説明

髪ケア装置

【課題】回転リングが繰り返し撓み変形されることに対して、回転リングの材料を変えることなく塑性変形を抑制することのできる髪ケア装置を得る。
【解決手段】使用位置と折り畳み位置のそれぞれでグリップハウジングの本体ハウジングに対する回動を規制する節度機構を備える。この節度機構は、一方の部材(本体ハウジング)に設けられ、回動中心軸に直交する方向に突設される第1凸部12を有した第1の係合体10と、前記第1の係合体10に対して相対回動可能に他方の部材(グリップハウジング)に設けられるとともに、第1凸部12との圧接を伴って相互に乗り越え自在な第2凸部を有した第2の係合体と、を備えており、前記第1の係合体10の前記第1凸部12が設けられた部分10Kの径方向の肉厚t1を、その他の部分10Nの径方向の肉厚t2よりも厚く形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体ハウジングの連結部にグリップハウジングを回動自在に連結した髪ケア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、髪ケア機能を備えた本体部の本体ハウジングと、当該本体ハウジングの連結部に回動自在に取り付けられるグリップ部のグリップハウジングと、使用位置と折り畳み位置のそれぞれでグリップハウジングの本体ハウジングに対する回動を規制する節度機構と、を備えた髪ケア装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この場合、上記節度機構は、本体ハウジングに設けられたボス部に係止して嵌合され、外周にクリック用突起(第1凸部)が設けられた回転リング(第1の係合体)と、グリップハウジングに直接突設されて上記第1凸部に係合するクリック係合部(第2凸部)と、を備えて構成されている。そして、グリップハウジングを本体ハウジングに対して回動することにより、回転リングとグリップハウジングとが相対回転してクリック用突起とクリック係合部とが相互に相手側を圧接状態で乗り越えるようになっている。
【0004】
したがって、通常使用時には、回転リングのクリック用突起が相手側のクリック係合部と組み合わさることでグリップ部を保持できるとともに、グリップ部の折り畳み時には、クリック用突起とクリック係合部とが相互に乗り越えることによりクリック感を発生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−77207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の髪ケア装置にあっては、クリック用突起とクリック係合部とが相互に乗り越える際に、それらクリック用突起およびクリック係合部にそれぞれ反対方向の反力(荷重)が発生して、その荷重が回転リングの径方向に作用する。このとき、その荷重が大きい程、グリップ部の保持力やクリック感を増大でき、ひいては、節度機構の剛性を高めてグリップ部のガタ付きを無くすことができる。
【0007】
ところで、このように回転リングに荷重が発生すると、回転リングは、その荷重の作用部分で中心方向に押し潰される方向に撓み変形される。この撓み変形は、グリップ部の折り畳みの度に繰り返され、そのときの繰り返し疲労により回転リングは塑性変形され易くなる。このように、回転リングが塑性変形されると、クリック用突起とクリック係合部との圧接力が低下してグリップ部にガタ付きが発生されてしまう虞がある。
【0008】
そのため、回転リングの塑性変形を抑制しようとすると、回転リングをより剛性の高い材料、たとえば、アルミニウムなどの金属で形成することが考えられるが、この場合は、加工性やコスト面で不利となってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、回転リングが繰り返し撓み変形されることに対して、回転リングの材料を変えることなく塑性変形を抑制することのできる髪ケア装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明にあっては、本体ハウジングと、当該本体ハウジングの連結部に回動自在に取り付けられるグリップハウジングと、使用位置と折り畳み位置のそれぞれで前記グリップハウジングの前記本体ハウジングに対する回動を規制する節度機構と、を有し、前記節度機構は、前記本体ハウジングおよびグリップハウジングのいずれか一方の部材に設けられ、回動中心軸に直交する方向に突設される第1凸部を有した第1の係合体と、前記第1の係合体に対して相対回動可能に他方の部材に設けられるとともに、前記第1凸部との圧接を伴って相互に乗り越え自在な第2凸部を有した第2の係合体と、を備えた髪ケア装置であって、前記第1の係合体は、前記第1凸部が設けられた部分の径方向の肉厚が、その他の部分の径方向の肉厚よりも厚く形