説明

高純度SiC微粉末の製造方法

【課題】粉末粒子が二次的に結合した癒着粒子が少なく、特に、焼結材料として好適な単球性に優れた高純度SiC微粉末の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の高純度SiC微粉末の製造方法は、シリコンアルコキシドから調製したシリカの粒子径が10〜2000nmのシリカゾルもしくはシリカ懸濁液に、フェノール類とホルムアルデヒドおよびアンモニア水溶液を添加して重合し、シリカ微粒子を核としてその周囲をフェノール樹脂で被覆したコア・シェル構造のSiC前駆体を作製し、無酸素雰囲気下800〜1000℃で熱処理して焼成し、次いで、不活性雰囲気下1400〜2200℃で熱処理して珪化することを特徴とする。また、SiC前駆体を構成するフェノール樹脂とシリカ微粒子の割合が、体積含有率でフェノール樹脂がシリカ微粒子の33〜500%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末粒子が二次的に結合した癒着粒子が少なく、特に、焼結材料として好適な単球性に優れた高純度SiC微粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiC粉末は、アチソン法で製造したバルク状SiCを粉砕し、分級する方法が古くから知られているが、SiCは極めて硬質な物質であるため、微細で球形の粉末粒子に粉砕することが困難であり、また粉砕、分級工程において不純物が混入し易く、高純度のものを得難い難点がある。
【0003】
そこで、気相プロセスによりサブミクロン級の微細なSiC微粉末を製造する技術が開発されており、例えば特許文献1にはハロゲン化シランを熱分解して得られたSiC粉末の平均粒径が0.2〜0.7μmで、各粒子の最大粒径と最小粒径の比率の平均が1.1〜1.4である易焼結性β型SiC粉末が開示されている。
【0004】
特許文献2には、結晶子が50オングストローム以下のβ型SiCの集合体であり、平均粒径が0.01〜1μmである球状形状の超微粒子状β型多結晶SiCが開示されており、分子中に少なくとも1個のSiH結合を有し、SiX(Xはハロゲン原子など)結合を含まない有機けい素化合物を750℃以上で気相熱分解させることによって製造される旨が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、シリコンアルコキシドおよび少なくとも1つの炭化水素基をもつアルコキシシランとの混合物を加水分解して球状単分散ゲル粒として、これを焼成してβ−SiC化する球状単分散β−SiC微粒の製造方法が開示されている。
【0006】
更に、特許文献4には、シリコンアルコキシドと樹脂の混合溶液を塩基水溶液に滴下し、加水分解してシリカ/樹脂複合微粒子を調製し、得られたシリカ/樹脂複合微粒子を無酸素雰囲気中1450℃以上で加熱してSiC化するSiC粉体の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開昭59−102809号公報
【特許文献2】特開昭60−096517号公報
【特許文献3】特開平03−199115号公報
【特許文献4】特開平09−208210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4はシリカ/樹脂複合微粒子をSiC前駆体、すなわちSiC粉体の製造原料とするものであり、例えば、シリカ/フェノール樹脂複合微粒子をSiC前駆体として、これを熱処理する場合、SiC前駆体においてシリカは連続状態で樹脂と複合しているから、珪化したSiCも独立した単球状になり難い欠点がある。すなわち、熱処理過程において、フェノール樹脂が炭素化し、この炭素によりシリカがSiC化するので、SiC粒子同士の癒着を回避することが困難である。
【0008】
そこで、発明者はSiC粒子の癒着を抑制して、単球性の高い微細SiC粉末を製造するためのSiC前駆体について鋭意研究した。そして、SiC前駆体において、シリカ球を互いに接触させずに孤立した状態で樹脂中に分散させることがポイントとなることに想到した。
【0009】
また、レゾルシノール・ホルムアルデヒド重合物はカーボンエアロジェルの原料としても知られたフェノール樹脂に似た化合物であり、レゾルシノールとホルムアルデヒドの水溶液にアンモニアを加えると重合反応が始まり、重合物の形態はサブミクロン〜数ミクロン程度の球体または球体の集合物であることが観察された。
