説明

魚釣用リールの逆転防止装置

【課題】釣場の状況や釣法、釣人の好みあるいは魚釣用リールの作動状態を含む釣環境に応じて最適な状態で使い分けることができる魚釣用リールの逆転防止装置を提供すること。
【解決手段】ハンドル26の回転に連動するロータ16に固定された内輪部材48aとリール本体12に固定される外輪部材48bとの間に、保持器52で保持されたローラ50を配置し、このローラ50の楔作用により、リール本体12に対するロータ16の逆回転を防止する逆転防止状態と、このローラ50が自由に回転することにより、リール本体12に対するロータ16の正回転および逆回転を可能とする正逆転可能状態とに、保持器52を介して切換可能とした魚釣用リールの逆転防止装置46であって、保持器52が逆転防止状態に切換えられたときに、ローラ50を楔作用させる方向に付勢する付勢バネ56の付勢力の大きさを切換可能とした逆転防止装置46。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルの回転に連動する回転体とリール本体との間に転がり部材を配置し、この転がり部材の楔作用により、リール本体に対して回転体が釣糸巻取方向(正回転)に対して逆回転するのを防止する魚釣用リールの逆転防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用リールに設けられる逆転防止装置は、回転体の逆回転を防止する逆転防止時の遊動を抑制して確実かつ迅速なフッキング操作を行うため、従来のラチェット機構を備えたものから、ローラの楔作用を利用した一方向クラッチを備えたものに移行している。このような一方向クラッチを備えた逆転防止装置は、釣場の状況に迅速に対応できるように、リール本体の外部に設けられた切換部材を操作することにより、逆転防止状態と正逆転可能状態とに切換えられるのが一般的である。
【0003】
通常、このような魚釣用リールの逆転防止装置は、環状保持体、切換板あるいはリテーナ等と称され、転がり部材を保持しかつリール本体に固定された外輪部材の内周と、回転部材と共に回転する内輪部材の外周との間でこの転がり部材を楔作用させる方向にバネ付勢する保持器を備えており、この保持器を外部からの操作で回転させることにより、この転がり部材が楔作用する位置(逆転防止状態)と楔作用しない位置(正逆転可能状態)との2つの位置の一方に切換え、保持させている(例えば特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−336348号公報
【特許文献2】特開平8−112049号公報
【特許文献3】特開平10−56925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような一方向クラッチを備えた逆転防止装置は、転がり部材による楔作用の性質上、保持器を介して転がり部材が楔作用する方向に付勢される力の大きさによって、逆転防止性能(ロック性能)あるいは巻取操作時の回転性が定まってしまう。
【0005】
すなわち、逆転防止性能を向上させようとして、転がり部材に対する付勢力を増大すると、転がり部材に摺接する内輪との接触抵抗が大きくなり、釣糸巻取操作する際の回転が重く、したがって、円滑な巻取回転性能が得られなくなる。逆に、転がり部材に対する付勢力を減少させると、巻取操作は軽くなるが、各部の部品の寸法バラツキ、寒冷地における油分の粘度増加やバネのへたり、部品の磨耗等の種々の影響によってロック性能が低下する。このようにロック性能が低下すると、回転体の逆回転を防止できなくなり、あるいはハンドルの重さで巻取方向に正回転するほど軽くなり過ぎることが生じ、この場合には、誤って仕掛けを巻き取ってしまう等の不具合が発生する。
