説明

高気圧保持装置

【課題】袋体を気密性にできると供に、簡易な構成で部品点数も少なく且つ製造コストを低減できる高気圧保持装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかる高気圧保持装置1は、患者を収納する軟質樹脂材製の袋体3を高気圧状態に保持するものであり、袋体3は患者が出入りする開閉部17にスライド式のファスナ19を備え、開閉部17にはファスナ19のスライド方向に沿う両側に軟質樹脂材製の帯状体21a、21bが設けてあり、各帯状体21a、21bは開閉部17から袋体内側に垂下して設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者を収納した袋体内に空気等の気体を供給して袋体内を高気圧に保持する高気圧保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、特許文献1には、袋体の開閉部にスライド式のファスナを設ける構成が開示されている。ファスナからは気体が漏れ出る為、この特許文献1の技術では、開閉部を外側面材と内側面材との2つの面材からなる二重構造として、外側面材にファスナ(外側ファスナ)を設け、内側面材にも外側ファスナとずれた位置に気密ファスナー(内側ファスナ)を設けた構成とし、袋体内を高圧にしたときに、外側ファスナを内側面材で覆い、外側ファスナからの気体漏れを低減することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3720032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の高気圧保持装置では、開閉部を外側面材と内側面材との2つの面材による二重構造にすると供に各面材にはファスナを設ける構成であるから、構造が複雑で且つ部品点数が増えるという問題がある。
更に、内側ファスナには高価な高気密性ファスナを用いており、コスト高になるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、袋体を気密性にできると供に、簡易な構成で部品点数も少なく且つ製造コストを低減できる高気圧保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、患者を収納する軟質樹脂材製の袋体と、袋体に高圧気体を供給する加圧装置とを備え、袋体内を高気圧状態に保持する高気圧保持装置において、袋体は患者が出入りする開閉部にスライド式のファスナを備え、開閉部にはファスナのスライド方向に沿う両側に軟質樹脂材製の帯状体が設けてあり、各帯状体は開閉部から袋体内側に垂下して設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載された発明によれば、袋体内の気圧が高まると、開閉部に設けたファスナから袋体内の気体が外部に漏れる為、袋体内では開閉部付近が相対的に減圧となる。この為、ファスナの両側に垂下されている帯状体が互いに対向面を近づけるように変形し、更に帯状体の対向面側が減圧になり、2つの帯状体は互いに圧着すると供にファスナに圧着して開閉部を密閉する。
したがって、本発明によれば、袋体に設けたファスナの左右両側に軟質樹脂製の帯状体を垂下させるだけであるから、簡易で且つ部品点数の少ない構成で袋体内を気密にできる。
また、本発明ではファスナからの気体漏れを利用しているので、従来技術のように高気密ファスナ等の特別なファスナを必要としなしので、製造コストを安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施の形態に係る高気圧保持装置において袋体内を高気圧にしたときの縦断面図である。
【図2】図1に示す開閉部を抜き出して示す拡大図である。
【図3】図2に示す開閉部において、袋内の気圧に圧縮空気の供給を始めたときの状態を示す断面図である。
【図4】本実施の形態にかかる高気圧保持装置の外観を示す斜視図である。
【図5】変形例を示す図であり、帯状体の配置を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図4に示すように、本実施形態にかかる高気圧保持装置1は、袋体内の酸素濃度を高め、袋体内の患者が多量の酸素を取りこむことで、疲労回復、血流促進等を図るものである。
図4に示すように、この高気圧保持装置1は、軟質樹脂製の袋体3と、袋体3内に圧縮空気を供給して袋体3内の圧力を高める加圧装置5とから構成されている。
袋体3は、患者(人)が横になった状態で収容するものであり、略円筒形状(カプセル状)をなしている。患者の頭が位置するヘッド部7には透明樹脂材ができている窓9が設けてある。
袋体3の材質は、EVA(エチレンビニルアセテイト)樹脂、ウレタン、ナイロン、塩化ビニル等の軟質材である。
患者の足が位置するフット部11には、加圧装置5に接続する接続口13と、排気バルブ15とが設けてある。
