説明

高圧放電灯

【課題】発光管部の耐圧強度を確実に維持しつつ、金属箔と導電体との間における容量結合を強くして、始動電圧をさらに低下させることのできる高圧放電灯を提供する。
【解決手段】発光管部26と、発光管部26の両側から延出され、その内部に埋設されてその一部となるプレシールガラス部材38、およびプレシールガラス部材38の外面に接し且つ発光管部26の発光空間から離隔して設けられた不活性ガス封入空間46を少なくともいずれか一方に有する封止部28と、一対の電極34、外部リード棒36、および金属箔32で構成された通電部材Kと、封止部28aの外周にて不活性ガス封入空間38に一致して設けられ、他方の外部リード棒36bに接続された外側導電体16と、一方の封止部28a内の不活性ガス封入空間38aに配置され、外側導電体16が設けられた一方の封止部28aの通電部材K1と同電位の内側導電体15とで高圧放電灯10を構成することにより、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロジェクターなどに使用される高圧放電灯に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターなどの光源として使用される高圧放電灯は、内部の空間に水銀が封入された発光管部と、この発光管部の両側から延び、発光管部の内部の空間を封止する封止部とを備えており、高圧放電灯はこの発光管部に封入され、点灯時に蒸発した水銀蒸気の量が多いほど高圧放電灯から放射される光の量も多くなるという性質を有している。このため、より多くの光を放射することを目的として、発光管部に封入する水銀の量が次第により多く設定されるようになってきている。
【0003】
このような高圧放電灯の点灯とこれに続く発光は、一対の電極間に高い始動電圧を印加することにより、同電極間において絶縁破壊を生じさせ、この絶縁破壊により形成されたアークで発光管部に封入された水銀を蒸発させ、これを励起することにより行われるが、上述のように発光管部に封入する水銀の量を多くすると、点灯していた高圧放電灯を消灯した時に高圧放電灯の冷却と共に電極表面に水銀微細粒が冷却凝集し、これが点灯時(或いは再点灯時を含む。以下同じ。)のアーク発生を阻害するようになる。その結果、再点灯時にはより高い電圧を電極間に印加しなければならなくなる、換言すれば高圧放電灯の始動性が悪くなるという問題が生じていた。
【0004】
そこで、始動電圧を低くすることが出来る高圧放電灯始動性向上技術が開発されている。例えば、特許文献1に記載された高圧放電灯1は、図5に示すように、封体容器2における一対の封止部3a、3bの内周面と金属箔4a、4bとの間に不活性ガス(Ar)や水銀が封入された不活性ガス封入空間5が形成されており、更に一方の封止部3aの外周に導電体6の一端が巻設され、これが更に引き出されて他方の封止部3bの外部リード棒7bに接続されている。なお、一方の封止部3aの外部リード棒を7aで示す。
【0005】
そして点灯時に、一方の封止部3a内の金属箔4aと導電体6との間に通常の電極間絶縁破壊電圧よりも低い電圧を印加すると、該金属箔4と導電体6との間に放電が生じて紫外線が放射され、この紫外線を受けた陰極側電極8の表面から電子が放出されることにより、両電極8、8間における絶縁破壊が生じ易くなる。その結果、始動性が悪い高圧放電灯1の始動電圧を低下させることができる。
【0006】
これは封止部3aの金属箔4aと導電体6との間の容量結合に関係し、封止部3aのガラス厚Tが薄ければ薄い程、金属箔4aと導電体6との間の容量結合が強くなり、始動時において低い電圧でも金属箔4と導電体6との間に放電が生じ易くなり、紫外線が放射されて電極8、8間での始動電圧が低くなるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2003−526182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1に記載された高圧放電灯1では、上述のように、始動電圧をある程度低下させることはできるものの、前述のように発光管部9内の水銀封入量を増加させていくと、点灯時の水銀蒸発に伴う発光管部9の高い内圧に耐えるようにするために高圧放電灯1の耐圧強度を高めなければならず、それにはより厚手の封体容器用ガラス管を使用しなければならない。それ故、導電体6が巻き付けられる封止部3aの不活性ガス封入空間5の構成部分におけるガラス厚Tが必然的に厚くなることから、金属箔4aと導電体6との間の容量結合が弱くなる(換言すれば、導電体6を巻き付けた部分のガラス厚Tは金属箔4と導電体6との間の容量結合に関係し、ガラス厚Tが薄くなれば容量結合が強くなり、逆に厚くなれば弱くなる。)。