説明

高弾性限を有する非晶質合金の成形品を形成する方法

【課題】成形工程が完了した後に高い弾性限を維持するバルク凝固非晶質合金の成形品を形成する方法を提供する。
【解決手段】TscとTxの差が過冷却温度範囲(ΔTsc)を定義する、ガラス転移点(Tg)、過冷却温度(Tsc)及び結晶化温度(Tx)を有するバルク凝固非晶質合金の原材料を準備する工程と、前記原材料を成形する温度まで加熱する工程と、規定した最大許容成形時間未満の時間と前記原材料のガラス転移温度付近に規定した最高成形温度未満の温度で前記原材料を成形し、成形品が少なくとも1.2%の弾性限を保持するように前記成形品を形成する工程であって、前記最高成形温度がΔTscの大きさに比例しかつ規定した前記許容成形時間が前記成形温度と前記ΔTScの双方に比例する工程と、を含む高弾性限を有する成形品を形成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<本発明の分野>
本発明は、ガラス転移領域付近でのバルク凝固非晶質合金の成形品を形成する方法に関し、より具体的には、成形工程の完了時にバルク凝固非晶質合金が高弾性限を保持するバルク凝固非晶質合金の成形品を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
<本発明の背景>
非晶質合金は、ほとんどが溶融状態から十分に速い冷却速度で形成された場合、一般的に1.8%〜2.2%の範囲にある高い弾性限を有する。さらに、これらの非晶質合金は、この場合薄い金属を引き伸ばしたリボン状であるので、実質的に100%までの曲げ延性を示すかもしれない。その上、ガラス転移点を示すことができる非晶質合金は、さらに、ガラス転移領域を越えて過冷却された液体を形成することができ、且つ非常に小さな負荷力(通常は20MPaまたはそれ以下)を用いて実質的に変形することができる。
【0003】
最近バルク凝固非晶質合金が発見された。バルク凝固非晶質合金は、溶融状態から約500K/secまたはそれ以下の冷却速度で冷却することができ、1.0mmまたはそれ以下の厚みの物体が実質的に非晶質原子構造を備えて形成される。これらの非晶質合金は、慣用の非晶質合金より実質的に厚く、通常は、0.020mmの厚みであり、且つ10K/secまたはそれ以上の冷却速度を必要とする。米国特許第5,288,344号、米国特許第5,368,659号、米国特許第5,618,359号及び米国特許第5,735,975号(各々は、本明細書に引用により合体する)は、そのようなバルク凝固非晶質合金のグループを開示する。バルク凝固非晶質合金の発見は広範囲の種々の応用をもたらす。従って、例えば、ガラス転移領域付近での鋳込み成形のように、バルク凝固非晶質合金を形成するための実用的且つ効率の良い方法は、これらの材料の使用が複雑で精確な形状を必要とする設計において望まれる。少なくとも数%の曲げ延性が一般的に好ましいとはいえ、(ほとんど100%のような)実質的な曲げ延性は、バルク凝固非晶質合金が弾性限を利用するように設計されているので、その全ての応用に対して本質的に必要なものでないことを注目すべきである。
【0004】
米国特許第6,027,586号、米国特許第5,950,704号、米国特許第5,896,642号、米国特許第5,324,368号及び米国特許第5,306,463号(各々は、本明細書に引用により合体される)は、ガラス転移を示す能力を利用して、非晶質合金の鋳込み成形品を形成する方法を開示する。しかしながら、ガラス転移付近の温度に曝されると、非晶質合金は、その延性を消失するかもしれないことが最近観察されてきた。実際に、ほとんどのバルク凝固非晶質合金の高い弾性限の実質的な部分は、非晶質材料それ自体が実質的に非晶質構造を保持するかもしれないが、慣用の形成プロセスの間に容易に消失されるかもしれない。慣用の方法は、最終製品の弾性が消失すると、材料が到達し得る極限強さレベルを限定する破壊靭性の消失をもたらす。実際に、バルク凝固非晶質合金の鋳込み成形品を形成する慣用の方法を利用すると、高い弾性限の消失は、除外よりはむしろ標準となる。この現象は、ミクロの結晶化及び構造緩和のような種々の因子に寄与するとはいえ、スピノーダル分解のような種々の熱的に活性化される過程およびナノ結晶構造の形成が、少なくとも部分的に起こり得る。米国特許第5,296,059号及び米国特許第5,209,791号(各々は、本明細書に引用により合体する)は、実質的に曲げ延性の消失を解決することを試み、且つガラス転移範囲付近の温度に曝された非晶質合金に延性を与える方法を開示する。これらの試みにも係わらず、バルク凝固非晶質合金を形成する先行技術の方法は、延性の消失と高弾性限の問題を十分に解決する方法でない。
【0005】
例えば、ガラス転移範囲付近でバルク凝固非晶質合金の種々の成形方法を実行した後で、X線回折などの従来の方法により、バルク凝固非晶質合金は、実質的に非晶質合金であると思われるけれども、この弾性限は、0.1%ほどの小ささとなる。さらに、従来技術の方法では非晶質組織の決定に一般的に使用されているX線回折技術は、実質的に非晶質組織を示すが、迅速且つ価格効果的に弾性限の消失を決定するには不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,288,344号
【特許文献2】米国特許第5,368,659号
【特許文献3】米国特許第5,618,359号
【特許文献4】米国特許第5,735,975号
【特許文献5】米国特許第6,027,586号
【特許文献6】米国特許第5,950,704号
【特許文献7】米国特許第5,896,642号
【特許文献8】米国特許第5,324,368号
【特許文献9】米国特許第5,306,463号
【特許文献10】米国特許第5,296,059号
【特許文献11】米国特許第5,209,791号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
要するに、非晶質合金の成形品を形成する従来の方法では、形成工程及び成形工程が完了した後に、バルク凝固非晶質合金の高い弾性限は、一般的に維持されない。従って、成形工程が完了した後に高い弾性限を実質的に維持するバルク凝固非晶質合金の成形品を形成する新規の改良された方法が所望される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<発明の要約>
本発明は、成形工程が完了したとき、高弾性限のバルク凝固非晶質合金を維持するバルク凝固非晶質合金の成形品をガラス転移範囲付近で形成する方法に向けられる。本発明の方法は、バルク凝固非晶質合金の原材料を供給する工程と、その後非晶質合金原材料をガラス転移範囲付近で成形する工程を含み、本発明にしたがい少なくとも1.2%の弾性限を保持する成形品を形成する。
【0009】
