説明

高炉水砕スラグ又はその粒度調整物の固結防止剤及び固結防止方法

【課題】
野積み状態で層外に放置する場合であっても、長期間に亘り高炉水砕スラグの固結を充分に防止することができる固結防止剤及び固結防止方法を提供する。
【解決手段】
固結防止剤として、水不溶性で高吸水性のアクリル系架橋重合体を用いた。このアクリル系架橋重合体は、1)アクリルアミド又はメタアクリルアミドから形成された構成単位、2)アクリル酸から形成された構成単位、3)アクリル酸塩から形成された構成単位及び4)架橋構造部分の構成単位を所定割合で有するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高炉水砕スラグ又はその粒度調整物の固結防止剤及び固結防止方法に関する。近年、天然砂が枯渇しつつあるなかで天然資源保護と環境保全の観点から、土木工事用材料やコンクリート用細骨材等に使用される天然砂の代替として、高炉水砕スラグやこれを粉砕して粒度調整した粒度調整物(以下、これらを単に高炉水砕スラグ等という)を使用する機会が増えてきている。高炉水砕スラグ等は、出荷待ちや使用待ちのために野積み状態で長期間貯蔵されたり、また船舶等で長期間輸送されることが多いが、これをそのまま長期間に亘って貯蔵したり、輸送すると、固結して遂には岩塊のようになってしまう。かかる固結は、気温の高い夏季において著しい。固結したものは前記のような天然砂の代替として使えず、それを敢えて天然砂の代替として使おうとすると、膨大な労力を要する。高炉水砕スラグ等を天然砂の代替として使用する場合には、その長期間に亘る貯蔵や輸送中にそれが固結しないようにすることが要求されるのである。本発明はかかる要求に応える高炉水砕スラグ等の固結防止剤及び固結防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉水砕スラグ等の固結防止剤として、1)脂肪族オキシカルボン酸やその塩(例えば特許文献1参照)、2)リグニンスルホン酸やその塩(例えば特許文献2参照)、3)糖類(例えば特許文献3参照)、4)脂肪族オキシカルボン酸やその塩のアルキレンオキサイド付加物(例えば特許文献4参照)、5)アクリル酸系重合体(例えば特許文献5参照)、6)マレイン酸系重合体(例えば特許文献6参照)、7)アクリル酸系重合体と脂肪族オキシカルボン酸との混合物(例えば特許文献7参照)等が提案されている。
【0003】
ところが、前記1)〜4)の固結防止剤には、程度の差はあるものの、それらが発揮する固結防止効果が不充分で、とりわけそれらを使用した高炉水砕スラグ等を長期間に亘り貯蔵や輸送すると、もともと高炉水砕スラグ等の保水性が低く、これに使用した固結防止剤が希釈水や雨水により流れ落ちるためと推察されるが、所期の固結防止効果が発揮されなくなるという問題がある。また前記5)〜7)の固結防止剤には、前記1)〜4)の固結防止剤に比較して、相当な改善が認められるものの、現在求められるようになっている更に優れた固結防止効果を得るには不充分という問題がある。
【特許文献1】特開昭54−130496号公報
【特許文献2】特開昭58−88046号公報
【特許文献3】特開昭58−104050号公報
【特許文献4】特開2001−58855号公報
【特許文献5】特開2003−160364号公報
【特許文献6】特開2003−306357号公報
【特許文献7】特開2004−99389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、長期間に亘り高炉水砕スラグ等の固結を更に充分に防止できる固結防止剤及び固結防止方法を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決する本発明は、高炉水砕スラグ等の固結防止剤であって、全構成単位中に、下記の化1で示される構成単位、化2で示される構成単位、化3で示される構成単位及び架橋構造部分の構成単位を合計で80モル%以上有し、且つ化1で示される構成単位を14〜48モル%、化2で示される構成単位を1〜42モル%、化3で示される構成単位を10〜84モル%及び架橋構造部分の構成単位を0.05〜1モル%の割合で有する水不溶性で高吸水性のアクリル系架橋重合体から成ることを特徴とする固結防止剤に係る。
【0006】
【化1】

