高輝度放電灯用発光容器および高輝度放電灯
【課題】発光管からの発光を絞りつつ、発光の色温度安定性を向上させ、かつ点灯−消灯を反復したときの耐久性を維持することである。
【解決手段】高輝度放電灯用発光容器5Aは、透光性の多結晶セラミックスからなる発光容器であり、中央発光部2、および中央発光部2の両側にそれぞれ設けられている側端部3を備え,更に各側端部3からそれぞれ突出する管状部1を備えている。側端部3の内側面3aが粗面である。
【解決手段】高輝度放電灯用発光容器5Aは、透光性の多結晶セラミックスからなる発光容器であり、中央発光部2、および中央発光部2の両側にそれぞれ設けられている側端部3を備え,更に各側端部3からそれぞれ突出する管状部1を備えている。側端部3の内側面3aが粗面である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度放電灯用発光容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透光性を有するセラミックスは可視光を透過させることから、高輝度放電灯の発光容器として利用されてきた。特に透光性のアルミナセラミックスは、高輝度放電灯の発光容器として利用されている。
【0003】
セラミックメタルハライドランプの色温度の安定性を向上させるために、プラズマアーク中のメタルハライドの蒸気圧を上げることが必要である。セラミックチューブの一部を酸化ジルコニウムでコーティングし、プラズマアークから放射される赤外線を発光管内部に反射することにより、発光管内部の温度を上げることにより、メタルハライド蒸気圧を向上させることを開示している(特許文献1、2)。特許文献1、2では、発光管の両方の端面(エンドプラグ)と、発光管に取り付けられた細長い管状部(脚部)の表面とを、酸化ジルコニウム皮膜によって被覆することによって、ハロゲン化金属充填物の液化と低温化を防止し、良好な演色性を確保している。
【0004】
また、発光管の内容積が1cc未満で150W以下のメタルハライドランプの色温度や発光効率が、点灯方向によって変化しないように、熱反射コーティングを発光管の両端に施すことが開示されている(特許文献3)。
【0005】
また、可視光の平均直線透過率が15%以上の発光部と15%未満のプラグエンド部を焼き嵌め法によって作製した自動車用ヘッドランプ用の高圧放電灯において、更に発光管の表面に遮光膜を形成することによって、不所望の方向への光放射を遮蔽することが、特許文献4の(0054)に記載されている。
また、特許文献5には、自動車用ヘッドランプの高圧放電灯において、発光管の中央部を肉薄とすることで中央部に輝度中心を配置し、投射ビームの焦点への集光効率を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許 EP 0 869 540 A1
【特許文献2】特開平10−335059
【特許文献3】米国特許 5,708,328
【特許文献4】特開2006−93045
【特許文献5】特開2004−6198
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高輝度放電ランプでは、まず水銀蒸気やアルゴンガス等の始動ガス中で電極間の放電を起こし、その放電エネルギーによる熱エネルギーを利用して、発光物質であるナトリウムや金属沃化物を蒸発させてガス化し、更に電極間で放電している電子のエネルギーで発光物質を励起し、発光物質の電子が励起状態から基底状態に戻る際に生じる光を光源として利用している。
【0008】
このため、発光物質の蒸気圧が高いほど、放電している電子と発光物質の衝突確率が高くなり発光物質の励起が起こり易くなって発光効率が高くなる。発光物質の蒸気圧を高くするためには、発光物質の温度を上げることが必要であり、そのためには発光管内部のガス温度を高く保持することが重要である。
【0009】
このように高輝度放電ランプでは電極間での電子放電を利用して発光が起こっており、発光している部分の温度が最も高く、電極の付け根や電極の後方部分の温度が低くなる。この温度の最も低い部分を最冷点と呼ぶが、ランプ内の発光物質の蒸気圧はこの最冷点によって支配されるため最冷点の温度を上げることが発光物質の蒸気圧を高くするために重要である。
【0010】
最冷点の温度を高くするためには、従来技術のように、電極付け根のエンドプラグや環状部(脚部)の表面に酸化ジルコニウムの粉末を表面に400〜500℃の温度で焼き付かせて遮光膜を設けることが有効である(特許文献1、2、3)。発光から放出された光エネルギーが遮光膜によって吸収されることにより発光管の温度が上昇し、メタルハライド蒸気の温度も上昇し、結果発光物質の蒸気圧が向上し、発光効率(lm/W)が改善され、同時に色温度安定性の良い高輝度放電灯ランプ用発光管を提供することが可能になる。しかしながらこのような異種材料粉末からなる表面被覆層は、発光管表面との付着力が弱く粉末同士の結合力も弱いため、長時間の点灯や点灯−消灯を繰り返したときに剥れ易い問題があった。表面被覆層が徐々に剥がれていくと、遮光性が劣化し、発光管の温度が徐々に低下してランプ特性も徐々に劣化してしまう問題があった。
【0011】
また、セラミック発光管は一般的に透光性ではあるものの透明でないため、プラズマアークで生成し放出される光によって発光管全体が発光するため、光源の大きさが発光管の大きさと同じになる。このため発光管と組合せて使用される照明器具の性能に合せて発光部位を制御することが難しい。一般照明用のランプの様に比較的大きな光源サイズが許容されるランプでは、照明器具に対して光源サイズが大きいことは余り問題にならないが、自動車用のヘッドランプやプロジェクター用のランプとしてセラミック発光管は光源サイズが大きくなりすぎて照明器具との組合せが困難である。
【0012】
このため、発光管の中央部の狭い領域から発光させることによって、投射ビームによる集光効率を高めることも知られている(特許文献4、5)。これらの文献に記載の方法では集光効率の向上には有効なものの、発光管の端部での遮光効果が充分でないため、色安定性が充分に得られない問題があった。また発光管の形状も小型の円筒状のものに限定されていた。
【0013】
本発明の課題は、高輝度放電ランプの発光の色温度安定性を向上させ、かつ点灯−消灯を反復したときの耐久性を維持することである。また発光管からの発光領域を発光装置全体の仕様に合わせて更に絞ることが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る高輝度放電灯用発光容器は、
透光性の多結晶セラミックスからなる発光管であって、中央発光部、およびこの中央発光部の両側にそれぞれ設けられている側端部を備えている発光管、および 各側端部からそれぞれ突出する管状部を備えており、
側端部の内側面が粗面であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る高輝度放電灯用発光管は、
透光性の多結晶セラミックスからなる発光管であって、中央発光部、およびこの中央発光部の両側にそれぞれ設けられている側端部を備えている発光管、および
各側端部からそれぞれ突出する管状部を備えており、
側端部の内側面に凹凸パターンが形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る高輝度放電灯は、
前記発光容器、
発光管の内側空間に設けられている電極、および
各管状部にそれぞれ挿通されており、電極を保持する電極保持部材を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発光管の側端部の内側面に粗面を形成し、相対的に光透過率の低い遮光部を形成することで、中央発光部に輝度中心を配置させることで、投射ビームへの集光効率を高くすることができる。
【0018】
これとともに、側端部の内側面に粗面を形成することで、発光管の最冷点におけるガスの液化や温度降下を適切に制御できることがわかった。
【0019】
発光管の表面粗さについては、光の散乱の原因になることが知られていたため、通常は表面粗さの滑らかな成形型を用いて製造されており、部分的に表面粗さを意図的に粗くしたり凹凸を設けることは行われていなかった。
【0020】
また、透光性多結晶セラミックスの成形法として広く使われている押出し成形法では、形状を規定する口金と成形体が一様に摩擦するため、表面状態が均一で一部の表面粗さを意図的に粗くすることは出来なかった。
【0021】
更に、表面粗さはセラミックスの強度に影響を与えるため、なるべく滑らかな表面となるよう製造されていた。本発明は、高輝度発光管の分野における、これらの常識に反してなされたものである。
【0022】
なお、側端部および管状部の外表面だけを遮光膜によって被覆すると、封止材の温度が上がるため封止材が劣化し、この結果、色温度安定性が低下し、点灯−消灯反復時の耐久性が低下した。これはエンドプラグでのガス温度が予想よりも高く、また管状部内まで腐食性ガスが流れて封止部分を浸食しやすいためと考えられる。また、遮光膜のセラミックス表面に対する密着性が、長期使用時に低下し、最冷点を抑制する能力が損なわれるものと考えられる。
【0023】
また、側端部の外側面に粗面を形成することによって、側端部に生ずる最冷点を抑制することも検討した。しかし、この場合には、最冷点を抑制する効果が十分ではないことが判明した。これは、側端部の外側面で放射光が散乱すると、最冷点での温度上昇に利用される熱量が、期待したほど大きくないからである。
【0024】
また、発光容器の側端部の内側面に凹凸パターンを設けることによっても、上記と同様の作用効果が得られることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器(比較例)の外観図であり、(b)は、同じく断面図である。
【図2】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器(本発明例)の外観図であり、(b)は、同じく断面図である。
【図3】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器(比較例)の外観図であり、(b)は、同じく断面図である。
【図4】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器(本発明例)の外観図であり、(b)は、同じく断面図である。
【図5】セラミックメタルハライドランプ用発光容器の断面図であり、(a)は、側端部の内側面にストライプ状の粗面を形成した例を示し、(b)は、側端部の内側面に粗面を形成し、粗面の粗さを段階的に粗くした例を示し、(c)は、側端部の内側面にドット状の凹凸パターンを設けた例を示す。
【図6】セラミックメタルハライドランプ用発光容器の断面図であり、(a)は、側端部の内側面に線状の凹部を設けた例を示し、(b)は、側端部の内側面に網目状の凹部を設けた例を示し、(c)は、側端部の内側面に網目状の凹部と粗面とを形成した例を示す。
【図7】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図である。
【図8】(a)は、高圧ナトリウムランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図である。
【図9】セラミックメタルハライドランプ用発光容器に電極を取り付けた状態を示す断面図である。