別の実施態様では、成形品は少なくとも1.8%の弾性限を保持し、好ましくは、少なくとも1.8%の弾性限と少なくとも1.0%の曲げ延性とを保持する。いかなるバルク凝固非晶質合金も本発明に利用されてもよいが、好ましい実施態様においては、バルク凝固非晶質合金は、ガラス転移点を示す能力を有し、且つ少なくとも1.5%の弾性限を有する。さらに好ましくは、原材料の非晶質合金は、少なくとも1.8%の弾性限を有し、且つ最も好ましくは、原材料の非晶質合金は、少なくとも1.8%の弾性限と少なくとも1.0%の曲げ延性とを有する。さらに、このバルク凝固非晶質合金の原材料は、30℃以上のΔTsc(過冷却液体領域)、好ましくは、60℃以上のΔTsc、さらに最も好ましくは、90℃またはそれ以上のΔTscを有する。
【0010】
さらに別の実施態様において、原材料非晶質合金のΔTscが90℃以上の場合は、Tmaxが(Tsc+1/2ΔTsc)で与えられ、好ましくは、(Tsc+1/4ΔTsc)で与えられ、最も好ましくは、(Tsc)によって与えられるように成形工程の温度が限定される。原材料の非晶質合金のΔTscが60℃以上の場合は、Tmaxが(Tsc+1/4ΔTsc)で与えられ、好ましくは、(Tg)によって与えられるように成形工程の温度が限定される。原材料の非晶質合金のΔTscが30℃以上の場合は、Tmaxが(Tsc)で与えられ、好ましくは、(Tg)で与えられ、最も好ましくは、Tg−30によって与えられるように、成形工程の温度が限定される。
【0011】
さらに他の実施態様において、所定のTmaxに対して、t(T>Tsc)が成形工程の間に、Tsc以上で使用される最大許容時間を規定するように、及びt(T>Tsc)(Pr.)が最大許容時間を規定するように、成形工程の時間が限定される。さらに、所定のTmaxに対して、t(T>Tg)が成形工程の間に、Tg以上で使用されることができる最大許容時間を規定し、且つt(T>Tg)(Pr.)が好ましい最大許容時間を規定する。上記条件に加えて、所定のTmaxに対して、t(T>Tg−60)が成形工程の間に、温度(Tg−60)以上で使用されることができる最大許容時間を規定し、且つt(T>Tg−60)(Pr.)は、好ましい最大許容時間を規定する。
【0012】
さらに他の実施態様において、原材料の厚みの形状は、形成作業の完了時に、原材料の半加工品が表面領域の少なくとも20%のに渡って保存される。好ましくは、原材料の半加工品の厚みが、その表面領域の少なくとも50%に渡って保存され、さらに好ましくは、原材料の半加工品の厚みが、その表面領域の少なくとも70%に渡って保存され、最も好ましくは、原材料の半加工品の厚みが、その表面領域の少なくとも90%に渡って保存される。この実施態様においては、原材料の半加工品の厚みは、厚み変化が10%未満であり、好ましくは、5%未満であり、さらに好ましくは、2%未満であり、且つ最も好ましくは、この厚みが実質的に変化しないで維持される場合に「保存される」。
【0013】
さらに他の実施態様において、合金組成及び成形工程の時間と温度は、ΔHn/ΔTnと比較されるΔH1/ΔT1の比率に基づいて選ばれる。このような実施態様においては、好ましい合金組成は、他の結晶化工程と比較して最も高いΔH1/ΔT1を有する材料である。例えば、一つの実施態様においては、好ましい合金組成は、ΔH1/ΔT1>2.0×ΔH2/ΔT2であり、さらに好ましくは、ΔH1/ΔT1>4.0×ΔH2/ΔT2である。これらの合金組成に対しては、さらに激しい時間と温度、すなわち、t(T>Tsc)(Pr.)とTmax(Pr.)よりもむしろt(T>Tsc)とTmaxを成形作業で容易に活用することができる。その一方で、ΔH1/ΔT1<0.5×ΔH2/ΔT2である組成に対しては、さらに慎重な時間と温度、すなわち、t(T>Tsc)(Pr.)とTmax(Pr.)よりもむしろt(T>Tsc)とTmax(M.Pr.)が好ましい。
【0014】
さらに他の実施態様において、成形工程は、吹き付け成形法、型成形法、及び複製する型からの表面形状の複製法から成る群から選択される。
【0015】
さらに他の実施態様において、この合金は、(Zr、Ti)a(Ni、Cu、Fe)b(Be、Al、Si、B)cから成るグループから選択され、ここで、aは原子百分率で合計組成の30〜75%の範囲にあり、bは原子百分率で合計組成の5〜60%の範囲にあり、cは原子百分率で合計組成の0〜50%の範囲にある。さらに他の実施態様において、この合金は、Nb、Cr、V、Coのような他の遷移金属を原子百分率で合計組成の20%以下の量で含む。
【0016】
適切な例示の合金のグループは、aが原子百分率で合計組成の40〜75%の範囲にあり、bが原子百分率で合計組成の5〜50%の範囲にあり、cが原子百分率で合計組成の5〜50%の範囲にある(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cと、aが原子百分率で合計組成の45〜65%の範囲にあり、bが原子百分率で合計組成の10〜40%の範囲にあり、cが原子百分率で合計組成の5〜35%の範囲にあり、且つTi/Zrの比率が0〜0.25の範囲にある(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cと、aが原子百分率で合計組成の45〜70%の範囲にあり、bが原子百分率で合計組成の0〜10%の範囲にあり、cが原子百分率で合計組成の10〜45%の範囲にあり、dが原子百分率で合計組成の5〜25%の範囲にある(Zr)a、(Ti、Nb)b(Ni、Cu)c(Al)dとを含む。上記のグループからの一つの適正な例示の合金は、Zr47TiNi10Cu7.5Be27.5である。
【0017】
さらに他の例示の実施態様において、バルク凝固非晶質合金の原材料は、連続鋳造法及び金属成形鋳造法を含む鋳造工程によって準備され、且つ原材料は、シート、板、棒、環状棒、I形ビーム及びパイプから成る群から選択された半成品形状に形成される。
【0018】
さらに他の実施態様において、本発明は成形品の弾性限を決定する方法に向けられる。本願発明のこれらの及び他の特徴は、明細書と特許請求の範囲と図面を参照することによってよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に従うバルク凝固非晶質合金の成形品を形成するための第1の例示の方法を示す図である。
【図2】本発明に従うバルク凝固非晶質合金の成形品を形成するための第2の例示の方法を示す図である。
【図3a】バルク凝固非晶質合金から成形品を形成する従来技術の方法の概略図である。
【図3b】本発明に従うバルク凝固非晶質合金から成形品を形成する方法の概略図である。
【図4】本発明に従うバルク凝固非晶質合金から成形品を形成する方法の概略図である。
【図5】本発明に従うバルク凝固非晶質合金の物理的性質の示す図である。
【図6a】本発明に従うバルク凝固非晶質合金の結晶化の特性を示す図である。
【図6b】本発明に従うバルク凝固非晶質合金の結晶化の特性を示す別の図である。