この結果、低い印加電圧では金属箔4aと導電体6との間に放電による紫外線の放射が発生しなくなることから、高い印加電圧が必要となってしまい、前述の不活性ガス封入空間5や導電体6を使用することによる電極8、8間の始動電圧の低下要求に応えることができなかった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みて開発されたものである。それ故に本発明の主たる課題は、発光管部の耐圧強度を確実に維持しつつ、金属箔と導電体との間における容量結合を強くして金属箔と導電体との間で放電を生じさせるために必要な電圧を低くすることにより、電極間の始動電圧を更に低下させることのできる高圧放電灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、
(1a) 発光物質を封入した発光空間を内部に有する発光管部26と、
(1b) 前記発光管部26の両側から延出され、その内部に埋設されてその一部となるプレシールガラス部材38a、38b、および前記プレシールガラス部材38a、38bの外面に接し且つ前記発光管部26の発光空間から離隔して設けられた不活性ガス封入空間46a、46bを少なくともいずれか一方に有する封止部28a、28bと、
(1c) 前記プレシールガラス部材38a、38bを貫通して設けられ、一端が前記発光空間内にて相対向して配置されている一対の電極34a、34b、一端が前記封止部28a、28bの外部へ導出された外部リード棒36a、36b、および前記プレシールガラス部材38a、38b内に埋設され、前記電極34a、34bと前記外部リード棒36a、36bとを接続する金属箔32a、32bで構成された通電部材K1、K2と、
(1f) 前記封止部28aの外周にて前記不活性ガス封入空間46aに一致して設けられ、他方の前記封止部28bから導出された前記外部リード棒36bに接続された外側導電体16と、
(1g) 一方の前記封止部28a内の前記不活性ガス封入空間46aに配置され、前記外側導電体16が設けられた一方の前記封止部28aの通電部材K1と同電位の内側導電体15とで構成された事を特徴とする高圧放電灯10である。
【0011】
本発明に係る高圧放電灯10の封止部28a、28bの内部には、プレシールガラス部材38a、38bが埋設されて該封止部28a、28bの一部となっており、このプレシールガラス部材38a、38bの外面に接するようにして、不活性ガスが封入された不活性ガス封入空間46a、46bが発光管部26の発光空間から離隔して設けられている。該不活性ガス封入空間は、外側導電体16がいずれか一方の封止部に設けられる関係からいずれか一方だけでもよい。
【0012】
このようにプレシールガラス部材38a、38bが封止部28a内に一体的に埋設されているので、発光管部26の肉厚t1に対して不活性ガス封入空間46a部分の肉厚t2を薄くすることができ、これにより耐圧強度を維持しつつ容量結合を大きくできて始動電圧を低くすることができるようになった。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1の内側導電体15を限定したものであり、「前記内側導電体15は、前記プレシールガラス部材38aの外周面に沿って配設された金属箔又は該外周面38a4から端面38a3にかけて一体に設けられた導電膜或いは金属箔32aからのプレシールガラス貫通部Ktで、一端が前記不活性ガス封入空間46aに配設され、他端が一方の前記封止部28aの通電部材K1に接続されている」ことを特徴とする。
【0014】
内側導電体15として「金属箔」や「導電膜」を用いることにより、プレシールガラス部材38a内に埋設された通電部材K1の「金属箔」と同様の作用効果、即ち、「気密性確保」を奏することができるだけでなく、内側導電体15として「金属箔」が外部リード棒36aに接続(溶接)された状態で用いられたり、「導電膜」がプレシールガラス部材38aと一体に設けられていることにより、高圧放電灯10を組み立てる際にプレシールガラス部材38aと内側導電体15とを別々に保持しつつ封止部28aの空間内に挿入して封止部28aと融着させる必要がなく、プレシールガラス部材38aのみを保持して封止部28aと融着させるだけでよくなり、高圧放電灯10の生産効率を向上させることができる。
【0015】
