説明

魚釣用スピニングリール

【課題】簡易な構成でガイド軸の固定位置を高精度で維持し、且つキャップ部材の固定位置の制約を緩和して小型化及びデザイン自由度を向上させた魚釣用スピニングリールを提供することである。
【解決手段】魚釣用スピニングリールは、スプールに釣糸を巻き付けるベールを有するロータ部と、リール本体の筐体部に収容されロータ部を回転させる駆動機構と、駆動機構と連結してスプールを前後移動させる摺動部及び、筐体部内の複数の壁孔に先端側から嵌装される摺動ガイド軸を有するオシレーティング機構と、筐体部の開口面を塞ぐ蓋部材と、キャップ部材とを備え、蓋部材は、リール本体と嵌合した際に、外部に露呈している摺動ガイド軸の後端を覆う張り出し部位と張り出し部位上の所望位置に立設され、キャップ部材を係止部材で固定する取付部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸を巻くためのハンドルの回転操作に伴いスプールを前後移動させるオシレーティング機構を備える魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚釣に用いられているスピニングリールは、ユーザによるハンドルの回転操作に伴い、回転するロータに設けられたベールがスプールの周囲を回転し、スプールの釣糸巻回胴部に釣糸を巻き付けている。
【0003】
このとき、釣糸が釣糸巻回胴部に均一な巻厚で巻き付くように、スプール自体をリール本体に対して前後に往復移動させる移動機構が設けられている。その移動機構として代表的には、オシレートギヤ方式と、ウォームシャフト方式等々が採用されているオシレーティング機構が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、オシレーティング機構におけるガイド軸の抜け止め構造の一例が提案されている。このオシレーティング機構は、スプール軸の軸方向に沿って配置されるガイド軸と、ガイド軸と係合して摺動するスライダ部材とで構成されるガイド部を備えている。
【0005】
ガイド軸は、リール本体内に一体的で連続的に形成されている中間壁部、後壁部及び先端壁部のそれぞれに開口された孔に嵌入されて支持されている。具体的には、ガイド軸は、中間壁部及び後壁部にそれぞれ開口された孔に後側から差し入れられて、先端壁部に先端を当接させて嵌装される。さらに、ガイド軸は、先端壁部側の中間壁部面の近傍で軸に設けられた溝に小型のEリングが嵌め込まれ、後壁部の孔から後側に抜け出ないように抜け止めされている。スライダ部材は、中間壁部及び後壁部の間を摺動する。
【0006】
また他のガイド軸の抜け止め構造としては、取付時に後壁部の孔と当接又は近接する部位(抜け止め部位)が内壁面に設けられたカバー部材を用いて、カバー部材をリール本体にねじ固定することにより、ガイド軸の抜け止めを実現するものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−81077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した特許文献1におけるガイド軸の固定は、Eリングを軸面に形成された溝に嵌め込む構造である。このEリングは、装着においては、リング外側から押し込むだけで、容易に装着でき、装着に必要なスペースは、Eリングの厚さ程度でも実施可能である。
【0009】
また、Eリングは、抜き差しによる繰り返し利用できる係止部材である。Eリングを取り外す場合には、Eリングプライヤ等の専用工具を用いて外すか、または、一般的な精密ドライバ等の小型ドライバの先端部分を内径側に設けられた2つの溝の両方又は片方に、差し入れて、抉るように引き出して外すこととなる。また、先端部分がL型の専用治具を作製することも考えられる。
【0010】
魚釣用スピニングリールは、使用環境において、直射日光下、水及び砂等、特には海水に晒されるため、部品の劣化や錆の発生を考慮した使用期間に応じたメンテナンスや修理等を前提として製造されている。従って、前述した引用文献1のガイド軸の抜け防止にEリングを用いた場合には、Eリングの周囲即ち、先端壁部と中間壁部との間に取り外し用工具が使用できるスペースが確保されていなければならない。このスペースの確保が必須であるため、リール本体の小型化や本体内部の他部材の配置に制約を受けることとなる。また、前述したような専用治具の使用を想定した場合、その治具を入手しない限り、修理業者であっても対応することができなくなり、不便利さが生じる。
