説明

魚釣用スピニングリ−ル

【課題】 ガイド軸のガタ発生を抑制して異音の発生を防止し、更に、ガイド軸のメンテナンス性を向上させた魚釣用スピニングリ−ルを提供することである。
【解決手段】 スプ−ル軸18の後端にオシレ−ト機構の摺動体5がビス19で取り付けられ、摺動体5の下側にはトラバ−スカム軸20の溝に係合する係合子21が収納され、トラバ−スカム軸20の先端には歯車23が固定されて歯車23はピニオン3aに噛合されている。
摺動体5の下端にガイド軸24が挿通される横溝5bが形成されている。
ガイド軸24は先端が筐体1の前部1c内の凹部1iに挿入され、後側は筐体1の後部1fの透孔1jに挿入されて後端24aはカバ−部材7の内側に形成された可撓性を有する舌片状の係止部7aに当接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リ−ル本体に装着したハンドルの回転操作運動をスプ−ルの前後往復動に変換するオシレ−ト機構を備えた魚釣用スピニングリ−ルの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚釣用スピニングリ−ルのリ−ル本体内には、ハンドルの回転操作運動をスプ−ルの前後往復動に変換するオシレ−ト機構が設けられている。
このオシレ−ト機構がハンドルの回転操作運動で前後動する摺動体を介して、先端にスプ−ルを設けたスプ−ル軸を前後方向に往復動させる間、ハンドルに連動回転するロ−タの釣糸案内部を介してスプ−ルに釣糸が巻回される。
このようなオシレ−ト機構には、トラバ−スカム軸を用いるもの(例えば特許文献1)と、減速ギヤを用いるもの(例えば特許文献2)が知られている。
いずれのオシレ−ト機構もハンドルからの動力をスプ−ル軸に伝達する摺動体がスプ−ル軸に一体的に連結され、ガイド軸により前後方向に沿って直線状に案内される。
このように摺動体を案内するガイド軸は、トラバ−スカム軸と平行になるようにリ−ル本体に挿入され、リ−ル本体にネジ止めされる係止部材により抜け落ちを阻止されている。
また、減速ギヤを用いるものでは、ガイド軸の外周面に形成した環状溝にC型やE型の係止部材を装着し、この係止部材をリ−ル本体の隔壁に係止させることでガイド軸が抜け止めされている。
ところで、このような魚釣用スピニングリ−ルは、ガイド軸をメンテナンスする場合、或はガイド軸を交換する場合に、リ−ル本体にネジ止め固定されているカバ−等の部材を取り外した後、係止部材を取り外してガイド軸をリ−ル本体から取り出す必要がある。
このため、係止部材を紛失し、或は破損してしまう恐れがあることに加え、部品点数が多く、取り付けおよび取り外しに極めて面倒な作業を必要とする問題がある。
さらに、リ−ル本体とガイド軸の寸法精度のバラツキによってガイド軸にガタが発生するとオシレ−ト機構が作動中に異音が発生する。
ガイド軸のガタをなくすために、ガイド軸をリ−ル本体に圧入やネジ止めで固定するとガイド軸のメンテナンス性が悪くなるという問題がある。
【特許文献1】実開平5−34861号公報
【特許文献2】特開2004−81077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする問題点は、特許文献1、特許文献2に開示されているガイド軸の支持構造では部品の寸法公差や組み付け精度によってガタが発生し、釣糸巻き取り中に異音が発生したり、ガイド軸のメンテナンス性が悪くなるという問題がある。
【0004】
本発明の目的は前記欠点に鑑み、ガイド軸のガタ発生を抑制して異音の発生を防止し、更に、ガイド軸のメンテナンス性を向上させた魚釣用スピニングリ−ルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1は、ハンドルの回転をスプ−ル軸の前後動に変換する該スプ−ル軸の後部に連結した摺動体をリ−ル本体に取り付けたガイド軸で摺動案内可能とした魚釣用スピニングリ−ルにおいて、前記ガイド軸の端部をリ−ル本体に取り付けられるカバ−部材の内側に一体形成された可撓性を有する係止部によって前記リ−ル本体に支持したことを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1によれば、ガイド軸の端部をリ−ル本体に取り付けられるカバ−部材の内側に一体形成された可撓性を有する係止部によってリ−ル本体に支持したので、ガイド軸をリ−ル本体に固定するための専用の部材を設ける必要がなく、部品点数および組み立て工程の減少により製造コストが低減されると共に、魚釣用スピニングリ−ルが軽量化され、更に、ガイド軸のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
