説明

魚を捕獲するためのシステム及びその使用方法

【解決手段】 本発明は、魚を捕獲するために使用される気泡の壁を形成するシステムに関する。本システムは、少なくとも2つのボート(15)(16)と、2以上のチャンバと、吸引ポンプ(17)と、コンプレッサ(8)と、気泡の壁を形成するデバイス(7)とから構成される。デバイス(7)は、1以上の気泡形成チャンバと、1以上の誘導チャンバと、導管と、浮動管と、安定器とから構成され、気泡の「網」を形成することにより、魚をわなにかけて、その後捕獲することができる。従って、本発明は、経済的にも生態系的にも魚を捕獲するのに使用されることにより、従来の網を排除し、捕獲される非対象種の数量を減少する。他の利点は捕獲物の品質を改善することである。本システムを漁業及び養殖業で使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡の壁を形成することにより魚の群れを包囲することができ、魚を捕獲するために使用されるシステムに関する。ここでは、魚の群れが吸引ポンプによって捕獲される。従って、本発明は、漁業部門、すなわち従来の引き網を用いた漁業の代替として、使用されることが可能である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(日本国特開2000−236778号公報)は、海底でリング状に配置され、魚を包囲する円筒状の「網」を形成する気泡を送り出す潜水ロボット一式を使用することにより、潜水ロボットが従来の網を用いて魚を捕獲できることについて記載されている。本発明の場合、魚が、従来の網ではなく、吸引ポンプによって捕獲される。さらに、本発明は、ロボットを使用することを想定していないが、その代わり、気泡の「網」を形成するためのチャンバと浮力を制御する他のチャンバとを有するデバイスを使用することにより、気泡の「網」が動的である(網の深度を制御することができる)ということを保証する。一方、特許文献1では、気泡の「網」は静的である(ロボットは海底に留まる)。
【0003】
特許文献2(米国特許第4788928号明細書)は、気泡と水の混合物を下方に吐出する、ボートの竜骨(keel)に沿って位置付けられたノズル一式により、気泡の垂直壁を作り出すことが記載されている。これにより、ボートの一方の側面から海中に広げられた網の方に魚を追いやる。本発明は、本発明が魚を捕獲するために開放型の網ではなく、気泡の閉じた網を使用し、かつ、従来の網ではなく吸引ポンプを使用することにより、魚を包囲して従来の網を使用することを止める限りにおいて、特許文献2の主題とは相違する。
【0004】
特許文献3(米国出願公開第2006/174839号明細書)は、気泡を出すチューブ一式を使用し、視覚パターンにより魚を引き付ける気泡の壁を提供し、水を介して魚を引き付け、集める装置が記載されている。様々なエレメントから構成される異なるシステムは別にして、本発明はまた、特許文献3の主題に関して異なる目的を有する。これは、視覚パターンにより魚を引き付けることを目的とせず、その代わり、魚を捕獲することを要求するからである。特許文献3の内容は別にして、本発明は、魚「網」を構成要素とし、魚を捕獲する吸引ポンプを含む。
【0005】
特許文献1は、静的な機構に関するが、水柱の中の魚の群れの動きに随伴することはできない。その機構は非常に複雑であり、取得時、及び機械の故障又は紛失の場合に、費用のかかる技術である。魚を捕獲する従来の網を利用するということは、捕獲量の観点から不利な点である。
【0006】
特許文献2に記載されたシステムのみは、魚がボートの下から逃げることを防ぐと共に、引き網を誘導する。このシステムは、船体に、さらに、新規かつ全体的に改良されたボートの建造に、重大な変化を引き起こす。気泡は、重力に反して発射され、非常に大きな圧力と気泡の壁を形成するために結果として生じるエネルギー消費とを示唆する。さらに、魚は、伝統的な魚網を使用することによって捕獲される。従って、捕獲される魚の品質や、漁獲高の採算性という生態学上の関心事に関する問題は、未だ解決されずにいる。
【0007】
特許文献3のみは、深度を制御できるのではなく、又は魚を捕獲できるのではなく、魚を引き付けることができる技術を示す。
【0008】
