説明

高圧噴射系地盤改良における排泥回収方法及びその排泥回収装置

【課題】既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良において、既設構造物の使用ができなくなるといった極めて重大な事態を招くのをなくすようにするため、孔より噴出する排泥を周囲に漏れることなく回収する装置を用いた排泥回収方法及びその排泥回収装置を提供する。
【解決手段】高圧噴射系地盤改良施工機械1を用い、既設構造物直下やその周囲の地盤に掘削した孔に管ロッド5を挿入して硬化材を充填し地盤中に円柱状の固結体を造成する地盤改良において、地盤に掘削した孔の上端にチューブ構造シール材14によって密封するように接続する穴部13を底板11に形成した桶状の排泥受槽2を備えると共に、この排泥受槽2を前記施工機械1の下部に配置し、当該施工機械1にて排泥受槽2を上方より押さえ付け、地盤を切削する際、孔より噴出する排泥を周囲に漏れることなく排泥受槽2内に取り込む排泥回収装置を用いた排泥回収方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空港における滑走路や誘導路、自動車の通る道路、あるいは貯油槽施設や港湾施設などの既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良において、地盤を切削する際、孔より噴出する排泥を周囲に漏れることなく排泥受槽内に取り込むようになる排泥回収装置を用いた高圧噴射系地盤改良における排泥回収方法及びその排泥回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空港における滑走路や誘導路などの既設構造物の直下やその周囲の地盤において、この既設構造物直下やその周囲の地盤における液状化現象を防止するための高圧噴射系地盤改良の一例であるクロスジェット式高圧噴射系地盤改良としては、高圧噴射系地盤改良施工機械40を用いて、図8に示すように、ケーシングパイプにて掘削した孔に三重管構造の管ロッド41を挿入し、挿入後、この管ロッド41を回転させつつ管ロッド41を徐々に上方に引き抜きながらその先端の上下二段となる箇所から高圧ジェット水wjを交差するように噴射して、この交差する2本の高圧ジェット水wjにより地盤を破壊するように切削して行く。また、この交差する2本の高圧ジェット水wjにあっては交差すなわち衝突した後はその地盤破壊エネルギーが急激に減少することにより地盤の切削がなくなり、これによって所望の大きさでの切削が行われる。そして、この高圧ジェット水wjによって切削された場所に、管ロッド41の先端からセメントミルクなどの硬化材sを噴射して、ここに硬化材sを充填することにより地盤中に円柱状の固結体Kを造成する。このように地盤中に所望の大きさの円柱状の固結体Kを造成して、地盤を強固なものにすることで、既設構造物直下やその周囲の地盤における液状化現象を防止するようにしたものが知られていた。
【0003】
また、このようなクロスジェット式高圧噴射系地盤改良としては、特開平8−41859号公報にも同様のものが示されており、これも、地盤中に挿入した管ロッドから交差する2本の高圧ジェット水をwj噴射して地盤を切削して行き、そこにセメントミルクなどの硬化材sを噴射して充填し、地盤中に円柱状の固結体Kを造成するものである。
【0004】
そして、これらのクロスジェット式高圧噴射系地盤改良にあっては、交差する2本の高圧ジェット水wjを噴射して地盤を切削して行くが、地盤を切削する際、切削した地盤がスラリー状の排泥mとなって孔より噴出していた。そこで、この噴出するスラリー状の排泥mが周囲に飛散しないようにするため、排泥回収管路42を備えていた。
【0005】
