説明

魚釣用スピニングリール

【課題】製造コストを高騰させることなく、スプール軸を前後動させる摺動体を精度良く安定して案内するオシレート機構を備えた魚釣用スピニングリールを提供する。
【解決手段】本発明は、ハンドルの回転に連動回転するロータ3と、オシレート機構10を介して前後動されるスプール4とを有する。オシレート機構10は、スプールを支持したスプール軸4aの後端に設けられ、ハンドルの回転によってスプール軸方向に沿って往復動される摺動体12と、リール本体1に設けられ、摺動体12を案内するガイド軸15とを備えており、リール本体1には、ガイド軸15を、少なくとも前後2箇所で支持する凹所16a,17aを具備した保持部16,17が形成されており、各保持部は、それぞれの凹所の開口が、リール本体1を閉塞する本体カバー1A側に向くと共に、開口方向がガイド軸15の軸芯とスプール軸の軸芯とを結ぶ直線に対して90°以上に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸が巻回されるスプールを前後往復動させるオシレート機構を備えた魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、魚釣用スピニングリールは、ハンドルを回転操作した際、連動回転するロータと、前後動するスプールとを備えている。前記ロータは、ハンドル軸に設けられた駆動歯車(ドライブギヤ)とこれに噛合するピニオンギヤを介して回転駆動され、前記スプールは、オシレート機構を介して前後往復動される。
【0003】
通常、魚釣用スピニングリールのオシレート機構として、前記駆動歯車と一体回転する中間歯車に噛合する連結歯車を利用して、スプール軸を前後動させる、いわゆるギヤオシレート方式が知られている。このオシレート機構(ギヤオシレート方式)は、スプール軸後端にカム溝を有する摺動体を設けておき、前記連結歯車に設けられた偏芯突部をカム溝に係合させることで、摺動体を前後動可能にするものである。
【0004】
ところで、このようなオシレート機構は、魚が掛かった場合等、釣糸に負荷が作用すると、その負荷がスプール軸を介して摺動体に作用する可能性があることから、摺動体には、スプール軸周りの回転を抑制する手段が設けられている。例えば、特許文献1には、スプール軸方向に沿って、リール本体に所定間隔をおいて貫通孔を形成しておき、ここにガイド軸を挿通させ、ガイド軸に沿って摺動体を案内する構成が開示されている。また、特許文献2には、リール本体に形成された複数のレール、或いは本体と本体カバーに形成されたレールで摺動体を挟んだ状態で摺動体を案内する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−81077号
【特許文献2】特開2004−135607号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1に開示されている技術では、ガイド軸を保持するための貫通孔をリール本体に形成する必要がある。通常、リール本体は、金型によって一体形成されるが、上記したような貫通孔を形成するには、リール本体を形成する金型に、スプール軸方向に沿ってスライドする細長い棒状の金型構成部分が必要となり、このような手段では、スプール軸との間で平行度(精度)にバラツキが生じ易いという問題がある。このため、機械加工の工程を加えて精度を出す方法も考えられるが、製造コストが高騰してしまい、好ましくない。
【0007】
一方、上記した特許文献2に開示されている技術は、リール本体と、本体カバーに一体形成されたレールで摺動体を挟む方法であるが、前後方向(スプール軸方向)に長いレール同士の間隔を精度良く保つには、成型時のヒケ(収縮等)があり難しい。
【0008】
すなわち、上記した何れの公知技術においても、オシレート機構の摺動体の位置を安定して前後動させる役割を果たす「ガイド軸」や「レール」の精度を得ることが難しく、そのため、スプール軸が回転方向にガタ付いたり、スプールの首振りや、回転異音の原因となってしまう。
