説明

高品質繊維製造用輻射シールドを含む繊維化紡糸機

高品質グラスウール繊維製造用装置、より具体的には輻射シールド(46)を含む紡糸機(12)を開示する。紡糸機は、紡糸機ベースの下に位置決めされた複数の輻射シールドを含み、紡糸機の周囲壁(18)に沿った温度勾配を減少させてガラス繊維の品質を向上させる。輻射シールドに適した材料の一つは、高温ニッケル合金である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質グラスウール繊維の製造用繊維化装置及び紡糸機に関し、より具体的には、回転式繊維化工程で使用される、紡糸機を断熱するための改良輻射シールドに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス及び他の熱可塑性材料の繊維は、防音材料及び断熱材料を含む種々の用途に有用である。一般的な従来技術での繊維ガラス断熱製品の製造方法は、回転工程でガラス繊維を製造することを伴う。回転工程では、ガラス組成物を溶解し、さらに遠心紡糸機として一般的に知られている遠心機の外周壁のオリフィスから押し出して繊維を作る。一般に使用されている紡糸機の一つは、一般的に、中央穴、上開口、及び外周側壁を有するベース壁を有するカップ形状をなし、ベース壁から上方に湾曲して上開口を形成する。一般的に使用されている他の紡糸機は、ガラス組成物を繊維化のために側壁に推進させるスリンガーカップを用いる。紡糸機を回転させるために駆動シャフトが使用され、駆動シャフトは、典型的にはクイルによって紡糸機に固定される。
【0003】
繊維化の間、紡糸機は、高温及び紡糸機に相当な力を加える高速回転を受ける。側壁のオリフィスから繊維が押し出されるとき、外部バーナーが高温ガスの噴流を繊維に推し進めて繊維を加熱し、外部ブロワーが繊維を延ばすために使用される。繊維化の間、繊維化の品質を向上させるために、ガラスを予め決定された温度に維持することが重要である。好ましい温度は、装置及び製造に基づいて異なるが、好ましい温度は、典型的には溶融ガラスが粘性率1000ポアズ(log3粘性率とも呼ばれる)となる温度である。
【0004】
紡糸機は、金属合金で形成され、典型的にはベース壁と、有孔側壁を含む。溶融ガラスが、紡糸機のベース表面に落ち、紡糸機の回転によって側壁に向かって推進される。紡糸機のベース表面は、熱を輻射し、且つ熱を溶融ガラス及び紡糸機の側壁から対流させる。側壁の下縁にあるオリフィスは、上の方にあるオリフィスの温度よりも低い温度まで冷える。オリフィスが冷えると、ガラスが冷え、ガラスの粘性を増加させ、より太くて固い一次繊維をもたらす。ガラスを冷やすと、ガラスを失透させ、下のオリフィスを詰まらせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かくして、紡糸機ベース及び周囲側壁、並びに繊維化する前、紡糸機の中にある間、溶融ガラスを予め決定された温度に維持し、且つ繊維ガラス断熱製品に向上した特性を与える紡糸機のニーズが当該技術にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
紡糸機の中のガラスの温度を制御し、且つグラスウールの品質を向上させるニーズは、本発明による紡糸機によって満たされる。本発明の紡糸機は、紡糸機の下に取り付けられた輻射シールドを含むことによって、溶融ガラスの温度を制御するようになっている。輻射シールドは、紡糸機の下に位置決めされており、典型的には多層構造を含む。本発明の目的、特徴、及び利点は、この中の説明及び特許請求の範囲、並びに図面を考慮するとき明らかになる。
【0007】
この発明の利点は、以下の発明の詳細な開示を、特に添付図面について考慮するとき明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の原理による輻射シールドを有する繊維化装置の立面概略部分断面図である。
【図2】本発明の原理による輻射シールドを有する繊維化装置の立面概略部分断面図である。
【図3】本発明の原理による輻射シールドを有する繊維化装置の立面概略部分断面図である。
