説明

魚釣用スピニングリール

【課題】リール本体の前後方向のコンパクト化を図りつつ、ハンドル軸の軸方向のコンパクト化を図る。
【解決手段】ハンドル5に連結されてリール本体1に回転可能に設けられたハンドル軸4と、前端にスプール3が取り付けられ、後端に摺動体7が取り付けられたスプール軸9と、ハンドル軸4の回転運動を、摺動体7を介してスプール軸9の軸方向となる前後方向の往復動に変換するオシレーティング機構と、を有する魚釣用スピニングリールであって、リール本体1の後端部に設けられ、スプール軸9が最後端位置に移動した際に、摺動体7の一部を受け入れる挿通部20を備え、挿通部20および摺動体7の少なくとも一方には、後端へ向けて移動する摺動体7を挿通部20内に導く導入手段が設けられている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な魚釣用スピニングリールは、主として、ハンドルを回転操作することで駆動される駆動機構と、駆動機構を介して回転駆動されるロータと、ハンドルからの回転力を前後方向の往復動に変換するオシレーティング機構と、オシレーティング機構により前後方向に往復動されるスプール軸と、スプール軸に固定されたスプールとを備え、ハンドルの回転操作によりロータの釣糸案内部を通じて巻き上げられた釣糸が、オシレーティング機構によって往復動するスプールに巻回されるように構成されている。
【0003】
このような魚釣用スピニングリールにおいて、リール本体の後端部に開口部を挿通部として設けたものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
この魚釣用スピニングリールでは、オシレーティング機構のオシレーティングスライダーとしての摺動体が最後端位置に移動した際に、摺動体が挿通部内に位置するように構成されている。
この魚釣用スピニングリールによれば、摺動体が最後端位置に移動した際に、挿通部内に摺動体が位置するので、その分、リール本体の前後方向(スプール軸方向)の長さを短くすることができ、コンパクト化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4012033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1では、リール本体の前後方向の長さを短くすることが可能であるが、これとともに、リール本体のハンドル軸の軸方向(リール本体の幅方向、スプール軸に直交する方向)にもコンパクト化を図りたいという要望があった。
ところで、摺動体は、スプール軸により往復動される過程で、ハンドル軸の軸方向に、摺動体の往復動する移動軌跡が所定のスプール軸線に対して僅かにズレ等を生じることがあった。そこで、従来ではこのようなズレ等を生じた場合にも挿通部内に摺動体が挿入されるように、挿通部の内面と摺動体との間に比較的広くされたクリアランスを確保していた。このため、ハンドル軸の軸方向のコンパクト化が難しかった。
【0006】
本発明は、前記問題を解決するためになされたものであり、リール本体の前後方向のコンパクト化を図りつつハンドル軸の軸方向のコンパクト化を図ることができる魚釣用スピニングリールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する本発明の魚釣用スピニングリールは、ハンドルに連結されてリール本体に回転可能に設けられたハンドル軸と、前端にスプールが取り付けられ、後端に摺動体が取り付けられたスプール軸と、前記ハンドル軸の回転運動を、前記摺動体を介して前記スプール軸の軸方向となる前後方向の往復動に変換するオシレーティング機構と、を有する魚釣用スピニングリールであって、前記リール本体の後端部に設けられ、前記スプール軸が最後端位置に移動した際に、前記摺動体の一部を受け入れる挿通部を備え、前記挿通部および前記摺動体の少なくとも一方には、後端へ向けて移動する前記摺動体を前記挿通部内に導く導入手段が設けられている。
【0008】
この魚釣用スピニングリールによれば、リール本体の後端部にはスプール軸が最後端位置に移動した際に、摺動体の一部を受け入れる開口部としての挿通部が設けられており、挿通部および摺動体の少なくとも一方には、後端に設けて移動する摺動体を挿通部内に導く導入手段が設けられているので、摺動体は、後端に向けて移動する際に、導入手段を介して挿通部内に好適に導かれることとなる。
【0009】
