説明

高差圧条件下で使用する搬送装置及びその制御方法

【課題】ガスハイドレートペレットの製造工程の脱圧工程等に見られる高差圧条件下で使用する搬送装置1であって、大量処理が可能であり、付帯設備が少なく、かつ、小型である搬送装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】流体中の被搬送物mを、圧力差のある領域へ搬送する搬送装置1において、前記搬送装置1が、高圧側Hで流体が循環する高圧ループ2と、低圧側Lで流体が循環する低圧ループ3と、前記高圧ループ2の流路の一部を形成する貯留配管4を有し、前記貯留配管4が、前記高圧ループ2又は前記低圧ループ3の配管と継合する両端を開口した筒状体であり、かつ、内部に、前記被搬送物mは捕集して前記流体は通過させる固液分離構造6を有し、さらに、前記高圧ループ2から前記低圧ループ3の流路の一部を形成する位置に移動する切替機構5を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば天然ガスハイドレート製造プラントで使用する高圧条件下から低圧条件下(又は低圧条件下から高圧条件下)にハイドレートペレットを移送するための搬送装置等の、差圧の大きい2つの領域間で被搬送物の授受を行う搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のガスハイドレートペレットの製造工程は、高圧環境下(例えば、天然ガスハイドレートペレットの場合、約5.4MPa)でガスハイドレートの生成を行う生成工程と、生成された粉雪状のハイドレートを圧搾して塊状のペレットに加工する成形工程と、前記ペレットを冷却及び脱圧する冷却工程及び脱圧工程と、大気圧下にあるペレット貯留タンクで貯留する貯留工程とから構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
脱圧工程では、ペレットが移送された搬送装置(減圧ドラム)内に原料ガスと異なるガスからなる作動液(例えば液体プロパン)を充填し、作動液をフラッシュ弁からフラッシュして、減圧ドラム内を大気圧まで脱圧する構成としている。この構成により、貯槽内に流入した大気圧のパージガスを、高圧の原料ガスのガス圧まで再度、昇圧する必要がなくなり、ガスハイドレート製造プラントにおける消費電力を抑制することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−52261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ペレットに同伴する作動液(例えば液体プロパン)の回収系を付帯設備とする必要があり、設備全体が大型化してしまう問題を有している。特に、ガスハイドレートペレットを商業的に大量に生産するプラントを建設する際に、ガスハイドレートペレット製造装置の大型化に伴い、付帯設備の占める容積の規模も増大してしまうため、装置全体の小型化の要請がある。つまり、ガスハイドレートペレットの生産量は増加させながら、製造装置及び付帯設備を小型化することが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ガスハイドレートペレットの製造工程の脱圧工程等に見られる高差圧条件下で使用する搬送装置であって、大量処理が可能であり、付帯設備が少なく、かつ、小型である搬送装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明に係る搬送装置は、流体中の被搬送物を、圧力差のある領域へ搬送する搬送装置において、前記搬送装置が、高圧側で流体が循環する高圧ループと、低圧側で流体が循環する低圧ループと、前記高圧ループの流路の一部を形成する貯留配管を有し、前記貯留配管が、前記高圧ループ又は前記低圧ループの配管と継合する両端を開口した筒状体であり、かつ、前記高圧ループから前記低圧ループの流路の一部を形成する位置に移動する切替機構を有していることを特徴とする。
【0008】
より具体的には、本発明に係る搬送装置は、ガスハイドレートの生成条件下でガスハイ
ドレートを生成する生成装置と、前記ガスハイドレートを脱水・圧搾成形してハイドレートペレットを成形する成形装置と、前記ペレットを冷却し、脱圧して大気圧とする搬送装置を有したガスハイドレートペレット製造装置の前記搬送装置において、前記搬送装置が、高圧側で流体が循環する高圧ループと、低圧側で流体が循環する低圧ループと、前記高圧ループの流路の一部を形成する貯留配管を有し、前記貯留配管が、前記高圧ループ又は前記低圧ループの配管と継合する両端を開口した筒状体であり、かつ、内部に被搬送物である前記ペレットは捕集して前記流体は通過させる固液分離構造を有し、さらに、前記高圧ループから前記低圧ループの流路の一部を形成する位置に移動する切替機構を有していることを特徴とする。