【図10】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図である。
【図11】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図である。発光菅の中央部が放電方向に対して垂直方向に帯状に表面粗さの粗い遮光部が外側表面に形成され、同様に発光菅の中央部が放電方向に対して垂直方向に帯状に薄肉になっており、表面粗さと肉厚の制御の組合せによって透光部が形成されている。
【図12】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図である。帯状の透光部が手前側と反対側の2箇所に複数形成されている。
【図13】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図であり、(c)は同じく横断面図である。発光菅の中央部に放電方向と同じ方向に帯状に透光部が2箇所形成されるように、表面粗さの粗い遮光部が外側表面に形成され、同様に発光菅の中央部の肉厚が放電方向と同じ方向に薄肉になっており、表面粗さと肉厚の制御の組合せによって透光部が形成されている。
【図14】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図であり、(c)は同じく横断面図である。表面粗さの粗い遮光部が内側と外側表面に形成され、発光管透光部が発光菅の中央部に点状に形成されている。この図では点状の透光部が24箇所形成されており、それぞれの透光部の仮想中心が発光管の中心に収束するように透光部が形成されている。
【図15】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図であり、(c)は同じく横断面図である。発光菅の中央部に点状に透光部が形成されるように表面粗さの粗い遮光部が外側と内側表面に形成され、同様に発光菅の中央部の肉厚が点状に薄肉になっており、表面粗さと肉厚の制御の組合せによって点状の透光部が形成されている。この図では点状の透光部が8箇所形成されており、それぞれの透光部の仮想中心が発光管の中心に収束するように透光部が形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
側端部の内側面は粗面とするが、これは中央発光部の内側面および外側面よりもRaが大きければ良い。好適な実施形態においては、側端部の内側面の中心線平均表面粗さRaが2.0μm以上であり、特に好ましくは2.5μm以上である。
【0027】
側端部の内側面の中心線平均表面粗さRaは、発光管の強度を劣化させないという観点からは、20μm以下が好ましい。
【0028】
側端部の外側面は平滑面であってよく、粗面であってもよい。 好適な実施形態においては、側端部の外側面の中心線平均表面粗さRaが2.0μm以上であり、特に好ましくは2.5μm以上であり、これによって発光効率を一層向上させることができる。また、発光管の強度を劣化させないという観点からは、側端部の外側面の中心線平均表面粗さRaが20μm以下であることが好ましい。この観点からは、側端部の外側面を平滑面とし、例えば中心線平均表面粗さRaを1.0μm以下とすることが好ましい。
【0029】
好適な実施形態においては、中央発光部の内側面および外側面の中心線平均表面粗さRaが1.0μm以下であり、これによって中央発光部からの発光効率を更に向上させることができる。また、高輝度放電ランプでは電極間の放電により生成したプラズマアークから放出された可視光線を利用するため、透光部の表面粗さは内表面も外表面も滑らかで、光の散乱が小さくて損失が少ない方が好ましい。透光性のアルミナセラミックスでは、平均粒径が15〜50ミクロンのサイズであることが、透光性と機械的強度の両方を満足するために好適である。
【0030】
また、好適な実施形態においては、中央発光部が、透光部と、この透光部よりも直線透過率の低い遮光部とを備えている。これによって、発光領域を発光装置全体の仕様に合わせて更に絞ることが可能である。
【0031】
また、側端部の内側面(および外側面)に凹凸パターンを形成する場合には、凹部のパターンを形成する場合と、凸部のパターンを形成する場合とがある。本発明の観点からは、凹凸の高さの差(段差)は0.05mm以上とすることが好ましい。また、凹凸の高さの差は0.2mm以下であることが、成形後の離型を容易にするという観点からは好ましい。
【0032】
図1(b)は、メタルハライドランプに使われる従来の高輝度放電灯用発光容器の模式的断面図であり、図1(a)は、容器の外観を示す正面図である。発光容器は、中央発光部2、中央発光部2の両側の側端部3、各側端部3の外側の管状部(脚部)1を備えている。この側端部3および中央発光部2の内側面および外側面は、ともに平滑であり、表面粗さはほぼ均一である。
【0033】
図2は、メタルハライドランプに使われる高輝度放電灯用発光容器5Aの実施例を示す。本例では、中央発光部2の内側面2aおよび外側面2bは平滑面であり、また側端部3の外側面3bは平滑面である。しかし、側端部3の内側面3bには粗面6が形成されている。発光管の内側空間4においてアーク放電を行い、発光させる。
【0034】
図3は、本発明外の比較例に係るものである。本例の発光容器5Bでは、中央発光部2の内側面2aおよび外側面2bは平滑面であり、また側端部3の内側面3aも平滑面である。しかし、側端部3の外側面3bには粗面6が形成されている。
【0035】
図4は、メタルハライドランプに使われる高輝度放電灯用発光容器5Cの実施例を示す。本例では、中央発光部2の内側面2aおよび外側面2bは平滑面である。しかし、側端部3の内側面3b、外側面3aにはそれぞれ粗面6が形成されている。
【0036】
図5、図6は、メタルハライドランプに使われる発光容器の側端部の内側面に、粗面や凹凸パターンを形成した実施例を示す。
【0037】
図5(a)の発光容器5Dでは、中央発光部2の内側面2a、外側面2bは平滑面であり、また側端部3の外側面3bは平滑面である。しかし、側端部3の内側面3aには粗面6が形成されている。特に、粗面6は、発光管の管軸Aを中心として周方向に形成された帯状をなしており、隣接する粗面6は平行になっている。
【0038】
図5(b)の発光容器5Eでは、中央発光部2の内側面2a、外側面2bは平滑面であり、また側端部3の外側面3bは平滑面である。しかし、側端部3の内側面3aには粗面6Aが形成されている。本例では、粗面6Aの平均表面粗さRaは、側端部の管状部側末端から中央発光部へと向かって、徐々に小さくなっている。
【0039】
図5(c)の発光容器5Fでは、中央発光部2の内側面2a、外側面2bは平滑面であり、また側端部3の外側面3bは平滑面である。しかし、側端部3の内側面3aには凹凸パターン7が形成されている。本例では、凹凸パターン7は、ディンプル形状の凹部を多数形成した形状である。
【0040】
図6(a)の発光容器5Gでは、凹凸パターン9は、細長い溝状の凹部を多数形成した形状である。また、図6(b)の発光容器5Hでは、凹凸パターン10は、細長い溝を編み目状に形成した形状である。
【0041】
図6(c)の発光容器5Iでは、中央発光部2の内側面2a、外側面2bは平滑面であり、また側端部3の外側面3bは平滑面である。しかし、側端部3の内側面3aには、編み目状の凹凸パターン10と粗面6との両方が形成されている。
【0042】
図7は、メタルハライドランプ用の発光容器5Jを示す。本例では、中央発光部2の内側面2a、外側面2bは平滑面であり、側端部3の外側面3bおよび内側面3aには粗面6が形成されている。更に、側端部3の肉厚を中央発光部2の肉厚よりも大きくすることによって、中央発光部への発光の集中を一層促進している。
【0043】
図8は、高圧ナトリウムランプに使われる発光容器5Kを示す。本例では、中央発光部2の内側面2a、外側面2b、側端部3の外側面3bは平滑面であり、側端部3の内側面内側面3aには粗面6が形成されている。
【0044】
図9は、本発明の実施例の発光容器5A(図2)を用いたメタルハライドランプを示す。電極先端より後ろの電極付け根部と背面部に、表面粗さの粗い遮光部が形成されている。管状部1の内側空間には電極保持部材12が挿通されており、電極保持部材の内側末端には電極14が取り付けられている。電極保持部材12の外側端部は封止材13によって管状部1の内側壁面に対して封止されており、更に封止材13によって管状部1の外側端面に対して封止されている。一対の電極14が発光管の内側空間4に位置しており、電極14間で放電を行えるように設計されている。
【0045】
図10は、メタルハライドランプに使われる発光容器5Lの中央部に帯状に透光部20を形成した実施例を示す。本例では、側端部3の外側面および内側面に粗面を形成するとともに、中央発光部2の外側面および内側面の一部にも粗面を形成することで、細長い帯状の透光部20と遮光部21を形成している。
【0046】
図11は、メタルハライドランプに使われる発光容器5Mの中央部に帯状に透光部20を形成した実施例を示す。本例では、更に中央発光部2のうちの透光部20の肉厚が薄くなるように成形後白加工し、焼結後透光部表面が研磨されて表面粗さが更に滑らかになっている。一方内側の中央部以外の部分は表面粗さを粗くすることにより、帯状に遮光部21を形成している。
【0047】
図12は、メタルハライドランプに使われる発光容器5Nの中央部に長手方向に帯状に透光部20を手前と反対側の後方に各1箇所形成した実施例を示す。本例では、中央発光部2の外側面および内側面に表面粗さを粗くした遮光部21を形成することにより、相対的に光の散乱吸収が少ない透光部20を形成している。
【0048】
図13は、メタルハライドランプに使われる発光容器5Pに長手方向に帯状に透光部20を手前と反対側の後方に各1箇所形成した実施例を示す。本例では、中央発光部2の外側面および内側面に、表面粗さを粗くした遮光部21を形成することにより、相対的に光15の散乱吸収が少ない透光部20を形成している。また、図13(c)に示すように、透光部の肉厚を薄くすることにより、透光部20を2箇所形成している。
【0049】
図14は、メタルハライドランプ用発光容器5Qに点状の透光部20を形成した実施例を示す。本例では、中央発光部2の外側面および内側面に、表面粗さを粗くした遮光部21を形成することにより、相対的に光の散乱吸収が少ない点状の透光部20を形成している。点状の透光部が24箇所形成されており、それぞれの透光部20の仮想中心が発光管の中心に収束するように、透光部20が形成されている。
【0050】
図15は、メタルハライドランプ用発光容器5Rに点状の透光部20を形成した実施例を示す。中央発光部2の外側面および内側面に、表面粗さを粗くした遮光部21を形成することにより、相対的に光の散乱吸収が少ない点状の透光部20を形成している。図14(c)では、透光部20の肉薄を薄くしている。この図では点状の透光部20が8箇所形成されており、それぞれの透光部の仮想中心が発光管の中心に収束するように透光部が形成されている。
【0051】
セラミック発光管は透光性ではあるものの透明でないため、プラズマアークで生成し放出される光によって発光管全体が発光するため、光源の大きさが発光管の大きさと同じになる。このため小さな光源サイズが求められる自動車用ヘッドランプやプロジェクターの光源ランプでは、照明器具の性能に合せた光源サイズにすることが難しい。しかし、本発明では、光源サイズを所定の大きさに限定することにより、照明器具の性能に合せたランプを提供することが可能となる。
