説明

高電圧継電器

【課題】改善された気密構造を有する高電圧継電器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】高電圧継電器は、電気的絶縁性を有する合成樹脂材を鋳造して一面が開放された箱状に形成されたモールドケース1と、モールドケース1内に収納されるアクチュエータ2と、固定電極3aが埋め込まれ、モールドケース1の開口部を覆蓋するようにアクチュエータ2の上部に設置され、気密のために上部に塗布される熱硬化性樹脂が硬化すると閉塞されるガス放出口部3bを有するアーク消弧機構3とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車や電気自動車用の高電圧直流継電器に関し、特に、改善された気密構造を有する、ハイブリッド自動車や電気自動車用の気中型高電圧直流継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車においては、自動車の初期駆動時、バッテリ電源の電気エネルギーを利用して加速し、所定の走行速度に達すると、バッテリ電源の供給を遮断してエンジンを動力源として走行する。ここで、バッテリ電源を供給(オン)又は遮断(オフ)するために、高電圧直流継電器が使用される。ハイブリッド自動車や電気自動車用の高電圧直流継電器は、使用目的によって、主継電器と補助継電器とに区分されるが、通常、主継電器としてはガス気密型高電圧直流継電器が多用され、補助継電器としては気中型高電圧直流継電器が多用されている。主継電器は、アーク消弧部をセラミック材の真空容器で形成するため、使用環境による影響が少ないのに対して、補助継電器は、気中で消弧するように製作されるため、使用環境に対する動作信頼性が重要である。特に、補助継電器においては、温度と湿度の使用環境に対する動作信頼性が非常に重要であるため、気密を保つ性能を有する気中型高電圧直流継電器、及び気密を保てるように気中型高電圧直流継電器を製造する方法が要求される。
【0003】
以下、図4及び図5を参照して従来技術による気中型高電圧直流継電器及びその製造方法を説明する。
【0004】
従来技術による気中型高電圧直流継電器は、一面が開放された箱状のモールドケース1と、モールドケース1内に収納されるアクチュエータ2と、モールドケース1の開口部を覆蓋するようにアクチュエータ2の上部に設置されるアーク消弧機構3とを含む。
【0005】
従来技術による気中型高電圧直流継電器の組み立ては、開放された面を上にしたモールドケース1内にアクチュエータ2を収納し、アクチュエータ2の上部、すなわちモールドケース1の開口部をアーク消弧機構3で覆蓋する過程により行われる。
【0006】
その後、気密のために高温の熱硬化性樹脂を塗布するが、熱硬化性樹脂が冷却されて硬化する間、モールドケース1の内部で高温により膨張した空気は、図5の矢印のように、モールドケース1とアーク消弧機構3の境界部位、固定電極3aの周囲、コイル端子2aの周囲などから外部大気に放出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、従来技術による気中型高電圧直流継電器においては、空気の放出によって、空気が放出された部位に隙間が生じ、気密が不可能であり、温度及び湿度の環境変化に応じて動作信頼性が変わって保証されず、前記隙間から異物が流入するという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたもので、改善された気密構造を有する高電圧継電器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、電気的絶縁性を有する合成樹脂材を鋳造して一面が開放された箱状に形成されたモールドケースと、前記モールドケース内に収納されるアクチュエータと、固定電極が埋め込まれ、前記モールドケースの開口部を覆蓋するように前記アクチュエータの上部に設置され、気密のために上部に塗布される熱硬化性樹脂が硬化すると閉塞されるガス放出口部を有するアーク消弧機構とを含むことを特徴とする高電圧継電器を提供する。
【0010】