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明にあっては、前記第1の係合体は、前記回動中心軸を中心とした環状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明にあっては、前記第1の係合体の外周に前記第1凸部が設けられるとともに、前記第2の係合体が前記第1の係合体の外周に対向して配置され、前記第2の係合体の前記第1の係合体の外周との対向部に、前記第2凸部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明にあっては、前記第1の係合体の肉厚が薄くなる部分の内側に、当該第1の係合体を前記一方の部材に係止するための係止部を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明にあっては、前記第1凸部および係止部を、前記第1の係合体の周方向にそれぞれ複数箇所設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明にあっては、前記第1凸部および係止部を、前記第1の係合体の中心を通るそれぞれに対応した1つの直線上に2箇所づつ設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、グリップハウジングを伸展および折り曲げする際に、第1の係合体と第2の係合体とが相対回転し、これら第1の係合体の第1凸部と第2の係合体の第2凸部とが相互に乗り越える際に、第1凸部と第2凸部との圧接による荷重が第1の係合体の径方向に入力される。このとき、第1凸部が設けられた部分の径方向の肉厚を、その他の部分の径方向の肉厚よりも厚くしてあるので、その肉厚を厚くした部分で強度が高められて、第1の係合体の反発力を増大させることができる。したがって、グリップ部の折り畳みの度に第1の係合体の撓み変形が繰り返された場合にも、その繰り返し疲労により第1の係合体が塑性変形されるのを、第1の係合体の材料を剛性の高いものに変えることなく抑えることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、第1の係合体は、回動中心軸を中心とした環状に形成されているため、節度機構の構成を簡素なものとすることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、請求項1と同様の作用効果を得ることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、第1の係合体の肉厚が薄くなる部分の内側に、その第1の係合体を前記一方の部材に係止するための係止部を設けたので、第1の係合体に前記荷重が作用した際に発生する応力は肉厚が薄くなる部分に集中されるのであるが、その応力を係止部を介して前記一方の部材によって支持させることができる。これにより、第1の係合体が前記荷重によって大きく変形されるのを抑制することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、第1凸部および係止部を、第1の係合体の周方向にそれぞれ複数箇所設けたので、荷重が作用する箇所および応力を支持する箇所の周方向の間隔を短くできるので、第1の係合体の変形をさらに抑制できる。
【0021】
請求項6の発明によれば、第1凸部および係止部を、第1の係合体の中心を通るそれぞれに対応した1つの直線上に2箇所づつ設けたので、荷重が作用する箇所および応力が集中する箇所を第1の係合体の中心を挟んで対向位置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態にかかるヘアドライヤーの外観斜視図である。
【図2】図1に示すヘアドライヤーの断面図である。
【図3】図1に示すヘアドライヤーの本体部外郭をなす片側ハウジングの節度機構を外側から見た分解斜視図である。
【図4】図1に示すヘアドライヤーの本体部外郭をなす他側ハウジングの連結部の外側と、グリップ部外郭をなす他側ハウジングの本体部への取付部の内側と、を示す分解斜視図である。
【図5】図1に示すヘアドライヤーの本体部外郭をなす他側ハウジングの連結部の外側と、グリップ部外郭をなす他側ハウジングの外側と、を示す分解斜視図である。
【図6】図1に示すヘアドライヤーの本体部外郭をなす片側ハウジングの連結部に回転リングを組み付けた状態を外側から見た斜視図である。
【図7】図1に示すヘアドライヤーのグリップ部外郭をなす片側ハウジングの本体部への取付部を、回動規制部を分離して内側から見た斜視図である。
【図8】図1に示すヘアドライヤーのグリップ部外郭をなす片側ハウジングの本体部への取付部に回動規制部を組み付けた状態を内側から見た斜視図である。