また、本発明は、前記導入手段が、前記挿通部の導入口から前端へ向けて延設されたレール状の案内部を有して前記挿通部に設けられており、前記案内部は、前端へ向けて前記ハンドル軸の軸方向に拡がるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
この魚釣用スピニングリールによれば、レール状の案内部は、前端へ向けてハンドル軸の軸方向に拡がるように形成されているので、後端に向けて移動する摺動体に、仮に、僅かなズレ等が生じている場合には、レール状の案内部によってこのズレ等が好適に抑制され、摺動体が挿通部に向けてスムーズに導かれることとなる。
【0011】
また、本発明は、前記スプール軸の軸方向に沿う前記案内部の長さが、前記挿通部の長さよりも長く形成されていることを特徴とする。
【0012】
この魚釣用スピニングリールによれば、スプール軸の軸方向に沿う案内部の長さは、挿通部の長さよりも長く形成されているので、その分、案内部におけるハンドル軸の軸方向への拡がりを緩やかにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、後端に設けて移動する摺動体を挿通部内に導く導入手段が設けられ、摺動体は、後端に向けて移動した際に、導入手段を介して挿通部内に好適に導かれることとなるので、摺動体がハンドル軸の軸方向に仮にズレ等を生じた場合でも、導入手段によりズレ等が好適に抑えられて挿通部に向けて摺動体が導かれることとなる。これによって、挿通部内にスムーズに摺動体が挿入され、摺動体の円滑な摺動が実現される。したがって、挿入部と摺動体との間のクリアランスを可及的に小さく設定することができ、その分、リール本体の幅方向であるハンドル軸の軸方向の余分なスペースを排除することができる。
これにより、リール本体の前後方向およびハンドル軸の軸方向のコンパクト化を図ることができる魚釣用スピニングリールが得られる。
【0014】
また、導入手段のレール状の案内部は、前端へ向けてハンドル軸の軸方向に拡がるように形成されているので、摺動体がハンドル軸の軸方向に仮にズレ等を生じた場合でも、案内部によりズレ等が好適に抑制されて挿通部に摺動体が導かれることとなり、よりスムーズに挿通部内に摺動体が挿入されることとなる。したがって、摺動体の円滑な摺動を実現することができる。
また、案内部は、レール状とされているので、材質や肉厚等を適宜設定することによって弾力性をもたせることが可能となり、仮にズレ等を生じた際に摺動体が当接したときの衝撃を好適に吸収することができる。したがって、より円滑な摺動体の摺動を実現することができる。
【0015】
また、案内部の長さが挿通部の軸方向の長さよりも長く形成されており、これによって、案内部のハンドル軸の軸方向への拡がりが緩やかにされているので、より一層スムーズに挿通部に向けて摺動体が導かれることとなり、より円滑な摺動体の摺動を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの全体構成を示す図である。
【図2】(a)はオシレーティング機構を示す側面図、(b)は挿入部と摺動体との位置関係を示す説明図である。
【図3】(a)は図2(a)のA−A線に基づくリール本体の断面図、(b)は図2(a)のB−B線に基づくリール本体の部分断面図、図2(a)のC−C線に基づくリール本体の部分断面図である。
【図4】摺動体を示す図であり、(a)は平面図、(b)は図4(a)のD矢視図でありスプール軸と摺動体との連結部分を破線で示した図、(c)は図4(a)のD矢視図であり案内溝を破線で示した図、(d)は図4(a)のE矢視図、(e)は図4(a)のF矢視図である。
【図5】(a)は案内部材を示した部分拡大平面図、(b)は案内部材の詳細図、(c)は案内部材の変形例を示す図である。
【図6】(a)(b)は作用説明図である。
【図7】(a)〜(d)は導入手段の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る魚釣用スピニングリールの一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前後」「上下」を言うときは、図1に示した方向を基準とし、「左右」を言うときは、図2(b)に示した方向を基準とする。
【0018】