【0011】
さらに、カバー部材を用いて、ガイド軸の抜け止めを行う構造においては、カバー部材は、軽量化やデザイン性から樹脂成形された部材が用いられている。通常、カバー部材は、リール本体に設けられたネジ穴に、ネジにより直に螺着されている。ガイド軸を差し入れている孔に掛かる箇所には、ねじ穴が形成できないため、リール本体側方や脚部などにねじ穴を形成せざるを得ない。従って、カバー部材は、ネジ位置によって、その大きさや形状に制約を受けることとなる。
【0012】
さらに、カバー部材は、リール本体の最後尾位置で露呈しているため、例えば、ユーザが船縁の穴に竿を差し入れた際に、その扱い方によっては、そのカバー部材と船縁とが衝突して、ヒビや割れ等が発生する場合があり、ガイド軸の抜け止め箇所にまで、その損傷が影響する虞もある。
【0013】
ユーザによっては、損傷があっても、その場で他のものに代替えできなければ、そのまま釣行を継続し完全に使用不能になるまで使用し続けることもある。つまり、ユーザは、損傷を認識しても尚、リールを使用し続けるため、損傷の度合いを拡げた場合、徐々にガイド軸のガタつきが発生し、スライダ部材がスムーズに移動しなくなったり、露呈するガイド軸の後端側から押し出されて抜け落ちたりする事態を招くことも想定される。
【0014】
そこで本発明は、簡易な構成でガイド軸の固定位置を高精度で維持し、且つキャップ部材の固定位置の制約を緩和して小型化及びデザイン自由度を向上させた魚釣用スピニングリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態による魚釣用スピニングリールは、筐体部を有するリール本体と、釣糸を巻回保持するスプールと、前記スプールに前記釣糸を巻き付けるためのベールを有するロータ部と、前記筐体部に収容され、ハンドルの回転操作を受けて、前記ロータ部を回転させる駆動機構と、前記駆動機構と連結して前記スプールを前後移動させる摺動部及び、前記筐体部内の複数の壁孔に先端側から嵌装される摺動ガイド軸を有するオシレーティング機構と、前記リール本体に嵌合し、前記筐体部の開口面を塞ぐ蓋部材と、嵌合している前記リール本体と前記蓋部材に装着されるキャップ部材と、を備え、前記蓋部材は、前記リール本体と嵌合した際に、外部に露呈している前記摺動ガイド軸の後端を覆う張り出し部位と、前記張り出し部位上の所望位置に立設され、前記キャップ部材に開口された取付用孔から差し入れられた係止部材により、前記キャップ部材を固着する取付部と、を具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な構成でガイド軸の固定位置を高精度で維持し、且つキャップ部材の固定位置の制約を緩和して小型化及びデザイン自由度を向上させた魚釣用スピニングリールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に係る魚釣用スピニングリールの全体的な外観構成を示す図である。
【図2】図2(a)は、本発明の第1の実施形態に係るオシレーティング機構の構成を示すリール本体の部分断面図、図2(b)は、図2(a)に示すリール本体における線分A−Aを後部側から見た部分断面図である。
【図3】図3(a)は、リール本体の蓋部材の外側(表面)から見た外観構成を示す図、図3(b)は、蓋部材をリール本体の下側から見た外観構成を示す図、図3(c)は、蓋部材を取付面側(裏面)から見た外観構成を示す図である。
【図4】図4は、第1の実施形態のオシレーティング機構のガイド部材を含む構成を図2(a)に示す線分B−Bの下側から見た部分断面図である。
【図5】図5(a)は、本発明の第2の実施形態に係るオシレーティング機構のガイド部材含む構成を図2(a)に示す線分B−Bの下側から見た部分断面図、図5(b)は、第2の実施形態の変形例に係るオシレーティング機構のガイド部材含む構成を示す部分断面図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施形態に係るオシレーティング機構のガイド部材含む構成を図2(a)に示す線分B−Bの下側から見た部分断面図である。
