説明

高難燃性製品製造用成形材、そのための顔料及びその用途

【課題】熱可塑性プラスチックのマトリックスとその中に分散された微粒子状顔料を有する高難燃性製品製造用成形材は、該顔料が光感受性でレーザー光の影響下色を変化させるもので、ハロゲン不含の難燃性有機窒素塩基の少なくとも一つと(i)少なくとも二つの異なる陽イオンとの混合塩の少なくとも一つ及び/又は(ii)加熱すると上記(i)のように少なくとも二つの異なる陽イオンとの塩型の化合物の少なくとも一つに変態できる塩型の化合物の混合物との反応生成物(上記(i)及び(ii)で、該陽イオンの少なくとも一つは、元素Ti,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,La,Pr,Ta,W及びCeからなる群(A)から選択され、そして少なくとも一つの更なる陽イオンは長周期の元素周期表のIIA及びIIIB族の第3〜6周期の元素、IVB族の第5〜6周期の元素、IIIA〜VIIA及びVIII族の第4〜5周期の元素及びランタノイドの元素からなる群(B)から選択される)であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
難燃化物質を微細な粒子の形態でプラスチックに添加し、その微細な粒子をプラスチック製品の全体に分散させたり、その表面領域に分散させることは知られている。例えば、独国特許出願公開第101 45 093号明細書(DE-A-101 45 093)〔特許文献1〕には、グアニジン、メラミン又はメラミン誘導体などの有機窒素塩基のポリホスファートがプラスチック製品中の防炎剤(難燃化剤)として、そして、繊維製品の耐炎剤として記載されている。国際公開第00/02869号パンフレット(WO-A-00/02869)〔特許文献2〕には、ポリホスファート塩、特にはガラスファイバー強化ポリアミド及びポリエステル中のポリホスファート塩が、防炎剤として記載されている。他の有機窒素塩基が多くの他の文献で防炎剤として提案されている。その工業の分野での傾向は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム又はシアヌル酸メラミンなどのハロゲン不含の防炎剤をその目的のために使用するというものである。
【0002】
【特許文献1】独国特許出願公開第101 45 093号明細書(DE-A-101 45 093)
【特許文献2】国際公開第00/02869号パンフレット(WO-A-00/02869)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そうした防炎剤をハロゲン不含の熱可塑性物質に分散させると、望んでいないプラスチックの性質を変えるという良くない効果が発生しうる。
多くの応用分野で、難燃性であり且つレーザー光を使用して書き込んだり加工することのできるプラスチック製品を製造することが求められている。しかしながら、実用上での問題がある。ハロゲン不含の耐炎性の防炎剤は十分なコントラストを示さないので、それらは何ら実用性がないということが判明したのである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、プラスチック製品がそのプラスチックとしての性能に悪影響を及ぼすことなくレーザー書き込み可能とされていることを確実としているプラスチック成形材を提供することにある。本発明の成形材は、熱可塑性物質(熱可塑性プラスチック)から形成されたマトリックスを備え且つその中に分散された微粒子状顔料(ピグメント)を備えている高難燃性製品製造用のものであって、該顔料は光感受性であり、且つ、レーザー光の影響下に色を変化させるものであることを特徴とし、そして、
該顔料は、ハロゲン不含の難燃性有機窒素塩基の少なくとも一つと、
(i) 少なくとも二つの異なる陽イオンとの混合塩の少なくとも一つ、及び/又は、
(ii) 加熱すると、上記(i)におけるように、少なくとも二つの異なる陽イオンとの塩型の化合物の少なくとも一つに変態することのできる塩型の化合物の混合物、
との反応生成物
(ここで、上記(i)及び(ii)において、該陽イオンの少なくとも一つは、元素Ti, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Y, Zr, Nb, Mo, Ag, Sn, Sb, La, Pr, Ta, W 及び Ceからなる群(A)から選択されたもので、そして、少なくとも一つの更なる陽イオンは、長周期の元素周期表のIIA及びIIIB族の第3〜6周期の元素、IVB族の第5〜6周期の元素、IIIA〜VIIA及びVIII族の第4〜5周期の元素、及びランタノイドの元素からなる群(B)から選択されたものである)
であることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