また、本発明は、電気的絶縁性を有する合成樹脂材を鋳造して一面が開放された箱状に形成されるモールドケース、前記モールドケース内に収納されるアクチュエータ、及び固定電極が埋め込まれ、ガス放出口部を有し、前記モールドケースの開口部を覆蓋するように設置されるアーク消弧機構を準備する構成部品準備段階と、前記モールドケース内に前記アクチュエータを収納して前記アーク消弧機構で覆蓋する組み立て段階と、前記ガス放出口部を除いた前記アーク消弧機構上に熱硬化性樹脂を塗布する塗布段階と、前記モールドケース内部の膨張ガスが前記ガス放出口部から放出されると、前記ガス放出口部のガス放出口を閉塞処理する閉塞処理段階とを含むことを特徴とする高電圧継電器の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明による高電圧継電器は、製造時、気密のために上部に塗布される熱硬化性樹脂が硬化すると閉塞されるガス放出口部をアーク消弧機構が有するため、熱硬化性樹脂が硬化する間に継電器内部の膨張ガスを放出し、後でガス放出口部のみを閉塞処理することにより、気密を保証でき、温度及び湿度の変化などの環境変化に関係なく信頼性のある継電器の開閉動作を保証でき、ハイブリッド自動車や電気自動車の直流電源開閉用としての使用に適した補助継電器としての気中型高電圧直流継電器が得られるという効果がある。
【0012】
また、本発明による高電圧継電器は、前記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用するため、エポキシ樹脂の優れた電気的絶縁性を利用して高電圧継電器の端子部以外の部分を電気的に絶縁することにより、漏電と混触を防止して端子間の電気的絶縁を確保できるという効果がある。
【0013】
さらに、本発明による高電圧継電器は、前記ガス放出口部が、ガス放出口の周囲に所定の厚さを有して所定の高さで延びる管状部を含むため、ガス放出口部の閉塞処理時、当該管状部を熱溶融すると、ガス放出口部が閉塞されると共に、管状部が溶融して管状部周囲溝部が埋められることにより、厚さが薄くなる現象が発生することなく、堅固で平坦にガス放出口部を閉塞処理できるという効果がある。
【0014】
本発明による高電圧継電器の製造方法は、モールドケース内にアクチュエータを収納してアーク消弧機構で覆蓋する組み立て段階と、ガス放出口部を除いたアーク消弧機構上に熱硬化性樹脂を塗布する塗布段階を行った後、前記モールドケース内部の膨張ガスが前記ガス放出口部から放出されると、前記ガス放出口部の開口を閉塞処理する閉塞処理段階を行うため、前記モールドケース内部の膨張ガスの放出による隙間の形成とこれによる気密破壊現象が発生せず、従って、製造後、気密を保証でき、ハイブリッド自動車や電気自動車の直流電源開閉用としての使用に適した、温度及び湿度の変化などの環境変化に関係なく信頼性のある補助継電器としての気中型高電圧直流継電器を製造できるという効果がある。
【0015】
また、本発明による高電圧継電器の製造方法は、前記閉塞処理段階が前記ガス放出口部を高周波加熱器で加熱して開口を閉塞処理することにより行われるため、高周波加熱器で加熱することで簡単に開口を閉塞処理でき、当該工程の存在による高電圧継電器の製造生産性への影響を最小限に抑えられるという効果がある。
【0016】
さらに、本発明による高電圧継電器の製造方法は、構成部品準備段階で、ガス放出口の周囲に所定の厚さを有して所定の高さで延びる管状部を含むガス放出口部を有するように、アーク消弧機構を鋳造して準備するため、ガス放出口部の閉塞処理時、当該管状部を熱溶融すると、ガス放出口部が閉塞されると共に、管状部が溶融して管状部周囲溝部が埋められることにより、厚さが薄くなる現象が発生することなく、堅固で平坦にガス放出口部を閉塞処理できるという効果がある。
【0017】
さらに、本発明による高電圧継電器の製造方法は、前記閉塞処理段階で、前記ガス放出口部の管状部を高周波加熱器で加熱して溶融することによりガス放出口を閉塞処理するため、簡単に開口を閉塞処理でき、当該工程の存在による高電圧継電器の製造生産性への影響を最小限に抑えられるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による高電圧継電器のアーク消弧機構の構成を示すアーク消弧機構の斜視図である。