【図7】図7(a)は、本発明の第4の実施形態に係るオシレーティング機構のガイド部材含む構成を図2(a)に示す線分B−Bの下側から見た部分断面図、図7(b)は、ストッパ部材の外観構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る魚釣用スピニングリール(以下、スピニングリールと称する)の全体的な外観構成を示す図である。図2(a)は、第1の実施形態に係るオシレーティング機構の構成を示すリール本体の部分断面図、図2(b)は、図2(a)に示すリール本体における線分A−Aを後部側から見た部分断面図である。図3(a)は、リール本体の蓋部材の外側(表面)から見た外観構成を示す図、図3(b)は、蓋部材をリール本体の下側から見た外観構成を示す図、図3(c)は、蓋部材を取付面側(裏面)から見た外観構成を示す図である。図4は、本実施形態のオシレーティング機構のガイド部材を含む構成を図2(a)に示す線分B−Bの下側から見た部分断面図である。
【0019】
尚、図面を含む以下の説明において、リール本体に対して、スプールが配置された側を前部又は前側(X方向)とし、脚部が設けられた側を上部又は上側(Z方向)として、それぞれの反対側を後部(後側)、下部(下側)と称している。また、X方向とZ方向に対して直交する方向を横方向(Y方向)とする。
【0020】
スピニングリール1は、主として、リール本体2と、切り換えレバー3と、ロータ4と、ベール5と、ベール支持部材6と、スプール7と、ドラグノブ8と、ハンドル9と、ハンドルつまみ10と、図1に破線で示すオシレーティング機構を含む駆動機構等と、で構成される。この駆動機構等は、釣糸を巻き取るために、ハンドル9の回転操作をロータ4の回転動作及びスプール7の前後移動動作に伝搬する。
【0021】
リール本体2は、金属、合金又は硬質樹脂等により形成され、駆動機構等が収容される筐体部2aと、筐体部2aから上側に延伸する脚部2bと、脚部2bの端部に設けられた釣竿に取り付けるための竿取付部2cと、リール本体2の前側に形成された筒状突部2d(図2(a)参照)と、で構成されている。
【0022】
リール本体2の筐体部2a内には、ロータ4を回転させる駆動機構として、ハンドル9の回転操作に連動して回転するドライブギヤ11と、一端にドライブギヤ11と歯合するピニオンギヤ12が設けられ、他端にロータ4が連結する筒状構造の駆動軸13と、が設けられている。駆動軸13は、筐体部2aの内側に張り出すように形成された複数の壁部(又は、支持部位)2e等にベアリング等を介在して回転可能に取り付けられている。また、駆動軸13内には、後述するスプール軸15が回転及び前後移動が可能に挿入されている。
【0023】
さらに、スプール7を駆動軸13の軸方向に沿って一定のストロークで前後方向(図1におけるX方向)に往復移動させる後述するオシレーティング機構14が設けられている。
【0024】
ロータ4は、カップ形状を成し、駆動軸13と連結される開口(基端部4b)側から筒状突部2dに嵌められる筒部4aと、筒部4aの基端部4bから前方に向かって突設される一対のアーム部4cとで構成される。アーム部4cのそれぞれの先端には、回動可能にベール支持部材6が設けられている。これらのベール支持部材6を端渡すように、ベール5が取り付けられている。また、ベール支持部材6の一方には、巻き取り時に釣糸をスプール7の釣糸巻回胴部に導くための図示しないラインローラ等がベール5との間に介在するように設けられている。
【0025】
ベール支持部材6は、ユーザの手によりベール5と共に回動されて、ベール5がスプール7横の巻き取り位置から反転して、スプール7を挟んだ対向側の退避位置に移動され、スプール7から釣糸がフリーで繰り出し可能な状態となる。ベール5は、この退避位置から手で戻す又は、ハンドル9を回転操作することにより、ベール支持部材6と共に巻き取り位置に復帰する。
【0026】