一方、内側導電体15として金属箔32aからのプレシールガラス貫通部Ktを用いる場合は、前記生産効率向上だけでなく、「金属箔」や「導電膜」のようにプレシールガラス部材38の外周面と封止部28aの内周面との間に挟み込まれる物がなくなることから、プレシールガラス部材38の外周面と封止部28aの内周面とを完全に融着一体化して不活性ガス封入空間46aの気密性を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発光管部の耐圧強度を維持しつつ、外側導電体と内側導電体との間のガラス厚を小さくすることで両者間の容量結合の度合いを強くし、外側導電体と内側導電体との間で放電を生じさせ易くして電極間での必要な始動電圧をさらに低下させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる第1の実施例およびこれを用いた光源装置を示す図である。
【図2】第1の実施例にかかる高圧放電灯の製造手順を示す図である。
【図3】本発明にかかる第2の実施例を示す図である。
【図4】本発明にかかる他の実施例を示す図である。
【図5】従来技術にかかる高圧放電灯を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施例)
以下、本発明が適用された高圧放電灯10について説明する。図1は、本発明に係る第1実施例に係るダブルエンド型の高圧放電灯10Aの断面図である。本発明に係る高圧放電灯10Aは、大略、封体容器12と、この封体容器12における一対の封止部28a、28bの内部に埋設された一対のマウント14a、14bと、内側導電体15と、外側導電体16とで構成されている。また、この高圧放電灯10Aに直流電源18(もちろん、交流電源であってもよい)と安定器回路20と高周波始動回路22とを組み合わせて、光源装置24が構成されている。
【0019】
封体容器12は、内部に空間を有する略球状の発光管部26と、発光管部26の両側から延びる一対の封止部28a、28bとを備えており、熱膨張および熱収縮がほとんど発生しない石英ガラスで形成され、発光管部26の内部空間に必要ガスや必要充填物(Arその他必要ガスや水銀その他)が封入され、更に当該空間において互いに対向して一対の電極34a、34bが配設されており、発光管部26の肉厚t1は点灯時の水銀蒸気による内圧上昇に十分耐えるだけの厚さで形成されている。
【0020】
封止部28a、28bの内部にはマウント14a、14bが埋設されており、金属箔32a、32bと電極34a、34b及び外部リード棒36a、36bとで構成された通電部材K1、K2がマウント14a、14bを構成するプレシールガラス部材38a、38bを貫通するように配設されており、前述のように通電部材K1、K2の先端部分を構成する電極34a、34bが発光管部26の空間内で互いに対向するように配設されている。
【0021】
そして、プレシールガラス部材38a、38bと、一体的に融着されてこれらを取り巻く封止部構成ガラス層28a1、28b1とは、封止部28a、28bの基部28a2、28b2側と端部28a3、28b3側とにおいて一体に融着されており、前記融着部分の間にてプレシールガラス部材38a、38bの外面に接し且つ発光管部26の発光空間から離隔して設けられ、アルゴンガスが封入された不活性ガス封入空間46a、46bが設けられている。本明細書では不活性ガス封入空間46a、46bは両封止部28a、28bに設けられている例を示すが、外側導電体16が設けられる方だけでもよい。
【0022】
不活性ガス封入空間46a、46bに接する封止部構成ガラス層28a1、28b1の肉厚t2は、点灯時に発光管部26の高内圧が直接加わらないことから発光管部26の肉厚t1より薄くされている。なお、封止部28a、28bの基部28a2、28b2は、点灯時に発光管部26の高内圧が直接加わるから、基部28a2、28b2の形成時に十分な肉厚となるようにプレシールガラス部材38a、38bを融着一体内蔵して封止部28a、28bの外径と同じ太さに成形される。本実施例では埋設溶着一体化されたプレシールガラス部材38a、38bの先端は円錐台状に形成され、且つ該先端から発光管部26の内周面までの肉厚も発光管部26の肉厚t1と同程度に形成されている。
【0023】
マウント14a、14bは、前述のようにその大部分が封止部28a、28bにそれぞれ埋設されている部材であって、モリブデンで形成された金属箔32a、32bと、一端が発光管部26の空間内に配設されており、他端が金属箔32a、32bの一端に取り付けられたタングステン製の電極34a、34bと、金属箔32a、32bの他端に取り付けられており、封止部28a、28bの外部へ導出された外部リード棒36a、36bと、金属箔32a、32bおよび電極34a、34bや外部リード棒36a、36bの金属箔側端部が埋設されたプレシールガラス部材38a、38bとで構成されている。なお、金属箔32a(32b)、電極34a(34b)および外部リード棒36a(28b)をまとめてそれぞれ通電部材K1(K2)と記載する。
【0024】