【0009】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、製造コストを高騰させることなく、スプール軸を前後動させる摺動体を精度良く安定して案内するオシレート機構を備えた魚釣用スピニングリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用スピニングリールは、リール本体に設けられたハンドルの回転に連動回転するロータと、前記ハンドルを回転した際、オシレート機構を介して前後動されるスプールとを有しており、前記オシレート機構は、前記スプールを支持したスプール軸の後端に設けられ、前記ハンドルの回転によってスプール軸方向に沿って往復動される摺動体と、前記リール本体に設けられ、前記摺動体を案内するガイド軸とを備えており、前記リール本体には、前記ガイド軸を、少なくとも前後2箇所で支持する凹所を具備した保持部が形成されており、前記各保持部は、それぞれの凹所の開口が、前記リール本体を閉塞する本体カバー側に向くように前記リール本体に形成されると共に、前記凹所の開口方向が、前記ガイド軸の軸芯とスプール軸の軸芯とを結ぶ直線に対して90°以上となるように形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記した構成の魚釣用スピニングリールによれば、オシレート機構を構成するガイド軸は、リール本体に形成される保持部の凹所によって支持される。すなわち、ガイド軸は、リール本体と共に一体形成されるのではなく、リール本体とは別体として構成され、保持部の凹所に保持される。
【0012】
この場合、保持部は、その凹所の開口がリール本体を閉塞する本体カバー側に向くようにリール本体に形成されることから、金型でリール本体を形成する際、支持部の精度が出し易くなり、保持されるガイド軸を精度良く位置決め、固定すること可能となる。また、ガイド軸は、リール本体とは別体であるため、上記した特許文献2のような成型時のヒケ等の影響もなく、簡単な構成で安価にオシレート機構の良好な性能が得られる。さらに、保持部の凹所の開口方向が、ガイド軸の軸芯とスプール軸の軸芯とを結ぶ直線に対して90°以上となるように形成されることから、スプール軸周りに回転方向の力が作用しても、ガイド軸がガタ付くことが防止され、摺動体を安定して案内することが可能となる。
【0013】
また、上記した構成の魚釣用スピニングリールでは、前記リール本体に形成された保持部については、それぞれの凹所の開口が前記リール本体を閉塞する本体カバー側に向くように前記リール本体に形成しておくと共に、凹所内に、ガイド軸を圧入、係止するための係止部を形成した構成であっても良い。すなわち、このような構成では、凹所の開口方向を90°以上に設定しなくても、係止部によってガイド軸を安定して支持することが可能となる。
【0014】
さらに、上記した構成の魚釣用スピニングリールでは、前記リール本体に形成された保持部については、それぞれの凹所の開口が前記リール本体を閉塞する本体カバー側に向くように前記リール本体に形成しておくと共に、前記本体カバーに凸状部を形成しておき、前記本体カバーをリール本体に被着した際、前記凸状部によって前記ガイド軸の抜け止めを行なうようにしても良い。すなわち、このような構成では、凹所の開口方向を90°以上に設定しなくても良く、更には、凹所は、断面V字状にする等、ガイド軸を当て付けて保持するような構成であっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造コストを高騰させることなく、スプール軸を前後動させる摺動体を精度良く安定して案内するオシレート機構を備えた魚釣用スピニングリールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る魚釣用スピニングリールの第1の実施形態を示す図。
【図2】図1に示す主要部の内部構成を示す図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】(a)は図2のB−B線に沿った断面図、(b)は図2のC−C線に沿った断面図。
【図5】ガイド軸を支持する保持部の作用を説明する概略図。
【図6】第1の実施形態において、ガイド軸を支持する保持部の第1の変形例を示す図であり、(a)は図2のB−B線に沿った断面図、(b)は図2のC−C線に沿った断面図。
【図7】第1の実施形態において、ガイド軸を支持する保持部の第2の変形例を示す図であり、(a)は図2のB−B線に沿った断面図、(b)は図2のC−C線に沿った断面図。
【図8】本発明に係る魚釣用スピニングリールの第2の実施形態を示す図であり、主要部を拡大した図。
【図9】図8において、カバー体の構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は底面図(下面図)、(c)は裏面図。
【図10】図8のD−D線に沿った断面図。
【図11】(a)は図8のE−E線に沿った断面図、(b)は図2のF−F線に沿った断面図。