切り換えレバー3は、図示しないストッパ機構によるロータ4の逆回転可能状態と逆回転不可状態とを切り換えるレバーである。尚、ロータ4の回転において、釣糸を巻き取る回転方向を正回転とし、釣糸が繰り出される方向を逆回転とする。
ドラグノブ8は、ロータ4が逆回転不可状態の場合に、スプール7の回転(上記逆回転)の程度を加減するための図示しないドラグ機構のドラグ力(スプールから引き出される釣糸の制動具合)を調整する。
【0027】
このスピニングリール1は、ユーザがハンドル9を回転操作させると、リール本体2内の駆動機構及びオシレーティング機構14が同期して動作し、オシレーティング機構14によりスプール7が前後方向に一定のストロークで往復移動すると同時に、駆動機構の駆動軸13によりロータ4が回転する。従って、ハンドル9を回転操作させると、ロータ4が定位置で釣糸を巻取る方向に回転し、ベール5から引き入れられた釣糸が前後移動するスプール7上に同じ巻厚となるように巻き取られる。
【0028】
蓋部材31は、図1及び図2(b)に示すように、リール本体2の筐体部2aの開口部分を覆うカバーである。蓋部材31は、複数箇所にネジ止め用孔30を有し、筐体部2aにネジにより螺着される。さらに、組み付けられた筐体部2a及び蓋部材31の後端には、外装のためのキャップ部材23が取り付けられている。
【0029】
次に、図2(a),(b)を参照して、前述したオシレーティング機構14について説明する。本実施形態のオシレーティング機構14は、オシレートギヤ方式を採用した例である。
オシレーティング機構14は、図2に示すように、連動ギヤ16と、スプール軸15と、摺動体19と、ガイド部材20と、摺動ガイド軸と、ガイド軸係止部22と、で構成される。
【0030】
連動ギヤ16は、ドライブギヤ11と同軸上を一体的に回転するギアに歯合し、ロータ4と同期するように回転する。図1に示すように、連動ギヤ16の非歯合面の外周側には、円筒凸型形状の偏芯突起部17が設けられる。偏芯突起部17は、摺動体19に形成されたガイド溝18内をスムーズに摺動するように嵌合されている。このガイド溝18は、連動ギヤ16の回転に従う偏芯突起部17の回転動作に連れ回されるように斜め方向で上下に延びる溝である。摺動体19は、前後方向の移動に制限されているスプール軸15の一端に連結する。スプール軸15の他端は、スプール7に連結する。
【0031】
摺動体19は、偏芯突起部17の回転動作を水平方向の往復動作に変換する。従って、偏芯突起部17の回転動作により、摺動体19が水平動作を行い、スプール軸15を介してスプール7を前後移動させる。
【0032】
また、摺動体19の近傍には、スプール軸15が一定の同じ前後移動することをガイドするために、スプール軸15と同じ軸方向に摺動ガイド軸が並設される。摺動体19と一体的に設けられたガイド部材20は、ガイド孔を有し、衝動可能に摺動ガイド軸に環装される。摺動ガイド軸は、図2(a)に示すように、筐体2aの後側外装壁2gに開口された孔から挿入して、リール本体2の筐体23内部に設けられた支持部2fの取付溝に、その先端を差し込み装着する。摺動ガイド軸は、少なくとも支持部2fと後側外装壁2gとで、ガタつきが無いように支持される。
【0033】
蓋部材31の後側には、図3(b)及び図4に示すように、筐体2aに取り付けられた際に、少なくとも摺動ガイド軸21を覆う位置まで張り出し、摺動ガイド軸21の抜け防止として機能する張り出し部位31aが形成される。さらに、張り出し部位31a上には、キャップ部23を取り付けるための雌ねじが形成された円筒形状の取付部31bが立設するように設けられている。
【0034】
キャップ部材23には、取付部31bの先端面が露呈するように、その先端面の外形形状と合致する取付用孔23aが形成される。キャップ部材23を取り付ける場合には、取付部31bの先端部分を取付用孔23aに嵌合し、ネジ24によりキャップ部材23を固定する。また、取付部31bは、外形が円筒形に限定されるものではなく、楕円又は矩形の柱形状であってもよい。また、図4においては、摺動ガイド軸21と対向する位置に取付部31bが設けられているが、この位置に限定されるものではなく、張り出し部位31a上の所望する位置に取付部31bを設けてもよい。
【0035】