図1に示すように、魚釣用スピニングリールは、図示しない釣竿に装着するための脚部1Aが形成されたリール本体1と、リール本体1の前方に回転可能に設けられたロータ2と、このロータ2の回転運動と同期して前後方向移動可能に設けられたスプール3とを有し、ハンドル5に連結されてリール本体1に回転可能に設けられたハンドル軸4と、前端にスプール3が取り付けられ、後端に摺動体7が取り付けられたスプール軸9と、ハンドル軸4の回転運動を、摺動体7を介してスプール軸9の軸方向となる前後方向の往復動に変換するオシレーティング機構(往復動機構)と、を備えて構成されている。
【0019】
ハンドル軸4は、リール本体1に装着された図示しない軸受を介して回転可能に支持されており、その図示しない突出端部には、巻き取り操作されるハンドル5が取り付けられている。ハンドル軸4には、軸筒4aが回り止めされて固定されており、この軸筒4aには、ロータ2を巻き取り駆動するための内歯が形成されたドライブギャ6が一体的に形成されている。このドライブギャ6は、ハンドル軸4と直交する方向に延出するとともに内部に軸方向に延出する空洞部を有する駆動軸筒8のピニオンギャ8aに噛合している。
【0020】
駆動軸筒8は、図3(a)に示すように、リール本体1の内面から側方へ向けて突設された支持部1aに図示しない軸受を介して回転可能に支持されており、その空洞部には、スプール軸9が軸方向に移動可能に挿通されて支持されている。
図1に示すように、駆動軸筒8はスプール3側に向けて延出しており、その前端部において、ナット2fを介してロータ2が取り付けられている。また、駆動軸筒8には、その中間部分に転がり式の図示しない一方向クラッチが取り付けられており、リール本体1の下部に設けられた切換部材12を回動操作することで、一方向クラッチを作動状態と非作動状態とに切り換えるように構成されている。この場合、切換部材を作動状態に切り換えることで、ハンドル5(ロータ2)の逆転方向の回転(釣糸放出方向の回転)が防止されるようになっている。
【0021】
スプール軸9は、ハンドル軸4と直交する方向(リール本体1の前後方向)に延出しており、前記したように前端にスプール3が取り付けられ、後端にオシレーティング機構の一部をなす摺動体7が取り付けられている。
スプール軸9は、図3(a)に示すように、駆動軸筒8の空洞部に挿通されてリール本体1の前後方向に移動可能であり、オシレーティング機構によって往復動可能である。
オシレーティング機構は、いわゆるギャ式のものであり、図1に示すように、ドライブギャ6の図示しない歯車に噛合してこれと連動回転する連動歯車6a、連動歯車6aの回転により往復動する前記した摺動体7と、摺動体7の往復動を案内するガイド11と、を含んで構成されている。
【0022】
連動歯車6aは、その回転中心軸から偏芯して突設された偏芯突起6bを有しており、この偏芯突起6bは、摺動体7の側面に凹設された案内溝7bに係合している。
摺動体7は、図4(a)(b)に示すように、スプール軸9の後端部9bにねじ7aで固定されており、スプール軸9の移動に伴って所定のスプール軸線上に沿ってリール本体1内で往復動するように構成されている。なお、摺動体7は、ねじ7aで固定される前部側に比べて後部側が左右方向に幅狭に形成されており、軽量化、および左右方向(ドライブ軸4の軸方向)のコンパクト化が図られている。
【0023】
摺動体7は、後端上部7Aが後方へ膨出した形状を呈しており、この形状に沿って、摺動体7の側面には、図4(e)(c)に示すように、連動歯車6aの偏芯突起6bと係合する案内溝7bが凹設されている。このような案内溝7bに係合する偏芯突起6bは、連動歯車6a(図4(c)参照)の回転に伴って溝内を上下方向に往復動する(図4(e)参照)。
【0024】
また、摺動体7の下部には、ガイド11が挿通されるガイド孔7cが形成されている。
ここで、ガイド11は、リール本体1の下部に配置される円柱状の軸部材からなる。ガイド11の前端部は、図3(a)(b)に示すように、リール本体1の支持部1bに設けられた保持部1cと、リール本体1に被せられる蓋部材10の下部に設けられた保持片13との間に挟持されている。また、ガイド11の後端部は、図3(c)に示すように、リール本体1に設けられた保持部1dと、蓋部材10の下部に設けられた保持片14との間に挟持されている。
【0025】
このようなオシレーティング機構では、ハンドル5の回転操作によってハンドル軸4が回転されると、ハンドル軸4を通じてドライブギャ6が回転し、ドライブギャ6に噛み合う連動歯車6aが回転する。連動歯車6aが回転すると、それに伴って、連動歯車6aの偏芯突起6bが回転し、偏芯突起6bと係合する案内溝7bの案内によって摺動体7が前後に往復動する。つまり、連動歯車6aの回転動がスプール軸9の前後動に変換され、摺動体7に取り付けられたスプール軸9が軸方向に沿って往復駆動(前後動)する。