【0010】
そして、シリカ微粒子を予め水中に分散させ、その中にレゾルシノールおよびホルムアルデヒドを混合、溶解して、重合させると、シリカ微粒子がレゾルシノール・ホルムアルデヒド重合物により完全に被覆されることが判明した。
【0011】
すなわち、本発明はこの知見に基づいて完成したもので、その目的は、粉末粒子が二次的に結合した癒着粒子が少なく、特に、焼結材料として好適な単球性に優れた高純度SiC微粉末の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明による高純度SiC微粉末の製造方法は、シリコンアルコキシドから調製したシリカの粒子径が10〜2000nmのシリカゾルもしくはシリカ懸濁液に、フェノール類とホルムアルデヒドおよびアンモニア水溶液を添加して重合し、シリカ微粒子を核としてその周囲をフェノール樹脂で被覆したコア・シェル構造のSiC前駆体を作製し、無酸素雰囲気下800〜1000℃で熱処理して焼成し、次いで、不活性雰囲気下1400〜2200℃で熱処理して珪化することを構成上の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のSiC微粉末の製造方法によれば、SiC粉末粒子同士の癒着が殆どなく、単球性に優れた、サブミクロン級の微細な高純度SiC微粉末の製造が可能となる。したがって、この高純度SiC微粉末は高い焼結性を有し、SiCセラミックスの焼結材料の製造方法として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の高純度SiC微粉末の製造方法を、図1に示したフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0015】
〔1〕シリカゾルもしくはシリカ懸濁液の調製;
シリコンアルコキシドに、体積比で0.5〜3倍量のアルコールを添加し、攪拌して混合溶液を作製する。アルコールの添加比率が0.5倍量以下では、次にアンモニア水溶液を添加する際に、シリコンアルコキシドとアンモニア水の相分離が生じ、3倍量以上では生成するシリカゾルあるいはシリカ懸濁液のシリカ濃度が希薄となって、SiC前駆体の生成効率を低下させるためである。
【0016】
次に、シリコンアルコキシドとアルコールの混合溶液にアンモニア水溶液を添加して、室温〜100℃の温度で攪拌し、pHを7.5〜12.5に調整して加水分解させることによりシリカの粒子径が10〜2000nmのシリカゾルもしくはシリカ懸濁液を調製する。加水分解反応を室温〜100℃の温度範囲で行うのは、室温以下では反応が緩慢で非効率であり、一方、100℃以上となるとアルコールや水の揮散が著しくなるためである。また、加水分解反応時のpHが7.5以下ではゲル状の加水分解物となってしまうためである。
【0017】
シリカゾルもしくはシリカ懸濁液中のシリカの粒子径を10〜2000nmとするのは、粒子径が10nm未満ではシリカ粒子同士の凝集が著しいので、単球状のSiC微粉末が得ることができず、一方、2000nmを越えると粒子径が過大であるため、後工程でSiC微粉末を製造する際の熱処理過程において未反応分が生じ易くなるためである。
【0018】
シリコンアルコキシドとしては、アルキルシリケート、(モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−)アルコキシシラン、テトラアルコキシシランの重合体などが例示される。アルキルシリケートとしては、メチルシリケート、エチルシリケート、ブチルシリケートなどがあり、取扱い性、反応性の観点からエチルシリケートが好ましい。アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシランが好ましく、テトラアルコキシシランの重合体としては、重合度が2〜15程度の低分子量重合体が好適である。
【0019】
シリコンアルコキシドに添加するアルコールは、水溶性であれば特に制限はなく、メタノール、エタノールなど使用することができる。
【0020】
〔2〕SiC前駆体の作製;
