説明

魚釣用スピニングリール

【課題】釣糸が繰り出された際のスプールの制動調整がし易いと共に、水分等による滑りや魚の引きとのやり取り中において、制動感の変化を抑えた魚釣用スピニングリールを提供する。
【解決手段】魚釣用スピニングリールは、釣糸が巻回される釣糸巻回胴部7aとスカート部7cを有するスプール7と、スプールの回転に制動力を付与するドラグ機構15とを有し、スカート部7cに、スプール軸6に沿う方向に直線状に延びる細幅の貫通孔20を、周方向に亘って略均一に複数本形成する。そして、貫通孔20は、スプール軸6に沿う方向の成分が周方向成分より大きく、かつ隣接する貫通孔同士の間隔が1.0〜10mmで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸が巻回されるスプール部分に特徴を有する魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、魚釣用スピニングリールは、魚が掛かった際の釣糸の引き出しに対し、一定の制動力を与えるドラグ機構を備えており、釣糸に対する制動力は、スプールの前端、またはリール本体の後端に設けられたドラグノブを回転することで調整可能となっている。前記制動力については、魚が掛かっていないときに、予め所望の状態に設定しておくことが多いが、魚の引きとのやり取りの最中に、咄嗟に制動力を調整することがある。例えば、障害物の回りで魚を掛けた場合など、瞬時に強い制動力を付与する必要がある(制動力を付与せずに魚が障害物の中に入り込んでしまうと糸切れが生じ易い)。このような場合、従来のドラグ機構では、慌ててドラグノブを締め付けることとなるが、間に合わなかったり、或いは締め付けすぎて糸切れしてしまうことがある。
【0003】
一般的な魚釣用スピニングリールでは、実釣時において魚が掛かかり、スプールが回転して釣糸が繰り出された際、制動力を与えるために回転するスプール本体を指で摘むことも有り得るが、このような手法では、微妙な制動力の調整が難しい。このため、スプールのスカート部分に指を押し付けることで制動力の微妙な調整が行えるものが考えられる。
【0004】
ところで、従来の魚釣用スピニングリールには、回転するスプールに対して、ハンドルを巻き取り操作する側の指を利用して微妙なドラグ力の調整を行うべくスプール部分(特にスカート部分)に特別な工夫を施すという発想は存在しない。
ただし、最近の魚釣用スピニングリールでは、スプール部分に様々な理由で開口や溝を形成することが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−238409号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1に開示されているスプールには、スカート部分のリール本体側に周方向に沿って連続した円形開口が形成されているが、このような円形開口は意匠的な理由で施されたものであって、ドラグ力の調整を行う上で適切なものとなっていない。また、この特許文献1には、スカート部分に、長手方向に沿うと共に周方向に連続的に凹溝を形成した構成も開示されているが、このような凹溝は、放熱を意図したものであり、前記同様、ドラグ力の調整を行う上で適切なものではない。さらに、周方向に連続形成された凹溝では、水分(手や釣糸に付着している水分)が内部に留まってしまい、滑り易くなって制動感が変化してしまう。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、釣糸が繰り出された際のスプールの制動調整がし易いと共に、水分等による滑りや魚の引きとのやり取り中において、制動感の変化を抑えた魚釣用スピニングリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、釣糸が巻回される釣糸巻回胴部とスカート部を有するスプールと、前記スプールの回転に制動力を付与するドラグ機構とを有する魚釣用スピニングリールにおいて、前記スカート部に、スプール軸に沿う方向に直線状に延びる細幅の貫通孔を、周方向に亘って略均一に複数本形成し、前記貫通孔は、スプール軸に沿う方向の成分が周方向成分より大きく、かつ隣接する貫通孔同士の間隔が1.0〜10mmで形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記した魚釣用スピニングリールの構成によれば、実釣時に魚が掛かって釣糸が繰り出されてスプールが回転した際、ハンドルを操作している手の指(主に人差し指)をそのままスカート部分に押し付けることで、微妙な制動力を付与することが可能となる。すなわち、スプールと共に回転する細幅の貫通孔が、指の腹部に細かく密に食い込むため、サミング操作時に制動力が調整し易くなる。また、貫通孔であるため、手や釣糸に付着している水分が貫通孔内に浸入しても、内面側から逃げることができ、これにより、滑り難く、魚の引きとのやり取りの最中、同一の制動感が得られるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、釣糸が繰り出された際のスプールの制動調整がし易いと共に、水分等による滑りや魚の引きとのやり取り中において、制動感の変化を抑えた魚釣用スピニングリールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る魚釣用スピニングリールの第1の実施形態を示す図。
