説明

高純度のレバミピドの製造方法

【課題】医薬として有用な高純度のレバミピドを製造する改良した製造方法を提供する。
【解決手段】塩基性水容液中で3−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−4−イル)アラニン一塩酸塩及び4−クロロベンゾイルクロリドを反応させ、粗製のレバミピドを製造し、更に無機塩基を加えて精製して、その後、酸処理して、高純度レバミピドを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レバミピドは、消化器系潰瘍の治療剤として使用されている。化学名は、2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−[2(1H)−キノリノン−4−イル]プロピオン酸である。レバミピドは、胃潰瘍、急性胃炎または慢性胃炎の急性悪化による胃粘膜損傷に対する優れた治療効果を示す薬剤である。この薬剤は、PGE生合成を促進させ、胃液を増加させることで胃粘膜を保護し、細胞増植を促進させ、特にヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)菌に感染した患者の胃粘膜細胞に対して細菌の粘着及びしみ込みを抑え、胃の炎症を抑制する特徴がある。
【背景技術】
【0002】
レバミピドの製造方法としては、例えば下記反応式[1]に示す方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
【化002】

【0004】
上記反応式[1]によると、先に上記化学式(2)に示すブロモ体の化合物と化学式(3)のアセトアミドマロン酸ジエチルを反応させた後、得られた化学式(4)の化合物を塩酸水溶液で還流し、得られた化学式(5)の二塩酸塩化合物を化学式(6)の4−クロロベンゾイルクロリドでアシル化して目的とする化学式(1)のレバミピドを製造する。
【0005】
上記特許は、多くの工程を要し、最終的にレバミピドを製造することを目的としている。しかし、レバミピドを製造した後、高純度のレバミピドを製造する精製方法に関しては記述していない。
【0006】
一般に、消潰瘍治療剤は、多くの場合長期間服用する必要があるため、高純度の薬剤を製造するほうが好ましい。しかし、上記特許のように製造する場合、最終化合物の純度は、99.0〜99.6%の水準に留まるため、更なる高純度の製品を製造する必要がある。
また、他のレバミピドの製造方法の一例として下記反応式[2]に示す(特許文献2)。
【0007】
【化003】

【0008】
上記反応式[2]によると、反応式[1]のアミノ体のアセチル基を有する化学式(4)に代って、先に、4−クロロベンゾイル基がアシル化された化学式(9)の化合物を製造し、強塩基を用いる脱炭酸反応により、レバミピドを製造する。しかし、上記方法でもレバミピドを製造した後、高純度のレバミピドを製造する精製方法に関して記述していない。高純度のレバミピドの製造としては、不足している。
【特許文献1】韓国登録特許10−38562号
【特許文献2】韓国登録特許10−0669823号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、医薬として有用な高純度のレバミピドの改良製造法に関する。
従来法におけるレバミピドの製造方法は、単にレバミピドの合成を目的としており、精製方法などの高純度のレバミピドの製造法に関しては、記述していない。上記特許のように製造する場合、最終化合物の純度は、99.0〜99.6%の水準に留まるため、更なる高純度の製品を製造する必要がある。また、反応式[1]における化学式(5)の化合物と化学式(6)の化合物を反応させる時、アセトン類のような溶媒では化学式(5)の化合物は不溶性のため、反応を完了させることができない欠点がある。
【0010】
従来法における化学式(5)は、溶媒に難溶性であるため、化学式(6)とのアシル化反応では、完全に達成できない欠点がある。この欠点を解決する製法方法として、溶媒に水を用いる塩基性の条件下で、化学式(5)を水溶液中に溶解した後、反応させて化学式(6)との反応を円滑に進めることができる。
【0011】
本発明は、反応式[3]において塩基性の水溶液中で化学式(5)の化合物に適当な有機溶媒中の化学式(6)の化合物を反応させた後、化学式(1)の粗製のレバミピドを、無機塩基を加え、塩基の状態で単離させた後、酸処理して化学式(1)のレバミピドの製造方法を提供する。
【0012】
本発明の特徴は、化学式(5)の化合物と化学式(6)の化合物を塩基性の水溶液中で反応させる時、低温で水と共に用いる混合溶媒にトルエンを使用することである。これは化学式(6)の化合物が、室温以上の水溶液又はアルコール類の溶媒において不安定であり、分解反応を起こす可能性があるので、この分解反応を最小化し、穏やかな条件下で反応させて反応性を高める目的がある。即ち、水溶液−トルエンの混合溶媒中で二つの溶媒が互いに混合しない状態の二つ層(two phase)を維持し、化学式(5)は水溶液層、化学式(6)はトルエン層で存在しながら、層間の接触により、穏やかな反応を進行させることで化学式(6)の分解反応を防ぎ、副反応がほとんど起きない高収率でレバミピドを製造することができる。
【0013】
また、その他の本発明の特徴として、精製方法の下記反応式[3]において得られる粗製レバミピドを無機塩基処理して、純度を高めた化学式(7)のレバミピド塩を得て、これを酢酸処理して精製し高純度のレバミピドを製造する。次に反応式[3]を示す。
【0014】
【化004】