【図7】本発明に従う成形品の弾性限を決定する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<本発明の詳細>
本発明は、成形工程の完了時にバルク凝固非晶質合金が高弾性限を保存する、バルク凝固非晶質合金の成形品をガラス転移範囲付近で形成する方法に向けられる。
【0021】
図1に示す本発明の一つの実施態様においては、バルク凝固非晶質合金の原材料は、工程1で準備される。工程2で、準備されたバルク凝固非晶質合金の原材料は、最終製品がバルク凝固非晶質合金原材料が高弾性限を維持するように、ガラス転移点付近で成形される。成形する時間と温度を制御することによって、形成工程の完了時の工程3で、本発明に従う成形品は、少なくとも1.2%の弾性限を、好ましくは、少なくとも1.8%の弾性限を、最も好ましくは、少なくとも1.8%の弾性限と少なくとも1.0%の曲げ延性を維持する。本明細書で、弾性限は、永久変形かまたは破壊を示す最大歪みレベルとして定義され、この百分率は、非晶質合金の細長片の厚み(t)とマンドレルの直径(D)との比率を取ることにより、式e=t/Dで与えられる。
【0022】
適切なバルク凝固非晶質合金の原材料は、連続鋳造法及び金属成形鋳造法を含む既知の鋳造方法によって準備されることができるが、これらに限定されるものでない。原材料の非晶質合金は、シート、板、棒、環状棒のような適切な半加工品形状に、並びにI形ビーム及びパイプのような別の形状にすることができる。
【0023】
図2は、原材料の厚みの変化を制御することによって、成形製品のバルク凝固非晶質合金材料の弾性限を保持する方法の第2の例示の実施態様を示す。本発明では、いかなる適切な原材料および形状も使用されるかもしれないが、好ましくは、原材料は、成形作業が可能な限り短時間の枠内で完了されるような形状に準備される。従って、このような実施態様では、準備された原材料の形状及びガラス転移範囲付近の形成作業は、形成作業の完了時に、原材料の厚みが、原材料の半加工品の表面積の少なくとも20%のわたって保持されるようなものである。好ましくは、原材料の半加工品の厚みは、その表面積の少なくとも50%に渡って保持され、さらに好ましくは、原材料の半加工品の厚みは、その表面積の少なくとも70%に渡って保持され、最も好ましくは、原材料の半加工品の厚みは、その表面積の少なくとも90%に渡って保持される。この実施態様においては、原材料の半加工品の厚みは、厚みの変化が10%未満、好ましくは、5%未満、さらに好ましくは、2%未満、及び最も好ましくは、この厚みは実質的に変化しないで保持される場合に「保存される」。
【0024】
原材料の厚みは、通常に形成された原材料の最小寸法を意味する。従って、厚みは、長い環状物に対しては「直径」、長い多角形物に対しては「断面積を規定する直径」、またはデスク状(パンケーク状)の形状物に対しては「高さ」となる。「厚み」は、原材料物の平面の断面積の最小可能寸法として、または対向する表面間の距離としてより一般的に規定することができる。従って、表面積は、原材料物の二つの寸法を残すことによって与えられる。
【0025】
本発明の一つの実施例は、米国特許第5,324,368号に開示されるような先行技術に対して、図3a及び3bで示される。先行技術(図3a)では、成形物12に形成される半製品の表面積の大部分にわたって変形と厚みが変化する必要があり、このことは、成形作業を遅くし、長い時間と非常に大きな成形力を必要とする。これらの条件のもとでは、バルク凝固非晶質合金の高弾性を保持することは困難となる。本発明においては(図3b)、半製品10の変形と厚みの変化は、成形品に成形されるとき、比較的限定された表面積で発生し、少ない時間と非常に小さな力しか必要としない。このことは、2つの派生的効果を教示する、すなわち、第1に成形時にバルク凝固非晶質合金の弾性限を保持する効果があり、且つ第2に生産性を有効的に増加させて価格を安くする成形作業の速度を増加させる効果がある。
【0026】
図4を参照すると、非晶質合金原材料の半製品10から成形品12を成形するために、型形成(原材料を型の空隙に押し込む)及び複製型からの表面形状の複製などの適切な成形作業を利用することができる。例えば、形成過程は、互いに対して移動する雄型または雌型のいずれか一方の部品で行うことができる。しかしながら、好ましい方法は、図4に模式的に示すように、雄型14と雌型16の一方及び双方の部品の1つまたはそれ以上を互いに対して移動することである。
【0027】
成形過程の間に、いかなる適切な温度が使用されてもよいが、非晶質合金原材料は、好ましくは、ガラス転移範囲付近に保持される。このような実施態様においては、「ガラス転移範囲付近」は、成形作業が、ガラス店移転以上で、ガラス転移点より僅かに低い温度で、またはガラス転移点で実施することができることを意味するが、少なくとも結晶化温度Tx以下で実施される。最終成形品が非晶質合金原材料の高い弾性限を保持することを確実にするために、成形工程の温度及び時間は、好ましくは、以下の表1(温度単位は℃であり、且つ時間単位は分である)に示される最高温度に従って限定される。
【0028】
【表1】

【0029】
ΔTsc(過冷却液体範囲)は、非晶質合金が過冷却される温度範囲であり、Tmaxは、成形過程中の最高許容温度であり、Tmax(Pr)は、成形過程中の最も好ましい最高許容温度である。
【0030】
上記の表において、本開示目的のために、Tg、Tsc及びTxは、標準DSC(示差走査型熱量計)の図5に示すような20℃/分の走査によって決定される(40℃/分または10℃/分のような他の加熱速度でも本開示の物理的性質を完全に維持したまま利用することができる。)。Tgはガラス転移の開始温度として定義され、Tscは過冷却温度領域の開始温度として、Txは結晶化開始温度として定義される。ΔTscはTxとTscとの差として定義される。全ての温度単位は℃である。
【0031】
従って、原材料の非晶質合金のΔTscが90℃以上である場合、そのときTmaxは、(Tsc+1/2ΔTsc)によって与えられ、好ましくは(Tsc+1/4ΔTsc)によって与えられ、最も好ましくは(Tsc)によって与えられる。原材料の非晶質合金のΔTscが60℃以上である場合、そのときTmaxは(Tsc+1/4ΔTsc)によって与えられ、好ましくは(Tsc)によって与えられ、最も好ましくは(Tg)によって与えられる。原材料の非晶質合金のΔTscが30℃以上である場合、そのときTmaxは(Tsc)によって与えられ、好ましくは(Tg)によって与えられ、最も好ましくは(Tg−30)によって与えられる。
【0032】
さらに、いかなる加熱期間も本発明に利用されてもよいが、所定温度以上で使用される時間は、好ましくは、制限され、且つこれらの好ましい時間の限定の要約は、以下の表2に示される。
【0033】
【表2−1】

【0034】
【表2−2】

【0035】
【表2−3】

【0036】