【0052】
例えば自動車用の発光管では透光部を小さくして、光源サイズがハロゲンランプのフィラメントの大きさと同等の2mmφx4mmの大きさとなるようにすることができる。更にプロジェクター用の光源に応用するためには、光源サイズが直径1mm以下となるようにできる。
【0053】
本発明の高圧放電灯は、自動車用ヘッドランプ、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)、液晶プロジェクターなど、疑似点光源を適用可能な他の照明装置に適用可能である。
【0054】
本発明において、中央発光部とは、発光管のうち、両側の側端部の間に挟まれた部分を意味する。側端部は、発光管の両端を塞ぐ部分を意味しており、即ち、管状部の末端から中央発光部の末端との間の部分である。
【0055】
本発明では(図2参照)、中央発光部2および側端部3(=発光管)の内側面の全表面積をLとしたとき、各側端部2の各内側面の表面積Pは、それぞれ,5%とする。つまり、量側端部の内側面の表面積を合わせると、発光管の内側面の全表面積の10%となる。本発明では、少なくともこの側端部の内側面が粗面化されていることが必要である。
【0056】
発光管を構成する半透明な透光性セラミックスとしては以下を例示できる。
多結晶Al2O3、AlN、AlON。又は表面粗度Raが1.0 μm以下 の単結晶Al2O3、YAG、Y2O3。
【0057】
また、半透明とは、以下の光透過率を意味している。
全光線透過率85%以上かつ直線透過率45%以下
【0058】
前記輝度中心とは、発光部において輝度の最も高い部分を意味する。輝度中心は一点である必要はなく、縦断面の方向に向かって延びていても良い。
【0059】
高輝度放電灯とは、水銀を発光物質に用いる水銀ランプ、ナトリウムを発光物質に用いる高圧ナトリウムランプ、金属沃化物を発光物質に用いるメタルハライドランプのことを言う。
【0060】
多結晶セラミックスは所望の形状に適した押出し成形、ドライバッグ成形等のプレス成形、鋳込み成形、射出成形、ゲルキャスト成形等の成形法で成形される。
押出し成形ではその形状は口金の形状との摩擦によって形成されるため、表面粗さは平滑化されており部分的に表面粗さを部分的に変えることは難しい。
鋳込み成形では成形体の内表面は自由表面として形成されるため、表面粗さを部分的に粗くすることは出来ない。
【0061】
プレス成形法では外表面はゴム型を一般的に使用するため、精密に表面粗さを制御することは難しい。しかしながら内表面に関しては芯金の表面粗さを粗くすることにより、発光部と電極部を意図的に変えることが可能である。
【0062】
射出成形やゲルキャストでは、内側と外側の形状は、内型と外型の転写によって形成され、その際に型の表面粗さも同時に転写される。従って型の遮光部に相当する部分の表面粗さを粗くしたり凹凸を設けたりし、透光部に相当する部分を表面粗さが滑らかなるように成形することにより、遮光部と透光部を形成することが可能である。更に射出成形やゲルキャストでは内表面も外表面も独立して表面粗さを変化させるたり肉厚を制御することが可能である。
【実施例】
【0063】
(比較例1、実施例1、実施例3〜8の製造)
透光性アルミナ用原料粉末を用いて、図1に示す比較例1と図2に示す実施例1及び図5(a)〜(c)、図6(a)〜(c)に示す実施例3〜8のメタルハライドランプ用発光容器の成形体をゲルキャスト成形法により作成した。
【0064】
成形体のキャピラリー部と透光部に相当する部分の肉厚は一様に1.3mmであった。表面粗さにより遮光部を形成した部分の肉厚は1.3mmの範囲であった。外側の金型の表面粗さは、一様にRa0.1ミクロンに仕上げてあった。
【0065】
内側の形状はキャピラリーを形成するピンとワックス成分からなる中子を予め一体に成形しておいた中型を挿入し、外型と中型の間に形成される空隙にゲルキャスト成形用のスラリーを注型し硬化後、ピンを抜いてワックス中子を加熱溶融除去し、大気中1,300℃で焼成してバインダーの除去と仮焼成を行った。更にアルミナ仮焼結体を水素雰囲気中1,800℃で3 時間焼成して、透光性多結晶アルミナセラミックからなる中空構造の高輝度放電灯用発光容器を作成した。
【0066】
中子成形用金型の表面は、比較例1では表面粗さがRa0.1ミクロンに一様に仕上げであり、実施例では全体をRa0.1ミクロンに仕上げた。この後、実施例1、実施例3、実施例4では、図2、図5(a)、図5(b)にそれぞれ示す遮光部に相当する部分をRa5ミクロンになるよう放電加工により部分的に粗く仕上げた。同様に実施例5、実施例6、実施例7ではそれぞれ図5(c)、図6(a)、(b)に示すようなパターンを機械加工により150ミクロン掘り込んで遮光部3を形成した。実施例8では、実施例7と同様のパターンを機械加工により施した後に放電加工を行って網目パターンと表面粗さを粗くした遮光部3を形成した。
【0067】
このような中子成形用金型を用いることにより、中子表面に中子成形金型の表面形状を転写させ、更に成形体の内側の表面粗さを制御することが可能となり、透光部2と遮光部3を形成することができる。遮光部の内側面の表面積は、発光管の内側面の全表面積の10%〜20%であった。
【0068】
焼結後の発光容器の結晶の平均粒径は25ミクロン、キャピラリー部と透光部の肉厚は一様に0.9mmであり、透光部に相当する部分の表面粗さはRa0.15ミクロンで充分な透光性を示した。一方表面粗さを粗くすることで形成した遮光部に相当する部分の表面粗さは3ミクロンで、透光部に比較して悪い透光性を示した。また凹凸によって形成した遮光部では、最大0.1mmの深さの凹部が形成された。
【0069】
(比較例2、実施例2、実施例9)
透光性アルミナ用原料粉末を用いて、図3に示す比較例2、図4に示す実施例2、図7に示す実施例9のメタルハライドランプ用発光容器の成形体をゲルキャスト成形法により作成した。比較例2と実施例2では成形体の肉厚は一様に1.3mmであった。実施例9では成形体の肉厚は遮光部の肉厚が1.3〜3mmで透光部は1.3mmであった。
【0070】
外側の金型の表面粗さは一様にRa0.1ミクロンに仕上げた後、各遮光部に相当する部分を放電加工によって粗くした。表面粗さはRa5ミクロンであった。
内側の形状は、キャピラリーを形成するピンとワックス成分からなる中子を予め一体に成形しておいた中型を挿入し、外型と中型の間に形成される空隙にゲルキャスト成形用のスラリーを注型し硬化後、ピンを抜いてワックス中子を加熱溶融除去した後、大気中1,300℃で焼成してバインダーの除去と仮焼成を行った。更にアルミナ仮焼結体を水素雰囲気中1,800℃で3 時間焼成して、透光性多結晶アルミナセラミックからなる中空構造の発光容器を作成した。
【0071】
比較例2の中子成形用金型の表面粗さは比較例と同じ一様にRa0.1ミクロンになるよう仕上げた。実施例3と実施例9では全体をRa0.1ミクロンに仕上げた後、図4と図7に示す遮光部の部分をRa5ミクロンになるよう放電加工により部分的に粗く仕上げた。
【0072】
このような外側成形用金型と中型を組合せて用いることにより、成形体の外側と内側の表面粗さと肉厚を制御することが可能となり、透光部と遮光部を形成することができる。
実施例2と3とにおいて、遮光部の内側面の表面積は、発光管の内側面の表面積の30%であった。
【0073】
焼結後の発光管容器の結晶の平均粒径は25ミクロン、比較例2と実施例2ではキャピラリー部、透光部、遮光部の肉厚は一様に0.9mmであり、実施例9では最大2.1mmであった。透光部に相当する部分の表面粗さはRa0.15ミクロンで充分な透光性を示した。遮光部に相当する部分の外側表面粗さRaは3ミクロンである。
【0074】
(比較例3の製造)
図3に示すようなパターンの発光管を、比較例2と同様にして作製した。ただし、側端部3の外側面に粗面を設けなかった。その代わりに、側端部3の外側面3bにタングステン−アルミナのサーメットからなる厚さ5ミクロンの遮光膜を形成した。
【0075】
(実施例10)
透光性アルミナ用原料粉末を用いて、図8に示す高圧ナトリウムランプ用発光容器の成形体をプレス成形法により作成した。
【0076】
外側に円筒状のゴム型を準備し、内側に全体をRa0.1ミクロンに仕上げた後、図8に示す遮光部3に相当する部分をRa5ミクロンになるようサンドブラスト法により部分的に粗く仕上げたマンドレルと呼ばれる芯金を設置し、ゴム型とマンドレルの間に形成される隙間に透光性アルミナ用原料粉末を充填し、ゴム型の外側より1トン/cm2の静水圧を印加して成形した。成形後成形体の肉厚が一様に1.1mmになるよう成形体の外側を旋盤加工した。
【0077】
このようなマンドレル芯金を用いることにより、発光管容器成形体の内側にマンドレル芯金の表面形状を転写させ成形体の内側の表面粗さを制御することが可能となり、透光部と遮光部を形成することができる。遮光部の面積は透光部と遮光部を合計した全体の面積の10%の範囲であった。
【0078】
更に予めプレス成形で成形しておいたプラグと組合せ、大気中1,300℃で焼成してバインダーの除去と仮焼成を行った。更にアルミナ仮焼結体を水素雰囲気中1,800℃で3 時間焼成して、透光性多結晶アルミナセラミックからなる中空構造の高輝度放電灯用発光管容器5を作成した。
【0079】
焼結後の発光管容器の結晶の平均粒径は25ミクロン、透光部と遮光部の肉厚は一様に0.8mmであり、透光部に相当する部分の容器内側の表面粗さはRa0.2ミクロンで充分な透光性を示した。一方表面粗さを粗くすることで形成した遮光部に相当する部分の表面粗さはRa3ミクロンで、透光部に比較して悪い透光性を示した。発光管容器外側の表面粗さは透光部も遮光部も一様にRa1ミクロンであった。
【0080】
(実施例11、12)
透光性アルミナ用原料粉末を用いて、図10に示す実施例11と図11に示す実施例12のメタルハライドランプ用発光容器の成形体をゲルキャスト成形法により作成した。実施例11、12共に成形体の肉厚は一様に1.3mmであった。
【0081】
外側の金型の表面粗さは一様にRa0.1ミクロンに仕上げた後、図10、図11の遮光部に相当する部分を放電加工によって粗くした。表面粗さはRa5ミクロンであった。
内側の形状は、キャピラリーを形成するピンとワックス成分からなる中子を予め一体に成形しておいた中型を挿入し、外型と中型の間に形成される空隙にゲルキャスト成形用のスラリーを注型し硬化後、ピンを抜いてワックス中子を加熱溶融除去し、大気中1,300℃で焼成してバインダーの除去と仮焼成を行った。更にアルミナ仮焼結体を水素雰囲気中1,800℃で3 時間焼成して、透光性多結晶アルミナセラミックからなる中空構造の発光容器を作成した。
【0082】
実施例11と実施例12の中子成形用金型の表面粗さは全体をRa0.1ミクロンに仕上げた後、図10と図11に示す遮光部の部分をRa5ミクロンになるよう放電加工により部分的に粗く仕上げた。
【0083】
このような外側成形用金型と中型を組合せて用いることにより、成形体の外側と内側の表面粗さと肉厚を制御することが可能となり、発光管容器の中央部に放電方向に対して垂直に環状の透光部を形成することができた。実施例11及び12の透光部の面積は25%、遮光部の面積は75%であった。
