説明

高炉の吹卸し操業方法

【課題】空気の吹き抜けやコークスの流動化を抑制して、コークスの消費速度と装入物の減尺速度の向上を図り、吹卸し操業に要する時間を従来よりも短縮可能な高炉の吹卸し操業方法を提供する。
【解決手段】高炉10を吹き止め、高炉10の羽口11から空気を送風して、高炉10炉内の装入物12を減尺する高炉の吹卸し操業方法において、羽口11から吹き込まれる空気が高炉10炉内を吹き抜けることを防止可能な限界送風量を、装入物12の流動開始速度を用いて予め求め、減尺される装入物12の上面が、高炉10の炉腹部17の下部から朝顔部15の上部の領域に達したときに、羽口11から吹き込む空気の送風量を、羽口11から吹き込む空気の浮力と装入物12の重量との釣り合いから得られる送風量から、限界送風量以下に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の改修や工事などを行う際に、事前に高炉炉内の装入物を減尺させる高炉の吹卸し操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉の改修や工事などを行う場合、高炉炉内の装入物(炉内に層状に装入された鉱石とコークス)の高さレベルを低減(減尺)させる吹卸し操業を事前に行っている。この吹卸し操業を行うに際しては、炉内の装入物重量の減少と炉内の圧損状態の変化(融着帯消滅など)とが同時に起こることから、これらを考慮した操業を行わなければ、羽口から送り込む空気が高炉炉頂へ吹き抜ける現象(吹き抜け)が発生し易くなる。
このため、過去の操業実績などから、十分な安全率を見込んだ空気の送風量を決定し、この送風量で、炉内の装入物を減尺させることが一般的である。
【0003】
特に、減尺末期は、炉内の炉芯コークス(傾斜角度:通常60度)が安息角(通常は20〜30度)まで崩れながら、羽口先にコークスが供給されるため、このときの送風量の設定を誤ると、上記した空気の吹き抜けやコークスの流動化が発生して、以下の問題が生じる。
1)羽口から吹き込まれた空気と装入物の接触機会が減少することで、装入物中のコークスの消費速度が遅れる。
2)吹き上がった装入物が、再度羽口前方のレースウェイ領域に供給され、装入物の減尺速度が遅れる。
そこで、例えば、特許文献1に示すように、ガスによる浮力(ΔP×断面積、ΔPは炉内圧損)と装入物重量(装入物荷重ともいう)との比を算出し、更に過去の実績から求めたしきい値により、羽口から送り込む空気の送風量を決定する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−254897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の方法は、高炉炉内の断面積とガス流の分布を一定と考える必要があることから、ガスによる浮力と装入物重量との比が1となる場合は、吹き抜けが発生しないことになるが、減尺末期では、空気の送風量を、通常操業の実績を基に安全率を見込んだ値に設定しなければ、空気の吹き抜けやコークスの流動化が発生していた。これは、装入物重量やガス流分布が、高炉炉内の半径方向で異なっていることに起因する。
更に、減尺末期には、装入物が高炉の朝顔部まで減尺されるが、この朝顔部は、すり鉢状になっており、しかも炉芯コークスの存在によりガス流路の断面積が縮小しているため、炉内ガスの流速が上昇して、空気の吹き抜けやコークスの流動化が発生することが多い。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、空気の吹き抜けやコークスの流動化を抑制して、コークスの消費速度と装入物の減尺速度の向上を図り、吹卸し操業に要する時間を従来よりも短縮可能な高炉の吹卸し操業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)高炉を吹き止め、該高炉の羽口から空気を送風して、該高炉炉内の装入物を減尺する高炉の吹卸し操業方法において、
前記羽口から吹き込まれる空気が前記高炉炉内を吹き抜けることを防止可能な限界送風量を、前記装入物の流動開始速度を用いて予め求め、減尺される前記装入物の上面が、前記高炉の炉腹部の下部から朝顔部の上部の領域に達したときに、前記羽口から吹き込む空気の送風量を、該羽口から吹き込む空気の浮力と前記装入物の重量との釣り合いから得られる送風量から、前記限界送風量以下に切り替えることを特徴とする高炉の吹卸し操業方法。
