説明

高圧放電灯、画像投影装置

【課題】 点灯スペクトル測定を行い、タングステン量の上限を規定して早期黒化の発生を防止しつつ、長寿命の高圧放電灯の実現を図る。
【解決手段】 石英ガラス製のバルブ11内に一対の対向するタングステン電極131,132を配置するともとに、水銀、ハロゲンそれにArガスを封入した。回折格子式の分光器を用いて分解能0.1nmにおける点灯スペクトル測定を行い、前記水銀(Hg)に対するタングステン(W)のピーク高さの比が、W/Hg≦0.15を満たす条件に設定したことを測定範囲300nm〜450nm、分解能0.1nmにおける点灯スペクトル測定での水銀に対するタングステンのピーク高さの比を、W/Hg≦0.15の関係を満たす条件に設定した。これにより、早期黒化をなくし寿命信頼性の高い高圧水銀ランプが実現可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高効率、高出力、高集光効率で、かつコンパクトな設計が要求される、例えば液晶プロジェクタのような画像投影装置に用いる高圧放電灯およびこれを用いた画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、投光照明および画像表示装置などの光源として、高圧放電ランプが多く採用されている。また、この高圧放電ランプの中にあっても、特に点光源に近く、配光制御が容易なショートアークタイプである例えばキセノンランプ・メタルハライドランプ等は、液晶プロジェクタ用、民生用のリアプロジェクションTVの光源として、多用されつつある。また、リアプロジェクションTV用の光源としては、寿命8000h以上の長寿命タイプが求められている。
【0003】
従来の高圧放電ランプは、グロー電圧20Vで2.5mAの電流を供給してグロー放電させたときの、OH基と水銀(Hg)のスペクトルのピーク比を規定することで高い照度維持率を得ている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2002−75269公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、高い照度維持率が得られるものの、製造のばらつき等により通常よりも、タングステン電極からタングステンが飛散する量の多いものやハロゲンサイクルが上手に循環しないランプが作られてしまう。これによりランプの早期黒化が発生してしまい、電極劣化によるランプ電圧の上昇やバルブの膨れによる早期不点につながる、という問題があった。
【0005】
この発明の目的は、放電ランプの点灯スペクトルを測定することによって、タングステン量等を規制しランプの早期黒化の発生を防止して高い照度維持率を保持しつつランプ寿命の向上を図る高圧放電灯およびこれを用いた画像投影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、この発明は、石英ガラス製バルブに形成された放電空間内に水銀、希ガス、ハロゲンを封入するとともに、一対のタングステン電極を対向配置し、該電極に電力を供給して高圧点灯させる高圧水銀灯にあって、回折格子式の分光器を用いて分解能0.1nmにおける点灯スペクトル測定を行い、前記水銀(Hg)に対するタングステン(W)のピーク高さの比が、W/Hg≦0.15を満たす条件に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、点灯スペクトル測定に基づき、金属不純物を検出できることから、タングステン量の上限を規定することで、早期黒化の発生を防止して高い照度維持率を保持しつつランプ寿命の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
図1は、この発明の高圧放電灯の一実施例について説明するための側面図である。図1において、11は透明な石英ガラス製のバルブであり、ほぼ楕円形状の発光管部12とその長手方向の両端部に発光管部12と同材料で形成されたバルブ11内を気密の封止部131,132からなる。発光管部12には、その長手方向にほぼ円柱状の放電空間14が形成されており、この放電空間14には封止部131,132の内部から延出された、例えばタングステン材で形成される電極151,152が1.3mmの間隔をおいてその先端が対向するように配置されている。電極151,152の軸径はφ0.4mmで、その一端にφ0.2mmのコイル161,162が数ターン巻きつけてある。放電空間14には、例えば水銀(Hg)とアルゴン(Ar)ガスとハロゲンを含む放電媒体が封入されている。
【0010】
封止部131,132は、圧潰して形成されており、その内部にはモリブデン(Mo)製の金属箔171,172が封着されている。この金属箔171,172のそれぞれの一端は、電極151,152に溶接されており、他端はモリブデン製のワイヤ181,182に一端がそれぞれ接続される。
【0011】
ワイヤ181の他端は、15μm程度のニッケル線にプラチナを被覆してφ0.4mm程度とした導入線を介して、ワイヤ182の他端は、楕円反射鏡と封止部131付近を、例えばアルミナ接着剤で固定した口金を介してそれぞれランプ外の点灯装置19からの電力供給を受けている。
【0012】
20は始動補助導線であり、始動パルス電圧と予熱時の直流点灯が同じ極性を持ち、同極性の陽極側の電極152に接続している。始動補助導線20は、バルブ11の外周の曲線に沿う格好で、電極151,152の中間付近まで延出させる。始動補助導線51は、始動時に電極151,152との間のグロー放電が発生しやすいように補助するためのもので、始動補助導線20と電極151や152との間で放電を行い、グロー放電の補助を行うものである。
【0013】
図1に構成された高圧放電灯は、例えばランプ電力100W、ランプ電圧75V、ランプ電流1.3Aで点灯される。