【図9】図1に示すヘアドライヤーの本体部外郭をなす片側ハウジングの連結部と、グリップ部外郭をなす片側ハウジングの本体部への取付部と、を回転リングと回動規制部とを介して結合した状態を示す断面図である。
【図10】図1に示すヘアドライヤーのグリップ部を使用位置に伸展した状態における説明図である。
【図11】図1に示すヘアドライヤーのグリップ部を折り畳み位置に屈曲した状態における説明図である。
【図12】図1に示すヘアドライヤーの連結部に用いられる回転リングの正面図である。
【図13】従来の回転リングに荷重が作用した際の変形状態のシュミレーション結果を示した図である。
【図14】本実施形態の回転リングに荷重が作用した際の変形状態のシュミレーション結果を示した図である。
【図15】図12に示す回転リングの変形例を示した正面図である。
【図16】図10に示すヘアドライヤーのクイックリングの変形例を示した図である。
【図17】図11に示すヘアドライヤーのクイックリングの変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1〜図14は、本発明にかかる髪ケア装置の一実施形態を示した図である。以下では、髪ケア装置としてヘアドライヤー1について説明するが、本発明の髪ケア装置は、例えば、ヘアブラシ等のその他の機器、装置を含むものとする。なお、図1から図8中、Xは左方、Yは前方、Zは上方を示す。
【0024】
図1および図2に示すように、ヘアドライヤ1は、髪ケア機能を備えた本体部3と、この本体部3の連結部31に回動自在に連結されるグリップ部5とを備えている。
【0025】
本体部3の内部には、後端部(図中右側)のフィルタで覆われた空気吸込口3aから前端部(図中左側)の空気吹出口3bに至る風洞2が形成されており、この風洞2内に収容されたファンFを回転させることによって空気Wが形成される。すなわち、空気流Wは、外部から空気吸込口3aを介して風洞2内に流入し、当該風洞2内を通って空気吹出口3bから外部に排出される。
【0026】
ファンFは、風洞2の最も上流側に配置されており、その下流側にはファンFを回転駆動するモータMが配置され、モータMのさらに下流側には加熱機構としてのヒータHが配置される。ヒータHは、本体部3の連結部31に設けられた第2のスイッチ61により動作モードを切り換えることができるようになっており、ヒータHを作動させたときには、空気吹出口3bから加熱された温風が吹き出され、ヒータHを作動させないときには、空気吹出口3bからそのままの冷風が吹き出される。
【0027】
本体部3の上部前面には、一対のイオン放出口3c、3dが設けられており、内蔵したイオン発生装置Iで発生させたマイナスイオンがイオン放出口3cから前方(図2中左方)に放出されるようになっている。この場合、イオン放出口のうち一方のイオン放出口3dからは、プラチナイオンを放出するようにしてもよい。このような機能を付与することにより、毛髪にツヤやしっとり感を与えて、毛髪のクセ取りに効果を発揮する。
【0028】
グリップ部5の前側中央部には、メインスイッチとなる第1のスイッチ6が上下複数段の切り換え自在に設けられている。この第1のスイッチ6は、電源のオン・オフおよび風量調節を行うものである。また、本体部3の連結部31の側面付け根部には第3のスイッチ62が設けられ、この第3のスイッチ62によってイオン発生装置Iによるミストのオン・オフの切り替えが行われる。なお、図1中、符号3eは発光部であり、この発光部3eは、例えばヒータHを使用して温風が吹き出されている状態や、ミストが放出されている状態など、各動作状態に応じて発光色を異ならせることで、ヘアドライヤ1の動作モードの表示手段として利用することができる。
【0029】
そして、連結部31の下端部とグリップ部5の上端部との間には、グリップ部5を使用位置と折り畳み位置のそれぞれで回動規制する節度機構4が設けられている。
【0030】
このとき、本体部3は、それの外郭が左右に2分割された本体左側ハウジング3Hlと本体右側ハウジング3Hrとを結合して構成されるとともに、同様にグリップ部5は、それの外郭が左右に2分割されたグリップ左側ハウジング5Hlとグリップ右側ハウジング5Hrとを結合して構成されている。
【0031】
したがって、節度機構4は、図3に示すように、本体右側ハウジング3Hrの連結部31の外側下部と、図7に示すように、グリップ右側ハウジング5Hrの内側上部との間、および、図4および図5に示すように、本体左側ハウジング3Hlのグリップ取付部31の外側下部と、グリップ左側ハウジング3Hlの内側上部との間に設けられることになる。
【0032】
本実施形態の節度機構4は、この節度機構4の回動中心軸C(図3、4参照)を中心として一方の部材としての本体部3(本体右側ハウジング3Hr)に固定される第1の係合体としての回転リング10と、この回転リング10の外周に対向して配置され、他方の部材としてのグリップ部5(グリップ右側ハウジング5Hr)に固定される第2の係合体としてのクリックリング20(図7参照)とを備えている。