【0006】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、釣場の状況や釣法、釣人の好みあるいは魚釣用リールの作動状態を含む釣環境に応じて最適な状態で使い分けることができる魚釣用リールの逆転防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によると、ハンドルの回転に連動する回転体とリール本体との間に、保持部材で保持された転がり部材を配置し、この転がり部材が前記回転体とリール本体との間で楔作用することにより、リール本体に対する前記回転体の逆回転を防止する逆転防止状態と、この転がり部材が自由に回転することにより、リール本体に対する回転体の正回転および逆回転を可能とする正逆転可能状態とに、前記保持部材を介して切換可能とした魚釣用リールの逆転防止装置であって、前記保持部材が逆転防止状態に切換えられたときに、前記転がり部材を楔作用させる方向に、この転がり部材を付勢する付勢部材の付勢力の大きさを切換可能とした逆転防止装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
この魚釣用リールの逆転防止装置によると、逆転防止状態で、転がり部材が楔作用する方向に、付勢する付勢部材の付勢力の大きさを切換可能としたことにより、重い仕掛けや寒冷地等の釣場環境、あるいは、長期にわたる使用による部品の磨耗等の影響で逆回転しやすくなった場合は、この付勢力を大きくし、微細で軽い仕掛を使用する場合や巻取性重視の場合は、付勢力を小さくすることができ、これにより、釣場の状況や釣法、釣人の好みあるいは魚釣用リールの作動状態を含む釣環境に応じて最適な状態で使い分けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1から図5は、本発明の好ましい実施形態による逆転防止装置を備えた魚釣用リールを概略的に示す。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の魚釣用リールは、スピニングリール10として形成してあり、種々の部材を収容する収容空間Sを内部に形成したリール本体12を備える。このリール本体12は、前部に鍔部12aを有し、上方に延びる脚部14の端部に形成された竿取付部14aを介して釣竿に取付けられる。このリール本体12の前方には、回転部材であるロータ16と、ロータ16の回転運動に同期して前後動可能なスプール18とが設けられており、リール本体12の鍔部12aが、ロータ16の後方に開口する開口部内に収容される。
【0011】
このリール本体12の収容空間S内には、横方向に延設されて回転可能に支持されたハンドル軸20と、ロータ16を回転し、スプール18に釣糸を巻回するための巻取駆動装置22と、このスプール18を前後に往復動させるスプール往復動装置24とが設けられる。このリール本体12から突出したハンドル軸20の端部にはハンドル26が取り付けられており、このハンドル26を回転することにより、巻取駆動装置22とスプール往復動装置24とが連動して駆動される。
【0012】
巻取駆動装置22は、リール本体12の収容空間S内でハンドル軸20に固定された駆動歯車28と、この駆動歯車28に噛合するピニオンギヤ30とを備える。このピニオンギヤ30は、ハンドル軸20に対して直交する前後方向に延びかつリール本体12に対して前部軸受32と後部軸受34とを介して回転自在に支持された筒軸30aの後端側外周部に設けられている。この筒軸30aの先端部には、ベール36aおよび釣糸案内部36bを備えたロータ16が回転部材として一体的に取り付けられ、ピニオンギヤ30を介して筒軸30aと共に一体的に回転することができる。
【0013】
このロータ16の内側には、筒軸30aに回り止めされてナット15で抜け止めされる内側筒部16aが設けられ、外側には一対の支持アーム17a,17bが設けられている。各支持アーム17a,17bの前端部には、通常のベール36aおよび釣糸案内部36bを先端部に取付けた支持部材37a,37bが、それぞれの基端部を介して回動自在に支持される。これらの支持部材37a,37bは、一方の支持アーム17aに配置された通常の振り分け機構により、釣糸巻取位置と釣糸放出位置との一方に保持され、他方に向けて反転させることができる。また、他方の支持アーム17bには、ハンドル26の巻取操作に連動して支持部材37a,37bをベール36aと共に釣糸放出位置から釣糸巻取位置へ自動復帰させる公知の反転復帰機構が配置されている。
【0014】
なお、本実施形態では、ロータ16の回転方向について、ロータ16のベールおよび釣糸案内部を介してスプール18に釣糸を巻回する方向の回転が正回転となり、これとは逆に、スプール18から釣糸を繰出す方向の回転が逆回転となる。
【0015】
