(以降、単に「構造単位(I)」とも言う。)を含むものであることが好ましい。カルボン酸塩含有ポリマーがエチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を含むものであることによって、上述した本発明におけるカルボン酸塩含有ポリマーによる効果がより顕著に発揮されることとなる。
【0018】
上記エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位とは、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体の炭素−炭素二重結合が単結合になった構造を表している。
エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の炭素数3〜10のエチレン性不飽和モノカルボン酸塩単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の炭素数4〜10のエチレン性不飽和ジカルボン酸塩単量体などが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等の炭素数3〜6の不飽和モノカルボン酸の塩が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸等の炭素数3〜6の不飽和モノカルボン酸のアルカリ金属塩がより好ましい。
上記アルカリ金属塩を形成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、好ましくはリチウム、ナトリウムである。
これらエチレン性不飽和カルボン酸塩単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0019】
上記エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体の有するカルボン酸塩構造は、後述する重合方法によりカルボン酸塩含有ポリマーを合成することができる限り、その一部がカルボン酸(−COOH)の形態であってもよい。エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体の有するカルボン酸塩構造の一部がカルボン酸となっている形態の場合には、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体の有するカルボン酸塩構造のうち、カルボン酸の形態となっているものが50モル%以下であることが好ましい。より好ましくは、40モル%以下であり、更に好ましくは、30モル%以下である。
【0020】
上記カルボン酸塩含有ポリマーにおける構造単位(I)の含有割合は、カルボン酸塩含有ポリマーの有する構造単位の全量100質量%に対して、10〜60質量%であることが好ましい。構造単位(I)の含有割合が10〜60質量%の範囲にあることで、カルボン酸塩含有ポリマーを乳化重合により容易に製造することが可能となると共に、製造されるカルボン酸塩含有ポリマーの水への溶解性を発現することが可能となる。一方、構造単位(I)が10質量%未満の場合、水への溶解度が不足し均一溶液とならないおそれがあり、また、構造単位(I)が60質量%を超える場合、乳化重合による製造が困難になるおそれがある。カルボン酸塩含有ポリマーにおける構造単位(I)の含有割合としてより好ましくは、20〜50質量%であり、更に好ましくは、31〜45質量%である。
このように、本発明におけるカルボン酸塩含有ポリマーが、カルボン酸塩含有ポリマーの有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を10〜60質量%含む形態であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0021】
上記カルボン酸塩含有ポリマーは、更にエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位(以降、単に「構造単位(II)」とも言う。)を含むものであることが好ましい。このように、構造中にエチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位に加えて、更にエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を有するカルボン酸塩含有ポリマーを高分子被覆層として用いると、高分子被覆層はカルボン酸エステル構造に由来する疎水性部分をも有することとなり、そのような高分子被覆層によって粒子が覆われている高分子被覆粒子は、親水性溶媒や疎水性溶媒など性質の異なる様々な溶媒に対して良好な分散性を示すことができる。また、カルボン酸塩含有ポリマーが構造単位(II)を含むものであると、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体は、疎水性単量体であるが極性基を含有する単量体であるため、乳化重合時には乳化滴の核になり易い一方で、後述するように高分子化後にアルカリ金属塩を用いて中和する際には水中に均一に溶解しやすくなると考えられる。
【0022】
上記エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位とは、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の炭素−炭素二重結合が単結合になった構造を表している。
エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル等が挙げられる。好ましくは、例えば、一般式(1);
CH=CR−C(=O)−OR’ (1)
(式中のRは、水素原子又はメチル基を表す。R’は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表す。)で表わされる化合物である。
【0023】
上記一般式(1)におけるR’としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等の炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基などが挙げられる。
