説明

魚釣用スピニングリール

【課題】ロータの慣性力を低減して、ロータの回転性能を向上させることができるとともに、リール構成要素の収容形態をコンパクトにして、リール全体の小型化を図ることができる魚釣用スピニングリールを提供する。
【解決手段】本発明の魚釣用スピニングリールは、リール本体1の前部に装着される周壁を有するキャップ状のカバー体50を備え、ハンドルの回転操作で連動回転する駆動部8が貫通するカバー体50に、磁石151と、該磁石151との間で磁気回路を形成する筒状の磁性体21と、磁石151と磁性体21との間に保持される磁性流体15とで構成される磁気シール機構150が設けられ、前記磁性体21が転がり式一方向クラッチ10の内輪21から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール本体に設けたハンドルの回転操作で釣糸案内部を有するロータを回転駆動して、スプールに釣糸を巻回する魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用スピニングリールは、ハンドルの回転操作に連動回転するロータの釣糸案内部を介して釣糸をスプールに巻回する。
【0003】
また、魚釣用スピニングリールは、他の魚釣用リールと同様、海水や淡水が付着・侵入し易い環境の厳しい屋外で使用されるため、特に、回転性能に支障を来たし易い駆動部材の支持部への防食対策が必要になってくる。
【0004】
そのため、リール本体の前部の駆動部材の軸受部を抜け止めする抜け止め部材に、ロータのボス部に接触する接触リップ部を有するシール部材を設けて、駆動部材の軸受部の防水を図るようにする構造が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4057254号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるような構造では、弾性体製のシール部材が回転体(ロータの前記ボス部)と接触するため、シール部材と回転体との摩擦力(シール抵抗)が大きくなり、それによって、慣性力が大きくなる。したがって、ロータの回転感度やスムーズ性など、回転性能に欠けるという問題がある。
【0007】
また、魚釣用スピニングリールのロータには、前記シール部材に加えて、スプールに釣糸を案内する釣糸案内部、釣糸案内部を釣糸巻き取り状態と釣糸放出状態とに切換保持する付勢保持機構、釣糸放出状態から釣糸巻き取り状態に復帰させる反転機構、釣糸放出状態から釣糸巻き取り状態への反転復帰に伴って釣糸を釣糸案内部へ案内移行するベール、一方向クラッチ等、様々な装置や部品が装着されるが、こうした構成要素の収容形態をコンパクトにして、リール全体の小型化を図ることが望まれている。
【0008】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、ロータの慣性力を低減して、ロータの回転性能を向上させることができるとともに、リール構成要素の収容形態をコンパクトにして、リール全体の小型化を図ることができる魚釣用スピニングリールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、リール本体に回転自在に支持されたハンドルの回転操作でスプールに釣糸を巻回可能とする魚釣用スピニングリールにおいて、前記リール本体の前部に装着される周壁を有するキャップ状のカバー体を備え、前記ハンドルの回転操作で連動回転する駆動部が貫通する前記カバー体に、磁石と、該磁石との間で磁気回路を形成する筒状の磁性体と、磁石と磁性体との間に保持される磁性流体とで構成される磁気シール機構を設け、また、前記駆動部の一方向の回転を許容し他方向の回転を阻止する転がり式一方向クラッチを更に備え、前記磁気シール機構を構成する前記磁性体が前記一方向クラッチの内輪を兼ねていることを特徴とする
【0010】
上記構成によれば、従来の摩擦抵抗を伴うシール機構に代えて磁気シール機構を採用したことによりシール抵抗が低減されるため、ロータの回転慣性力が低減され、したがって、ロータの回転性能が向上される。また、この回転性能の向上により、ロータの回転および停止の操作感度が従来に比して飛躍的に向上し、釣糸の張力変化に敏感に反応できるようになるため、魚信感度が格段に向上される。また、上記構成によれば、リール本体の前部に装着される周壁を有するキャップ状のカバー体に磁気シール機構が設けられているため、不必要な磁性部材の吸着を防止して、ロータの回転性能やシール効果の低下を防止できるとともに、磁気シール機構や一方向クラッチの収容形態がコンパクトになり、リール全体の小型化に寄与できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の魚釣用スピニングリールによれば、ロータの慣性力を低減して、ロータの回転性能を向上させることができるとともに、リール構成要素の収容形態をコンパクトにして、リール全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの一部断面を伴う側面図である。