【0084】
実施例12では中子のワックス除去後、透光部を外側から白加工で肉厚が1mmになるようで研削した。焼結後の発光管容器の結晶の平均粒径はそれぞれ25ミクロン、実施例11ではキャピラリー部、透光部、遮光部の肉厚は一様に0.9mmであり、実施例12の透光部は肉厚0.7mmで表面粗さRa0.01ミクロンになるよう研磨加工を実施した。遮光部とキャピラリー部の肉厚は0.9mmであった。
【0085】
(実施例13,14)
透光性アルミナ用原料粉末を用いて、図12に示す実施例13と図13に示す実施例14のメタルハライドランプ用の高輝度放電灯用発光管容器の成形体をゲルキャスト成形法により作成した。実施例13では成形体の肉厚は一様に1.3mmであった。実施例14では、透光部に相当する部分の肉厚は0.5〜0.6mm、遮光部に相当する部分の肉厚は、0.6〜3mm、キャピラリー部は1.3mmであった。外側の金型の表面粗さは一様にRa0.1ミクロンに仕上げた後、図12、図13の遮光部に相当する部分を放電加工によって粗くした。表面粗さはRa5ミクロンであった。
【0086】
内側の形状は、キャピラリーを形成するピンとワックス成分からなる中子を予め一体に成形しておいた中型を挿入し、外型と中型の間に形成される空隙にゲルキャスト成形用のスラリーを注型し硬化後、ピンを抜いてワックス中子を加熱溶融除去し、大気中1300℃で焼成してバインダーの除去と仮焼成を行った。更にアルミナ仮焼結体を水素雰囲気中1,800℃で3 時間焼成して、透光性多結晶アルミナセラミックからなる中空構造の高輝度放電灯用発光管容器5を作成した。
【0087】
実施例13と実施例14の中子成形用金型の表面粗さは全体をRa0.1ミクロンに仕上げた後、図12と図13に示す遮光部の部分をRa5ミクロンになるよう放電加工により部分的に粗く仕上げた。
【0088】
このような外側成形用金型と中型を組合せて用いることにより、成形体の外側と内側の表面粗さと肉厚を制御することが可能となり、発光管容器の放電方向と平行に帯状の透光部を形成することができた。実施例13、14においては、遮光部の内側面の表面積は、発光管の内側面の表面積の90%である。
【0089】
焼結後の発光管容器の結晶の平均粒径はそれぞれ25ミクロン、実施例13ではキャピラリー部、透光部、遮光部の肉厚は一様に0.9mmであり、実施例14の透光部は0.3〜0.4mm、遮光部の肉厚は0.4〜2.1mm、キャピラリー部の肉厚は0.9mmであった。このように、表面粗さや肉厚を制御することにより、発光管容器に帯状に形成した透光部は、遮光部の透光性に比較して充分に大きな透光性を示した。
【0090】
(実施例15、16)
透光性アルミナ用原料粉末を用いて、図14に示す実施例15と図15に示す実施例16のメタルハライドランプ用の高輝度放電灯用発光管容器の成形体をゲルキャスト成形法により作成した。実施例15では成形体の肉厚は一様に1.3mmであった。実施例16では、透光部に相当する部分の成形体の肉厚は1.3mm、遮光部に相当する部分の肉厚は、1.3〜2.1mm、キャピラリー部は1.3mmであった。外側の金型の表面粗さは一様にRa0.1ミクロンに仕上げた後、図14、図15の遮光部に相当する部分を放電加工によって粗くした。表面粗さはRa5ミクロンであった。
【0091】
内側の形状は、キャピラリーを形成するピンとワックス成分からなる中子を予め一体に成形しておいた中型を挿入し、外型と中型の間に形成される空隙にゲルキャスト成形用のスラリーを注型し硬化後、ピンを抜いてワックス中子を加熱溶融除去し、大気中1300℃で焼成してバインダーの除去と仮焼成を行った。更にアルミナ仮焼結体を水素雰囲気中1,800℃で3 時間焼成して、透光性多結晶アルミナセラミックからなる中空構造の高輝度放電灯用発光管容器5を作成した。
【0092】
実施例15と実施例16の中子成形用金型の表面粗さは全体をRa0.1ミクロンに仕上げた後、図14と図15に示す遮光部の部分をRa5ミクロンになるよう放電加工により部分的に粗く仕上げた。
【0093】
このような外側成形用金型と中型を組合せて用いることにより、成形体の外側と内側の表面粗さと肉厚を制御することが可能となり、発光管容器に点状の透光部を形成することができた。実施例15においては,遮光部の内側面の表面積は、発光管の内側面の表面積の70%である。実施例16においては、遮光部の内側面の表面積は、発光管の内側面の表面積の90%である。
【0094】
焼結後の発光管容器の結晶の平均粒径はそれぞれ25ミクロン、実施例15ではキャピラリー部、透光部、遮光部の肉厚は一様に0.9mmであり、実施例16の透光部は0.9mm、遮光部の肉厚は0.9〜1.5mm、キャピラリー部の肉厚は0.9mmであった。このように、表面粗さや肉厚を制御することにより、発光管容器に帯状に形成した透光部は、遮光部の透光性に比較して充分に大きな透光性を示した。
【0095】
(発光管の組立)
上述した各発光容器の一方のキャピラリー部に、タングステンからなるコイル部を備えた電極部とニオブからなる導入導体部をモリブデンを介して接合した金属部品を挿入し、導入導体部とモリブデンの接合部分の位置が、キャピラリー端部近傍で導入導体がキャピラリーの外側に出るように冶具で仮固定し、リング状の封止用フリット材料を導入導体から挿入してキャピラリー端部に置いた後、その部分を所定の温度まで加熱溶融して気密に封止した。
【0096】
更にアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、この片方の端部が気密封止された複合発光管容器中に、もう一方の封止されていないキャピラリー側から水銀および発光金属としてNa、Tl、Dyのヨウ化物を適量入れ、先程と同様にタングステンからなるコイル部を備えた電極部とニオブからなる導入導体部をモリブデンを介して接合した金属部品を挿入し、導入導体部とモリブデンの接合部分の位置が、キャピラリー端部近傍で導入導体がキャピラリーの外側に出るように冶具で仮固定し、リング状の封止用フリット材料を導入導体から挿入してキャピラリー端部に置いた後、その部分を所定の温度まで加熱溶融して気密に封止し、高圧放電灯とした。
【0097】
この高輝度放電灯発光管の導入導体に電流供給のためのリード線を溶接し、ガラス外球中に挿入してランプとし、所定の安定器電源を利用して電流を流すことにより、メタルハライド高圧放電ランプとして点灯させることができた。
【0098】
(試験方法)
得られた放電灯について、以下の試験を行った。試験方法および結果を示す。
放電灯の電極保持部材に電流供給のためのリード線を溶接し、ガラス外球中に挿入してランプとし、所定の安定器電源を利用して電流を流すことにより、メタルハライド高圧放電ランプとして点灯させる。
【0099】
(初期発光効率)
初期の発光効率を測定した。比較例1における発光効率を100とし,相対値で表に現した。
【0100】
(色安定性)
演色性の時間依存性を評価することにより、ランプの色安定性を評価した。比較例1における初期状態での演色性指数Raを100とし、400時間の点灯試験後の演色性指数を表に示す。
【0101】
(点灯−消灯耐久性)
点灯−消灯の繰り返しを行い、ランプの発光効率の変化を確認することによりランプの耐久性を評価した。比較例1における初期のランプ発光効率を100とし、300サイクルの点灯−消灯試験後のランプ発光効率の相対値を示した。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
1 管状部 2 中央発光部 2a 中央発光部の内側面 2b 中央発光部の 外側面 3 側端部 3a 側端部の内側面 3b 側端部の外側面 4 放電空間 5A、5B,5C、5D、5E、5F、5G、5H、5I、5J、5K、5L、5M、5N、 発光容器 6 粗面 7、9、10 凹部 12 電極支持部材 13 封止材 14 電極 20 中央発光部内の遮光部 21 中央発光部内の透光部
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度放電灯用発光容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透光性を有するセラミックスは可視光を透過させることから、高輝度放電灯の発光容器として利用されてきた。特に透光性のアルミナセラミックスは、高輝度放電灯の発光容器として利用されている。
【0003】
セラミックメタルハライドランプの色温度の安定性を向上させるために、プラズマアーク中のメタルハライドの蒸気圧を上げることが必要である。セラミックチューブの一部を酸化ジルコニウムでコーティングし、プラズマアークから放射される赤外線を発光管内部に反射することにより、発光管内部の温度を上げることにより、メタルハライド蒸気圧を向上させることを開示している(特許文献1、2)。特許文献1、2では、発光管の両方の端面(エンドプラグ)と、発光管に取り付けられた細長い管状部(脚部)の表面とを、酸化ジルコニウム皮膜によって被覆することによって、ハロゲン化金属充填物の液化と低温化を防止し、良好な演色性を確保している。
【0004】
また、発光管の内容積が1cc未満で150W以下のメタルハライドランプの色温度や発光効率が、点灯方向によって変化しないように、熱反射コーティングを発光管の両端に施すことが開示されている(特許文献3)。
【0005】
また、可視光の平均直線透過率が15%以上の発光部と15%未満のプラグエンド部を焼き嵌め法によって作製した自動車用ヘッドランプ用の高圧放電灯において、更に発光管の表面に遮光膜を形成することによって、不所望の方向への光放射を遮蔽することが、特許文献4の(0054)に記載されている。
また、特許文献5には、自動車用ヘッドランプの高圧放電灯において、発光管の中央部を肉薄とすることで中央部に輝度中心を配置し、投射ビームの焦点への集光効率を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許 EP 0 869 540 A1
【特許文献2】特開平10−335059
【特許文献3】米国特許 5,708,328
【特許文献4】特開2006−93045
【特許文献5】特開2004−6198
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高輝度放電ランプでは、まず水銀蒸気やアルゴンガス等の始動ガス中で電極間の放電を起こし、その放電エネルギーによる熱エネルギーを利用して、発光物質であるナトリウムや金属沃化物を蒸発させてガス化し、更に電極間で放電している電子のエネルギーで発光物質を励起し、発光物質の電子が励起状態から基底状態に戻る際に生じる光を光源として利用している。
【0008】
このため、発光物質の蒸気圧が高いほど、放電している電子と発光物質の衝突確率が高くなり発光物質の励起が起こり易くなって発光効率が高くなる。発光物質の蒸気圧を高くするためには、発光物質の温度を上げることが必要であり、そのためには発光管内部のガス温度を高く保持することが重要である。
【0009】
このように高輝度放電ランプでは電極間での電子放電を利用して発光が起こっており、発光している部分の温度が最も高く、電極の付け根や電極の後方部分の温度が低くなる。この温度の最も低い部分を最冷点と呼ぶが、ランプ内の発光物質の蒸気圧はこの最冷点によって支配されるため最冷点の温度を上げることが発光物質の蒸気圧を高くするために重要である。
【0010】