尚、図示するように、キャップ部材23における取付用孔23aの形成位置は、キャップ部材表面より、少なくともネジ24の頭部の大きさ分を一段低くすることで、キャップ部材23が他のものと衝突した際に、螺着するネジ24如いては、取付部31bに直接衝撃が加わらないようにすることが好ましい。
【0036】
以上説明したように第1の実施形態によれば、オシレーティング機構のガイド軸をEリング等の係止部材を用いて固定していないため、リール本体に取り外し用のスペースを設ける必要は無く、取り外し用の工具も不要である。
また、摺動ガイド軸21は、表面に露呈しているキャップ部材23により固定されている構造ではなく、万一、キャップ部材に損傷が発生しても、ガイド軸の抜け防止は問題なく機能を継続することができる。
【0037】
さらに、摺動ガイド軸21の抜け防止及びネジの螺着を、既存の部材(蓋部材31)の形状を変更する簡易な構造で実現でき、且つキャップ部材23の固定においても所望する位置にねじ穴が形成できる等、デザインの自由度が向上する。特に、抜け防止機構に対して、部品点数及び製造工程も増加していないため、製造コストの増加防止に対して大きく寄与している。
【0038】
尚、本実施形態では、オシレートギア方式を例として説明したが、勿論、限定されるものではなく、ウォームギア方式のガイド軸等に対しても同様に適用することができる。
【0039】
次に、第2の実施形態について説明する。
図5(a)は、本実施形態のオシレーティング機構のガイド部材を含む構成を図4と同様に、図2(a)に示す線分B−Bの下側から見た部分断面図である。図5(b)は、第2の実施形態に対して、同じ構造であるが異なる長さのネジを用いた変形例である。尚、本実施形態の構成部材において、前述した第1の実施形態と同等の構成部材には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
図5(a)に示すように本実施形態では、張り出し部位31a上に設けられた取付部31cは、貫通する雌ねじ加工が施されている。本実施形態においても前述した第1の実施形態と同等の作用効果を有している。尚、本実施形態では、リール本体内部に貫通するねじ穴であるため、内部への海水等の入り込みを防止したいのであれば、シール機能を有するワッシャ等をネジ止めの際に介在させてもよいし、一般的なシールテープをネジに巻き付けて使用してもよい。
【0041】
次に、図5(b)の変形例は、前述した取付部31cの貫通した雌ねじに先端部が摺動ガイド軸21に到達する長さを有するネジ25を用いた例である。ネジ25は、キャップ部材23を固定すると共に、摺動ガイド軸21に対しても当接している。
【0042】
但し、螺着したネジ25の先端が摺動ガイド軸21に到達する僅か前に、キャップ部材23の表面にネジ25の頭部が当接するように、筐体部2a及び蓋部材31の製造精度を考慮して、取付部31cの立ち上がりの長さ及びネジの長さを設定することが望ましい。例えば、取付部31cの長さをネジのピッチを2〜3山分程度、短くして、組み合わされたキャップ部材23の表面よりも取付部31cの先端部分をわずかに下げてギャップがある状態にする。これにより、ネジ25の頭部がキャップ部材23の表面の当接した後、2回ほど回し込むことができるので、製造精度のばらつきを補うことが可能となる。
【0043】
本変形例においても、前述した第2の実施形態と同等の作用効果を有している。本実施形態は、さらに、キャップ部材23を固定するためのネジ25が摺動ガイド軸21に当接することにより、キャップ部材23を固定すると共に、ガイド軸のガタつきをより防止することができる。
【0044】
次に、第3の実施形態について説明する。
図6は、本実施形態のオシレーティング機構のガイド部材を含む構成を図4と同様に、図2(a)に示す線分B−Bの下側から見た部分断面図である。本実施形態の構成部材において、前述した第1の実施形態と同等の構成部材には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0045】
本実施形態は、蓋部材31とは別体で、六角形状を成すつば部26aを有する柱状例えば、円筒形状の金属材料からなる取付部26を用いた構成例である。取付部26には、貫通する雌ねじ加工が行われている。