【図2】図1の魚釣用スピニングリールの要部拡大断面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図3のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図4の要部拡大断面図である。
【図6】図1の魚釣用スピニングリールのロータ部分の側面図である。
【図7】図6のC−C線に沿う断面図である。
【図8】カバー体の前面と略同一面上に磁気シール機構が突出することなく配置された状態を明確に示す図4に対応する断面図である。
【図9】図1の魚釣用スピニングリールのロータ部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
図1〜図9は本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールを示している。図1に示されるように、本実施形態に係るスピニングリールのリール本体1(例えば金属から形成される)には、釣竿に装着されるリール脚2が一体形成されており、その前方には、回転可能に支持されたロータ3と、ロータ3の回転運動と同期して前後動可能に支持されたスプール4とが配設されている。
【0015】
ロータ3は、スプール4の周囲を回転する一対(図1には一方だけが図示されている)の腕部3aを備えており、各腕部3aの夫々の前端部には、ベール3bの基端部を取り付けたベール支持部材3cが釣糸巻取り位置と釣糸放出位置との間で回動自在に支持されている。なお、ベール3bの一方の基端部は、ベール支持部材3cに一体的に設けられた釣糸案内部3d(図6参照)に取り付けられている。
【0016】
リール本体1内には、ハンドル軸5が回転可能に支持されており、その突出端部には、ハンドル6が取り付けられている。また、ハンドル軸5には、巻き取り駆動機構が係合しており、この巻き取り駆動機構は、ハンドル軸5に一体回転可能に装着された駆動ギヤ7と、この駆動ギヤ7に噛合するピニオン歯部8aを有する共にハンドル軸5と直交する方向に延出し且つ内部に軸方向に延在する空洞部が形成された回転駆動軸(駆動部)としてのピニオン8とを備えている。
【0017】
図2に明確に示されるように、ピニオン8は、ピニオン歯部8aの前側と後側とがそれぞれ、リール本体1に一体形成した支持部(リール本体1の前部に設けた支持部)1aに嵌合支持される対応する軸受9,9’により、リール本体1内に回転可能に支持されている。また、ピニオン8は、スプール4側に向けて延出しており、その先端部において、ロータ3が取り付けられている。なお、ピニオン歯部8aの前側の軸受9は、一端がピニオン歯部8aの前端に突き当てられており、後述する転がり式一方向クラッチ10との間に介挿される抜け止め部材37によって他端が軸方向で抜け止めされる。一方、ピニオン歯部8aの後側の軸受9’は、ピニオン歯部8aの後端とリール本体1の支持部1aとの間で挟持されることにより軸方向で固定される。
【0018】
また、ピニオン歯部8aの前側に配置した軸受9の前方側のピニオン8上には、転がり式一方向クラッチ10が取り付けられ(配置され)ており、リール本体1の外部に設けられた切換操作レバー11を回動操作することで一方向クラッチ10を作動させ、ハンドル6(ロータ3)の釣糸繰出し方向の逆回転を防止する公知の逆転防止機構(ストッパ)を構成するようになっている。
【0019】
ピニオン8の内部に形成された空洞部には、ハンドル軸5と直交する方向に延出し、先端側にスプール4を装着したスプール軸12が軸方向に移動可能に挿通されている。また、ピニオン8には、スプール4(スプール軸12)を前後往復動させるための公知のスプール往復動装置13が係合している。
【0020】
このような構成を有する魚釣用スピニングリールにおいて、ハンドル6により巻き取り操作を行うと、ロータ3が巻き取り駆動機構を介して回転駆動される共に、スプール4がスプール往復動装置13を介して前後往復動されるので、釣糸は、前記釣糸案内部を介してスプール4の巻回胴部4aに均等に巻回されるようになる。
【0021】
図2に示されるように、前記転がり式一方向クラッチ10は、ピニオン8に対して回り止め嵌合された内輪21と、内輪21の外側に配された保持器27と、保持器27の外側に配された外輪25とを有しており、後述する略筒状(略環状)の保護カバー(環状カバー体)50によってその外周が包囲されて保護されている。
【0022】
外輪25の内周面には、保持器27によって保持された複数の転動部材28がフリーに回転できるフリー回転領域と、複数の転動部材の回転を阻止する楔領域とが形成されており、各転動部材28は、保持器27に設けられたバネ部材によって楔領域に付勢されている。
【0023】