該マトリックス用材としては如何なる公知のプラスチックをも使用でき、それらは、例えば、ウルマン化学百科事典(Ullmann’s Encyclopedia of Chemistry, 第15巻、457頁)に記載されており、そして、既にレーザー加工用に使用されているものである。好適なプラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、アクリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルエステル(ASA)、ポリカルボナート、ポリエーテルサルホン、 ポリエチルエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、そして熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。
【0006】
本明細書中、ポリアセタールとは、オキシメチレン(CH2-O)基を実質的に含有しているポリマー類を指している。本明細書ではそれらはポリオキシメチレンホモポリマー、テルポリマー及びブロックコポリマーを包含するものである。
本明細書中、ポリエステルとは、主鎖に繰り返しのエステル基を持っている熱可塑性ポリマー類を指している。例えば、ナフタレンジカルボン酸、テレフタール酸、イソフタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンジカルボン酸、これらのカルボン酸の混合物及びエステル形成誘導体から選択されたものと、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール又は1,6-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジ-(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサン、ビスフェノール A, ネオペンチルグリコール、オリゴ-又はポリ-エチレングリコール、オリゴ-又はポリ-プロピレングリコール、オリゴ-又はポリ- (テトラメチレン)グリコールなどの二価のアルコール(ジオール)、これらのジオールの混合物及びそのエステル形成誘導体から選択されたものとの重縮合生成物並びにその他の可能なコモノマーとのその重縮合生成物である。
【0007】
特に好ましいマトリックス成分としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、そして、ポリエーテル-エステルブロックコポリマーが挙げられる。
本明細書中、ポリアミドとは、主鎖に繰り返しの酸アミド基を持っている熱可塑性ポリマー類を指している。本明細書ではそれらはアミノ酸型及びジアミン-ジカルボン酸型のホモポリマー類と他の可能なAA-、BB-及びAB-コモノマーとのコポリマー類との両方を包含するものである。使用できるポリアミド類は、公知であり、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 11th Edition, 315 to 489頁, John Wiley & Sons, Inc, 1988に記載されている。
【0008】
ポリアミドとしては、例えば、ポリヘキサメチレンアジピン酸アミド、ポリヘキサメチレンアゼライン酸アミド、ポリヘキサメチレンセバシン酸アミド、ポリヘキサメチレンドデカン二酸アミド、ポリ-11-アミノウンデカン酸アミド及びビス-(p-アミノ-シクロヘキシル)-メタンドデカン酸アミド、又は、例えば、ポリカプロラクタム又はポリラウリンラクタムなどのラクタム類の開環により得られる生成物が挙げられる。さらに、酸成分としてのテレフタール酸又はイソフタール酸に基づいているポリアミド類、及び/又は、ジアミン成分としてのトリメチルヘキサメチレンジアミン又はビス-(p-アミノシクロヘキシル)-プロパンに基づいているポリアミド類、並びに、該ポリマー類又はそれらの成分の2種以上を共重合させて製造したポリアミド樹脂が適している。例えば、テレフタール酸、イソフタール酸、ヘキサメチレンジアミン及びカプロラクタムの共重縮合物が挙げられる。
【0009】
本明細書中、ポリアリーレンスルフィドとは、実質的に芳香族の主鎖に繰り返しの硫黄の基を持っている熱可塑性ポリマー類を指している。それらのものとしてはホモポリマー類及びコポリマー類が挙げられる。
本明細書中、配合成分として使用する熱可塑性ポリマーは、部分的に結晶性のポリマーや液晶性のポリマーや無定形のポリマーといった如何なるものであってもよい。
本明細書中、光感受性化合物とは、有機又は無機の塩型の化合物で、異なっている陽イオンの上記したような組合せを持ったもの、又は、塩型の化合物の混合物で、異なっている陽イオンの上記したような組合せを持ったものであり、レーザー光源の影響下に色を変えるものである。
可塑性のポリウレタン(PUT)は、特に適している。それはその機械的性状が良好であり、安価に加工できるからである。熱可塑性のポリウレタンは、数多くの文献並びに特許文献から良く知られている。
【0010】