この排泥回収管路42としては、図9に示すように、高圧噴射系地盤改良施工機械40の下方において、孔に装着される縦向きのスタンドパイプ43とその上部に接続するL字型パイプ44とこのL字型パイプ44に接続する横向きのドレーンパイプ45とからなり、ドレーンパイプ45は長く延びて遠方にてタンクに接続している。また、このドレーンパイプ45内に圧縮空気を噴射させることによって、噴出する排泥をスタンドパイプ43、L字型パイプ44、ドレーンパイプ45内に沿って流してタンクまで運ぶようにしている。なお、タンクに溜まった排泥は排泥回収車にて運び出すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−41859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる従来の既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良において、地盤を切削する際、孔より噴出した排泥が排泥回収管路へと流れ込むようになっていたが、この排泥にあっては、軟らかい土質から硬い土質というように異なる土質が積層された地盤の場合、排泥の噴出量が土質により全く異なってしまい、大量の排泥がいきなり噴出することがあった。また、地盤中に埋められていたゴミや木屑などが混ざることも多々あった。このように大量の排泥の噴出や排泥内へのゴミや木屑などの混入により、排泥回収管路が詰まって、排泥回収管路における排泥の排出ができなくなるといったことが起こるおそれがあった。
【0008】
そして、このように排泥回収管路において詰まりが生じると、孔より排泥が噴出しなくなり、孔内が密閉された状態になることで、管ロッドから高圧ジェット水を正常に噴射することができなくなり、延いては高圧ジェット水における地盤の切削ができなくなるという問題が発生する。また、排泥回収管路の詰まりによって、孔の上端では排泥が漏れ出して周囲に飛散することもあり、排泥が漏れ出すことで、特に、空港における滑走路や誘導路などの既設構造物の場合、少しの排泥の漏れ出しでも、滑走路や誘導路などが汚れて、この汚れをなかなか除去することができず、空港における飛行機の発着に支障を来すという問題が生じることもあった。
【0009】
さらに、排泥回収管路がいったん詰まってしまうと、排泥回収管路におけるスタンドパイプやドレーンパイプなどの各部品すべてを分解してこれらを洗浄及び修復する作業が必要となり、容易に排泥回収管路において生じた詰まりを解消することができない。このため、空港における滑走路や誘導路などの既設構造物直下の地盤改良では、飛行機の発着に支障が来さないように、日中の飛行機の発着時間帯を避けて、深夜から早朝にかけての決められた時間内で作業を完了させることが絶対条件であったが、これができなくなり、空港における飛行機の発着を止めてしまうといった極めて重大な事態を招くおそれがあった。
【0010】
本発明は、かかる従来の問題に鑑み、既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良において、決められた時間内での地盤改良を問題なく行えるようにして、既設構造物の使用に支障を来すのをなくし、さらには既設構造物の使用ができなくなるといった極めて重大な事態を招くのをなくすようにするため、孔より噴出する排泥を周囲に漏れることなく排泥受槽内に取り込むようになる排泥回収装置を用いた高圧噴射系地盤改良における排泥回収方法及びその排泥回収装置を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の発明は、高圧噴射系地盤改良施工機械を用いて、既設構造物直下やその周囲の地盤に掘削した孔に管ロッドを挿入し、この管ロッドから高圧ジェット水を噴射して、この高圧ジェット水により地盤を切削して行くと共に、この高圧ジェット水によって切削された場所に管ロッドの先端から硬化材を噴射して、ここに硬化材を充填することにより地盤中に円柱状の固結体を造成して、既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良において、地盤に掘削した孔の上端にチューブ構造シール材によって密封するように接続する穴部を底板に形成した桶状の排泥受槽を備えると共に、この排泥受槽を高圧噴射系地盤改良施工機械の下部に配置して、高圧噴射系地盤改良施工機械にて排泥受槽を上方より押さえ付けるようにして、地盤を切削する際、孔より噴出する排泥を周囲に漏れることなく排泥受槽内に取り込むようになる排泥回収装置を用いた高圧噴射系地盤改良における排泥回収方法である。
【0012】