筐体部2a及び蓋部材31には、組み付けられた際に、互いに合致するように対峙する張り出し部位2hと張り出し部位31dが形成される。
【0046】
取付部26は、合致する張り出し部位2hと張り出し部位31dとの間に、つば部26aが挟み込まれて保持されている。これらの張り出し部位2h,31dには、共に、つば部26aを収容するための六角形の溝が二分されてそれぞれに形成されている。このつば部26aにより取付部26が周り止めされる。
【0047】
尚、つば部26aの形状は、取付部26の周り止めが可能であれば、六角形に限定されるものではなく、例えば、矩形、多角形又は楕円形であってもよい。または、つば部26aは、円盤形状であった場合には、つば部の厚さが異なるように段差又は溝等、又は切り欠き部が形成された形状であってもよい。尚、厚さによる段差や切り欠き部を有する形状であれば、張り出し部位2h,31d側におけるつば部を保持する箇所の形状をそれらに合致するように形成すればよい。
キャップ部材23を装着して固定する際には、まず、キャップ部材23の取付用孔23aに取付部26を差し入れた後、取付部26にネジ27を螺着して、キャップ部材23を固定する。
【0048】
以上説明した本実施形態によれば、前述した第1乃至第2の実施形態の効果に加えて、金属製の取付部26のつば部が筐体部2a及び蓋部材31の間に挟み込まれて固定されているため、外部から掛かる負荷に対して耐性を有している。また、取付部26自体が金属等の高強度材料により形成されているため、ネジ24を螺着する雌ねじの強度が高くなり、締めすぎの過失によるネジ山の破損が防止できる。
【0049】
次に、第4の実施形態について説明する。
図7(a)は、本発明の第4の実施形態に係るオシレーティング機構のガイド部材含む構成を図2(a)に示す線分B−Bの下側から見た部分断面図、図7(b)は、ストッパ部材の外観構成を示す図である。
前述した各実施形態では、海水等では腐食しにくいネジを前提としている。ユーザによっては、釣行後の水道水等による洗浄が不十分な場合もあり、塩分が残っていると錆の発生原因にもなる。本実施形態では、金属製のネジに替わって硬質な樹脂製のストッパ部材を用いている。
【0050】
このストッパ部材32は、中央にドライバー等のための溝が形成された円盤形状の頭部32aと、頭部32aから延伸する軸部32bと、軸部32b先端に設けられた一対のハネ部32cと、頭部32aの接合面側に嵌合される弾性を有する軟性樹脂又はゴム等からなるシール部材33と、で構成される。
【0051】
また、取付部31eには、溝を有する貫通孔31fを形成する。尚、貫通孔31fには雌ねじ加工を施していない。張り出し部位31aの内側面には、貫通孔31fを挟んで並設される小さな2対の突起部34を形成している。
【0052】
ストッパ部材32を装着する際には、取付部31eにキャップ部材23の取付用孔23aを差し入れた後、ストッパ部材32を貫通孔31fから挿入する。ストッパ部材32の先端部分を貫通孔31fから突出させて、回転させる。ハネ部32cは、張り出し部位31aの内側面上で回転し、それぞれに1つの突起部34を乗り越えて、突起部34の間で係止される。シール部材33の弾性により、外部に対して水密化し且つ、ストッパ部材32が不用意に回転しないように固定する。また、装嵌されたストッパ部材32の先端部は、摺動ガイド軸21と当接又は、極近接して設けられており、ガタつき防止に作用している。尚、ストッパ部材は、必ずしも摺動ガイド軸21のガタつき防止を行う必要は無く、摺動ガイド軸21と対向する位置に限定されるものでは無い。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、前述した第1乃至第2の実施形態の効果に加えて、ストッパ部材32を差し入れて、半周程度回すだけで固定されるため、さらに装脱着が容易である。また、ストッパ部材32が樹脂材料で形成されているため、腐食に耐性を有している。シール部材33を伴ってストッパ部材32が固定されているため、リール本体内へ砂等の異物の進入を防止することができる。
【0054】
以上説明した各実施形態は、以下の発明の要旨を含んでいる。
(1)リール本体に装着したハンドル軸の回転操作運動をスプール軸の前後往復移動に変換するオシレーティング機構を備え、