最冷点の温度を高くするためには、従来技術のように、電極付け根のエンドプラグや環状部(脚部)の表面に酸化ジルコニウムの粉末を表面に400〜500℃の温度で焼き付かせて遮光膜を設けることが有効である(特許文献1、2、3)。発光から放出された光エネルギーが遮光膜によって吸収されることにより発光管の温度が上昇し、メタルハライド蒸気の温度も上昇し、結果発光物質の蒸気圧が向上し、発光効率(lm/W)が改善され、同時に色温度安定性の良い高輝度放電灯ランプ用発光管を提供することが可能になる。しかしながらこのような異種材料粉末からなる表面被覆層は、発光管表面との付着力が弱く粉末同士の結合力も弱いため、長時間の点灯や点灯−消灯を繰り返したときに剥れ易い問題があった。表面被覆層が徐々に剥がれていくと、遮光性が劣化し、発光管の温度が徐々に低下してランプ特性も徐々に劣化してしまう問題があった。
【0011】
また、セラミック発光管は一般的に透光性ではあるものの透明でないため、プラズマアークで生成し放出される光によって発光管全体が発光するため、光源の大きさが発光管の大きさと同じになる。このため発光管と組合せて使用される照明器具の性能に合せて発光部位を制御することが難しい。一般照明用のランプの様に比較的大きな光源サイズが許容されるランプでは、照明器具に対して光源サイズが大きいことは余り問題にならないが、自動車用のヘッドランプやプロジェクター用のランプとしてセラミック発光管は光源サイズが大きくなりすぎて照明器具との組合せが困難である。
【0012】
このため、発光管の中央部の狭い領域から発光させることによって、投射ビームによる集光効率を高めることも知られている(特許文献4、5)。これらの文献に記載の方法では集光効率の向上には有効なものの、発光管の端部での遮光効果が充分でないため、色安定性が充分に得られない問題があった。また発光管の形状も小型の円筒状のものに限定されていた。
【0013】
本発明の課題は、高輝度放電ランプの発光の色温度安定性を向上させ、かつ点灯−消灯を反復したときの耐久性を維持することである。また発光管からの発光領域を発光装置全体の仕様に合わせて更に絞ることが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る高輝度放電灯用発光容器は、
透光性の多結晶セラミックスからなる発光管であって、中央発光部、およびこの中央発光部の両側にそれぞれ設けられている側端部を備えている発光管、および 各側端部からそれぞれ突出する管状部を備えており、
側端部の内側面が粗面であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る高輝度放電灯用発光管は、
透光性の多結晶セラミックスからなる発光管であって、中央発光部、およびこの中央発光部の両側にそれぞれ設けられている側端部を備えている発光管、および
各側端部からそれぞれ突出する管状部を備えており、
側端部の内側面に凹凸パターンが形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る高輝度放電灯は、
前記発光容器、
発光管の内側空間に設けられている電極、および
各管状部にそれぞれ挿通されており、電極を保持する電極保持部材を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発光管の側端部の内側面に粗面を形成し、相対的に光透過率の低い遮光部を形成することで、中央発光部に輝度中心を配置させることで、投射ビームへの集光効率を高くすることができる。
【0018】
これとともに、側端部の内側面に粗面を形成することで、発光管の最冷点におけるガスの液化や温度降下を適切に制御できることがわかった。
【0019】
発光管の表面粗さについては、光の散乱の原因になることが知られていたため、通常は表面粗さの滑らかな成形型を用いて製造されており、部分的に表面粗さを意図的に粗くしたり凹凸を設けることは行われていなかった。
【0020】
また、透光性多結晶セラミックスの成形法として広く使われている押出し成形法では、形状を規定する口金と成形体が一様に摩擦するため、表面状態が均一で一部の表面粗さを意図的に粗くすることは出来なかった。
【0021】
更に、表面粗さはセラミックスの強度に影響を与えるため、なるべく滑らかな表面となるよう製造されていた。本発明は、高輝度発光管の分野における、これらの常識に反してなされたものである。
【0022】
なお、側端部および管状部の外表面だけを遮光膜によって被覆すると、封止材の温度が上がるため封止材が劣化し、この結果、色温度安定性が低下し、点灯−消灯反復時の耐久性が低下した。これはエンドプラグでのガス温度が予想よりも高く、また管状部内まで腐食性ガスが流れて封止部分を浸食しやすいためと考えられる。また、遮光膜のセラミックス表面に対する密着性が、長期使用時に低下し、最冷点を抑制する能力が損なわれるものと考えられる。
【0023】
また、側端部の外側面に粗面を形成することによって、側端部に生ずる最冷点を抑制することも検討した。しかし、この場合には、最冷点を抑制する効果が十分ではないことが判明した。これは、側端部の外側面で放射光が散乱すると、最冷点での温度上昇に利用される熱量が、期待したほど大きくないからである。
【0024】
また、発光容器の側端部の内側面に凹凸パターンを設けることによっても、上記と同様の作用効果が得られることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器(比較例)の外観図であり、(b)は、同じく断面図である。
【図2】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器(本発明例)の外観図であり、(b)は、同じく断面図である。
【図3】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器(比較例)の外観図であり、(b)は、同じく断面図である。
【図4】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器(本発明例)の外観図であり、(b)は、同じく断面図である。
【図5】セラミックメタルハライドランプ用発光容器の断面図であり、(a)は、側端部の内側面にストライプ状の粗面を形成した例を示し、(b)は、側端部の内側面に粗面を形成し、粗面の粗さを段階的に粗くした例を示し、(c)は、側端部の内側面にドット状の凹凸パターンを設けた例を示す。
【図6】セラミックメタルハライドランプ用発光容器の断面図であり、(a)は、側端部の内側面に線状の凹部を設けた例を示し、(b)は、側端部の内側面に網目状の凹部を設けた例を示し、(c)は、側端部の内側面に網目状の凹部と粗面とを形成した例を示す。
【図7】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図である。
【図8】(a)は、高圧ナトリウムランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図である。
【図9】セラミックメタルハライドランプ用発光容器に電極を取り付けた状態を示す断面図である。
【図10】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図である。
【図11】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図である。発光菅の中央部が放電方向に対して垂直方向に帯状に表面粗さの粗い遮光部が外側表面に形成され、同様に発光菅の中央部が放電方向に対して垂直方向に帯状に薄肉になっており、表面粗さと肉厚の制御の組合せによって透光部が形成されている。
【図12】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図である。帯状の透光部が手前側と反対側の2箇所に複数形成されている。
【図13】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図であり、(c)は同じく横断面図である。発光菅の中央部に放電方向と同じ方向に帯状に透光部が2箇所形成されるように、表面粗さの粗い遮光部が外側表面に形成され、同様に発光菅の中央部の肉厚が放電方向と同じ方向に薄肉になっており、表面粗さと肉厚の制御の組合せによって透光部が形成されている。
【図14】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図であり、(c)は同じく横断面図である。表面粗さの粗い遮光部が内側と外側表面に形成され、発光管透光部が発光菅の中央部に点状に形成されている。この図では点状の透光部が24箇所形成されており、それぞれの透光部の仮想中心が発光管の中心に収束するように透光部が形成されている。
【図15】(a)は、セラミックメタルハライドランプ用発光容器の外観図(本発明例)であり、(b)は、同じく断面図であり、(c)は同じく横断面図である。発光菅の中央部に点状に透光部が形成されるように表面粗さの粗い遮光部が外側と内側表面に形成され、同様に発光菅の中央部の肉厚が点状に薄肉になっており、表面粗さと肉厚の制御の組合せによって点状の透光部が形成されている。この図では点状の透光部が8箇所形成されており、それぞれの透光部の仮想中心が発光管の中心に収束するように透光部が形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
側端部の内側面は粗面とするが、これは中央発光部の内側面および外側面よりもRaが大きければ良い。好適な実施形態においては、側端部の内側面の中心線平均表面粗さRaが2.0μm以上であり、特に好ましくは2.5μm以上である。
【0027】
側端部の内側面の中心線平均表面粗さRaは、発光管の強度を劣化させないという観点からは、20μm以下が好ましい。
【0028】
側端部の外側面は平滑面であってよく、粗面であってもよい。 好適な実施形態においては、側端部の外側面の中心線平均表面粗さRaが2.0μm以上であり、特に好ましくは2.5μm以上であり、これによって発光効率を一層向上させることができる。また、発光管の強度を劣化させないという観点からは、側端部の外側面の中心線平均表面粗さRaが20μm以下であることが好ましい。この観点からは、側端部の外側面を平滑面とし、例えば中心線平均表面粗さRaを1.0μm以下とすることが好ましい。
【0029】
好適な実施形態においては、中央発光部の内側面および外側面の中心線平均表面粗さRaが1.0μm以下であり、これによって中央発光部からの発光効率を更に向上させることができる。また、高輝度放電ランプでは電極間の放電により生成したプラズマアークから放出された可視光線を利用するため、透光部の表面粗さは内表面も外表面も滑らかで、光の散乱が小さくて損失が少ない方が好ましい。透光性のアルミナセラミックスでは、平均粒径が15〜50ミクロンのサイズであることが、透光性と機械的強度の両方を満足するために好適である。
【0030】
また、好適な実施形態においては、中央発光部が、透光部と、この透光部よりも直線透過率の低い遮光部とを備えている。これによって、発光領域を発光装置全体の仕様に合わせて更に絞ることが可能である。
【0031】