第二の発明は、前述の第一の発明に記載した排泥回収装置にあっては、前記排泥受槽の上部に管ロッドが挿入可能な穴部を形成した蓋体を設けると共に、この蓋体の穴部において管ロッドとの間に隙間が生じないようにするためのロッド用特殊蓋を装着して、孔より噴出する排泥が蓋体及びロッド用特殊蓋によって周囲に飛散しないようにした高圧噴射系地盤改良における排泥回収装置である。
【0013】
第三の発明は、第二の発明において、前記ロッド用特殊蓋は、蓋体の下方に配置する柔軟性のあるプレートと、蓋体の上方に配置する複数枚の柔軟性のあるプレート及び鋼製押え蓋とを合わせた多層構造にすると共に、蓋体の上方に配置する複数枚のプレートにあっては、その中央に形成した管ロッドを挿入するための穴部から放射状に多数の切り込みを入れて、この放射状に入れる多数の切り込みが複数枚のプレートにおいて切り込み位置が重ならないようにした高圧噴射系地盤改良における排泥回収装置である。
【発明の効果】
【0014】
第一の発明によれば、地盤に掘削した孔の上に排泥回収装置の排泥受槽を備えて、この排泥受槽内に孔より噴出する排泥を取り込むようにしたことで、大量の排泥の噴出や排泥内へのゴミや木屑などの混入があっても、詰まるといったトラブルが一切なく、常に良好に排泥の排出を行うことができ、しかも、孔より噴出する排泥を排泥受槽によって簡単に観察することができ、その時の作業状況を容易に把握することができる。これらにより、既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良を極めて良好に行うことができる。
【0015】
これは、地盤に掘削した孔より排泥の排出を良好に行えることから、孔内が密閉された状態になることがなく、管ロッドからの高圧ジェット水の噴射も正常に行うことができ、高圧ジェット水における地盤の切削を常に良好に行うことができる。また、チューブ構造シール材によって排泥受槽の底板と地盤表面とを隙間なく密着させることができ、ここから排泥が漏れ出すこともなく、その周囲が汚れるのを防止することができ、特に、空港における滑走路や誘導路などの既設構造物にあっては、少しの排泥が漏れ出しただけでも大問題となるが、このチューブ構造シール材により、少しの排泥の漏れ出しもなくすことで、空港における飛行機の発着に支障を来すといったこともなくすことができる。
【0016】
また、孔より噴出する排泥の排出において、詰まるといったトラブルをなくすことで、たとえば、空港における滑走路や誘導路などの既設構造物直下やその周囲の高圧噴射系地盤改良にあっては、トラブルを極力なくすことにより、深夜から早朝にかけての決められた時間内で作業を確実に完了させることができ、空港における飛行機の発着を止めてしまうといった極めて重大な事態を招くのをなくすことができる。
【0017】
さらに、高圧噴射系地盤改良施工機械にて排泥回収装置の排泥受槽を上方より押さえ付けるようにしたことで、孔より排泥が勢いよく噴出しても、排泥受槽が一切動くことがなく常に安定した状態で地盤表面に設置されることから、排泥受槽の下側での排泥の漏れ出しといったトラブルをなくすことができる。
【0018】
また、第二の発明によれば、排泥回収装置にあって、排泥受槽の上部に蓋体を設けると共に、この蓋体にロッド用特殊蓋を装着して、孔より噴出する排泥が蓋体及びロッド用特殊蓋によって周囲に飛散しないようにしたことで、排泥受槽の上側での排泥の漏れ出しといったトラブルもなくすことができる。
【0019】
また、第三の発明によれば、ロッド用特殊蓋を複数枚の柔軟性のあるプレートを含む多層構造にすると共に、その複数枚の柔軟性のあるプレートにおいて、多数の切り込みを入れることにより、管ロッドとの隙間をなくして排泥の漏れ出しを防ぎつつ、挿入した管ロッドの回転を邪魔しないようにすることができ、作業を極めて良好に行うことができる。
【0020】
しかも、ロッド用特殊蓋における複数枚のプレートにおいて放射状に入れる多数の切り込み位置が重ならないようにしたことにより、ここからの排泥の漏れ出しを完全に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の高圧噴射系地盤改良における排泥回収装置と高圧噴射系地盤改良施工機械を説明する正面図である。
