説明

魚釣用スピニングリール

【目的】 本発明は、魚釣用スピニングリールに関し、ベール支持アームの補強による釣糸の巻取り,繰出し操作性の向上を図り、併せて落下等によるスプールの保護を図った魚釣用スピニングリールを提供することを目的とする。
【構成】 ロータの両側に設けた一対のベール支持アームの先端部に、ベール支持部材を介してベールを釣糸巻取位置と釣糸放出位置に反転自在に装着し、ロータの回転で釣糸をスプールに巻き取る魚釣用スピニングリールに於て、一対の上記ベール支持アーム間に、スプールの外周を保護する保護部材を釣糸放出位置側に架設したものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、魚釣用スピニングリールに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に魚釣用スピニングリールは、実公平5−29029号公報又は図13に示すように、ロータ1の両側に設けた一対のベール支持アーム3の先端部に、半環状のベール5を、ラインローラ7を有するベールアーム9とベールホルダー(図示せず)からなるベール支持部材を介して釣糸巻取位置側(図中、A側)と釣糸放出位置側(図中、B側)へ、夫々、反転自在に取り付けている。
【0003】そして、図示するようにベール5を釣糸巻取位置側へ倒し、リール本体11に装着した手動ハンドル13の回転操作でロータ1を巻取り方向へ回転させると、ロータ1の回転に連動して前後方向へトラバース運動するスプール15に釣糸が巻回されるようになっている。
【0004】尚、図中、17はリール本体11に一体成形された取付脚である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】然し乍ら、例えば釣糸の巻取りの際に釣竿を誤って落下させてしまうと、スピニングリールは取付脚17を介して釣竿に取り付けられているため、釣糸巻取位置側に位置するスプール15の外周に傷がつくことは殆どないが、釣糸放出位置側にはスプール15を保護する手段がないため、地面等との接触によってスプール15の外周に傷がついて糸キズの原因となったり、変形してロータ1へのスプール当たりが発生してしまう虞があった。
【0006】又、当たりがあって釣糸を巻き取る際に釣糸には大きな負荷がかかるが、上述の如き従来のスピニングリールの構造では、巻取り時にベール支持アーム3が内方へ変形してスプール当たりが発生したり、或いはドラグ繰出し時にベール支持アーム3の変形によって脈動が発生し、スムーズな釣糸の繰出しが行えないといった問題があった。
【0007】本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、ベール支持アームの補強による釣糸の巻取り,繰出し操作性の向上を図り、併せて落下等によるスプールの保護を図った魚釣用スピニングリールを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】斯かる目的を達成するため、本発明は、ロータの両側に設けた一対のベール支持アームの先端部に、ベール支持部材を介してベールを釣糸巻取位置と釣糸放出位置に反転自在に装着し、ロータの回転で釣糸をスプールに巻き取る魚釣用スピニングリールに於て、一対の上記ベール支持アーム間に、スプールの外周を保護する保護部材を釣糸放出位置側に架設したものである。
【0009】
【作用】本発明に係る魚釣用スピニングリールによれば、例えば釣人が誤って釣竿を落としても、保護部材がスプールの外周を保護する。
【0010】又、保護部材がベール支持アームを補強し、釣糸の巻取り時やドラグ繰出し時に当該保護部材がベール支持アームの変形を防いでスプール当たりや脈動発生を防止することとなる。
【0011】そして、従来、釣糸の巻取り時にベールを釣糸巻取位置側に倒すことによってロータの重量バランスが悪くなり、釣糸の巻取り操作が円滑に行えない虞があったが、本発明によれば、保護部材を釣糸放出位置側に設けた結果、当該保護部材が釣糸巻取位置側へのロータの重量偏位を修正する。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。図1乃至図5は本発明に係る魚釣用スピニングリールの第一実施例を示し、図1に於て、19はリール本体21の前端に回転可能に軸着されたロータで、当該ロータ19後部の両側には一対のベール支持アーム23が一体に成形されており、その先端部に半環状のベール25が、ラインローラ27を有するベールアーム29や図2に示すベールホルダー31等のベール支持部材を介して釣糸巻取位置側(図1中、A側)と釣糸放出位置側(図1中、B側)へ、夫々、反転自在に取り付けられている。