【0007】
【化2】

【0008】
【化3】

【0009】
化1〜化3において、
R:水素原子又はメチル基
M:アルカリ金属原子又は有機アンモニウム
【0010】
また本発明は、高炉水砕スラグ等の固結防止方法であって、高炉水砕スラグ等100質量部当たり、前記の本発明に係る固結防止剤を0.002〜0.3質量部の割合となるよう混合することを特徴とする固結防止方法に係る。
【0011】
先ず、本発明に係る固結防止剤について説明する。本発明に係る固結防止剤はアクリル系架橋重合体から成るものである。このアクリル系架橋重合体は、1)全構成単位中に化1で示される構成単位、化2で示される構成単位、化3で示される構成単位及び架橋構造部分の構成単位を合計で80モル%以上有すること、2)全構成単位中に化1で示される構成単位を14〜48モル%、化2で示される構成単位を1〜42モル%、化3で示される構成単位を10〜84モル%及び架橋構造部分の構成単位を0.05〜1モル%の割合で有すること、3)水不溶性であること、4)高吸水性であること、以上の1)〜4)の特性を備える架橋重合体である。かかるアクリル系架橋重合体は相当する単量体を共重合することにより得られ、それ自体としては公知のものも含めて各種が挙げられる。
【0012】
化1で示される構成単位を形成することとなる単量体としては、アクリルアミド、メタアクリルアミドが挙げられるが、なかでもアクリルアミドが好ましい。化2で示される構成単位を形成することとなる単量体はアクリル酸である。化3で示される構成単位を形成することとなる単量体はアクリル酸塩である。アクリル酸塩としては、1)アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸リチウム等のアクリル酸アルカリ金属塩、2)アクリル酸トリエタノールアミン塩、アクリル酸ジエタノールアミン塩等のアクリル酸有機アミン塩が挙げられる。化3で示される構成単位には、単量体としてアクリル酸を用いて重合した後、アルカリ金属水酸化物又は有機アミン等で中和したものも含まれる。かかるアクリル酸塩のなかでも、アクリル酸アルカリ金属塩が好ましく、アクリル酸ナトリウムがより好ましい。
【0013】
架橋構造部分の構成単位を形成することとなる単量体としては、1)N,N−メチレンビスアクリルアミドのようなアミド系架橋性単量体、2)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のエステル系架橋性単量体、3)グリセリンジアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル等のエーテル系架橋性単量体、4)エチレングリコールジグリジジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等の多価グリシジル化合物系架橋性単量体等が挙げられるが、なかでもアミド系架橋性単量体、多価グリシジル化合物系架橋性単量体が好ましい。
【0014】
前記のアクリル系架橋重合体は、化1で示される構成単位、化2で示される構成単位、化3で示される構成単位及び架橋構造部分の構成単位以外に他の構成単位を有することができる。かかる他の構成単位を形成することとなる単量体としては、1)メタクリル酸、メタクリル酸の塩、クロトン酸、クロトン酸の塩、マレイン酸、マレイン酸の塩、フマル酸、フマル酸の塩等のα,β−不飽和カルボン酸又はその塩、2)2−ヒドロキシエチル−(メタ)アクリレート、ω−ヒドロキシポリエトキシエチル(メタ)アクリレート等の水溶性ビニル単量体等が挙げられるが、なかでもα,β−不飽和カルボン酸又はその塩が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
【0015】
本発明に係る固結防止剤として用いるアクリル系架橋重合体それ自体は、公知の方法で合成できる。これには例えば、特開平3−56513号公報や特開平10−101392号公報に記載の方法等が挙げられる。より具体的には例えば、ステンレス製圧力反応容器に、先ずアクリル酸水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液を加えてアクリル酸を部分中和し、次にアクリルアミド及びN,N−メチレンビスアクリルアミドを加え、更に窒素雰囲気下に過硫酸塩及び促進剤を加えた後、加圧下に60〜110℃の温度で重合反応を行なうことにより合成できる。
【0016】