また、ガイド軸の端部をカバ−部材の内側に一体形成された可撓性を有する係止部によってリ−ル本体に支持したので、リ−ル本体とガイド軸の寸法精度のバラツキによって発生するガイド軸の組み付けガタが抑制されてオシレ−ト機構の異音発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
スプ−ル軸18の後端にオシレ−ト機構の摺動体5がビス19で取り付けられている。
摺動体5の下側には、トラバ−スカム軸20と直交する位置に透孔5aが形成され、透孔5a内にトラバ−スカム軸20の溝に係合する係合子21が収納されてカバ−22で覆われている。
摺動体5の下端にガイド軸24が挿通される横溝5bが形成されている。
トラバ−スカム軸20の先端には歯車23が固定され、歯車23はピニオン3aに噛合されている。
トラバ−スカム軸20は先端が筐体1の前部1c内の凹部1eに挿入され、後側には周溝20aと小径部20bが形成され、周溝20a部分は筐体1の後部1fの凹部1gに、小径部20bは筐体1の透孔1hに挿入される。
周溝20aには内径が周溝20aの外周に嵌まる寸法で外径が凹部1gの内径に嵌まる寸法の係止部材6の一側部6aが嵌合され、小径部20bの端面には係止部材6の他側面6bが当接されて係止部材6で小径部20bの軸方向と筐体1の後部1fを挟み込むように当接されている。
ガイド軸24は先端が筐体1の前部1c内の凹部1iに挿入され、後側は筐体1の後部1fの透孔1jに挿入されて後端24aはカバ−部材7の内側に形成された可撓性を有する舌片状の係止部7aに当接されている。
【実施例1】
【0008】
以下、図示の実施例によって本発明を説明すると、図1から図4は第1実施例で、図1は魚釣用スピニングリ−ルの筐体を断面にした要部断面側面図、図2は図1の要部拡大断面側面図、図3は図2の要部拡大断面側面図とその一部拡大断面側面図、図4はカバ−部材の(a)内側正面図で(b)一部断面側面図である。
【0009】
魚釣用スピニングリ−ルは、リ−ル本体Aは箱形の筐体1と図示しない蓋体で構成され、筐体1の開口部1aが図示しない蓋体で閉塞されている。
筐体1の上部には脚部1bが形成されている。
筐体1と図示しない蓋体で保持された図示しない軸受で駆動歯車2の駆動軸2aが軸承されてハンドル10で駆動回転される。
筐体1の前部1c内に軸方向に長い凹部1dが形成されて凹部1d内に軸受11と大径のスリ−ブ12と小径のスリ−ブ13と軸受14で保持されて軸受11、14で回転軸筒3が回転自在に支持されている。
回転軸筒3の基端に一体的にピニオン3aが形成されて駆動歯車2に噛合されている。
回転軸筒3の軸受14より前側にスリ−ブ15が嵌合され、回転軸筒3の前側にロ−タ4の中心軸筒4aが回り止め嵌合されてナット16で取り付けられている。
【0010】
回転軸筒3の中心透孔3b内には前側にスプ−ル17が取り付けられたスプ−ル軸18が前後往復動可能に摺動自在に挿入されている。
スプ−ル17は前側鍔部17aと図示しない釣糸が巻回される釣糸巻回胴部17bと円筒部17cを備えた後側鍔部17dとで形成されている。
スプ−ル軸18の後端にオシレ−ト機構の摺動体5がビス19で取り付けられている。
摺動体5の下側には、トラバ−スカム軸20と直交する位置に透孔5aが形成され、透孔5a内にトラバ−スカム軸20の溝に係合する係合子21が収納されてカバ−22で覆われている。
摺動体5の下端にガイド軸24が挿通される横溝5bが形成されている。
トラバ−スカム軸20の先端には歯車23が固定され、歯車23はピニオン3aに噛合されている。
トラバ−スカム軸20は先端が筐体1の前部1c内の凹部1eに挿入され、後側には周溝20aと小径部20bが形成されて周溝20a部分は筐体1の後部1fの凹部1gに、小径部20bは筐体1の透孔1hに挿入される。
周溝20aには内径が周溝20aの外周に嵌まる寸法で外径が凹部1gの内径に嵌まる寸法の係止部材6の一側部6aが嵌合され、小径部20bの端面には係止部材6の他側面6bが当接されて係止部材6で小径部20bの軸方向と筐体1の後部1fを挟み込むように当接されている。
係止部材6の一側部6aと他側面6bは連結部6cで一体に連結されている。
【0011】
ガイド軸24は先端が筐体1の前部1c内の凹部1iに挿入され、後側は筐体1の後部1fの透孔1jに挿入されて後端24aはカバ−部材7の内側に形成された可撓性を有する舌片状の係止部7aに当接されている。
カバ−部材7はカップ状で筐体1の後部1fと図示しない蓋体の後部に嵌められ、内側に複数のボス部7b、7cが形成されてボス部7b、7cの中心にビス25を挿通する透孔7d、7eが穿設されている。