【図2】本発明の高圧噴射系地盤改良における排泥回収装置と高圧噴射系地盤改良施工機械を説明する側面図である。
【図3】図1におけるA部の詳細図である。
【図4】本発明の高圧噴射系地盤改良における排泥回収装置の排泥受槽を説明する側面図である。
【図5】本発明の高圧噴射系地盤改良における排泥回収装置の排泥受槽を説明する平面図である。
【図6】本発明の高圧噴射系地盤改良における排泥回収装置の排泥受槽の仕切り板を説明する正面図である。
【図7】本発明の高圧噴射系地盤改良における排泥回収装置の排泥受槽のロッド用特殊蓋を説明する分解斜視図である。
【図8】従来のクロスジェット式高圧噴射系地盤改良を説明する概略図である。
【図9】従来の高圧噴射系地盤改良施工機械及び排泥回収管路を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明による高圧噴射系地盤改良における排泥回収方法及びその排泥回収装置の一実施形態について説明する。
既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良に用いる高圧噴射系地盤改良施工機械1及び排泥回収装置の排泥受槽について述べると、図1乃至図3に示すように、高圧噴射系地盤改良施工機械1にあっては、機械本体3と架台4とから構成し、この機械本体3は各種の動力源を備えていると共に、回転装置や推進装置なども備えており、機械本体3によってケーシングパイプや三重管構造の管ロッド5を地盤に挿入するようにしている。
【0023】
また、架台4は機械本体3の下部に備えて、上部に機械本体3を載置するものであり、4本乃至複数本の脚体6と板体状の台座7とからなっている。
【0024】
そして、排泥回収装置の排泥受槽にあっては、図1乃至図3と共に図4乃至図6に示すように、高圧噴射系地盤改良施工機械1における架台4の台座7の下部に備えるもので、この排泥受槽2は底板11と周囲の側板12とから長方形の桶状としたものであって、底板12には穴部13を形成している。また、この底板12に形成した穴部13にはケーシングパイプや管ロッド5が挿入可能となると共に、地盤に掘削した孔の上端の周囲にリング状のチューブ構造シール材14を介して密封状態にて接続する。
【0025】
このチューブ構造シール材14は、ゴム材よりなる中空状の円筒管であって、内部に空気を充填することにより、地盤表面における数mmの凹凸から数cmの凹凸まで幅広い範囲の凹凸に対応することができ、これにより、排泥受槽2の底板12と地盤表面とを隙間なく密着させることにより、ここでの排泥の漏れ出しを確実に防ぐようにしている。特に、空港における滑走路や誘導路などにあっては、その地盤表面に数cmの凹凸が多数存在するものの、このチューブ構造シール材14によって、排泥受槽2の底板12と地盤表面とを確実に密着させることができ、排泥の漏れ出しをなくすことができる。
【0026】
また、この排泥受槽2にはその略中間に仕切り板15を設けて、集泥室16と貯蔵室17とに区別している。なお、仕切り板15の上部には流入口18を形成して、集泥室16から貯蔵室17へと流入口18を介して孔より噴出した排泥が流れ込むようになっている。
【0027】
そして、この排泥受槽2の上部には蓋体21を備えており、この蓋体21は二枚一組で、この二枚の蓋体21によって排泥受槽2における集泥室16の上部を塞ぐようにして、これにより、孔より噴出する排泥が周囲に飛散しないようにしている。また、この二枚のうちの一枚の蓋体21には管ロッド5などが挿入可能な穴部22を形成しており、この穴部22にはロッド用特殊蓋23を装着している。
【0028】
このロッド用特殊蓋23は、図7に示すように、排泥受槽2の上部に備える蓋体21の下方に配置するゴム材よりなる柔軟性のあるプレート31と、蓋体21の上方に配置する二枚のゴム材よりなる柔軟性のあるプレート32,33、その上方に配置する鋼製押え蓋34とを合わせた多層構造にしている。また、蓋体21の上方に配置する二枚のプレート32,33及び鋼製押え蓋34についてはボルトにて蓋体21に固定している。