本発明に係る固結防止剤として用いるアクリル系架橋重合体は、全構成単位中に、化1で示される構成単位、化2で示される構成単位、化3で示される構成単位及び架橋構造部分の構成単位を合計で80モル%以上有し、且つ化1で示される構成単位を14〜48モル%、化2で示される構成単位を1〜42モル%、化3で示される構成単位を10〜84モル%及び架橋構造部分の構成単位を0.05〜1モル%の割合で有するものであり、したがって他の構成単位を0〜20モル%の割合で有するものであるが、なかでも、全構成単位中に、化1で示される構成単位、化2で示される構成単位、化3で示される構成単位及び架橋構造部分の構成単位を合計で90モル%以上有し、且つ化1で示される構成単位を20〜40モル%、化2で示される構成単位を3〜30モル%、化3で示される構成単位を30〜76.5モル%及び架橋構造部分の構成単位を0.1〜0.5モル%の割合で有するもの、したがって他の構成単位を0〜10モル%の割合で有するものが好ましい。
【0017】
本発明に係る固結防止剤として用いるアクリル系架橋重合体は、水不溶性で高吸水性の架橋重合体である。なかでも、かかるアクリル系架橋重合体としては、0.9質量%食塩水の吸水量が10〜60g/gのものが好ましい。ここで0.9質量%食塩水の吸水量は、アクリル系架橋重合体の試料0.5gを300mlのビーカーに精秤し、0.9質量%食塩水200mlを加えて3時間攪拌した後、目開き147μm(100メッシュ)の金網で濾過し、5分間放置して、金網の水をペーパータオルで拭き取り、かくして吸水処理した後の試料及び金網の合計質量を測定して、次の式で算出したものである。0.9質量%食塩水の吸水量(g/g)=[吸水処理後の試料及び金網の合計質量(g)−金網の質量(g)]/0.5(g)
【0018】
また本発明に係る固結防止剤として用いるアクリル系架橋重合体としては、純水の吸水量が20〜1000g/gのものが好ましい。ここで純水の吸水量は、アクリル系架橋重合体の試料0.1gを300mlのビーカーに精秤し、純水200mlを加えて3時間攪拌した後、目開き147μm(100メッシュ)の金網で濾過し、5分間放置して、金網の水をペーパータオルで拭き取り、かくして吸水処理した後の試料及び金網の合計質量を測定して、次の式で算出したものである。純水の吸水量(g/g)=[吸水処理後の試料及び金網の合計質量(g)−金網の質量(g)]/0.1(g)
【0019】
更に本発明に係る固結防止剤として用いるアクリル系架橋重合体としては、質量平均粒子径10〜2000μmの粉粒状のものが好ましく、50〜1000μmの粉粒状のものがより好ましい。ここで質量平均粒子径は、ロータップ試験篩振とう機及び標準篩(JIS−Z8801−1:2000)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンパニー、1984,21頁)に記載の方法で測定した値である。
【0020】
以上のような0.9質量%食塩水の吸水量、純水の吸収量及び質量平均粒子径を有するアクリル系架橋重合体は、前記したように合成したアクリル系架橋重合体を反応系から分離し、細断、乾燥及び粉砕した後、篩等で分級することにより得ることができる。
【0021】
次に本発明に係る固結防止方法について説明する。本発明に係る固結防止方法は、高炉水砕スラグ等100質量部当たり前記した本発明に係る固結防止剤を0.002〜0.3質量部、好ましくは0.005〜0.1質量部の割合となるよう混合する方法である。高炉水砕スラグ等100質量部当たり本発明に係る固結防止剤が0.002質量部未満であると、固結防止効果が充分に発揮されず、逆に0.3質量部超としても、その割には固結防止効果が発揮されず、非経済的になるからである。高炉水砕スラグ等に本発明に係る固結防止剤を用いる場合、通常は高炉水砕スラグ等と本発明に係る固結防止剤とを乾式混合して用いる。この際、高炉水砕スラグ等に本発明に係る固結防止剤を予め高濃度で混合してマスターバッチ化したものを用いることもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の固結防止剤及び固結防止方法によると、野積み状態で屋外に放置する場合であっても、長期間に亘り高炉水砕スラグの固結を充分に防止することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の固結防止剤の実施形態としては、次の1)〜6)が挙げられる。
1)全構成単位中に、化1で示される構成単位としてアクリルアミドから形成された構成単位を29.8モル%、化2で示される構成単位としてアクリル酸から形成された構成単位を10モル%、化3で示される構成単位としてアクリル酸ナトリウムから形成された構成単位を60モル%及び架橋構造部分の構成単位としてN,N−メチレンビスアクリルアミドから形成された構成単位を0.2モル%(合計100モル%)の割合で有する、0.9質量%食塩水の吸水量が37g/gであり、純水の吸水量が250g/gであって、質量平均粒子径が450μmの粉粒状である水不溶性で高吸水性のアクリル系架橋重合体から成る固結防止剤。
【0024】