このようなロータ16を固定した筒軸30a内には、スプール軸38が貫通し、ハンドル軸20と直交する方向に延在している。このスプール軸38は、筒軸30aと同心的に配されており、筒軸30aおよびリール本体12に対してハンドル軸20と直交する方向に沿って前後動することができる。このスプール軸38の先端部に、釣糸が巻回されるスプール18が取り付けられる。
【0016】
スプール軸38を介してスプール18を前後方向に往復動するスプール往復動装置24は、ピニオンギヤ30に噛合する作動歯車40で回転駆動されるトラバースカム軸42と、このトラバースカム軸42の外面に形成された螺旋状のカム溝42aに係合する摺動体44とを有し、この摺動体44がスプール軸38の後端に本実施形態ではねじで連結される。トラバースカム軸42が回転すると、この螺旋状のカム溝42aに係合する摺動体44が前後に往復動し、この摺動体44に取り付けられたスプール軸38が筒軸30a内を軸方向に沿って往復駆動(前後動)する。なお、このようなスプール往復動装置24は、上述のようなトラバースカム軸42を用いたものに代え、ハンドル軸28と一体回転する歯車に噛合して回転する大歯車を有するいわゆるギヤ方式のものであってもよい。
【0017】
このように形成された魚釣用スピニングリール10は、ハンドル26を回転操作してハンドル軸20を回転させると、スプール往復動装置24の摺動体44に取付けられたスプール軸38を介してスプール18が前後に往復動し、一方、巻取駆動装置22の駆動歯車28とピニオンギヤ30と筒軸30aとを介して、ロータ16が回転駆動される。スプール18が前後に移動される間に、ベール36で案内された釣糸が、このスプール18上にほぼ均等に巻回される。
【0018】
更に、リール本体12の前筒部12b内には、ロータ16の回転状態を、逆転防止状態と逆転可能状態とに切換える逆転防止装置46が配置されている。本実施形態の逆転防止装置46は、一方向クラッチとして形成してあり、ピニオンギヤ30と一体の筒軸30aに内周側が回転不能に装着された内輪部材48aと、この前筒部12bに外周側が回転不能に装着された外輪部材48bと、これらの内輪部材48aと外輪部材48bとの間に介挿された複数のローラ50とを有する。
【0019】
図2に示すように、これらのローラ50は、転がり部材として保持部材である保持器52により保持され、後述するように、内輪部材48aの滑らかな円筒状面で形成された外周面と外輪部材48bの内周面との間で、自由に回転するクラッチオフ位置(図3)と、楔作用するクラッチオン位置(図4および図5)とに移動される。更に、この楔作用するクラッチオン位置は、ローラ50に作用する付勢力が弱状態の弱オン位置(図4)と付勢力が強状態の強オン位置(図5)とを有し、これらの弱オン位置と強オン位置との間で自由に切換えることができる。
【0020】
これらのローラ50は、保持部材である環状構造の保持器52に等間隔に形成されたガイド溝54内に収容された状態で保持され、後述する楔作用をなす方向に向けて、付勢部材である付勢バネ56により付勢されている。この付勢バネ56は、保持器52の内周側と外周側とにそれぞれ折り曲げ部56a,56bを有する板バネで形成してあり、ガイド溝54を周方向の一側で区画する壁部54aとこのガイド溝54内に突出する係止片55とで、この内周側折り曲げ部56aが保持され、ガイド溝54から内周側および外周側に脱落するのが防止されている。このガイド溝54を周方向の反対側で区画する壁部54bは、クラッチオフ位置において、付勢バネ56で付勢されたローラ50を内輪部材48の外周から安定して離間保持できるように、中央部が凹状のV字又は湾曲面に形成されている。
【0021】
この保持器52の半径方向外方に配置される外輪部材48bの内周面には、各ローラ50に対応する部位に、半径方向外方に凹設された凹部58を配置したローラ50のフリー回転領域Fと、凹部58に近接する側から離隔する側に向けて半径方向内方に傾斜する傾斜面60を配置してローラ50の回転を規制する規制領域Bとを周方向に隣接させて配置してある。ローラ50がフリー回転領域Fに配置されると、ローラ50は自由に回転でき、ロータ16および内輪部材48aが正回転および逆回転のいずれの方向に回転することができる。一方、ローラ50が規制領域Bに配置されると、内輪部材48aが逆回転したときにローラ50が内輪部材48aと外輪部材48bとの間で楔作用をなし、ローラ50および内輪部材48aの逆回転が阻止される。そして、この外輪部材48bを半径方向に貫通する案内溝62を介して、保持器52に取付けられた作動部材64が外輪部材48bの外周側に突出しており、この作動部材64を介して保持器52およびローラ50を移動することができる。