図1で構成される高圧放電灯のライフテストを行う前に図2に示す回析格子式の分光器による測定装置を用いてスペクトルと照度維持率について測定を行う。
【0014】
図2において、21は内部に高圧放電灯22を収容する点灯ボックスである。点灯ボックス21には、高圧放電灯22のグロー放電を分光する分光器23が接続されている。分光器23にはモノクロメータオートスキャナ24が接続されている。分光器23にはさらにモノクロメータオートスキャナ24を介して分光器23から取り出された任意の波長の光を受光するフォトマル25で受光した光を電気量に変換して各波長のスペクトル量を検出するフォトメータ26およびフォトメータ26で検出されたスペクトル量を記録するレコーダ27が接続されている。
【0015】
点灯スペクトル測定の設定条件は、スリット幅を入射、出射ともに0.01mm、スリット長さを入射、出射ともに2.0mmにセットし、測定範囲300〜450nmで行った。このような設定の結果、測定の波長分解能は0.1nmとなっている。また、点灯させ5分後に測定したピーク高さの測定は図3のように定義している。
【0016】
その後ライフ試験を行い、300hまでの黒化発生率と、スペクトル測定における各不純物ピークを照らし合わせた結果、タングステンとの相関が強いことがわかった。そこで、試験時間300hにおける早期黒化の発生率と、上記条件での点灯スペクトル測定におけるタングステン(400.9nm)と水銀(354.3nm)のピーク高さの比W/Hgの関係を調べたところ、図4に示すグラフのような結果を得た。
【0017】
ライフ試験時間300hにおける早期黒化発生率が5%以下ではW/Hg≦0.15となり、早期黒化発生率が10%を越えるとW/Hgは大幅に上昇することがわかった。このような関係がある理由は定かではないが、黒化に至るようなランプは初期段階からタングステンの飛散が多いためであると考えられる。従って、W/Hgを0.15以下にすれば早期黒化が発生しないことが判明した。
【0018】
以上のように、回折格子方式による分光器を用いたスリット幅0.1mm、スリット長さ2.0mm、測定範囲300〜450nm、分解能0.1nmの条件で行った点灯スペクトル測定における、水銀に対するタングステンのピーク高さ比の上限をW/Hg≦0.15としたことにより、早期黒化のなく寿命信頼性の高い高圧水銀ランプを実現できた。
【0019】
図5は、図1に構成の高圧放電灯が液晶プロジェクタに搭載された場合の、この発明の画像撮影装置について説明するための説明図である。
図5において、51は液晶プロジェクタであり、この液晶プロジェクタ51は本体52を有し、本体52の前面側には投影開口53が形成される。また、本体52内には光源54が配設され、この光源54は高圧放電灯55と高圧放電灯55に光学的に対向した反射手段としてのリフレクタ56にて形成される。そして、光源54の照射方向の前方には、表示手段としての液晶パネル57が配設され、この液晶パネル57の前方の投影開口53に対応して投影手段としての投影レンズ58が配設されている。投影開口53の前方には、スクリーン59が配設される。
【0020】
さらに、高圧放電灯55には点灯回路60が接続され液晶パネル57には液晶駆動回路61が接続され、点灯回路60および液晶駆動回路61は商用交流電源62が接続される。点灯回路60は高圧放電灯55を直流で点灯するもであっても、交流で点灯するものであっても構わない。
【0021】
上記した構成の画像撮影装置は、まず、点灯回路60で光源54の高圧放電灯55を点灯させる。高圧放電灯55からの光は、直接あるいはリフレクタ56で反射されて液晶パネル57方向に照射される。液晶パネル57は、液晶駆動回路61で表示が変化して、光源54からの光を透過して投影レンズ58で投影させてスクリーン59に映像を映し出す。
【0022】
このように、この発明の画像撮影装置は、この発明の高圧放電灯を光源のランプとしたことにより、ランプの信頼性が向上し、延いては液晶撮影装置全体の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施例について説明するための構成図。
【図2】回析格子式の分光器による点灯スペクトル測定について説明するための説明図。
【図3】水銀とタングステンの点灯スペクトルのピークについて説明するための説明図。
【図4】この発明の効果について説明するための説明図。
【図5】この発明の画像撮影装置に関する一実施例について説明するためのシステム構成図。
【符号の説明】
【0024】
11 バルブ
12 発光管部
131,132 封止部
14 放電空間
151,152 電極
161,162 タングステンコイル
171,172 金属箔
181,182 ワイヤ
19 点灯装置
51 液晶プロジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラス製バルブに形成された放電空間内に水銀、希ガス、ハロゲンを封入するとともに、一対のタングステン電極を対向配置し、該電極に電力を供給して高圧点灯させる高圧水銀灯にあって、
回折格子式の分光器を用いて分解能0.1nmにおける点灯スペクトル測定を行い、前記水銀(Hg)に対するタングステン(W)のピーク高さの比が、W/Hg≦0.15を満たす条件に設定したことを特徴とする高圧放電灯。
【請求項2】
請求項1の高圧放電灯と、
前記高圧放電灯を光源とし、該光源から放射される光に基づき画像を投影する画像投影装置本体と、を具備したことを特徴とする画像投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−40622(P2006−40622A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215900(P2004−215900)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】