【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、医薬として有用な高純度のレバミピドの製造が可能な改良製造法に関する。
本発明による高純度のレバミピドの製造工程は次のとおりである。
a)化学式(5)の化合物に、水と水酸化ナトリウムを加えて溶解すること、
b)化学式(6)の化合物と有機溶媒の混合溶媒を滴下して反応させた後、酸処理して粗製のレバミピドを単離すること、
c)粗製のレバミピドに、溶媒と水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基を加えて、反応させた後、化学式(7)のレバミピド塩を単離すること、
d)化学式(7)の化合物を水と溶媒中で酸処理し、化学式(1)のレバミピドを乾燥することで、高純度に精製したレバミピドを製造することができる。
【0016】
工程a)で使用される化学式(5)は、一般的に二塩酸塩及び一塩酸塩を用いるが、二塩酸塩は不安定な経時変化を示す。代わりに、一塩酸塩は安定で、長期間保管しても製品変化がない。二塩酸塩は、水溶液中で加熱または還流すると、すぐに一塩酸塩に変わって純度が高くなる。使用される水酸化ナトリウムは、化学式(5)に対して3〜4倍モルである。
【0017】
工程b)で使用される有機溶媒は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、酢酸エチル、トルエンなどの水と混合しない溶媒であり、好ましくはトルエンである。使用される水とトルエンの混合割合は、水に対してトルエン15〜25%容量である。
【0018】
化学式(6)の4−クロロベンゾイルクロリドは、水溶液中の室温以上で分解反応が起こるため、トルエンのような水と混ざり合わない溶媒を混合して用いると4−クロロベンゾイルクロリドは、トルエン層に溶解されて、水と接触しながら徐々に、分解することなく、穏やかに反応が進行し、最終的に高純度製品を得ることができる。反応温度は0〜15℃、好ましくは0〜5℃である。
【0019】
工程b)において酸処理に用いる酸は、各種の有機酸と無機酸を用いることができるが、この中で酢酸が好ましい。
単離して得た粗製レバミピドは、乾燥するか又は湿ったままで次の工程に用いる。一般的に粗製のレバミピドを単離しないin−situの反応で、次の工程に反応を進めることができるが、一方単離することで不純物を最小にできる長所がある。
【0020】
工程c)の溶媒としてメタノール、エタノールまたはイソプロパノールを用い、この中ではメタノールが好ましい。反応温度は0〜50℃が、また反応時間は3〜8時間が好ましい。用いる塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはこれらの炭酸塩を使用することができるが、メタノール中で良好な溶解性を示す水酸化ナトリウムが好ましい。アルコール類の溶媒中での粗製レバミピドは、塩基と反応し、容易に化学式(7)の無機塩の状態で結晶化され、溶液中で単離されて高純度のレバミピドを製造できる長所がある。
【0021】
工程d)の酸として酢酸及び塩酸などが用いられるが、塩酸は強酸として副反応物を生成する可能性があるため、酢酸が好ましい。また、酸処理の温度は、50〜70℃が好ましい。
酸処理に適した溶媒には、水がある。メタノールと混合使用することで生成物の結晶性を高め、製品の純度を向上させることができる。
【0022】
本発明の適当な乾燥方法は、真空乾燥である。50〜60℃で12〜24時間行う。このように製造されたレバミピドは、高純度製品として純度が99.95%の水準の優れた品質を示す。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、塩基性水溶液と有機溶媒中で化学式(5)の化合物と化学式(6)の4−クロロベンゾイルクロリドを反応させた後、粗製のレバミピドに無機塩基を加え、純度を高めた塩の状態で単離させた後、酸処理して精製し、化学式(1)の高純度のレバミピドの製造方法を提供する。本発明は、収率をより向上させ、安価な製造コストで反応及び精製をともに行い、純度99.95%の水準のレバミピドを製造することができ、産業的に大量生産することが容易である長所がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に説明する。