上記(i)及び(ii)で記載した様々なもののうちで、顔料(ピグメント)、すなわち、熱可塑性マトリックス物質の中に微細に分散する顔料は、少なくとも二つの異なる陽イオンとの混合塩、又は、未だ変態せしめられていない前駆物質であるが、それは、加熱、例えば、該顔料を溶融することにより熱を加えると、少なくとも二つの異なる陽イオンと一緒になって上記カテゴリー(i)の混合塩を形成するといった前駆物質から成っているものである。
非常に驚くことに、金属成分は、混合塩としてであろうと前駆体としてであろうと、レーザーによる書き込み性能あるいは加工性能に関してコントラストを改善し、同時に防炎性を改善する。
【0011】
一方で難燃化性能を有し、他方でレーザー光を吸収することによりレーザーによる書き込みを可能にするといった該顔料の作用で、上記したような本発明の作用効果が得られる。本顔料は、ハロゲン不含の難燃性有機窒素塩基の少なくとも一つと、上記(i)及び(ii)の成分のうちの一つと、の反応生成物である。該有機窒素塩基は、有利には、メラミン又はメラミン誘導体、例えば、シアヌル酸メラミン(メラミンシアヌレート)、オルトリン酸メラミン(メラミンオルトホスファート)、オルトリン酸ジメラミン(ジメラミンオルトホスファート)、ピロリン酸メラミン(メラミンピロホスファート)、ポリリン酸メラミン(メラミンポリホスファート)、ホウ酸メラミン(メラミンボラート)、リンの酸の部分エステルのメラミン塩、フォスフォロキシ化合物の塩、ポリリン酸アンモニウム(アンモニウムポリホスファート)、リン酸ホウ素、それらの配合物などである。使用される防炎剤は、トリアジンポリマー類、メレム、メラム、尿素、グアニジンなどの中で使用されることもできる。
【0012】
本発明で使用される用語「塩型の化合物又は塩」とは、水中で陽イオン及び陰イオンに少なくとも部分的に解離する、あるいは、酸の残基及び塩基の残基からなる化合物を意味する。
用語「色が変わる」とは、一つの色の濃淡(明暗)の度合いから別のそれに移ること、例えば、黄色から赤色となるとか、透明色から黒色に変わることなどを意味する。
また、本明細書で本用語は、色の明るさ(明度)の変化、例えば、薄い褐色から濃い褐色に変化するあるいはプラスチックの色を脱色することなども意味する。
【0013】
用語「微粒子状」とは、該顔料が平均粒子サイズ(d50)とか第一次の粒子の粒子のサイズとして与えられた量的なパラメーターを持つ微細な固体粒子の形態であることを意味する。第一次の粒子のサイズはナノメーター(nm)からマイクロメーター(μm)の範囲にある。適している第一次の粒子は、10 μmより小さい平均粒子サイズ(d50)、好ましくは5 μmより小さい平均粒子サイズ(d50)を有するものである。
また、本発明の範囲内では、該顔料は更なる陽イオンを含有することができ、特にはIA族の第2〜5周期の元素から選択されたものを含有することができる。該顔料に、付加的な無機酸化物及び/又はさらなる色生成添加物及び/又は性状を修飾する通常の添加物、例えば、UV安定化剤、風解、熱による攻撃や熱酸化による攻撃に対する安定化剤、加水分解に対する抵抗性やアジド分解に対する抵抗性を改善するためのもの、潤滑剤、離型助剤、結晶化制御物質、核形成剤、充填剤、軟化剤及びその他の添加物などを添加することも可能である。
【0014】
本発明の顔料により得られる色の違いは、異なる光源下で局部的に異なる光強度として、局部的に異なる色値、例えば、CIE-LAB表色系でのそれとして、あるいは、RGB系の局部的に異なる色値として観察されることができる。
普通、元素は利用されるレーザー光の波長の範囲でできるだけ強い吸収があるように選択される。
使用レーザー光の波長は何ら制限はない。適しているレーザーは、一般的には、157 nm 〜 10.6 mmの範囲の波長、好ましくは532 nm 〜 10.6 mmの範囲の波長を有している。例えば、CO2レーザー(10.6 mm)及びNd:YAGレーザー(1064 nm)又はパルスUVレーザーが挙げられる。
【0015】
典型的なエキシマーレーザーは次のような波長を有している:F2エキシマーレーザー(157 nm)、ArFエキシマーレーザー(193 nm)、XeClエキシマーレーザー(308 nm)、XeFエキシマーレーザー(351 nm)、そして、532 nm (2逓倍)の波長、355 nm (3逓倍)の波長又は265 nm (4逓倍)の波長を持つ周波数逓倍Nd:YAGレーザー。特に好ましくは、Nd:YAGレーザー(1064又は532 nm)及びCO2レーザーを使用する。使用されるレーザーのエネルギー密度は、一般的には、0.3 mJ/cm2 〜 50 J/cm2の範囲、好ましくは0.3 mJ/cm2 〜 10 J/cm2の範囲である。パルスレーザーを使用する場合は、パルスの周波数は、一般的には、1 〜 30 kHzの範囲である。
本明細書中、用語「光感受性の化合物」とは、異なった陽イオンの上記した組合せを有している有機又は無機の塩型の化合物又は異なった陽イオンの上記した組合せを有している塩型の化合物の混合物であって、それらは照射を受けた領域でレーザー光源の影響下に色が変化するものであるものを意味する。
【0016】