そして、蓋体21の上方に配置する二枚のプレート32,33にあっては、その中央に管ロッド5を挿入するための穴部32a,33aを形成しつつ、この穴部32a,33aから放射状に等間隔となる8本の切り込み32b,33bを入れて、この放射状に入れた多数の切り込み32b,33bが二枚のプレート32,33において切り込み位置が重ならないように、具体的には、プレート32の切り込み32bとプレート33の切り込み32bとが、互いの切り込み32b,33bの間に位置するようにしている。また、鋼製押え蓋34にあっては、その中央に大きな穴部35aを形成した蓋本体35と、この蓋本体35に設けたガイド板35bに沿って横に移動する一対のスライド蓋36とからなり、スライド蓋36の先端には半円状の凹部36aを形成している。そして、所望時、蓋本体35に一対のスライド蓋36を横より挿入して取付けることにより、その下方に位置する二枚のプレート32,33を上方より強固に支持するようにしている。なお、二枚のプレート32,33に入れる切り込み32b,33bについては、8本に限定させるものではなく、6本、あるいは10本や12本などの複数本にしても良い。また、蓋体21の上方に配置するプレート32,33についても、二枚に限定されるものではなく、二枚以上の複数枚にしても良い。
【0029】
このような構造となるロッド用特殊蓋23にあっては、そこに挿入する管ロッド5と最適な状態での密着が可能となっている。これは、ロッド用特殊蓋23における二枚の柔軟性のあるプレート32,33に多数の切り込み32a,33aを入れることにより、挿入した管ロッド5の回転が邪魔されることなくスムーズな回転を可能にすると共に、管ロッド5との隙間をなくして、ここからの排泥の漏れ出しを防ぐこともできる。しかも、二枚の柔軟性のあるプレート32,33において放射状に入れる多数の切り込み32b,33bの切り込み位置が重ならないようにしたことにより、排泥の漏れ出しを完全に防ぐことができ、特に、地盤の孔から噴出する排泥はエアリフト作用により管ロッド5の外周に沿って勢いよく噴出するようになるが、この噴出する排泥を二枚の柔軟性のあるプレート32,33を含むロッド用特殊蓋23によって確実に抑え込むことができ、排泥の漏れ出しをなくすことができる。
【0030】
このような排泥回収装置の排泥受槽2にあっては、その上部に備えた蓋体21の縁を押し付け用鋼材24を介して高圧噴射系地盤改良施工機械1の架台4における台座7によって上方より押さえ付けられ、要するに、高圧噴射系地盤改良施工機械1にて排泥受槽2を上方より押さえ付けるようにしており、これにより、排泥受槽2を地盤表面に一切動くことのない固定状態で設置することができる。しかも、排泥受槽2を高圧噴射系地盤改良施工機械1にて上方より押さえ付けることで、排泥受槽2の底板11と地盤における孔の周囲との間に介在させたリング状のチューブ構造シール材14が地盤表面における凹凸に対応し変形して排泥受槽2の底板11と地盤表面とを密着させることができ、これにより、排泥受槽2の底板11に形成した穴部13と地盤に掘削した孔の上端とを密封状態にて接続することにより、噴出する排泥がここから漏れ出すのをなくすことができる。
【0031】
次に、既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良及び高圧噴射系地盤改良における排泥回収方法について述べる。まず、高圧噴射系地盤改良にあっては、クロスジェット式高圧噴射系地盤改良であるが、これに限定されるものではなく、ジェットグラウト式高圧噴射系地盤改良などの他の高圧噴射系地盤改良でも良い。また、既設構造物としては空港における滑走路や誘導路であり、その具体的な施工場所としては滑走路や誘導路に存在するマンホールであるが、これらの場所に限定されるものではない。
【0032】
施工場所の空港における滑走路や誘導路の地盤表面に高圧噴射系地盤改良施工機械1と排泥回収装置の排泥受槽2とを設置する。これは、まず、マンホールの孔に合わせて排泥受槽2を地盤表面に据え置く。このとき、マンホールの孔と排泥受槽2の底板11に形成した穴部13との位置を合わせ、そして、この排泥受槽2の穴部13はマンホールの孔の上端に、リング状のチューブ構造シール材14によって密封状態にて接続させる。なお、このようにリング状のチューブ構造シール材14によって密封状態にて接続させることで、ここから排泥が漏れ出すのを防止する。
【0033】