【図2】実釣時において、スプールに対して指で制動力を付与する状態を示す図。
【図3】スプール部分の拡大図。
【図4】図3のA−A線に沿った断面図。
【図5】図3のB−B線に沿った断面図。
【図6】スカート部に形成される貫通孔を拡大した平面図。
【図7】図5に示した断面図の一部拡大図。
【図8】図4に示した断面図の一部拡大図。
【図9】貫通孔の第1の変形例を示す平面図。
【図10】図9のC−C線に沿った断面図。
【図11】貫通孔の第2の変形例を示す平面図。
【図12】図11のD−D線に沿った断面図。
【図13】貫通孔の第3の変形例を示す平面図。
【図14】図13のE−E線に沿った断面図。
【図15】図13のF−F線に沿った断面図。
【図16】図13のG−G線に沿った断面図。
【図17】本発明に係るスピニングリールの第2の実施形態を示す図であり、スプール部分の拡大図。
【図18】図17のH−H線に沿った断面図。
【図19】図17のI−I線に沿った断面図。
【図20】第2実施形態において、貫通孔を拡大した平面図。
【図21】図18に示した断面図の一部拡大図。
【図22】図20のK−K線に沿った断面図。
【図23】図20のL−L線に沿った断面図。
【図24】本発明に係るスピニングリールの第3の実施形態を示す図であり、スプール部分の拡大図。
【図25】図24のM−M線に沿った断面図。
【図26】第3実施形態において、貫通孔を拡大した平面図。
【図27】図25に示した断面図の一部拡大図。
【図28】図24のN−N線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明に係る魚釣用リールの実施形態について説明する。
図1及び図2は、本発明に係る魚釣用スピニングリールの第1の実施形態を示す図であり、図1は全体構成を示す図、図2は実釣時において、スプールに対して指で制動力を付与する状態を示す図である。
【0013】
魚釣用スピニングリールのリール本体1には、釣竿Rに装着される脚部1Aが形成されている。前記リール本体1内には、ハンドル軸3が軸受を介して回転可能に支持されており、ハンドル軸3の端部には、巻き取り操作されるハンドル4が装着されている。また、前記ハンドル軸には、公知の駆動力伝達機構が連結されており、ハンドル4の回転操作に伴ってロータ5を回転駆動すると共に、スプール軸6に係合する公知のオシレーティング機構を介して、スプール軸6の先端部に保持されたスプール7を前後動させるようになっている。
【0014】
前記ロータ5には、一対の支持アーム5aが軸方向に延出して対向するように形成されており、各支持アーム5aの先端には、夫々、ベール支持部材9を介して、ベール10が釣糸放出状態と釣糸巻回状態に回動可能に支持されている。そして、一方のベール支持部材9とベール10の端部との間には、釣糸案内装置12が支持されている。
【0015】
上記した構成において、ハンドル4を回転操作すると、駆動力伝達機構を介してロータ5が回転駆動されると共に、スプール軸6に係合したオシレーティング機構を介してスプール7が前後動される。これにより、釣糸は、ロータ5と共に回転する釣糸案内装置12を介してスプール7に片寄ること無く均等に巻回される。
【0016】
また、前記スプール軸6とスプール7との間には、公知のドラグ機構15が配設されており、スプールの前端面に設けられたドラグノブ16を回転操作することで、スプール7の釣糸繰り出し方向の回転に制動力を付与するようになっている(通常、ロータ5は、逆転防止状態に設定されている)。このドラグ機構15は、ドラグノブ16を回転操作することでスプール7に対する制動力を調整し、魚が掛かって釣糸が引き出された際、それに伴って回転するスプール7の回転に所望の制動を掛け、釣糸の切れや魚の口切れを防止する機能を果たす。
【0017】
前記スプール7は、釣糸が巻回される釣糸巻回胴部7aと、その前方側に位置するフランジ7bと、後方側に位置して径方向に膨出するスカート部7cとを備えており、釣糸巻回胴部7aに巻回される釣糸は、フランジ7bとスカート部7cとによって規制される。そして、前記スカート部7cの外周面には、制動力を調整するための貫通孔20が周方向に亘って複数、形成されている。このような複数の貫通孔20は、指を当て付けることでその回転に制動力を付与することが可能となる。