【0022】
この作動部材64により、図3に示すように、各ローラ50がフリー回転領域Fに対応したクラッチオフ位置に移動されると、ロータ16は正回転および逆回転が可能な正逆転可能状態となる。また、図4および図5に示すように、各ローラ50が規制領域Bに対応したクラッチオン位置に移動されると、ロータ16はリール本体12に対する逆回転が防止される逆転防止状態となる。
【0023】
図1に示すように、各ローラ50をフリー回転領域Fと規制領域Bとの間で移動し、ロータ16を正逆転可能状態と逆転防止状態とに切換えるため、操作杆66がリール本体12の収容空間S内に前後方向に沿って延設してある。この操作杆66の先端部66aは、作動部材64に形成された長孔64aに僅かな遊びを形成して連結され、後端部はリール本体12の後壁に形成された貫通孔(図示しない)を介して外部に突出し、この外部に突出した操作杆66の後端部に、切換部材である切換レバー68が回転不能に取付けられている。
【0024】
本実施形態の操作杆66は、略中間部でクランク状に屈曲した曲軸として形成され、前軸部66bが後軸部66cに対して側方に突出する。後端部に取付けた切換レバー68を回動操作すると、操作杆66は、後軸部66cの中心軸を中心として前軸部66bを回動させ、クランク状に屈曲した前軸部66bの先端部66aが揺動する。この先端部66aに連結された作動部材64を介して保持器52が回動される。これにより、逆転防止装置46は、ロータ16が正逆転可能な逆転可能状態と、正転可能でかつ逆転不能の逆転防止状態とに切換えられる。ロータ16がいずれの状態にあっても、ハンドル16を正転方向(釣糸をスプール18に巻き取る方向の回転)に回転すると、支持アーム17b内に配置された公知の復帰機構を介して、釣糸放出位置にあるベール36は、釣糸巻取位置に復帰することができる。
【0025】
この操作杆66は、リール本体12の収容空間S内に位置する後軸部66bの一部に、この操作杆66の回動位置を保持するために位置決め部70を形成し、リール本体12のボス部12c(図3の(C)参照)に保持された板バネ等の弾性体72をこの位置決め部70に圧接している。これにより、操作杆66は、切換レバー68を介して回動された位置である、ロータ16を正逆転可能状態とするクラッチオフ位置(図3)、あるいは、正回転を可能としかつ逆回転を防止する逆転防止状態とするクラッチオン位置に保持することができる。本実施形態では、このクラッチオン位置は、弱オン位置(図4)と強オン位置(図5)とを有しており、したがって、操作杆66の位置決め部70は、ロータ16がクラッチオフ位置、弱オン位置および強オン位置のときに、それぞれ弾性体72に当接してそれぞれの位置を保持する第1平坦面70a、第2平坦面70bおよび第3平坦面70cを周方向に沿って順に形成されている。
【0026】
このように形成された魚釣用リールの逆転防止装置46の作用は以下の通りである。
【0027】
図3に示すクラッチオフ位置では、(A)および(B)に示すように、切換レバー68、操作杆66の先端部66aおよび作動部材64を介して、保持器52がローラ50をフリー回転領域Fに配置する。操作杆66は、(C)に示すように、位置決め部70に形成された第1面70aを介して弾性体72で押圧され、回動が阻止されている。
【0028】
ローラ50は付勢バネ56と壁部54bとの間で、内輪部材48aから離隔した状態に、付勢バネ56の付勢力及び壁部54bの凹状部で付勢保持される。このため、内輪部材48aが回転しても、ローラ50を介してほとんど抵抗を受けず、内輪部材48a、筒軸30aおよびロータ16は正転方向および逆転方向に自由に回転することができる。
【0029】