ヘッド部7とフット部11との間には、患者が出入りする開閉部17が円筒の側線に沿って長く設けてあり、開閉部19はスライド式のファスナ19により開閉するようになっている。
このファスナ19は、左右に互い違い設けた多数の係合片19aに対してスライダ19bを一方にスライドすることにより係合片19aを互いに係止させ、他方にスライドすることにより係止を解除するものである。
図4及び図3に示すように、開閉部17には、ファスナ19のスライド方向に沿う両側(左右)に袋体3の内側に向けて垂下する帯状体21a、21bが設けてある。これらの帯状体はファスナ19の始点から終点に渡って設けてあり、ファスナ19を挟むようにして配置されている。
帯状体21a、21bは非通気性の軟質樹脂製であればよいが、好ましくは可撓性が高く変形し易いゴム材が好ましい。
各帯状体21a、21bが垂下している寸法Tは、ファスナ19の幅Wよりも充分に大きな寸法である。
尚、図4において、符号25は所定気圧以上に袋体3内の気圧が高まると袋体3内の気体を放出する安全バルブであり、符号27は袋体内の圧力を表示する圧力ゲージである。
【0010】
次に、本実施の形態に係る気圧保持装置1の使用方法、作用効果について説明する。使用時には、ファスナ19を操作して開閉部17を開き開閉部17から患者が袋体3内に入り横になる。そして、操作者がファスナ19を閉じて、加圧装置5を作動させる。
加圧開始時には、図3に示すように、帯状体21a、21bは互いに間隔をあけて垂下した状態となっている。
加装置5を作動させて、圧縮空気を袋体3内に供給すると、次第に袋体3内の空気圧が高まるが、密閉性の低いファスナ19から袋体3内の空気が漏れ出る為、帯状体21a、21b間は減圧状態になり、帯状体21a、21bは互いに近接し、図1及び図2に示すように、帯状体21a、21bは互いに密着する。そして、密着した帯状体21a、21bは更に袋体3内の圧力に押されてファスナ19を覆う。
即ち、帯状体21a、21bは互い密着した状態でファスナ19に圧着して、袋体3内からファスナ19を覆う。
これにより、袋体3内は内圧の高まりと供にファスナ19からの気体の漏れを阻止し、更に袋体3内に圧縮空気を供給することにより、袋体3内を所定の空気圧力にする。
尚、袋体内の圧力は、約1.2〜1.4気圧に保持する。
【0011】
本実施の形態によれば、袋体3内の気圧を高めていくと、開閉部17に設けたファスナ19から袋体3内の気体が外部に漏れることを利用して、ファスナ19の両側に垂下されている帯状体21a、21bが互いに対向面を近づけるように変形して圧着すると供にファスナ19に密着するので、開閉部を容易に密閉することができる。
ファスナ19の袋体内側に軟質樹脂製の帯状体21a、21bを垂下させるだけであるから、簡易で且つ部品点数の少ない構成で袋体3内を気密にすることができる。
更に、ファスナ19からの気体漏れを利用しているので、従来技術のように高気密ファスナ等の特別なファスナを必要としなしので、製造コストを安価にできる。
【0012】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0013】
例えば、図5に示すように、ファスナ19の長手方向に沿って設けた帯状体21a、21aに加えて、ファスナの始端側と終端側とにもファスナ19の幅方向に帯状体21c、29dを設けて、帯状体21a、21b、21c、21dによりファスナ19の周囲を囲むものであっても良い。この場合、長手方向の帯状体21a、21bは幅方向の帯状体21c、21dよりも柔らかい材質のものを使用するか、同じ材質で厚みを薄くして変形し易くすることが好ましい。
長手方向の帯状体21a、21bが先に変形密着した後に、帯状体21a、21bの長手方向端部に幅方向の帯状体21c、21dを密着できるからである。
【0014】
袋体3内に供給する気体は、圧縮空気に限らず、酸素、マイナスイオンや香料、ビタミン液等を混入した空気であっても良い。
【符号の説明】
【0015】
1 高気圧保持装置
3 袋体
5 加圧装置
17 開閉部
19 スライド式ファスナ
21a、21b 帯状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を収納する軟質樹脂材製の袋体と、袋体に高圧気体を供給する加圧装置とを備え、袋体内を高気圧状態に保持する高気圧保持装置において、袋体は患者が出入りする開閉部にスライド式のファスナを備え、開閉部にはファスナのスライド方向に沿う両側に軟質樹脂材製の帯状体が設けてあり、各帯状体は開閉部から袋体内側に垂下して設けてあることを特徴とする高気圧保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−104132(P2011−104132A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262501(P2009−262501)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(502010136)株式会社フューテック (8)
【Fターム(参考)】