これらの中でも、後述する乳化重合時の安定性等の面からは、疎水性の高いものが好ましく、すなわち、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基である。上記一般式(1)におけるR’がアルキル基であると、得られるカルボン酸塩含有ポリマーのガラス転移温度(Tg)が低くなるため好ましい。R’として特に好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基であり、最も好ましくは、炭素数1〜2のアルキル基である。炭素数が1〜4のアルキル基であると、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体との共重合物の水への溶解がし易くなる。
これらエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0024】
上記カルボン酸塩含有ポリマーにおける構造単位(II)の含有割合は、カルボン酸塩含有ポリマーの有する構造単位の全量100質量%に対して、40〜90質量%であることが好ましい。構造単位(II)の含有割合が40〜90質量%の範囲にあることで、カルボン酸塩含有ポリマーを乳化重合により容易に製造することができる。一方、構造単位(II)が90質量%を超える場合、水への溶解度が不足し均一溶液とならないおそれがあり、また、構造単位(II)が40質量%未満の場合、乳化重合による製造が困難になるおそれがある。カルボン酸塩含有ポリマーにおける構造単位(II)の含有割合としてより好ましくは、50〜80質量%であり、更に好ましくは、55〜69質量%である。
【0025】
上記カルボン酸塩含有ポリマーは、構造単位(I)を含むもの、または、構造単位(I)及び構造単位(II)を含むものであることが好ましいが、更に、その他の重合可能な単量体由来の構造単位(以降、単に「構造単位(III)」とも言う。)を含んでいてもよい。構造単位(III)とは、その他の重合可能な単量体の炭素−炭素二重結合が単結合になった構造を表している。
その他の重合可能な単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;酢酸ビニル、フタル酸ジアリル等の多官能アリル系単量体;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等の多官能アクリレート等が挙げられる。
また、末端がハロゲン化していてもよい炭素数5〜30のアルキル基等の疎水基を有する、ポリアルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリルエステルやビニル化合物を用いることもできる。
上記アルキレンオキサイド末端の疎水基として好ましくは炭素数5〜30のアルキル基であり、より好ましくは炭素数15〜20のアルキル基である。
その他の重合可能な単量体としては、これらの中でも、スチレン系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体、多官能アリル系単量体、多官能アクリレートであることが好ましい。これらのその他の重合可能な単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0026】
上記カルボン酸塩含有ポリマーが構造単位(III)を含む場合、その含有割合としては、カルボン酸塩含有ポリマーの有する構造単位の全量100質量%に対して、20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、10質量%以下であり、更に好ましくは、5質量%以下である。
【0027】
以上のことから、本発明におけるカルボン酸塩含有ポリマーにおける構造単位の比率としては、カルボン酸塩含有ポリマーの有する構造単位の全量を100質量%とした時に、(エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位)/(エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位)/(その他の重合可能な単量体由来の構造単位)=10〜60質量%/40〜90質量%/0〜20質量%であることが好ましい。
【0028】
上記カルボン酸塩含有ポリマーは、例えば上述したような構造単位の由来となる各単量体成分を重合することにより製造することができる。
単量体成分の重合方法としては特に限定されず、例えば、乳化重合、逆相懸濁重合、懸濁重合、溶液重合、水溶液重合、塊状重合等の方法を挙げることができる。これらの重合方法の中でも、乳化重合法が好ましい。
【0029】
上記乳化重合法は、ミセル内部で重合が進行するため、高分子量の共重合体を高濃度で容易に重合することが可能で、重合溶液の粘度も低い方法である。本発明におけるカルボン酸塩含有ポリマーは、乳化重合法により水分散体として作製し、アルカリ金属塩で中和し可溶化(均一化)する工程をとることにより、簡便に製造することができ、生産コストの上でもメリットがある。
【0030】
上記乳化重合は、乳化剤を用いて行うことができる。乳化剤としては特に限定されないが、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤や、これらの界面活性剤の構造中にラジカル重合性の不飽和基を有するものである反応性界面活性剤などを挙げることができる。
【0031】
特に反応性界面活性剤は、その重合性不飽和基により界面活性剤をポリマーの構造中に組み込むことができ、水溶液にした場合に水溶液中に遊離して存在する界面活性剤成分を減少させることができることから、好ましい。これら乳化剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0032】
上記反応性界面活性剤としては、例えば、ラテムルPD(花王社製)、アデカリアソープSR(アデカ社製)、アクアロンHS(第一工業製薬社製)、アクアロンKH(第一工業製薬社製)、エレミノールRS(三洋化成社製)等が挙げられる。