【0008】
(2)前記領域は、前記朝顔部の上端位置を基準として、前記高炉の炉口から前記羽口までの距離Dの−0.1倍以上0.1倍以下の範囲であることを特徴とする(1)記載の高炉の吹卸し操業方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る高炉の吹卸し操業方法は、羽口から吹き込まれる空気が高炉炉内を吹き抜けることを防止可能な限界送風量を、装入物の流動開始速度を用いて予め求めるので、高炉炉内の半径方向で異なる装入物重量やガス流分布、並びに炉内断面積を考慮した空気の送風量が得られる。ここで、炉内断面積は、高炉の朝顔部の領域で減少するため、減尺される装入物の上面が、高炉の炉腹部の下部から朝顔部の上部の領域に達したときに、空気の送風量を、羽口から吹き込む空気の浮力と装入物の重量との釣り合いから得られる送風量から、限界送風量以下に切り替える。
これにより、空気の吹き抜けやコークスの流動化を抑制でき、コークスの消費速度と装入物の減尺速度の向上が図れ、吹卸し操業に要する時間を従来よりも短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(A)〜(D)は本発明の一実施の形態に係る高炉の吹卸し操業方法を適用する高炉の炉内状況を示す説明図である。
【図2】同高炉の吹卸し操業方法を適用した空気の送風量の推移を示す説明図である。
【図3】高炉の朝顔部での炉内状況の説明図である。
【図4】装入物の減尺率とCO生成率との関係を示す説明図である。
【図5】実施例に係る高炉の吹卸し操業方法を適用した空気の送風量推移を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)〜(D)、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る高炉の吹卸し操業方法は、高炉10の操業を停止し(吹き止め)、高炉10の羽口11から空気を送風して、高炉10炉内の装入物12、即ち層状に装入された鉱石とコークスの高さレベルを低減する減尺方法であり、羽口11から吹き込む空気の炉頂への吹き抜けやコークスの流動化を抑制して、コークスの消費速度と装入物12の減尺速度の向上を図る方法である。以下、詳しく説明する。
【0012】
高炉10の改修や工事などを行う場合、図1(A)に示すように、吹卸し操業を開始する。
まず、高炉10炉内に装入された鉱石とコークスの上に、更に多量のコークスを装入する。なお、層状に装入された鉱石及びコークスと、更に装入されたコークスとで、装入物12が構成される。
次に、図1(B)に示す吹卸し途中では、装入物12の表面高さ位置を測定する差指(垂下式のレベル検出器)13を用いて、装入物12の高さレベルを測定しながら、羽口11からの空気の送風量を、装入物12の高さレベルに応じて調整することにより、装入物12の高さレベルを低減する。なお、この装入物12の高さレベルが低減していくと、図1(C)に示すように、融着帯14が部分的に崩壊し、高炉10炉内の圧損が減少していく。
【0013】
上記した図1(A)〜(C)に示す吹卸し操業においては、羽口11から吹き込む空気の送風量を、以下に示す羽口11から吹き込む空気の浮力と、装入物12の重量との釣り合いから求める。
ΔP×S=W ・・・(1)
ここで、ΔP:炉内圧損(kg/m)、S:高炉の炉内断面積(m)、W:装入物重量(kg)、である。なお、炉内圧損は、{(送風圧力)−(炉頂圧力)}で求まる。
この式(1)について、装入物12の重量と空気による浮力との比をFとすると、式(2)で示される。
F=W/(ΔP×S) ・・・(2)
【0014】
なお、上記した装入物重量Wは、式(3)で表される。
W=WV×(1+α)×(O/C+1)/{(O/C)/ρore+1/ρcoke} ・・・(3)
ここで、WV:炉内容積(m)、α:装入物の圧縮率(例えば、0.1)、O/C:{(鉱石重量)/(コークス重量)}、ρore:鉱石の密度(kg/m)、ρcoke:コークスの密度(kg/m)、である。
【0015】