【0018】
具体的には、図2に示すように、実釣時では、一方の手の指と指の間(中指と薬指の間など)に脚部1Aを挟みつつ、釣竿Rを握り込み、他方の手でハンドル4の回転操作を行う。この状態で魚が掛かり、釣糸を引き出すとスプール7は、釣糸放出方向に回転することとなるが、この回転に対しては、ハンドル4を握っている手の指を伸ばし、スカート部分に当接させることで、貫通孔20との間に作用する摩擦力によって所望の制動力を直ちに作用させることが可能となる。すなわち、ハンドル部分から手を離してドラグノブ16を回転操作する必要がないため、ハンドルの素早い巻き取り移行状態を維持しつつ、ドラグ力の微妙な調整を行うことが可能となる。
【0019】
以下、図3から図8を併せて参照しながら、スプールのスカート部7cに設けられる貫通孔20の構成について具体的に説明する。なお、これらの図において、図3はスプール部分の拡大図、図4は図3のA−A線に沿った断面図、図5は図3のB−B線に沿った断面図、図6はスカート部に形成される貫通孔を拡大した平面図、図7は図5に示した断面図の一部拡大図、そして、図8は図4に示した断面図の一部拡大図である。
【0020】
前記スプール7を構成するスカート部7cには、スプール軸6に沿う方向Xに直線状に延びる細幅の貫通孔20が、周方向(スプール軸方向Xと直交する方向Y)に亘って略均一に複数本形成されている。各貫通孔20は、細幅、具体的には、スプール軸6に沿う方向の成分(孔の延出方向)X1が、周方向に沿う方向の成分(孔の幅方向)Y1より大きい細幅形状(好ましくはX1:Y1=100:3〜30がサミングする指(人差し指)の形状からサミングのフィーリングが良い)に形成されており、スカート部の外側から内側に貫通されている。なお、細幅の貫通孔20の幅寸法は、サミングする指(人差し指)の形状を考慮すると、1.0〜5.0mmが好ましく、ゴツゴツ感の少ない滑らかな制動感及び制動力が得られる。また、図6から図8に示すように、各貫通孔20は、スカート部の外側から内側に向けて垂直に切り立つように形成されており、水分などが容易に抜け易いように形成されている。なお、細幅の貫通孔20がスプール軸方向Xに沿って形成される場合、前記夫々の成分X1,Y1の方向は方向X,Yと一致する。
【0021】
そして、貫通孔20は、スカート部7cの周方向に沿って、複数本形成されており、スプール7が回転した際、指を押し当てることで、指の腹部が貫通孔内に入り込み、スプール7の回転に効果的に制動力を付与できるようになっている。貫通孔20の形成個数は、スプール7の大きさによって変わるが、あまり多数本形成すると、スプール7の強度が低下してしまい、逆に少な過ぎると、微妙な制動力の調整が難しくなるため、隣接する貫通孔20同士の間隔Wについては、1.0〜10mmとして、略均一となるように形成されている。すなわち、複数本形成される貫通孔20の各周方向における間隔Wについては、スプール7の大きさに関係なく、上記した範囲内に設定される。また、一周あたりの貫通孔20の本数は、サミング性の滑らかさを考慮すると、16〜60本が好ましく、強度、剛性のバランスも含めて特に24〜48本がより好ましい。
【0022】
なお、貫通孔20を形成する位置については、サミング操作のし易さを考慮して、スカート部7cの後方側にすることが好ましい。具体的には、スカート部7cの長さをLとした場合、その後端Pから80%以下の範囲に形成されていれば良い。
【0023】
上記した構成の魚釣用スピニングリールによれば、実釣時に魚が掛かって釣糸が繰り出されてスプール7が回転した際、図2に示すように、ハンドル4を操作している手の指(主に人差し指)をそのままスカート部7cに押し付けることで、貫通孔20の回転領域に対して微妙な制動力を付与することが可能となる。すなわち、スプール7と共に回転する細幅の貫通孔20が、指の腹部に細かく密に食い込むため、サミング操作時に制動力が調整し易くなる。また、夫々の貫通孔20は、溝状(有底)ではなく抜けた状態になっているため、手や釣糸に付着している水分が貫通孔内に浸入しても、内面側から逃げることができ、滑り難く、更には、各貫通孔20の形成間隔Wも上記した範囲内で略均一に形成されていることから、魚の引きとのやり取りの最中、同一の制動感が得られるようになる。
【0024】
図9及び図10は、貫通孔の第1の変形例を示す図であり、図9は平面図、図10は図9のC−C線に沿った断面図である。
この変形例の貫通孔20Aは、長手方向の両端部の内面21が直線状に傾斜しており(傾斜面21)、外側の長さL1よりも内側の長さL2が短く形成されている。
【0025】