【図12】第2の実施形態において、ガイド軸を支持する保持部の第1の変形例を示す図であり、(a)は図8のE−E線に沿った断面図、(b)は図8のF−F線に沿った断面図。
【図13】第2の実施形態において、ガイド軸を支持する保持部の第2の変形例を示す図であり、(a)は図8のE−E線に沿った断面図、(b)は図8のF−F線に沿った断面図。
【図14】リール本体に装着されるキャップの変形例を示す要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明に係る魚釣用スピニングリールの実施形態について説明する。
図1から図4は、本発明に係る魚釣用スピニングリールの第1の実施形態を示す図であり、図1は全体構成を示す図、図2は図1に示す主要部の内部構成を示す図、図3は図2のA−A線に沿った断面図、そして、図4(a)は図2のB−B線に沿った断面図、図4(b)は図2のC−C線に沿った断面図である。
【0018】
本実施形態の魚釣用スピニングリールのリール本体1には、釣糸案内部(図示せず)を具備し回転駆動されるロータ3と、ロータ3の回転駆動と同期して前後動されるスプール4が設けられている。
【0019】
前記リール本体1内には、ハンドル軸5が軸受を介して回転可能に支持されており、ハンドル軸5の端部には、巻き取り操作されるハンドル6が装着されている。また、前記ハンドル軸5には、ハンドル6の回転操作を、前記ロータ3側に伝達すると共に、前記スプール4側に伝達する駆動歯車(ドライブギヤ)7が設けられている。
【0020】
前記駆動歯車7は、ハンドル軸5に対して直交する方向に延出する回転軸筒8に設けられるピニオン8aと噛合しており、回転軸筒8の先端部には、ロータナット9を螺合することで、前記ロータ3が取り付けられている。
【0021】
前記回転軸筒8は、軸方向に沿って貫通しており、その内部には、前部に釣糸が巻回される前記スプール4を保持したスプール軸4aが挿通されている。このスプール軸4aの後端側には、前記ハンドル軸5がハンドル6の回転操作によって回転されたとき、スプール軸4a(スプール4)を軸方向に沿って前後往復動させるオシレート機構10が連結されている。そして、ハンドル6の回転操作によって前記ロータ3が駆動歯車7及び回転軸筒(ピニオン8a)を介して回転駆動することで、オシレート機構10を介して前後往復動されるスプール4には、ロータ3の釣糸案内部を介して釣糸が均等に巻回される。
【0022】
なお、上記したリール本体1内に設置される各種駆動部材は、リール本体1に対して着脱可能に被着される本体カバー1Aによって閉塞される。この本体カバー1Aは、図2において紙面と垂直方向から(図3においては図中左側から)リール本体1にビス止め等によって被着され、本体カバー1Aとリール本体1との間の空間に、上記した各種駆動部材が設置される。
【0023】
前記オシレート機構10は、ハンドル軸5に取り付けられて前記駆動歯車7と一体回転する中間歯車7aに噛合される連結歯車11と、前記スプール軸4aの後端にビス等によって固定される摺動体(オシレートスライダ)12とを備えている。
【0024】
前記摺動体12には、公知のように、所定形状のカム溝12aが形成されており、このカム溝12aに前記連結歯車11に偏芯して突設された係合突起11aが係合されている。これにより、摺動体12は、ハンドル6を回転操作すると、中間歯車7aを介して回転駆動される連結歯車11の係合突起11aとカム溝12aとの係合関係によって前後方向に往復駆動され、摺動体12に取り付けられているスプール軸4a(スプール4)を前後往復動させる。
【0025】
前記オシレート機構10は、更に、摺動体12を案内するガイド軸(ピラー)15を備えている。ガイド軸15は、リール本体1及び本体カバー1Aとは別体として形成される棒状の部材であり、前記摺動体12の下端側に位置する係合部12bに設けられた係合孔に挿通される。このガイド軸15は、摺動体12が前後往復動される際、その移動を安定してガイドする機能を果たしており、特にスプール軸4aに回転方向の負荷が作用しても、摺動体12を回転させないようにガイドする機能を有する。
【0026】
前記ガイド軸15は、摺動体12の前後方向の移動ストロークの範囲をカバーできる長さを有していれば良く、スプール軸4aとの間で平行度を維持した状態でリール本体1に装着される。
【0027】