【図2】本発明による高電圧継電器における、組み立てて熱硬化性樹脂を塗布した後に継電器内部の温度上昇により膨張した内部空気がガス放出口部から放出される状態を示す斜視図及び要部拡大斜視図である。
【図3】本発明による高電圧継電器の製造方法を示す工程図である。
【図4】従来技術による高電圧継電器の構成及び組み立てを示す分解斜視図である。
【図5】従来技術による高電圧継電器における、熱硬化性樹脂を塗布した後に継電器内部の温度上昇により膨張した内部空気の排出状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記本発明の目的とこれを達成する本発明の構成及び作用効果は、添付の図面を参照した本発明の好ましい実施形態の後述する詳細な説明によりさらに明確に理解できるであろう。
【0020】
図1は、本発明による高電圧継電器のアーク消弧機構の構成を示すアーク消弧機構の斜視図であり、図2は、本発明による高電圧継電器における、組み立てて熱硬化性樹脂を塗布した後に継電器内部の温度上昇により膨張した内部空気がガス放出口部から放出される状態を示す斜視図及び要部拡大斜視図であり、図3は、本発明による高電圧継電器の製造方法を示す工程図である。
【0021】
まず、図1及び図2を参照して本発明による高電圧継電器を説明する。
本発明による高電圧継電器は、ハイブリッド自動車や電気自動車用の補助継電器として使用される気中型高電圧直流継電器であって、モールドケース1と、アクチュエータ(図4の符号2を参照)と、アーク消弧機構3とを含む。
【0022】
モールドケース1は、電気的絶縁性を有する合成樹脂材を一面が開放された箱状に鋳造して形成される。モールドケース1は、本発明による高電圧継電器の構成部品を内部に収納するケースとして機能する。
【0023】
前記アクチュエータは、モールドケース1内に収納され、本発明による高電圧継電器に接続される外部の直流電源と負荷(電動機)間の回路を開閉する構成部である。例えば、前記アクチュエータは、コイル端子2aを介して制御電流を供給すると励磁され、制御電流の供給を中断すると消磁されるコイルと、前記コイルの励磁又は消磁によって移動可能な可動コアと、前記可動コアに軸接続され、前記可動コアの移動によって、後述する固定電極3aに接触する位置又は固定電極3aから分離される位置に移動可能な可動接触子とを含む。
【0024】
アーク消弧機構3は、固定電極3aと前記アクチュエータの可動接触子間の開閉動作時に発生するアークを消弧する消弧機構としての機能と共に、モールドケース1の開口部を覆う蓋の機能を果たす。アーク消弧機構3には固定電極3aが埋め込まれる。アーク消弧機構3は、モールドケース1の開口部を覆蓋するように、前記アクチュエータの上部に設置される。
【0025】
図1に示すように、本発明によるアーク消弧機構3は、気密のために上部に塗布される熱硬化性樹脂が硬化すると閉塞されるガス放出口部3bを有する。また、図2に示すように、ガス放出口部3bは、管状部3b−1と、ガス放出口3b−2と、管状部周囲溝部3b−3とを含む。なお、図2の符号2aは、図4を参照して説明した前記アクチュエータのコイルに電気的に接続される、前記アクチュエータのコイル端子である。
【0026】
管状部3b−1は、アーク消弧機構3の上部面において、ガス放出口3b−2の周囲に所定の厚さの肉部を有し、所定の高さで延びるように設けられる。
【0027】
ガス放出口3b−2は、管状部3b−1を貫通して下部のモールドケース1の内部に連通するように設けられ、熱硬化性樹脂を塗布した状態で継電器内部の温度上昇により膨張した内部空気が放出される通路を提供する。
【0028】
管状部周囲溝部3b−3は、アーク消弧機構3の上部面より低く、管状部3b−1の周囲を囲んで設けられる。熱硬化性樹脂を塗布した状態で継電器内部の温度上昇により膨張した内部空気がガス放出口3b−2から全て放出された後、管状部3b−1を溶融してガス放出口3b−2を閉塞処理するとき、溶融した管状部3b−1が管状部周囲溝部3b−3上を覆うことにより、ガス放出口3b−2の閉塞処理後、アーク消弧機構3の上表面が平坦に処理される。