2)全構成単位中に、化1で示される構成単位としてアクリルアミドから形成された構成単位を20.9モル%、化2で示される構成単位としてアクリル酸から形成された構成単位を5モル%、化3で示される構成単位としてアクリル酸ナトリウムから形成された構成単位を74モル%及び架橋構造部分の構成単位としてN,N−メチレンビスアクリルアミドから形成された構成単位を0.1モル%(合計100モル%)の割合で有する、0.9質量%食塩水の吸水量が34g/gであり、純水の吸水量が400g/gであって、質量平均粒子径が400μmの粉粒状である水不溶性で高吸水性のアクリル系架橋重合体から成る固結防止剤。
【0025】
3)全構成単位中に、化1で示される構成単位としてアクリルアミドから形成された構成単位を39.7モル%、化2で示される構成単位としてアクリル酸から形成された構成単位を25モル%、化3で示される構成単位としてアクリル酸ナトリウムから形成された構成単位を35モル%及び架橋構造部分の構成単位としてN,N−メチレンビスアクリルアミドから形成された構成単位を0.3モル%(合計100モル%)の割合で有する、0.9質量%食塩水の吸水量が32g/gであり、純水の吸水量が200g/gであって、質量平均粒子径が250μmの粉粒状である水不溶性で高吸水性のアクリル系架橋重合体から成る固結防止剤。
【0026】
4)全構成単位中に、化1で示される構成単位としてアクリルアミドから形成された構成単位を15.9モル%、化2で示される構成単位としてアクリル酸から形成された構成単位を35モル%、化3で示される構成単位としてアクリル酸ナトリウムから形成された構成単位を44モル%、架橋構造部分の構成単位としてジエチレングリコールジグリシジルエーテルから形成された構成単位を0.1モル%及び他の構成単位としてメタアクリル酸から形成された構成単位を5モル%(合計100モル%)の割合で有する、0.9質量%食塩水の吸水量が30g/gであり、純水の吸水量が450g/gであって、質量平均粒子径が150μmの粉粒状である水不溶性で高吸水性のアクリル系架橋重合体から成る固結防止剤。
【0027】
5)全構成単位中に、化1で示される構成単位としてメタアクリルアミドから形成された構成単位を20.8モル%、化2で示される構成単位としてアクリル酸から形成された構成単位を15モル%、化3で示される構成単位としてアクリル酸ナトリウムから形成された構成単位を64モル%及び架橋構造部分の構成単位としてジエチレングリコールジグリシジルエーテルから形成された構成単位を0.2モル%(合計100モル%)の割合で有する、0.9質量%食塩水の吸水量が26g/gであり、純水の吸水量が350g/gであって、質量平均粒子径が700μmの粉粒状である水不溶性で高吸水性のアクリル系架橋重合体から成る固結防止剤。
【0028】
6)全構成単位中に、化1で示される構成単位としてメタアクリルアミドから形成された構成単位を14.7モル%、化2で示される構成単位としてアクリル酸から形成された構成単位を30モル%、化3で示される構成単位としてアクリル酸ナトリウムから形成された構成単位を40モル%、架橋構造部分の構成単位としてペンタエリスリトールトリアリルエーテルから形成された構成単位を0.3モル%及び他の構成単位としてメタアクリル酸から形成された構成単位を15モル%(合計100モル%)の割合で有する、0.9質量%食塩水の吸水量が28g/gであり、純水の吸水量が700g/gであって、質量平均粒子径が300μmの粉粒状である水不溶性で高吸水性のアクリル系架橋重合体から成る固結防止剤。
【0029】
また本発明に係る固結防止方法の実施形態としては、次の7)が挙げられる。
7)前記した1)〜6)のうちでいずれかの固結防止剤を、高炉スラグ100質量部当たり0.03質量部の割合となるよう混合して用いる固結防止方法。
【0030】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、別に記載しない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【実施例】
【0031】
試験区分1(固結防止剤としてのアクリル系架橋重合体の合成)
・実施例1
ステンレス製圧力反応容器に、アクリルアミド212部、水2210部、アクリル酸505部、30%水酸化ナトリウム水溶液240部をかき混ぜながら加えてアクリル酸を部分中和した。室温まで冷却した後、N,N−ビスアクリルアミド3部を加え、雰囲気を窒素ガスで置換して混合した。更に10%過硫酸ナトリウム水溶液0.5部及び10%ソルビン酸ナトリウム水溶液0.025部を加え、圧力300kPa及び最高温度90℃で1時間、重合反応を行なった。反応系から生成物を分離し、細断して、120℃の熱風乾燥機中で乾燥した後、粉砕し、篩で分級して、水不溶性で高吸水性のアクリル系架橋重合体(P−1)を得た。
【0032】
・実施例2〜6及び比較例1〜8
実施例1と同様にして、実施例2〜6及び比較例1〜8のアクリル系架橋重合体を得た。以上の各例で合成したアクリル系架橋重合体の内容を表1及び表2にまとめて示した。
【0033】
【表1】