具体的には、リール本体1には、ガイド軸15を、少なくとも前後の2箇所で支持する保持部16,17が形成されている。これらの保持部16,17は、リール本体1と共に一体形成され、ガイド軸15を一方向から差し込んで支持できるように、凹所16a,17a(本実施形態では、断面U字型に形成されている)を備えている。この場合、各保持部16,17は、それぞれの凹所の開口16b,17bが、前記リール本体1を閉塞する本体カバー1A側に向くようにリール本体1に形成されており、開口16b,17bの幅W(凹所を規定する上下のエッジ16c,17cの幅)については、ガイド軸15の径と略同じに設定されて、凹所内に係合させたガイド軸15がガタ付かないように構成されている。
【0028】
前記リール本体1については、樹脂材料や金属材料によって、金型によって成形することが可能であり、前記保持部16,17については、リール本体1を成形する金型本体部分(或いは、別体であっても高剛性の部分)によって、リール本体1と共に一体形成することが可能である。例えば、リール本体1は、金型に材料を流し込む成形方法で製造することが可能であり、樹脂やマグネシウム合金を射出成形したり、アルミ合金をダイキャスト成形することで製造することが可能である。
【0029】
上記のように、リール本体1を金型によって成形する際、図4の矢印方向に金型を押圧することができるため、各保持部16,17を容易に形成できると共に、ガイド軸15の位置決めを果たす部分となる凹所16a,17aの底部16d,17d(ガイド軸の位置決めを果たす底部の位置)を出し易くなる。
【0030】
なお、本実施形態では、凹所の開口方向、すなわち、凹所を規定している上下のエッジ16c,17cの延出方向(ガイド軸15を係合するに際して差し込む方向)は、図5に示すように、スプール軸4aの軸芯P1とガイド軸15の軸芯P2を結ぶ直線に対して、その角度θを90°(直角)に設定している。
【0031】
以上のように構成されるオシレート機構10を備えた魚釣用スピニングリールの作用、効果について説明する。
【0032】
オシレート機構10を構成するガイド軸15は、リール本体1に一体形成される保持部16,17の凹所16a,17aによって支持される。すなわち、リール本体1の前後に設けた本体カバー1A側に開口する保持部の凹所にガイド軸15を装着、支持する構成としたので、金型成形時における保持部16,17の精度、特に、ガイド軸15の位置決めを果たす凹所16a,17aの底部16d,17dの精度が出し易いと共に、ガイド軸15は、リール本体1とは別体であることから成形時のヒケ等の影響もなく、簡単な構成で安価にオシレート機構10の良好な性能が得られるようになる。
【0033】
また、各凹所16a,17aの開口方向を、スプール軸4aの軸芯P1とガイド軸15の軸芯P2を結ぶ直線に対して90°(直角)に設定しているため、図5の概略図に示すように、スプール軸4aの周りに回転の負荷が作用し、摺動体に同様な回転方向の負荷が作用してガイド軸15を回転させようとしても、各エッジ16c,17cによってその回転が規制され、点線で示すような回転を防止することができる。このため、例えば、ドラグの引き出し時や釣糸巻き取り時に、スプール軸4aに対して大きな回転方向の負荷が作用しても、ガイド軸15の抜けが防止されると共に、摺動体15を安定して案内することができ、更には、スプール4の首振りや回転異音の発生、振動を防止することができる。
【0034】
図6は、上記した第1の実施形態において、ガイド軸を支持する保持部の第1の変形例を示す図であり、(a)は図2のB−B線に沿った断面図、(b)は図2のC−C線に沿った断面図である。
【0035】
この図に示すように、各凹所の開口方向(エッジ16c,17cの延出方向)については、スプール軸4aの軸芯P1とガイド軸15の軸芯P2を結ぶ直線に対して90°(直角)以上に設定しておくことが好ましい。この変形例では、そのような角度θを100°に設定しており、このように90°以上に設定することで、ガイド軸15の抜け、及び図5に示したような回転をより確実に防止することが可能となる。
【0036】
なお、上記した角度θについては、あまり大きくしすぎると、各凹所16,17を形成するための金型構造が複雑になり、底部16d、17dの精度が低下傾向となるため、その角度θについては、135度以下に設定しておくことが好ましい。また、直角に形成しておくと、負荷が作用した際、及び実釣時におけるリール本体の向きによって開口側にシフトする可能性があるため、93度以上に設定しておくことが好ましい。すなわち、93°≦θ≦135°に設定しておくことが好ましい。
【0037】
