説明

魚釣用スピニングリール

【課題】ロータの逆回転時に発生する振動に起因する諸問題を解決することができると共に、スプール往復動機構の耐久性、並びにロータ逆回転時におけるフリー性に優れた魚釣用スピニングリールを提供する。
【解決手段】ハンドル軸5の回転操作に応じて回転しスプール4に釣糸を案内する釣糸案内部を有するロータ3と、先端にスプール4が取り付けられたスプール軸12と、ハンドル軸5の回転操作運動をスプール軸14の前後往復動に変換するスプール往復動機構15と、を備え、スプール往復動機構15は、釣糸をスプール4に巻き取る際又は釣糸をスプール4から引き出す際のロータの回転方向に応じてスプール軸14における前後往復動の速度を切り換える変速装置16を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用スピニングリールに関し、特に、ハンドルの回転操作運動を、スプールの前後往復動に変換するスプール往復動機構をリール本体内に設けた魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚釣用スピニングリールは、ハンドルの回転操作で釣糸案内部を有するロータを回転させると共に、ハンドルの回転運動をリール本体内部に設けたスプール往復動機構により前後動方向に変換することで前後往復動するスプールに、ロータの釣糸案内部を介して釣糸が巻回される構成を有している。
【0003】
従来、このような魚釣用スピニングリールにおいて、リール本体に上方に向けて牽引可能に取り付けられた操作レバーの牽引操作や、リール本体の後部に設けた操作具の回転操作により、魚のヒットに伴う釣糸の繰り出しによって逆回転するロータに制動力を付与するロータ制動装置を備え、ロータの逆回転をフリーに行わせる一方、操作者の回転操作等により魚とのやり取りを可能とするものが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】実公平1−20858号公報
【特許文献2】実公平1−39194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような魚釣用スピニングリールにおいては、ロータの逆回転に連動してスプールが高速で前後往復動することとなる。このため、この前後往復動に応じて発生する振動が、操作者に不快感を与えると共に、釣糸を介して魚に違和感を与えて魚を暴れさせ、魚を取り逃がしたり釣糸を切断したりする原因となり、また、リール本体のネジ締結部に伝わってネジの緩みの原因となるという問題がある。
【0005】
また、ロータの逆回転に連動してスプールが高速で前後往復動するので、スプール往復動機構における変換係合部(例えば、ウォームシャフトとピン係合部や、係合突起と係合溝)の磨耗や、前後往復動の方向転換時の抵抗発生によるロータ逆回転時のフリー性の劣化を引き起こす原因となるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記した問題に鑑みて為されたものであり、ロータの逆回転時に発生する振動に起因する諸問題を解決することができると共に、スプール往復動機構の耐久性、並びにロータ逆回転時におけるフリー性に優れた魚釣用スピニングリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用スピニングリールは、ハンドル軸の回転操作に応じて回転しスプールに釣糸を案内する釣糸案内部を有するロータと、先端にスプールが取り付けられたスプール軸と、ハンドル軸の回転操作運動をスプール軸の前後往復動に変換するスプール往復動機構と、を備え、スプール往復動機構は、釣糸をスプールに巻き取る際又は釣糸をスプールから引き出す際のロータの回転方向に応じてスプール軸における前後往復動の速度を切り換える変速装置を備えることを特徴とする。
【0008】
上記した構成の魚釣用スピニングリールによれば、変速装置によって、ロータの回転方向に応じてスプール軸における前後往復動の速度を切り換えられることから、例えば、リールにおける振動が大きい方のロータの回転方向に対応させてスプール軸の前後往復動の速度を遅くする制御を行うことが可能となる。このような制御により、スプールの前後往復動に応じて発生していた振動を低減することができるので、振動に伴う操作者における不快感を除去すると共に、魚へ与える影響を低減することを通じて釣果を向上させることが可能となる。
【0009】
また、リールにおける振動が大きい方のロータの回転方向に対応させてスプール軸の前後往復動の速度を遅くすることから、高速でスプール軸が前後往復動する場合と比べて、スプール往復動機構の前後往復動に変換する部材の磨耗を回避することができるので、スプール往復動機構の耐久性に優れたリールを提供することができる。さらに、スプールの前後往復動の方向転換時の抵抗発生によりロータの回転時におけるフリー性が劣化する事態を回避することができるので、ロータ回転時におけるフリー性に優れたリールを提供することができる。