これらの化合物は、一以上の陰イオンと複数の陽イオン、好ましくは少なくとも二つの陽イオン(それぞれは異なった元素から誘導されたものである)との一定の化学量論的な割合のものを有している古典的な塩であってよい。しかし、それらは異なった元素から誘導された少なくとも二つの陽イオンを与える非化学量論的な割合の化合物であってもよい。
少なくとも二つの異なった元素からなる陽イオンを有している化合物を与えることのできるものである限り、いかなる陰イオンも使用できる。好ましくは、該陰イオンは、少なくとも二つの異なる元素を含有しているものを使用できる。
【0017】
特に好ましい成分は、陰イオンとして、元素周期表から選択されたオキソ陰イオン〔ただし、ホスフィナート塩(ホスフィン酸塩)及びジホスフィナート塩(ジホスフィン酸塩)を除く〕及び/又はその重合体を持っており、また有機カルボン酸類並びに炭酸類の陰イオンを持っている(但し、複数の陽イオンを持っている混合化合物はそれと一緒になって形成されるものである)。
好ましい組合せは、照射を受けていない化合物が使用光の波長の領域で吸収を起こすものである。
【0018】
より好ましい組合せは、照射を受けていない化合物の固有色が陽イオンのモル比を変えることにより調節されているものである。
本発明の一つの実施態様では、照射を受けてない成分はいかなる固有色を有していてもよく、そして照射を受けた成分はできるだけ異なった色の違いを有しているものである。CIE Lab表色系では、これはdE*が高い値をとることを意味している。ここで
【0019】
【数1】

式中、符号 1 は、照射を受けていない成形材を表し、そして符号 2 は照射を受けた成形材を表している。
【0020】
当該CIE L*a*b* (Lab)表色系は、国際照明委員会〔the International Illumination Commission (Commission Internationale d’Eclairage) 1976〕が提唱する色空間で、そこではL* = 色の明るさ(明度, lightness)、 a* = 赤-緑の色情報、そして b* = 黄-青の色情報である。
【0021】
本発明の好ましい具体例では、照射を受けていない化合物は最高の可能な明度(CIE Lab色空間でできるだけ高い明度値L*)を有しており、そして、できるだけ少ない固有色(すなわち、黒-白軸からの偏位ができるだけ少ない: できるだけ小さいa*値で、できるだけ小さいb*値)を有する。この場合に照射を受けた化合物は、できるだけ低い明度(できるだけ低い明度値L*)を有し、一方、できるだけ少ない固有色(できるだけ小さなa*値で、できるだけ小さいb*値)を有している。
【0022】
本発明のさらなる好ましい具体例では、照射を受けていない成分はできるだけ高い明度(CIE Lab色空間でできるだけ高い明度値L*)を有しており、そして、できるだけ少ない自己色(黒-白軸からの偏位ができるだけ小さい: できるだけ小さいa*値で、できるだけ小さいb*値)を有する。この場合に照射を受けた化合物は、できるだけ目立った固有色(できるだけ高いa*値で、できるだけ高いb*値)を有している。
【0023】
本発明の組成物の好ましい具体例では、上記成分の陰イオンは次の一般式:
AaOo(OH)yz-,
(上式中、A = 3価又は5価のリン、4価のモリブデン、又は、6価のタングステン; a, o 及び z は、独立に、1〜20の値のいずれかを示し、y は0〜10の値のいずれかである)
を有するものである。
本発明の組成物のさらなる好ましい具体例では、該顔料は、銅、錫、アンチモン、そして、鉄からなる群から選択された二つの異なった元素の少なくとも一つの組合せを有している。
【0024】
本発明の組成物の特に好ましい具体例では、該顔料は5価のリン(V)の酸及び/又は3価のリン(III)の酸の陰イオン、それらの縮合生成物、あるいは、任意にさらなるヒドロキシドイオンを有しているもの、及び、陽イオンとして、CuとFe又はCuとSn又はCuとSb又はSnとFeを含有している。
好ましくは、特に高い熱安定性を有して、ポリマーにドープされて配合製品を製造した時にいかなる分解も生じない金属塩が使用される。200℃を超える熱安定性(2%重量減量)、好ましくは250℃を超える熱安定性(2%重量減量)、そして、特には300℃を超える熱安定性(2%重量減量)を有している塩又はリガンドが使用される。
【0025】
光感受性で防炎性のある配合物は、有機窒素塩基を成分(i)又は(ii)を持つ金属化合物でドープしたり、有機窒素塩基を成分(i)又は(ii)を持つ金属化合物と反応せしめたり、有機窒素塩基と成分(i)又は(ii)を持つ金属化合物とを混合することにより得られる。用語「ドープする」とは、粉末状態の該固体成分の一以上のものの混合物を製造すること並びに溶解されている状態又は懸濁状態の該固体成分の一以上のものを混合し、次に粉末の生成物を乾燥することの双方を意味する。
本発明の生成物は、難燃性とレーザー書き込み可能性能を有している。
【0026】