その一方で、ハンドル5の回転操作によってハンドル軸4が回転されると、ドライブギャ6、ピニオンギャ8a、駆動軸筒8を介してロータ2が回転駆動される。これによって、スプール3には、ベール支持部材2c(図1参照)に設けた釣糸案内部2eを介して、図示しない釣糸が均等に巻回される。
【0026】
リール本体1の後端部には、図2(a)(b)に示すように、リール本体1の内部と外部とを連通する開口部となる挿通部20が開口形成されている。挿通部20は、スプール軸9が最後端位置X3(図6(a)(b)参照)に移動した際に、摺動体7の一部である後端上部7Aをその内側に受け入れるように、その位置および形状が設定されている。
本実施形態の挿通部20では、図2(b)に示すように、リール本体1の後端部を切り欠くことで形成された上面21と、下面22と、これらに連続する側面23と、この側面23に対向配置される蓋部材10の側面10bとで、四方を囲うことにより形成されており、摺動体7を受け入れた状態で、挿通部20の各面と摺動体7との間には、所定の隙間が形成されるように構成されている。
なお、リール本体1の後端部には、図2(a)に示すように、カバー1eがねじ1fで固定されている。
【0027】
このような挿通部20には、図2(a)(b)に示すように、後端へ向けて移動する摺動体7を挿通部20内に導く役割をなす導入手段としての案内部材30が設けられている。案内部材30は、図5(a)に示すように、挿通部20の導入口(摺動体7が導入される側の口、挿通部20の前端開口)に連続して一体的に形成されており、リール本体1および蓋部材10に一対配置されている。
本実施形態の案内部材30では、図2(a)(b)に示すように、摺動体7の後端上部7A(スプール軸9やガイド11によって支持された部分から一番離れた部分)をハンドル軸4の軸方向(左右方向)から間隔を空けて挟み込むようにして配置されている。
【0028】
案内部材30は、薄板状を呈しており、挿通部20の導入口から前端へ向けて延設されたレール状(突条であり、接触面積の小さくなる形状)の案内部31を有している。案内部31は、前端へ向けてハンドル軸4の軸方向(左右方向)に拡がるように形成されており、案内部31の後端の幅N1(側面23、側面10b間の幅)に比べて案内部31の前端の幅N2が広くなるように設定されている。別言すれば、図5(b)に示すように、片側の案内部31について説明すると、案内部31は、側面23の延長面となる基準面Pから所定角度θで傾斜しており、その前端が基準面Pから距離L2だけ摺動体7から離れる側に位置している。つまり、案内部31は、片側で距離L2分の拡がりを備えた開口を有しつつ、挿通部20の導入口に向けて傾斜状に窄まった導入面を有している。
【0029】
ここで、角度θは、5度<θ<45度の範囲に設定されるのが好ましく、特に、10度<θ<35度の範囲に設定されるのが好ましい。角度θが5度未満では、案内部31の前端に摺動体7が当接するおそれがあり、後端へ向けた移動の抵抗となるおそれがある。また、角度θが45度よりも大きいと、後端へ向けて摺動体7が移動する際に、摺動体7の後端角部7eが案内部31に当接すると、かえって衝撃を生じるおそれがあり、後端へ向けた摺動体7の移動の抵抗となるおそれがある。また、10度<θ<35度の範囲に設定することにより、摺動体7の後端上部7Aに仮にズレ(左右方向の偏倚)等が生じた場合にもこれを好適に抑えられるようになり、摺動体7が挿通部20の導入口に向けて好適に導かれる。
【0030】
また、案内部材30は、図5(b)に示すように、基準面Pに投影した案内部31の長さ(スプール軸9に沿う長さ)L1が、挿通部20を形成する側面23の長さL3よりも長くなるように設定されている。これにより、角度θを比較的小さな値に設定することができ、案内部31の傾斜を緩やかなものとすることができる。
なお、案内部31と挿通部20の側面23との接続部分である接続部32(導入口)は、アール状に形成されており、これによって、摺動体7が案内部31から挿通部20に滑らかに導かれるようになっている。
また、案内部材30は、図2(a)に示すように、前後方向において、挿通部20と連動歯車6aとの間に形成されたスペースを利用して設けられている。
なお、案内部材30は、前記した位置に設けたものに限られることはなく、挿通部20の前端において、上下方向に形成位置をずらして設けてもよい。
【0031】