【0010】
なお、上記構成の魚釣用スピニングリールにおいて、変速装置は、釣糸をスプールから引き出す際のロータの回転時におけるスプール軸の前後往復動の速度を、釣糸をスプールに巻き取る際のロータの回転時におけるスプール軸の前後往復動の速度よりも遅くさせることが好ましい。この場合には、一般的にハンドルを用いた釣糸の巻取り操作よりも大きくなる、魚による釣糸繰出し時に発生するリールの振動を低減することができるので、リールの振動に伴う操作者における不快感を除去すると共に、魚へ与える影響を低減することを通じて釣果を向上させることが可能となる。
【0011】
また、上記構成の魚釣用スピニングリールにおいて、変速装置は、例えば、一方向クラッチを用いた回転規制が行われる遊星歯車装置で構成することが可能である。この場合には、通常の遊星歯車装置に必要とされるスペースでスプール軸の前後往復動を切り換えることができるため、特に、スプール軸方向に必要となるスペースを削減することが可能となる。この結果、リール本体内のスペースを低減することができ、リール自体の小型化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロータの逆回転時に発生する振動に起因する諸問題を解決することができると共に、スプール往復動機構の耐久性、並びにロータ逆回転時におけるフリー性に優れた魚釣用スピニングリールが得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの全体的な構成を示している。
【0015】
図1に示すように、本発明に係る魚釣用スピニングリールのリール本体1には、釣竿に装着されるリール脚2が一体形成されており、その前方には回転可能に支持されたロータ3と、ロータ3の回転運動と同期して前後動可能に支持されたスプール4が配設されている。
【0016】
ロータ3は、スプール4の周囲を回転する一対の腕部3aを備えており、各腕部3aの夫々の前端部には、ベール3bの基端部を取り付けたベール支持部材3cが釣糸巻取り位置と釣糸放出位置との間で回動自在に支持されている。なお、ベール3bの一方の基端部は、ベール支持部材3cに一体的に設けられた釣糸案内部3dに取り付けられている。
【0017】
リール本体1内には、ハンドル軸5が回転可能に支持されており、その突出端部には、ハンドル6が取り付けられている。また、ハンドル軸5には、巻取り駆動機構が係合しており、この巻取り駆動機構は、ハンドル軸5に一体回転可能に装着された駆動ギヤ(フェースギヤ)7と、この駆動ギヤ7に噛合する従動ギヤ8(ピニオン)が周面に形成されると共にハンドル軸5と直交する方向に延出し、内部に軸方向に延出する空洞部が形成されたピニオン軸9と、を備えている。
【0018】
ピニオン軸9は、リール本体1の突出部1aに設けた軸受け10及びリール本体1内に形成した軸受部11で回転可能に支持されている。また、スプール4側に向けて延出しており、その先端部において、ロータ3が取り付け固定されている。ピニオン軸9に形成された従動ギヤ8の上方に、従動ギヤ8のスプール4側端部に一体的に取り付けられたラチェット8aに対して係脱可能に構成された係合部材12が配設されている。係合部材12は、リール本体1の外部に設けられたレバー13に対する回動操作によりラチェット8aに対する係脱が切り替えられ、ハンドル6(ロータ3)の釣糸繰出し方向の逆回転を防止する公知の逆転防止装置を構成するようになっている。
【0019】
ピニオン軸9の内部に形成された空洞部には、ハンドル軸5と直交する方向に延出し、先端側にスプール4を装着したスプール軸(メインシャフト)14が軸方向に移動可能に挿通されている。また、ピニオン軸9には、スプール4(スプール軸14)を前後往復動させるためのスプール往復動機構15の一部を為す変速装置16が装着されている。
【0020】
変速装置16は、一方向クラッチを用いた回転規制が行われる遊星歯車装置で構成される。そして、この一方向クラッチの作用によって、ロータ3の回転方向によりスプール軸14の前後往復動する速度を切り換えるようになっている。より具体的には、変速装置16は、釣糸繰出し時におけるロータ3の回転時の方が、釣糸巻取り操作時におけるロータ3の回転時よりも遅くなるように、スプール軸14の前後往復動の速度を変速する。
【0021】
スプール往復動機構15は、上述の変速装置16と、リール本体1内に回転可能に支持され、スプール軸14と平行に延出するウォームシャフト17と、スプール軸14の基端部に抜け止め固定された摺動子18と、ウォームシャフト17の端部に取り付けられ、変速装置16が有する内側歯車と噛合するギヤ19とを備えている。