また、側端部の内側面(および外側面)に凹凸パターンを形成する場合には、凹部のパターンを形成する場合と、凸部のパターンを形成する場合とがある。本発明の観点からは、凹凸の高さの差(段差)は0.05mm以上とすることが好ましい。また、凹凸の高さの差は0.2mm以下であることが、成形後の離型を容易にするという観点からは好ましい。
【0032】
図1(b)は、メタルハライドランプに使われる従来の高輝度放電灯用発光容器の模式的断面図であり、図1(a)は、容器の外観を示す正面図である。発光容器は、中央発光部2、中央発光部2の両側の側端部3、各側端部3の外側の管状部(脚部)1を備えている。この側端部3および中央発光部2の内側面および外側面は、ともに平滑であり、表面粗さはほぼ均一である。
【0033】
図2は、メタルハライドランプに使われる高輝度放電灯用発光容器5Aの実施例を示す。本例では、中央発光部2の内側面2aおよび外側面2bは平滑面であり、また側端部3の外側面3bは平滑面である。しかし、側端部3の内側面3bには粗面6が形成されている。発光管の内側空間4においてアーク放電を行い、発光させる。
【0034】
図3は、本発明外の比較例に係るものである。本例の発光容器5Bでは、中央発光部2の内側面2aおよび外側面2bは平滑面であり、また側端部3の内側面3aも平滑面である。しかし、側端部3の外側面3bには粗面6が形成されている。
【0035】
図4は、メタルハライドランプに使われる高輝度放電灯用発光容器5Cの実施例を示す。本例では、中央発光部2の内側面2aおよび外側面2bは平滑面である。しかし、側端部3の内側面3b、外側面3aにはそれぞれ粗面6が形成されている。
【0036】
図5、図6は、メタルハライドランプに使われる発光容器の側端部の内側面に、粗面や凹凸パターンを形成した実施例を示す。
【0037】
図5(a)の発光容器5Dでは、中央発光部2の内側面2a、外側面2bは平滑面であり、また側端部3の外側面3bは平滑面である。しかし、側端部3の内側面3aには粗面6が形成されている。特に、粗面6は、発光管の管軸Aを中心として周方向に形成された帯状をなしており、隣接する粗面6は平行になっている。
【0038】
図5(b)の発光容器5Eでは、中央発光部2の内側面2a、外側面2bは平滑面であり、また側端部3の外側面3bは平滑面である。しかし、側端部3の内側面3aには粗面6Aが形成されている。本例では、粗面6Aの平均表面粗さRaは、側端部の管状部側末端から中央発光部へと向かって、徐々に小さくなっている。
【0039】
図5(c)の発光容器5Fでは、中央発光部2の内側面2a、外側面2bは平滑面であり、また側端部3の外側面3bは平滑面である。しかし、側端部3の内側面3aには凹凸パターン7が形成されている。本例では、凹凸パターン7は、ディンプル形状の凹部を多数形成した形状である。
【0040】
図6(a)の発光容器5Gでは、凹凸パターン9は、細長い溝状の凹部を多数形成した形状である。また、図6(b)の発光容器5Hでは、凹凸パターン10は、細長い溝を編み目状に形成した形状である。
【0041】
図6(c)の発光容器5Iでは、中央発光部2の内側面2a、外側面2bは平滑面であり、また側端部3の外側面3bは平滑面である。しかし、側端部3の内側面3aには、編み目状の凹凸パターン10と粗面6との両方が形成されている。
【0042】
図7は、メタルハライドランプ用の発光容器5Jを示す。本例では、中央発光部2の内側面2a、外側面2bは平滑面であり、側端部3の外側面3bおよび内側面3aには粗面6が形成されている。更に、側端部3の肉厚を中央発光部2の肉厚よりも大きくすることによって、中央発光部への発光の集中を一層促進している。
【0043】
図8は、高圧ナトリウムランプに使われる発光容器5Kを示す。本例では、中央発光部2の内側面2a、外側面2b、側端部3の外側面3bは平滑面であり、側端部3の内側面内側面3aには粗面6が形成されている。
【0044】
図9は、本発明の実施例の発光容器5A(図2)を用いたメタルハライドランプを示す。電極先端より後ろの電極付け根部と背面部に、表面粗さの粗い遮光部が形成されている。管状部1の内側空間には電極保持部材12が挿通されており、電極保持部材の内側末端には電極14が取り付けられている。電極保持部材12の外側端部は封止材13によって管状部1の内側壁面に対して封止されており、更に封止材13によって管状部1の外側端面に対して封止されている。一対の電極14が発光管の内側空間4に位置しており、電極14間で放電を行えるように設計されている。
【0045】
図10は、メタルハライドランプに使われる発光容器5Lの中央部に帯状に透光部20を形成した実施例を示す。本例では、側端部3の外側面および内側面に粗面を形成するとともに、中央発光部2の外側面および内側面の一部にも粗面を形成することで、細長い帯状の透光部20と遮光部21を形成している。
【0046】
図11は、メタルハライドランプに使われる発光容器5Mの中央部に帯状に透光部20を形成した実施例を示す。本例では、更に中央発光部2のうちの透光部20の肉厚が薄くなるように成形後白加工し、焼結後透光部表面が研磨されて表面粗さが更に滑らかになっている。一方内側の中央部以外の部分は表面粗さを粗くすることにより、帯状に遮光部21を形成している。
【0047】
図12は、メタルハライドランプに使われる発光容器5Nの中央部に長手方向に帯状に透光部20を手前と反対側の後方に各1箇所形成した実施例を示す。本例では、中央発光部2の外側面および内側面に表面粗さを粗くした遮光部21を形成することにより、相対的に光の散乱吸収が少ない透光部20を形成している。
【0048】
図13は、メタルハライドランプに使われる発光容器5Pに長手方向に帯状に透光部20を手前と反対側の後方に各1箇所形成した実施例を示す。本例では、中央発光部2の外側面および内側面に、表面粗さを粗くした遮光部21を形成することにより、相対的に光15の散乱吸収が少ない透光部20を形成している。また、図13(c)に示すように、透光部の肉厚を薄くすることにより、透光部20を2箇所形成している。
【0049】
図14は、メタルハライドランプ用発光容器5Qに点状の透光部20を形成した実施例を示す。本例では、中央発光部2の外側面および内側面に、表面粗さを粗くした遮光部21を形成することにより、相対的に光の散乱吸収が少ない点状の透光部20を形成している。点状の透光部が24箇所形成されており、それぞれの透光部20の仮想中心が発光管の中心に収束するように、透光部20が形成されている。
【0050】
図15は、メタルハライドランプ用発光容器5Rに点状の透光部20を形成した実施例を示す。中央発光部2の外側面および内側面に、表面粗さを粗くした遮光部21を形成することにより、相対的に光の散乱吸収が少ない点状の透光部20を形成している。図14(c)では、透光部20の肉薄を薄くしている。この図では点状の透光部20が8箇所形成されており、それぞれの透光部の仮想中心が発光管の中心に収束するように透光部が形成されている。
【0051】
セラミック発光管は透光性ではあるものの透明でないため、プラズマアークで生成し放出される光によって発光管全体が発光するため、光源の大きさが発光管の大きさと同じになる。このため小さな光源サイズが求められる自動車用ヘッドランプやプロジェクターの光源ランプでは、照明器具の性能に合せた光源サイズにすることが難しい。しかし、本発明では、光源サイズを所定の大きさに限定することにより、照明器具の性能に合せたランプを提供することが可能となる。
【0052】
例えば自動車用の発光管では透光部を小さくして、光源サイズがハロゲンランプのフィラメントの大きさと同等の2mmφx4mmの大きさとなるようにすることができる。更にプロジェクター用の光源に応用するためには、光源サイズが直径1mm以下となるようにできる。
【0053】
本発明の高圧放電灯は、自動車用ヘッドランプ、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)、液晶プロジェクターなど、疑似点光源を適用可能な他の照明装置に適用可能である。
【0054】
本発明において、中央発光部とは、発光管のうち、両側の側端部の間に挟まれた部分を意味する。側端部は、発光管の両端を塞ぐ部分を意味しており、即ち、管状部の末端から中央発光部の末端との間の部分である。
【0055】
本発明では(図2参照)、中央発光部2および側端部3(=発光管)の内側面の全表面積をLとしたとき、各側端部2の各内側面の表面積Pは、それぞれ,5%とする。つまり、量側端部の内側面の表面積を合わせると、発光管の内側面の全表面積の10%となる。本発明では、少なくともこの側端部の内側面が粗面化されていることが必要である。
【0056】
発光管を構成する半透明な透光性セラミックスとしては以下を例示できる。
多結晶Al2O3、AlN、AlON。又は表面粗度Raが1.0 μm以下 の単結晶Al2O3、YAG、Y2O3。
【0057】
また、半透明とは、以下の光透過率を意味している。
全光線透過率85%以上かつ直線透過率45%以下
【0058】
前記輝度中心とは、発光部において輝度の最も高い部分を意味する。輝度中心は一点である必要はなく、縦断面の方向に向かって延びていても良い。
【0059】
高輝度放電灯とは、水銀を発光物質に用いる水銀ランプ、ナトリウムを発光物質に用いる高圧ナトリウムランプ、金属沃化物を発光物質に用いるメタルハライドランプのことを言う。
【0060】
多結晶セラミックスは所望の形状に適した押出し成形、ドライバッグ成形等のプレス成形、鋳込み成形、射出成形、ゲルキャスト成形等の成形法で成形される。
押出し成形ではその形状は口金の形状との摩擦によって形成されるため、表面粗さは平滑化されており部分的に表面粗さを部分的に変えることは難しい。
鋳込み成形では成形体の内表面は自由表面として形成されるため、表面粗さを部分的に粗くすることは出来ない。
【0061】
プレス成形法では外表面はゴム型を一般的に使用するため、精密に表面粗さを制御することは難しい。しかしながら内表面に関しては芯金の表面粗さを粗くすることにより、発光部と電極部を意図的に変えることが可能である。
【0062】
射出成形やゲルキャストでは、内側と外側の形状は、内型と外型の転写によって形成され、その際に型の表面粗さも同時に転写される。従って型の遮光部に相当する部分の表面粗さを粗くしたり凹凸を設けたりし、透光部に相当する部分を表面粗さが滑らかなるように成形することにより、遮光部と透光部を形成することが可能である。更に射出成形やゲルキャストでは内表面も外表面も独立して表面粗さを変化させるたり肉厚を制御することが可能である。
【実施例】
【0063】
(比較例1、実施例1、実施例3〜8の製造)
透光性アルミナ用原料粉末を用いて、図1に示す比較例1と図2に示す実施例1及び図5(a)〜(c)、図6(a)〜(c)に示す実施例3〜8のメタルハライドランプ用発光容器の成形体をゲルキャスト成形法により作成した。
【0064】
成形体のキャピラリー部と透光部に相当する部分の肉厚は一様に1.3mmであった。表面粗さにより遮光部を形成した部分の肉厚は1.3mmの範囲であった。外側の金型の表面粗さは、一様にRa0.1ミクロンに仕上げてあった。
【0065】
内側の形状はキャピラリーを形成するピンとワックス成分からなる中子を予め一体に成形しておいた中型を挿入し、外型と中型の間に形成される空隙にゲルキャスト成形用のスラリーを注型し硬化後、ピンを抜いてワックス中子を加熱溶融除去し、大気中1,300℃で焼成してバインダーの除去と仮焼成を行った。更にアルミナ仮焼結体を水素雰囲気中1,800℃で3 時間焼成して、透光性多結晶アルミナセラミックからなる中空構造の高輝度放電灯用発光容器を作成した。
