説明

高圧放電ランプ

【課題】発光部と封止部とからなる発光管を有し、前記封止部から外部に導出された外部リードと、前記発光部の外表面に沿って配設されたトリガーワイヤーとを備え、前記外部リードが給電線に接続されてなる高圧放電ランプにおいて、トリガーワイヤーの外部リードに対する電気的接続が安定的に維持されて長寿命化を実現でき、かつ、ランプの全長を長くすることない構造を提供することである。
【解決手段】前記トリガーワイヤーと前記給電線が一体的に形成されていて、該トリガーワイヤーと一体形成された給電線が前記外部リードに接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プロジェクター装置用などの高圧放電ランプに関するものであり、特に、トリガーワイヤーを備えた高圧放電ランプに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター装置用の光源として用いられているショートアーク型の高圧放電ランプにおいては、発光管の発光部の外表面に沿ってトリガーワイヤーを設けて始動を補助することが一般的に行われている。例えば、特開2005−032521号公報(特許文献1)にその構造が示されている。
図6にこの公知技術の構造が示されている。
放電ランプ10は、略球形の発光部13の両端に封止部14a、14bが連続して形成された発光管12を備え、前記発光部13の内部には一対の電極15a、15bが対向配置されて構成される。前記発光管12は石英ガラスからなり、発光部13の内部には、発光物質として水銀などが封入されている。
そして、前記発光部13の外表面に沿ってトリガーワイヤー16が設けられていて、その一方の端部16aは、一次側電極(陰極側電極)15aから導出された外部リード17に数回巻回して捻じり止められることにより固定されている。そして、この一次側電極(陰極側電極)15aの封止部14aに沿って延設されたのち、発光部13に沿って張設され、他方の端部16bが発光管12の二次側電極(陽極側電極)15bの封止部14bの外周に巻回されて取り付けられている。
かかるトリガーワイヤー構造によって、ランプの始動時に、不図示の外部回路に具備されたイグナイタから例えば10kV程度の高電圧を付加すると、給電線18及び外部リード17を介して電圧がトリガーワイヤー16に印加され、トリガ保持部と二次側電極(陽極側電極)15bとの間で、火種となる電離が生起され、この電離を起点に、二次側電極(陽極側電極)15bと一次側電極(陰極側電極)15aとの間で絶縁破壊が起こる。このように、電離が生じることで、ランプ始動時の絶縁破壊電圧を大幅に下げることができ、放電ランプを容易かつ確実に始動させることができるという効果が期待されている。
【0003】
一方、外部リードには給電線が接続されて通電されるが、その接続構造として、金属スリーブを用いることがよく行われている。特開2004−095494号公報(特許文献2)がその一例である。
図6にはその構造も併せて示されていて、当該公報においては、給電線18に金属スリーブ19が被嵌されてかしめられ、この金属スリーブ19を外部リード17に溶接することによって給電線18と外部リード17を金属スリーブ19を介して接続するものである。
【0004】
ところで、このような高圧放電ランプにおいても、その長寿命化の要求は例外ではなく、例えば、これまでは2時間点灯を1000回(総点灯時間2000時間)という要求であったものが、近時はその倍の2000回(総点灯時間4000時間)を実現することが要求されている。
この要求を実現すべくランプの点灯回数(点灯時間)を増やしていくと、トリガーワイヤーが緩んだり外れたりして、所期の始動性が得られなくなるといった問題が生じることが判明した。
その理由は、発光管の温度が1000℃以上の高温となり、封止部及び外部リードの周囲も数百度以上の高温となるために、点灯、消灯を繰り返すことでワイヤー自体に熱膨張収縮が繰り返され、ワイヤーの柔軟性が低下し、塑性変形が生じて、外部リードに捻じり固定した部分において接触不良が生じるからである。
この結果、トリガーワイヤーと外部リードとの確実な電気的接続が得られなくなり、イグナイタからの高電圧がトリガーワイヤーに印加されなくなって始動性が低下するという不具合が発生する。
また、外部リードにトリガーワイヤーが巻きつけ固定されるとともに、更に、給電線が金属スリーブを介して溶接される構造であるので、トリガーワイヤーの軸方向長さが大きくなり、ランプ全体が長尺化してしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−032521号公報