シリカゾルもしくはシリカ懸濁液に水を加えて希釈し、希釈液にフェノール類とホルムアルデヒド、およびアンモニア水溶液を添加して、フェノール類とホルムアルデヒドを重合させることにより、シリカ粒子の周囲にフェノール類・ホルムアルデヒドの重合物を生成させ、シリカ微粒子の核(コア)を、フェノール樹脂で被覆(シェル)した、コア・シェル構造のSiC前駆体を作製する。
【0021】
希釈液は、シリカゾルもしくはシリカ懸濁液に体積比で0.5〜2倍量の水を加えて希釈することが好ましい。水の添加量が0.5倍量以下ではフェノール類を溶解し得る量が著しく少なく、一方2倍量以上ではフェノール類およびホルムアルデヒドの濃度が希薄となり、いずれも重合反応が円滑に進まなくなるためである。
【0022】
希釈液に、フェノール類とホルムアルデヒドの重合によって得られるフェノール樹脂とシリカ微粒子の割合が、体積含有率で33〜500%となるようにフェノール類の量を調整し、さらにフェノール類に対してホルムアルデヒドをモル比で0.5〜3の範囲で加えて重合させる。
【0023】
重合によって得られるフェノール樹脂の体積含有率が33%以下ではシリカ微粒子を完全に被覆することができないため、SiC微粉末の癒着が生じ、また未反応分が残留する原因となる。しかし、500%以上となると焼成した際の遊離炭素分が多くなるので、その除去が困難となり、生産性が低下することになる。
【0024】
ホルムアルデヒドの添加量をモル比で0.5〜3の範囲とするのは、この範囲外では所望の重合物が得難くなるためである。
【0025】
重合反応は、室温〜100℃の温度範囲内で、pH9〜13の条件で行うことが好ましく、室温以下では反応速度が遅く、100℃以上では溶媒の揮散が生じるうえ反応が極めて早く進むために、反応暴走するおそれがあるからである。また、pHが6〜8の中性付近では反応が極めて遅く、更にpH5以下では重合物がゲル化したりスポンジ状となり、微粉末とするためには粉砕処理が必要となるためである。
【0026】
フェノール類としては、ホルムアルデヒドとの反応により重合物を生成するものであれば何れも使用でき、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、1,3ジヒドロキシベンゼン、1,4ジヒドロキシベンゼンなどが例示され、好ましくは1,3ジヒドロキシベンゼンが用いられる。
【0027】
〔3〕高純度SiC微粉末の製造;
作製したシリカ微粒子の核(コア)を、フェノール樹脂で被覆(シェル)した、コア・シェル構造のSiC前駆体をろ過分離して、50〜150℃で乾燥した後、無酸素雰囲気下で800〜1000℃に加熱してフェノール樹脂を焼成して、炭化する。焼成処理により、シリカ(SiO)をコアとして、その周囲を樹脂炭化物が被覆したC/SiO構造のSiC前駆体の焼成炭化物が得られる。なお、焼成熱処理時の温度が800℃以下では焼成炭化が不十分となり、一方1000℃以上の温度ではシリカの炭素による還元反応が生じることになる。
【0028】
次に、このSiC前駆体の焼成炭化物をHe、Ne、ArやNなどの不活性雰囲気下1400〜2200℃の温度で熱処理してシリカを炭素により熱還元して、SiO+C→SiO+CO、SiO+2C→SiC+CO、の反応により珪化する。なお、熱処理温度が1400℃以下ではこの反応の進行が遅く、また2200℃以上ではSiCが分解するためである。
【0029】
このようにして珪化した生成物には遊離炭素が存在するので、1000℃以下の温度で酸化燃焼して遊離炭素分を燃焼除去することにより、高純度SiC微粉末が製造される。酸化燃焼温度が1000℃以上ではSiCの酸化が起こるからである。
【0030】
〔4〕本発明は、上記の方法で高純度SiC微粉末を製造するものであるが、走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)による観察結果から、SiC生成プロセスは下記のように推定される。
【0031】
図2は、SiC生成プロセスを模式的に示したものである。まず、フェノール樹脂−シリカのコア・シェル構造体を不活性雰囲気下で加熱すると、フェノール樹脂の炭化を生じて、炭素−シリカのコア・シェル構造体を得ることができる。さらに、その炭素−シリカコア・シェル構造体を不活性雰囲気下で1400〜2200℃程度に加熱すると炭素とシリカ粒子の界面でSiO+C→SiO+COで表されるシリカの炭素による熱還元反応によって一酸化ケイ素ガス(SiOガス)を生じる。SiOガスの発生を伴うのと同時に、SiOガスは近傍の炭素と直ちにSiO+2C→SiC+COであらわされる還元反応によって炭化ケイ素に還元される。発生したSiOガスがコア・シェル構造の炭素殻を拡散していくので、炭素殻は炭化ケイ素に置換されて中空を有する炭化ケイ素殻が生成する。