筐体1の後部1fにはボス部7bと位置が一致するボス部1kとネジ孔1mが形成され、図示しない蓋体の後部にもボス部7cと位置が一致するボス部が形成されている。
リ−ル本体Aの後部にカバ−部材7が取り付けられると、カバ−部材7の内側に形成された可撓性を有する舌片状の係止部7aでガイド軸24の後端が押圧される。
【0012】
魚釣用スピニングリ−ルの動作は、図示しない釣糸がスプ−ル17に巻回される方向にハンドル10が回転されると、駆動歯車2が回転されてピニオン3aを介して回転軸筒3とロ−タ4が回転される。
回転軸筒3が回転されると、トラバ−スカム軸20が回転されて摺動体5が前後往復動し、スプ−ル軸18とスプ−ル17が前後方向に直線往復動される。
【0013】
前記のように魚釣用スピニングリ−ルが構成されると、ガイド軸24の端部24aをリ−ル本体Aに取り付けられるカバ−部材7の内側に一体形成された可撓性を有する係止部7aによってリ−ル本体Aに支持したので、ガイド軸24をリ−ル本体Aに固定するための専用の部材を設ける必要がなく、部品点数および組み立て工程の減少により製造コストが低減されると共に、魚釣用スピニングリ−ルが軽量化され、更に、ガイド軸24のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
また、ガイド軸24の端部24aをカバ−部材7の内側に一体形成された可撓性を有する係止部7aによってリ−ル本体Aに支持したので、リ−ル本体Aとガイド軸24の寸法精度のバラツキによって発生するガイド軸24の組み付けガタが抑制されてオシレ−ト機構の異音発生を防止することができる。
【実施例2】
【0014】
図5、図6は第2実施例で、図5は魚釣用スピニングリ−ルの要部拡大断面側面図とその一部拡大断面側面図、図6はカバ−部材の(a)内側正面図で(b)一部断面側面図である。
【0015】
第2実施例では、ガイド軸24の端部にカバ−部材7の内側に一体形成された可撓性を有する薄いリブ状の係止部7fが当接されている。
他の構成は前記第1実施例と同様であるため、それらの説明は省略する。
【実施例3】
【0016】
図7、図8は第3実施例で、図7は魚釣用スピニングリ−ルの要部拡大断面側面図とその一部拡大断面側面図、図8はカバ−部材の(a)内側正面図で(b)一部断面側面図である。
【0017】
第3実施例では、ガイド軸24の端部がカバ−部材7の内側に一体形成された可撓性を有する筒部からなる係止部7gの凹部7h内に挿入されて押圧されている。
他の構成は前記第1実施例と同様であるため、それらの説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0018】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施例で、魚釣用スピニングリ−ルの筐体を断面にした要部断面側面図である。
【図2】同図1の要部拡大断面側面図である。
【図3】同図2の要部拡大断面側面図とその一部拡大断面側面図である。
【図4】同カバ−部材の(a)内側正面図で(b)一部断面側面図である。
【図5】第2実施例で、魚釣用スピニングリ−ルの要部拡大断面側面図とその一部拡大断面側面図である。
【図6】同カバ−部材の(a)内側正面図で(b)一部断面側面図である。
【図7】第3実施例で、魚釣用スピニングリ−ルの要部拡大断面側面図とその一部拡大断面側面図である。
【図8】同カバ−部材の(a)内側正面図で(b)一部断面側面図である。
【符号の説明】
【0020】
A リ−ル本体
5 摺動体
7 カバ−部材
7a、7f、7g 係止部
10 ハンドル
18 スプ−ル軸
24 ガイド軸
24a 後端


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルの回転をスプ−ル軸の前後動に変換する該スプ−ル軸の後部に連結した摺動体をリ−ル本体に取り付けたガイド軸で摺動案内可能とした魚釣用スピニングリ−ルにおいて、前記ガイド軸の端部をリ−ル本体に取り付けられるカバ−部材の内側に一体形成された可撓性を有する係止部によって前記リ−ル本体に支持したことを特徴とする魚釣用スピニングリ−ル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−252324(P2007−252324A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83431(P2006−83431)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】