高剛性鉄基合金
【課題】効率のよい高剛性化が可能であり、かつ、機械的特性を改善できる新規な高剛性鉄基合金を提供する。
【解決手段】本発明の高剛性鉄基合金は、純鉄または鉄合金からなるマトリックスと、該マトリックスに晶出して分散されたホウ化物からなる分散粒子と、からなる高剛性鉄基合金であって、前記分散粒子は、チタン(Ti)からなるホウ化物粒子と、VIa族元素および鉄(Fe)のうちの1以上の元素からなる少なくとも1種の他のホウ化物粒子と、からなり、該Tiからなるホウ化物粒子は、前記マトリックスを構成する金属とTiからなるホウ化物との擬2元系状態図における共晶組成以下含まれることを特徴とする。
Tiからなるホウ化物粒子の含有量を少なく(たとえば13vol%以下)抑え、他のホウ化物粒子を併用することにより、ホウ化物粒子の粗大化を抑制しつつ高剛性を実現できる。
【解決手段】本発明の高剛性鉄基合金は、純鉄または鉄合金からなるマトリックスと、該マトリックスに晶出して分散されたホウ化物からなる分散粒子と、からなる高剛性鉄基合金であって、前記分散粒子は、チタン(Ti)からなるホウ化物粒子と、VIa族元素および鉄(Fe)のうちの1以上の元素からなる少なくとも1種の他のホウ化物粒子と、からなり、該Tiからなるホウ化物粒子は、前記マトリックスを構成する金属とTiからなるホウ化物との擬2元系状態図における共晶組成以下含まれることを特徴とする。
Tiからなるホウ化物粒子の含有量を少なく(たとえば13vol%以下)抑え、他のホウ化物粒子を併用することにより、ホウ化物粒子の粗大化を抑制しつつ高剛性を実現できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリックスよりも高剛性な分散粒子をマトリックスに分散させて高剛性化した鉄基合金に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼材料は、安価で、大量生産が可能なことから、各種構造部材に広く用いられている。鋼は、添加する合金元素の種類や量により、多様な性質が発現されるが、合金元素を変更するだけで鋼の剛性を大きく向上させることは困難である。そのため、現在では、鉄基マトリックス中に、チタン二ホウ化物(TiB2)などの高剛性な分散粒子を分散させることにより、鉄基合金の剛性を高める方法が採られている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、ステンレス鋼粉末とTiB2粉末とを混合し、成形したものを焼結して得られた鉄基合金が開示されている。TiB2は、ステンレス鋼に比べ高剛性であるため、鉄基合金の高剛性化が期待できる。ところが、粉末を用いた製造方法では、大型の部品を製造するのに多大な圧力が必要となり成形が困難であるし、部品の全ての部位で粉末の密度を均一にするのが難しい。
【0004】
特許文献2には、鋼にフェロボロンとスポンジチタンを添加し溶製して得られた鋼鋳塊が開示されている。得られた鋳塊は、鋼をマトリックスとし、主となるホウ化物としてTiB2がマトリックス中に分散された高剛性鋼である。
【0005】
特許文献2では、鉄基合金中のTiB2の分散量が増加すると鉄基合金の剛性が高くなる傾向にあることが示されているが、一方で、TiB2の分散量がある程度の量を超えると、分散粒子が粗大化したり、融点が上昇したり、といった問題が生じる。マトリックス中に粗大な粒子が存在すると、鋳塊の組織が不均質となり、鉄基合金を高剛性化する効果が低減するとともに、延性など機械的特性の悪化を促す。また、融点が上昇すると、鋳造工程における型への焼付きや歩留まりの低下などにつながる。したがって、TiB2粒子の量を増加させて高い剛性をもつ鉄基合金を得ようとすると、製造性の低下や機械的特性の低下が生じるため、TiB2量を安易に増加させられないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−188874号公報
【特許文献2】特開2004−218069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、上記問題点に鑑み、効率のよい高剛性化が可能であり、かつ、機械的特性を改善できる新規な高剛性鉄基合金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高剛性鉄基合金は、純鉄または鉄合金からなるマトリックスと、該マトリックスに晶出して分散されたホウ化物からなる分散粒子と、からなる高剛性鉄基合金であって、前記分散粒子は、チタン(Ti)からなるホウ化物粒子と、VIa族元素および鉄(Fe)のうちの1以上の元素からなる少なくとも1種の他のホウ化物粒子と、からなり、該Tiからなるホウ化物粒子は、前記マトリックスを構成する金属とTiからなるホウ化物との擬2元系状態図における共晶組成以下含まれることを特徴とする。
【0009】
これ以下、VIa族元素およびFeのうちの1以上の元素からなるホウ化物粒子を単に「他のホウ化物粒子」と略記する。すなわち、本発明の高剛性鉄基合金において、分散粒子は、「Tiからなるホウ化物粒子」と、少なくとも1種の「他のホウ化物粒子」と、からなる2種以上のホウ化物粒子を含み、それ以外のホウ化物粒子は実質的に含まない。
【0010】
この際、本発明の高剛性鉄基合金の全体を100vol%としたとき前記分散粒子を5〜60vol%、該分散粒子を100vol%としたとき前記他のホウ化物粒子を30vol%以上、含むのが好ましい。
【0011】
また、本発明の高剛性鉄基合金の全体を100質量%としたとき、Tiを2〜5.5質量%、Bを2〜5質量%、Crを15質量%以下、Moを8質量%以下、Wを10質量%以下、含み、全体を100mol%としたときのTiの含有率をXmol%、Bの含有率をYmol%としたとき、(Y−2X)>0であるのが好ましい。
【0012】
前記分散粒子は、前記他のホウ化物粒子が前記Tiを含むホウ化物粒子を核として該核の周りに晶出してなる複合分散粒子を含むのが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高剛性鉄基合金では、硬質で高剛性をもつホウ化物からなる分散粒子を用いる。分散粒子は、Tiからなるホウ化物粒子を、マトリックスを構成する金属とTiからなるホウ化物との擬2元系状態図における共晶組成以下に制御し、さらに、Tiからなるホウ化物粒子の他に、少なくとも1種の他のホウ化物粒子を分散させる。その結果、Tiからなるホウ化物粒子と、他のホウ化物粒子との相乗効果により、Tiからなるホウ化物粒子を単独で分散粒子として用いる場合よりも、高剛性化の効果が高い。また、既に述べたように、従来、Tiからなるホウ化物粒子の含有量が多いと、粒子が粗大となったり、融点が上昇したり、といった問題があったが、Tiからなるホウ化物粒子の量を共晶組成以下に制御した上で、他のホウ化物粒子を併用することにより、晶出する粒子の粗大化や融点の上昇を抑制するのみでなく、高剛性を実現できる。
【0014】
さらに、Tiからなるホウ化物粒子は鉄基合金よりも低比重であるため、Tiからなるホウ化物粒子を含む本発明の高剛性鉄基合金は、高い剛性を有し、かつ、鉄基合金に比べて軽量な合金である。
【0015】