【図4】本発明の、輻射シールドを含む紡糸機の下隅と、輻射シールドがない紡糸機の下隅の温度を比較するボックスプロットグラフである。
【図5】本発明の、輻射シールドを含む紡糸機及び輻射シールドのない紡糸機から作られた溶融繊維のパーセンテージを比較するボックスプロットグラフである。
【図6】本発明の輻射シールドを含む紡糸機、及び輻射シールドのない紡糸機の温度データのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を特定の実施形態に関してここに説明するが、当業者には、本発明の精神及び範囲から逸脱することなしに、種々の修正、再構成、及び置換をなすことができることは容易に理解できる。かくして、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって限定されるにすぎない。
【0010】
図1を参照すると、繊維化装置10は、回転シャフト又はスピンドル14の下端で、クイル64のハブ54に取り付けられた紡糸機12を含む。スピンドル14を回転させて紡糸機12を回転させることは当該技術で知られている。紡糸機12は、ハブ54から周囲壁18まで延びるベース16を含む。溶融熱可塑性材料、例えばガラスの繊維22を遠心紡糸させるための複数のオリフィス20が、周囲壁18の外周に配置される。
【0011】
紡糸機12には、溶融熱可塑性材料の流れ78が供給される。溶融ガラスの流れ78を供給するために、在来の供給装置82を使用することができる。このような溶融ガラス供給装置82は、当該産業で知られており、従って、ここでは詳述しない。流れ78をなすガラスは、紡糸機12のチャンバ42内に落ち込み、遠心力により、周囲壁18に向けられ、外向きに流れてガラスの集積又はヘッド90を形成する。次いでガラスは、オリフィス20の中を流れて、一次繊維を形成し、該繊維は、バーナー24及び環状送風機28によって加熱され、且つ延ばされる。
【0012】
紡糸機12の(図1に円弧矢印(a)で示すように)回転が、紡糸機周囲壁18のオリフィス20を通して溶融ガラスを遠心紡糸させて、一次繊維22を形成する。一次繊維22は、環状バーナー24の熱によって、柔らかく、細くできる状態で維持される。環状ブロワー28は、通路30を通して空気を誘導し、一次繊維22を引っ張り、さらにウール断熱材料のような製品に使用するのに適した二次繊維へ、一次繊維を細くする。次いで、二次繊維32は、コンベア(図示せず)上に集められて、それをグラスウールパックのような製品に形成する。
【0013】
中空のクイル64が、ハブ54の中心に形成されたボアホールの中に押圧嵌めされ、且つ円周方向に間隔を隔てた3個の係止ピン66によって適所に係止される。クイル64の上端は、中空引っ張り棒68の下端に螺合される。好ましくはクイル64は、スピンドル14及びクイル64の周り、及びハブ54の上に配置された環状冷却ジャケット70の中を循環する水で、さらに冷却される。好ましくはクイル64及びハブ54は、これらの間の熱膨張差を最小にするために、低熱膨張合金で作られるのがよい。
【0014】
輻射シールド46は、一枚のプレート52a、2枚のプレート52a,52b、又は複数枚(一枚より多い)の個々のプレート52a,52b,52cを含むのがよい。選択的に、輻射シールド46は、3枚以上のプレートを含んでもよい。プレートは、クイル64のハブ54に連結されるのがよい。クイルパン66が、溶接、クランプ締め、又は他の取付手段を介して一枚又はそれ以上のプレートに取り付けられる。図3に示すように、クイルパン66を、ボルト75,76を介してクイル64の底部分63にボルト締めしてもよい。変形として、クイルパンを、溶接、クランプ締め、又は他の取付手段によって底部分63に取り付けてもよい。プレートは、紡糸機のベースからの対流を防ぎ、紡糸機12のベースから赤外線エネルギーが漏れるのを防ぎ、且つ周囲壁18の高さに沿った温度勾配を減らし、かくして、ガラスヘッド90内での失透を防ぎ、且つガラスが、周囲壁の下縁でオリフィス20を通過するときのガラスの温度を制御する。