説明

高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法及び高窒素含有遷移金属窒化物

【課題】本発明は、体積弾性率が150GPa以上の高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法及び高窒素含有遷移金属窒化物を提供することを課題とする。
【解決手段】遷移金属ハロゲン化物の粉末11と、アルカリ金属窒化物又はアルカリ土類金属窒化物の粉末13と、アルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物の粉末12と、を混合して混合物を作製する工程と、前記混合物を加圧加熱する工程と、を有する高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法を用いることによって前記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法及び高窒素含有遷移金属窒化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高硬度材料としてダイヤモンドが知られている。ダイヤモンドの体積弾性率(Bulk Modulus)は443GPaである(非特許文献1)。しかし、ダイヤモンドは鉄と反応し、鉄の加工には用いることができない。
鉄の加工に用いることができる高硬度材料としてcBNが知られている。しかし、cBNの体積弾性率は386GPaであり、ダイヤモンドに劣る(非特許文献2)。
鉄の加工に用いることができ、ダイヤモンドと同程度又はそれ以上の体積弾性率を有する材料の開発が求められている。
【0003】
近年、高硬度材料として窒化物が注目されている。遷移金属窒化物は高硬度であることが計算結果で示されているためである。例えば、体積弾性率(計算値)は、WN(411GPa)、MoN(379GPa)、OsN(367GPa)である(非特許文献1、非特許文献5)。また、ReBは、ダイヤモンドと同等程度の硬度を有する新物質として注目されている(非特許文献4)。更に、既知の低窒素含有物質であるReNは、ダイヤモンドに匹敵する硬さ415GPaであることが計算されている(非特許文献6)。計算による予測では、ReNについても443GPaという計算結果も存在する(非特許文献10)。非特許文献3では、WNの体積弾性率が411GPaと計算されている。非特許文献5では、MoNの体積弾性率が379GPaと計算されている。
【0004】
しかし、従来、固体窒化源を用いて遷移金属窒化物結晶を合成する場合、反応速度が速すぎて、爆発的な発熱反応を誘引し、目的とする遷移金属窒化物結晶が得られなかった。
例えば、ReCl+LiN→RexNyという反応の場合には、爆発的な発熱反応により窒素が逸散し、遷移金属窒化物結晶はほとんど合成されず、回収物の大半は金属Reとなってしまった。
爆発的な発熱反応を抑制するため、希釈剤を用い、複分解(メタセシス)反応により、窒化物を合成する試みがなされている。メタセシス反応とは、次式(1)のように、二種類の化合物間で結合の組換えを行う反応のことである。ここでA、B、C、Dは元素、或いは分子、或いは官能基の種類を示す。
【0005】
【化1】

【0006】
例えば、希釈剤としてNHClを混ぜ、高圧を印加する、次式(2)に示すメタセシス反応が報告されている(非特許文献7、p.101)。
【0007】
【化2】

【0008】
この反応では、Snが生成される。しかし、このメタセシス反応では、窒素を含むNHCl自体が窒素源となり、窒化反応を抑制する希釈剤としての役割が十分ではない。更に、NHClの常圧下での融点が338℃と低く、1000℃以上での高温下での合成に不適である(非特許文献8、p.101)。
【0009】
また、希釈剤としてMgClを混ぜて、昇温する、次式(3)に示すメタセシス反応も報告されている(非特許文献9、p.333)。
【0010】
【化3】

【0011】
この反応では、TaBが生成される。しかし、加圧を行っていないので、MgClの融点714℃はそのままであり、1000℃以上での高温下での合成に不適である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Jin−Cheng Zheng et.al.,PHYSICAL REVIEW B 72, 052105, 2005
【非特許文献2】ALEXANDER F.GONCHAROV et.al., High Pressure Research,Vol.27,No.4,December 2007, 409-417
【非特許文献3】Hui Wang et.al.,PHYSICAL REVIEW B 79,132109,2009
【非特許文献4】Jin−Cheng Zheng et.al.,PHYSICAL REVIEW B 72,052105,2005
【非特許文献5】M.B.Kanoun,PHYSICAL REVIEW B 76,134109,2007
【非特許文献6】Hsiu−Ying Chung et.al.,Science 316,436−439
【非特許文献7】Alexandra Friedrich et.al.,PHYSICAL REVIEW LETEERS,105,085504,2010
【非特許文献8】J.Am.Ceram.Soc.,85(1)2002,101−104
【非特許文献9】Chem.Mater.,8(2)1996,333−343
【非特許文献10】Physics Letters A,374, 2010,2569−2574