Tiからなるホウ化物の含有量を、マトリックスを構成する金属との擬2元系状態図における共晶組成以下とすることにより、晶出するホウ化物粒子の粗大化を防止することができる理由は、以下の通りである。すなわち、亜共晶域の組成では、共晶点よりも高い温度で晶出を開始する初晶によるホウ化物の生成を避けることができる。初晶は液相温度に達した時点で生じるため、初晶により生じたホウ化物は凝固が終了するまでに成長して粗大化しやすい。その結果、マトリックスには、共晶反応により晶出した微細な粒子と、初晶により生じた粗大粒子と、が共存する。粗大化した粒子が混在することで、分散粒子の均質性が損なわれ、伸びが低下したり、粗大粒子が破壊の起点となるなど、鉄基合金の機械的特性に影響を及ぼす。つまり、初晶を抑えれば、鉄基合金の有する機械的特性の低下を抑制できる。
【0016】
ただし、単にTiからなるホウ化物の含有量を減少させるだけでは、高剛性を実現することはできない。本発明者等は、さらなる検討の結果、Ti以外のホウ化物を使用する、特に、従来から知られているIVa族元素、Va族元素、VIa族元素のホウ化物のうち、VIa族元素のホウ化物を限定して使用することにより、さらにホウ化物粒子の粗大化を防止でき、効果的に剛性を高めることができることを見出した。
【0017】
なお、一般に、凝固時の冷却速度が速くなる程、晶出する粒子が小さくなることが知られている。したがって、冷却速度が速い条件で得られた高剛性鉄基合金において粗大粒子と見なされる大きさの粒子が、冷却速度が遅い条件で得られた高剛性鉄基合金において微細な粒子と同等の大きさをもつ場合もある。そのため、「粗大粒子」は、粒径などにより定量的に定義することはできない。ただし、高剛性鉄基合金の粗大粒子の有無は、粒子の分散状態を走査電子顕微鏡(SEM)等などで観察すれば、判別可能である。
【0018】
また、本発明の高剛性鉄基合金では、分散粒子は、晶出時に、マトリックスに均一に分散する。また、分散粒子の中でもTiからなるホウ化物粒子は、TiとBとの反応性が高いため、他のホウ化物粒子よりも先に晶出してマトリックス中に分散する。そのため、冷却条件によっては、既に晶出したTiからなるホウ化物粒子が核として利用され、後に晶出する他の分散粒子は分散性のよい核の周りに晶出するため、分散粒子全体の分散状態が均一化される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】試料No.1の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図2】試料No.2の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図3】試料No.3の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図4】試料No.4の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図5】試料No.5の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図6】試料No.6の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図7】試料No.7の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図8】試料No.8の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図9】試料No.9の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図10】試料No.10の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図11】試料No.11の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図12】試料No.12の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図13】試料No.13の鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図14】試料No.14の鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図15】試料No.15の鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図16】試料No.3の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真であって、分散粒子が集合している部分の拡大写真である。
【図17】高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真であって、TiB2からなる核とその周りに晶出したMo系のホウ化物からなる複合粒子を示す。
【図18】No.1〜15の試料のヤング率を示すグラフである。
【図19】TiB2/Fe擬二元系状態図であって、TiB2量を体積分率に変換した場合の目盛を図下に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の高剛性鉄基合金を実施するための最良の形態を、図19を用いて説明する。
【0021】
本発明の高剛性鉄基合金は、純鉄または鉄合金からなるマトリックスと、該マトリックスに晶出して分散されたホウ化物からなる分散粒子と、からなる。ホウ化物からなる分散粒子は、硬質で高剛性をもつため、鉄基合金の剛性を向上させる分散粒子として好適である。
【0022】
分散粒子は、Tiからなるホウ化物粒子と、少なくとも1種の他のホウ化物粒子と、を含む。なお、Tiからなるホウ化物とは、化学式で表すならばTiB2であるため、以下の説明では、単に「TiB2粒子」と記載する。他のホウ化物粒子は、VIa族元素(具体的には、Cr,Mo,W)およびFeを含む群のうちの1以上の元素からなる。すなわち、他のホウ化物粒子の具体的な種類としては、クロムホウ化物の他、CrとFeとの複合化物などのCr系ホウ化物粒子、また、モリブデンホウ化物やMoとFeとの複合化物などのMo系ホウ化物粒子など、が挙げられる。分散粒子には、TiB2粒子とともに、これらのうちの少なくとも1種が含まれる。
【0023】
他のホウ化物粒子としては、VIa族元素のなかでも鋼の合金元素として一般に用いられるCrやMoからなるホウ化物粒子であるのがよいが、Wを用いてもMoと同様な挙動を示すため、有効である。特に、Crを用いると、合金の融点が低下するとともに、耐食性が向上するため、本発明の高剛性鉄基合金の用途が拡大する。
【0024】
分散粒子は、その添加量が多い方が剛性が高くなるが、高剛性鉄基合金を100vol%としたとき、5〜60vol%であるのが好ましい。分散粒子が5vol%以上であれば剛性が効果的に向上し、さらに好ましくは、10vol%以上、20vol%以上である。また、60vol%を超えると、分散粒子を均一に分散させることが困難となる。さらに好ましくは、40vol%以下である。
【0025】