【0066】
中子成形用金型の表面は、比較例1では表面粗さがRa0.1ミクロンに一様に仕上げであり、実施例では全体をRa0.1ミクロンに仕上げた。この後、実施例1、実施例3、実施例4では、図2、図5(a)、図5(b)にそれぞれ示す遮光部に相当する部分をRa5ミクロンになるよう放電加工により部分的に粗く仕上げた。同様に実施例5、実施例6、実施例7ではそれぞれ図5(c)、図6(a)、(b)に示すようなパターンを機械加工により150ミクロン掘り込んで遮光部3を形成した。実施例8では、実施例7と同様のパターンを機械加工により施した後に放電加工を行って網目パターンと表面粗さを粗くした遮光部3を形成した。
【0067】
このような中子成形用金型を用いることにより、中子表面に中子成形金型の表面形状を転写させ、更に成形体の内側の表面粗さを制御することが可能となり、透光部2と遮光部3を形成することができる。遮光部の内側面の表面積は、発光管の内側面の全表面積の10%〜20%であった。
【0068】
焼結後の発光容器の結晶の平均粒径は25ミクロン、キャピラリー部と透光部の肉厚は一様に0.9mmであり、透光部に相当する部分の表面粗さはRa0.15ミクロンで充分な透光性を示した。一方表面粗さを粗くすることで形成した遮光部に相当する部分の表面粗さは3ミクロンで、透光部に比較して悪い透光性を示した。また凹凸によって形成した遮光部では、最大0.1mmの深さの凹部が形成された。
【0069】
(比較例2、実施例2、実施例9)
透光性アルミナ用原料粉末を用いて、図3に示す比較例2、図4に示す実施例2、図7に示す実施例9のメタルハライドランプ用発光容器の成形体をゲルキャスト成形法により作成した。比較例2と実施例2では成形体の肉厚は一様に1.3mmであった。実施例9では成形体の肉厚は遮光部の肉厚が1.3〜3mmで透光部は1.3mmであった。
【0070】
外側の金型の表面粗さは一様にRa0.1ミクロンに仕上げた後、各遮光部に相当する部分を放電加工によって粗くした。表面粗さはRa5ミクロンであった。
内側の形状は、キャピラリーを形成するピンとワックス成分からなる中子を予め一体に成形しておいた中型を挿入し、外型と中型の間に形成される空隙にゲルキャスト成形用のスラリーを注型し硬化後、ピンを抜いてワックス中子を加熱溶融除去した後、大気中1,300℃で焼成してバインダーの除去と仮焼成を行った。更にアルミナ仮焼結体を水素雰囲気中1,800℃で3 時間焼成して、透光性多結晶アルミナセラミックからなる中空構造の発光容器を作成した。
【0071】
比較例2の中子成形用金型の表面粗さは比較例と同じ一様にRa0.1ミクロンになるよう仕上げた。実施例3と実施例9では全体をRa0.1ミクロンに仕上げた後、図4と図7に示す遮光部の部分をRa5ミクロンになるよう放電加工により部分的に粗く仕上げた。
【0072】
このような外側成形用金型と中型を組合せて用いることにより、成形体の外側と内側の表面粗さと肉厚を制御することが可能となり、透光部と遮光部を形成することができる。
実施例2と3とにおいて、遮光部の内側面の表面積は、発光管の内側面の表面積の30%であった。
【0073】
焼結後の発光管容器の結晶の平均粒径は25ミクロン、比較例2と実施例2ではキャピラリー部、透光部、遮光部の肉厚は一様に0.9mmであり、実施例9では最大2.1mmであった。透光部に相当する部分の表面粗さはRa0.15ミクロンで充分な透光性を示した。遮光部に相当する部分の外側表面粗さRaは3ミクロンである。
【0074】
(比較例3の製造)
図3に示すようなパターンの発光管を、比較例2と同様にして作製した。ただし、側端部3の外側面に粗面を設けなかった。その代わりに、側端部3の外側面3bにタングステン−アルミナのサーメットからなる厚さ5ミクロンの遮光膜を形成した。
【0075】
(実施例10)
透光性アルミナ用原料粉末を用いて、図8に示す高圧ナトリウムランプ用発光容器の成形体をプレス成形法により作成した。
【0076】
外側に円筒状のゴム型を準備し、内側に全体をRa0.1ミクロンに仕上げた後、図8に示す遮光部3に相当する部分をRa5ミクロンになるようサンドブラスト法により部分的に粗く仕上げたマンドレルと呼ばれる芯金を設置し、ゴム型とマンドレルの間に形成される隙間に透光性アルミナ用原料粉末を充填し、ゴム型の外側より1トン/cm2の静水圧を印加して成形した。成形後成形体の肉厚が一様に1.1mmになるよう成形体の外側を旋盤加工した。
【0077】
このようなマンドレル芯金を用いることにより、発光管容器成形体の内側にマンドレル芯金の表面形状を転写させ成形体の内側の表面粗さを制御することが可能となり、透光部と遮光部を形成することができる。遮光部の面積は透光部と遮光部を合計した全体の面積の10%の範囲であった。
【0078】
更に予めプレス成形で成形しておいたプラグと組合せ、大気中1,300℃で焼成してバインダーの除去と仮焼成を行った。更にアルミナ仮焼結体を水素雰囲気中1,800℃で3 時間焼成して、透光性多結晶アルミナセラミックからなる中空構造の高輝度放電灯用発光管容器5を作成した。
【0079】
焼結後の発光管容器の結晶の平均粒径は25ミクロン、透光部と遮光部の肉厚は一様に0.8mmであり、透光部に相当する部分の容器内側の表面粗さはRa0.2ミクロンで充分な透光性を示した。一方表面粗さを粗くすることで形成した遮光部に相当する部分の表面粗さはRa3ミクロンで、透光部に比較して悪い透光性を示した。発光管容器外側の表面粗さは透光部も遮光部も一様にRa1ミクロンであった。
【0080】
(実施例11、12)
透光性アルミナ用原料粉末を用いて、図10に示す実施例11と図11に示す実施例12のメタルハライドランプ用発光容器の成形体をゲルキャスト成形法により作成した。実施例11、12共に成形体の肉厚は一様に1.3mmであった。
【0081】
外側の金型の表面粗さは一様にRa0.1ミクロンに仕上げた後、図10、図11の遮光部に相当する部分を放電加工によって粗くした。表面粗さはRa5ミクロンであった。
内側の形状は、キャピラリーを形成するピンとワックス成分からなる中子を予め一体に成形しておいた中型を挿入し、外型と中型の間に形成される空隙にゲルキャスト成形用のスラリーを注型し硬化後、ピンを抜いてワックス中子を加熱溶融除去し、大気中1,300℃で焼成してバインダーの除去と仮焼成を行った。更にアルミナ仮焼結体を水素雰囲気中1,800℃で3 時間焼成して、透光性多結晶アルミナセラミックからなる中空構造の発光容器を作成した。
【0082】
実施例11と実施例12の中子成形用金型の表面粗さは全体をRa0.1ミクロンに仕上げた後、図10と図11に示す遮光部の部分をRa5ミクロンになるよう放電加工により部分的に粗く仕上げた。
【0083】
このような外側成形用金型と中型を組合せて用いることにより、成形体の外側と内側の表面粗さと肉厚を制御することが可能となり、発光管容器の中央部に放電方向に対して垂直に環状の透光部を形成することができた。実施例11及び12の透光部の面積は25%、遮光部の面積は75%であった。
【0084】
実施例12では中子のワックス除去後、透光部を外側から白加工で肉厚が1mmになるようで研削した。焼結後の発光管容器の結晶の平均粒径はそれぞれ25ミクロン、実施例11ではキャピラリー部、透光部、遮光部の肉厚は一様に0.9mmであり、実施例12の透光部は肉厚0.7mmで表面粗さRa0.01ミクロンになるよう研磨加工を実施した。遮光部とキャピラリー部の肉厚は0.9mmであった。
【0085】
(実施例13,14)
透光性アルミナ用原料粉末を用いて、図12に示す実施例13と図13に示す実施例14のメタルハライドランプ用の高輝度放電灯用発光管容器の成形体をゲルキャスト成形法により作成した。実施例13では成形体の肉厚は一様に1.3mmであった。実施例14では、透光部に相当する部分の肉厚は0.5〜0.6mm、遮光部に相当する部分の肉厚は、0.6〜3mm、キャピラリー部は1.3mmであった。外側の金型の表面粗さは一様にRa0.1ミクロンに仕上げた後、図12、図13の遮光部に相当する部分を放電加工によって粗くした。表面粗さはRa5ミクロンであった。
【0086】
内側の形状は、キャピラリーを形成するピンとワックス成分からなる中子を予め一体に成形しておいた中型を挿入し、外型と中型の間に形成される空隙にゲルキャスト成形用のスラリーを注型し硬化後、ピンを抜いてワックス中子を加熱溶融除去し、大気中1300℃で焼成してバインダーの除去と仮焼成を行った。更にアルミナ仮焼結体を水素雰囲気中1,800℃で3 時間焼成して、透光性多結晶アルミナセラミックからなる中空構造の高輝度放電灯用発光管容器5を作成した。
【0087】
実施例13と実施例14の中子成形用金型の表面粗さは全体をRa0.1ミクロンに仕上げた後、図12と図13に示す遮光部の部分をRa5ミクロンになるよう放電加工により部分的に粗く仕上げた。
【0088】
このような外側成形用金型と中型を組合せて用いることにより、成形体の外側と内側の表面粗さと肉厚を制御することが可能となり、発光管容器の放電方向と平行に帯状の透光部を形成することができた。実施例13、14においては、遮光部の内側面の表面積は、発光管の内側面の表面積の90%である。
【0089】
焼結後の発光管容器の結晶の平均粒径はそれぞれ25ミクロン、実施例13ではキャピラリー部、透光部、遮光部の肉厚は一様に0.9mmであり、実施例14の透光部は0.3〜0.4mm、遮光部の肉厚は0.4〜2.1mm、キャピラリー部の肉厚は0.9mmであった。このように、表面粗さや肉厚を制御することにより、発光管容器に帯状に形成した透光部は、遮光部の透光性に比較して充分に大きな透光性を示した。
【0090】
(実施例15、16)
透光性アルミナ用原料粉末を用いて、図14に示す実施例15と図15に示す実施例16のメタルハライドランプ用の高輝度放電灯用発光管容器の成形体をゲルキャスト成形法により作成した。実施例15では成形体の肉厚は一様に1.3mmであった。実施例16では、透光部に相当する部分の成形体の肉厚は1.3mm、遮光部に相当する部分の肉厚は、1.3〜2.1mm、キャピラリー部は1.3mmであった。外側の金型の表面粗さは一様にRa0.1ミクロンに仕上げた後、図14、図15の遮光部に相当する部分を放電加工によって粗くした。表面粗さはRa5ミクロンであった。
【0091】
内側の形状は、キャピラリーを形成するピンとワックス成分からなる中子を予め一体に成形しておいた中型を挿入し、外型と中型の間に形成される空隙にゲルキャスト成形用のスラリーを注型し硬化後、ピンを抜いてワックス中子を加熱溶融除去し、大気中1300℃で焼成してバインダーの除去と仮焼成を行った。更にアルミナ仮焼結体を水素雰囲気中1,800℃で3 時間焼成して、透光性多結晶アルミナセラミックからなる中空構造の高輝度放電灯用発光管容器5を作成した。
【0092】
実施例15と実施例16の中子成形用金型の表面粗さは全体をRa0.1ミクロンに仕上げた後、図14と図15に示す遮光部の部分をRa5ミクロンになるよう放電加工により部分的に粗く仕上げた。
【0093】
このような外側成形用金型と中型を組合せて用いることにより、成形体の外側と内側の表面粗さと肉厚を制御することが可能となり、発光管容器に点状の透光部を形成することができた。実施例15においては,遮光部の内側面の表面積は、発光管の内側面の表面積の70%である。実施例16においては、遮光部の内側面の表面積は、発光管の内側面の表面積の90%である。