前記オシレーティング機構は、前記リール本体内に形成された支持部で一端部を支えられ、前記スプール軸と一体的に連結された摺動体の前後動を案内するガイド軸を有し、前記ガイド軸は、少なくとも前記リール本体の後方側に設けられた前記スプール軸と平行な孔に支持され、
前記孔の外方延長上に、前記リール本体とは、別部材からなる、キャップ部材を前記リール本体に取り付けるための取付部と、
を有することを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【0055】
(2)前記キャップ部材を前記リール本体に取り付けるための前記取付部を有する部材は、前記リール本体を覆う蓋部材であることを特徴とする前記(1)項に記載の魚釣用スピニングリール。
(3)前記キャップ部材を前記リール本体に取り付けるための前記取付部を有する部材は、ガイド軸の抜け止めを兼ねることを特徴とする前記(1)項に記載の魚釣用スピニングリール。
【符号の説明】
【0056】
1…スピニングリール、2…リール本体、2a…筐体部、2b…脚部、2c…竿取付部、2d…筒状突部、2e…壁部(又は、支持部位)、2f…支持部、2g…後側外装壁、3…切り換えレバー、4…ロータ、4a…筒部、4b…基端部(開口側端部)、4c…アーム部、5…ベール、6…ベール支持部材、7…スプール、8…ドラグノブ、9…ハンドル、10…ハンドルつまみ、11…ドライブギヤ、12…ピニオンギヤ、13…駆動軸、14…オシレーティング機構、15…スプール軸、16…連動ギヤ、17…偏芯突起部、18…ガイド溝、19…摺動体、20…ガイド部材、21…ガイド軸、22…ガイド軸係止部、23…キャップ部、23a…取付用孔、31…蓋部材、31a…張り出し部位、31b…取付部、33…ネジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体部を有するリール本体と、
釣糸を巻回保持するスプールと、
前記スプールに前記釣糸を巻き付けるためのベールを有するロータ部と、
前記筐体部に収容され、ハンドルの回転操作を受けて、前記ロータ部を回転させる駆動機構と、
前記駆動機構と連結して前記スプールを前後移動させる摺動部及び、前記筐体部内の複数の壁孔に先端側から嵌装される摺動ガイド軸を有するオシレーティング機構と、
前記リール本体に嵌合し、前記筐体部の開口面を塞ぐ蓋部材と、
嵌合している前記リール本体と前記蓋部材に装着されるキャップ部材と、
を備え、
前記蓋部材は、前記リール本体と嵌合した際に、外部に露呈している前記摺動ガイド軸の後端を覆う張り出し部位と、
前記張り出し部位上の所望位置に立設され、前記キャップ部材に開口された取付用孔から差し入れられた係止部材により、前記キャップ部材を固着する取付部と、
を具備することを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記魚釣用スピニングリールにおいて、
前記取付部は、前記摺動ガイド軸の後端と対向する前記張り出し部位上の位置に立設され、且つ外側から前記摺動ガイド軸の後端に到達する貫通孔を有し、
前記取付用孔から差し入れられた前記係止部材の先端が前記貫通孔を経て、前記摺動ガイド軸の後端に当接して固定されることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記魚釣用スピニングリールにおいて、
前記取付部は、前記蓋部材とは別体で、つば部を有し雌ねじ加工された柱状に形成され、
前記筐体部及び前記蓋部材は、合致した際に互いに対峙する張り出し部位をそれぞれに備え、
前記取付部は、それぞれの前記張り出し部位に挟持され、前記キャップ部材を固着し、且つ前記摺動ガイド軸の後端を覆うことを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−249571(P2012−249571A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124446(P2011−124446)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】