【0034】
表1において、
a−1:アクリルアミドから形成された構成単位
a−2:メタアクリルアミドから形成された構成単位
b−1:アクリル酸から形成された構成単位
b−2:アクリル酸ナトリウムから形成された構成単位
c−1:メタアクリル酸から形成された構成単位
d−1:N,N−メチレンビスアクリルアミドから形成された構成単位
d−2:ジエチレングリコールジグリシジルエーテルから形成された構成単位
d−3:ペンタエリスリトールトリアリルエーテルから形成された構成単位
【0035】
【表2】

【0036】
試験区分2(固結防止性の評価その1)
バットに高炉水砕スラグ細骨材{JFEミネラル社製福山産高炉水砕スラグをJIS−A5011(コンクリート用スラグ骨材)に準じて5mm高炉水砕スラグ細骨材の粒度分布に調整したもの}を広げ、試験区分1で合成したアクリル系架橋重合体から成る固結防止剤を表3記載の添加量となるよう加えてハンドスコップで混合した。更に可傾式ミキサーで5分間混合した後、含水率10%となるように水を加え、再び可傾式ミキサーで5分間混合して固結防止剤を付着させた高炉水砕スラグ細骨材を得た。かくして固結防止剤を付着させた高炉水砕スラグ細骨材を内径100mmの円筒状容器に高さ125mmまで充填し、これに高炉水砕スラグの貯蔵高さ10mに相当する0.15MPaの圧力を載荷して供試体とした。水分の蒸発を防ぐため円筒状容器を密封し、80℃の恒温室で最長26週間まで供試体を養生した。所定期間養生後、供試体を脱枠し、粒度測定を行なった。粒度測定は、目開き5mm篩を用いて行ない、篩を通過しないで篩上に残存したものの質量を測定し、供試体中におけるその割合を求めた(表3中の5mm篩上割合)。結果を表3にまとめて示した。表3において、5mm篩上割合(%)の数値が低いほど、高炉水砕スラグ細骨材の固結が防止されていることを意味する。