本発明のシステムの使用に起因する主な利点は、魚を捕獲する現存する様々な方法と比較すると、システムが、吸引ポンプと、気泡の「網」を形成するチャンバを有するデバイスと、浮力を制御する他のデバイスとを使用することにより、方法全体の効果を増大させるという点である。これらの事実は、デバイスが上昇及び下降する深度や速度を制御することを可能にさせる。気泡の「網」が閉じられて開放されていないということは、漁獲高を最大化し、魚が逃げるのを防ぐことを可能にさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】日本国特開2000−236778号公報
【特許文献2】米国特許第4788928号明細書
【特許文献3】米国出願公開第2006/174839号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、魚の群れをわなにかけ、捕獲することができるシステムに関する。本システムは、少なくとも、2つのボート、2以上のチャンバ、吸引ポンプ、コンプレッサ、そして気泡の壁を形成するデバイスによって構成され、気泡を形成するチャンバ、導管(conducting tube)、浮動管(floating tube)及び安定器(ballast)を備え、気泡の網を形成することによって魚をわなにかける。
【0011】
1.魚を捕獲するシステム
本発明のシステムは、少なくとも2つのボートを備える。ボートの一つは、少なくとも中型(15)である必要がある一方、そのボートにより運ぶことができるように、残りのボートはより小型(16)とすることができる。小型ボートは、魚の群れの周囲でデバイスを操作し、放つことに関与する。
【0012】
大きなボートは、船室を有する近海漁業用、又は沿岸漁業用に使用される種類のモータ付ボートであるべきである。そのボートは、全長9m以上であるべきである。漁業形式は、(日々の潮流に従い、比較的沿岸に近い)引き網型漁業と同じである。このボートは、少なくとも、5バール(500kPa)より高い圧力の、電動式又はディーゼルエンジンのコンプレッサ(8)を運ぶ能力を備えるべきである。すなわち、このボートは、利用できる少なくとも10mの空間と、ボートの船倉(hold)に接続される吸引ポンプ(17)とを備えるべきである。この吸引ポンプ(17)により、法定最小サイズの魚を分別できると同時に、吸引された水を排出できる。船倉は、操作や捕獲物の分別のために、適合させなければならない。ボートのデッキはまた、気泡を貯め、デバイス(7)を形成するリール(reel)を支持し、小型ボート(16)を動かすために間隔をあけることができなければならない。
【0013】
大きなボートと協同して、小型ボートは、魚の群れの周囲にデバイスを設置し、その群れを包囲するのに役立つ。これらの小型ボートは、モータが取り付けられ、そして、すくなとも一人を運ぶことができる能力を最低限有するべきである。ボートの端部の一方に、デバイス(7)をボートに連結するケーブルが存在する。このケーブルは、本システムを誘導し、そして、表面に錘重(perpendicular)をつるしたまま、10m以上の長さである。
【0014】
吸引ポンプ(17)は、真空で稼動する少なくとも1つのタンク、好ましくは2つのタンクから構成され、タンクの一方が魚を捕獲することができる共に、他方が真空を生成し、また逆の場合も同様にして、漁獲高の収益性を最大化する。この吸引ポンプは、魚をボートの船倉に導くように、水と共に魚を吸い込み、複数のタンクの間で交互に交代させることを可能にさせる。船倉において一度、商業価値を有する魚は、海に戻される水と小魚と分別される。この分別は、魚がそのサイズにより選別可能なふるいを有するベルトコンベヤによって行われる。吸引ポンプの能力は、捕獲される魚の量とサイズにより変化する。すなわち、吸引ポンプは、伝統的な引き網を使用することによって常時捕獲される魚の量を少なくとも吸引できなければならない。例えば、その量は、投網毎に、20kg〜1トンの魚である。
【0015】
吸引ポンプ(17)の機能の一つは、捕獲が許される法定最小サイズの捕獲物の選別を保証することである。法律は、捕獲可能な各対象種の最小サイズを規定する。この最小サイズは、ボートにより漁業活動が行われる漁業領域に対して責任を有する事業体によって規定される。従って、吸引ポンプは、見込まれる最良状態において魚を捕獲し、かつ、網又はふるいによって所定サイズの捕獲した魚を分別する能力を有さなければならない。捕獲されたが、許可されたサイズよりも小さな魚は、吸引された水と共に再び海に戻される。