そして、マンホールの底に穴を開けて、ここに円筒状のスタンドパイプ25を埋め込む。
【0034】
一方、マンホールの孔の上部には高圧噴射系地盤改良施工機械1の機械本体2を据え付ける。これは、まず、高圧噴射系地盤改良施工機械1の架台4を据え付けるが、このとき、高圧噴射系地盤改良施工機械1の架台4における台座7が下部に位置する排泥回収装置の排泥受槽2の蓋体21を押し付け用鋼材24を介して上方より押さえ付ける。そして、据え付けた架台4における台座7の上に機械本体3を据え付ける。
【0035】
このようにして、機械本体3と架台4からなる高圧噴射系地盤改良施工機械1と排泥回収装置の排泥受槽2とを施工場所の空港における滑走路や誘導路の地盤表面に設置する。
【0036】
地盤表面に高圧噴射系地盤改良施工機械1及び排泥回収装置の排泥受槽2を設置した後、高圧噴射系地盤改良施工機械1における機械本体3にケーシングパイプを取り付けて、このケーシングパイプによって地盤に所定の深さの孔をせん孔する。
【0037】
そして、地盤中に挿入されているケーシングパイプ内に三重管構造の管ロッド5を所定深度まで挿入して、挿入した後、ケーシングパイプを引き抜く。次に、排泥受槽2の上部に管ロッド5を貫通させたロッド用特殊蓋23を取り付けて、排泥受槽2の上部を蓋体21及びロッド用特殊蓋23により塞ぐ。
【0038】
そして、高圧噴射系地盤改良施工機械1の機械本体3によって管ロッド5を回転させつつ管ロッド5を徐々に上方に引き抜きながら交差する2本の高圧ジェット水を噴射して、この交差する2本の高圧ジェット水により地盤を破壊するように切削して行くことで、所望の大きさでの切削を行う。なお、この地盤の切削を行う高圧ジェット水は約400kg/cmという非常に高い圧である。
【0039】
また、この高圧ジェット水による地盤の切削と同時に、管ロッド5の先端からセメントミルクなどの硬化材を噴射して、切削された場所に硬化材を充填することにより地盤中に円柱状の固結体を造成する。
【0040】
このとき、切削した地盤がスラリー状の排泥となって孔より噴出するようになるが、この噴出する排泥は空港における滑走路や誘導路の地盤表面に設置した排泥回収装置の排泥受槽2内に取り込むようになっており、排泥受槽2と蓋体21及びロッド用特殊蓋23によって、孔より噴出した排泥が周囲に飛散しないようにしている。このように、孔より噴出する排泥を周囲に漏れることなく排泥回収装置の排泥受槽内に取り込むことで、排泥を回収するようにしている。
【0041】
また、排泥受槽2内に取り込んだ排泥はバキュームホースにてタンクまで運ぶようにして、タンクに溜まった排泥を排泥回収車にて運び出すようにする。なお、排泥受槽2内の排泥を排泥回収車にて直接運び出すようにしても良い。
【0042】
そして、管ロッド5を引き抜いた後、先端の噴射用ノズルを交換して、再度、管ロッド5を挿入し、この管ロッド5の先端から硬化を促進する短期硬化作用を有する特殊剤を噴射して、地盤中に造成した固結体を短時間で硬化させるようにする。
【0043】
そして、管ロッド5を引き抜いた後、高圧噴射系地盤改良施工機械1の機械本体3と架台4をそれぞれ撤去し、排泥受槽2も撤去する。その後、掘削した孔の上部を埋めて、一連の作業が完了する。
【0044】
このようにして、地盤中に所望の大きさの円柱状の固結体を造成して、地盤を強固なものにすることで、既設構造物直下やその周囲の地盤における液状化現象を防止するための高圧噴射系地盤改良を行って、地盤の液状化を防止して既設構造物に大きな損傷を及ぼすという問題をなくすようにする。
【0045】
なお、これら一連の地盤改良は、およそ2時間にて行うことができ、しかも、地盤中に造成した固結体も短時間で硬化させることができることで、およそ3,4時間にて空港における滑走路や誘導路である既設構造物を利用することが可能となる。これにより、空港における滑走路や誘導路などの既設構造物直下やその周囲の地盤改良では、深夜から早朝にかけての決められた時間内で作業を確実に完了させることができ、空港における飛行機の発着を止めてしまうといった極めて重大な事態を招くのをなくすことができる。
【0046】