【0037】
【表3】

【0038】
表3において、
添加量:高炉水砕スラグ細骨材100質量部当たりの固結防止剤の添加質量部
R−9:ポリアクリル酸ナトリウム(分子量10000の水溶性重合体)
R−10:グルコン酸ナトリウム
R−11:ポリアクリルアミド(分子量10000の水溶性重合体)
R−12:マレイン酸系重合体(分子量5000の水溶性重合体)
R−13:アクリル酸系重合体(分子量10000の水溶性重合体)/脂肪族オキシカルボン酸=70/30(質量比)の混合物
【0039】
試験区分3(固結防止性の評価その2)
高炉水砕スラグをクラッシャーで破砕し、その破砕物に試験区分1で示した固結防止剤を表4記載の添加量となるよう加えてミキサーで乾式混合した後、スクリーンで篩分け、粒度分布5mmの高炉水砕スラグ細骨材に調整した高炉水砕スラグ細骨材80トンを得た。得られた高炉水砕スラグ細骨材を屋外に高さ3mの小山状にして26週間に亘り野積みし、野積み期間中に表4記載に記載した所定の期間で、下記の方法により貫入抵抗係数を求め、固結防止性を評価した。ここで、貫入抵抗係数が0.45以下の場合、実用上固結による問題なしと判断されている。結果を表4にまとめて示した。
・貫入抵抗係数
高炉スラグ骨材コンクリート施工指針に記載の貫入抵抗測定器を野積みの小山に貫入し、下記の計算式により貫入抵抗係数を算出した。(コンクリートライブラリー第76号 高炉スラグ骨材コンクリート施工指針 P.21 土木学会 1993)
貫入抵抗係数=(1/9.8)×[1m貫入時のばねばかりの荷重(N)/貫入長さ1m]{この貫入抵抗係数は100cm貫入時のばねばかりの荷重(kgf)/貫入長さ100(cm)に相当する}又は、貫入抵抗係数=(100/9.8)×[ばねばかり最大荷重196N/ばねばかり最大荷重196N時の貫入長さ(m)]{この貫入抵抗係数はばねばかり最大荷重20kgf/ばねばかり最大荷重20kgf時の貫入長さ(cm)に相当する}
【0040】
試験区分4(保水性の評価)
試験区分3で調製した高炉水砕スラグ細骨材を屋外に高さ3mの小山状にして26週間に亘り野積みし、野積み期間中に表4に記載した所定の期間でサンプリングした。サンプリングした高炉水砕スラグ細骨材を、遠心力19.6km/s×60分間の条件で遠心脱水し、遠心脱水後の高炉水砕スラグ細骨材の含水比(%)を測定した。結果を表4にまとめて示した。ここで、遠心脱水後の含水比(%)の数値が大きいほど、調製した高炉水砕スラグ細骨材の保水性が高いことを意味する。
【0041】
【表4】

【0042】
表4において、
添加量:高炉水砕スラグ細骨材100質量部当たりの固結防止剤の添加質量部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉水砕スラグ又はその粒度調整物の固結防止剤であって、全構成単位中に、下記の化1で示される構成単位、化2で示される構成単位、化3で示される構成単位及び架橋構造部分の構成単位を合計で80モル%以上有し、且つ化1で示される構成単位を14〜48モル%、化2で示される構成単位を1〜42モル%、化3で示される構成単位を10〜84モル%及び架橋構造部分の構成単位を0.05〜1モル%の割合で有する水不溶性で高吸水性のアクリル系架橋重合体から成ることを特徴とする固結防止剤。
【化1】

【化2】

【化3】

(化1〜化3において、
R:水素原子又はメチル基
M:アルカリ金属原子又は有機アンモニウム)
【請求項2】
化1で示される構成単位が、化1中のRが水素原子である場合のものである請求項1記載の固結防止剤。
【請求項3】
架橋構造部分の構成単位が、アミド系架橋性単量体又は多価グリシジル化合物系架橋性単量体から形成されたものである請求項1又は2記載の固結防止剤。
【請求項4】
アクリル系架橋重合体が、全構成単位中に、化1で示される構成単位、化2で示される構成単位、化3で示される構成単位及び架橋構造部分の構成単位を合計で90モル%以上有し、且つ化1で示される構成単位を20〜40モル%、化2で示される構成単位を3〜30モル%、化3で示される構成単位を30〜76.5モル%及び架橋構造部分の構成単位を0.1〜0.5モル%の割合で有するものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載の固結防止剤。
【請求項5】
アクリル系架橋重合体が、更にメタクリル酸から形成された構成単位を有するものである請求項1〜4のいずれか一つの項記載の固結防止剤。
【請求項6】
アクリル系架橋重合体が、0.9質量%食塩水の吸水量が10〜60g/gのものである請求項1〜5のいずれか一つの項記載の固結防止剤。
【請求項7】
アクリル系架橋重合体が、純水の吸水量が20〜1000g/gのものである請求項1〜6のいずれか一つの項記載の固結防止剤。
【請求項8】
アクリル系架橋重合体が、質量平均粒子径10〜2000μmの粉粒状のものである請求項1〜7のいずれか一つの項記載の固結防止剤。
【請求項9】
高炉水砕スラグ又はその粒度調整物の固結防止方法であって、高炉水砕スラグ又はその粒度調整物100質量部当たり請求項1〜8のいずれか一つの項記載の固結防止剤を0.002〜0.3質量部の割合となるよう混合することを特徴とする固結防止方法。

【公開番号】特開2006−188381(P2006−188381A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−759(P2005−759)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(000200301)JFEミネラル株式会社 (79)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】