また、本発明では、高剛性を得るために、TiB2粒子の量を、マトリックスを構成する金属とTiB2との擬2元系状態図における共晶組成以下に制御し、さらに、他のホウ化物粒子を分散させることが必要であることは、前述の通りである。この際、他のホウ化物粒子は、分散粒子を100vol%としたとき30vol%以上含まれるとよい。さらに好ましくは、30〜80vol%である。なお、特許文献2では、TiB2以外のホウ化物が増加すると、剛性の向上効果が小さくなることは記載されている。一方、本発明の高剛性鉄基合金は、TiB2粒子の量を共晶組成以下に制御し、分散させる他のホウ化物粒子をVIa族元素に限定した結果、TiB2以外のホウ化物を積極的に利用することによって、剛性を効率よく高めることに成功したものである。
【0026】
TiB2粒子は、既に説明した通り、その含有量が共晶組成を超えて多くなると、初晶TiB2が粗大化した粒子が生じ、合金の機械的特性に影響する。この粗大化した粒子の発生を抑えるために、本発明では、TiB2は、合金組成において、マトリックスを構成する金属と、TiB2と、の擬2元系状態図における共晶組成以下とする。
【0027】
説明のために、図19に、TiB2/Fe擬二元系状態図(A.K.Shurin, V.E.Panarin :Izvest. Akad. Nauk. SSSR-Metally,5 (1974), p.235 )を示す。TiB2とFeとが完全に溶け合う液体状態(図19のLで示される部分)から温度が低下すると、TiB2またはδ鉄が析出する。ここで、TiB2が合金組成において共晶組成を超えて含まれる場合には、晶出過程において、Lから最初にTiB2(初晶TiB2)が晶出し、温度が共晶温度Teuに達するとTiB2(共晶TiB2)とδ鉄とが晶出することが、図19から明らかである。このようにして得られた合金は、微細な共晶TiB2と粗大になった初晶TiB2とが共存する。一方、TiB2が合金組成において共晶組成以下である場合には、初晶TiB2は晶出しない。したがって、合金組成においてTiB2を共晶組成以下とすることにより、初晶TiB2の晶出を抑え、粗大化したTiB2粒子を排除することができる。
【0028】
また、図19の状態図において、共晶点Peuは、TiB2の濃度で9.3mol%(Teu=1340℃)であるが、これを体積分率に換算すると13vol%程度である。TiB2粒子の晶出が13vol%を超えると、初晶TiB2が晶出する。つまり、TiB2の含有量は13vol%以下である必要があり、これにより初晶TiB2の晶出を抑え、粗大なTiB2粒子の発生が抑制される。ところが、TiB2粒子は高剛性であるため、初晶TiB2粒子の晶出が抑制できる範囲であれば可能な限り多量に分散させるのが好ましい。したがって、TiB2の含有量は、6〜13vol%が好ましく、さらに好ましくは10〜13vol%である。
【0029】
なお、本発明の高剛性鉄基合金を100質量%としたとき、全てのTiがTiB2として晶出する条件の下、Tiの含有量が5.5質量%以下であれば、TiB2粒子の含有量が13vol%以下である高剛性鉄基合金が得られる。既に説明したように、Tiは反応性が高いため、分散粒子のうちで最も早く晶出しはじめるのは、TiB2粒子である。したがって、Tiと反応するBが充分に存在する条件の下、Tiの含有量が5.5質量%以下であれば、TiB2粒子は13vol%以下の割合で晶出する。さらに好ましいTiの含有量は、2〜5.5質量%であって、2質量%以上であれば、剛性が効果的に向上される。ここで、Tiと反応するBが充分に存在する条件とは、本発明の高剛性鉄基合金を100mol%としたときのTiの含有率をXmol%、Bの含有率をYmol%としたとき、(Y−2X)>0である。残りのBは、VIa族元素およびFeを含む群のうちの1以上の元素とホウ化物を形成する。
【0030】
また、本発明の高剛性鉄基合金を100質量%としたとき、Bの含有量は、TiやVIa族元素の量にもよるが、2〜5質量%であるのが好ましい。Bの含有量が2〜5質量%であれば、十分な量のホウ化物を分散粒子として晶出させることができるため、剛性が効果的に向上される。
【0031】
また、本発明の高剛性鉄基合金を100質量%としたとき、Crは15質量%以下、Moは8質量%以下、Wは10質量%以下、であるのが好ましい。VIa族元素の含有量を上記範囲とすれば、他のホウ化物粒子の粗大化が抑制されるため好ましい。
【0032】
したがって、本発明の高剛性鉄基合金を100質量%としたとき、Tiを2〜5.5質量%、Bを2〜5質量%、Crを15質量%以下、Moを8質量%以下、Wを10質量%以下、含み、全体を100mol%としたときのTiの含有率をXmol%、Bの含有率をYmol%としたとき、(Y−2X)>0であれば、粒子の粗大化を抑えて機械特性を保持するとともに、良好に剛性が高められる。この際、残部は主としてFeと不可避不純物であって、マトリックスを構成する鉄合金の合金元素も含まれる。
【0033】
また、TiB2粒子が他のホウ化物粒子よりも先に晶出することにより、TiB2粒子を核とし、他のホウ化物粒子が核の周りに晶出してなる複合分散粒子が形成されることがある。共晶TiB2粒子は、晶出過程において極端に粗大化したり不均一に晶出し難い特徴をもつ。そのため、TiB2粒子を核として他のホウ化物粒子が晶出することで、分散粒子全体の分散状態が均一化される。
【0034】
マトリックスは、純鉄または鉄合金からなれば特に限定はない。Bの含有量によっては、VIa族元素のうちの1以上の元素がマトリックスに残留するため、マトリックスは、VIa族元素を含む鉄合金であってもよい。
【0035】
したがって、通常の鉄合金に含まれる炭素(C)、珪素(Si)、マンガン(Mn)やステンレス鋼で使用されるニッケル(Ni)等の元素を含む鉄合金をマトリックスとして使用できることは言うまでもない。また、ホウ化物として分散せずにマトリックス中に残留して存在するのであれば、IVa族元素やVa族元素であっても使用可能である。ただし、本発明の高剛性鉄基合金は、TiB2量が比較的少ない(共晶組成以下)ため、TiCの生成を防止し、有効Ti量を確実に確保して剛性を高めるためには、マトリックス(鉄合金)中のCの含有量を0.15質量%以下とするのが望ましく、さらに望ましくは0.10質量%以下である。Cの含有量が0.05質量%以下であれば、優れた熱間加工性が保持される。
【0036】
本発明の高剛性鉄基合金は、溶融法により作製することができる。所望の組成の原料を高温で溶融した液体(溶湯)を利用して、その流動性により所望の形状に成形し、冷却して凝固させることにより、鋳塊が得られ、さらに圧延等の熱間加工により所定の寸法に仕上げることができる。このような鋳造は、一般的な方法により行えばよい。原料としては、一般的に用いられる溶融原料であればよく、工業用純鉄、TiやVIa族元素を含む合金鉄、スポンジチタン、フェロボロン、純クロム、フェロクロム、純モリブデン、フェロモリブデン等の溶融原料を用いることができる。
【0037】
鋳造時の温度は、液相線温度+50℃〜1650℃であるのが望ましい。本発明の高剛性鉄基合金は、2種類以上のホウ化物を含むため、融点が低い。さらに、合金組成においてTiB2が共晶組成以下であれば融点が大きく上昇することがないことは、図19の状態図よりも明らかである。したがって、本発明の高剛性鉄基合金は、鋳造工程において、比較的低温(1650℃以下)で作業でき、鋳造金型の焼き付きや破損、歩留まりの低下、といった不具合を低減できる。
【0038】