【特許文献2】特開2004−095494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、発光管内に対向配置された電極の一方に電気的に接続され、発光部の外表面に沿って配設されたトリガーワイヤーを備えるとともに、前記一方の電極からの外部リードが給電線に接続されてなる高圧放電ランプにおいて、トリガーワイヤーの外部リードに対する電気的接続が安定的に維持されて長寿命化を実現でき、かつ、ランプの全長を長くすることない構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明に係る高圧放電ランプは、前記トリガーワイヤーと前記給電線が一体的に形成されていて、該トリガーワイヤーと一体形成された給電線が前記外部リードに接続されていることを特徴とする。
また、前記給電線は、該給電線に被嵌された金属スリーブを介して前記外部リードに溶接接続されていることを特徴とする。
また、前記トリガーワイヤーは、前記外部リードに接続された側の封止部から前記発光部の外表面に沿って延在して、他方の封止部の周囲に巻回されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トリガーワイヤーと給電線を一体構造として、これを外部リードに固定したので、熱負荷の繰り返しがあってもトリガーワイヤーが緩んで接触不良を起こしたり、外部リードから外れたりすることがなく、長時間にわたって安定した電気的接続が維持されて、始動補助機能が損なわれることがない。
しかも、トリガーワイヤーと一体の給電線が一個所で外部リードに固定されるのみであるので、外部リードの長さも短くて済んでランプの長尺化が避けられるとともに、その固定作業が簡略化される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る高圧放電ランプの全体図。
【図2】本発明のトリガーワイヤーと外部リードの取り付け部の斜視図。
【図3】図2の横断面。
【図4】取り付け部の他の実施形態の部分断面図。
【図5】他の実施例。
【図6】従来の高圧放電ランプの全体図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の高圧放電ランプ1の全体図であって、該高圧放電ランプ1は発光管2を有し、この発光管2は発光部3とその両端の封止部4a、4bとからなり、該発光部3内には一対の電極5a、5bが対向配置されている。
前記発光部3の外表面に沿ってトリガーワイヤー6が張設されている。該トリガーワイヤー6はその一端6a側で給電線8と一体構造をなし、該給電線8は金属スリーブ9を介して外部リード7に接続されている。そして、該トリガーワイヤー6は外部リード7から封止部4aに沿うように延在し、更に発光部3の外表面に沿って配設されて、その他端6bは反対側の封止部4bに巻回されている。
このトリガーワイヤー6兼給電線8は、金属線材よりなり、耐熱性を有すると共に適度な保形性を備えるものからなる。材質は、例えば鉄−クロム系合金であり、具体例をあげるとFCHW1である。
【0011】
図2および図3に、外部リード7と給電線8(トリガーワイヤー6)の取り付け構造の詳細が示されていて、トリガーワイヤー6と一体の給電線8には金属スリーブ9が被嵌されていて該給電線8に仮固定される。そして、該金属スリーブ9の中央部が外部リード7に対応するように、前記給電線6と外部リード7とが略直交するように配置される。
そしてこの状態で、図3に示すように、前記金属スリーブ9と外部リード7の両側から溶接治具が押し付けられて溶接される。このとき、前記金属スリーブ9は若干つぶれるように変形して、外部リード7および給電線8に対してそれぞれ線状に当接される。
金属スリーブ9の材質としては、好ましくはニッケルであり、その他、銅を主体としたニッケル合金(白銅など)、マンガンニッケル合金等である。該金属スリーブ9は、その構成上、ランプの光や電気抵抗による発熱で高温になり易く、耐熱性に優れた材質から選択される。
【0012】
なお、金属スリーブ9は円(長円)筒状のものを示したが、図4に示すように、一枚の金属板を給電線8に巻き付けて構成してもよい。
また、給電線8(トリガーワイヤー6)は外部リード7に略直交する配置のものを示したが、斜めに交わるように配置してもよい。
【0013】
図5にはトリガーワイヤー6の変形例が示されていて、該トリガーワイヤー6の一端6aが外部リード7に接続され、当該接続部側の封止部4aの外周部に一旦巻回させた巻回部6cを備えており、該巻回部6cの先から、発光部3、他方の封止部4bへと延在し、他端部6bがこの他方の封止部4bにおいて再び巻回されている。