【0009】
上記の搬送装置において、複数の前記貯留配管が、前記高圧ループ及び前記低圧ループの異なる複数の場所に設置されたことを特徴とする。
【0010】
上記の搬送装置において、複数の前記貯留配管が、円周状に配列された回転式切替機構として形成され、前記貯留配管が継合する前記高圧ループ又は前記低圧ループを切り替える切替機構が、前記回転式切替機構を回転させる回転機構から成ることを特徴とする。
【0011】
上記の目的を達成するための本発明に係る搬送装置の制御方法は、前記搬送装置の制御方法において、前記貯留配管が、搬送元となる前記高圧ループ又は前記低圧ループである第1ループに継合され、前記流体と共に循環している前記被搬送物を、前記固液分離構造で捕集する貯留ステップと、前記貯留配管が、前記第1ループから、搬送先である前記低圧ループ又は前記高圧ループである第2ループへ切り替えられる切替ステップと、前記貯留配管に捕集された前記被搬送物を、前記第2ループの前記流体の循環中へ排出する排出ステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る搬送装置及びその制御方法によれば、大量処理が可能であり、付帯設備が少なく、かつ、小型である搬送装置及びその制御方法を提供することができる。
【0013】
即ち、例えば、高圧ループから低圧ループに、被搬送物であるペレットを搬送した場合、ペレットは循環している流体(例えば液体プロパン等)と共に低圧ループに移動するが、その後、貯留配管を再び高圧ループに切り替える際に、流体を伴って移動するため、高圧ループと低圧ループにおける流体量の増減は微量となる。そのため、従来必要であった作動液(液体プロパン)の回収(作動液の蒸発ガスの液化回収)を行う付帯設備が不要となった。
【0014】
また、高圧ループ及び低圧ループを循環している流体の流速を上昇させて、ペレットの捕集及び排出の速度を上昇させることが容易であり、搬送装置の処理量を増加させることができる。この単位時間当たりの処理量増加により、搬送装置を従来のものと比べ小型化することができる。
【0015】
更に、複数の貯留配管を、高圧ループ及び低圧ループの異なる複数の場所に設置する構成により、複数の貯留配管の切り替えを、位相をずらして行うことができ、ペレットの搬送処理を連続的に行うことができる。
【0016】
更に、複数の貯留配管を、円周状に配列されたリボルバ型の回転式切替機構として形成する構成により、貯留配管の切替を連続的に行うことができる。即ち、1つの貯留配管でペレットの捕集を行っている間、他の貯留配管でペレットの排出を行うことができるため、搬送効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施の形態の搬送装置を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の搬送装置の作動状態を示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態の貯留配管を示す図である。
【図4】本発明に係る異なる実施の形態の搬送装置の作動状態を示す図である。
【図5】本発明に係る異なる実施の形態の貯留配管を示す図である。
【図6】パッキンの断面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態のガスハイドレート製造装置における搬送装置及びその制御方法について、図面を参照しながら説明する。図1にガスハイドレート製造装置の脱圧工程で使用する搬送装置1を示す。
【0019】
ガスハイドレート製造装置は、ガスハイドレートの生成条件下でガスハイドレートを生成する生成装置と、ガスハイドレートを脱水・圧搾成形してハイドレートペレットmを成形する成形装置20と、ペレットmを冷却し、脱圧して大気圧とする搬送装置1を有している。
【0020】
搬送装置1は、例えば液体プロパン等の作動液が、ポンプ22により循環している高圧ループ2及び低圧ループ3と、高圧ループ2と低圧ループ3の間を移動する貯留配管4と、切替機構5を有している。成形装置20で球状又は円柱状等に成形されたペレットmは、液体プロパン等の流体の流れで、貯留配管4まで運ばれる。貯留配管4に捕集されたペレットmは、切替機構5のスライド移動により、低圧ループ3に搬送され、ベルトコンベア21により、次工程に送られるように構成されている。この搬送装置1により、ペレットmを、ガスハイドレートの生成条件である、約5.4MPの高圧側Hから、大気圧である低圧側Lに移動することができる。