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、体積弾性率が150GPa以上の高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法及び高窒素含有遷移金属窒化物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記事情を鑑みて、本発明者は、様々な材料を希釈剤として検討した。その結果、希釈剤として、反応性の低い固体であるNaClを用いることにより、爆発的な発熱反応を防止して、メタセシス反応を行うことが可能であることを見出した。また、NaClは融点が801℃と高く、高温のメタセシス反応が可能であり、更に、加圧によってNaClの融点を上昇させることにより、より高温のメタセシス反応が可能となることを見出した。また、高温のメタセシス反応により、ReN等の窒素含有量の高い材料の合成が可能であることを見出した。更に、ReN等の窒素含有量の高い材料は、体積弾性率が150GPa以上の高窒素含有遷移金属窒化物であることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下の構成を有する。
【0015】
(1)遷移金属ハロゲン化物の粉末と、アルカリ金属窒化物又はアルカリ土類金属窒化物の粉末と、アルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物の粉末と、を混合して混合物を作製する工程と、前記混合物を加圧加熱する工程と、を有することを特徴とする高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法。
(2)前記混合物を1GPa以上に加圧することを特徴とする(1)に記載の高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法。
(3)前記混合物を800℃以上に加熱することを特徴とする(1)又は(2)に記載の高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法。
(4)アルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物の粉末の量を前記遷移金属ハロゲン化物の粉末の量の2倍以上にして、前記混合物を作製することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法により製造された高窒素含有遷移金属窒化物であって、遷移金属に対する窒素のモル比が1以上であることを特徴とする高窒素含有遷移金属窒化物。
(6)前記遷移金属がRe又はWであることを特徴とする(5)に記載の高窒素含有遷移金属窒化物。
(7)前記遷移金属に対する窒素のモル比が2以上であることを特徴とする(6)に記載の高窒素含有遷移金属窒化物。
【発明の効果】
【0016】
本発明の高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法は、遷移金属ハロゲン化物の粉末と、アルカリ金属窒化物又はアルカリ土類金属窒化物の粉末と、アルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物の粉末と、を混合して混合物を作製する工程と、前記混合物を加圧加熱する工程と、を有する構成なので、体積弾性率が150GPa以上の高窒素含有遷移金属窒化物を容易に製造できる。特に、反応速度を制御できる。
【0017】
本発明の高窒素含有遷移金属窒化物は、先に記載の高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法により製造された高窒素含有遷移金属窒化物であって、遷移金属に対する窒素のモル比が1以上である構成なので、窒素含有量の高い遷移金属窒化物(N/Metal≧1)とすることができ、体積弾性率が150GPa以上とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態である高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】実施例1で用いた高窒素含有遷移金属窒化物の製造装置を示す図である。
【図3】実施例1試料の微小X線回折図である。
【図4】実施例1試料の透過顕微鏡写真である。
【図5】実施例1試料の電子顕微鏡写真(×1000倍)である。
【図6】実施例1試料のRe4fについてのXPS分光分析結果である。
【図7】実施例1試料のN1sについてのXPS分光分析結果である。
【図8】実施例2試料の微小X線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(本発明の実施形態)
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態である高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法及び高窒素含有遷移金属窒化物について説明する。
【0020】
<高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法>
本発明の実施形態である高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法は、混合物作製工程S1と、混合物加圧加熱工程S2と、を有する。
【0021】
<混合物作製工程S1>
混合物作製工程S1は、遷移金属ハロゲン化物の粉末と、アルカリ金属窒化物又はアルカリ土類金属窒化物の粉末と、アルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物の粉末と、を混合して混合物を作製する工程である。
【0022】
図1は、本発明の実施形態である高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法の一例を示す工程図である。
まず、図1に示すように、底面側が封じられた円筒状のPt製容器20の空洞部20cに、スパチェラ15で、試料粉末11、12、13をそれぞれ所定量、量りとり、均一に分散するように混合する。
【0023】
試料粉末11は、遷移金属ハロゲン化物の粉末である。例えば、ReCl、ReCl、WCl、OsClである。これらは、メタセシス反応において、遷移金属源となる。
【0024】