また、発光管部26内に配設された電極34a、34bの端部形状は、交流点灯用の高圧放電灯10の場合であれば両方とも略同一形状であるが、直流点灯用の高圧放電灯10の場合であれば陽極側の電極が陰極側に比べて大きく形成される。以上の点は第2の実施例以下でも同様である。
【0025】
図1に示す内側導電体15は、一方の封止部28a内の不活性ガス封入空間46aにその一端15aが配置され、プレシールガラス部材38aの外周面に沿い、封止部28aの封止部構成ガラス層28a1とプレシールガラス部材38aの外周面との気密密着部分29を通って封止部28aの外部へ延び、他端15bがスポット溶接にて外部リード棒36aに電気的に接続されており、外部リード棒36aを含む通電部材K1と同電位になる金属箔である。内側導電体15の他の実施例としては、プレシールガラス部材38aの外周面から端面38a3にかけて一体に設けられた導電膜やプレシールガラス部材38aを貫通するように設けられたプレシールガラス貫通部Ktでもよい(「導電膜」「プレシールガラス貫通部Kt」の実施例については後述する。)。
【0026】
外側導電体16は、その一端部分がリング状に形成された金属線であって一方の封止部28aの外周にて不活性ガス封入空間46aに一致して巻設され、その他端側が該リング部16aから引き出された外側導電体用導線50として他方の封止部28bから導出された外部リード棒36bに接続されている。なお、外側導電体16の形状はリング状に限られず、内側導電体15に対向して設けられた板状体やブロック状でもよい。外側導電体16を封止部28aの外周面に巻き付けて固定した場合、外側導電体16が封止部28aの外周面から不所望にずれることがない。図示していないが、更に、高圧放電灯10の始動性を改善するために一般的に使用されるトリガワイヤ(発光管部の外側に配設されたワイヤで、点灯始動時に電極との間で放電を生じさせて使用するもの。)と外側導電体16とを共通の金属線で形成してもよい。
【0027】
安定器回路20は、直流電源18からの電圧を受けて、高圧放電灯10Aに供給される電圧のばらつきや、経時的な電圧変化などを考慮し、高圧放電灯10Aの点灯に必要な一定電力を安定的に高圧放電灯10Aの一対の電極34a、34b間に印加するための回路である。また、安定器回路20は、外側導電体16が配設されている一方の通電部材K1を構成する一方の外部リード棒36aと、他方の通電部材K2を構成する他方の外部リード棒36bとにそれぞれ高周波始動回路22を介して導線48a、48bにより電気的に接続されている。
【0028】
高周波始動回路22は、高圧放電灯10Aの点灯始動時において、電極34a、34b間および内側導電体15と外側導電体16との間における絶縁破壊を生じ易くするために安定器回路20から受けた電圧の周波数を高くして高圧放電灯10Aに供給する回路である。つまり、電気的に直接接続されていない内側導電体15と外側導電体16との間は、静電容量結合により一種のコンデンサを形成しており、コンデンサは、周波数の高い電圧ほど通過させ易いという性質を有している。このため、高圧放電灯10Aの点灯時に供給する電圧の周波数を高くすることにより、電極34a、34b間や内側導電体15と外側導電体16との間における放電、すなわち絶縁破壊を生じ易くすることができるもので、これを利用した本発明の高点灯性については後述する。
【0029】
(高圧放電灯の製造手順)
本実施例に係る高圧放電灯10Aの製造手順の一例について、図2に基づいて簡単に説明する。[工程(a)]金属箔32aの一端に電極34aの他端をスポット溶接し、続いて外部リード棒36aの他端を金属箔32aの他端にスポット溶接して通電部材K1を形成した後、この通電部材K1を肉厚t3が0.5〜0.8mmのプレシールガラス部材38a内に挿入する。[工程(b)]然る後、プレシールガラス部材38aを2000℃以上の高温(石英ガラスの軟化点は、1650℃付近であることから、加熱温度は、2000℃以上に設定されている。)で加熱して熱収縮(加熱シュリンク法)させ、[工程(c)]その後、所定の位置で切断して略柱状のプレシールガラス部材38aを有するマウント14aを製造する。なお、プレシールガラス部材38aと金属箔32aとの熱収縮率が異なるが、金属箔32aがプレシールガラス部材38a内に埋設されるとプレシールガラス部材38aの機械的強度が金属箔32aのそれに比べて隔絶しているので、金属箔32aの熱膨張による伸縮は完全に拘束され、以後、金属箔32aの表面とプレシールガラス部材38aの接触面とは完全な気密状態で密着することになる。これらはマウント14bも同様である。
【0030】