また、本発明は、該成形材に関し、上記で特定した特性を持った難燃性と同時にレーザー書き込み可能なプラスチック製製品の製造のための顔料にも関する。さらに、本発明は、同様に難燃性で、レーザー書き込み可能なプラスチック製製品、特には熱可塑性物質(熱可塑性プラスチック)より得られた製品を製造するための、上記で特定した特性を持った顔料の用途にも関する。
【実施例1】
【0027】
本発明の成形材用顔料は次のようにして製造された:
水酸化銅(0.1 モル)及びイソシアヌル酸(0.1 モル)を水と共にミキサーに入れ、激しくかき混ぜた。かくして中和反応が起こり、塩が形成される。次に、リン酸スズ, Sn3(PO4)2 (1 モル)を添加した。30分後、メラミン(10 モル)及びシアヌル酸(10 モル)を正確に1:1の比率で添加した。混合物の全体を、1時間攪拌し、次に110℃で減圧乾燥した。
【0028】
得られた顔料と一緒に次の成分を使用して本発明の成形材を得た。その防炎性及びレーザーによる書き込み性能を調べた。
レーザーは、市販のNd-YAGレーザー(波長1064 nm)であった。コントラスト値はマイクロスコープに搭載されたデジタル式カメラとイメージ評価ソフトを使用して決められた。UL94に従ってUL Boxを使用して防炎性を決定した。CTI値は、標準DIN IEC 60112/VDE 0303 Part 1, RAL 7035に従って決定した。
【0029】
ポリアミド 6,6/6 (モル比 1:1) 88 wt %
シアヌル酸メラミン(上記のように製造したもの) 12 wt %
UL94 VO
コントラスト (K 値) 4.2
CTI 520
【0030】
得られた熱可塑性成形材の特性をその優れた防炎性(自己消火性能)及びレーザーによる書き込みの際の高コントラスト値(K 値)の双方により調べた。
【実施例2】
【0031】
本発明の成形材(i)用の顔料は、次のようにして製造した:
攪拌装置を備えた50 Lの反応器に29.25 Lの純水を入れた。オルトリン酸(74.75 モル)を攪拌しながら常温で添加した。反応は発熱的であるので、反応器の内容物の温度は上昇し、10分間50℃に保った。次に、メラミン(74.75 モル)を塊とならないようにして攪拌しながらゆっくりと添加した。均一な懸濁物が得られたら、水酸化銅(0.74 モル)と鉄-II-ホスフィット(0.29 モル Fe3PO3)の混合物を該懸濁物に添加した。混合物全体を1 時間100℃で攪拌し、次に、温度を上げた後、減圧乾燥した。
得られたドープされているオルトリン酸メラミンを340℃の炉内でポリリン酸メラミンに変態させた。生成物は5ミクロンのサイズに粉砕した。
【0032】
ポリブチルテレフタレート 76 wt %
シアヌル酸メラミン 9 wt %
ポリリン酸メラミン(上記のように製造したもの) 15 wt %
UL94 VO
コントラスト(K 値) 4.3
CTI 530 V
【0033】
また、本成形材も優れた防炎性及びレーザー書き込み性能(K 値)を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性物質から形成されたマトリックスを備え且つその中に分散された微粒子状顔料を備えている高難燃性製品製造用成形材であって、該顔料は光感受性であり、且つ、レーザー光の影響下に色を変化させるもので、そして、該顔料は、ハロゲン不含の難燃性有機窒素塩基の少なくとも一つと、
(i) 少なくとも二つの異なる陽イオンとの混合塩の少なくとも一つ、及び/又は、
(ii) 加熱すると、上記(i)におけるように、少なくとも二つの異なる陽イオンとの塩型の化合物の少なくとも一つに変態することのできる塩型の化合物の混合物、
との反応生成物
(ここで、上記(i)及び(ii)において、該陽イオンの少なくとも一つは、元素Ti, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Y, Zr, Nb, Mo, Ag, Sn, Sb, La, Pr, Ta, W 及び Ceからなる群(A)から選択されたもので、そして、少なくとも一つの更なる陽イオンは、長周期の元素周期表のIIA及びIIIB族の第3〜6周期の元素、IVB族の第5〜6周期の元素、IIIA〜VIIA及びVIII族の第4〜5周期の元素、及びランタノイドの元素からなる群(B)から選択されたものである)
であることを特徴とする難燃性製品製造用成形材。
【請求項2】
該顔料が10 μmより小さい平均粒子サイズ(d50)、好ましくは5 μmより小さい平均粒子サイズ(d50)を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の成形材。
【請求項3】
上記群(A)及び(B)から選ばれた各種の陽イオンに加えて、長周期の元素周期表のIA族の第2〜5周期の元素から選択された陽イオンをさらに含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形材。
【請求項4】