なお、案内部31は、湾曲状とされた部分を有して形成されていてもよい。例えば、図5(c)に示すように、緩やかに連続して湾曲するような案内面を備えて案内部31aを形成することにより、後端へ向けて摺動体7が緩やかに導かれるように構成してもよい。
【0032】
このような案内部材30は、図6(a)(b)に示すように、最前端位置X1にある摺動体7が最後端位置X3へ向けて摺動する際に、摺動体7が中央位置X2付近まで移動してくると、その案内部31が摺動体7の左右両側に間隔を空けて位置し、摺動体7の挿通部20に向けた摺動をサポートする。つまり、このときに、仮に、摺動体7にハンドル軸4の軸方向のズレ等が生じている場合には、案内部31に摺動体7が当接しつつ挿通部20に向けて摺動するようになり、その過程で摺動体7に生じていたズレ等が修正される(抑えられる)こととなる。したがって、摺動体7は、後端に向けて移動した際に、仮に、ハンドル軸4の軸方向のズレ等を生じていても、案内部材30を介して挿通部20内に好適に導かれることとなる。
【0033】
再び図1を参照して、ロータ2は、スプール3のスカート部3a内に位置する円筒部2aと、一対のアーム部2b(一方のみ図示)を具備している。アーム部2bの前端部には、ベール支持部材2cが回動自在に支持されており、ベール支持部材2cには、放出状態にある釣糸をピックアップするベール2dが配設されている。
【0034】
スプール3は、スカート部3aと前側フランジ3bとの間に図示しない釣糸が巻回される釣糸巻回胴部3cを備えており、スプール軸9に図示しないドラグ機構を介して摩擦結合され、ノブ9aを回動操作することでスプール3のドラグ力が調節される。
【0035】
以上説明した本実施形態の魚釣用スピニングリールによれば、リール本体1の後端部にはスプール軸9が最後端位置X3に移動した際に、摺動体7の一部を受け入れる挿通部20が設けられており、挿通部20には、後端に設けて移動する摺動体7を挿通部20内に導く案内部材30が設けられているので、摺動体7は、後端に向けて移動した際に、案内部材30を介して挿通部20内に好適に導かれることとなる。
したがって、摺動体7がハンドル軸4の軸方向に仮にズレ等を生じた場合でも、案内部材30によりズレ等が好適に抑えられて挿通部20に向けて摺動体7が導かれることとなる。これによって、挿通部20内にスムーズに摺動体7が挿入され、摺動体7の円滑な摺動が実現される。したがって、挿通部20と摺動体7との間のクリアランスを可及的に小さく設定することができ、その分、リール本体1の幅方向であるハンドル軸4の軸方向の余分なスペースを排除することができる。
これにより、リール本体1の前後方向およびハンドル軸4の軸方向のコンパクト化を図ることができる魚釣用スピニングリールが得られる。
【0036】
また、レール状の案内部31は、前端へ向けてハンドル軸4の軸方向に拡がるように形成されているので、摺動体7がハンドル軸4の軸方向に仮にズレ等を生じた場合でも、案内部31によりズレ等が好適に抑制されて挿通部20に摺動体7が導かれることとなり、よりスムーズに挿通部20内に摺動体7が挿入されることとなる。したがって、摺動体7の円滑な摺動を実現することができる。
これにより、リール本体1の前後方向およびハンドル軸4の軸方向のコンパクト化を図ることができる。
【0037】
また、案内部31は、レール状とされているので、材質や肉厚等を適宜設定することによって弾力性をもたせることが可能となり、仮にズレ等を生じて摺動体7が当接した際にも、その衝撃を好適に吸収することができる。したがって、より円滑な摺動体7の摺動を実現することができる。
これにより、リール本体1の前後方向およびハンドル軸4の軸方向のコンパクト化を図ることができる。
【0038】
また、スプール軸9の軸方向に沿う案内部31の長さL1は、挿通部20の長さL3よりも長く形成されているので、案内部31のハンドル軸4の軸方向への拡がり(傾斜)が緩やかになる。これによって、より一層スムーズに挿通部20に向けて摺動体7が導かれることとなり、より円滑な摺動体7の摺動が実現される。
これにより、リール本体1の前後方向およびハンドル軸4の軸方向のコンパクト化を図ることができる。
【0039】
また、案内部材30は、図2(a)に示すように、前後方向において、挿通部20と連動歯車6aとの間に形成されたスペースを利用して設けられているので、十分な設置スペースの確保が難しいリール本体1の内側においても、狭いスペースを有効に利用した摺動体7のガイドが実現される。
【0040】