以上、本発明の高剛性鉄基合金の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の高剛性鉄基合金の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明の高剛性鉄基合金の実施例を比較例とともに、表1および図1〜図18を用いて説明する。
【0040】
実施例としてNo.1〜No.7の高剛性鉄基合金を作製した。また、比較例としてNo.8〜No.15の鉄基合金を作製した。各試料は、真空誘導溶解炉を用い、減圧された閉空間内(雰囲気圧の実績値180〜200Pa)で行った。そして、所望の組成に調製した溶融原料を溶融し、その溶湯を鋳造金型へ注湯したあと放冷して、各合金を製造した。この際、溶解量は1kg、鋳造温度は1600℃とした。各試料の合金組成を表1に示す。
【0041】
なお、表1において、分散粒子の欄のホウ化物量(TiB2と他のホウ化物との総量)およびTiB2量は、合金全体を100vol%としたときの体積割合であって、合金組成より算出した計算値である。また、各試料の密度は、実測値である。参考のため、鉄の密度は、7.87g/cm3 である。
【0042】
また、各試料の剛性を調べるためにヤング率を測定した。ヤング率は、超音波厚さ計を用いて、密度・波長より算出した。測定結果を表1および図18に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
なお、表1には示していないが、No.1〜No.7の晶出ホウ化物中におけるFeおよびVIa族元素を含むホウ化物の量は、分散粒子全体のうち35〜80vol%であった。
【0045】
さらに、各試料における分散粒子の晶出状態を調べるために、SEM観察を行った。得られたSEM像を図1〜図17に示す。なお、図中の黒色粒子はTiB2粒子、白色粒子がMo系のホウ化物粒子、灰色粒子は(Fe,Cr)系のホウ化物粒子である。
【0046】
比較例のうちNo.12〜No.15の鉄基合金は、分散粒子としてTiB2粒子のみを1種類だけ晶出させたものである。TiB2粒子の晶出量が多い程、ヤング率は高くなり高剛性であるが、TiB2量が13vol%を超えているNo.13〜No.15の試料では、粗大化した分散粒子の存在が確認された(図13、図14、図15参照)。したがって、TiB2粒子のみを用いる場合には、250GPa以上のヤング率を示す高剛性な鉄基合金を得るためには、初晶TiB2の生成が避けられないことがわかる。
【0047】
また、No.15の鉄基合金では、TiB2粒子の晶出量が25vol%と多い割に剛性を高くする効果が大きく得られなかった。これは、TiB2量が増加したことによる融点の上昇により、歩留まりの悪化や、TiB2粒子の粗大化、分散の不均一、といった問題が生じたため、効果が低減されたと考えられる。すなわち、TiB2の増量によって250GPa以上のヤング率をもつ優れた高剛性鉄基合金を得るのは困難を伴うことがわかる。
【0048】
一方、TiB2と他のホウ化物とを晶出させたNo.1〜No.11の試料では、250GPaを超える高いヤング率が達成された。
【0049】
このうちNo.1〜No.7では、TiB2の他、(Fe,Cr)系、Mo系のホウ化物が分散粒子として晶出しており、高いヤング率をもつ高剛性鉄基合金であり、かつ、TiB2量を共晶組成以下の13vol%以下としたため、図1〜図7に示されるように、微細な粒子が分散した組織が得られた。これに対し、TiB2量を13vol%以上としたNo.8、No.9では、図8、図9に示されるように、粗大な粒子が確認された。また、No.8およびNo.9は、No.4と比較して、マトリックスの組成を変化させずTiB2の分散量のみを増加させたものであるが、ヤング率は、No.4と同程度であった。これは、粒子が粗大化した影響で、TiB2を増量させた効果が得られなかったのだと考えられる。
【0050】
なお、参考のため、No.3を図3よりも高倍率で観察した結果を図16に示す。図16では、微細なTiB2クラスターが集合した部分が観察された。すなわち、図3で粗大な粒子のように見える部分は、クラスターが密集してなる部分である。これは、図4においても同様である。
【0051】
次に、No.5〜No.7は、合金組成中のCr量を変化させた試料である。合金組成中のCr量を12質量%に増加させても、粗大化した分散粒子は確認されなかった(図5〜図7参照)。
【0052】
また、No.5の合金を再加熱すると、1150℃で液相が発生し、1300℃付近で完全に溶融した。これは、図19に示すTiB2/Fe擬二元系状態図における共晶温度(Teu)と同程度である。すなわち、No.5は、Fe−13vol%TiB2合金と同程度の融点をもち、20vol%以上のTiB2を含有するFe−TiB2合金(具体的にはNo.14,15)よりも高いヤング率を示す。したがって、VIa族元素およびFeを含む群のうちの1以上の元素からなる他のホウ化物粒子を少なくとも1種含む分散粒子は、融点を上昇させることなく、高ヤング率を実現することができた。なお、20vol%以上のTiB2を含有するFe−TiB2合金では、融点は約1600℃となり融点が大幅に上昇するため、鋳造がかなり困難になる。
【0053】
No.10、No.11では、分散粒子としてMoとともにVa族元素であるバナジウム(V)、ニオブ(Nb)を用いた。図10および図11によれば、TiB2量が13vol%であるにもかかわらず、粗大化したTiB2粒子が観察された。これは、TiB2の一部にVやNbが固溶してTiB2粒子が粗大化したものと考えられる。したがって、No.10、No.11のようにVa族元素を含む鉄基合金は、高いヤング率を得ることができるものの、分散粒子が粗大化し、機械的特性が低下する。
【0054】
なお、図17は、No.5を図5よりも高倍率で観察した結果である。図17では、TiB2粒子を核とし、Mo系のホウ化物粒子がTiB2粒子の周りに晶出してなる複合分散粒子の存在が確認できた。この複合分散粒子は、No.1〜4やNo.6〜11の試料においても部分的に観察されるものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリックスよりも高剛性な分散粒子をマトリックスに分散させて高剛性化した鉄基合金に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼材料は、安価で、大量生産が可能なことから、各種構造部材に広く用いられている。鋼は、添加する合金元素の種類や量により、多様な性質が発現されるが、合金元素を変更するだけで鋼の剛性を大きく向上させることは困難である。そのため、現在では、鉄基マトリックス中に、チタン二ホウ化物(TiB2)などの高剛性な分散粒子を分散させることにより、鉄基合金の剛性を高める方法が採られている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、ステンレス鋼粉末とTiB2粉末とを混合し、成形したものを焼結して得られた鉄基合金が開示されている。TiB2は、ステンレス鋼に比べ高剛性であるため、鉄基合金の高剛性化が期待できる。ところが、粉末を用いた製造方法では、大型の部品を製造するのに多大な圧力が必要となり成形が困難であるし、部品の全ての部位で粉末の密度を均一にするのが難しい。
【0004】