上記したように、貫通孔20Aは、制動力を付与する際に指の腹部で押し付ける部分であるため、強度や剛性が重要となるが、上記したように、両端部を傾斜させたことで、スカート部の内側の開口領域が少なくなり、スプール7の強度や剛性を低下させることがなくなる。また、傾斜面21の外面側の端部は鈍角となるので、サミングする指をX方向(図3)にスライドさせても引っ掛かったりせず、滑らかな調整が可能となり、指が痛くなることもない。なお、傾斜面21は、貫通孔20Aのいずれか一方の端部に形成されていても良い。
【0026】
図11及び図12は、貫通孔の第2の変形例を示す図であり、図11は平面図、図12は図11のD−D線に沿った断面図である。
この変形例の貫通孔20Bは、上記した第1の変形例と同様、長手方向の両端部の内面22が傾斜しており(傾斜面22)、外側の長さL1よりも内側の長さL2が短く形成されている。また、各傾斜面22は、図2に示すように、その表面が凹状に湾曲形成されている。
【0027】
このように、傾斜面22を凹状の湾曲面とすることで、制動時に指の食い込む断面積を大きくしながら、剛性及び強度の確保が可能となり、また、応力集中し難くすることが可能となる。また、前記凹状の湾曲面は、半径20〜60mmの円弧状が指の形状とのフィット感が良く特に好ましい。なお、この変形例においても、傾斜面22は、貫通孔20Bのいずれか一方の端部に形成されていても良い。
【0028】
図13から図16は、貫通孔の第3の変形例を示す図であり、図13は平面図、図14は図13のE−E線に沿った断面図、図15は図13のF−F線に沿った断面図、そして、図16は図13のG−G線に沿った断面図である。
この変形例の貫通孔20Cは、上記した第2の変形例と同様、長手方向の両端部の内面(傾斜面)22が傾斜し、かつその表面は凹状に湾曲形成されている。
【0029】
また、前記貫通孔20Cは、スカート部7cの前後方向(スプール軸方向)において、溝幅が変化する形状となっている。すなわち、図13に示すように、スカート部7cの釣糸巻回胴部側の幅W1がリール本体側の幅W2よりも大きくなるように形成されており、これにより、指を当て付ける位置を軸方向にスライドさせることで、制動力を容易に調整することが可能となる。この場合、周方向における両サイドの内面24を傾斜させることで(傾斜面24)、剛性及び強度の確保が可能となり、応力集中し難くすることが可能となる。また、傾斜面21の外面側の端部は鈍角となるので、サミングする指をX方向(図3)にスライドさせても引っ掛かったりせず、滑らかな調整が可能となり、指が痛くなることもない。なお、傾斜面24については、図14の傾斜面22と同様、湾曲面として形成されていても良い。
【0030】
図17から図23は、本発明に係るスピニングリールの第2の実施形態を示す図であり、図17はスプール部分の拡大図、図18は図17のH−H線に沿った断面図、図19は図17のI−I線に沿った断面図、図20は貫通孔を拡大した平面図、図21は図18に示した断面図の一部拡大図、図22は図20のK−K線に沿った断面図、そして、図23は図20のL−L線に沿った断面図である。なお、以下に説明する実施形態では、上記した実施形態及び変形例と同一の構成については、同一の参照符号を付して詳細な説明は省略する。
【0031】
本実施形態のスプール7Aのスカート部7cは、スプール軸方向に沿って外径が変化する形状となっている。具体的には、釣糸巻回胴部側がスプール軸と平行な円周面7eとなっており、リール本体側が、リール本体側に向けて次第に縮径(テーパ状に細径化)する円周傾斜面7fとなる形状に形成されている。
【0032】
そして、スカート部7cに形成される貫通孔20Dは、上記した第3の変形例と同様、スカート部7cの前後方向(スプール軸方向)において、溝幅が変化する形状となっており、図20に示されるように、前記円周傾斜面7fが形成される位置を境にして、リール本体側が次第に細幅となるように形成されている。また、貫通孔20Dは、前後方向の傾斜面22が、上記した第3の変形例と同様、凹状の湾曲面として形成されており(図21参照)、両サイドの傾斜面の内、円周面7eの領域では、複数の直線状の面26a,26bで構成される傾斜面26(図22参照)、円周傾斜面7fの領域では、直線状の傾斜面24(図23参照)として形成されている。
【0033】
このような構成のスプールによれば、前後方向に指をずらすことで、外周面までの距離が変化して指の圧力が変化することから、制動力の調整を容易に行うことが可能となる。また、本実施形態においても、スカート部7cの釣糸巻回胴部側の幅W1がリール本体側の幅W2よりも大きくなるように形成されているため、指を当て付ける位置を軸方向にスライドさせることで、制動力を容易に調整することが可能となり、さらに、貫通孔20Dの内面を適宜傾斜させたことで、剛性及び強度の確保が可能となり、応力集中し難くすることが可能となる。また、傾斜面21の外面側の端部は鈍角となるので、サミングする指をX方向(図3)にスライドさせても引っ掛かったりせず、滑らかな調整が可能となり、指が痛くなることもない。なお、スカート部の形状変化については、更に段階的に外径が変化するように形成しても良いし、テーパ状に形状変化しても良い。