このように、本発明におけるカルボン酸塩含有ポリマーが、乳化重合時に反応性界面活性剤を用いて得られることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0033】
上記各単量体成分の重合には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては通常重合開始剤として用いられているものを使用することができ、特に制限されず、熱によってラジカル分子を発生させるものであればよい。重合方法として乳化重合を行う場合は、水溶性の開始剤が好ましく使用される。重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解系開始剤;過酸化水素とアスコルビン酸、t−ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系開始剤等を挙げることができる。これら重合開始剤は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0034】
上記重合開始剤の使用量としては、重合反応に供する単量体成分の総量100質量部に対して、0.05〜2質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜1質量部である。
【0035】
上記乳化重合時においては、分子量を調整するために連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、ハロゲン化置換アルカン、アルキルメルカプタン、チオエステル類、アルコール類等が挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではない。これら連鎖移動剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
上記連鎖移動剤の使用量として好ましくは、重合反応に供する単量体成分の総量100質量部に対して、0〜1質量部である。
【0036】
上記乳化重合における重合温度については特に限定はないが、好ましくは20〜100℃、より好ましくは50〜90℃である。重合時間についても特に限定はしないが、生産性を考慮すると好ましくは1〜10時間である。
乳化重合する際に、得られる共重合体に悪影響を及ぼさない範囲で、親水性溶媒や添加剤等を加えることができる。
【0037】
各単量体成分を乳化重合の反応系に添加する方法としては特に限定はなく、一括重合法、単量体成分滴下法、プレエマルション法、パワーフィード法、シード法、多段添加法等を用いることができる。
【0038】
上記乳化重合反応後に得られるエマルションの不揮発分(固形分)は20〜60%であることが好ましい。不揮発分が20〜60%の範囲にあることで、得られるエマルションの流動性や分散安定性を保つことがし易くなる。また、目的とする重合体の生産効率の点からも好ましい。一方、不揮発分が60%を超えると、エマルションの粘度が高すぎるため分散安定性を保てず凝集が生じるおそれがあり、また、不揮発分が20%未満の場合、重合系の濃度が低く反応に時間を要する可能性があり、また目的とする重合体の生産量の点から生産効率が悪くなる。
【0039】
上記エマルションの平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは10nm〜1μmであり、更に好ましくは30〜500nmである。エマルションの粒子径がこの範囲にあることで、粘度が高くなりすぎたり、分散安定性が保てず凝集したりする可能性を下げることができる。一方、エマルションの粒子径が10nm未満の場合、エマルションの粘度が高くなりすぎたり、分散安定性を保てず凝集したりするおそれがあり、また、1μmを超えると、重合体粒子の分散安定性を保つことが難しくなる。
上記エマルションの平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定することができる。
【0040】
上記カルボン酸塩含有ポリマーは、上記のような方法で得られたエマルション(アルカリ可溶性樹脂、水分散体)をアルカリ金属塩で中和して得ることが好ましい。アルカリ金属塩とはリチウム、ナトリウム、カリウム等の塩である。これらの金属塩で中和する為には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の水溶液を用いることができ、好ましくは水酸化リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムである。これらの金属塩で中和することにより、均一な水溶液となり、外観として透明溶液となる。中和は理論カルボン酸量の50%以上であることが好ましく、更に好ましくは60%以上であり、中和後のpHは6以上、好ましくは7以上である。また、pHが9を超えないことが好ましい。
このように、本発明におけるカルボン酸塩含有ポリマーが、乳化重合によって合成した高分子をアルカリ金属塩で中和することにより得られるものであることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、上記pHは、ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値を測定することにより求めることができる。
【0041】
ここで、上記透明溶液とは、乳化重合した高分子をアルカリ金属塩で中和した不揮発分2質量%水溶液の全光線透過率が90〜100%であるものを意味する。したがって、上記カルボン酸塩含有ポリマーは、不揮発分2質量%に調整した水溶液の全光線透過率が90〜100%であることが好ましい。全光線透過率としてより好ましくは、95%以上であり、更に好ましくは97%以上である。このように、上記カルボン酸塩含有ポリマーが、2質量%水溶液の全光線透過率が90〜100%であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