特許文献2には、鋼にフェロボロンとスポンジチタンを添加し溶製して得られた鋼鋳塊が開示されている。得られた鋳塊は、鋼をマトリックスとし、主となるホウ化物としてTiB2がマトリックス中に分散された高剛性鋼である。
【0005】
特許文献2では、鉄基合金中のTiB2の分散量が増加すると鉄基合金の剛性が高くなる傾向にあることが示されているが、一方で、TiB2の分散量がある程度の量を超えると、分散粒子が粗大化したり、融点が上昇したり、といった問題が生じる。マトリックス中に粗大な粒子が存在すると、鋳塊の組織が不均質となり、鉄基合金を高剛性化する効果が低減するとともに、延性など機械的特性の悪化を促す。また、融点が上昇すると、鋳造工程における型への焼付きや歩留まりの低下などにつながる。したがって、TiB2粒子の量を増加させて高い剛性をもつ鉄基合金を得ようとすると、製造性の低下や機械的特性の低下が生じるため、TiB2量を安易に増加させられないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−188874号公報
【特許文献2】特開2004−218069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、上記問題点に鑑み、効率のよい高剛性化が可能であり、かつ、機械的特性を改善できる新規な高剛性鉄基合金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高剛性鉄基合金は、純鉄または鉄合金からなるマトリックスと、該マトリックスに晶出して分散されたホウ化物からなる分散粒子と、からなる高剛性鉄基合金であって、前記分散粒子は、チタン(Ti)からなるホウ化物粒子と、VIa族元素および鉄(Fe)のうちの1以上の元素からなる少なくとも1種の他のホウ化物粒子と、からなり、該Tiからなるホウ化物粒子は、前記マトリックスを構成する金属とTiからなるホウ化物との擬2元系状態図における共晶組成以下含まれることを特徴とする。
【0009】
これ以下、VIa族元素およびFeのうちの1以上の元素からなるホウ化物粒子を単に「他のホウ化物粒子」と略記する。すなわち、本発明の高剛性鉄基合金において、分散粒子は、「Tiからなるホウ化物粒子」と、少なくとも1種の「他のホウ化物粒子」と、からなる2種以上のホウ化物粒子を含み、それ以外のホウ化物粒子は実質的に含まない。
【0010】
この際、本発明の高剛性鉄基合金の全体を100vol%としたとき前記分散粒子を5〜60vol%、該分散粒子を100vol%としたとき前記他のホウ化物粒子を30vol%以上、含むのが好ましい。
【0011】
また、本発明の高剛性鉄基合金の全体を100質量%としたとき、Tiを2〜5.5質量%、Bを2〜5質量%、Crを15質量%以下、Moを8質量%以下、Wを10質量%以下、含み、全体を100mol%としたときのTiの含有率をXmol%、Bの含有率をYmol%としたとき、(Y−2X)>0であるのが好ましい。
【0012】
前記分散粒子は、前記他のホウ化物粒子が前記Tiを含むホウ化物粒子を核として該核の周りに晶出してなる複合分散粒子を含むのが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高剛性鉄基合金では、硬質で高剛性をもつホウ化物からなる分散粒子を用いる。分散粒子は、Tiからなるホウ化物粒子を、マトリックスを構成する金属とTiからなるホウ化物との擬2元系状態図における共晶組成以下に制御し、さらに、Tiからなるホウ化物粒子の他に、少なくとも1種の他のホウ化物粒子を分散させる。その結果、Tiからなるホウ化物粒子と、他のホウ化物粒子との相乗効果により、Tiからなるホウ化物粒子を単独で分散粒子として用いる場合よりも、高剛性化の効果が高い。また、既に述べたように、従来、Tiからなるホウ化物粒子の含有量が多いと、粒子が粗大となったり、融点が上昇したり、といった問題があったが、Tiからなるホウ化物粒子の量を共晶組成以下に制御した上で、他のホウ化物粒子を併用することにより、晶出する粒子の粗大化や融点の上昇を抑制するのみでなく、高剛性を実現できる。
【0014】
さらに、Tiからなるホウ化物粒子は鉄基合金よりも低比重であるため、Tiからなるホウ化物粒子を含む本発明の高剛性鉄基合金は、高い剛性を有し、かつ、鉄基合金に比べて軽量な合金である。
【0015】
Tiからなるホウ化物の含有量を、マトリックスを構成する金属との擬2元系状態図における共晶組成以下とすることにより、晶出するホウ化物粒子の粗大化を防止することができる理由は、以下の通りである。すなわち、亜共晶域の組成では、共晶点よりも高い温度で晶出を開始する初晶によるホウ化物の生成を避けることができる。初晶は液相温度に達した時点で生じるため、初晶により生じたホウ化物は凝固が終了するまでに成長して粗大化しやすい。その結果、マトリックスには、共晶反応により晶出した微細な粒子と、初晶により生じた粗大粒子と、が共存する。粗大化した粒子が混在することで、分散粒子の均質性が損なわれ、伸びが低下したり、粗大粒子が破壊の起点となるなど、鉄基合金の機械的特性に影響を及ぼす。つまり、初晶を抑えれば、鉄基合金の有する機械的特性の低下を抑制できる。
【0016】
ただし、単にTiからなるホウ化物の含有量を減少させるだけでは、高剛性を実現することはできない。本発明者等は、さらなる検討の結果、Ti以外のホウ化物を使用する、特に、従来から知られているIVa族元素、Va族元素、VIa族元素のホウ化物のうち、VIa族元素のホウ化物を限定して使用することにより、さらにホウ化物粒子の粗大化を防止でき、効果的に剛性を高めることができることを見出した。
【0017】
なお、一般に、凝固時の冷却速度が速くなる程、晶出する粒子が小さくなることが知られている。したがって、冷却速度が速い条件で得られた高剛性鉄基合金において粗大粒子と見なされる大きさの粒子が、冷却速度が遅い条件で得られた高剛性鉄基合金において微細な粒子と同等の大きさをもつ場合もある。そのため、「粗大粒子」は、粒径などにより定量的に定義することはできない。ただし、高剛性鉄基合金の粗大粒子の有無は、粒子の分散状態を走査電子顕微鏡(SEM)等などで観察すれば、判別可能である。
【0018】
また、本発明の高剛性鉄基合金では、分散粒子は、晶出時に、マトリックスに均一に分散する。また、分散粒子の中でもTiからなるホウ化物粒子は、TiとBとの反応性が高いため、他のホウ化物粒子よりも先に晶出してマトリックス中に分散する。