また、外輪25は、それに対するピニオン8の挿通によってほぼ閉塞される閉塞端部25cと反対側の開放端部25bとを有する略筒状体を形成しており、軸受9と転がり式一方向クラッチ10との間に介挿された前記抜け止め部材37によってリール本体1に対する回転が阻止されている。図示しないが、具体的には、例えば、環状リングの形態を成す抜け止め部材37の周方向の一部には径方向外側に突出する複数の係合部37aが互いに周方向に間隔を隔てて設けられており、これらの係合部が対応する位置に設けられた外輪25の切り欠き状の回り止め係止部25aに係止されている。そして、前記係合部に取着されるネジをリール本体1に螺合することにより、外輪25が前記係合部を介してリール本体1に対して回り止めされている。なお、本実施形態において、外輪25は、その開放端部25bを軸受9に対向させた状態で配置されている。そのため、本実施形態では、リールの軸方向寸法を短くするべく、抜け止め部材37が開放端部25bを通じて筒状の外輪25内に嵌め込まれている(図2参照)。この場合、環状の抜け止め部材37は、その内周側の抜け止め部37bが軸受9の外輪9aと当接することにより、軸受9の軸方向の抜け止めを行なう。
【0024】
このような構成の一方向クラッチ10において、ピニオン8と共に内輪21が正回転(ロータ3が釣糸巻取り方向に回転)すると、保持器27の転動部材28が外輪25のフリー回転領域に位置され、そのため、内輪21の回転力が外輪25に伝達されず(外輪25によって阻止されず)、したがって、ピニオン8と共にロータ3が支障なく回転する。これに対して、ピニオン8と共に内輪21が逆回転(ロータ8が釣糸繰出し方向に回転)しようとすると、保持器27の転動部材28が外輪25の楔領域に位置するため、内輪21の回転力が外輪25に伝達され、これがストッパとなって、ピニオン8およびロータ3の回転(逆回転)が阻止される。
【0025】
また、このような一方向クラッチ10を伴う逆転防止機構の作動は前記切換操作レバー11によって切り換え制御できるようになっている。具体的には、図2に示されるように、切換操作レバー11は、リール本体1内でスプール軸12と略平行に延びる切り換えカム33を有しており、この切り換えカム33の先端突部33aは保持器27の径方向に延びる延出部27aの係合孔52に係合して連結されている。したがって、この構成では、切換操作レバー11を回動操作することにより、切り換えカム33を介して保持器27を回動させれば、保持器27に保持される転動部材28をバネ部材の付勢力に抗して外輪25のフリー回転領域に強制的に保持させる逆転可能位置(ロータ3を逆回転させることができる位置)と、転動部材をバネ部材の付勢力によって外輪25の楔領域に位置させるようにする逆転防止位置(ロータ3の逆回転を防止する位置)との間で選択的に切り換えることができる。
【0026】
図4および図5に明確に示されるように、一方向クラッチ10を外周から保護する保護カバー(環状カバー体)50は、例えば樹脂から形成されてメッキ処理されており、リール本体1に対して着脱自在に取り付けられている。具体的には、保護カバー50は、径方向外側に位置する外側囲繞部(リール本体1の前部に装着された外側周壁)50aと、径方向内側に位置する内側囲繞部(リール本体1の前部に装着された内側周壁)50bと、これらの囲繞部50a,50b同士を接続する前端接続部50cとを有しており、前端接続部50cから挿脱可能に差し込まれるボルト139を外側囲繞部50aと内側囲繞部50bとの間の空間内に導入して一方向クラッチ10の外周側で延びるリール本体1の延出部1bの端部のネジ穴140に螺合することにより、リール本体1に対して所謂袋ネジ形態で着脱自在に取り付けられる。この場合、ネジ穴140に対するボルト139の螺合は、内側囲繞部50bの端面がリール本体1の延出部1bの端面に突き当たるまで行なう。これにより、リール本体1には、ハンドル6の操作で連動回転する駆動部材としてのピニオン8(及び/又は、これと一体に回転する内輪21)を部分的に収容する収容凹部240が凹状に形成される。また、この収容凹部240は、一方向クラッチ10を内部に位置決め状態で収容保持するとともに、スプール4側に面する前方側に開口240aを有している。また、この開口240aには水分や異物等が侵入する虞があるため、開口部240aをシールする後述する磁気シール機構150が設けられる。
【0027】
なお、外側囲繞部50aの端面とリール本体1との間にはOリング等のシール部材170が介挿される。また、保護カバー50の外側囲繞部50aの外周面には、保護カバー50をリール本体1に対して着脱する際に指で持ち易くするために使用される凹凸条59が軸方向に向けて複数形成されている。
【0028】