また、上記カルボン酸塩含有ポリマーは、不揮発分2質量%に調整した水溶液のヘイズが3%以下であることが好ましく、より好ましくは、1%以下である。
上記全光線透過率及びヘイズは、ヘイズメーター(製品名「NDH5000」、日本電色工業社製)を用いて、測定することができる。
【0042】
上記カルボン酸塩含有ポリマーは、2質量%水溶液の粘度が50〜20,000mPa・sであることが好ましい。粒子被覆する際に、粘度が50mPa・s未満の場合、分散させた金属粒子が沈降し易くなり凝集粒子となり易くなる可能性がある。より好ましくは100〜10,000mPa・sであり、更に好ましくは150〜5,000mPa・sである。
上記粘度は、B型粘度計(東京計器社製)を用いて25±1℃、30rpmの条件で測定することができる。
【0043】
また、上記カルボン酸塩含有ポリマーの重量平均分子量は、20万以上であることが好ましい。20万未満の場合、粘度が低く沈降し易くなる可能性がある。より好ましくは、50〜200万である。
上記重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC装置、展開溶媒;テトラヒドロフラン)によって以下の装置、及び、測定条件で測定することができる。
GPC装置:HLC−8120(製品名、東ソー社製)
カラム:TSK−gel GMHXL(製品名、東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン
溶離液流量:1ml/min
カラム温度:40℃
測定方法:カルボン酸塩含有ポリマーを溶離液に測定対象物の固形分が0.1質量%となるように溶解し、フィルターを用いてろ過したものを測定サンプルとする。
【0044】
本発明における高分子被覆層は、更にオキサゾリン基含有ポリマーを含むことが好ましい。高分子被覆層が、カルボン酸塩含有ポリマーに加えて、更にオキサゾリン基含有ポリマーを含むことにより、カルボン酸塩含有ポリマーの有するカルボキシル基とオキサゾリン基含有ポリマーの有するオキサゾリン基とが反応してこれらのポリマーどうしが架橋した構造となり、この架橋体により高分子被覆層が粒子表面上により強く固定されることとなるため、粒子を高分子被覆層で覆う効果がより顕著に顕れることとなる。このことから、カルボン酸塩含有ポリマーに加えて更にオキサゾリン基含有ポリマーを含む高分子被覆層によって粒子が覆われている高分子被覆粒子は、性質の異なる様々な溶媒に対して更に良好な分散性を示すことができる。特に、オキサゾリン基含有ポリマーを含まない場合と比べて、疎水性の溶媒に対する分散性が良好なものとなる。
【0045】
上記高分子被覆層がオキサゾリン基含有ポリマーを含む形態、すなわち、高分子被覆層がカルボン酸塩含有ポリマー及びオキサゾリン基含有ポリマーからなる形態である場合、高分子被覆層に含まれる、カルボン酸塩含有ポリマーとオキサゾリン基含有ポリマーとの含有割合は、質量比で、10〜95/90〜5であることが好ましい。カルボン酸塩含有ポリマーとオキサゾリン基含有ポリマーとの含有割合は、カルボン酸塩含有ポリマーの酸量及びオキサゾリン基含有ポリマーのオキサゾリン量に合わせて、適宜設定することができるが、架橋による効果を得る為には、カルボン酸塩含有ポリマーとオキサゾリン基含有ポリマーとの含有割合がこのような範囲であると、本発明の効果がより顕著に発揮される。更には、カルボン酸塩構造が過剰であることが好ましく、高分子被覆層に含まれる、カルボン酸塩含有ポリマーとオキサゾリン基含有ポリマーとの含有割合としてより好ましくは、50〜95/50〜5(質量比)であり、更に好ましくは、70〜90/30〜10(質量比)である。
【0046】
上記オキサゾリン基含有ポリマーとしては、付加重合性のオキサゾリン(X)及び必要に応じて少なくとも1種の他の単量体(Y)を重合してなるものであることが好ましい。
上記付加重合性オキサゾリン(X)としては、下記一般式(2);
【0047】
【化1】

【0048】
(式中、R、R、R、及び、Rは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を表す。Rは、付加重合性不飽和結合を有する鎖状又は分岐鎖状有機基を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
また、上記付加重合性不飽和結合を有する鎖状又は分岐鎖状有機基としては、炭素数2〜6の鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、炭素数2〜6の鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基が好ましく、より好ましくは、炭素数2〜4の鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基である。
【0049】
上記一般式(2)で表される化合物としては、具体的には、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられる。これらの中でも、入手のし易さから、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
これら付加重合性オキサゾリン(X)としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0050】
上記他の単量体(Y)としては、オキサゾリン基と反応せず、付加重合性オキサゾリン(X)と共重合可能な単量体であれば特に制限されない。そのような単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチルおよびその塩等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム等の(メタ)アクリル酸塩類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β−不飽和単量体類;スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等のα,β−不飽和芳香族単量体類などが挙げられる。