【0013】又、図1中、33は上記ロータ19と同心に装着されたスプールで、当該スプール33はリール本体21にトラバース運動可能に取り付けたスプール軸(図示せず)に支持されており、従来と同様、ベール25を釣糸巻取位置側へ倒してリール本体21に装着した手動ハンドル35の回転操作でロータ19を巻取り方向へ回転させると、ロータ19の回転に連動してトラバース運動するスプール33に釣糸が巻き取られるようになっている。
【0014】そして、図1乃至図4に示すように一対の上記ベール支持アーム23間には、スプール33の外周を保護する幅狭な帯状の保護部材37が、ロータ19の外周と所定の間隔を開けてベール支持アーム23の先端側に円弧状に一体に架設されており、釣竿を誤って落とした場合に、当該保護部材37が釣糸放出位置側に位置するスプール33の外周を保護するようになっている。
【0015】又、図5は手動ハンドル35の取付構造を示し、一般に、スピニングリールの手動ハンドルはリール本体から着脱可能で、右巻き用,左巻き用に交換可能な構造となっているが、従来、手動ハンドルのハンドル軸の先端側支持部を覆うカバー部材がリール本体の外周に突出して装着されているため、突出したカバー部材に釣竿が絡まり易く、又、カバー部材の周辺に異物や汚れが付着すると汚れを拭き取り難いといった欠点があった。
【0016】そこで、本実施例は、以下に述べる構造を採用することによって、斯かる不具合を解消したものである。即ち、図中、39は駆動歯車41の駆動軸、43はリール本体21に装着した滑らかな外形形状を有するカバー部材で、当該カバー部材43とリール本体21内には、夫々、駆動軸39の軸受45,47が同軸上に組み込まれている。そして、カバー部材43には、駆動軸39に設けた角型軸孔49に回り止め嵌合するハンドル軸51の挿入側端部51aに螺着して手動ハンドル35をリール本体21に固定するビス53の取付用凹部55が設けられており、ビス53を上記挿入側端部51aに螺着すると、当該取付用凹部55内にビス53が収納されてビス53とカバー部材43の表面とが面一となるようになっている。
【0017】その他、図1中、57はリール本体21に成形された取付脚である。本実施例はこのように構成されているから、上述したように釣糸の巻取りの際に釣人が誤って釣竿を落としても、釣竿や取付脚57による保護で釣糸巻取位置側に位置するスプール33の外周に傷がつくことはなく、又、保護部材37が釣糸放出位置側に位置するスプール33の外周を保護する。
【0018】そして、保護部材37がベール支持アーム23を補強するので、釣糸の巻取り時やドラグ繰出し時に、当該保護部材37がベール支持アーム23の変形を防止する。
【0019】又、従来、この種のスピニングリールにあっては、ベールやベール支持部材は左右対称に形成されておらず、然も、ベールやベール支持部材がロータの前方に突出して装着されているため、釣糸の巻取り時にベールを釣糸巻取位置側に倒すことによってロータの重量バランスが悪く、釣糸の巻取り操作が円滑に行えない虞があった。
【0020】然し、本実施例では、保護部材37を釣糸放出位置側に設けた結果、当該保護部材37が釣糸巻取位置側へのロータ19の重量偏位を修正することとなる。従って、本実施例によれば、釣人が誤って釣竿を落としてもスプール33が直接地面等に接触することがないので、スプール33の損傷や変形を防止でき、糸キズの発生といった従来の不具合が解消されることとなった。
【0021】又、上述したように釣糸の巻取り時やドラグ繰出し時に、保護部材37がベール支持アーム23の変形を防止するので、スプール当たりや脈動発生が防止でき、然も、保護部材37によるロータ19の重量偏位の修正によって、円滑な釣糸の繰出し,巻取り操作が可能となった。
【0022】加えて、本実施例によれば、保護部材37の厚みを薄くしたり帯状の形状等に形成することにより、釣場の移動の際に釣針を保護部材37に係止させておくことができるといった利点も有する。