【0022】
上記摺動子18は、スプール軸14に対してビス等によって回り止め固定されると共に、ウォームシャフト17の外周面に形成された螺旋溝17aと係合する係合ピン20を有している。そして、ウォームシャフト17が回転駆動されると、摺動子18は、係合ピン20を介して前後方向に往復駆動される。この結果、スプール4(スプール軸14)が前後方向に往復駆動される。
【0023】
このような構成を有する魚釣用スピニングリールにおいて、ハンドル6により巻取り操作を行うと、ロータ3が巻取り駆動機構を介して回転駆動されると共に、スプール4がスプール往復動機構14を介して前後往復動されるので、釣糸は、釣糸案内部3dを介してスプール4の巻回胴部4aに均等に巻回されるようになっている。
【0024】
次に、上記したスプール往復動機構15を構成する変速装置16の構成及び作用について説明する。図2は、スプール往復動機構15を構成する変速装置16周辺の拡大図であり、図3は、図2に示すA−A線に沿った断面を図2に示す左方側から示した図、そして、図4は、図2に示すB−B線に沿った断面を図2に示す左方側から示した図である。
【0025】
図2に示すように、変速装置16を構成する遊星歯車装置は、ピニオン軸9に回り止め嵌合した状態で装着される太陽歯車21と、この太陽歯車21に噛合する複数の遊星歯車22と、ピニオン軸9に回転可能に装着された内側歯車23と、遊星歯車22を支持する遊星歯車支持体24とから構成される。なお、内側歯車23は、その内周部分に形成された内周歯部23aが遊星歯車22と噛合する一方、外周部分に形成された外周歯部23bが上記ギヤ19とそれぞれ噛合する。
【0026】
遊星歯車支持体24は、リール本体1の変速装置16側に向けて形成された突出部1aの内側部分に一方向クラッチ25を介して回転可能に取り付けられており、遊星歯車22は、遊星歯車支持体24の支軸24aに一方向クラッチ26を介して回転可能に取り付けられている。これらの一方向クラッチ25及び26は、それぞれ遊星歯車支持体24及び遊星歯車22の一方向の回転を規制する。
【0027】
ここで、一方向クラッチ25及び26の作用と併せて釣糸巻取り操作及び釣糸繰出しに対応するロータ3の回転時における動力伝達経路について図3及び図4を用いて説明する。なお、図3及び図4においては、同図に示す時計回り方向の回転を正転と呼び、反時計回り方向の回転を逆転と呼ぶものとする。
【0028】
遊星歯車22と遊星歯車支持体24の支軸24aとの間に配設された一方向クラッチ26は、遊星歯車22における図3に示す逆転方向の回転駆動力を規制する一方、正転方向の回転駆動力を許容するように構成されている。一方、遊星歯車支持体24とリール本体1の突出部1aとの間に配設された一方向クラッチ25も、図4に示す遊星歯車支持体24における逆転方向の回転駆動力を規制する一方、正転方向の回転駆動力を許容するように構成されている。
【0029】
このような一方向クラッチ25及び26を備える変速装置16において、ハンドル6の釣糸巻取り操作に応じてピニオン軸9が正転駆動されると、これに応じてロータ3が正転駆動される。この場合、ピニオン軸9上の太陽歯車21は、ピニオン軸9の正転駆動に応じて正転している。このとき、太陽歯車21の正転に応じて遊星歯車22に逆転させる力が働くが、一方向クラッチ26の作用により遊星歯車22の逆転は規制されているため、遊星歯車22は逆転することなく遊星歯車22が停止した状態で遊星歯車支持体24が太陽歯車21と同方向に正転(公転)する。
【0030】
なお、一方向クラッチ25は、遊星歯車支持体24の正転を許容するため、遊星歯車支持体24の太陽歯車21と同方向の正転が規制されることはない。そして、この遊星歯車支持体24の正転に応じて遊星歯車22と噛合した状態で一体的に内側歯車23も正転する。このように、釣糸巻取り操作に対応するロータ3の回転時における回転駆動力は、遊星歯車22の自転作用を受けず、減速されることなく内側歯車23に伝達される。
【0031】
そして、内側歯車23が正転すると、この内側歯車23の外周歯部23bと噛合するギヤ19が逆転し、回転駆動力がウォームシャフト17に伝達される。この回転駆動力は、摺動子18及びスプール軸14を介してスプール4に伝達される。したがって、釣糸巻取り操作に対応して正転方向にロータ3が回転駆動されると、スプール4が減速されることなく、前後往復動されることとなる。
【0032】
一方、このような変速装置11において、魚により釣糸繰出し時にはロータ3が逆転駆動される。この場合、ロータ3の逆転に応じてピニオン軸9も逆転し、ピニオン軸9上の太陽歯車21も同様に逆転する。太陽歯車21が逆転すると、遊星歯車22は正転する。このとき、遊星歯車22の正転の自転に伴って遊星歯車支持体24に太陽歯車21と同方向の逆転方向の力が働くが、一方向クラッチ25の作用により遊星歯車支持体24の逆転は規制されているため、遊星歯車22が遊星歯車支持体24と共に移動(公転)することなく正転(自転)する。