これら他の単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0051】
上記オキサゾリン基含有ポリマーは、付加重合性オキサゾリン(X)及び必要に応じて少なくとも1種の他の単量体(Y)を、共重合を行う際に通常用いられる重合方法によって水性媒体中で溶液重合を行うことにより製造することができる。
上記水性媒体としては、特に制限されず、例えば、水;水と、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ターシャリーブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン等との混合溶液;などが挙げられる。
【0052】
上記オキサゾリン基含有ポリマーを製造する際の、付加重合性オキサゾリン(X)の使用量としては、特に限定されないが、オキサゾリン基含有ポリマーを製造する際に使用する全単量体成分100質量%に対して、5質量%以上であることが好ましい。5質量%未満の使用量では硬化の程度が不充分であり、耐久性、耐水性等が損なわれるおそれがある。
【0053】
また、本発明における高分子被覆層がオキサゾリン基含有ポリマーを含む場合には、後述する本発明の高分子被覆粒子の製造方法を考慮すると、オキサゾリン基含有ポリマーは、水溶性であることが好ましい。そこで、オキサゾリン基含有ポリマーに水溶性を付与するためには、オキサゾリン基含有ポリマーを製造する際に使用する全単量体成分100質量%に対して、親水性単量体の割合が50質量%以上であることが好ましい。
【0054】
上記親水性単量体としては、付加重合性オキサゾリン(X)、および上記他の単量体(Y)中の、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2−アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0055】
本発明における高分子被覆層は、必要に応じて、更に分散剤を含んでいてもよい。分散剤を用いることで、製造時の粒子の分散性を向上し、粒子被覆する際に均一に被覆しやすくなる可能性がある。
上記分散剤としては、特に制限されず、アニオン性、ノニオン性若しくはカチオン性の界面活性剤、又は、スチレンとマレイン酸との共重合体(ハーフエステルコポリマー−アンモニウム塩を含む)等の高分子分散剤等の種々の分散剤を用いることができる。分散剤を用いる場合には、高分子被覆層の全量100質量%に対して1〜20質量%含有することが好ましい。分散剤を使用する場合の含有量としてより好ましくは、高分子被覆層の全量100質量%に対して5〜20質量%である。
ただし、本発明において、用いる分散剤が本発明におけるカルボン酸塩含有ポリマーに該当する場合、高分子被覆層における各構成成分の含有量を算出する際には、当該分散剤はカルボン酸塩含有ポリマーとして計算することとする。
【0056】
本発明の高分子被覆粒子に用いられる粒子としては、その材質は特に制限されないが、例えば、下記するような材料を挙げることができる。
ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド等の重合体;ジビニルベンゼン、ヘキサトリエン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルカルビノール、アルキレンジアクリレート、オリゴ又はポリアルキレングリコールジアクリレート、オリゴ又はポリアルキレングリコールジメタクリレート、アルキレントリアクリレート、アルキレンテトラアクリレート、アルキレントリメタクリレート、アルキレンテトラメタクリレート、アルキレンビスアクリルアミド、アルキレンビスメタクリルアミド、両末端アクリル変性ポリブタジエンオリゴマー等を単独重合させて得られる重合体、又は、これらと他の重合性単量体とを共重合させて得られる重合体;ベンゾグアナミン、メラミン、尿素等のアミノ化合物とホルムアルデヒドとの重縮合反応により得られるアミノ樹脂;ジビニルベンゼンを単独重合させて得られるジビニルベンゼン架橋樹脂粒子、又は、ジビニルベンゼンと他のビニル単量体とを共重合させて得られるジビニルベンゼン架橋樹脂粒子;などの有機材料。
【0057】
加水分解性シリル基を有するシリコン化合物を原料とするポリシロキサンと、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する重合性単量体とを反応させて得られる有機質無機質複合粒子などの有機無機複合材料。
ケイ酸塩ガラス、アクリルガラス、金属ガラス等のガラス質物質;石英(クオーツ、SiO)、磁鉄鉱(Fe)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)等の金属酸化物などの無機材料。
これらの中でも、本発明において用いられる粒子が金属酸化物を含むことは、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0058】
上記粒子の平均粒子径は、0.1〜500μmであることが好ましい。粒子の平均粒子径がこのような範囲であると、粒子の周りを高分子被覆層が覆いやすく、高分子被覆粒子の製造が容易となる。粒子の平均粒子径としてより好ましくは0.2〜70μmであり、更に好ましくは0.25〜50μmである。
上記平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、粒度分布測定装置等により測定することができる。
【0059】
上記粒子の形状としては、特に制限されず、例えば、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、球状、鱗片状、板状、針状、多面体状等が挙げられる。
【0060】
本発明の高分子被覆粒子は、高分子被覆層形成用組成物に粒子を分散し、該分散物を乾燥することによって製造することができる。
上記高分子被覆層形成用組成物とは、高分子被覆層を構成する成分と、当該成分を溶解又は分散させる溶媒とを含むものである。
【0061】