収容凹部240内をシールする磁気シール機構150は、ピニオン8を所定の隙間を存して囲繞するように配される磁石151と、これを保持する保持部材(磁気リング)152と、ピニオン8に回り止め嵌合されて一方向クラッチ10に嵌入されて磁石151との間で磁気回路を形成する(したがって、少なくとも保持部材152と対向する軸方向長さを有する)筒状の磁性体としての内輪21と、磁石51と内輪21との間に保持される磁性流体155とにより1つのユニットとして構成される。すなわち、本実施形態では、磁気シール機構150を構成する筒状の磁性体が一方向クラッチの内輪21を兼ねている。
【0029】
磁石151は、ピニオン8を挿通させるように、所定の厚さを具備してリング状に形成されており、保持部材152は、そのように形成された磁石151を両側から挟持して保持するように構成されている。
【0030】
なお、保持部材152は、リング状の磁石151を挟持して保持し且つその内側に周方向に沿って凹所151Aが生じるように形成されており、磁石151と共に保護カバー50によって支持される。具体的には、保持部材152は、その一方側で対面接触するボルト139の頭部とその他方側で対面接触する保護カバー50の段部との間に挟圧保持されており、保護カバー50と保持部材152との間にはシール部材169が介挿される。また、保持部材152は、磁性体としての内輪21の外表面との間に僅かな隙間Gが生じるように構成されている。
【0031】
磁性体としての内輪21は、鉄系の材料、例えば、鋼材、SUS430、SUS440C、SUS630等によって形成されており、これにより、磁石151によって、これを保持する保持部材152および内輪21との間に磁気回路が形成されるようになっている。
【0032】
また、磁性流体155は、例えばFeのような磁性微粒子を、界面活性剤およびベースオイルに分散させて構成されたものであり、粘性があって磁石を近づけると反応する特性を備えている。このため、磁性流体155は、磁石151、これを保持する保持部材152、および、磁性体としての内輪21によって形成される磁気回路によって、前記凹所151A内および前記隙間G内に安定して保持され、開口部240aをシールする。
【0033】
以上から分かるように、本実施形態では、磁気シール機構150は、駆動部としてのピニオン8が貫通する保護カバー(カバー体)50の前部に設けられるとともに、図4および図5、特に図8に明確に示すように保護カバー50の前面と略同一面上に突出することなく配置されている。
【0034】
また、本実施形態において、ロータ3は、リール本体1の前部が収容位置される(収容状態は図1を参照)略円筒状に形成された本体部(筒状部)3Aを備えており、その両側に略180°間隔おいて前述した一対の腕部3aが形成されている。図6に明確に示されるように、各腕部3aは、本体部3Aの後部(リール本体側)から径方向外方に突き出した連結部3a´と共に本体部3Aに一体形成されており、軸方向に延出している。これにより、本体部3Aと各腕部3aとの間には隙間が形成され、この部分に、図1に示されるスプール4のスカート部4cが位置するようになっている。
【0035】
また、一対の腕部3aには補強部材90が設けられている。補強部材90は、図6および図7に示すように、一対の腕部3aの側部からロータ3の本体部3Aの後部に向けて延出すると共に、本体部3Aに接続されている。この場合、補強部材100は、一対の腕部3aのそれぞれの両側部に設けておくことが好ましく、両側部に設けられた補強部材90は、好ましくは略同一の形状とされ、腕部3aの側部の前部(支持部材3cが設けられる部分)から基部に向かって延出し、基部側に移行するに連れて、次第に離間する形状となっている。すなわち、両腕部3aが対向する方向の側面視において、略ハの字型となる形状に形成されており、これにより腕部3aの基部の両サイドでは、補強部材90との間で隙間gが存在するようになっている。なお、隙間gは、側面視において次第に拡がるようになっている。
【0036】
また、本実施形態では、補強部材90は、図6に示すように、一対の腕部3a間で橋設された構造となっており、その中間部90Aがロータ3の本体部3Aの後部に一体形成で接続されている(図7参照)。このため、補強部材90は、一対の腕部3a間において、切れることなく連続形成されており、リール本体1側に向けて凸状に湾曲形成されている。
【0037】
なお、本実施形態では、図6に示すように、補強部材90は、一対の腕部3a間でリール本体側に向けて湾曲した形状となっており、少なくとも最下端部分(中間部90Aの領域)については、スプール4が往復動して最もリール本体側に移動した際、スプール4のスカート部4cの後縁部(Pで示すライン)よりもリール本体側に位置するようにしている。より具体的には、ラインPで示すように、スプール5が最もリール本体側に移動したとき、スカート4cの後端の両側の一部が重なる程度になっており、スプール4が往復動しても、その前後動の状況は、補強部材90によって遮られることはなく、容易に視認できるようになっている。
【0038】