【実施例1】
【0025】
水1.4L及び水酸化ナトリウム45.9g中に、3−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−4−イル)アラニン一塩酸を加え、0〜3℃に冷却した。4−クロロベンゾイルクロリド61.6gとトルエン228gの混合溶液を5℃以下で2時間滴下した。0〜5℃で5時間撹拌した後、メタノール1.1Lを加え、70℃で加熱した。同温度で酢酸53.1gを加え、20〜25℃に冷却した。得られた結晶をろ過し、水とメタノールで順番に洗浄した後、60℃で12時間以上の真空乾燥して、粗製のレバミピド108.2gを得た(理論収率95.0%)。
【実施例2】
【0026】
メタノール930mLに、実施例1で得られた粗製のレバミピド108.2gを加え、更に水酸化ナトリウム14.4gを加えた後、20〜25℃で4時間撹拌させて、ろ過した。メタノールで洗浄した後、50℃で12時間以上真空乾燥し、レバミピドのナトリウム塩116.0gを得た(理論収率97.8%、LOD5.7%)。
【実施例3】
【0027】
水600mL及びメタノール600mL中に、実施例2で得られたレバミピドのナトリウム塩116.0gを加え、70℃で加熱した。同温度で酢酸58gを加え、20〜25℃に冷却した。得られた結晶をろ過し、水とメタノールで順番に洗浄した後、55℃で12〜24時間真空乾燥して、レバミピド100gを得た(理論収率94.5%、0.5水和物)。
HPLCでの純度:99.95%
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明による高純度のレバミピドのHPLC分析チャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)水に水酸化ナトリウムを加えた後、化学式(5)の3−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−4−イル)アラニン一塩酸塩を加えること、
b)ジクロロメタン、ジクロロエタン、酢酸エチル及びトルエンよりなる群から選択される有機溶媒と化学式(6)の4−クロロベンゾイルクロリドの混合溶液を加えて反応させた後、酸処理して化学式(1)の粗製のレバミピドを単離すること、
c)メタノール、エタノール及びイソプロパノールよりなる群から選択される溶媒中で、粗製のレバミピドに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びこれらの炭酸塩よりなる群から選択される無機塩基を反応させ、化学式(7)のレバミピド塩を単離すること、
d)メタノール、エタノール及び2−イソプロパノールよりなる群から選択される溶媒及び水の混合溶媒に化学式(7)のレバミピド塩を加えた後、酸処理すること、
の工程を含む、化学式(1)の高純度のレバミピドの製造方法。
【化001】

【請求項2】
(b)の工程に用いる有機溶媒がトルエンであり、反応温度が0〜15℃であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(c)の工程に用いる無機塩基が、水酸化ナトリウムであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(c)の工程に用いる溶媒が、メタノールであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(d)の工程に用いる溶媒が、水とメタノールの混合溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
(b)の工程及び(d)の工程の酸処理時に用いる酸が、酢酸であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【図1】
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