このように、トリガーワイヤー6を、給電線8に近い側の一方の封止部4aの周囲に巻回した構成とすることで、発光管2を構成する石英ガラスに含まれる陽イオン(金属イオン)を、トリガーワイヤー側(発光管の外表面側)に誘引することができる。従って、電極5aの周囲にこれらの陽イオン(金属イオン)が堆積することが抑制され、この結果、電極周囲の石英ガラスの変質を防止でき、耐圧強度が低下することを回避できて、高い耐圧性を維持することができるようになる。
【0014】
図1で示した形態の高圧放電ランプの具体的な一数値例を示す。
一次側電極の最大径、全長 1.4mm、7.6mm
二次側電極の最大径、全長 1.4mm、7.6mm
電極間距離 1.0mm
金属箔の幅、全長 1.5mm、14mm
発光部の最大外径、全長 10mm、9mm
封止部の最大外径、全長 6mm、17mm
封入水銀密度 0.25mg/mm
定格点灯電圧 80V
定格点灯電力 230W
希ガス アルゴン(封入圧13.3KPa(静圧))
金属スリーブ外径、内径、全長 0.6mm、0.5mm、3mm
金属スリーブ材質 ニッケル(Ni)
トリガーワイヤー兼給電線の線径 0.3mm
トリガーワイヤー兼給電線の材質 鉄とクロムの合金(FCHW1)
トリガーワイヤーの全長 60mm
【0015】
本発明の効果を実証するために、比較例として、図6に示す従来構造のランプを作製して実験した。なお、この比較例は、トリガーワイヤーと給電線を別々に外部リードに固定する構造以外は、本発明ランプと同様の仕様としてある。
本発明ランプを10本、比較例ランプを10本、それぞれ作製してリフレクタに組み込み、2時間点灯して15分消灯するという点灯モードを繰り返すという、点灯実験を行い、トリガーワイヤーと外部リードの接触起因による故障、即ち、不点灯の発生の有無を確認した。
その結果が以下の表である。
<表1>


上記のように、本発明ランプでは、総点灯時間4000h以上(点滅回数2000回以上)でもトリガーワイヤーと外部リードとの接続部に問題はなく、ランプが点灯しなくなるという事態が発生しなかった。
これに対して、従来技術に基づく比較例ランプでは、総点灯時間2500h程度(点滅回数1200回)となった時点で、トリガーワイヤーが変形し、外部リードに巻きつけた部分が緩み、電気的に接触不良を起こした結果、ランプが点灯しなくなったものが発生した。
【0016】
以上のように、本発明の高圧放電ランプでは、トリガーワイヤーと給電線とが一体的に形成されていて、該トリガーワイヤーと一体形成された給電線が外部リードに接続されるようにしたことにより、トリガーワイヤーと外部リードとの接続構造が時間経過で緩んだり、外れたりすることが防止され、その電気的接続が安定的に維持されて長寿命化を実現できる。
また、金属スリーブを介在させて接続するので、給電線(トリガーワイヤー)と外部リードとの溶接接続が強固なものとなる。
その上、給電線およびトリガーワイヤーの外部リードへの接続が1個所で済むので、ランプの長尺化を防げ、かつ、その接続作業も1回で済み簡略化されるという利点もある。
【符号の説明】
【0017】
1 高圧放電ランプ
2 発光管
3 発光部
4a、4b 封止部
5a、5b 電極
6 トリガーワイヤー
7 外部リード
8 給電線
9 金属スリーブ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に一対の電極が対向配置された発光部と、該発光部の両端の封止部とからなる発光管を有し、前記電極に電気的に接続されて前記封止部から外部に導出された外部リードと、前記電極の一方に電気的に接続されて前記発光部の外表面に沿って配設されたトリガーワイヤーとを備え、前記外部リードが給電線に接続されてなる高圧放電ランプにおいて、
前記トリガーワイヤーと前記給電線が一体的に形成されていて、該トリガーワイヤーと一体形成された給電線が前記外部リードに接続されていることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
前記給電線は、該給電線に被嵌された金属スリーブを介して前記外部リードに溶接接続されていることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
前記トリガーワイヤーは、前記外部リードに接続された側の封止部から前記発光部の外表面に沿って延在して、他方の封止部の周囲に巻回されていることを特徴とする請求項1または2に記載の高圧放電ランプ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−8537(P2013−8537A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140050(P2011−140050)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】