【0033】
なお、一方向クラッチ26は、遊星歯車22の正転を許容するため、遊星歯車22の正転が規制されることはない。そして、この遊星歯車22の正転に応じて内側歯車23を減速した状態で同方向に正転させる。このように、魚による釣糸繰出しに対応するロータ3の回転時における回転駆動力は、遊星歯車22を介して内側歯車23に伝達されて減速される。
【0034】
そして、内側歯車23が正転すると、上述の場合と同様に、この内側歯車23の外周歯部23bと噛合するギヤ19が逆転し、回転駆動力がウォームシャフト17に伝達される。かかるピニオン軸9による回転駆動力は、摺動子18及びスプール軸14を介してスプール4に伝達される。したがって、魚による釣糸繰出しに対応してロータ3が逆転方向に回転駆動されると、スプール4が減速した状態で前後往復動されることとなる。
【0035】
このように、本実施の形態の魚釣用スピニングリールにおいては、ハンドル6に対する回転操作をスプール軸14の前後往復動に変換するスプール往復動機構15に、ロータ3の回転方向に応じてスプール軸14における前後往復動の速度を切り換える変速装置16を配設したことから、例えば、リールにおける振動が大きい方のロータ3の回転方向に対応させてスプール軸14の前後往復動の速度を遅くする制御を行うことが可能となる。このような制御により、スプール4の前後往復動に応じて発生していた振動を低減することができるので、振動に伴う操作者における不快感を除去すると共に、魚へ与える影響を低減することを通じて釣果を向上させることが可能となる。
【0036】
また、リールにおける振動が大きい方のロータ3の回転方向に対応させてスプール軸14の前後往復動の速度を遅くすることから、高速でスプール軸14が前後往復動する場合と比べて、スプール往復動機構15の前後往復動に変換する部材の磨耗を回避することができるので、スプール往復動機構15の耐久性に優れたリールを提供することができる。さらに、スプールの前後往復動15の方向転換時の抵抗発生によりロータ3の回転時におけるフリー性が劣化する事態を回避することができるので、ロータ回転時におけるフリー性に優れたリールを提供することができる。
【0037】
特に、上記実施の形態に係る魚釣用スピニングリールにおいて、変速装置16は、釣糸をスプールから引き出す際のロータ3の回転時におけるスプール軸14の前後往復動の速度を、釣糸をスプール4に巻き取る際のロータ3の回転時におけるスプール軸14の前後往復動の速度よりも遅くさせている。これにより、一般的にハンドル6を用いた釣糸の巻取り操作よりも大きくなる、魚による釣糸繰出し時に発生するリールの振動を低減することができるので、リールの振動に伴う操作者における不快感を除去すると共に、魚へ与える影響を低減することを通じて釣果を向上させることが可能となる。
【0038】
また、上記実施の形態に係る魚釣用スピニングリールにおいては、変速装置16を、一方向クラッチを用いた回転規制が行われる遊星歯車装置で構成している。このように、変速装置16を遊星歯車装置で構成することにより、通常の遊星歯車装置に必要とされるスペースでスプール軸14の前後往復動を切り換えることができるため、特に、スプール軸方向に必要となるスペースを削減することが可能となる。この結果、リール本体内のスペースを低減することができ、リール自体の小型化を図ることが可能となる。
【0039】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0040】
例えば、上記した実施形態においては、ウォームシャフト17を使用したスプール往復動装置15について示しているが、例えば、組み付けられるスピニングリールの構成に応じて、スプール往復動装置15の構成については、適宜変更することが可能である。例えば、所謂ギヤオシレート方式を用いたスプール往復動装置に適用することが可能である。
【0041】
また、上記した実施形態においては、遊星歯車装置を用いた変速装置16について示しているが、例えば、組み付けられるスピニングリールの構成に応じて、変速装置16の構成については、適宜変更することが可能である。例えば、ギヤ比の異なる大小の平歯車を複数噛合させた構成を有する変速装置16としても良い。このように変更した場合においても、上記した実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0042】