上記溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n‐プロピルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン等のケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等のエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類などが挙げられる。これら溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水、又は、上述した水以外の溶媒と水との混合溶媒が好ましい。
上記水以外の溶媒と水との混合溶媒においては、混合溶媒の全量100質量%に対して水の含有量が80〜99質量%であることが好ましい。
【0062】
上記溶媒としては、更に、上述したもの以外の有機溶媒(他の有機溶媒)を用いることもでき、そのような有機溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。ただし、これら他の有機溶媒を用いる場合には、水又は上記水以外の溶媒と水との混合溶媒と併用することが好ましく、その使用量は、水又は上記水以外の溶媒と水との混合溶媒100質量%に対して、20質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0063】
上記高分子被覆層形成用組成物は、固形分2質量%における粘度が、50〜20,000mPa・sであることが好ましい。粘度がこのような範囲にあると、粒子分散させた際の粘度がある程度確保でき、均一な分散安定性を確保することができる。より好ましくは100〜10,000mPa・sである。
上記粘度は、B型粘度計(東京計器社製)により測定することができる。
【0064】
上記高分子被覆層形成用組成物は、粒子表面に均一に被覆するためには、均一系であることが好ましく、固形分2質量%における全光線透過率が、90〜100%であることが好ましい。全光線透過率としてより好ましくは、95%以上であり、更に好ましくは97%以上である。
上記全光線透過率は、ヘイズメーター(製品名「NDH5000」、日本電色工業社製)を用いて、測定することができる。
【0065】
上記高分子被覆層形成用組成物は、25℃でのpHが6〜10であることが好ましい。pHがこのような範囲にあることで、金属粒子に与えるpHの影響を軽減できる。
上記pHは、ガラス電極式水素イオン温度計F−21(堀場製作所社製)を用いて、25℃の値を測定することにより求めることができる。
【0066】
上記高分子被覆粒子の製造方法において、高分子被覆層形成用組成物に粒子を分散させる分散工程における分散方法は、特に制限されず、通常用いられる分散方法を適宜選択することができる。
そのような分散方法としては、例えば、高分子被覆形成用組成物に粒子を単に混合分散させる方法の他、超音波分散機、ディスパー、ホモミキサー、又は、ホモジナイザー等で機械的に強く攪拌して分散させる方法等も挙げられる。
【0067】
上記高分子被覆粒子の製造方法において、高分子被覆層形成用組成物に粒子を分散させる際の、高分子被覆層形成用組成物(固形分)と粒子との配合割合としては、粒子100質量部に対して、高分子被覆層形成用組成物(固形分)を0.2〜18質量部配合することが好ましい。このような配合割合とすることにより本発明の効果を充分に発揮することのできる高分子被覆粒子を製造することができる。粒子100質量部に対して、高分子被覆層形成用組成物(固形分)を0.5〜5.5質量部配合することがより好ましい。
【0068】
上記高分子被覆粒子の製造方法において、分散物の乾燥を行う乾燥工程における乾燥条件は、適宜設定することができるが、乾燥温度としては、例えば、60〜200℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましい。また、乾燥時間としては、例えば、0.5〜12時間であることが好ましく、1〜5時間であることがより好ましい。
【0069】
上記高分子被覆粒子の製造方法においては、上記乾燥工程の後に、更に再度乾燥を行う再乾燥工程を行ってもよい。特に、高分子被覆層がカルボン酸塩含有ポリマーに加えて、オキサゾリン基含有ポリマーを含む形態である場合には、上記再乾燥工程により、カルボン酸塩含有ポリマーとオキサゾリン基含有ポリマーとの架橋反応が充分に進行することとなるため、再乾燥工程を行うことが好ましい。
上記再乾燥工程における乾燥条件も適宜設定することができるが、乾燥温度としては、架橋温度条件を考慮して適宜設定することができるが、例えば、100〜160℃であることが好ましく、110〜150℃であることがより好ましい。また、乾燥時間としては、例えば、0.5〜3時間であることが好ましく、1〜2時間であることがより好ましい。
【0070】
また、上記製造方法においては、乾燥工程及び/又は再乾燥工程の後に、乾燥固形物を粉砕し、分級してもよい。分級することで粒径のそろった高分子被覆粒子を得ることができる。
【0071】
本発明の高分子被覆粒子は、粒子がカルボン酸塩含有ポリマーを含む高分子被覆層により被覆されているものであり、これにより、様々な溶媒に対して良好な分散性を示すために、各種分野において工業的に好適に用いることができるものである。
上記溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール等のアルコール溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等の親水性溶媒などが挙げられる。また、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;メチルイソブチルケトン等の疎水性溶媒等が挙げられる。
【発明の効果】
【0072】
本発明の高分子被覆粒子は、上述の構成よりなり、カルボン酸塩含有ポリマーを含む高分子被覆層に起因して、様々な溶媒に対して良好な分散性を示すために、各種分野において工業的に好適に用いることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「重量%」を意味するものとする。