図7(a)〜(c)は本実施形態の魚釣用スピニングリールの要部の変形例を示す図である。図7各図に示すように、これらの変形例が前記実施形態と異なるところは、案内部材30を設けずに、挿通部20や摺動体7に対して直接に導入手段を設けている点である。
図7(a)では、挿通部20の導入口において、側面23および側面10bを、前端へ向けてハンドル軸4の軸方向(左右方向)に拡がるように形成しており、これによって導入手段となる案内面24,10cを設けている。
また、図7(b)では、挿通部20の側面23および側面10bの全体を、後端から前端へ向けてハンドル軸4の軸方向(左右方向)に拡がるように形成しており、これによって導入手段を備えた側面23および側面10bとしている。
また、図7(c)では、摺動体7の後端部を後端へ向けてハンドル軸4の軸方向(左右方向)に窄まるように形成して、導入手段となる案内面7d,7dを設けている。
【0041】
以上のような変形例の魚釣用スピニングリールにおいても、前記した実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、図7(a)における案内面24,10cや図7(b)における側面23,10b、さらには、図7(c)における案内面7d,7dに対して、前記した実施形態と同様のレール状の案内部を設けることによって、前記した実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、これらの案内面24,10c、側面23,10bおよび案内面7d,7dは、曲面を含むものとしてもよい。また、それぞれを組み合わせてもよい。
【0042】
なお、前記実施形態では、案内部材30をリール本体1や蓋部材10に一体的に形成したものを示したが、これに限られることはなく、リール本体1や蓋部材10と別体に形成してもよい。
また、摺動体7に対する案内部31の相対位置が固定されるものであれば、案内部材30とリール本体1や蓋部材10との間に別部材が介在されてもよい。
【0043】
また、図7(d)に示すように、ばね部材33をリール本体1および蓋部材10に取り付けて導入手段を構成してもよい。
ばね部材33は、リール本体1および蓋部材10に取り付けるための取付部33aと、前記した実施形態の案内部31と同様の役割をなす弾性片33bとからなる。
【0044】
導入手段をこのようなばね部材33とすることにより、ズレ等を生じて摺動体7が当接した際の衝撃を弾性片33bで好適に吸収することができ、より円滑な摺動体7の摺動を実現することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 リール本体
3 スプール
4 ハンドル軸
5 ハンドル
7 摺動体
9 スプール軸
20 挿通部
30 案内部材
31 案内部
31a 案内部
X1 最前端位置
X3 最後端位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルに連結されてリール本体に回転可能に設けられたハンドル軸と、前端にスプールが取り付けられ、後端に摺動体が取り付けられたスプール軸と、前記ハンドル軸の回転運動を、前記摺動体を介して前記スプール軸の軸方向となる前後方向の往復動に変換するオシレーティング機構と、を有する魚釣用スピニングリールであって、
前記リール本体の後端部に設けられ、前記スプール軸が最後端位置に移動した際に、前記摺動体の一部を受け入れる挿通部を備え、
前記挿通部および前記摺動体の少なくとも一方には、後端へ向けて移動する前記摺動体を前記挿通部内に導く導入手段が設けられていることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記導入手段は、前記挿通部の導入口から前端へ向けて延設されたレール状の案内部を有して前記挿通部に設けられており、
前記案内部は、前端へ向けて前記ハンドル軸の軸方向に拡がるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記スプール軸の軸方向に沿う前記案内部の長さは、前記挿通部の長さよりも長く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−109985(P2011−109985A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270460(P2009−270460)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】