さらに、上記した実施形態においては、変速装置16は、リール本体1とロータ3との間に配設された場合について示しているが、組み付けられるスピニングリールの構成に応じて、その配設位置については、適宜変更することが可能である。例えば、ロータ3の回転駆動力をウォームシャフト17に伝達することができれば、リール本体1内に配設しても良い。このように変更した場合においても、上記した実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0043】
さらに、上記した実施形態においては、一般的なオープンフェース型の魚釣用スピニングリールについて説明しているが、本発明は、ロータ3の逆転時にスプール4を前後往復動させないようにする必要があるリールであれば、クローズドフェース型のリールにも適用することが可能であり、上述した優れた効果を得ることが可能となる。
【0044】
特に、魚による釣糸の繰り出しに応じて逆回転するロータ3に制動力を付与するロータ制動装置を備え、意図的にロータ3の逆回転をフリーに行わせる一方、操作者のロータ制動装置に対する操作により魚とのやり取りを可能とする、上述した従来技術の特許文献1(実公平1−20858号公報)に開示された所謂レバーブレーキリールにおいては、上述した優れた効果に加え、更に顕著な効果を得ることが可能となる。
【0045】
すなわち、レバーブレーキリールにおいては、釣糸を繰り出す量は操作者のロータ制動装置に対する操作に依存することとなるが、本発明を適用することでロータ3の逆転時に発生していた振動が除去されるので、ロータ制動装置に対する操作に集中することが可能となり、魚とのやり取りをより一層楽しみながら魚釣りを行うことが可能となる。
【0046】
また、以上の説明において、スプール往復動機構15に配設される一方向クラッチ25及び26は、上記構成に限定されることなく、他の構成を有する一方向クラッチを適用することが可能である。例えば、ラチェットと爪とを組み合わせて一方向クラッチを構成しても良いし、また、巻バネの締付力を利用して構成するようにしてもよい。このように変更した場合においても、上述した本実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、ロータの逆回転時に発生する振動に起因する諸問題を解決することができると共に、スプール往復動機構の耐久性、並びにロータ逆回転時におけるフリー性に優れた魚釣用スピニングリールを提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの全体的な構成を示す図。
【図2】スプール往復動機構を構成する変速装置周辺の拡大図。
【図3】図2に示すA−A線に沿った断面を図2に示す左方側から示した図。
【図4】図2に示すB−B線に沿った断面を図2に示す左方側から示した図。
【符号の説明】
【0049】
1 リール本体
3 ロータ
4 スプール
5 ハンドル軸
7 駆動ギヤ
9 ピニオン軸
14 スプール軸
15 スプール往復動機構
16 変速装置
17 ウォームシャフト
18 摺動子
19 キヤ
21 太陽歯車
22 遊星歯車
23 内側歯車
24 遊星歯車支持体
25、26 一方向クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル軸の回転操作に応じて回転しスプールに釣糸を案内する釣糸案内部を有するロータと、先端にスプールが取り付けられたスプール軸と、前記ハンドル軸の回転操作運動を前記スプール軸の前後往復動に変換するスプール往復動機構と、を備え、前記スプール往復動機構は、釣糸をスプールに巻き取る際又は釣糸をスプールから引き出す際の前記ロータの回転方向に応じて前記スプール軸における前後往復動の速度を切り換える変速装置を備えることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記変速装置は、釣糸をスプールから引き出す際の前記ロータの回転時における前記スプール軸の前後往復動の速度を、釣糸をスプールに巻き取る際の前記ロータの回転時における前記スプール軸の前後往復動の速度よりも遅くさせたことを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記変速装置は、一方向クラッチを用いた回転規制が行われる遊星歯車装置で構成されることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用電動リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−14207(P2007−14207A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195874(P2005−195874)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】