好ましくは第1のプレート52aは、紡糸機12のベース壁16に追従するように、裁頭円錐形である。第2のプレート52b及び第3のプレート52cは、プレートの間に空間ができるように、裁頭円錐形又は平坦であるのがよい。プレート52a,52b,52cは、ハステロイ(ニッケルベースの耐熱性遷移金属)のようなステンレス鋼又は耐熱性金属で形成されるのがよい。シールドに特に適した材料は、アメリカ合衆国インディアナ州ココモのヘインズインターナショナルで入手可能なハステロイXである。ハステロイXは、Ni47重量%、Cr22重量%、Fe18重量%、Mo9重量%、W1.5重量%、C0.1重量%、Mn(最大)1重量%、Si(最小)1重量%、及びB(最大)0.008重量%のBを含む。
【0015】
同様に、図2の繊維化装置10は、クイル64のハブ54に固定された紡糸機12を含み、クイルは、固定リング55によってスピンドル14の下端に取り付けられる。紡糸機12は、周囲壁18まで延びるベース16を含み、周囲壁18は、繊維22を遠心紡糸させるための複数のオリフィス20を含む。在来の供給装置82によって、溶融熱可塑性材料の流れ78が、チャンバ42に供給される。溶融熱可塑性材料が、外向きに流れ、ガラスの集積又はヘッド90を形成する。次いでガラスは、オリフィス20の中を流れて一次繊維22を形成し、バーナー24及び環状ブロワー28によって加熱され、且つ延ばされる。環状ブロワー28は、通路30を通して空気を誘導し、一次繊維22を引っ張り、さらに細くして二次繊維にする。円弧矢印(a)は、紡糸機12の回転を示す。
【0016】
紡糸機は、使用される繊維化工程に応じて、種々の構造で製造される。典型的には、ガラス繊維の主要な製造者は、製造者毎に異なる独自の繊維化工程を有する、しかしながら、本発明の原理は、どんな回転式の繊維化工程での使用にも等しく適している。図4は、本発明の、輻射シールドを含む紡糸機の下隅と、輻射シールドがない紡糸機の下隅の温度を比較するボックスプロットグラフを示す。グラフに示すように、輻射シールド断熱材は、紡糸機の下隅の平均温度を著しく増加させる(+華氏70度)(摂氏21.1度)。
【0017】
図5は、本発明の、輻射シールドを含む紡糸機から作られた溶融繊維及び輻射シールドのない紡糸機から作られた溶融繊維のパーセンテージを比較するボックスプロットグラフである。
【0018】
図6は、本発明の輻射シールドのない紡糸機の(2006年1月6日よりも前の)K値と、輻射シールドを含む紡糸機の(2006年1月6日以後の)K値を示す。K値は、熱伝導率の尺度である。具体的には、K値は、厚さ1インチ(2.5cm)の材料の1平方フィート(929平方センチメートル)当たりに伝達され、材料の一方の側と他方の側で華氏1度の温度変化を生じさせる時間当たりの英熱量の尺度である。材料のK値が低いほど、断熱性が高い。
【0019】
本願の発明を、一般的に、且つ特定の実施例について上述した。好ましい実施形態と見られる発明を上述したが、当業者は、一般的な開示の中で、広範囲の変形を選択することができる。本発明は、特許請求の範囲の詳述以外には限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維の製造用輻射シールドであって、
回転可能なハブに取り付けられた第1プレートと、
回転可能なハブに取り付けられた、少なくとも1つの第2プレートとを含む、
輻射シールド。
【請求項2】
前記第1プレート及び前記少なくとも1つの第2プレートの下方に取り付けられたクイルパンをさらに含む、
請求項1のガラス繊維の製造用輻射シールド。
【請求項3】
前記第1プレートは、ステンレス鋼で形成される、
請求項1のガラス繊維の製造用輻射シールド。
【請求項4】
前記第1プレートは、ニッケル系合金で形成される、
請求項1のガラス繊維の製造用輻射シールド。
【請求項5】
前記第1プレートは、おおよそ、Ni47重量%、Cr22重量%、Fe18重量%、Mo9重量%、W1.5重量%、C0.1重量%、Mn(最大)1重量%、Si(最小)1重量%、及びB(最大)0.008重量%からなるニッケル系合金で作られる、
請求項1のガラス繊維の製造用輻射シールド。