【0016】
例として、以下の表には、捕獲される魚に対するポルトガルの法律によって許可された魚種及びそれに対応する最小寸法が記載されている(表1)。
【0017】
表1−ポルトガルにおける引き網漁の対象種(出典:www.dgpescas.pt)
【表1】

【0018】
例えば、ニシイワシ(Sardine)の場合、捕獲される魚の法定最小サイズは11cmであり、所定のサイズの魚を選別するふるいにより、11cm以下のサイズのニシイワシを水と共に海に戻せ、それより大きいニシイワシを残すことができる必要がある。
【0019】
本発明によれば、コンプレッサ(8)は、環境に有害な空気を追い出すことなく、気泡を形成する空気の供給を維持する能力を有する。従って、本目的のために、圧力は5バール(500kPa)よりも大きくなければならず、理想の圧力は10バール(1MPa)より高い。コンプレッサは電動式又はディーゼルエンジンのいずれかである。コンプレッサの選択は、これら全ての機構が気泡の壁の持続性及び厚さを維持できるようにするために、孔のサイズ及び間隔により変わる。コンプレッサの能力は、デバイスの長さ及び孔のサイズに正比例しなければならない。また、上部チャンバへの空気の単一の入口(4.1)又は2つの入口(4.1及び4.2)は、コンプレッサの選択に影響を与える。これは、双対の入口がコンプレッサに対して負荷を少なくするからである。
【0020】
また、本発明のシステムは、気泡を形成する構成要素一式−気泡形成デバイス(7)−を包み、気泡形成デバイス(7)は、1以上の気泡形成チャンバ(2)と、導管(4)と、1〜2000本の浮動管(5)と、1〜10個の間で少なくとも1つの安定器(6)とから構成される。この構成要素一式はセグメント化された領域を画定し、これらのセグメントの各々は2以上のチャンバと、上部チャンバと、下部チャンバとから構成される。各セグメントのサイズは、所望の筐体のサイズと対象種とにより変化し、1〜1000mの範囲で変動可能である。
【0021】
対のチャンバ(2及び3)は、気泡の壁(網)を形成し、水柱の中でのシステムの位置を制御するのに役立つ。従って、チャンバの一つ(2)は、気泡を垂直に放出するように、高い位置に位置付けられなければならない。これは、システムを下方に移動させるためである。他のチャンバ(3)は、安定器システム及び浮力を制御するシステムが気泡形成チャンバを妨げないように、低い位置になければならない。
【0022】
上部チャンバは、各セグメント中の孔を介して空気を導くことに関与する。上部チャンバ(2)中の空気の吸入は、対象種と、気泡の壁(14)のさらに厚い厚さを有する必要性とにより、一方の入口(4.1)又は両方の入口(4.1及び4.2)のいずれかを介して行われる。単に一方の側での単一の結合(4.1)は、空気がチャンバ全体を通過するのを強制することにより、空気が全ての気孔に到達する。従って、単一の入口(4.1)は、2つの入口(4.1及び4.2)と比較して厚くならない壁を達成することができる。空気がチャンバの両側から入るとき、チャンバの中央で衝突することから、より薄くかつ安定した壁をもたらす。この点は、より攻撃的な対象種又は海の悪条件(例えば、深海流)に適している。
【0023】
上部チャンバ(2)は複数の孔(1)を有し、気泡の壁を形成する空気がその孔(1)を介して出る。これらの孔は、魚が逃げるのを防ぐように、気泡の壁の持続性及び密度を保証する大きさにされる。このため、孔は、1μm〜20cmのサイズで変化するが、好ましくは1mm〜2cmの大きさに調整され、そして、1μm〜50mで変動可能な間隔で、好ましくは5mm〜50cmの間で間隔があけられる。これら全てのパラメータは、深度と、深海流と、対象種と、使用されるコンプレッサの種類と、関与する船の数とにより変化する。
【0024】
下部チャンバ(3)は、システムの機能に対して不可欠な複数のデバイス、例えば、少なくとも2つの浮動管(5)と、単一の入口(4.1)の場合は上部チャンバと同じ数の、あるいは、2つの入口(4.1及び4.2)の場合は2倍の数の導管(4)と、少なくとも1つの安定器(6)等のデバイスを一つにまとめる。下部チャンバは、システムが機能するように、全てのデバイスを一つにまとめる。すなわち、下部チャンバは、浮力及び空気を各上部チャンバに導くのに関与する導管(上部チャンバ毎の少なくとも一つの導管)を制御することを可能にする、浮動管及び安定器を一つにまとめる。
