説明

高速湿度モニターシステム

【課題】湿度モニター方法において、急激に変化する湿度環境においても、容易に迅速かつ正確な測定を可能にする。
【解決手段】塩化マグネシウム微小液滴を均一に付着させた金コート水晶振動子を備え、湿度の変化に伴い暴露された金コート水晶振動子に付着された塩化マグネシウム微小液滴の平衡飽和濃度の変化により粘性が変化を検出し、粘性の変化に伴う水晶振動子の共振周波数の変化から湿度を求める。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、湿度モニターシステムに関し、より詳しくは、高速に湿度をモニタリングすることのできる湿度モニターシステムに関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
大気腐食の実験などにおいて湿度を急激に変化させた実験が要求されることがある。
【0003】
しかし、湿度を急激に変化させた実験場合において、これまでの通常の湿度計では、湿度計が急激に変化させた湿度を示す定常状態になるまで、かなりの時間を必要とし、しかも正確な湿度を測定することができなかった。
【0004】
この出願の発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、微小濃厚液滴の平衡飽和濃度の湿度依存性を利用して湿度を迅速にその場測定を可能とするものである。
【0005】
本願発明によれば、大気腐食の実験などで湿度を急激に変化させた場合でも、湿度をその場モニターすることが可能になる。
【0006】
また、この高速湿度モニターシステムを用いることにより精度の良い腐食実験が可能となる。
【0007】
これまで、水晶振動子で湿度の増加に伴うナノメータの水膜の厚さの増加の測定はされているもの、微小液滴を均一に散布して上記手法で湿度をモニターする試みは全く存在しなかった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記課題を解決するものとして、塩化マグネシウム微小液滴を均一に付着させた金コート水晶振動子を備え、湿度の変化に伴い暴露された金コート水晶振動子に付着された塩化マグネシウム微小液滴の平衡飽和濃度の変化により粘性が変化を検出し、粘性の変化に伴う水晶振動子の共振周波数の変化から湿度を求めることを特徴とする湿度モニター方法(請求項1)を提供する。
【0009】
また、この出願の発明は、塩化マグネシウム微小液滴を一定量均一に付着させた金コート水晶振動子を含み、この金コート水晶振動子の周波数変化により湿度を求める演算子を備えることを特徴とする湿度モニタリング装置(請求項2)をも提供する。
【0010】
【発明の実施形態】
この出願の発明においては、金コート水晶振動子に均一に付着させる塩化マグネシウム微小液滴を直径20μm程度とすることが、急激に変化する湿度を検知する場合において、迅速かつ正確な測定を図る上で好ましいものであった。
【0011】
この出願の発明は、前述のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0012】
【実施例】
図1のフロー図には、本願発明に係る湿度モニター方法として、金コート水晶振動子により最終湿度モニターに至るまでの検知過程を模式的に示される。
【0013】
本願発明に係る湿度モニター方法は、塩化マグネシウム微小液滴を均一に付着させた金コート水晶振動子を備える金コート水晶振動子への塩化マグネシウム微小液滴付着工程(1)と、金コート水晶振動子を湿度の変化する環境に暴露する金コート水晶振動子の湿度環境暴露工程(2)と、湿度の変化により塩化マグネシウム微小液滴の平衡飽和濃度が変化する塩化マグネシウム微小液滴の平衡飽和濃度が変化演算過程(31)、平衡飽和濃度の変化に伴い粘性が変化する塩化マグネシウム微小液滴の粘性変化演算過程(32)、粘性の変化に伴い水晶振動子の共振周波数が変化する水晶振動子の共振周波数変化演算過程(33)及び水晶振動子の共振周波数の変化に伴い共振周波数の変化から湿度を求める共振周波数の変化からの湿度演算過程(34)とを含む演算工程(3)と、装置画面に測定結果を表示する湿度表示工程(4)とからなる。
【0014】
上記金コート水晶振動子への塩化マグネシウム微小液滴付着工程(1)では、金コート水晶振動子に、平均粒子径20μmの塩化マグネシウム液滴を0.5mg/dm付着させている。
ここで、金コート水晶振動子は、30MHzの水晶振動子として構成される。
【0015】
図2は、上記演算工程(3)における共振周波数の変化からの湿度演算過程(34)において、金コート水晶振動子の共振周波数と相対湿度の相関関係を示すグラフであり、横軸に相対湿度(%)を縦軸に共振周波数(Hz)をとって示される。ここにおいて、上記塩化マグネシウム液滴を0.5mg/dm付着させた金コート水晶振動子を用いて、湿度の変化させた場合を示すものであって、この場合37%の相対湿度時の共振周波数からの周波数変化が示されている。
【0016】
この図2において、その共振周波数は、その変化が湿度依存性であることを示している。すなわち、この図2からは、湿度の増加に伴い平衡飽和濃度が減少するので、粘性が低くなり、金コート水晶振動子の共振周波数が増加することがわかる。
【0017】
したがって、湿度の増加に伴って周波数の増加することから、逆に本願発明による金コート水晶振動子の共振周波数計測することによって湿度をモニタすることができる。
【0018】
【発明の効果】
以上から、この出願の発明は、従来不可能であった急激に変化する湿度についての、迅速かつ正確な測定が容易にできる。
従来、市販の湿度計では急激に変化する湿度が測定できなかったが、この出願の発明によれば、塩化マグネシウム液滴の平衡飽和濃度の湿度による変化に伴う粘性の変化を水晶マイクロバランス法でモニターすることにより、急激に変化する湿度のモニターが可能である。
【0019】
微小な液滴を水晶振動子に均等に付着させることにより、液滴の表面積を大きくして高速に平衡飽和濃度に到達することを可能としている。
【0020】
この高速湿度モニターシステムを用いることにより、精度のよい腐食実験が可能となり、さらに、腐食損失の原因である飛来海塩粒子量の測定にも応用でき、損失を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る湿度モニター方法において、金コート水晶振動子により最終湿度モニターに至るまでの検知過程を模式的に示すフロー図である。
【図2】金コート水晶振動子の共振周波数と相対湿度の相関関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 金コート水晶振動子への塩化マグネシウム微小液滴付着工程
2 金コート水晶振動子の湿度環境暴露工程
3 演算工程
31 塩化マグネシウム微小液滴の平衡飽和濃度の変化演算過程
32 塩化マグネシウム微小液滴の粘性変化演算過程
33 水晶振動子の共振周波数変化演算過程
34 共振周波数の変化から湿度演算過程
4 湿度表示工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化マグネシウム微小液滴を均一に付着させた金コート水晶振動子を備え、湿度の変化に伴い暴露された金コート水晶振動子に付着された塩化マグネシウム微小液滴の平衡飽和濃度の変化により粘性が変化を検出し、粘性の変化に伴う水晶振動子の共振周波数の変化から湿度を求めることを特徴とする湿度モニター方法。
【請求項2】
塩化マグネシウム微小液滴を一定量均一に付着させた金コート水晶振動子を含み、この金コート水晶振動子の周波数変化により湿度を求める演算子を備えることを特徴とする湿度モニタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2004−294146(P2004−294146A)
【公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−84187(P2003−84187)
【出願日】平成15年3月26日(2003.3.26)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)