【0033】
回転リング10は、図3に示すように、回動中心軸C方向に所定長さaを有するリング状に形成され、その内周面には係止突起11(係止部)が突設されるとともに、外周面には第1凸部12が突設されている。
【0034】
また、回転リング10は、同図および図6に示すように、本体右側ハウジング3Hrの外側に設けた円形凹部32に配置されるとともに、その円形凹部32の底面から上述した回動中心軸Cを中心として突出したボス部33の外側に嵌合される。このとき、回転リング10とボス部33との嵌合部には、上述する回転リング10の変形を許容する程度の隙間が設けられている。
【0035】
ボス部33の外周部には係合溝33aが形成されており、その係合溝33aに回転リング10の係止突起11が係合されることにより、回転リング10はボス部33と回転方向に係止され、ひいては、本体部3の連結部31と回転方向に一体となる。
【0036】
一方、クリックリング20は、グリップ部5のグリップ右側ハウジング5Hrと一体に形成してもよいのであるが、本実施形態では、図7に示すように、そのクリックリング20が、グリップ右側ハウジング5Hrとは別体として形成されるとともに、回転リング10の外周を連続して囲繞する環状に形成されている。また、環状に形成されたクリックリング20の回動中心軸C方向の一端部、つまり、グリップ右側ハウジング5Hrの内側に対向する側の端部に、クリックリング20と一体に底面21が環状に設けられている。
【0037】
クリックリング20が回転リング10の外周に対向する対向部、つまり、クリックリング20の内周面には、回転リング10の第1凸部12との圧接を伴って相互に乗り越え自在な第2凸部22が設けられている。このとき、第1凸部12が第2凸部22を乗り越える際に、第1凸部12には中心方向に向かう荷重(反力)R(図12参照)が作用される。
【0038】
第2凸部22は、図8に示すように、グリップ部5を本体部3に対して伸展して使用状態としたとき(図10参照)に、第1凸部12を中央部に受容するふたコブ状凸部22aと、このふたコブ状凸部22aに対してグリップ部5の折り畳み角度θ1(図10参照)だけ変位した位置に設けられるクリック凸部22bと、によって構成される。このとき、ふたコブ状凸部22aおよびクリック凸部22bの突出部分は円弧状となっている。
【0039】
クリックリング20は、図7に示すように、グリップ右側ハウジング5Hrの上端部に設けた円形突出部51の内側に配置されるようになっている。円形突出部51の中心は回動中心軸Cと一致しており、その中心部に段付穴52が形成される。
【0040】
段付穴52は、円形突出部51(本体右側ハウジング3Hr)に対向する側に段部52aが形成されており、この段部52aに後述する筒状軸56の先端が付き合わされるようになっている。
【0041】
クリックリング20の底面21には、図7に示すように、周方向にほぼ等間隔をもって複数(本実施形態では6箇所)の係合凸部23が円形突出部51に向かって突設されるとともに、その円形突出部51の内側には、それら係合凸部23をそれぞれ密接して嵌合する複数の凹所53が設けられている。
【0042】
凹所53は、回転中心軸Cを中心とする複数の放射状のリブ53c間に設けられるとともに、それらリブ53cどうしは回転中心軸Cを中心とする弧状のリブ53dによって補強されている。そして、クリックリング20の係合凸部23を凹所53に挿入して係合させることにより、クリックリング20はグリップ右側ハウジング5Hrに回転方向に係止され、ひいては、グリップ部5と回転方向に一体となる。
【0043】
このとき、複数の係合凸部23のうちの一部、本実施形態では下方に位置する2つの係合凸部23aを他の係合凸部23bよりも若干突出させて高くしてある。このようにすることにより、クイックリング20を組み付ける際に、まず、高い係合凸部23aをガイドとして凹所53aに挿入した後に、残りの係合凸部23bを凹所53bに挿入することにより、係合凸部23を全体的に挿入し易くなる。
【0044】
さらに、本実施形態では、下方に位置する2つの係合凸部23aを他の係合凸部23bよりも横幅を長くしてあるとともに、これに対応する円形突出部51の凹所53aについても他の凹所53bよりも横幅を長くしている。このようにすることで、クリックリング20を組み付ける際には、横幅の長い係合凸部23aはこれに対応する凹所53aにしか挿入することができないため、クイックリング20を適切な位置関係(第1凸部に対する第2凸部の位置)となるように組み付けることができる。
【0045】
また、本実施形態では、図6に示すように、回転リング10を嵌合するボス部33の係合溝33aの両側に、外方に向かって突出する突起部34が形成されている。一方、図7および8に示すように、円形突出部51が本体右側ハウジング3Hrに対向する面には、段付穴52の周縁部に上記突起部34を係止する一対の凸部54が中心を通る1つの直線上に形成されている。