従って、所定のTmaxに対して、t(T>Tsc)は、成形工程中のTsc以上で使用されることができる最大許容時間を規定し、t(T>Tsc)(Pr.)は、好ましい最大許容時間を規定する。さらに、所定のTmaxに対して、t(T>Tg)は、成形工程中のTg以上で利用されることができる最大許容時間を規定し、t(T>Tg)(Pr.)は、好ましい最大許容時間を規定する。上記条件に加えて、所定のTmaxに対して、t(T>Tg+60)は、成形工程中の(Tg−60)℃以上で利用されることができる最大許容時間を規定し、t(T>Tg−60)(Pr.)は、好ましい最大許容時間を規定する。全ての時間の値は分で与えられる。
【0037】
さらに、上記時間及び温度枠の選択は、バルク凝固非晶質合金の一般的に結晶挙動を用いて調整することができる。
【0038】
例えば、図6a及び図6bに示されるように、バルク凝固非晶質合金の典型的なDSC加熱走査において、結晶化は一つまたはそれ以上の工程を含むことができる。好ましいバルク凝固非晶質合金は、通常のDSC過熱走査において単一結晶化工程を持つものである。しかしながら、ほとんどのバルク凝固非晶質合金は通常のDSC過熱走査において1回以上の工程で結晶化する(この開示目的のために、全てのDSC加熱走査は20℃/分で行われ、抽出された全ての値は20℃/分のDSC走査からである。本開示の物理特性がまだ残っている間は、40℃/分または10℃/分のような別の加熱速度も利用することができる。)。
【0039】
20℃/分の加熱速度のような通常のDSC走査におけるバルク凝固非晶質合金の結晶化挙動の一つのタイプを図6aに概略的に示す。この結晶化は、2工程で起こる。図示するように、この実施例においては、第1結晶化工程は、比較的広い温度範囲に渡って比較的遅いピーク変化速度で起こり、第2結晶化工程は、狭い温度範囲に渡って第1結晶化工程より非常に早いピーク変化速度で起こる。此処で、ΔT1及びΔT2は、第1結晶化工程と第2結晶化工程で発生する温度範囲として定義される。ΔT1及びΔT2は、結晶化の開始と結晶化の「終結」との間の差を決めることによって計算することができ、これは図5に示されるような先行する傾向線と追従する傾向線の交点を得ることによってTxを同様に計算することができる。結晶化のエンタルピーによるピーク熱流、ΔH1及びΔH2は、基準熱流と比較したピーク熱流の値を計算することによって計算されることができる(ΔT1、ΔT2、ΔH1及びΔH2の絶対値は、特定のDSCの設定及び用いた試験片の大きさに依存するが、相対的な走査(すなわち、ΔT1対ΔT2)は変わらないで保持することに注目すべきである。)。
【0040】
20℃/分の加熱速度のような通常のDSC走査におけるバルク凝固非晶質合金の結晶化挙動の第2の実施態様を図6bに概略的に示す。再び、結晶化は、2工程で起こるが、この実施例においては、第1結晶化工程は、比較的狭い温度範囲に渡って比較的速いピーク変化速度で生じ、一方第2結晶化工程は、第1結晶化工程より広い温度範囲に渡って第1結晶化工程より遅いピーク変化速度で生じる。ΔT1、ΔT2、ΔH1及びΔH2は上記と同様に定義され且つ計算される。
【0041】
図6a及び図6bに示される例示の実施態様を用いると、図6bに示す結晶化挙動を有するバルク凝固非晶質合金は、ΔT1<ΔT2及びΔH1>ΔH2であり、且つさらに激しい成形、たとえば、広範囲に及ぶ変形と、ガラス転移温度以上の高い最高温度と、より長い持続期間を必要とする成形作業に対して、好ましい合金である。ガラス転移温度以上の高い温度は、改善された流動性と、且つ均一な加熱時間と均一な変形のために多くの時間を与える延長された持続時間とを与える。図6aに示されるバルク凝固非晶質合金の場合は、ΔT1>ΔT2及びΔH1<ΔH2であり、より多くの保持時間と温度枠(「好ましい」及び「最も好ましい」最高温度と時間として記載される)が利用される。
【0042】
さらに、形状比率は、ΔHn/ΔTnによってそれぞれの結晶化工程に対して規定することができる。ΔHn/ΔTnに対して比較されるΔH1/ΔT1が大きくなると、合金組成はより好ましくなる。従って、所定のバルク凝固非晶質合金のグループからの、好ましい組成は、他の結晶化工程に対して比較される最も高いΔH1/ΔT1を有する材料である。例えば、この好ましい合金組成は、ΔH1/ΔT1>2.0×ΔH2/ΔT2を有する。この組成に対しては、成形作業において、さらに激しい時間と温度を容易に利用することができ、すなわち、t(T>Tsc)(Pr.)及びTmax(M.Pr.)よりもむしろt(T>Tsc)及びTmax(Pr.)が利用される。さらに好ましくは、ΔH1/ΔT1>4.0×ΔH2/ΔT2が利用される。この組成に対しては、成形作業において、さらに激しい時間と温度を容易に利用することができ、すなわち、t(T>Tsc)(Pr.)及びTmax(Pr.)よりはむしろt(T>Tsc)及びTmaxが利用される。対照的に、ΔH1/ΔT1<0.5×ΔH2/ΔT2である組成に対しては、控えめな保持時間と温度が好ましく、すなわち、t(T>Tsc)及びTmax(Pr.)よりむしろt(T>Tsc)(Pr.)及びTmax(M,Pr.)が利用される。
【0043】
二つの結晶化工程のみを含む例示の実施態様を上記説明したが、幾つかのバルク凝固非晶質合金の結晶化挙動は、2つ以上の工程で起こることができる。このような場合、ΔT3、ΔT4など、ΔH3、ΔH4などもまた定義される。そのような場合でもバルク凝固非晶質合金の好ましい組成は、ΔH1がΔH1、ΔH2、・・・ΔHの最大であり且つΔH1/ΔT1がその後のΔH2/ΔT2・・・ΔHn/ΔTnのそれぞれより大きいものである。
【0044】
成形品が最終的に形成された場合、弾性限は弾性限が所望の因子以内であることを確証するために測定されるかもしれない。製品の弾性限は、1軸引っ張り試験のような種々の機械的試験によって測定することができる。しかしながら、この試験は、実用的でない。比較的実用的な試験は、図7に概略的に示すような曲げ試験であり、これは0.5mmの厚みを備える非晶質合金10の切断帯板が、種々の直径のマンドレル18の周囲で曲げられる。曲げが完了し且つ試料帯板10が取り外された後に、永久曲がりが目視観察されない場合に、試料10は、弾性を保持するという。永久曲がりが目視することができる場合、この試料20は、弾性限の歪みを越えたといえる。マンドレルの直径に比較して薄い帯板に対しては、曲げ試験における歪は、帯板の厚み(t)及びマンドレルの直径(D)の比、e=t/Dによって非常に厳密に求められる。
【0045】