【0023】更に、本実施例は、図5に示すように手動ハンドル35をリール本体21に固定するビス53とカバー部材43が面一となるように構成したので、従来の如くカバー部材43に釣竿が絡まることもなく、又、異物や汚れがカバー部材43に付着しても簡単に汚れを拭い取ることができる利点を有する。
【0024】図6は本発明の第二実施例を示し、上記第一実施例では保護部材37をベール支持アーム23に一体に設けたが、本実施例は、当該保護部材37と同一形状の保護部材59を別途成形し、これをベール支持アーム23に接着,溶着,圧入,ビス止め等の手段により一体的に取り付けたものであり、斯かる構造によっても、上記第一実施例と同様、所期の目的を達成することが可能である。
【0025】又、図7乃至図10はベール支持アーム間に架設する保護部材の変形例を示し、図7に示す第三実施例は、ロータ19の外周と所定の間隔を開けてベール支持アーム23間に、上記保護部材35と同一形状の保護部材61を釣糸放出位置側に2本平行に架設したものであり、図8に示す第四実施例は、ベール支持アーム23間に、3本の幅狭な帯状の保護部材63をロータ19の外周と所定の間隔を開けて三角形状に配置したものである。
【0026】そして、図9に示す第五実施例は、ベール支持アーム23間に架設する保護部材65を、一方のベール支持アーム23へ向かって順次幅広に成形したものである。
【0027】更に又、図10に示す第六実施例では、上記保護部材37に比し幅広な帯状の保護部材67をロータ19の外周と所定の間隔を開けてベール支持アーム23間に架設すると共に、ロータ19の重量バランスを考慮して当該保護部材67に複数の小孔69を設けたものである。
【0028】而して、これらの各実施例にあっても、各保護部材61,63,65,67が釣糸放出位置側に位置するスプール33の外周を夫々保護すると共に、釣糸の巻取り時やドラグ繰出し時にベール支持アーム23の変形を防止し、又、巻取りの際のロータ19の重量偏位を修正するので、上記第一実施例と同様、所期の目的を達成することが可能となる。
【0029】図11は手動ハンドルの取付構造の変形例を示し、本実施例は、手動ハンドルのハンドル軸をプッシュボタンのボタン操作による着脱構造としたものである。以下、図面に基づいて説明するが、図5に示す実施例と同一要素は同一符号を以って表示する。
【0030】図11中、71は駆動軸39の角型軸孔49に回り止め嵌合した手動ハンドル35のハンドル軸で、当該ハンドル軸71は、基部側の中実な軸本体73とその先端に螺着した中空な筒状部75とで構成されており、当該筒状部75の螺着部には、180°の間隔をおいてスリット77が軸方向に設けられている。そして、筒状部75を軸本体73に螺着すると、角型軸孔49の内周に設けた凹状の係止部79に係脱可能な後述するストッパ部材81のストッパ片83が、各スリット77から図12の如く外方へ突出するようになっている。
【0031】ストッパ部材81は先端がテーパ状に成形された円柱体で、筒状部75内に収容されてその後端が軸本体73の先端に設けた凹部85に嵌合している。そして、その外周には上記スリット77から外方へ突出するストッパ片83が設けられ、又、先端から軸方向へスリット87が形成された構造となっている。
【0032】又、図11中、89はプッシュボタンで、カバー部材43に設けた取付用凹部55内に筒状部75から突出し、その後端側には、テーパ状に成形されたストッパ部材81の先端に当接するテーパ部89aが設けられている。そして、当該プッシュボタン89と上記ストッパ片83との間にはスプリング91が取り付けられており、ストッパ片83が上記係止部79に係合しているとき、プッシュボタン89は当該スプリング91により外方へ付勢されて、その頭部89bがカバー部材43の表面と面一となっている。そして、スプリング91のばね力に抗してプッシュボタン89を押圧すると、図11R>1の二点鎖線で示すようにテーパ部89aがストッパ部材81の先端を内方に変形させて、ストッパ片83と係止部79との係合が解除されるようになっている。従って、斯かる状態でハンドル軸71を角型軸孔49から引き抜くと、手動ハンドル35がリール本体21から取り外せるようになっている。