また、試料粉末12は、アルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物の粉末である。窒素も遷移金属も含まない反応性の低い固体物質である塩を用いることができ、例えば、NaCl、MgCl、NaF、CaClである。
これらは、メタセシス反応において、希釈剤となる。これらの材料を用いることにより、メタセシス反応の反応速度を低下して、爆発的な発熱反応を防止することができる。これらの材料を用いない場合には、遷移金属塩化物とアルカリ金属窒化物の混合により、爆発的な発熱反応を開始して、窒化反応が不十分となり、金属成分が回収されるといった問題が生じる。
【0025】
アルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物の粉末の量を前記遷移金属ハロゲン化物の粉末の量の2倍以上にして、前記混合物を作製することが好ましい。2倍未満では、爆発的な発熱反応を完全に防止できない場合が発生し、希釈剤としての役割を果たすことができない。
【0026】
更に、試料粉末13は、アルカリ金属窒化物又はアルカリ土類金属窒化物の粉末である。例えば、LiN、NaN、Ca、Mg等である。これらは、メタセシス反応において、固体窒素源となる。
【0027】
アルカリ金属窒化物又はアルカリ土類金属窒化物の粉末の量を前記遷移金属ハロゲン化物の粉末の同量以上にして、前記混合物を作製することが好ましい。
例えば、ReNの生成については以下の反応式(4)が考えられる。
【0028】
【化4】

【0029】
この場合、アルカリ金属窒化物又はアルカリ土類金属窒化物の粉末の量を前記遷移金属ハロゲン化物の粉末の同量未満とすると、ReNに変換がしない未反応のReClが残るためである。
【0030】
次に、Pt製容器20の上部側円周方向に沿って一定間隔で設けられた切り込み部21に沿って、Pt製上部端部を内側に折り曲げて、Pt製容器20を封止する。
【0031】
<混合物加圧加熱工程S2>
混合物加圧加熱工程S2は、混合物を加圧加熱する工程である。
圧力印加・昇温可能な製造装置の所定の位置に、封止したPt製容器20を配置する。
次に、Pt製容器20に所定の圧力を印加し、Pt製容器20を所定の温度に昇温して、一定時間、その状態を保持する。
【0032】
Pt製容器20内の混合物を1GPa以上に加圧することが好ましい。これにより、遷移金属ハロゲン化物の大部分をアルカリ金属窒化物又はアルカリ土類金属窒化物との間でメタセシス反応させることが可能となる。
【0033】
Pt製容器20内の混合物を800℃以上に加熱することが好ましい。これにより、遷移金属ハロゲン化物の大部分をアルカリ金属窒化物又はアルカリ土類金属窒化物との間でメタセシス反応させることが可能となる。
【0034】
反応時間は、温度・圧力、材料の種類等により決定する。ReNの生成の場合、例えば、1時間とする。
所定の時間、メタセシス反応を行った後、Pt製容器20を取り出し、開封することにより、高窒素含有遷移金属窒化物が得られる。
【0035】
<高窒素含有遷移金属窒化物>
本発明の実施形態である高窒素含有遷移金属窒化物は、遷移金属に対する窒素のモル比が1以上である。各試料粉末の量を適正な量として、所定のメタセシス反応により生成するためである。遷移金属に対する窒素のモル比が1以上(N/Metal≧1)の窒素含有量の高い遷移金属窒化物とすることにより、その体積弾性率を150GPa以上とすることができる。
【0036】
前記遷移金属がRe又はWであることが好ましい。遷移金属に対して窒素のモル比が2以上の高窒素含有遷移金属窒化物を形成できるためである。また、遷移金属自体の体積弾性率がそれぞれ360GPa、310GPaと高く、高硬度の高窒素含有遷移金属窒化物を形成できる可能性があるためである。
【0037】
本発明の実施形態である高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法は、遷移金属ハロゲン化物の粉末11と、アルカリ金属窒化物又はアルカリ土類金属窒化物の粉末13と、アルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物の粉末12と、を混合して混合物を作製する工程と、前記混合物を加圧加熱する工程と、を有する構成なので、メタセシス反応の反応速度を低下して、爆発的な発熱反応を防止し、体積弾性率が150GPa以上の高窒素含有遷移金属窒化物を容易に製造できる。
【0038】
本発明の実施形態である高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法は、前記混合物を1GPa以上に加圧する構成なので、メタセシス反応の反応速度を低下して、爆発的な発熱反応を防止し、体積弾性率が150GPa以上の高窒素含有遷移金属窒化物を容易に製造できる。
【0039】
本発明の実施形態である高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法は、前記混合物を800℃以上に加熱する構成なので、メタセシス反応の反応速度を低下して、爆発的な発熱反応を防止し、体積弾性率が150GPa以上の高窒素含有遷移金属窒化物を容易に製造できる。
【0040】
本発明の実施形態である高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法は、アルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物の粉末の量を前記遷移金属ハロゲン化物の粉末の量の10倍以上にして、前記混合物を作製する構成なので、メタセシス反応の反応速度を低下して、爆発的な発熱反応を防止し、体積弾性率が150GPa以上の高窒素含有遷移金属窒化物を容易に製造できる。
【0041】
本発明の実施形態である高窒素含有遷移金属窒化物は、先に記載の高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法により製造された高窒素含有遷移金属窒化物であって、遷移金属に対する窒素のモル比が1以上である構成なので、体積弾性率を150GPa以上とすることができる。