【0029】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂で構成してもよい。
【0030】
次に、図3を中心にして図1及び図2を参照して、本発明の好ましい実施形態による高電圧継電器の製造方法を説明する。
本発明の好ましい実施形態による高電圧継電器の製造方法は、構成部品準備段階ST1、組み立て段階ST2、塗布段階ST3、及び閉塞処理段階ST4を含む。
【0031】
まず、構成部品準備段階ST1において、図1及び図2を参照して説明したように、電気的絶縁性を有する合成樹脂材を鋳造して一面が開放された箱状に形成されたモールドケース1と、モールドケース1内に収納されるアクチュエータ(図4の符号2を参照)と、固定電極3aが埋め込まれ、ガス放出口3b−2が開放された状態のガス放出口部3bを有し、モールドケース1の開口部を覆蓋するように設置されるアーク消弧機構3を準備する。ここで、アーク消弧機構3は、ガス放出口3b−2の周囲に所定の厚さを有して所定の高さで延びる管状部3b−1を含むガス放出口部3bを有するように鋳造することで準備してもよい。
【0032】
次に、組み立て段階ST2において、モールドケース1内に前記アクチュエータを収納してアーク消弧機構3で覆蓋する。
【0033】
次に、塗布段階ST3において、ガス放出口部3bを除いたアーク消弧機構3上に熱硬化性樹脂を塗布する。
【0034】
次に、閉塞処理段階ST4において、モールドケース1内部の膨張ガスが、ガス放出口部3bのガス放出口3b−2から全て放出されると、ガス放出口3b−2を閉塞処理する。ここで、ガス放出口3b−2の閉塞処理は、ガス放出口部3bを高周波加熱器で加熱することにより行ってもよい。より詳細には、ガス放出口部3bの管状部3b−1を高周波加熱器で加熱して溶融することにより、ガス放出口3b−2を閉塞処理する。このとき、溶融した管状部3b−1が管状部周囲溝部3b−3上を覆うことにより、ガス放出口3b−2の閉塞処理後、アーク消弧機構3の上表面が平坦に処理される。
【符号の説明】
【0035】
1 モールドケース
2 アクチュエータ
2a コイル端子
3 アーク消弧機構
3a 固定電極
3b ガス放出口部
3b−1 管状部
3b−2 ガス放出口
3b−3 管状部周囲溝部
4 熱硬化性樹脂塗布層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧継電器において、
電気的絶縁性を有する合成樹脂材を鋳造して一面が開放された箱状に形成されたモールドケースと、
前記モールドケース内に収納されるアクチュエータと、
固定電極が埋め込まれ、前記モールドケースの開口部を覆蓋するように前記アクチュエータの上部に設置され、気密のために上部に塗布される熱硬化性樹脂が硬化すると閉塞されるガス放出口部を有するアーク消弧機構と
を含むことを特徴とする高電圧継電器。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の高電圧継電器。
【請求項3】
前記ガス放出口部は、ガス放出口の周囲に所定の厚さの肉部を有し、所定の高さで延びる管状部を含むことを特徴とする請求項1に記載の高電圧継電器。
【請求項4】
前記アーク消弧機構の上部面より低く、前記管状部の周囲を囲んで管状部周囲溝部が備えられることを特徴とする請求項3に記載の高電圧継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−138755(P2011−138755A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236481(P2010−236481)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(593121379)エルエス産電株式会社 (221)
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO., LTD