【0046】
そして、本体右側ハウジング3Hrとグリップ右側ハウジング5Hrとを組み付ける際には、回転リング10を本体右側ハウジング3Hrのボス部33に組み付けるとともに、クリックリング20をグリップ右側ハウジング5Hrの円形突出部51に組み付けた後、その円形突出部51を、クリックリング20が回転リング10の外周に嵌合されるようにして本体右側ハウジング3Hrの円形凹部32に外側から被せる。これで、本体右側ハウジング3Hrとグリップ右側ハウジング5Hrとが仮組み付けされる。
【0047】
このとき、回転リング10を嵌合したボス部33の突起部34は、段付穴52周縁部の一対の凸部54間に形成される弧状凹部54aにそれぞれ位置することとなり、グリップ部5の折り畳みに伴う回動によって突起部34が弧状凹部54a内を移動する。そして、グリップ部5が伸展状態になったときに、突起部34は一対の凸部54の一方に突き当たるとともに、グリップ部5が屈曲されて折り畳み状態となったときに、突起部34は一対の凸部54の他方に突き当たる。したがって、それら突起部34と凸部54とによって内側の第1のストッパー部S1が構成される。
【0048】
次に、本体左側ハウジング3Hlとグリップ左側ハウジング5Hlとの組み付けを説明する。図4に示すように、本体左側ハウジング3Hlの連結部31の下部外側には円形凹部35が形成されるとともに、グリップ左側ハウジング5Hlの上端部には円形突出部55が設けられている。その円形突出部55の内側には、回転中心軸Cを中心として、グリップ右側ハウジング5Hrの段付穴52(図7参照)に到達する筒状軸56が突設される一方、本体左側ハウジング3Hlの円形凹部35の中心部には回転中心軸C上に筒状軸56を回転自在に密接して嵌合する挿通孔36が形成される。
【0049】
また、円形凹部35の外側面には、挿通孔36を中心として一対の扇形凸部37が所定角度θ2をもって突設されるとともに、円形突出部55の内側面には筒状軸56を中心として扇形凸部37を受容する一対の弧状凹部57が設けられている。
【0050】
そして、図5に示すように、グリップ左側ハウジング5Hlの円形突出部55を、筒状軸56を挿通穴36に挿通させるようにして本体左側ハウジング3Hlの円形凹部35の外側に被せる。これで、本体右側ハウジング3Hrとグリップ右側ハウジング5Hrとの仮組み付けが完了される。このとき、筒状軸56の先端部は挿通穴36の内側から所定量突出した状態となっている。
【0051】
また、円形突出部55を円形凹部35に被せた際に、扇形凸部37が弧状凹部57に位置することとなり、グリップ部5の回動に伴って扇形凸部37が弧状凹部57内を移動する。そして、グリップ部5が伸展状態および折り畳み状態になったときに、扇形凸部37は弧状凹部57の両端壁57aにそれぞれ突き当たるようになっており、それら扇形凸部37と両端壁57aとによって内側の第2のストッパー部S2が構成される。
【0052】
さらに、図4に示すように、本体左側ハウジング3Hlの円形凹部35の下部には、円弧状の開口部38が形成されるが、その開口部38の外周部分の一部に切欠部38aが形成されている。一方、図6に示すように、本体右側ハウジング3Hrの連結部31の下端部には、上記切欠部38aに密接して挿入される突起39が突設されている。
【0053】
そして、このようにして仮組み付けされた本体右側ハウジング3Hrとグリップ右側ハウジング5Hr、および本体左側ハウジング3Hlとグリップ左側ハウジング5Hlは、それぞれの間に上述した各機能部品、つまり、ファンF、ヒータH、モータM、イオン発生装置I、第1から第3のスイッチ6、61、62および電源コード7などを組み込んだ後に、本体右側ハウジング3Hrと本体左側ハウジング3Hlとを突き合わすとともに、グリップ右側ハウジング5Hrとグリップ左側ハウジング5Hlとを突き合わせて、それぞれの突き合わせ部分を結合する。
【0054】
このとき、本体左側ハウジング3Hlに形成した挿通穴36の内側から突出している筒状軸56の先端部は、図9に示すように、グリップ右側ハウジング5Hrの段付穴52に挿入され、この状態で段部52aの中心孔52bに固定ビス(ボルトでもよい)を外方(図中左方)から挿入して筒状軸56の中心穴56aに螺合して締め付けるようになっている。これにより、本体右側ハウジング3Hrとグリップ右側ハウジング5Hr、および本体左側ハウジング3Hlとグリップ左側ハウジング5Hlは、連結部4において相互に固定されることになる。
【0055】
また、本体左側ハウジング3Hlと本体右側ハウジング3Hrとを突き合わせた際に、本体右側ハウジング3Hrの突起39が本体左側ハウジング3Hlの切欠部38aに密接嵌合されて、それら両ハウジング3Hl、3Hrの下部の位置合せが行われるようになっている。