【0032】
一般に、微細なSiC粒子は互いが近接した状態で高温にさらすと粒子同士の癒着や粒成長を生ずるが、本発明にて生成したSiC粒子は互いに炭素殻に阻まれて孤立に存在していることから、高温下に置かれても癒着や粒成長が阻害されて、微細な単独の粒子形態を維持することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。
【0034】
実施例1
テトラエトキシシランにエタノールを体積比で2倍量加えて混合し、室温においてテトラエトキシシラン−エタノール混合溶液のpHが9となるようにアンモニア水溶液を添加攪拌して、テトラエトキシシランを加水分解してシリカ懸濁液を調製した。シリカ懸濁液中のシリカ微粒子の平均直径は走査型電子顕微鏡の観察から250nmであった。
【0035】
シリカ懸濁液に体積比で等倍量のイオン交換水を加えて希釈した。この希釈液に1,3ジヒドロキシベンゼンと、その2倍量(モル比)のホルムアルデヒドを添加、攪拌した。なお、1,3ジヒドロキシベンゼンの添加量は、1,3ジヒドロキシベンゼンとホルムアルデヒドが重合して生成するフェノール樹脂の体積含有率がシリカ懸濁液中に存在するシリカ微粒子の300%となるように設定した。
【0036】
次いで、アンモニア水溶液を添加してpH12に調整し、室温で攪拌混合して1,3ジヒドロキシベンゼンとホルムアルデヒドを重合させて、シリカ微粒子を核として、その周囲を重合物であるフェノール樹脂で被覆したコア・シェル構造のSiC前駆体を含む懸濁液を作製した。懸濁液をろ過して固形分のみを分離して取り出し、SiC前駆体を作製した。
【0037】
このSiC前駆体を100℃で乾燥したのち酸素を遮断した雰囲気下に900℃の温度で焼成して炭化し、シリカ微粒子の周囲を樹脂炭化物で被覆したC/SiO構造のSiC前駆体の焼成炭化物を得た。
【0038】
次に、この焼成炭化物をArガス雰囲気中、1700℃の温度で熱処理して、SiOをCで熱還元して珪化した後、空気中で800℃に加熱して遊離炭素を燃焼除去して、高純度SiC微粉末を製造した。
【0039】
実施例2
実施例1において、シリコンアルコキシドとしてテトラメトキシシランを用いた他は、実施例1と同じ方法により高純度SiC微粉末を製造した。
【0040】
実施例3
実施例1において、1,3ジヒドロキシベンゼンに代えてフェノールを用いた他は、実施例1と同じ方法により高純度SiC微粉末を製造した。
【0041】
比較例1
実施例1と同様の手法でシリカ懸濁液を得て、これを市販の液状レゾール型フェノール樹脂(大日本インキ化学製J−325)と混合した。シリカとフェノール樹脂はフェノール樹脂固形分の体積含有率がシリカ粒子の300%となるようにして混合し、熱硬化処理して、シリカ−フェノール樹脂複合体とした。その複合体を900℃の温度で焼成してフェノール樹脂を炭化し、次いで、この焼成炭化物をArガス雰囲気中、1700℃の温度で熱処理して、SiOをCで熱還元して珪化した後、空気中で800℃に加熱して遊離炭素を燃焼除去して、SiC微粉末を製造した。
【0042】
比較例2
実施例1において、テトラエトキシシラン−エタノール混合溶液のpHを13となるようにアンモニア水溶液を添加して攪拌し、また、シリカ懸濁液中のシリカ微粒子の平均直径を2200nmに調整した他は、実施例1と同じ方法により高純度SiC微粉末を製造した。
【0043】
比較例3
実施例1において、テトラエトキシシラン−エタノール混合溶液のpHを13となるようにアンモニア水溶液を添加攪拌し、また、シリカ懸濁液中のシリカ微粒子の平均直径を8nmに調整した他は、実施例1と同じ方法により高純度SiC微粉末を製造した。
【0044】
比較例4
実施例1において、1,3ジヒドロキシベンゼンとホルムアルデヒドが重合して生成するフェノール樹脂の体積含有率をシリカ懸濁液中に存在するシリカ微粒子の20%となるように調整した他は、実施例1と同じ方法により高純度SiC微粉末を製造した。
【0045】
比較例5
実施例1において、1,3ジヒドロキシベンゼンとホルムアルデヒドが重合して生成するフェノール樹脂の体積含有率をシリカ懸濁液中に存在するシリカ微粒子の600%となるように調整した他は、実施例1と同じ方法により高純度SiC微粉末を製造した。