該顔料が、陰イオンとして、元素周期表から選択されたオキソ陰イオン(ただし、ホスフィナート及びジホスフィナートを除く)及び/又はその重合体、有機カルボン酸の陰イオン、又は、炭酸の陰イオン、との塩型の化合物を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の成形材。
【請求項5】
該顔料が、陰イオンとして、リン原子含有オキソ陰イオン、特には、シアヌレート-陰イオン, ホスファート-陰イオン, 縮合ホスファート-陰イオン, ホスホナート-陰イオン, ホスフィット-陰イオン及び混合ヒドロキサイド-ホスファート-陰イオンであることを特徴とする請求項4に記載の成形材。
【請求項6】
該顔料の陰イオンが、一般式:
AaOo(OH)y2-
(ここで、Aは、五価のリン原子、四価のモリブデン原子、又は、六価のタングステン原子で、a, o 及び z は、独立に、1 〜 20の範囲のいずれかの数で、y は、0 〜 10の範囲のいずれかの数を表す)
であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の成形材。
【請求項7】
該顔料の陽イオンが、銅、錫、アンチモン、鉄、及び/又は、ホウ素から成るものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一に記載の成形材。
【請求項8】
該塩型の化合物の陰イオンが、五価のリン(V)の酸及び/又は三価のリン(III)の酸又はそれらの縮合生成物、又は、任意にさらなるヒドロキシルイオンを伴っているものから成っており、そして、該陽イオンが、CuとFe又はCuとSn又はCuとSb又はSnとFeから成るものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一に記載の成形材。
【請求項9】
該群(A)及び(B)の化合物が一緒になることにより、その化合物の照射を受けていない配合物が使用光の波長領域で吸収を起こすことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一に記載の成形材。
【請求項10】
添加物としてリンの化合物と一緒に立体的に嵩高いフェノールの少なくとも一つを含有していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一に記載の成形材。
【請求項11】
該熱可塑性マトリックスが、任意にガラスファイバー強化された、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、アクリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルエステル(ASA)、ポリカルボナート、ポリエーテルサルホン、 ポリエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリウレタン及び/又はそれらの共重合体及び/又はそれらの混合物から成ることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一に記載の成形材。
【請求項12】
該ハロゲン不含の有機窒素塩基が、メラミン、シアヌル酸メラミン、オルトリン酸メラミン、オルトリン酸ジメラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ホウ酸メラミン、リンの酸のエステルのメラミン塩、更に、III-及びV-価のフォスフォロキシ化合物の塩、ポリリン酸アンモニウム、リン酸ホウ素、及びそれらの混合物、並びにペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、THEIC、トリアシン(triacin)ポリマー類、尿素、グアニジン、メラム又はメレムなどの相乗作用剤とのそれらの混合物から成ることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一に記載の成形材。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一記載の顔料を、高難燃性でレーザー書き込み可能なプラスチック製品、特には熱可塑性物質から形成された製品の製造に使用すること。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一記載の顔料を、高難燃性であると同時にレーザー書き込み可能なプラスチック製品の製造に使用すること。

【公表番号】特表2008−517087(P2008−517087A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536189(P2007−536189)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055282
【国際公開番号】WO2006/042830
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(596009652)
【Fターム(参考)】