[工程(d)]次に、マウント14aの外部リード棒36aに短冊状の金属箔で出来た内側導電体15の他端を溶接してプレシールガラス部材38aに沿わせ、その状態でアルゴンガスによる不活性雰囲気下で内側導電体15とともに封体容器12の一方の封止部28aとなる融着前のガラス管部Aの内部空間に挿入し(熱収縮後のプレシールガラス部材38は、その径が封止部28aの一部を構成することになる融着前のガラス管部Aの内径よりも小さく形成されている。)、該一方の封止部28aを構成する融着前のガラス管部Aの内部空間でマウント14aおよび内側導電体15を位置決めし、[工程(e)]この状態で封体容器12の内部及び封体容器12の発光管部26と封止部28aとの接合部Bを2000℃以上の高温で例えば10〜12秒間熱してシュリンクさせ、発光管部26の内部空間と封止部28aとなるガラス管部Aの内部空間とを基部28a2にて互いに隔絶させる(この時、プレシールガラス部材38aの電極側先端部38a1は封止部28aの基部28a2内に埋設され且つ一体的に融着される。そして、基部28a2の太さは前述のように発光管部26の点灯時の高内圧に耐え得るだけの太さに形成される。なお、この時点では封止部28aの基部28a2だけが封じられただけであるので、ガラス管部Aの先端側(図中下側)とプレシールガラス部材38aの図中下側とは一定の隙間mをもって外部に開放している。)。上述のシュリンクシール方法の他に、熱した封止部28aを挟み込むピンチシール方法を採用してもよい。
【0031】
[工程(f)]前述のようにアルゴンガスによる不活性雰囲気下でのシュリンク作業なので封止部28aを構成するガラス管部Aの内周面とプレシールガラス部材38aの外周面との間に形成された隙間mにアルゴンガスが満たされており、この状態でプレシールガラス部材38aの外部リード棒側端部38a2の外周面に対応するガラス管部Aの対応部分28a3を外側から2000℃以上の高温で例えば10〜12秒間熱してシュリンク(勿論、ピンチシールでもよい。)させ、プレシールガラス部材38aの当該外周面と封止部28aのガラス管部Aの当該内周面とを融着して(短冊状の金属箔で出来た内側導電体15が配設されている部分は、内側導電体15を介して)、該融着部分29と基部28a2との間にアルゴンガスが封止された気密空間46a「即ち、不活性ガス封入空間46a」を形成する。これにより、一方の封止部28aが完成し、プレシールガラス部材38aはこの封止部28aに一体的に埋設された状態となる。
【0032】
一方の封止部28aを完成させた後、発光管部26の内部空間に必要な不活性ガス(Arその他の必要ガス)、水銀その他の必要充填物を封入したのち、内側導電体15のないマウント14bを用いて上述したのと同様の手順で他方の封止部28bを完成させる。なお、マウント14bについては不活性ガス封入空間46aを形成せず、プレシールガラス部材38b全体を封止部28bに溶着してもよい。
【0033】
最後に、外側導電体16のリング部16aを一方の封止部28aの外周に巻着し、リング部16aから導出した外側導電体用導線50を他方の外部リード棒36bに接続して高圧放電灯10の製造が完了する。
【0034】
(高圧放電灯の点灯手順)
次に、本実施例に係る高圧放電灯10Aを点灯する手順について説明する(図1)。点灯すると、高周波始動回路22にて高周波の高電圧(ただし電極間始動電圧より低い電圧)が発生し、電極34a、34b間に該高電圧が印加されると同時に外側導電体用導線50を介して、外側導電体16と一方の封止部28aに設けられた内側導電体15のリング部16aとの間にも同じ高電圧が印加される。外側導電体16のリング部16aと内側導電体15との間に存在する封止部構成ガラス層28a1の厚さt2は前述のようにプレシールガラス部材38aの存在によって薄いので、その分だけ両者間の静電容量結合は強く、その結果、電極34a、34b間で絶縁破壊が生じるよりも低く、且つ、不活性ガス封入空間46aのアルゴンガスの絶縁破壊電圧を超える印加電圧で内側導電体15と外側導電体16との間に絶縁破壊が生じ、該絶縁破壊により励起されたアルゴンガスから紫外線が放射される。
【0035】
そして、この紫外線が封体容器12の封止部28aを通して瞬時に発光管部26に伝わり(いわゆる、光ファイバ効果)、電極34a、34bに導かれることによって陰電極34a(又は34b)の表面からの電子放射が開始される。この電子の放射開始により、電極34a、34b間の絶縁破壊が誘引され、紫外線の放射がない場合に比べてはるかに低い始動電圧で電極34間の絶縁破壊が生じる。
【0036】
本実施例の高圧放電灯10Aによれば、上述のように、耐圧強度を維持しつつ、外側導電体16が設けられる封止部28aの不活性ガス封入空間46aの構成部分におけるガラス厚t2を薄くすることができ、互いに離隔された外側導電体16と内側導電体15との間の容量結合の度合いを耐圧強度に関係なく強くすることができ、両電極34a、34b間で放電を生じさせるために必要な始動電圧を低下させることができる。