いかなるバルク凝固非晶質合金も本発明に利用されるかもしれないが、好ましい実施態様においては、バルク凝固非晶質合金は、ガラス転移を生じる能力を有し、且つこのようなバルク凝固非晶質合金から作られた原材料は、少なくとも1.5%の弾性限を有する。さらに好ましくは、原材料非晶質合金は、少なくとも1.8%の弾性限を有し、且つ最も好ましくは、原材料非晶質合金は、少なくとも1.8%の弾性限と少なくとも1.0曲げ延性とを有する。さらに、好ましくは、バルク凝固非晶質合金の原材料は、好ましくは、20℃/分のDSC測定によって決定されるような30℃以上のΔTsc(過冷却液相範囲)、好ましくは、60℃以上のΔTsc、さらに最も好ましくは、90℃またはそれ以上のΔTscを有する。90℃以上のΔTscを有する一つの適切な合金は、Zr47TiNi10Cu7.5Be27.5である。米国特許第5,288,344号、米国特許第5,368,659号、米国特許第5,618,359号、米国特許第5,032,196号及び米国特許第5,735,975号(各々は、本明細書に引用により合体される)は、30℃またはそれ以上のΔTscを有するこのようなバルク凝固非晶質合金のグループを開示する。バルク凝固非晶質合金のこのような一つの適切なグループは、(Zr、Ti)a(Ni、Cu、Fe)b(Be、Al、Si、B)cのような一般的な用語で記載され、ここで、aは原子百分率で合計組成の30〜75%の範囲にあり、bは原子百分率で合計組成の5〜60%の範囲にあり、cは原子百分率で合計組成の0〜50%の範囲にある。
【0046】
上記で参照した合金は、本発明の用途に適切であるが、この合金は、他の遷移金属、好ましくはNb、Cr、V、Coのような金属を原子百分率で合計組成の20%以下の実質的な量含むことができることを理解すべきである。これらの遷移金属を組み込む適切な合金の例は、合金のグループ(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cを含み、ここでaは、原子百分率で合計組成の40〜75%の範囲にあり、bは原子百分率で合計組成の5〜50%の範囲にあり、cは原子百分率で合計組成の5〜50%の範囲にある。
【0047】
また、より好ましい合金のグループは、(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cであり、ここで、aが原子百分率で合計組成の45〜65%の範囲にあり、bが原子百分率で合計組成の10〜40%の範囲にあり、cが原子百分率で合計組成の5〜35%の範囲にあり、且つTi/Zrの比が0〜0.25の範囲にある。別の好ましい合金のグループは、(Zr)a(Ti、Nb)b(Ni、Cu)c(Al)dであり、ここで、aは、原子百分率で合計組成の45〜70%の範囲にあり、bは原子百分率で合計組成の0〜10%の範囲にあり、cは原子百分率で合計組成の10〜45%の範囲にあり、dが原子百分率で合計組成の5〜25%の範囲にある。
【0048】
バルク凝固非晶質合金の別の組は、鉄金属基の組成(Fe、Ni、Co)である。このような組成の例は、米国特許第6,325,868号と、(A. Inoue et. al., Appl. Phys. Lett., Volume 71, p464 (1997))と、(Shen et. al., Mater. Trans., JIM, Volume 42, p2136 (2001))と、日本の特許出願第2000−126277号(公開番号2001−303218号)とに開示され、これらの開示は、本明細書に引用により合体される。このような合金の一つの例示の組成は、Fe72AlGa11である。別の合金の一つの例示の組成は、Fe72AlZr10Mo15である。これらの合金組成はZr基合金系の程度まで加工可能ではないが、本開示において利用するのに十分に足りる1.0mmまたはそれ以上の厚みに加工処理可能である。それらの密度は、Zr/Ti基合金より一般的に高く、6.5g.ccから8.5g.ccまでではあるが、その硬さは、7.5GPAから12GPAたはそれ以上の大きさであり、特に興味を引く。同様に、それらは1.2%より大きな弾性歪限と、2.5GPAから4GPAまでの非常に高い降伏強度を有する。
【0049】
一般的に、バルク非晶質合金中の結晶析出物は、それらの特性、特に、靭性及び強度に非常に有害であり、従って、一般的に可能な最小体積分率が好ましい。しかしながら、延性結晶質層がバルク非晶質合金の加工処理の際にその場で析出し、それがバルク非晶質合金の特性特に靭性と延性に対して有利である場合があると考えられる。このような便利な析出物を含むバルク非晶質合金は、また本発明に含まれる。一つの例が、(C.C. Hays et. al, Physical Review Letters, Vol. 84, p2901, 2000)に開示される。
【0050】
本発明の幾つかの形状を図示及び開示をするが、種々の変更及び改良が本発明の精神と範囲から離脱することなく可能であることは当業者には明確である。従って、添付した特許請求の範囲を除き、本発明を限定することを意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TscとTxの差が過冷却温度範囲(ΔTsc)を定義する、ガラス転移点(Tg)、過冷却温度(Tsc)及び結晶化温度(Tx)を有するバルク凝固非晶質合金の原材料を準備する工程と、
前記原材料を成形する温度まで加熱する工程と、
規定した最大許容成形時間未満の時間と前記原材料のガラス転移温度付近に規定した最高成形温度未満の温度で前記原材料を成形し、成形品が少なくとも1.2%の弾性限を保持するように前記成形品を形成する工程であって、前記最高成形温度がΔTscの大きさに比例し且つ規定した前記許容成形時間が前記成形温度と前記ΔTscの双方に比例する工程と、
を含む高弾性限を有する成形品を形成する方法。
【請求項2】
前記成形品が、少なくとも1.8%及び少なくとも1.5%からなる群から選択された弾性限を保持する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記成形品が、少なくとも1.0%の曲げ延性を保持する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記バルク凝固非晶質合金の原材料が、少なくとも1.5%の弾性限を有する請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記バルク凝固非晶質合金の原材料が、少なくとも1.8%の弾性限を有する請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記バルク凝固非晶質合金の原材料が、少なくとも1.0%の曲げ延性を有する請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記バルク凝固非晶質合金が、60℃ΔT>30℃、90>ΔT>60℃、及びΔT>90℃からなる群から選択されたΔTscの範囲を有する請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記原材料のΔTscが90℃以上である場合、前記最高成形温度が(Tsc+1/2ΔTsc)、(Tsc+1/4ΔTsc)及びTscから成る群から選択された値によって与えられる請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記原材料のΔTscが60℃以上且つ90℃未満である