そのため、冷却条件によっては、既に晶出したTiからなるホウ化物粒子が核として利用され、後に晶出する他の分散粒子は分散性のよい核の周りに晶出するため、分散粒子全体の分散状態が均一化される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】試料No.1の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図2】試料No.2の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図3】試料No.3の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図4】試料No.4の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図5】試料No.5の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図6】試料No.6の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図7】試料No.7の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図8】試料No.8の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図9】試料No.9の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図10】試料No.10の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図11】試料No.11の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図12】試料No.12の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図13】試料No.13の鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図14】試料No.14の鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図15】試料No.15の鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真である。
【図16】試料No.3の高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真であって、分散粒子が集合している部分の拡大写真である。
【図17】高剛性鉄基合金における分散粒子の晶出状態を示す図面代用写真であって、TiB2からなる核とその周りに晶出したMo系のホウ化物からなる複合粒子を示す。
【図18】No.1〜15の試料のヤング率を示すグラフである。
【図19】TiB2/Fe擬二元系状態図であって、TiB2量を体積分率に変換した場合の目盛を図下に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の高剛性鉄基合金を実施するための最良の形態を、図19を用いて説明する。
【0021】
本発明の高剛性鉄基合金は、純鉄または鉄合金からなるマトリックスと、該マトリックスに晶出して分散されたホウ化物からなる分散粒子と、からなる。ホウ化物からなる分散粒子は、硬質で高剛性をもつため、鉄基合金の剛性を向上させる分散粒子として好適である。
【0022】
分散粒子は、Tiからなるホウ化物粒子と、少なくとも1種の他のホウ化物粒子と、を含む。なお、Tiからなるホウ化物とは、化学式で表すならばTiB2であるため、以下の説明では、単に「TiB2粒子」と記載する。他のホウ化物粒子は、VIa族元素(具体的には、Cr,Mo,W)およびFeを含む群のうちの1以上の元素からなる。すなわち、他のホウ化物粒子の具体的な種類としては、クロムホウ化物の他、CrとFeとの複合化物などのCr系ホウ化物粒子、また、モリブデンホウ化物やMoとFeとの複合化物などのMo系ホウ化物粒子など、が挙げられる。分散粒子には、TiB2粒子とともに、これらのうちの少なくとも1種が含まれる。
【0023】
他のホウ化物粒子としては、VIa族元素のなかでも鋼の合金元素として一般に用いられるCrやMoからなるホウ化物粒子であるのがよいが、Wを用いてもMoと同様な挙動を示すため、有効である。特に、Crを用いると、合金の融点が低下するとともに、耐食性が向上するため、本発明の高剛性鉄基合金の用途が拡大する。
【0024】
分散粒子は、その添加量が多い方が剛性が高くなるが、高剛性鉄基合金を100vol%としたとき、5〜60vol%であるのが好ましい。分散粒子が5vol%以上であれば剛性が効果的に向上し、さらに好ましくは、10vol%以上、20vol%以上である。また、60vol%を超えると、分散粒子を均一に分散させることが困難となる。さらに好ましくは、40vol%以下である。
【0025】
また、本発明では、高剛性を得るために、TiB2粒子の量を、マトリックスを構成する金属とTiB2との擬2元系状態図における共晶組成以下に制御し、さらに、他のホウ化物粒子を分散させることが必要であることは、前述の通りである。この際、他のホウ化物粒子は、分散粒子を100vol%としたとき30vol%以上含まれるとよい。さらに好ましくは、30〜80vol%である。なお、特許文献2では、TiB2以外のホウ化物が増加すると、剛性の向上効果が小さくなることは記載されている。一方、本発明の高剛性鉄基合金は、TiB2粒子の量を共晶組成以下に制御し、分散させる他のホウ化物粒子をVIa族元素に限定した結果、TiB2以外のホウ化物を積極的に利用することによって、剛性を効率よく高めることに成功したものである。
【0026】
TiB2粒子は、既に説明した通り、その含有量が共晶組成を超えて多くなると、初晶TiB2が粗大化した粒子が生じ、合金の機械的特性に影響する。この粗大化した粒子の発生を抑えるために、本発明では、TiB2は、合金組成において、マトリックスを構成する金属と、TiB2と、の擬2元系状態図における共晶組成以下とする。
【0027】
説明のために、図19に、TiB2/Fe擬二元系状態図(A.K.Shurin, V.E.Panarin :Izvest. Akad. Nauk. SSSR-Metally,5 (1974), p.235 )を示す。TiB2とFeとが完全に溶け合う液体状態(図19のLで示される部分)から温度が低下すると、TiB2またはδ鉄が析出する。ここで、TiB2が合金組成において共晶組成を超えて含まれる場合には、晶出過程において、Lから最初にTiB2(初晶TiB2)が晶出し、温度が共晶温度Teuに達するとTiB2(共晶TiB2)とδ鉄とが晶出することが、図19から明らかである。このようにして得られた合金は、微細な共晶TiB2と粗大になった初晶TiB2とが共存する。一方、TiB2が合金組成において共晶組成以下である場合には、初晶TiB2は晶出しない。したがって、合金組成においてTiB2を共晶組成以下とすることにより、初晶TiB2の晶出を抑え、粗大化したTiB2粒子を排除することができる。
【0028】
また、図19の状態図において、共晶点Peuは、TiB2の濃度で9.3mol%(Teu=1340℃)であるが、これを体積分率に換算すると13vol%程度である。TiB2粒子の晶出が13vol%を超えると、初晶TiB2が晶出する。つまり、TiB2の含有量は13vol%以下である必要があり、これにより初晶TiB2の晶出を抑え、粗大なTiB2粒子の発生が抑制される。ところが、TiB2粒子は高剛性であるため、初晶TiB2粒子の晶出が抑制できる範囲であれば可能な限り多量に分散させるのが好ましい。したがって、TiB2の含有量は、6〜13vol%が好ましく、さらに好ましくは10〜13vol%である。
【0029】