【0025】
導管(4)は、圧縮空気を用いるホースによって形成され、気泡形成装置の個々のセグメントの上部チャンバ全てに空気を送ることに関与する。導管の数は、単一の入口(4.1)又は2つの入口(4.1及び4.2)のように、さらに厚い厚さを形成するために、必要不可欠な複数のセグメントと、各セグメントに対して必要な空気流入量とにより変化する。すなわち、同じ厚さが少ないときは単一の入口が使用され、同じ厚さが多いときは2つの入口が使用される。換言すれば、空気の吸引を、単一方向又は双方向で達成することができる。使用される材料は、高圧に耐えることが可能で、柔軟性を有することが必要である。例えば、PVC又は他の類似材料から作られる空気圧ホース等である。
【0026】
浮動管は、例えば布ホース(canvas hose)等のかなり柔軟で伸縮性を有する材料から作られる。魚を捕獲する場所及び手順の必要性に従い、水の出入り及び空気の出入りの制御を可能にし、デバイス全体が浮き沈みできるように、浮動管はデバイスの始めから終わりまで連続し、浮動管の個々の開口は常に大きなボートの一つにある。本実施態様は、水柱中でデバイスの上昇/下降を制御することを可能にさせる。運搬する積荷により浮力を制御するために、この機構は潜水艦及び船舶のバラストタンクの機能に基づいている。
【0027】
安定器(6)及び浮動管(5)は、水柱中での浮力を制御するのに役立つ。水よりも密度が濃い材料から作られた安定器は、機構全体に安定性をもたらす観点で、気泡形成装置に重量を加える。安定器に使用可能な材料の例として、鉛やセメントが挙げられる。
【0028】
気泡形成デバイス(7)の各部は、導管(4)を通じて空気が個別に供給される。このセグメント化は、孔(1)を通じて放出される空気が気泡の壁の持続性を保証する十分な圧力を有することを保証するために重要である。また、この点は重要であると同時に、気泡の壁が形成された後でデバイスを誘導する。これは、気泡の壁の内側に魚を追い込み、デバイスにより作られた包囲網の径を縮小することによって、魚の群れを効果的に追い込むことがないセグメントを切り離すことを可能にするからである。これにより、操作可能なセグメントに対してコンプレッサから空気の安定供給がもたらされる。
【0029】
2.魚を捕獲する方法
魚の群れを包囲するために、気泡形成デバイス(7)が小型ボート(16)によって投げ込まれる。魚が逃げないのと同時に、デバイスが沈むことを保証するために、気泡形成デバイス(7)は、魚の群れを包囲する間、十分過剰なマージンを持たせるべきである。
【0030】
その後、デバイスが魚の群れよりも深くまで沈むことを保証するために、水が浮動管(5)に充填される。デバイスが、魚の群れの下、5〜20mになった時点で、浮動管の内側に空気/水の平衡を保つことによって安定化される(中立浮動)。この点で、拡散チャンバ(2)に対する空気供給が開始されることにより、魚をわなにかけることが可能な気泡(14)を形成する。気泡の壁によって包囲される領域の径は次第に縮小され、魚を水柱の中で上昇させる。デバイス(7)が、好ましくは、魚の群れの下、5〜20mになるように、空気が浮動管(5)に充填される。魚が所望の深度になるやいなや、少なくとも1つの吸引ポンプ(17)を使用することによって魚を捕獲することができる。
【0031】
デバイス(7)が上昇/下降する深度及び速度が水面に対する魚の群れの位置により制御され、浮動管(5)によってその制御が有効にされる。これにより、漁業操作全体に対する良好な操縦制御を可能にする。魚は、ボートの伝統的な装置(ソナー、レーダーその他の装置)によって監視される。魚がさらに深くに動くやいなや、デバイスが、魚の群れの下、5〜20mの深度に維持されることを保証するために、浮動管に水が充填される。
【0032】
中立浮動は、誘導チャンバ(又は下部チャンバ)(3)と接続する安定器(6)と浮動管(5)との間の平衡によって達成される。そして、デバイス(7)が位置付けられる深度固有の圧力によって、デバイスは、水を入れて空気を排出することにより下降し、空気を入れて水を排出することにより上昇することができる。