そして、前記した式(2)に、上記した式(3)から得られる装入物重量Wと、F値を、それぞれ代入し、各減尺レベル(残留物の高さレベル)での炉内圧損ΔPを算出する。なお、装入物重量Wは、高炉の仕様と、使用する鉱石及びコークスの品質により決定される値を、式(3)に代入することで求まる。また、F値は、前記した羽口から吹き込む空気の浮力と、装入物の重量との釣り合いから、「1」とすればよいが、実際の高炉では、炉内の半径方向に重量のばらつき(O/C差など)があるため、安全率を含んだ値(例えば、2〜3程度)に設定する必要がある。
【0016】
以上の方法で得られた炉内圧損ΔPを限界圧力として、羽口11から吹き込む、図2に示す空気の送風量(F値制約)を求める。なお、この空気の送風量を求めるに際しては、予め算出した限界圧力と送風量の関係式(過去の実績)に代入して求める(対照表により求めてもよい)。
以上に示した空気の送風量の算出は、RAM、CPU、ROM、I/O、及びこれらの要素を接続するバスを備えた従来公知の演算器(即ち、コンピュータ)を用いて行うが、これに限定されるものではない。
【0017】
上記した送風量で、高炉10に空気を吹き込み、装入物12の減尺を行っていくが、融着帯14が消滅した後は、高炉10炉内の圧損が大幅に減少し、上記した限界圧力が大きく算出されてしまうため、空気の吹き抜けのリスクが拡大する。特に、減尺末期、即ち装入物12が高炉10の朝顔部15まで減尺すると、高炉10炉内のコークスが流動化する。これは、朝顔部15以下では、下方へ向けて縮径する朝顔部15のテーパ(傾斜角度:70〜85度程度)と、炉芯コークス16(空気は通過できない)の存在により、羽口11から吹き込まれる空気の流路(断面積)が減少し、上記した空気の送風量では、炉内のガス流速が上昇して、コークスが流動化し易くなるためである。
【0018】
そこで、減尺される装入物12の上面が、高炉10の炉腹部17の下部から朝顔部15の上部の領域に達したときに、羽口11から吹き込む空気の送風量を、前記した方法で求めた送風量から、羽口11から吹き込まれる空気が高炉10炉内を吹き抜けることを防止可能な送風量、即ち限界送風量以下に切り替える。なお、炉腹部17とは、その下端部が、朝顔部15の上端部に連接する部分であり、その断面積は、炉腹部17の上端から下端まで略同一である。
上記した送風量の切り替え領域は、具体的には、朝顔部15の上端位置Xを基準として、高炉10の炉口(ストックライン位置)の上端位置から羽口11の上端位置までの距離Dの−0.1倍以上0.1倍以下の範囲である(図1(A)参照)。
【0019】
このように、送風量の切り替え位置を、朝顔部15の上端位置Xを基準として、距離Dの±10%の領域内とすることで、吹卸し操業に悪影響を及ぼさない範囲で空気の送風量を変更できるが、好ましくは、上限を、距離Dの0.05倍、更には、朝顔部15の上端位置X、下限を、距離Dの−0.05倍とするのがよい。なお、装入物12の上面位置は、差指13により検知しているが、装入物12の上面位置を検出できれば、これに限定されるものではない。
上記した限界送風量は、装入物12の流動開始速度Umfを用いて予め求める。以下、流動開始速度Umfの算出方法について説明する。
【0020】
流動開始速度Umfは、粉体工学により、式(4)により理論的に算出できる。ただし、式(4)で使用する形状係数や空隙率は、高炉の解体調査(実績値)などを基に決定している。
mf={Dpi(ρ−ρgas)×g/24.5/ρgas1/2 ・・・(4)
ここで、Umf:流動開始速度(m/sec)、Dpi:粒径(m)、ρとρgas:密度(kg/m)、g:重力加速度(m/sec)、である。
なお、ρは、コークスを前提とした密度であり、ρgasは、H(8質量%)、HO(3質量%)、N(56質量%)、CO(25質量%)、及びCO(8質量%)で構成されるガスを前提とした密度である。
【0021】
また、高炉10炉内のガス流速Uは、式(5)で算出される。
={Vbosh/(60×ε×S)}×{(T+273)/273}×{1.033/(P+1.033)} ・・・(5)
ここで、U:ガス流速(m/sec)、Vbosh:ボッシュガス量(Nm/分)、ε:装入物の空隙率(−)、S:断面積(m)、T:ガス温度(℃)、P:送風圧力から送風管の配管圧損を差し引いた圧力(kg/m)、である。なお、上記式(5)の左辺では、ボッシュガス量Vboshを「60」で除しているため、左辺と右辺の単位は釣り合う。