【0056】
このように組み付けられた本体部3とグリップ部5とは、節度機構4を介してグリップ部5の伸展状態と折り畳み状態との間で相対回動可能に連結されることになる。そして、節度機構4を中心として本体部3とグリップ部5とが相対回動されることに伴って、回転リング10とクリックリング20とが相対回転される。すると、回転リング10の第1凸部12と、クリックリング20の第2凸部22(ふたコブ状凸部22aおよびクリック凸部22b)と、が圧接を伴って相互に乗り越え自在に移動されることになる。
【0057】
すなわち、図10に示すように、ヘアドライヤー1を使用するにあたってグリップ部5を伸展したときには、第1凸部12がふたコブ状凸部22aのクリック凸部22b側のコブ22cを乗り越えて、隣り合うふたコブ状凸部22a間の中央部に位置し、この状態でグリップ部5の伸展状態が保持される。この伸展状態では第1のストッパー部S1および第2のストッパー部S2も効いた状態となる。
【0058】
また、図11に示すように、ヘアドライヤー1の使用が終了してグリップ部5を折り畳んだときには、第1凸部12がクリック凸部22bを乗り越えてクリック感を得ることができる。このとき、第1凸部12がクリック凸部22bを乗り越えた位置で、第1のストッパー部S1および第2のストッパー部S2が効いて、回転リング10とクリックリング20との相対回転が停止し、グリップ部5の折り畳み状態が保持される。
【0059】
また、本実施形態では、クリックリング20が、これを回転方向に一体として設けたグリップ右側ハウジング5Hr(グリップ部5)よりも強度の高い材料で形成されるようになっている。すなわち、本体部3の左・右側ハウジング3Hl、3Hrおよびグリップ部5の左・右側ハウジング5Hl、5Hrは、合成樹脂を材料として射出成型などで一体成形されるが、クリックリング20も合成樹脂で一体成形する場合に、そのクリックリング20をグリップ部5の合成樹脂材料よりも強度が高くなる合成樹脂材料を用いて形成する。この場合、クリックリング20をアルミニウムなどの金属を用いて形成することもできるが、加工性やコスト面で強度の高い合成樹脂を用いて成形することが好ましい。
【0060】
さらに、クリックリング20はグリップ右側ハウジング5Hrに回転方向に一体として支持されるが、そのグリップ右側ハウジング5Hrには、図9に示すように、クリックリング20の外側(外周)に接触しない非接触部58が設けられている。すなわち、クリックリング20は、上述したように円形突出部51の内側に設けた凹所53に係合凸部23を嵌合させることにより、グリップ右側ハウジング5Hrと回転方向に一体化されるが、このとき、円形突出部51の外周は凹所53の先端面とほぼ同一面として非接触部58を形成し、クリックリング20の外周に接触する部分を無くしている。
【0061】
一方、このようにグリップ右側ハウジング5Hrにクリックリング20の非接触部58を設けた代わりに、本実施形態では、本体右側ハウジング3Hrにクリックリング20の外側を保持する保持部32aが設けられるようになっている。この保持部32aは、ボス部33を形成した円形凹部32を利用し、その円形凹部32の外周壁32aによって形成されている。
【0062】
さらに、本実施形態では、図11に示すように、本体部3とグリップ部5との間に、クリックリング20よりも外側に位置して、それら本体部3とグリップ部5との所定の回動状態を規制する外側の折り畳み用ストッパー部S3が設けられている。その折り畳み用ストッパー部S3は、本体部3のグリップ連結部31の前側下端部をさらに下方に向かって延設した突出部40と、グリップ部5の後側内面に設けられた受け座59と、によって構成され、グリップ部5を折り畳んだ際のストッパーとなる。
【0063】
突出部40は、図4および図6に示すように、本体右側ハウジング3Hrおよび本体左側ハウジング3Hlに、それぞれ分割された半割突出部40a、40bとして設けられ、それら両ハウジング3Hr、3Hlが突き合わされることによりそれぞれの半割状突出部40a、40bが結合されて、先端部が円弧状に突出する舌状の突出部40が形成される。
【0064】
一方、受け座59は、図7に示すように、グリップ右側ハウジング5Hrの後側内面に断面台形状として設けられる。このとき、受け座59は、グリップ右側ハウジング5Hrの深さと、グリップ左側ハウジング5Hlの深さとを合わせた高さに形成される。これにより、両ハウジング5Hr、5Hlを突き合わせることにより受け座59がグリップ部5の内側全幅に亘って配置され、グリップ部5を折り畳んだ際に突出部40を受け座59によって確実に受け止めることができるようになっている。なお、図1に示すように、グリップ部5の前側上部は突出部40の形状に沿った凹設形状部5aとなっている。
【0065】