【0034】
図24から図28は、本発明に係るスピニングリールの第3の実施形態を示す図であり、図24はスプール部分の拡大図、図25は図24のM−M線に沿った断面図、図26は貫通孔を拡大した平面図、図27は図25に示した断面図の一部拡大図、そして、図28は図24のN−N線に沿った断面図である。
【0035】
本実施形態のスプール7Bのスカート部7cに形成される貫通孔20Eは、その延びる方向が、スプール軸に対して傾斜するように形成されている。すなわち、各貫通孔20Eの延出方向X1は、スプール軸に沿った方向Xに対して所定角度θ傾斜するように複数本形成されている(貫通孔同士の間隔Wは、延出方向X1に対して直交する方向となる)。この場合、各貫通孔20Eの傾斜させる向きは、釣糸引き出し時のスプールの回転方向をD1とすると、釣糸巻回胴部側がD1方向に傾斜するように形成することが好ましい。また、その傾斜角度については、スプール軸に沿った方向Xに対して5°〜35°に設定することが好ましい。
【0036】
上記した構成のスプールによれば、貫通孔20Eの方向が適度に傾斜しているため、制動力を弱めることが可能となり、微調整がし易いものを提供できる。特に、スカート部7cに当接させる指の腹部は、先端側(釣糸巻回胴部側)が大きな力になり易いことから、釣糸巻回胴部側を回転方向D1に傾斜させたことで、指先の長手方向における貫通孔20Eの食い込む本数を減らすこととなり、摩擦力(制動力)を効果的に弱めることが可能となる。また、周方向に多数本形成される貫通孔20Eが全体として傾斜していることから、外観の向上を図ることが可能となる。もちろん、傾斜させる方向については、リール本体側がD1方向に傾斜するように形成しても良く、その場合は、指の腹部により多くの貫通孔20Eが食い込むので、強めの制動力となる。なお、本実施形態では、左ハンドル(図2)の場合であり、右ハンドルにした場合は、反対の傾向となる。以上のように、貫通孔を傾斜させることで制動力の調整幅が拡大する。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、上記した各実施形態や変形例で説明した構成については適宜、組み合わせて実施することが可能である。また、貫通孔を規定する内面については、垂直面、直線状の傾斜面、湾曲状の傾斜面、及び、これらを組み合わせた面にする等、適宜、変形することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 リール本体
4 ハンドル
5 ロータ
7,7A,7B スプール
7a 釣糸巻回胴部
7c スカート部
15 ドラグ機構
20,20A〜20E 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸が巻回される釣糸巻回胴部とスカート部を有するスプールと、前記スプールの回転に制動力を付与するドラグ機構とを有する魚釣用スピニングリールにおいて、
前記スカート部に、スプール軸に沿う方向に直線状に延びる細幅の貫通孔を、周方向に亘って略均一に複数本形成し、
前記貫通孔は、スプール軸に沿う方向の成分が周方向成分より大きく、かつ隣接する貫通孔同士の間隔が1.0〜10mmで形成されていることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記貫通孔は、長手方向の端部が傾斜しており、外側の長さよりも内側の長さが短く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記傾斜面は、表面が凹状に湾曲していることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項4】
前記貫通孔の延びる方向は、スプール軸に対して傾斜していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の魚釣用スピニングリール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−125209(P2012−125209A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280825(P2010−280825)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】