図7は、上記した第1の実施形態において、ガイド軸を支持する保持部の第2の変形例を示す図であり、(a)は図2のB−B線に沿った断面図、(b)は図2のC−C線に沿った断面図である。
【0038】
上記したように、保持部16,17に形成される凹所は、ガイド軸15を抜けないように支持でき、かつ回転しないように構成できれば、例えば、図7に示すように構成することが可能である。この変形例では、各凹所16a,17aを規定するエッジ16c,17cの中間部分に凸部(係止部)16e,17eを形成しており、ガイド軸15を圧入して固定するように構成したものである。
【0039】
このように構成しても、ガイド軸15の抜け、及び回転をより確実に防止することが可能となる。また、このような構成では、上記した角度θについては、90°未満に設定されていても、ガイド軸15の抜け、及び回転を確実に防止することが可能となる。
【0040】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態の説明では、上記した実施形態と同一の部分については、同一の参照符号を付し、その説明については省略する。
【0041】
図8から図11は、第2の実施形態を示しており、図8は主要部を拡大した図、図9はカバー体の構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は底面図(下面図)、(c)は裏面図、図10は図8のD−D線に沿った断面図、そして、図11(a)は図8のE−E線に沿った断面図、図11(b)は図2のF−F線に沿った断面図である。
【0042】
本実施形態では、リール本体1に被着される本体カバー1Aに凸状部(ボス部)26,27を形成している。これらの凸状部26,27は、本体カバー1Aをリール本体1に被着した際、リール本体1に形成されている保持部16,17の凹所16a,17aの開口に入り込んで、図11に示すようにガイド軸15を押圧できる位置、及び高さに形成されている。すなわち、本体カバー1Aをリール本体1に被着すると、凸状部26,27は、凹所16a,17aに係合されたガイド軸15を押圧し、ガイド軸15の抜け止めが成されるように構成されている。
【0043】
このような構成によれば、本体カバー1Aをリール本体1に被着することで、ガイド軸15の抜け、及び回転を確実に防止することが可能となる。また、このような構成では、上記した角度θについては、90°未満に設定されていても、ガイド軸15の抜け、及び回転を確実に防止することが可能となる。
【0044】
図12は、上記した第2の実施形態において、ガイド軸を支持する保持部の第1の変形例を示す図であり、(a)は図8のE−E線に沿った断面図、(b)は図8のF−F線に沿った断面図である。
【0045】
この図に示すように、リール本体1に一体形成される各保持部16,17の凹所については、断面Uの字形状にするのではなく、V字形状にしても良い。すなわち、本体カバー1Aに凸状部26,27を形成したことにより、ガイド軸15の抜けや回転が防止できることから、凹所の形状については適宜変形することが可能である。したがって、図に示す形状以外にも、例えば、断面L字形状にしてガイド軸15を載置して、凸状部26,27で押さえ付けるように構成したものであっても良い。なお、V字形状にすると、ガイド軸を取り付ける作業性が向上する。
【0046】
図13は、第2の実施形態において、ガイド軸を支持する保持部の第2の変形例を示す図であり、(a)は図8のE−E線に沿った断面図、(b)は図8のF−F線に沿った断面図である。
【0047】
この変形例では、本体カバー1Aの凸状部26,27とガイド軸15との間にゴムなどの弾性体30を介在させている。前記弾性体30については、凸状部26,27の先端に予め取着しておくことが好ましく、このような弾性体30を設けておくことで、凸状部26,27が成形時のヒケによって多少の寸法誤差があっても、本体カバー1Aを被着した際、ガイド軸15を確実に押さえ付けることができ、精度の良い位置決めを実現することが可能となる。また、弾性体30がガイド軸15に接触することから、ガイド軸15の振動を吸収する効果も得られ、回転中の不快な振動を抑制することが可能となる。
【0048】
図14はリール本体に装着されるキャップの変形例を示す要部拡大図である。