【0074】
(合成例1;アルカリ可溶性樹脂(1)の合成)
攪拌機、温度計、冷却器、窒素導入管、滴下ロートを備えた四つ口セパラブルフラスコに、イオン交換水(115部)、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩(1.5部)を投入した。内温68℃で攪拌しながら、緩やかに窒素を流し、反応容器内を完全に窒素置換した。
次に、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸塩(1.5部)をイオン交換水(92部)に溶解した。ここに、重合体の単量体成分として、アクリル酸エチル(65部)とメタクリル酸(35部)の混合物を投入し、プレエマルションを作製した。単量体成分を含む前記プレエマルションの5%を反応容器に投入して攪拌後、亜硫酸水素ナトリウム(0.017部)を投入した。別途、過硫酸アンモニウム(0.23部)をイオン交換水(23部)に溶解し、重合開始剤水溶液を作製した。この重合開始剤水溶液5%を、前記反応容器に投入し20分間初期重合を行った。反応容器内の温度を72℃に保ち、残りのプレエマルション及び開始剤水溶液を2時間にわたって均一に滴下した。滴下終了後、イオン交換水(8部)で滴下槽を洗浄後、反応容器に投入した。内温を72℃に保ち、更に1時間攪拌を続けた後、冷却して反応を完了し、固形分30%(ポリマー濃度30%)のエマルション(アルカリ可溶性樹脂(1))を得た。
当該エマルションを、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液を用いてpH8に中和して、ポリマー濃度2質量%に調整したポリマー水溶液(1)の全光線透過率は99.0%であり、粘度は200mPa・sであった。なお、ポリマー水溶液のpH、固形分、全光線透過率、及び、粘度は次のようにして測定した。
【0075】
<ポリマー水溶液のpH>
ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値を測定した。
<ポリマー水溶液の固形分>
ポリマー水溶液を110℃で1時間乾燥し、乾燥前重量及び乾燥後重量から固形分を計算した。
<ポリマー水溶液の全光線透過率>
ヘイズメーター(NDH5000、日本電色工業社製)を用いて、セルに溶液を入れて測定し、全光線透過率を求めた。なお、水の全光線透過率を100%とした。
<ポリマー水溶液の粘度>
B型粘度計(東京計器社製)を用いて25±1℃、30rpmの粘度を測定した。
【0076】
(合成例2;アルカリ可溶性樹脂(2)の合成)
重合体の単量体成分としてアクリル酸エチル(59.8部)、メタクリル酸(40部)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(0.2部)を用いた以外は、合成例1と同様にして、固形分30%のエマルション(アルカリ可溶性樹脂(2))を得た。
当該エマルションを、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液を用いてpH8に中和して、ポリマー濃度2質量%に調整したポリマー水溶液(2)の全光線透過率は98.0%であり、粘度は1,030mPa・sであった。
【0077】
(調製例1;被覆用水溶液(1)の調製)
合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂(1) 4.00部、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液 3.61部、水 53.68部を混合し、被覆用水溶液(1)を得た。
得られた被覆用水溶液(1)の固形分、全光線透過率、粘度、及び、pHを、ポリマー水溶液と同様に測定した。測定結果を表1に示す。
【0078】
(調製例2;被覆用水溶液(2)の調製)
合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂(1) 3.00部、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液 2.71部、スチレン−マレイン酸系コポリマー(ハーフエステルコポリマー−アンモニウム塩を含む) 0.85部、水 56.70部を混合し、被覆用水溶液(2)を得た。
得られた被覆用水溶液(2)の固形分、全光線透過率、粘度、及び、pHを調製例1と同様に測定した。測定結果を表1に示す。
【0079】
(調製例3;被覆用水溶液(3)の調製)
合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂(1) 3.00部、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液 1.80部、スチレン−マレイン酸系コポリマー(ハーフエステルコポリマー−アンモニウム塩を含む) 0.85部、水 55.27部を混合し、更にエポクロスWS−700(商品名、日本触媒社製、オキサゾリン基含有水溶性ポリマー) 1.14部を混合して被覆用水溶液(3)を得た。
得られた被覆用水溶液(3)の固形分、全光線透過率、粘度、及び、pHを調製例1と同様に測定した。測定結果を表1に示す。
【0080】
(調製例4;被覆用水溶液(4)の調製)
合成例2で得られたアルカリ可溶性樹脂(2) 3.00部、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液 2.06部、スチレン−マレイン酸系コポリマー(ハーフエステルコポリマー−アンモニウム塩を含む) 0.85部、水 55.68部を混合し、更にエポクロスWS−700 1.14部を混合して被覆用水溶液(4)を得た。
得られた被覆用水溶液(4)の固形分、全光線透過率、粘度、及び、pHを調製例1と同様に測定した。測定結果を表1に示す。
【0081】
(調製例5;被覆用水溶液(5)の調製)
スチレン−マレイン酸系コポリマー(ハーフエステルコポリマー−アンモニウム塩を含む) 1.85部、水 16.50部を混合して被覆用水溶液(5)を得た。