上記した構成によれば、腕部3aの側部とロータ3の本体部3Aの後部との間を補強部材90で接続したことで、釣糸の張力によって腕部3aに大きな負荷が作用しても、補強部材90を通じて応力を分散させることが可能となり腕部の変形等を防止することが可能となる。また、図7に示すように、腕部3aの基部を厚肉化することなく、補強部材90を梁構造のようにして、適度に隙間gのような空隙部を設けておくことができるため、腕部の強度維持を図りながら、可及的な軽量化を図ることが可能となる。
【0039】
また、上記構成に加え、本実施形態では、ロータ3の本体部3Aに三角形状の切欠き開口部3Cが形成されている。なお、この切欠き開口部3Cは、腕部3aの強度を低下させないように、腕部形成位置と異なる位置に形成されている。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の魚釣用スピニングリールは、従来の摩擦抵抗を伴うシール機構に代えて磁気シール機構150を採用したことによりシール抵抗が低減されるため、ロータ3の回転慣性力が低減され、したがって、ロータ3の回転性能が向上される。また、この回転性能の向上により、ロータ3の回転および停止の操作感度が従来に比して飛躍的に向上し、釣糸の張力変化に敏感に反応できるようになるため、魚信感度が格段に向上される。また、本実施形態の魚釣用スピニングリールによれば、リール本体1の前部に装着される周壁を有するキャップ状のカバー体50に磁気シール機構150が設けられているため、不必要な磁性部材の吸着を防止して、ロータ3の回転性能やシール効果の低下を防止できるとともに、磁気シール機構150や一方向クラッチ10の収容形態がコンパクトになり(磁気シール機構150を効率的に且つ効果的に配設することがきる)、リール全体の小型化に寄与できる。また、周壁50a,50bを有する保護カバー50によって効果的にシール空間を形成できるため、磁気シール機構150との相乗作用によりシール効果が格段に向上される。
【0041】
また、本実施形態では、保護カバー50の前面と略同一面上に磁気シール機構150が突出することなく配置されるため、リール本体1を軸方向にコンパクトにすることができ、リール本体1の小型化、ひいては、リール本体1の軽量化に繋がり、ロータ慣性力の更なる低減を図ることも可能になる。
【0042】
また、本実施形態では、磁気シール機構150を構成する筒状の磁性体が一方向クラッチの内輪21を兼ねているため、部材点数が削減され、リール本体1の軽量化を図ることができ、したがって、ロータ慣性力の更なる低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 リール本体
3 ロータ
4 スプール
6 ハンドル
8 ピニオン(駆動部)
10 転がり式一方向クラッチ
21 内輪(筒状の磁性体)
25 外輪
50 保護カバー(カバー体
150 磁気シール機構
151 磁石
155 磁性流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に回転自在に支持されたハンドルの回転操作でスプールに釣糸を巻回可能とする魚釣用スピニングリールにおいて、
前記リール本体の前部に装着される周壁を有するキャップ状のカバー体を備え、前記ハンドルの回転操作で連動回転する駆動部が貫通する前記カバー体に、磁石と、該磁石との間で磁気回路を形成する筒状の磁性体と、磁石と磁性体との間に保持される磁性流体とで構成される磁気シール機構を設け、
前記駆動部の一方向の回転を許容し他方向の回転を阻止する転がり式一方向クラッチを更に備え、前記磁気シール機構を構成する前記磁性体が前記一方向クラッチの内輪を兼ねている、
ことを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記転がり式一方向クラッチの外輪はその外周が前記カバー体で包囲されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記カバー体は、径方向外側に位置する外側囲繞部と、径方向内側に位置する内側囲繞部とを有することを特徴とする請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項4】
前記カバー体が樹脂から形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の魚釣用スピニングリール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−16361(P2012−16361A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234295(P2011−234295)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【分割の表示】特願2010−285847(P2010−285847)の分割
【原出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】