【0033】
本発明のシステムに伝統的な魚網が使用されないことにより、様々なレベルで多くの利点、すなわち、漁業部門が直面する重大な問題の一つに対する解決策を示す。漁業部門が直面する重大な問題の一つに対する解決策とは、選択的に、対象種を捕獲する一方、付随する捕獲物、すなわち、絶滅危惧種であるか否かを問わず、捕獲する非対象種を減少することである。
【0034】
さらに、デバイス(7)を紛失した場合、デバイスは生態系に危険を与えない。これは、このような事態が発生しても、デバイスはすぐに沈み、従って実在しない引き網を構成しないからである。すなわち、デバイスを失った後、デバイスはもはや魚を捕獲することができず、又は環境に甚大な被害を引き起こさないからである。この点は、従来の網を失ったとき、従来の網が海底に沈むために(海底に沈むには、何ヶ月もかかり、かつ何百もの魚を殺す)、十分重くなるまで無差別に魚を捕獲する従来の網と全く対照的である。
【0035】
捕獲物の品質の観点から、本発明は、品質に関して顕著な改善を保証している。これは、本発明が従来の網の運搬操作、すなわち魚にとってかなり不快で、捕獲物に甚大なダメージを引き起こす工程を含んでいないからである。従って、本発明のシステムによれば、魚は吸引ポンプ(17)によって集められ、従来の網と運搬物との激しい接触を除くことができる。
【0036】
人間の操作が無くなることにより、魚の品質及び新鮮さにおいて顕著な改善をもたらす。魚は海で捕獲され、直接漁業ボート(15)の船倉に向けられるので、うろこがはがされることが最小となり、急死させることにより、魚に対するストレスを少なくすることができ、そして、新鮮な魚という品質を改善する。
【0037】
本発明の使用に関する費用は、網を購入し、メンテナンスを行うことよりも必要としない。同様に、本発明がセグメント化された装置であるということは、経済的な利点でもある。これは、最新技術と同様に、手作業で網を修理する必要があるとき、漁業中、ボートは修理のために休止する必要がないからである。ボートは、被害を受けたセグメントを換えることが必要であるだけである。従って、本システムは、複数のセクションで修理を受けられ、被害を受けた又は紛失したセクションを換えるだけである。
【0038】
本発明のシステムは、網によって占められる空間を考慮すると、様々な他の従来技術と比較して、相対的に小さな空間をボート上に占める。本デバイスは、ボート(15)のデッキ上に位置付けられたドラムの周りに巻きつけられ、保管される。そして、伝統的な引き網技術で、網のマスターラインを巻き取るのみである。このドラムは、1500mまでのデバイスまで巻き取ることができる。
【0039】
これら全ての実施態様は、生態系レベル及び経済レベルで利点を示すことから、生態系をかなり顕著に救済する。
【0040】
本発明はまた、高額な購入費用及び修理費用とは別に、従来の網の使用により海洋生態系及び捕獲物の品質に対して生じる従来の網が有する問題を解決する。従って、本発明は利点を示すと同時に、引き網漁業に置き換わる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】気泡の壁を形成するセクションを上から見た、本発明のシステムの概要図。
【図2】コンプレッサと本発明のシステムとの間の接続を示す概要図。
【図3】本発明のシステムの2つのシステムの間の接続を示す概要図。
【図4】操業中の本発明のシステムの概要図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、気泡の壁を形成するセクションを上から見た、本発明のシステムの概要図である。図1は、気泡の壁を形成する複数の孔(1)、上部チャンバ(2)、下部チャンバ(3)、導管(4)、浮動管(5)、安定器(6)、及び気泡形成デバイス(7)を示している。
【0043】
図2は、コンプレッサと本発明のシステムとの間の接続を示す概要図である。図2は、複数の孔(1)、上部チャンバ(2)、下部チャンバ(3)、導管(4)、浮動管(5)、安定器(6)、気泡形成デバイス(7)、コンプレッサ(8)、各セクション及び浮動管への空気を調節する穴(9)、浮動管用の水中ポンプ(10)、水が入るのを調節する穴(11)、及び水の排出を調節する穴(12)を示している。