【0021】
なお、図1の搬送装置1は、ガスハイドレート製造装置に限らず、流体を伴う被搬送物を、圧力差のある2つの領域間で搬送する必要のある場所で使用することができる。また、搬送装置1は、低圧側Lから高圧側Hへの搬送も行うことができる。
【0022】
図2に、切替機構5の作動状態を示し、以下に説明する。図2Aに示す様に、まず、切替機構5の貯留配管4を、高圧ループ2の配管と継合させ、流体と共に流れてくるペレットmを捕集する。貯留配管4は、下流側に固液分離構造6を有しており、この固液分離構造6は、流体は通過させ、ペレットmは捕集する構造であり、例えば格子状又は網状のスリット又は多孔板等を用いることができる。
【0023】
図2Bに示す様に、貯留配管4に一定量のペレットmが捕集されたのちに、図示しないスライド機構により切替機構5をスライドして、貯留配管4を低圧ループ3と継合させる。
【0024】
次に図2Cに示す様に、貯留配管4と低圧ループ3を継合して、低圧ループ3の流れにより、ペレットmは低圧ループ3内に排出される。ここで、高圧ループ2と低圧ループ3は、流体の流れの方向を逆にしている。
【0025】
その後、図2Dに示す様に、貯留配管4は、ペレットmを排出後、高圧ループ2と継合する位置に戻される。なお、貯留配管4はスライドをする際も含め、常に流体が充填されている状態となっている。
【0026】
ここで、ペレットmの捕集及び排出は、流体の流れにより積極的に行われるため、流体
の流速を制御することで、ペレットmの搬送速度を自在に制御することができ、搬送装置1の大量処理を実現することができる。
【0027】
図3に切替機構5の1例の斜視図を示しており、高圧ループ2及び低圧ループ3に継合するように、スライド可能な貯留配管4を配置している。貯留配管4は、ペレットmは捕集し、流体は通過させる固液分離構造6を底部に有している。また、貯留配管4をスライドさせた際に、高圧ループ2及び低圧ループ3の流体の流動を妨げないように、ダミー配管8を配置している。また、貯留配管4及びダミー配管8の両端には、パッキン7を設置し、高圧ループ2及び低圧ループ3との接合面から流体が漏洩することを防止している。ここで、パッキン7bを設置する構成により、高圧ループ2と低圧ループ3の間で、流体又は被搬送物が漏洩することを防止してもよい。
【0028】
なお、貯留配管4の形状は、円筒形に限るものではなく、高圧ループ2又は低圧ループ3とそれぞれ継合する形状であれば、例えば、貯留配管4の中央部を拡大した紡錘形状として、貯留配管4の容積を大型化したものを使用することもできる。
【0029】
図4に、2つの切替機構5を有した搬送装置1の1例の作動状態を示す。図4Aに示す様に、第1切替機構5Aの貯留配管4を高圧ループ2と継合し、ペレットmを捕集し、第2切替機構5Bのダミー配管8を高圧ループ2と継合している。
【0030】
図4Bに示す様に、第1切替機構5Aの貯留配管4に一定量のペレットmを捕集した後、第1及び第2切替機構5A、5Bを同時に逆方向に図示しないスライド機構によりスライドさせ、図4Cに示す様に、第1切替機構5Aの貯留配管4を低圧ループ3と継合し、ペレットmを排出し、第2切替機構5Bの貯留配管4を高圧ループ2と継合し、ペレットmの捕集を行う。
【0031】
このように、複数の切替機構5を連動させて制御することにより、ペレットmを連続的に搬送することが可能となる。つまり、1つ1つの貯留配管4によるペレットmの搬送方式は、バッチ式となっているが、この切替機構5の数をさらに増やすことで、全体としてあたかも連続方式で処理を行っている状態を作り出すことができ、搬送装置1による大量処理が実現可能となる。なお、矢印は高圧ループ2及び低圧ループ3における流体の流れの方向を示している。
【0032】
また、貯留配管4は、予め定めた時間の経過後に自動的にスライドするように構成することもできるが、貯留配管4内のペレットmの量を計測するセンサを設置し、このセンサによりスライドするタイミングを制御することもできる。このセンサにより、貯留配管4にペレットmが溜まりすぎて、スライド時にペレットmが、高圧ループ又は低圧ループの配管と、貯留配管の間に挟まれて破壊されるという問題を防止することができる。なお、被搬送物の硬度が高い場合は、このセンサの設置により、高圧ループ2及び低圧ループ3の配管及び切替機構5の破壊を防止することができる。
【0033】
図5に、本発明に係る異なる実施の形態の搬送装置1の切替機構5を示しており、高圧ループ2及び低圧ループ3をそれぞれ分岐させ、複数の貯留配管4を配置した回転式切替機構9を内蔵している。貯留配管4の切替を、回転式切替機構9の回転により行うため、切替機構5の動作がより連続化し、またコンパクト化を実現することができる。