前記リール本体1には、デザイン上の理由、及びメンテナンス上の理由から、キャップ1Cが装着されることがある。この変形例では、キャップ1Cに、ガイド軸15の端面15dに当接する当接部35を形成している。このように、キャップ1Cを利用して、ガイド軸15の前後方向の移動を規制することも可能である。また、このような構成では、キャップ1Cを外すだけでガイド軸15に注油することができ、メンテナンス性の向上が図れるようになる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記したように、オシレート機構10のガイド軸15を支持する保持部16,17の構成に特徴があり、それ以外の構成については適宜変形することが可能である。この場合、保持部に形成される凹所については、断面Uの字型やV字型以外にも、コの字型にする等、適宜変形することが可能である。また、リール本体1に形成され、ガイド軸15を支持する保持部については3箇所以上存在していても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 リール本体
1A 本体カバー
3 ロータ
4 スプール
6 ハンドル
10 オシレート機構
12 摺動体
15 ガイド軸
16,17 保持部
16a,17a 凹所
16d,17d 底部
26,27 凸状部
30 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に設けられたハンドルの回転に連動回転するロータと、前記ハンドルを回転した際、オシレート機構を介して前後動されるスプールとを有する魚釣用スピニングリールにおいて、
前記オシレート機構は、前記スプールを支持したスプール軸の後端に設けられ、前記ハンドルの回転によってスプール軸方向に沿って往復動される摺動体と、前記リール本体に設けられ、前記摺動体を案内するガイド軸とを備えており、
前記リール本体には、前記ガイド軸を、少なくとも前後2箇所で支持する凹所を具備した保持部が形成されており、
前記各保持部は、それぞれの凹所の開口が、前記リール本体を閉塞する本体カバー側に向くように前記リール本体に形成されると共に、前記凹所の開口方向が、前記ガイド軸の軸芯とスプール軸の軸芯とを結ぶ直線に対して90°以上となるように形成されていることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
リール本体に設けられたハンドルの回転に連動回転するロータと、前記ハンドルを回転した際、オシレート機構を介して前後動されるスプールとを有する魚釣用スピニングリールにおいて、
前記オシレート機構は、前記スプールを支持したスプール軸の後端に設けられ、前記ハンドルの回転によってスプール軸方向に沿って往復動される摺動体と、前記リール本体に設けられ、前記摺動体を案内するガイド軸とを備えており、
前記リール本体には、前記ガイド軸を、少なくとも前後2箇所で支持する凹所を具備した保持部が形成されており、
前記各保持部は、それぞれの凹所の開口が、前記リール本体を閉塞する本体カバー側に向くように前記リール本体に形成されると共に、前記凹所内に前記ガイド軸を圧入、係止させる係止部を形成したことを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
リール本体に設けられたハンドルの回転に連動回転するロータと、前記ハンドルを回転した際、オシレート機構を介して前後動されるスプールとを有する魚釣用スピニングリールにおいて、
前記オシレート機構は、前記スプールを支持したスプール軸の後端に設けられ、前記ハンドルの回転によってスプール軸方向に沿って往復動される摺動体と、前記リール本体に設けられ、前記摺動体を案内するガイド軸とを備えており、
前記リール本体には、前記ガイド軸を、少なくとも前後2箇所で支持する凹所を具備した保持部が形成されており、
前記各保持部は、それぞれの凹所の開口が、前記リール本体を閉塞する本体カバー側に向くように前記リール本体に形成されると共に、前記本体カバーに凸状部を形成し、前記本体カバーをリール本体に被着した際、前記凸状部によって前記ガイド軸の抜け止めを行なうことを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項4】
前記凸状部とガイド軸との間に弾性体を介在させたことを特徴とする請求項3に記載の魚釣用スピニングリール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−87541(P2011−87541A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245339(P2009−245339)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】