場合、前記最高成形温度が(Tsc+1/4ΔTsc)、Tsc及びTgから成る群から選択された値によって与えられる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記原材料のΔTscが30℃以上且つ60℃未満である場合、前記最高成形温度がTsc、Tg及びTg−30から成る群から選択された値によって与えられる請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記原材料のΔTscが90℃以上であり、且つ前記最高成形温度が式(Tsc+1/2ΔTsc)または式(Tsc+1/4ΔTsc)のいずれかによって与えられる場合は、直ちに前記原材料の温度は、Tsc以上に保たれる分で表示した前記最大成形時間が0.5ΔTsc及び0.25ΔTscからなる群から選択された値によって与えられる請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記原材料のΔTscが90℃以上であり、且つ前記最高成形温度が(Tsc+1/2ΔTsc)、(Tsc+1/4ΔTsc)及び(Tsc)からなる群から選択されたいずれかによって与えられる場合は、直ちに前記原材料の温度は、Tg+60℃Tsc以上に保たれる分で表示した前記最大成形時間が60+0.5ΔTsc及び30+0.25ΔTscからなる群から選択された値によって与えられる請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記原材料のΔTscが60℃以上90℃未満であり、且つ前記最高成形温度が式(Tsc+1/4ΔTsc)によって与えられる場合は、直ちに前記原材料の温度は、Tsc以上に保たれる分で表示した前記最大成形時間が0.5ΔTsc及び0.25ΔTscからなる群から選択された値によって与えられる請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記原材料のΔTscが60℃以上90℃未満であり、且つ前記最高成形温度が式(Tsc+1/4ΔTsc)、(Tsc)及び(Tg)からなる群から選択された式のいずれかによって与えられる場合は、直ちに前記原材料の温度は、Tg−60℃以上に保たれる分で表示した前記最大成形時間が60+0.5ΔTsc及び30+0.25ΔTscからなる群から選択された値によって与えられる請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記原材料のΔTscが30℃以上60℃未満であり、且つ前記最高成形温度が式(Tsc)によって与えられる場合は、直ちに前記原材料の温度は、TscTsc以上に保たれる分で表示した前記最大成形時間が20+0.5ΔTsc及び20からなる群から選択された値によって与えられる請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記原材料のΔTscが30℃以上60℃未満であり、且つ前記最高成形温度が式(Tsc)、(Tg)及び(Tg−30)からなる群から選択された式のいずれかによって与えられる場合は、前記原材料の温度は、Tg−60℃Tsc以上に保たれる前記最大成形時間が40+0.5ΔTsc及び20+0.5ΔTscからなる群から選択された値によって与えられる請求項1記載の方法。
【請求項17】
成形する工程が、吹き付け成形法、型成形法、及び複製型から表面性質の複製法から成る群から選択された請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記バルク凝固非晶質合金が、(Zr、Ti)a(Ni、Cu、Fe)b(Be、Al、Si、B)cから成る族から選択され、aが原子百分率で合計組成の30〜75%の範囲にあり、bが原子百分率で合計組成の5〜60%の範囲にあり、cが原子百分率で合計組成の0〜50%の範囲にある請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記バルク凝固非晶質合金が、原子百分率で合計組成の20%以下の量の他の遷移金属を含む請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記バルク凝固非晶質合金が、(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cから成る族から選択され、aが原子百分率で合計組成の40〜75%の範囲にあり、bが原子百分率で合計組成の5〜50%の範囲にあり、cが原子百分率で合計組成の5〜50%の範囲にある請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記バルク凝固非晶質合金が、(Zr、Ti)a(Ni、Cu)b(Be)cから成る族から選択され、aが原子百分率で合計組成の45〜65%の範囲にあり、bが原子百分率で合計組成の10〜40%の範囲にあり、cが原子百分率で合計組成の5〜35%の範囲にあり、且つTi/Zrの比率が0〜0.25の範囲にある請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記バルク凝固非晶質合金が、Zr47TiNi10Cu7.5Be27.5である
請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記バルク凝固非晶質合金が、(Zr)a(Ni、Nb)b(Ni、Cu)c(Al)dから成る族から選択され、aが原子百分率で合計組成の45〜70%の範囲にあり、bが原子百分率で合計組成の0〜10%の範囲にあり、cが原子百分率で合計組成の10〜45%の範囲にあり、dが原子百分率で合計組成の5〜25%の範囲にある請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記バルク凝固非晶質合金が、2.5GPa〜4GPaまたはそれ以上の降伏強度を有する(Fe、Ni、Co)基である請求項1記載の方法。
【請求項25】
複数の雄型及び雌型の構成物を含む一組の型を備える工程を含み、前記成形する工程が雄型または雌型の構成物のいずれかの一つ以上が他の構成物に対して移動することを含む請求項1記載の方法。
【請求項26】
原材料を準備する工程が、連続鋳造法及び金属成形鋳造法からなる群から選択された鋳造する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記成形する工程が、シート、板、棒、環状棒、I形ビーム及びパイプから成る群から選択された成形物を形成する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項28】
成形品の構造が、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも70%及び少なくとも90%からなる群から選択された百分率で原材料の表面領域を覆うとき、前記成形する工程が、さらに前記原材料の厚みを保存する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項29】