なお、図10に示すように、グリップ部5を伸展した状態では、連結部31の後側下端部31aが、グリップ部5の後側上端部5bに当接されるようになっており、それら後側下端部31aと後側上端部5bとによって、グリップ部5の伸展時における外側の伸展用ストッパー部S4が構成される。
【0066】
ここで、本実施形態では、図12に示すように、回転リング10は、第1凸部12が設けられた部分10Kの径方向の肉厚t1が、その他の部分10Nの径方向の肉厚t2よりも厚く形成されて、t1>t2としてある。つまり、このように肉厚t1、t2に差をもたせるために、回転リング10の外周に沿った形状を円形状とするとともに、内周に沿った形状を、荷重Rの作用方向(図中上下方向)が短軸となる楕円状としてある。
【0067】
また、回転リング10の肉厚t2が薄くなる部分10Nの内側に、本体部3に設けたボス部33の係合溝33aに係止される係止部としての係止突起11が設けられている。このとき、第1凸部12および係止突起11は、回転リング10の周方向にそれぞれ複数箇所設けられる。
【0068】
すなわち、本実施形態では、第1凸部12は、回転リング10の中心を通る1つの直線L1上に2箇所設けられるとともに、係止突起11は、その直線L1に対してほぼ直角に配置され回転リング10の中心を通る1つの直線L2に2箇所設けられている。勿論、この場合は、第2凸部22を構成したふたコブ状凸部22aおよびクリック凸部22bは、一対の第1凸部12に対応してそれぞれ一対づつ設けられるとともに、ボス部3の係合溝33aも、係止突起11に対応して中心を通る1つの直線上に2箇所形成される。
【0069】
以上の構成により、本実施形態のヘアドライヤー1によれば、本体部3に固定された回転リング10と、グリップ部5に固定されたクリックリング20とが相対回転して、回転リング10の第1凸部12とクリックリング20の第2凸部22とが相互に乗り越える際に、それら第1凸部12と第2凸部22との圧接による荷重Rが回転リング10に入力される。
【0070】
このとき、本実施形態では、回転リング10の第1凸部12が設けられた部分10Kの径方向の肉厚t1を、その他の部分10Nの径方向の肉厚t2よりも厚くしてあるので、その肉厚t1を厚くした部分10Kで強度が高められて、回転リング10の反発力を増大させることができる。
【0071】
すなわち、図13に示すように、肉厚をほぼ一定とした従来の回転リング100の場合では、第1凸部12が設けられた部分10Kの内側と、係止突起11が設けられた部分10N近傍の外側にそれぞれ応力が集中した10Rと10Pがみられたが、本実施形態の回転リング10の場合では、肉厚t1を厚くした部分10Kの強度が高められることで、図14に示すように、この10Rと10P部分に集中されていた応力が低下されたことが理解される。
【0072】
したがって、グリップ部5の折り畳みの度に回転リング10の撓み変形が繰り返された場合にも、その繰り返し疲労により回転リング10が塑性変形されるのを、回転リング10の材料を剛性の高いものに変えることなく抑えることができる。これにより、従来と同様の材料を用いて同様の加工、たとえば射出成型などにより回転リング10を形成できるため、回転リング10の形成を容易にしつつ、グリップ部5にガタ付きが発生されるのを抑制できる。
【0073】
また、本実施形態によれば、回転リング10の肉厚t2が薄くなる部分10Nの内側に、その回転リング10を本体部3のボス部33に回転方向に係止するための係止突起11を設けたので、回転リング10に荷重Rが作用した際に発生する応力は肉厚t2が薄くなる部分10Nに集中されるのであるが、その応力を係止部を介してボス部33によって支持させることができる。これにより、回転リング10が荷重Rによって大きく変形されるのを抑制し、第1凸部12と第2凸部22とによる本来の機能、つまり、グリップ部5の保持およびクリック感の発生を確保できる。
【0074】
さらにまた、本実施形態によれば、第1凸部12および係止突起11を、回転リング10の周方向にそれぞれ複数箇所設けたので、荷重Rが作用する箇所および応力を支持する箇所の周方向の間隔を短くできるので、回転リング10の変形をさらに抑制できる。
【0075】
また、本実施形態によれば、第1凸部12および係止突起11を、回転リング10の中心を通るそれぞれに対応した1つの直線L1、L2上にそれぞれ2箇所づつ設けたので、荷重Rが作用する箇所および応力が集中する箇所が回転リング10の中心を挟んで対向位置となる。これにより、それら荷重Rおよび応力を、回転リング10の連続した環状部分で互いに打ち消すことができ、回転リング10に作用する偏心力、つまり、回転リング10をボス部33の片側に押し付ける力が抑制されるため、その回転リング10を本体部3で支持する支持性を向上することができる。