【0046】
このようにして製造した高純度SiC微粉末について、走査型電子顕微鏡によりSiC粒子の癒着状況を観察し、平均粒子直径を求めた。また、調整に用いたシリコンアルコキシドのSiCへの転化率と、珪化物中のSiCの存在割合をSiC収率として求め、得られた結果を表1に示した。なお、原料樹脂種および、シリカ粒子径とシリカに対する樹脂の体積割合も表1に併記した。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例の範囲内では期待した通りの癒着の少ないサブミクロン粒子径のSiC粉末を得ることができた。図3は実施例1で得られたシリカ粒子−炭素のコア・シェル構造体を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察した画像であり、シリカ粒子が炭素殻中で孤立に存在している。図4は実施例1の珪化後のTEM画像であり、炭素殻中にSiC粒子が生成して孤立に存在していることがわかる。図5はSiC粒子単体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、癒着の少ないサブミクロン粒子がみられる。
【0049】
比較例1ではSiC粒子の癒着、もしくは粒成長がみられた。図6はシリカ粒子と炭素の複合体である。シリカ粒子は炭素中で孤立に分散しておらず、互いに近接している。そのため図7のようにSiCの癒着や粒成長が生じた。
【0050】
比較例2は内包されるシリカ粒子が大きいため、珪化反応の際に生成するSiOガス量が必然的に増加する。SiO生成の際に炭素殻が消費されて炭素殻が薄くなっているため、SiCの生成が殻内にとどまらず隣接するコア・シェル構造体に及ぶためにシリカ粒子の癒着と粒成長を伴った。また、SiC転化率とSiC収率が低下した。
【0051】
比較例3はシリカ粒子がごく微細で単独に分散できず凝集形態をとることから、生成するSiCの癒着および粒成長を生じた。
【0052】
比較例4は炭素殻の厚さが薄くなるため、生成するSiOに対して炭素量が不足する。この場合、SiOガスの散逸が生じ、結果としてSiC粒子の癒着や粒成長に至るばかりか、SiCの収率が低下する。
【0053】
比較例5は炭素量が大過剰となっているため、SiCの癒着や粒成長は生じないが、SiC収率が著しく低下するため実操業上好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の高純度SiC微粉末の製造方法を示したフローチャートである。
【図2】本発明のSiC生成プロセスを示した模式図である。
【図3】実施例1で得られたシリカ−炭素のコア・シェル構造体のTEM像である。
【図4】実施例1で得られたコア・シェル構造体の珪化後のTEM像である。
【図5】実施例1で得られたSiC粉末のSEM像である。
【図6】比較例1で得られたシリカ−炭素複合体のSEM像である。
【図7】比較例1で得られたSiC粉末のSEM像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンアルコキシドから調製したシリカの粒子径が10〜2000nmのシリカゾルもしくはシリカ懸濁液に、フェノール類とホルムアルデヒドおよびアンモニア水溶液を添加して重合し、シリカ微粒子を核としてその周囲をフェノール樹脂で被覆したコア・シェル構造のSiC前駆体を作製し、無酸素雰囲気下800〜1000℃で熱処理して焼成し、次いで、不活性雰囲気下1400〜2200℃で熱処理して珪化することを特徴とする高純度SiC微粉末の製造方法。
【請求項2】
SiC前駆体を構成するフェノール樹脂とシリカ微粒子の割合が、体積含有率でフェノール樹脂がシリカ微粒子の33〜500%である請求項1記載の高純度SiC微粉末の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−191364(P2007−191364A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12432(P2006−12432)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000219576)東海カーボン株式会社 (155)
【Fターム(参考)】