従って、式(4)から、流動開始速度Umfを求めた後、この流動開始速度Umf未満となるU(例えば、流動開始速度Umfの80%以上100%未満)を式(5)に代入して、ボッシュガス量Vboshを求め、式(6)により限界送風量を決定する。
bosh=BV×1.21+(FVO/60)×2+BV×BM×(22.4/18)×2 ・・・(6)
ここで、BV:限界送風量(Nm/分)、FVO:酸素富化量(Nm/時間)、BM:送風湿分添加率(g/Nm)、である。
【0022】
なお、上記した式(5)に代入する炉内の断面積Sには、図3に示す断面積S1を使用できる。これは、高炉10の朝顔部15の傾斜角度が、炉内の装入物12(ここでは、コークス)を水平状態で減尺できるように設定されているためである。
しかし、炉内の断面積Sを、朝顔部15と炉芯コークス16の傾斜角度を考慮した値とすることもできる。この場合、コークスは、朝顔部15と炉芯コークス16に近づくに伴って、その高さ位置が高くなる(傾斜角度が大きくなる)傾向にあるが、コークスの安息角は30度であるため、この傾斜角度を超えて高くなることはない。そこで、差指13の位置を起点とし、傾斜角度30度で朝顔部15と接触する位置での水平状態の断面積S2を求め、この断面積S2と差指13の位置の断面積S1を、それぞれ式(5)に代入して、限界送風量を求めその平均値を求める。なお、差指13の炉径方向の位置は、炉腹の半径をRとした場合、炉中心から0.4R〜0.7Rの範囲内である。
【0023】
上記した方法で予め求めた限界送風量、即ち図2に示す空気の限界送風量(Umf制約)に基づいて(例えば、限界送風量の70%以上、更には90%以上、100%以下の送風量で)、高炉10炉内への空気の吹き込みを行う。なお、限界送風量も、前記した演算器により、予め求めることができる。
ここで、5000m級の高炉を使用して吹卸し操業を行うに際し、装入物中のコークスの消費速度と装入物の減尺速度との関係を検討し、吹卸し操業に要する時間を調査した結果について、図4を参照しながら説明する。
なお、図4中の発明例は、高炉の朝顔部の上端位置で、空気の送風量を限界送風量以下に切り替えた結果であり、従来例1、2は、内容積が若干異なるが5000m級の2つの高炉について、それぞれ空気の送風量を途中で切り替えることなく、従来法のように、最後までF値に基づいて行った結果である。
【0024】
ここで、発明例の送風量切り替え前の空気の送風量と、従来例1、2の空気の送風量の算出には、式(1)〜式(3)を使用し、従来と同様の方法で行った。
また、発明例での切り替え後の空気の送風量の算出に際しては、前記した式(4)と式(5)を使用しているが、式(4)中の粒径Dpiに0.05(m)、コークス密度ρに550(kg/m)、ガス密度ρgasに1.201(kg/m)を、それぞれ用い、式(5)中の装入物の空隙率εに0.55を用いた。
なお、送風量は、送風本管又は送風支管に設けた流量計で測定した。
【0025】
図4中の縦軸ηCO(%)は、次の式で示される。
ηCO=(炉頂ガスCO濃度)/{(炉頂ガスCO濃度)+(炉頂ガスCO濃度)}×100
上記式中の炉頂ガスCOと炉頂ガスCOの濃度の単位は、それぞれ容量%である。
還元燃焼(C+1/2O→CO)は酸化燃焼(C+O→CO)に対して、同一の酸素量に対して2倍のコークス(炭素C)を消費できるため、コークスの効率的な消費(減尺)が可能となる。つまり、ηCOが低い値であればコークスの還元燃焼が増え、コークスの消費速度と減尺速度の向上が図れ、その結果、吹卸し操業に要する時間の短縮が図れることになる。なお、ガスの各成分濃度は、炉頂に設置したガスクロマトグラフィーで測定した。
【0026】
図4から明らかなように、従来例1、2では、減尺率80%(朝顔部の上端位置Xに相当する位置)から、ηCOの上昇が確認された。これは、空気の吹き抜けやコークスの流動化が発生して、コークスの還元燃焼を更に増やすことができなかったことによる。
一方、発明例では、減尺率95%まで、ηCOを継続的に低減できることが確認された。これは、空気の吹き抜けやコークスの流動化を抑制して、コークスの還元燃焼を更に増やすことができたことによる。なお、減尺率100%は、羽口の上端位置に相当する位置である。
【0027】
その結果、5000m級の高炉の吹卸し操業においては、従来例1、2では、30〜36時間程度を要していたが、発明例では、24時間程度まで短縮できた。