百分率での原材料の厚み変化が、10%未満、5%未満、2%未満及び約0%からなる群から選択されるときに、前記厚みを保存する工程が起こる請求項28記載の方法。
【請求項30】
成形品の弾性限を決定する工程をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項31】
前記成形品の弾性限が、一軸引っ張り試験及び曲げ試験からなる群から選択された機械的試験によって決定される請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記バルク凝固非晶質合金の組成は、典型的なDSC走査における前記非晶質合金の結晶化が単一工程で現れるように選択される請求項1記載の方法。
【請求項33】
前記バルク凝固非晶質合金が、結晶化が起きる少なくとも二つの温度範囲(ΔT1及びΔT2)と、少なくとも二つのピーク加熱流(ΔH1及びΔH2)と、で規定され少なくとも二つの結晶化工程を有し、且つ
前記バルク凝固非晶質合金の組成は、ΔH1がその後の各結晶化のエンタルピーより大きくなり且つΔH1/ΔT1>2.0×ΔH2/ΔT2となるように選択する請求項1記載の方法。
【請求項34】
前記原材料のΔTscが90℃以上であるときは、最高成形温度が(Tsc+1/4ΔTsc)によって与えられる請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記原材料のΔTscが60℃以上90℃未満であるときは、最高成形温度が(Tsc)によって与えられる請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記原材料のΔTscが30℃以上60℃未満であるときは、最高成形温度が(Tg)によって与えられる請求項33記載の方法。
【請求項37】
前記バルク凝固非晶質合金が、結晶化が起きる少なくとも二つの温度範囲(ΔT1及びΔT2)と、少なくとも二つのピーク加熱流(ΔH1及びΔH2)と、で規定され少なくとも二つの結晶化工程を有し、且つ
前記バルク凝固非晶質合金の組成は、ΔH1がその後の各結晶化のエンタルピーより大きくなり且つΔH1/ΔT1>4.0×ΔH2/ΔT2となるように選択される請求項1記載の方法。
【請求項38】
前記原材料のΔTscが90℃以上であるときは、最高成形温度が(Tsc+1/2ΔTsc)によって与えられる請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記原材料のΔTscが60℃以上90℃未満であるときは、最高成形温度が(Tsc+1/4ΔTsc)によって与えられる請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記原材料のΔTscが30℃以上60℃未満であるときは、最高成形温度が(Tsc)によって与えられる請求項37記載の方法。
【請求項41】
前記バルク凝固非晶質合金が、結晶化が起きる少なくとも二つの温度範囲(ΔT1及びΔT2)と、少なくとも二つのピーク加熱流(ΔH1及びΔH2)と、で規定され少なくとも二つの結晶化工程を有し、且つ
前記原材料のΔH1/ΔT1<0.5×ΔH2/ΔT2及びΔTscが90℃より大きくし、そのとき最高成形温度が(Tsc)によって与えられる請求項1記載の方法。
【請求項42】
前記バルク凝固非晶質合金が、結晶化が起きる少なくとも二つの温度範囲(ΔT1及びΔT2)と、少なくとも結晶化エンタルピー(ΔH1及びΔH2)で規定され少なくとも二つの結晶化工程を有し、且つ
前記原材料のΔH1/ΔT1<0.5×ΔH2/ΔT2が60℃以上90℃未満とし、そのとき最高成形温度が(Tg)によって与えられる請求項1記載の方法。
【請求項43】
前記バルク凝固非晶質合金が、結晶化が起きる少なくとも二つの温度範囲(ΔT1及びΔT2)と、少なくとも二つのピーク加熱流(ΔH1及びΔH2)と、で規定され少なくとも二つの結晶化工程を有し、且つ
前記原材料のΔH1/ΔT1<0.5×ΔH2/ΔT2及びΔT2が30℃以上60℃未満とし、そのとき最高成形温度が(Tg−30)によって与えられる請求項1記載の方法。
【請求項44】
所定の厚みを有するバルク凝固非晶質合金の原材料を準備する工程、
前記原材料を成形する温度まで加熱する工程、
規定した最大許容成形時間未満の時間で、前記原材料のガラス転移温度付近に規定した最高成形温度未満の温度で、前記原材料を成形することにより前記成形品を成形し、前記原材料の厚みが、成形品が少なくとも1.2%の弾性限を残すように前記原材料の表面領域の少なくとも一部を覆って十分に保存される工程、
を含む高弾性限を有する成形品を形成する方法。
【請求項45】
さらに、雄及び雌の型を備える工程を含み、前記成形する工程が雄または雌の型のいずれか一つが他の構成物に対して移動することを含む請求項44記載の方法。
【請求項46】
複数の雄及び雌の型構成物を含む一組の型を備える工程を含み、前記成形する工程が雄または雌の型構成物のいずれかの一つ以上が他の構成物に対して移動することを含む請求項44記載の方法。
【請求項47】
成形品の構造が、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも70%及び少なくとも90%からなる群から選択された百分率で原材料の表面領域を覆うとき、前記成形する工程が、さらに前記原材料の厚みを保存する工程を含む請求項44記載の方法。
【請求項48】
百分率での原材料の厚み変化が、10%未満、5%未満、2%未満及び約0%からなる群から選択されるときに、前記厚みを保存する工程が起こる請求項45記載の方法。
【請求項49】
前記成形品が、少なくとも1.8%及び少なくとも1.5%からなる群から選択される弾性限を保持する請求項45の方法。
【請求項50】
前記成形品が、少なくとも1.0%の曲げ延性を保持する請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記バルク凝固非晶質合金の原材料が、少なくとも1.8%及び少なくとも1.5%の群から選択された弾性限を有する請求項44記載の方法。
【請求項52】
前記バルク凝固非晶質合金の原材料が、少なくとも1.0%の曲げ延性を有する請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記バルク凝固非晶質合金が、60>ΔT>30℃、90>ΔT>60℃、及びΔT>90℃からなる群から選択されたΔTscの範囲を有する請求項51記載の方法。
【請求項54】
前記バルク凝固非晶質合金の組成は、典型的なDSC走査における前記非晶質合金の結晶化が単一工程で起きるように選択される請求項44記載の方法。
【請求項55】
前記バルク凝固非晶質合金が、結晶化が起きる少なくとも二つの温度範囲(ΔT1及びΔT2)と、少なくとも二つのピーク加熱流(ΔH1及びΔH2)と、で規定され少なくとも二つの結晶化工程を有し、且つ