【0044】
図3は、本発明のシステムの2つのシステムの間の接続を示す概要図である。図3は、複数の孔(1)、上部チャンバ(2)、下部チャンバ(3)、単一の入口(4.1)又は2つの入口(4.1及び4.2)を備える導管(4)、そして、各セクションに対して、浮動管(5)、安定器(6)、気泡形成デバイス(7)、そのセクションに対する導管(4.1又は18)、及び2つのセクションの間の接続器(13)を示している。
【0045】
図4は、操業中の2つの時点、すなわち、気泡の壁が形成され始めた時点(4a)及び吸引ポンプによって捕獲している時点における本発明のシステムの概要図である。図4は、気泡形成デバイス(7)、コンプレッサ(8)、気泡の壁(14)、メインボート(15)、補助ボート(16)(一般的に、モーターボート)、及び吸引ポンプ(17)を示している。
【0046】
1.魚を捕獲するシステム
本発明のシステムは、少なくとも2つのボート(15)(16)と、捕獲した魚を中に吸引するチャンバ/タンクを備える吸引ポンプ(17)と、コンプレッサ(8)と、気泡の壁を形成するデバイス(7)とから構成され、
気泡の壁を形成するデバイス(7)は、
1)1以上の気泡形成チャンバ、上部又は拡散チャンバ(2)、下部又は誘導チャンバ(3)と、
2)導管(4)と、
3)浮動管(5)と
4)安定器(6)と
によって構成される。
【0047】
本発明のシステムは複数のセグメントに分割され、セグメントの各々は、上部又は拡散チャンバ(2)、下部又は誘導チャンバ(3)と、導管(4)と、浮動管(5)と、安定器(6)とを備える。
【0048】
2.魚を捕獲する方法
装置の全ては、大きなボート(15)に位置付けられる。小型ボート(16)は、デバイスの一端を有する。そして、大きなボートと協同して、完全に魚の群れを包囲し、デバイスを魚の群れの周囲に配置することに関与する。
デバイスは、水中に放たれ、好ましくはらせん状に配置される。そして、円形状になる。装置のこの配置は、包囲網の径が魚の群れに関して縮小される方法で行われ、魚を捕獲する方法を容易にする。
【0049】
次に、デバイスが、魚の群れの下、約5〜20mに浮動管(5)が到達するまで、水が浮動管(5)に充填される。この時点で、デバイスは、浮動管の内側の空気/水の平衡を保つことによって安定化される(中立浮動)。
【0050】
その後、魚をわなにかけることができる気泡(14)を形成するために、上部又は拡散チャンバ(2)に空気が供給される。
【0051】
気泡の壁(14)によって形成された包囲網の径が次第に縮小されると、魚が水柱中で上昇し、空気が浮動管(5)に充填されることにより、気泡形成デバイスが水柱の中で上昇することができ、同様に魚も上昇させることを強制し、捕獲を容易にする。
【0052】
気泡形成デバイス(7)によって包囲された後、船倉に商業的関心の魚を取り込むと同時に、小魚は吸引された水と共に海に直接戻す吸引ポンプ(17)によって、魚が捕獲される。
【0053】
(実施例)
本発明は、好ましくは漁業に向けられる。理想的には、本発明は、小型ボートに補助された中型ボート、例えばモーターボート等で機能する。2つのチャンバを有する吸引ポンプは、約25m/12バールの空気出力を有するコンプレッサを備える中型ボートに取り付けられる。気泡形成装置は8セクションから構成され、各セクションが100mである。
【0054】
空気出力孔は、1mm幅で、約2cm間隔で離間している。
【0055】
約10/15mで位置付けられた魚の群れに対して、約160/180mの径で深度25mに到達するように、かつ、らせん状にデバイスを放った。次に、浮動管を用いてデバイスを安定化した。
【0056】
気泡形成デバイスが安定化された後、同時に全てのセクションに空気を接続した。空気が供給開始されるやいなや、吸引ポンプを稼働開始するために準備した。
【0057】
次に、2つのボートを用いて、操作者により、装置によって形成されたらせん状の包囲網の径を縮小し始めた。これにより、魚をより狭い領域に閉じ込めて、魚の群れの深度に従って装置の深度を適応させる。気泡形成装置は、魚の群れよりも決して高い位置にすべきではない。
【0058】