【0042】
本発明の実施形態である高窒素含有遷移金属窒化物は、前記遷移金属がRe又はWである構成なので、体積弾性率を150GPa以上とすることができる。
【0043】
本発明の実施形態である高窒素含有遷移金属窒化物は、前記遷移金属に対して窒素のモル比が2以上である構成なので、体積弾性率を150GPa以上とすることができる。
【0044】
本発明の実施形態である高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法及び高窒素含有遷移金属窒化物は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
<試料生成>
図2は、実施例1で用いた高窒素含有遷移金属窒化物の製造装置を示す図である。
まず、Pt製容器の空洞部(試薬部ともいう。)に、ReCl粉末、LiN粉末及びNaCl粉末(希釈剤)を均一に混合して、充填し、封入した。
次に、試料粉末を充填・封入したPt製容器を、製造装置内の所定の位置に配置した。
次に、製造装置を操作して、Pt製容器に圧力を7.7GPa加圧し、温度を1600℃として、1時間保持した。
その後、製造装置からPt製容器を取り出し、開封した。
複数の薄片状の試料片(実施例1試料片)が得られた。
【0046】
<材料分析>
図3は、実施例1試料片の微小X線回折図である。17.5と21に強度の大きいピークが見られた。実施例1試料のX線回折測定結果は、ReBと同じ構造であることが判明した。
【0047】
図4は、実施例1試料片の透過顕微鏡写真である。写真中心の試料片は、長径2.2mm、短径1mmの大きさであった。層状構造を有していた。
【0048】
図5は、実施例1試料片の電子顕微鏡写真(×1000倍)である。表面に線状の凹凸が見られ、その他の部分は平坦であった。
【0049】
図4及び図5を注意深く解析すると、実施例1試料片は、六回対称のモフォロジーを有していた。六回対称のモフォロジーは、X線回折測定結果から予想される構造の結晶形状と一致した。
【0050】
図6は、実施例1試料片のRe4fについてのXPS分光分析結果である。Reが窒素と結合した際に得られる41.7eVの位置に明瞭なピークがあることを確認した。他に、44、49eVにピークが見られた。
図7は、実施例1試料のN1sについてのXPS分光分析結果である。窒素がReと結合した際に得られる397.2eVの位置に明瞭なピークがあることを確認した。
以上により、実施例1試料片はReNである。
【0051】
<特性評価>
体積弾性率測定装置(放射光測定)により、実施例1試料片の硬度を測定した。実施例1試料片の体積弾性率は、173GPaであった。
【0052】
(実施例2)
<試料生成>
WCl粉末を用い、温度を1400℃とした他は、実施例1と同様にして、試料生成を行った。複数の薄片状の試料片(実施例2試料片)が得られた。
実施例と同様に、材料分析を行った。
【0053】
<材料分析>
図8は、実施例2試料片の微小X線回折図である。4本のピークが見られた。実施例2試料のX線回折測定結果は、実施例2試料片がWNであることを示唆した。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の高窒素含有遷移金属窒化物及び高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法は、金属加工製造装置産業、金属加工産業等において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0055】
11、12、13…試料粉末、15…スパチェラ、20…Pt製容器、20c…空洞部、21…切り込み部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属ハロゲン化物の粉末と、アルカリ金属窒化物又はアルカリ土類金属窒化物の粉末と、アルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物の粉末と、を混合して混合物を作製する工程と、前記混合物を加圧加熱する工程と、を有することを特徴とする高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法。
【請求項2】
前記混合物を1GPa以上に加圧することを特徴とする請求項1に記載の高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法。
【請求項3】
前記混合物を800℃以上に加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法。
【請求項4】
アルカリ金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属ハロゲン化物の粉末の量を前記遷移金属ハロゲン化物の粉末の量の2倍以上にして、前記混合物を作製することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の高窒素含有遷移金属窒化物の製造方法により製造された高窒素含有遷移金属窒化物であって、遷移金属に対する窒素のモル比が1以上であることを特徴とする高窒素含有遷移金属窒化物。
【請求項6】
前記遷移金属がRe又はWであることを特徴とする請求項5に記載の高窒素含有遷移金属窒化物。
【請求項7】
前記遷移金属に対して窒素のモル比が2以上であることを特徴とする請求項6に記載の高窒素含有遷移金属窒化物。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−18688(P2013−18688A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155185(P2011−155185)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)