また、孔より噴出する排泥の量については、排泥受槽2において計測することができる。これは、排泥受槽2に仕切り板15を設けることで、排泥受槽2において集泥室16と貯蔵室17とに区別して、空となった貯蔵室17内に集泥室16から仕切り板15の上部の流入口18を介して流れ込む排泥の量を計測、具体的には貯蔵室16内において所定量まで達する時間を計測することで、噴出する排泥の量を計測することができるものである。このように孔より噴出する排泥の量を計測したり、あるいは排泥に混入するゴミや木屑などの状況を観察することにより、地盤の状態を含む作業状況を容易に把握できるようにして、作業状況に応じて常に最適な状態での地盤改良を行うようにしている。
【符号の説明】
【0047】
1…高圧噴射系地盤改良施工機械、2…排泥受槽、3…機械本体、4…架台、5…管ロッド、6…脚体、7…台座、11…底板、12…側板、13…穴部、14…チューブ構造シール材、15…仕切り板、16…集泥室、17…貯蔵室、18…流入口、21…蓋体、22…穴部、23…ロッド用特殊蓋、24…押し付け用鋼材、25…スタンドパイプ、31…プレート、32…プレート、32a…穴部、32b…切り込み、33…プレート、33a…穴部、33b…切り込み、34…鋼製押え蓋、35…蓋本体、35a…穴部、35b…ガイド板、36…スライド蓋、36a…凹部、40…施工機械、41…管ロッド、42…排泥回収管路、43…スタンドパイプ、44…L字型パイプ、45…ドレーンパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧噴射系地盤改良施工機械を用いて、既設構造物直下やその周囲の地盤に掘削した孔に管ロッドを挿入し、この管ロッドから高圧ジェット水を噴射して、この高圧ジェット水により地盤を切削して行くと共に、この高圧ジェット水によって切削された場所に管ロッドの先端から硬化材を噴射して、ここに硬化材を充填することにより地盤中に円柱状の固結体を造成して、既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良において、
地盤に掘削した孔の上端にチューブ構造シール材によって密封するように接続する穴部を底板に形成した桶状の排泥受槽を備えると共に、この排泥受槽を高圧噴射系地盤改良施工機械の下部に配置して、高圧噴射系地盤改良施工機械にて排泥受槽を上方より押さえ付けるようにして、地盤を切削する際、孔より噴出する排泥を周囲に漏れることなく排泥受槽内に取り込むようになる排泥回収装置を用いたことを特徴とする高圧噴射系地盤改良における排泥回収方法。
【請求項2】
前述の請求項1に記載した排泥回収装置にあっては、前記排泥受槽の上部に管ロッドが挿入可能な穴部を形成した蓋体を設けると共に、この蓋体の穴部において管ロッドとの間に隙間が生じないようにするためのロッド用特殊蓋を装着して、孔より噴出する排泥が蓋体及びロッド用特殊蓋によって周囲に飛散しないようにしたことを特徴とする高圧噴射系地盤改良における排泥回収装置。
【請求項3】
前記ロッド用特殊蓋は、蓋体の下方に配置する柔軟性のあるプレートと、蓋体の上方に配置する複数枚の柔軟性のあるプレート及び鋼製押え蓋とを合わせた多層構造にすると共に、蓋体の上方に配置する複数枚のプレートにあっては、その中央に形成した管ロッドを挿入するための穴部から放射状に多数の切り込みを入れて、この放射状に入れる多数の切り込みが複数枚のプレートにおいて切り込み位置が重ならないようにしたことを特徴とする請求項2記載の高圧噴射系地盤改良における排泥回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−229729(P2010−229729A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78863(P2009−78863)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【特許番号】特許第4411643号(P4411643)
【特許公報発行日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【出願人】(306034664)三和地下工事株式会社 (4)
【出願人】(509088310)株式会社大喜工業 (1)
【Fターム(参考)】