得られた被覆用水溶液(5)の固形分、及び、全光線透過率を調製例1と同様に測定した。測定結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
(実施例1)
被覆用水溶液(1) 22.5部、酸化チタンCR−EL(石原産業社製) 25.0部、水 10.0部を混合して、分散させた。その分散液をバットに入れて、100℃で乾燥し、固形化した。乳鉢を用いて乾燥した固形物をすり潰し、再度150℃で1時間乾燥した。その後、得られた固体を乳鉢で再度すり潰し、篩(53μm)を通して粗粒子を除き、被覆粒子(1)を得た。
得られた被覆粒子(1)の溶媒に対する分散性を下記する分散性試験により評価した。評価結果を表2に示す。
【0084】
<分散性試験>
被覆粒子 1.0部に、表2に示す各溶媒 4.0部を加えて、超音波洗浄器に5分間入れ、各溶媒への分散性を評価した。評価基準は次のとおりである。
評価基準:
○・・・分散した。
△・・・1時間以内に粒子の沈降が見られた。
×・・・一部に凝集物が残っていた。
【0085】
(実施例2)
被覆用水溶液(2) 25.0部、酸化チタンCR−EL 25.0部、水 8.0部を混合した以外は、実施例1と同様にして被覆粒子(2)を得た。
得られた被覆粒子(2)の溶媒に対する分散性を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0086】
(実施例3)
被覆用水溶液(3) 21.7部、酸化チタンCR−EL 25.0部、水 10.0部を混合した以外は、実施例1と同様にして被覆粒子(3)を得た。
得られた被覆粒子(3)の溶媒に対する分散性を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0087】
(実施例4)
被覆用水溶液(4) 21.7部、酸化チタンCR−EL 25.0部、水 10.0部を混合した以外は、実施例1と同様にして被覆粒子(4)を得た。
得られた被覆粒子(4)の溶媒に対する分散性を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0088】
(実施例5)
被覆用水溶液(5) 18.3部、酸化チタンCR−EL 25.0部を混合した以外は、実施例1と同様にして被覆粒子(5)を得た。
得られた被覆粒子(5)の溶媒に対する分散性を実施例1と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
【0089】
(比較例1)
酸化チタンCR−ELの溶媒に対する分散性を上述した分散性試験により評価した。評価結果を表2に示す。
【0090】
【表2】

【0091】
実施例及び比較例の結果から、以下のことが分かった。
粒子と、該粒子表面の少なくとも一部を被覆する高分子被覆層とからなる高分子被覆粒子において、その高分子被覆層を、カルボン酸塩含有ポリマーを含むものとすることによって、トルエンのような疎水性溶媒にも、ジメチルアセトアミドのような親水性溶媒にも良好な分散性を示す高分子被覆粒子とすることができることが確認された(実施例1〜5と、比較例1との比較)。
そして更に、高分子被覆層に含むカルボン酸塩含有ポリマーをカルボン酸金属塩ポリマーとすることによって、更に水に対しても良好な分散性を示すこととなることが確認された(実施例1〜4と、実施例5との比較)。
また、実施例1〜2と、実施例3〜4との比較から、高分子被覆層にカルボン酸金属塩含有ポリマーに加え、オキサゾリン基含有ポリマーをも含めると、特に、疎水性溶媒に対する分散性が更に良好なものとなることが分かった。
なお、上記実施例においては、高分子被覆粒子として、特定のものが用いられているが、本発明の高分子被覆粒子が様々な溶媒に対して良好な分散性を示すという本願発明の効果を発揮する機構は、高分子被覆層にカルボン酸塩含有ポリマーを含むこととすれば全て同様である。したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において、本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子、及び、該粒子表面の少なくとも一部を被覆する高分子被覆層からなる高分子被覆粒子であって、
該高分子被覆層は、カルボン酸塩含有ポリマーを含むことを特徴とする高分子被覆粒子。
【請求項2】
前記粒子は、金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の高分子被覆粒子。
【請求項3】
前記カルボン酸塩含有ポリマーは、カルボン酸金属塩含有ポリマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子被覆粒子。
【請求項4】
前記カルボン酸塩含有ポリマーは、カルボン酸塩含有ポリマーの有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を10〜60質量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高分子被覆粒子。
【請求項5】
前記カルボン酸塩含有ポリマーは、2質量%水溶液の全光線透過率が90〜100%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高分子被覆粒子。
【請求項6】
前記高分子被覆層は、更にオキサゾリン基含有ポリマーを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高分子被覆粒子。
【請求項7】
前記高分子被覆層に含まれる、カルボン酸塩含有ポリマーとオキサゾリン基含有ポリマーとの含有割合は、質量比で、10〜95/90〜5であることを特徴とする請求項6に記載の高分子被覆粒子。

【公開番号】特開2013−95781(P2013−95781A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237410(P2011−237410)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】