【0076】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能である。例えば、上記実施形態では、第1凸部12が設けられた部分10Kの径方向の肉厚t1と、その他の部分10Nの径方向の肉厚t2に差をもたせるために、回転リング10の外周に沿った形状を円形状とするとともに、内周に沿った形状を、荷重Rの作用方向(図中上下方向)が短軸となる楕円状としたが、図15の変形例に示すように、回転リング10の内周に沿った形状を円形状とし、外周に沿った形状を楕円状としてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、クイックリング22の第2凸部22は、グリップ部5を本体部3に対して伸展して使用状態としたときに、第1凸部12を中央部に受容するふたコブ状凸部22aと、このふたコブ状凸部22aに対してグリップ部5の折り畳み角度θ1だけ変位した位置に設けられるクリック凸部22bと、によって構成したが、図16および17に示す変形例のように、クリック凸部22bの位置にもふたコブ状凸部22aを設けて、使用位置と折り畳み位置の両位置で、第1凸部12を挟みこむように支持するようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、回転リング10を環状に形成したが、例えば半円状などその他の形状にしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、回転リング10を本体部3に回転方向に一体に設けるとともに、クリックリング20をグリップ部5に回転方向に一体に設けたが、それらの関係を逆にして、回転リング10をグリップ部5側、クリックリング20を本体部3側に設けることもできる。
【0080】
さらにまた、上記実施形態では、髪ケア装置をヘアドライヤー1として説明したが、髪ケア機能を有する本体部に折り畳み可能なグリップ部が連結された髪ケア装置であれば本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 ヘアドライヤー(髪ケア装置)
3 本体部
3Hr 本体ハウジング(一方の部材)
5 グリップ部
5Hr グリップハウジング(他方の部材)
10 回転リング(第1の係合体)
11 係止突起(係止部)
12 第1凸部
20 クリックリング(第2の係合体)
22 第2凸部
31 連結部
C 回動中心軸
R 荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ハウジングと、当該本体ハウジングの連結部に回動自在に取り付けられるグリップハウジングと、使用位置と折り畳み位置のそれぞれで前記グリップハウジングの前記本体ハウジングに対する回動を規制する節度機構と、を有し、
前記節度機構は、前記本体ハウジングおよびグリップハウジングのいずれか一方の部材に設けられ、回動中心軸に直交する方向に突設される第1凸部を有した第1の係合体と、前記第1の係合体に対して相対回動可能に他方の部材に設けられるとともに、前記第1凸部との圧接を伴って相互に乗り越え自在な第2凸部を有した第2の係合体と、を備えた髪ケア装置であって、
前記第1の係合体は、前記第1凸部が設けられた部分の径方向の肉厚が、その他の部分の径方向の肉厚よりも厚く形成されていることを特徴とする髪ケア装置。
【請求項2】
前記第1の係合体は、前記回動中心軸を中心とした環状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の髪ケア装置。
【請求項3】
前記第1の係合体の外周に前記第1凸部が設けられるとともに、前記第2の係合体が前記第1の係合体の外周に対向して配置され、
前記第2の係合体の前記第1の係合体の外周との対向部に、前記第2凸部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の髪ケア装置。
【請求項4】
前記第1の係合体の肉厚が薄くなる部分の内側に、当該第1の係合体を前記一方の部材に係止するための係止部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項に記載の髪ケア装置。
【請求項5】
前記第1凸部および係止部を、前記第1の係合体の周方向にそれぞれ複数箇所設けたことを特徴とする請求項4に記載の髪ケア装置。
【請求項6】
前記第1凸部および係止部を、前記第1の係合体の中心を通るそれぞれに対応した1つの直線上に2箇所づつ設けたことを特徴とする請求項4に記載の髪ケア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−67318(P2011−67318A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220012(P2009−220012)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】