前記バルク凝固非晶質合金の組成は、ΔH1がその後の各結晶化のエンタルピーより大きくなり且つΔH1/ΔT1>2.0×ΔH2/ΔT2となるように選択する請求項44記載の方法。
【請求項56】
前記バルク凝固非晶質合金が、結晶化が起きる少なくとも二つの温度範囲(ΔT1及びΔT2)と、少なくとも二つのピーク加熱流(ΔH1及びΔH2)と、で規定され少なくとも二つの結晶化工程を有し、且つ
前記バルク凝固非晶質合金の組成は、ΔH1がその後の各結晶化のエンタルピーより大きくなり且つΔH1/ΔT1>4.0×ΔH2/ΔT2となるように選択する請求項44記載の方法。
【請求項57】
TscとTxの差が過冷却温度域(ΔTsc)を定義する、ガラス転移点(Tg)、過冷却温度(Tsc)、及び結晶化温度(Tx)を有するバルク凝固非晶質合金の原材料を準備する工程、
前記原材料を成形する温度まで加熱する工程、
規定した最大許容成形時間未満の時間で、前記原材料のガラス転移温度付近に規定した最高成形温度未満の温度で、前記原材料を成形することにより、成形品が少なくとも1.2%の弾性限を保持するために前記成形品を成形する工程であり、前記最高成形温度がΔTscの大きさに比例し且つ規定した前記許容成形時間が前記成形温度と前記ΔTscの双方に比例すること、を含む高弾性限を有する成形品を形成する方法であり、
前記バルク凝固非晶質合金が、結晶化が起きる少なくとも二つの温度範囲(ΔT1及びΔT2)と、少なくとも二つのピーク加熱流(ΔH1及びΔH2)と、で規定され少なくとも二つの結晶化工程を有し、ここでΔH1/ΔT1>2.0×ΔH2/ΔT2であるようにし、ΔTscが90℃以上である場合は、その結果として、最高成形温度がTsc+1/4ΔTscによって与えられ、且つ直ちに分で表示される最大成形時間が0.25ΔTscによって与えられ、ΔTscが60℃が以上90℃未満である場合は、その結果として、最高成形温度がΔTscによって与えられ、且つ直ちに分で表示した最大成形時間が0.25ΔTscによって与えられ、ΔTscが30℃以上60℃未満である場合は、その結果として、最高成形温度がΔTgによって与えられ、且つ直ちに分で表示した最大成形時間が20によって与えられる、
高弾性限を有する成形品を形成する方法。
【請求項58】
TscとTxの差が過冷却温度域(ΔTsc)を定義する、ガラス転移点(Tg)、過冷却温度(Tsc)、及び結晶化温度(Tx)を有するバルク凝固非晶質合金の原材料を準備する工程、
前記原材料を成形する温度まで加熱する工程、
規定した最大許容成形時間未満の時間で、前記原材料のガラス転移温度付近に規定した最高成形温度未満の温度で、前記原材料を成形することにより、成形品が少なくとも1.2%の弾性限を保持するために前記成形品を成形する工程であり、前記最高成形温度がΔTscの大きさに比例し且つ規定した前記許容成形時間が前記成形温度と前記ΔTscの双方に比例すること、を含む高弾性限を有する成形品を形成する方法であり、
前記バルク凝固非晶質合金が、結晶化が起きる少なくとも二つの温度範囲(ΔT1及びΔT2)と、少なくとも二つのピーク加熱流(ΔH1及びΔH2)と、で規定され少なくとも二つの結晶化工程を有し、ここでΔH1/ΔT1>4.0×ΔH2/ΔT2であるようにし、ΔTscが90℃以上である場合は、その結果として、最高成形温度がTsc+1/2ΔTscによって与えられ、且つ直ちに分で表示した最大成形時間が0.5ΔTscによって与えられ、ΔTscが60℃以上90℃未満である場合は、その結果として、最高成形温度がΔTsc+1/4Tscによって与えられ、且つ直ちに分で表示した最大成形時間が0.5ΔTscによって与えられ、ΔTsc30℃が以上60℃未満である場合は、その結果として、最高成形温度がΔTscによって与えられ、且つ直ちに分で表示した最大成形時間が20+5ΔTscによって与えられる
高弾性限を有する成形品を形成する方法。
【請求項59】
TscとTxの差が過冷却温度域(ΔTsc)を定義する、ガラス転移点(Tg)、過冷却温度(Tsc)、及び結晶化温度(Tx)を有するバルク凝固非晶質合金の原材料を準備する工程、
前記原材料を成形する温度まで加熱する工程、
規定した最大許容成形時間未満の時間で、前記原材料のガラス転移温度付近に規定した最高成形温度未満の温度で、前記原材料を成形することにより、成形品が少なくとも1.2%の弾性限を保持するために前記成形品を成形する工程であり、前記最高成形温度がΔTscの大きさに比例し且つ規定した前記許容成形時間が前記成形温度と前記ΔTscの双方に比例すること、
を含む高弾性限を有する成形品を形成する方法であり、
前記バルク凝固非晶質合金が、結晶化が起きる少なくとも二つの温度範囲(ΔT1及びΔT2)と、少なくとも二つのピーク加熱流(ΔH1及びΔH2)と、で規定され少なくとも二つの結晶化工程を有し、ここでΔH1/ΔT1<0.5×ΔH2/ΔT2であるようにし、ΔTscが90℃以上である場合は、その結果として、最高成形温度がTscによって与えられ、且つ直ちに分で表示した最大成形時間が0.25ΔTscによって与えられ、ΔTscが60℃が以上90℃未満である場合は、その結果として、最高成形温度がΔTgによって与えられ、且つ直ちに分で表示した最大成形時間が0.25ΔTscによって与えられ、ΔTscが30℃以上60℃未満である場合は、その結果として、最高成形温度がΔTgによって与えられ、且つ直ちに分で表示した最大成形時間が20によって与えられる、
高弾性限を有する成形品を形成する方法。
【請求項60】
請求項1に従って準備されるバルク凝固非晶質合金。
【請求項61】
成形品が少なくとも1.8%の弾性限を保持する請求項1に従って準備されるバルク凝
固非晶質合金。
【請求項62】
成形品が少なくとも1.8%の弾性限と少なくとも10%の曲げ延性を保持する請求項
1に従って準備されるバルク凝固非晶質合金。
【請求項63】
請求項44に従って準備されるバルク凝固非晶質合金。
【請求項64】
成形品が少なくとも1.8%の弾性限を保持する請求項44に従って準備されるバルク凝固非晶質合金。
【請求項65】
成形品が少なくとも1.8%の弾性限と少なくとも10%の曲げ延性を保持する請求項44に従って準備されるバルク凝固非晶質合金。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−80152(P2011−80152A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−232372(P2010−232372)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【分割の表示】特願2003−527141(P2003−527141)の分割
【原出願日】平成14年9月6日(2002.9.6)
【出願人】(503326823)リキッドメタル テクノロジーズ,インコーポレイティド (7)