【0037】
(第2実施例)
次に、図3を用いて本発明の第2実施例に係る高圧放電灯10Bについて説明する。第2実施例は上述した第1実施例と比較して、内側導電体15が「プレシールガラス部材38aの外周面に一体に設けられた導電膜」である点が異なっている。以下、この内側導電体15に関係する事項についてのみ説明し、第2実施例に係る他の部分についての構成および作用効果については、第1の実施例における記載を援用する。
【0038】
本実施例において、内側導電体15は、プレシールガラス部材38aの外周面38a4(その一部は不活性ガス封入空間46a内に位置する。)、端面38a3、および外部リード棒36aにかけて一体に設けられた導電膜であり、具体的には「珪タングステン酸」にプレシールガラス部材38aの約半分から外部リード棒36aにかけての部分を浸漬(或いは塗着)し、これを焼成炉で水素還元することによって形成された導電膜である。
【0039】
このように、内側導電体15として導電膜を用いることにより、上述した「金属箔」を用いる場合と同様の作用効果を奏することができるだけでなく、当該導電膜がプレシールガラス部材38aと一体に設けられていることから、高圧放電灯10Bを組み立てる際にプレシールガラス部材38aと内側導電体15とを別々に保持しつつ封止部28aの空間内に挿入して封止部28aと融着させる必要がなく、プレシールガラス部材38aのみを保持して封止部28aと融着させるだけでよくなり、高圧放電灯10Bの生産効率を向上させることができる。
【0040】
なお、内側導電体15は上述のような態様に限られず、図4に示すように、通電部材K1を構成する短冊状の金属箔32aの中程にプレシールガラス貫通部Ktを設け(図示実施例では、金属箔32aの上下方向に2箇所のプレシールガラス貫通部Ktが設けられている。)、図示しないが2本の短いプレシール用のガラス管に通電部材を挿通し、これを加熱シュリンクさせることで2本の短いプレシール用のガラス管の突合せ面からプレシールガラス貫通部Ktの先端部が融着したプレシールガラス部材38aを貫通させるようにし、該先端部が不活性ガス封入空間46aに配設されるように封止部28aを構成してもよい。この場合、マウント14aと内側導電体15とを別部材として配設する必要がなくなることから、高圧放電灯10Cの生産効率をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
10、10A〜C…高圧放電灯
12…封体容器
14a、14b…マウント
15…内側導電体
16…外側導電体
18…直流電源
20…安定器回路
22…高周波始動回路
24…光源装置
26…発光管部
28a,28b…封止部
32a,32b…金属箔
34a,34b…電極
36a,36b…外部リード棒
38a,38b…プレシールガラス部材
46a,46b…不活性ガス封入空間
48a,48b…導線
50…外側導電体用導線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光物質を封入した発光空間を内部に有する発光管部と、
前記発光管部の両側から延出され、その内部に埋設されてその一部となるプレシールガラス部材、および前記プレシールガラス部材の外面に接し且つ前記発光管部の発光空間から離隔して設けられた不活性ガス封入空間を少なくともいずれか一方に有する封止部と、
前記プレシールガラス部材を貫通して設けられ、一端が前記発光空間内にて相対向して配置されている一対の電極、一端が前記封止部の外部へ導出された外部リード棒、および前記プレシールガラス部材内に埋設され、前記電極と前記外部リード棒とを接続する金属箔で構成された通電部材と、
前記封止部の外周にて前記不活性ガス封入空間に一致して設けられ、他方の前記封止部から導出された前記外部リード棒に接続された外側導電体と、
一方の前記封止部内の前記不活性ガス封入空間に配置され、前記外側導電体が設けられた一方の前記封止部の通電部材と同電位の内側導電体とで構成された事を特徴とする高圧放電灯。
【請求項2】
前記内側導電体は、前記プレシールガラス部材の外周面に沿って配設された金属箔又は該外周面から端面にかけて一体に設けられた導電膜或いは金属箔からのプレシールガラス貫通部で、一端が前記不活性ガス封入空間に配設され、他端が一方の前記封止部の通電部材に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電灯。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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