なお、本発明の高剛性鉄基合金を100質量%としたとき、全てのTiがTiB2として晶出する条件の下、Tiの含有量が5.5質量%以下であれば、TiB2粒子の含有量が13vol%以下である高剛性鉄基合金が得られる。既に説明したように、Tiは反応性が高いため、分散粒子のうちで最も早く晶出しはじめるのは、TiB2粒子である。したがって、Tiと反応するBが充分に存在する条件の下、Tiの含有量が5.5質量%以下であれば、TiB2粒子は13vol%以下の割合で晶出する。さらに好ましいTiの含有量は、2〜5.5質量%であって、2質量%以上であれば、剛性が効果的に向上される。ここで、Tiと反応するBが充分に存在する条件とは、本発明の高剛性鉄基合金を100mol%としたときのTiの含有率をXmol%、Bの含有率をYmol%としたとき、(Y−2X)>0である。残りのBは、VIa族元素およびFeを含む群のうちの1以上の元素とホウ化物を形成する。
【0030】
また、本発明の高剛性鉄基合金を100質量%としたとき、Bの含有量は、TiやVIa族元素の量にもよるが、2〜5質量%であるのが好ましい。Bの含有量が2〜5質量%であれば、十分な量のホウ化物を分散粒子として晶出させることができるため、剛性が効果的に向上される。
【0031】
また、本発明の高剛性鉄基合金を100質量%としたとき、Crは15質量%以下、Moは8質量%以下、Wは10質量%以下、であるのが好ましい。VIa族元素の含有量を上記範囲とすれば、他のホウ化物粒子の粗大化が抑制されるため好ましい。
【0032】
したがって、本発明の高剛性鉄基合金を100質量%としたとき、Tiを2〜5.5質量%、Bを2〜5質量%、Crを15質量%以下、Moを8質量%以下、Wを10質量%以下、含み、全体を100mol%としたときのTiの含有率をXmol%、Bの含有率をYmol%としたとき、(Y−2X)>0であれば、粒子の粗大化を抑えて機械特性を保持するとともに、良好に剛性が高められる。この際、残部は主としてFeと不可避不純物であって、マトリックスを構成する鉄合金の合金元素も含まれる。
【0033】
また、TiB2粒子が他のホウ化物粒子よりも先に晶出することにより、TiB2粒子を核とし、他のホウ化物粒子が核の周りに晶出してなる複合分散粒子が形成されることがある。共晶TiB2粒子は、晶出過程において極端に粗大化したり不均一に晶出し難い特徴をもつ。そのため、TiB2粒子を核として他のホウ化物粒子が晶出することで、分散粒子全体の分散状態が均一化される。
【0034】
マトリックスは、純鉄または鉄合金からなれば特に限定はない。Bの含有量によっては、VIa族元素のうちの1以上の元素がマトリックスに残留するため、マトリックスは、VIa族元素を含む鉄合金であってもよい。
【0035】
したがって、通常の鉄合金に含まれる炭素(C)、珪素(Si)、マンガン(Mn)やステンレス鋼で使用されるニッケル(Ni)等の元素を含む鉄合金をマトリックスとして使用できることは言うまでもない。また、ホウ化物として分散せずにマトリックス中に残留して存在するのであれば、IVa族元素やVa族元素であっても使用可能である。ただし、本発明の高剛性鉄基合金は、TiB2量が比較的少ない(共晶組成以下)ため、TiCの生成を防止し、有効Ti量を確実に確保して剛性を高めるためには、マトリックス(鉄合金)中のCの含有量を0.15質量%以下とするのが望ましく、さらに望ましくは0.10質量%以下である。Cの含有量が0.05質量%以下であれば、優れた熱間加工性が保持される。
【0036】
本発明の高剛性鉄基合金は、溶融法により作製することができる。所望の組成の原料を高温で溶融した液体(溶湯)を利用して、その流動性により所望の形状に成形し、冷却して凝固させることにより、鋳塊が得られ、さらに圧延等の熱間加工により所定の寸法に仕上げることができる。このような鋳造は、一般的な方法により行えばよい。原料としては、一般的に用いられる溶融原料であればよく、工業用純鉄、TiやVIa族元素を含む合金鉄、スポンジチタン、フェロボロン、純クロム、フェロクロム、純モリブデン、フェロモリブデン等の溶融原料を用いることができる。
【0037】
鋳造時の温度は、液相線温度+50℃〜1650℃であるのが望ましい。本発明の高剛性鉄基合金は、2種類以上のホウ化物を含むため、融点が低い。さらに、合金組成においてTiB2が共晶組成以下であれば融点が大きく上昇することがないことは、図19の状態図よりも明らかである。したがって、本発明の高剛性鉄基合金は、鋳造工程において、比較的低温(1650℃以下)で作業でき、鋳造金型の焼き付きや破損、歩留まりの低下、といった不具合を低減できる。
【0038】
以上、本発明の高剛性鉄基合金の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の高剛性鉄基合金の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明の高剛性鉄基合金の実施例を比較例とともに、表1および図1〜図18を用いて説明する。
【0040】
実施例としてNo.1〜No.7の高剛性鉄基合金を作製した。また、比較例としてNo.8〜No.15の鉄基合金を作製した。各試料は、真空誘導溶解炉を用い、減圧された閉空間内(雰囲気圧の実績値180〜200Pa)で行った。そして、所望の組成に調製した溶融原料を溶融し、その溶湯を鋳造金型へ注湯したあと放冷して、各合金を製造した。この際、溶解量は1kg、鋳造温度は1600℃とした。各試料の合金組成を表1に示す。
【0041】
なお、表1において、分散粒子の欄のホウ化物量(TiB2と他のホウ化物との総量)およびTiB2量は、合金全体を100vol%としたときの体積割合であって、合金組成より算出した計算値である。また、各試料の密度は、実測値である。参考のため、鉄の密度は、7.87g/cm3 である。
【0042】
また、各試料の剛性を調べるためにヤング率を測定した。ヤング率は、超音波厚さ計を用いて、密度・波長より算出した。測定結果を表1および図18に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
なお、表1には示していないが、No.1〜No.7の晶出ホウ化物中におけるFeおよびVIa族元素を含むホウ化物の量は、分散粒子全体のうち35〜80vol%であった。
【0045】
さらに、各試料における分散粒子の晶出状態を調べるために、SEM観察を行った。得られたSEM像を図1〜図17に示す。なお、図中の黒色粒子はTiB2粒子、白色粒子がMo系のホウ化物粒子、灰色粒子は(Fe,Cr)系のホウ化物粒子である。
【0046】
比較例のうちNo.12〜No.15の鉄基合金は、分散粒子としてTiB2粒子のみを1種類だけ晶出させたものである。TiB2粒子の晶出量が多い程、ヤング率は高くなり高剛性であるが、TiB2量が13vol%を超えているNo.13〜No.15の試料では、粗大化した分散粒子の存在が確認された(図13、図14、図15参照)。したがって、TiB2粒子のみを用いる場合には、250GPa以上のヤング率を示す高剛性な鉄基合金を得るためには、初晶TiB2の生成が避けられないことがわかる。
【0047】
また、No.15の鉄基合金では、TiB2粒子の晶出量が25vol%と多い割に剛性を高くする効果が大きく得られなかった。これは、TiB2量が増加したことによる融点の上昇により、歩留まりの悪化や、TiB2粒子の粗大化、分散の不均一、といった問題が生じたため、効果が低減されたと考えられる。すなわち、TiB2の増量によって250GPa以上のヤング率をもつ優れた高剛性鉄基合金を得るのは困難を伴うことがわかる。