魚の群れが予定した最小領域に閉じ込められるやいなや、吸引ポンプにより魚の抽出が開始される。本工程は、魚が逃げるのを防ぐため、できる限り早期に開始される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚を捕獲するシステムであって、
少なくとも2つのボート(15)(16)と、2以上のチャンバ(2)(3)と、捕獲された魚を保管するメインボート(15)の船倉に接続された吸引ポンプ(17)と、500kPa以上の圧力を有する電動又はディーゼルエンジンのコンプレッサ(8)と、気泡を形成する1以上のチャンバ(2)、導管(4)、浮動管(5)及び安定器(6)でつくられた気泡の壁を形成するデバイス(7)とから構成されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1記載の魚を捕獲するシステムであって、
前記気泡の壁を形成するデバイス(7)は、相互に接続する独立した複数個のセグメントを備え、
前記セグメントの各々は、空気を複数の孔(1)に拡散する上部チャンバ又は拡散器(2)と、前記セグメント間で空気を誘導する下部チャンバ又は誘導器(3)と、導管(4)と、浮動管(5)(6)とを備え、かつ、単一の入口(4.1)又は2つの入口(4.1及び4.2)、及び前記浮動管(5)を有する前記導管(4)に接続する前記コンプレッサ(8)から、独立して個別に制御可能な方法で空気を供給する空気供給デバイスを備えることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2記載の魚を捕獲するシステムであって、
前記下部チャンバ又は誘導器(3)は、所望の安定性及び密度を提供する高密度材料の安定器(6)、及び中に水及び空気が出入りする浮動管(5)等の浮力に関与するデバイスを備え、
さらに、前記下部チャンバ又は誘導器(3)は、空気を各セクションに導く導管を備えることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3記載のシステムであって、
前記浮力に関与するデバイスは、前記下部チャンバ又は誘導器に接続され、
前記安定器は、前記デバイスが水柱中で、負の浮力を得て沈むことを可能にし、
前記浮動管は、水の出入り及び空気の出入りを介して、前記デバイスが水柱中で、負の浮力を得て沈むことを可能にし、又は、正の浮力を得て上昇することを可能にすることを特徴とするシステム。
【請求項5】
魚を捕獲する方法であって、
a)大きなボート(15)を補助する小型ボート(16)が、魚の群れを周回し、前記魚の群れを包囲し、円形状、好ましくはらせん状にデバイス(7)を配置することにより、前記魚の群れを囲む領域を縮小し、
b)次に、水が浮動管(5)に充填され、前記魚の群れに関して前記デバイスがより深い深度、略5〜20mに達し、
c)この時点で、上部チャンバ又は拡散器(2)に空気が供給されることにより、前記魚をわなにかける気泡を形成し、
d)前記気泡の壁の大きさが縮小すると、空気が前記浮動管(5)に充填されることにより、前記デバイスと水柱中の前記魚を上昇させ、
e)次に、前記メインボート(15)の船倉に接続された吸引ポンプ(17)を用いて前記魚を捕獲することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項記載の魚を捕獲するシステムの使用であって、
前記システムは、好ましくは、漁業において、魚に向けられて魚を包囲するためにボートで使用された従来の網の代替として使用され、養殖業において、気泡の壁の使用でタンクを細分化し、個別のタンクに分離し、タンク中の魚を捕獲する用途で使用されることを特徴とする使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2011−525372(P2011−525372A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515697(P2011−515697)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052673
【国際公開番号】WO2009/156940
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(510338329)インスティチュート ポリテクニコ デ レイリア (1)
【Fターム(参考)】