【0033】そして、図12に示すように各ストッパ片83の先端は、ハンドル軸71の先端側に向かって順次下方へ傾斜した形状となっているので、ハンドル軸71を角型軸孔49へ挿入すれば、ストッパ片83は角型軸孔49の内周に押圧されて内方へ移動し、係止部79とストッパ片83が一致すると、ストッパ部材81のスプリングバックでストッパ片83が係止部79に係合して、手動ハンドル35がリール本体21に固定されるようになっている。
【0034】尚、筒状部75の先端は内方へ若干折曲されて、スプリング91で付勢されたプッシュボタン89が筒状部75の先端から脱落しないようになっている。本実施例は以上のように構成されているから、本実施例によれば、手動ハンドル35の取り外しがプッシュボタン89によるワンタッチ操作で極めて容易に行うことができると共に、図5に示す実施例と同様、従来の如くカバー部材43に釣竿が絡まることもなく、又、異物や汚れがカバー部材43に付着しても簡単に汚れを拭い取ることができる利点を有する。
【0035】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、釣人が誤って釣竿を落としても、保護部材によってスプールが保護されるので、スプールの損傷や変形を防止でき、糸キズの発生といった従来の不具合が解消されることとなった。
【0036】又、釣糸の巻取り時やドラグ繰出し時に、保護部材がベール支持アームの変形を防止するので、スプール当たりや脈動発生が防止でき、然も、保護部材によるロータの重量偏位の修正によって円滑な釣糸の繰出し,巻取り操作が可能となった。
【0037】更に又、本発明によれば、保護部材の形状を工夫することにより、釣場の移動の際に釣針を保護部材に係止させておくこともできるといった利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例に係る魚釣用スピニングリールの正面図である。
【図2】魚釣用スピニングリールの右側面図である。
【図3】ロータの釣糸放出位置側底面図である。
【図4】ロータの斜視図である。
【図5】手動ハンドルのハンドル軸の取付構造を示すリール本体の断面図である。
【図6】本発明の第二実施例に係る魚釣用スピニングリールの一部切欠き右側面図である。
【図7】本発明の第三実施例に於けるロータの釣糸放出位置側底面図である。
【図8】本発明の第四実施例に於けるロータの釣糸放出位置側底面図である。
【図9】本発明の第五実施例に於けるロータの釣糸放出位置側底面図である。
【図10】本発明の第六実施例に於けるロータの釣糸放出位置側底面図である。
【図11】本発明の他の実施例に於ける手動ハンドルのハンドル軸の取付構造を示すリール本体の断面図である。
【図12】ハンドル軸の正面図である。
【図13】従来の魚釣用スピニングリールの正面図である。
【符号の説明】
19 ロータ
21 リール本体
23 ベール支持アーム
25 ベール
27 ラインローラ
29 ベールアーム
31 ベールホルダー
33 スプール
35 手動ハンドル
37,59,61,63,65,67 保護部材
43 カバー部材
51,71 ハンドル軸
53 ビス
55 取付用凹部
57 取付脚
69 小孔
73 軸本体
75 筒状部
77,87 スリット
79 係止部
81 ストッパ部材
83 ストッパ片
89 プッシュボタン
A 釣糸巻取位置側
B 釣糸放出位置側

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ロータの両側に設けた一対のベール支持アームの先端部に、ベール支持部材を介してベールを釣糸巻取位置と釣糸放出位置に反転自在に装着し、ロータの回転で釣糸をスプールに巻き取る魚釣用スピニングリールに於て、一対の上記ベール支持アーム間に、スプールの外周を保護する保護部材を釣糸放出位置側に架設したことを特徴とする魚釣用スピニングリール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図12】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開平7−177836
【公開日】平成7年(1995)7月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−324698
【出願日】平成5年(1993)12月22日
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)