以上のことから、羽口から吹き込む空気の送風量を、F値制約の値からUmf制約の値に切り替えることで、空気の吹き抜けやコークスの流動化(炉頂及び炉壁に設けた圧力計で推定)を抑制して、コークスの消費速度と装入物の減尺速度の向上を図り、吹卸し操業に要する時間を従来よりも短縮できることを確認できた。
【0028】
これにより、図1(D)に示すように、装入物12の羽口11近傍の表面高さ位置が、羽口11の高さ位置に到達し、炉芯コークス16の一部も崩壊して、吹卸しが終了する。このとき、羽口11へのコークスの供給は行われないため、羽口11先でのコークスの飛散はなくなる(羽口開口)。そして、出銑口18以上の高さ位置に残留する溶銑19と溶滓(スラグ)20を、出銑口18を介して炉内から排出する。
以上の方法により、吹卸し操業が終了するため、更に、炉内を冷却した後、高炉の改修や工事などを行う。
【実施例】
【0029】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
まず、5000m級の高炉について、前記した式(1)〜式(3)を使用してF値制約の送風量を求め、前記した式(4)〜式(6)を使用してUmf値制約の限界送風量を求めた。なお、空気の送風量の算出に際しては、前記した図4で用いた値と同じ値を使用した。
この結果を、図5に示す。
そして、得られた図5の結果に基づき、減尺される装入物の上面が、高炉の朝顔部の上端(装入物の減尺率:80%)に達したときに、羽口から吹き込む空気の送風量を、F値制約の値からUmf値制約の限界送風量以下に切り替えた。
【0030】
具体的には、図5の△印で示すように、空気の送風量を、F値の管理領域(装入物の減尺率:80%未満)では、求めた送風量の85%(更には90%)以上100%以下の範囲内に調整し、またUmf管理領域(装入物の減尺率:80%以上)では、求めた限界送風量の70%(更には、90%)以上100%以下の範囲内に調整した。なお、装入物の減尺率が90%を超える領域では、空気の送風量を徐々に減少させていくため、上記した下限を下回る場合がある。
この送風量は、送風本管又は送風支管に設けた流量計で測定した。
その結果、本発明の高炉の吹卸し操業方法を適用することで、空気の吹き抜けやコークスの流動化を抑制して、コークスの消費速度と装入物の減尺速度の向上が図れ、吹卸し操業に要する時間を従来よりも短縮できることを確認できた。
【0031】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の高炉の吹卸し操業方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
10:高炉、11:羽口、12:装入物、13:差指、14:融着帯、15:朝顔部、16:炉芯コークス、17:炉腹部、18:出銑口、19:溶銑、20:溶滓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉を吹き止め、該高炉の羽口から空気を送風して、該高炉炉内の装入物を減尺する高炉の吹卸し操業方法において、
前記羽口から吹き込まれる空気が前記高炉炉内を吹き抜けることを防止可能な限界送風量を、前記装入物の流動開始速度を用いて予め求め、減尺される前記装入物の上面が、前記高炉の炉腹部の下部から朝顔部の上部の領域に達したときに、前記羽口から吹き込む空気の送風量を、該羽口から吹き込む空気の浮力と前記装入物の重量との釣り合いから得られる送風量から、前記限界送風量以下に切り替えることを特徴とする高炉の吹卸し操業方法。
【請求項2】
請求項1記載の高炉の吹卸し操業方法において、前記領域は、前記朝顔部の上端位置を基準として、前記高炉の炉口から前記羽口までの距離Dの−0.1倍以上0.1倍以下の範囲であることを特徴とする高炉の吹卸し操業方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−144442(P2011−144442A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8332(P2010−8332)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)