【0048】
一方、TiB2と他のホウ化物とを晶出させたNo.1〜No.11の試料では、250GPaを超える高いヤング率が達成された。
【0049】
このうちNo.1〜No.7では、TiB2の他、(Fe,Cr)系、Mo系のホウ化物が分散粒子として晶出しており、高いヤング率をもつ高剛性鉄基合金であり、かつ、TiB2量を共晶組成以下の13vol%以下としたため、図1〜図7に示されるように、微細な粒子が分散した組織が得られた。これに対し、TiB2量を13vol%以上としたNo.8、No.9では、図8、図9に示されるように、粗大な粒子が確認された。また、No.8およびNo.9は、No.4と比較して、マトリックスの組成を変化させずTiB2の分散量のみを増加させたものであるが、ヤング率は、No.4と同程度であった。これは、粒子が粗大化した影響で、TiB2を増量させた効果が得られなかったのだと考えられる。
【0050】
なお、参考のため、No.3を図3よりも高倍率で観察した結果を図16に示す。図16では、微細なTiB2クラスターが集合した部分が観察された。すなわち、図3で粗大な粒子のように見える部分は、クラスターが密集してなる部分である。これは、図4においても同様である。
【0051】
次に、No.5〜No.7は、合金組成中のCr量を変化させた試料である。合金組成中のCr量を12質量%に増加させても、粗大化した分散粒子は確認されなかった(図5〜図7参照)。
【0052】
また、No.5の合金を再加熱すると、1150℃で液相が発生し、1300℃付近で完全に溶融した。これは、図19に示すTiB2/Fe擬二元系状態図における共晶温度(Teu)と同程度である。すなわち、No.5は、Fe−13vol%TiB2合金と同程度の融点をもち、20vol%以上のTiB2を含有するFe−TiB2合金(具体的にはNo.14,15)よりも高いヤング率を示す。したがって、VIa族元素およびFeを含む群のうちの1以上の元素からなる他のホウ化物粒子を少なくとも1種含む分散粒子は、融点を上昇させることなく、高ヤング率を実現することができた。なお、20vol%以上のTiB2を含有するFe−TiB2合金では、融点は約1600℃となり融点が大幅に上昇するため、鋳造がかなり困難になる。
【0053】
No.10、No.11では、分散粒子としてMoとともにVa族元素であるバナジウム(V)、ニオブ(Nb)を用いた。図10および図11によれば、TiB2量が13vol%であるにもかかわらず、粗大化したTiB2粒子が観察された。これは、TiB2の一部にVやNbが固溶してTiB2粒子が粗大化したものと考えられる。したがって、No.10、No.11のようにVa族元素を含む鉄基合金は、高いヤング率を得ることができるものの、分散粒子が粗大化し、機械的特性が低下する。
【0054】
なお、図17は、No.5を図5よりも高倍率で観察した結果である。図17では、TiB2粒子を核とし、Mo系のホウ化物粒子がTiB2粒子の周りに晶出してなる複合分散粒子の存在が確認できた。この複合分散粒子は、No.1〜4やNo.6〜11の試料においても部分的に観察されるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
純鉄または鉄合金からなるマトリックスと、該マトリックスに晶出して分散されたホウ化物からなる分散粒子と、からなる高剛性鉄基合金であって、
前記分散粒子は、チタン(Ti)からなるホウ化物粒子と、VIa族元素および鉄(Fe)のうちの1以上の元素からなる少なくとも1種の他のホウ化物粒子と、からなり、該Tiからなるホウ化物粒子は、前記マトリックスを構成する金属とTiからなるホウ化物との擬2元系状態図における共晶組成以下含まれることを特徴とする高剛性鉄基合金。
【請求項2】
全体を100vol%としたとき前記分散粒子を5〜60vol%、該分散粒子を100vol%としたとき前記他のホウ化物粒子を30vol%以上、含む請求項1記載の高剛性鉄基合金。
【請求項3】
全体を100質量%としたとき、Tiを2〜5.5質量%、Bを2〜5質量%、Crを15質量%以下、Moを8質量%以下、Wを10質量%以下、含み、全体を100mol%としたときのTiの含有率をXmol%、Bの含有率をYmol%としたとき、(Y−2X)>0である請求項1または2記載の高剛性鉄基合金。
【請求項4】
前記分散粒子は、前記他のホウ化物粒子が前記Tiを含むホウ化物粒子を核として該核の周りに晶出してなる複合分散粒子を含む請求項1〜3のいずれかに記載の高剛性鉄基合金。
【請求項1】
純鉄または鉄合金からなるマトリックスと、該マトリックスに晶出して分散されたホウ化物からなる分散粒子と、からなる高剛性鉄基合金であって、
前記分散粒子は、チタン(Ti)からなるホウ化物粒子と、VIa族元素および鉄(Fe)のうちの1以上の元素からなる少なくとも1種の他のホウ化物粒子と、からなり、該Tiからなるホウ化物粒子は、前記マトリックスを構成する金属とTiからなるホウ化物との擬2元系状態図における共晶組成以下含まれることを特徴とする高剛性鉄基合金。
【請求項2】
全体を100vol%としたとき前記分散粒子を5〜60vol%、該分散粒子を100vol%としたとき前記他のホウ化物粒子を30vol%以上、含む請求項1記載の高剛性鉄基合金。
【請求項3】
全体を100質量%としたとき、Tiを2〜5.5質量%、Bを2〜5質量%、Crを15質量%以下、Moを8質量%以下、Wを10質量%以下、含み、全体を100mol%としたときのTiの含有率をXmol%、Bの含有率をYmol%としたとき、(Y−2X)>0である請求項1または2記載の高剛性鉄基合金。
【請求項4】
前記分散粒子は、前記他のホウ化物粒子が前記Tiを含むホウ化物粒子を核として該核の周りに晶出してなる複合分散粒子を含む請求項1〜3のいずれかに記載の高剛性鉄基合金。
【図18】
【図19】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図1】
【図2】
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【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−26040(P2012−26040A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235181(P2011−235181)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【分割の表示】特願2005−353952(P2005−353952)の分割
【原出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000116655)愛知製鋼株式会社 (141)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【分割の表示】特願2005−353952(P2005−353952)の分割
【原出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000116655)愛知製鋼株式会社 (141)
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