【請求項6】
前記第1プレートは、Ni48重量%、Cr22重量%、Fe18重量%、Mo9重量%からなるニッケル系合金で作られる、
請求項1のガラス繊維の製造用輻射シールド。
【請求項7】
前記第1輻射シールドの下に取り付けられた第2プレートと、第3プレートをさらに含む、
請求項1のガラス繊維の製造用輻射シールド。
【請求項8】
ガラス繊維断熱材製造用のシールド付き紡糸機であって、
ガラス繊維を押し出すように回転される、少なくとも1つの紡糸機と、
回転可能なハブに取り付けられた第1プレートと、回転可能なハブに取り付けられた、少なくとも1つの第2プレートとを含む輻射シールドと、
前記第1プレート及び前記少なくとも1つの第2プレートの下に取り付けられたクイルパンとを含む、
紡糸機。
【請求項9】
前記第1プレートは、ステンレス鋼で形成される、
請求項8のガラス繊維断熱材製造用のシールド付き紡糸機。
【請求項10】
前記第1プレートは、ニッケル系合金で形成される、
請求項8のガラス繊維断熱材製造用のシールド付き紡糸機。
【請求項11】
前記第1プレートは、おおよそ、Ni47重量%、Cr22重量%、Fe18重量%、Mo9重量%、W1.5重量%、C0.1重量%、Mn(最大)1重量%、Si(最小)1重量%、及びB(最大)0.008重量%のBからなるニッケル系合金で作られる、
請求項8のガラス繊維断熱材製造用のシールド付き紡糸機。
【請求項12】
前記第1プレートは、Ni48重量%、Cr22重量%、Fe18重量%、Mo9重量%からなるニッケル系合金で作られる、
請求項8のガラス繊維断熱材製造用のシールド付き紡糸機。
【請求項13】
前記第1輻射シールドの下に取り付けられた第2プレート及び第3プレートをさらに含む、
請求項8のガラス繊維断熱材製造用のシールド付き紡糸機。
【請求項14】
グラスウールの製造用繊維化装置であって、
回転可能なクイルと、
前記クイルに取り付けられ、ベース壁、及び有孔周囲壁を有する紡糸機と、
前記紡糸機のベース壁の下に取り付けられた少なくとも1つのプレートを含む輻射シールドと、
前記プレートの下に取り付けられたクイルパンとを含む、
繊維化装置。
【請求項15】
前記プレートは、前記紡糸機のベース壁に近接した裁頭円錐形である、
請求項14のグラスウールの製造用繊維化装置。
【請求項16】
前記プレートは、高温ニッケル合金で作られる、
請求項14のグラスウールの製造用繊維化装置。
【請求項17】
輻射シールドは、前記紡糸機のベース壁の遠位に、第2プレートをさらに含む、
請求項14のグラスウールの製造用繊維化装置。
【請求項18】
輻射シールドは、前記紡糸機のベース壁の遠位に、第3プレートをさらに含む、
請求項14のグラスウールの製造用繊維化装置。
【請求項19】
プレートは、Ni47重量%、Cr22重量%、Fe18重量%、Mo9重量%、W1.5重量%、C0.1重量%、Mn(最大)1重量%、Si(最小)1重量%、及びB(最大)0.008重量%からなる高温ニッケル合金で形成される、
請求項15のグラスウールの製造用繊維化装置。
【請求項20】
プレートは、Ni47重量%、Cr22重量%、Fe18重量%、Mo9重量%からなる高温ニッケル系合金で形成される、
請求項15のグラスウールの製造用繊維化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−514656(P2010−514656A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544062(P2009−544062)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/026302
【国際公開番号】WO2008/085460
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(507220187)オウェンス コーニング インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニー (14)
【Fターム(参考)】