【0094】
焼結後の発光管容器の結晶の平均粒径はそれぞれ25ミクロン、実施例15ではキャピラリー部、透光部、遮光部の肉厚は一様に0.9mmであり、実施例16の透光部は0.9mm、遮光部の肉厚は0.9〜1.5mm、キャピラリー部の肉厚は0.9mmであった。このように、表面粗さや肉厚を制御することにより、発光管容器に帯状に形成した透光部は、遮光部の透光性に比較して充分に大きな透光性を示した。
【0095】
(発光管の組立)
上述した各発光容器の一方のキャピラリー部に、タングステンからなるコイル部を備えた電極部とニオブからなる導入導体部をモリブデンを介して接合した金属部品を挿入し、導入導体部とモリブデンの接合部分の位置が、キャピラリー端部近傍で導入導体がキャピラリーの外側に出るように冶具で仮固定し、リング状の封止用フリット材料を導入導体から挿入してキャピラリー端部に置いた後、その部分を所定の温度まで加熱溶融して気密に封止した。
【0096】
更にアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、この片方の端部が気密封止された複合発光管容器中に、もう一方の封止されていないキャピラリー側から水銀および発光金属としてNa、Tl、Dyのヨウ化物を適量入れ、先程と同様にタングステンからなるコイル部を備えた電極部とニオブからなる導入導体部をモリブデンを介して接合した金属部品を挿入し、導入導体部とモリブデンの接合部分の位置が、キャピラリー端部近傍で導入導体がキャピラリーの外側に出るように冶具で仮固定し、リング状の封止用フリット材料を導入導体から挿入してキャピラリー端部に置いた後、その部分を所定の温度まで加熱溶融して気密に封止し、高圧放電灯とした。
【0097】
この高輝度放電灯発光管の導入導体に電流供給のためのリード線を溶接し、ガラス外球中に挿入してランプとし、所定の安定器電源を利用して電流を流すことにより、メタルハライド高圧放電ランプとして点灯させることができた。
【0098】
(試験方法)
得られた放電灯について、以下の試験を行った。試験方法および結果を示す。
放電灯の電極保持部材に電流供給のためのリード線を溶接し、ガラス外球中に挿入してランプとし、所定の安定器電源を利用して電流を流すことにより、メタルハライド高圧放電ランプとして点灯させる。
【0099】
(初期発光効率)
初期の発光効率を測定した。比較例1における発光効率を100とし,相対値で表に現した。
【0100】
(色安定性)
演色性の時間依存性を評価することにより、ランプの色安定性を評価した。比較例1における初期状態での演色性指数Raを100とし、400時間の点灯試験後の演色性指数を表に示す。
【0101】
(点灯−消灯耐久性)
点灯−消灯の繰り返しを行い、ランプの発光効率の変化を確認することによりランプの耐久性を評価した。比較例1における初期のランプ発光効率を100とし、300サイクルの点灯−消灯試験後のランプ発光効率の相対値を示した。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
1 管状部 2 中央発光部 2a 中央発光部の内側面 2b 中央発光部の 外側面 3 側端部 3a 側端部の内側面 3b 側端部の外側面 4 放電空間 5A、5B,5C、5D、5E、5F、5G、5H、5I、5J、5K、5L、5M、5N、 発光容器 6 粗面 7、9、10 凹部 12 電極支持部材 13 封止材 14 電極 20 中央発光部内の遮光部 21 中央発光部内の透光部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の多結晶セラミックスからなる発光管であって、中央発光部、およびこの中央発光部の両側にそれぞれ設けられている側端部を備えている発光管、および
前記各側端部からそれぞれ突出する管状部を備えており、
前記側端部の内側面が粗面であることを特徴とする、高輝度放電灯用発光容器。
【請求項2】
前記側端部の内側面の中心線平均表面粗さRaが2.0μm以上であることを特徴とする、請求項1記載の発光容器。
【請求項3】
前記側端部の外側面の中心線平均表面粗さRaが2.0μm以上であることを特徴とする、請求項1または2記載の発光容器。
【請求項4】
前記中央発光部の内側面および外側面の中心線平均表面粗さRaが1.0μm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の発光容器。
【請求項5】
前記中央発光部が、透光部と、この透光部よりも直線透過率の低い遮光部とを備えていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の発光容器。
【請求項6】
前記中央発光部が複数の前記透光部を備えており、各透光部が帯状であり、かつ前記発光容器の管軸に対して平行に形成されていることを特徴とする、請求項5記載の発光容器。
【請求項7】
前記中央発光部が複数の前記透光部を備えており、前記各透光部が点状であることを特徴とする、請求項5記載の発光容器。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の発光容器、
前記発光管の内側空間に設けられている電極、および
前記各管状部にそれぞれ挿通されており、前記電極を保持する電極保持部材を備えていることを特徴とする、高輝度放電灯。
【請求項9】
透光性の多結晶セラミックスからなる発光管であって、中央発光部、およびこの中央発光部の両側にそれぞれ設けられている側端部を備えている発光管、および
前記各側端部からそれぞれ突出する管状部を備えており、
前記側端部の内側面に凹凸パターンが形成されていることを特徴とする、高輝度放電灯用発光容器。
【請求項10】
前記側端部の内側面の中心線平均表面粗さRaが2.0μm以上であることを特徴とする、請求項9記載の発光容器。
【請求項11】
前記側端部の外側面に凹凸パターンが形成されていることを特徴とする、請求項9または10記載の発光容器。
【請求項12】
前記中央発光部が、透光部と、この透光部よりも直線透過率の低い遮光部とを備えていることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一つの請求項に記載の発光容器。
【請求項13】
前記中央発光部が複数の前記透光部を備えており、各透光部が帯状であり、かつ前記発光容器の管軸に対して平行に形成されていることを特徴とする、請求項12記載の発光容器。
【請求項14】
前記中央発光部が複数の前記透光部を備えており、前記各発光部が点状であることを特徴とする、請求項12記載の発光管容器。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれか一つの請求項に記載の発光容器、
前記発光管の内側空間に設けられている電極、および
前記各管状部にそれぞれ挿通されており、前記電極を保持する電極保持部材を備えていることを特徴とする、高輝度放電灯。
【請求項16】
高圧ナトリウムランプであることを特徴とする、請求項8または15記載の高輝度放電灯。
【請求項17】
メタルハライドランプであることを特徴とする、請求項8または15記載の高輝度放電灯。
【請求項1】
透光性の多結晶セラミックスからなる発光管であって、中央発光部、およびこの中央発光部の両側にそれぞれ設けられている側端部を備えている発光管、および
前記各側端部からそれぞれ突出する管状部を備えており、
前記側端部の内側面が粗面であることを特徴とする、高輝度放電灯用発光容器。
【請求項2】
前記側端部の内側面の中心線平均表面粗さRaが2.0μm以上であることを特徴とする、請求項1記載の発光容器。
【請求項3】
前記側端部の外側面の中心線平均表面粗さRaが2.0μm以上であることを特徴とする、請求項1または2記載の発光容器。
【請求項4】
前記中央発光部の内側面および外側面の中心線平均表面粗さRaが1.0μm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の発光容器。
【請求項5】
前記中央発光部が、透光部と、この透光部よりも直線透過率の低い遮光部とを備えていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の発光容器。
【請求項6】
前記中央発光部が複数の前記透光部を備えており、各透光部が帯状であり、かつ前記発光容器の管軸に対して平行に形成されていることを特徴とする、請求項5記載の発光容器。
【請求項7】
前記中央発光部が複数の前記透光部を備えており、前記各透光部が点状であることを特徴とする、請求項5記載の発光容器。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の発光容器、
前記発光管の内側空間に設けられている電極、および
前記各管状部にそれぞれ挿通されており、前記電極を保持する電極保持部材を備えていることを特徴とする、高輝度放電灯。
【請求項9】
透光性の多結晶セラミックスからなる発光管であって、中央発光部、およびこの中央発光部の両側にそれぞれ設けられている側端部を備えている発光管、および
前記各側端部からそれぞれ突出する管状部を備えており、
前記側端部の内側面に凹凸パターンが形成されていることを特徴とする、高輝度放電灯用発光容器。
【請求項10】
前記側端部の内側面の中心線平均表面粗さRaが2.0μm以上であることを特徴とする、請求項9記載の発光容器。
【請求項11】
前記側端部の外側面に凹凸パターンが形成されていることを特徴とする、請求項9または10記載の発光容器。
【請求項12】
前記中央発光部が、透光部と、この透光部よりも直線透過率の低い遮光部とを備えていることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一つの請求項に記載の発光容器。
【請求項13】
前記中央発光部が複数の前記透光部を備えており、各透光部が帯状であり、かつ前記発光容器の管軸に対して平行に形成されていることを特徴とする、請求項12記載の発光容器。
【請求項14】
前記中央発光部が複数の前記透光部を備えており、前記各発光部が点状であることを特徴とする、請求項12記載の発光管容器。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれか一つの請求項に記載の発光容器、
前記発光管の内側空間に設けられている電極、および
前記各管状部にそれぞれ挿通されており、前記電極を保持する電極保持部材を備えていることを特徴とする、高輝度放電灯。
【請求項16】
高圧ナトリウムランプであることを特徴とする、請求項8または15記載の高輝度放電灯。
【請求項17】
メタルハライドランプであることを特徴とする、請求項8または15記載の高輝度放電灯。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−153372(P2010−153372A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267017(P2009−267017)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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