【0034】
なお、回転式切替機構9における貯留配管4の設置個数及び配置は、貯留配管4の体積効率、パッキンのシール構造の安定性等のバランスから決定することができる。例えば、2つの貯留配管4から回転式切替機構9を構成すると、無駄な体積が大きくなる。他方、例えば10個の貯留配管4から回転式切替機構9を構成すると、貯留配管4同士の距離が
近くなり、高圧ループ2と低圧ループ3が短絡する可能性がでてくる。
【0035】
すなわち、回転式切替機構9の貯留配管数が増えるほど、ペレットの搬送処理がより連続的となる一方、回転式切替機構9の前後の配管が複雑となるため、このバランスも考慮しながら設計を行うことが望ましい。
【0036】
図6に、貯留配管4に設置したパッキン7の1例を示す。図6Aに示す様に、パッキン7は内部に中空部10を有しており、この中空部10の圧力は自在に制御することが可能となっている。この構成により、切替機構5が可動するときには、中空部10の圧力を抜いて、パッキン7が配管等の部材と摺れて摩耗することを防止し、切替機構5の可動が終了したときには、中空部10を加圧して、流体や被搬送物の漏洩を防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 搬送装置
2 高圧ループ
3 低圧ループ
4 貯留配管
5 切替機構
6 固液分離構造
9 回転式切替機構
m ペレット(被搬送物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中の被搬送物を、圧力差のある領域へ搬送する搬送装置において、
前記搬送装置が、高圧側で流体が循環する高圧ループと、低圧側で流体が循環する低圧ループと、前記高圧ループの流路の一部を形成する貯留配管を有し、
前記貯留配管が、前記高圧ループ又は前記低圧ループの配管と継合する両端を開口した筒状体であり、かつ、前記高圧ループから前記低圧ループの流路の一部を形成する位置に移動する切替機構を有していることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
ガスハイドレートの生成条件下でガスハイドレートを生成する生成装置と、前記ガスハイドレートを脱水・圧搾成形してハイドレートペレットを成形する成形装置と、前記ペレットを冷却し、脱圧して大気圧とする搬送装置を有したガスハイドレートペレット製造装置の前記搬送装置において、
前記搬送装置が、高圧側で流体が循環する高圧ループと、低圧側で流体が循環する低圧ループと、前記高圧ループの流路の一部を形成する貯留配管を有し、
前記貯留配管が、前記高圧ループ又は前記低圧ループの配管と継合する両端を開口した筒状体であり、かつ、内部に被搬送物である前記ペレットは捕集して前記流体は通過させる固液分離構造を有し、さらに、前記高圧ループから前記低圧ループの流路の一部を形成する位置に移動する切替機構を有していることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
複数の前記貯留配管が、前記高圧ループ及び前記低圧ループの異なる複数の場所に設置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
複数の前記貯留配管が、円周状に配列された回転式切替機構として形成され、前記貯留配管が継合する前記高圧ループ又は前記低圧ループを切り替える切替機構が、前記回転式切替機構を回転させる回転機構から成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記搬送装置の制御方法において、
前記貯留配管が、搬送元となる前記高圧ループ又は前記低圧ループである第1ループに継合され、前記流体と共に循環している前記被搬送物を、前記固液分離構造で捕集する貯留ステップと、
前記貯留配管が、前記第1ループから、搬送先である前記低圧ループ又は前記高圧ループである第2ループへ切り替えられる切替ステップと、
前記貯留配管に捕集された前記被搬送物を、前記第2ループの前記流体の循環中へ排出する排出ステップを有することを特徴とする搬送装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−235235(P2010−235235A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83732(P2009−83732)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)