図4に示すクラッチオン位置の弱オン位置では、(A)および(B)に示すように、切換レバー68、操作杆66の先端部66aおよび作動部材64を介して、保持器52がローラ50を規制領域Bに配置する。操作杆66は、(C)に示すように、位置決め部70に形成された第2面70bを介して弾性体72で押圧され、回動が阻止されている。ローラ50は、内輪部材48aの外周面と外輪部材48bの内周部に形成された傾斜面60とに当接し、付勢バネ56により、楔作用する方向に付勢されている。このときの付勢バネ56の付勢力は強オン位置における付勢力よりも弱い。
【0030】
内輪部材48aが矢印Rで示す逆回転方向に回転すると、ローラ50は矢印rで示す回転方向の力を受ける。この矢印r方向にローラ50を回転しようとする力は、ローラ50が傾斜面60と内輪部材48aとの間で楔作用すなわちこれらの部材間に食込むように働く。これにより、内輪部材48aおよびロータ16の逆回転が阻止される。これとは反対に、内輪部材48aが矢印Rとは反対方向すなわち正回転方向に回転すると、ローラ50には凹部58側に向けて楔作用を解除する方向の力が付勢バネ56の付勢力に抗して作用する。このクラッチオン位置の弱オン位置においても、ハンドル26を介してロータ16を釣糸巻取方向に自由に回転することができる。
【0031】
この弱オン位置では、ローラ50が楔作用する方向に働く付勢バネ56の付勢力が小さいため、微細で軽い仕掛を使用する場合や巻取性重視の場合に極めて好適に用いることができる。一方、重い仕掛けや寒冷地等の釣場環境、長期にわたる使用による部品の磨耗等の影響で逆回転しやすくなった場合は、切換レバー68を介して強オン位置に切換えることができる。
【0032】
図5に示すクラッチオン位置の強オン位置では、(A)および(B)に示すように、切換レバー68、操作杆66の先端部66aおよび作動部材64を介して、保持器52がローラ50を規制領域Bに配置する。操作杆66は、(C)に示すように、位置決め部70に形成された第3面70cを介して弾性体72で押圧され、回動が阻止されている。ローラ50は、内輪部材48aの外周面と外輪部材48bの内周部に形成された傾斜面60とに当接し、付勢バネ56により、楔作用する方向に付勢されている。作動部材64および保持器52が図4に示す弱オン位置よりも更に回動されているため、付勢バネ56の付勢力は弱オン位置における付勢力よりも強い。このため、より大きな逆転防止性能を得ることができる。
【0033】
このように形成された本実施形態の魚釣用リール用逆転防止装置46によると、逆転防止状態であるクラッチオン位置で、ローラ50が楔作用する方向に向けて保持器52を介して付勢する付勢力の大きさが比較的小さい弱オン位置(図4)と、これよりも付勢力が大きい強オン位置(図5)とに切換可能としたことにより、重い仕掛けや寒冷地等の釣場環境、あるいは、長期にわたる使用による部品の磨耗等の影響で逆回転しやすくなった場合は、付勢バネ56の付勢力を大きくし、微細で軽い仕掛を使用する場合や巻取性重視の場合は、付勢力を小さくすることができ、これにより、釣場の状況や釣法、釣人の好みあるいは魚釣用リールの作動状態を含む釣環境に応じて最適な状態で使い分けることができる。
【0034】
図6および図7は他の実施形態を示す。なお、以下に説明する実施形態あるいは変形例は、基本的には上述の実施形態と同様であり、同様な部位には同様な符号を付してその詳細な説明を省略する。
この実施形態では、操作杆76が操作レバー78の回転中心から偏心した位置に固定されており、図6に示すクラッチオフ位置と図7に示すクラッチオン位置とに切換えられる。また、引張りコイルバネで形成された付勢バネ80の一端は、作動部材64に係止され、他端は、付勢力を切換える補助レバー82に係止されている。本実施形態の補助レバー82は、操作レバー78と同様に、回転中心から偏心した位置に固定した突起84を有し、この突起を介して付勢バネ80の端部が固定されている。
【0035】
図6に示すクラッチオフ位置では、ローラ50がフリー回転領域Fに配置される。付勢バネ80の付勢力は作動部材64を介して作動杆76および操作レバー78で支えられ、ローラ50にはほとんど作用しない。
【0036】
この操作レバー78を図7に示すクラッチオン位置に切換えると、操作杆76および作動部材64を介して保持器52が回動され、ローラ50は規制領域Bに配置される。ローラ50は内輪部材48aと外輪部材48bの傾斜面60とに係合し、付勢バネ80の付勢力は作動部材64および保持器52を介してローラ50に作用する。このとき、作動部材64が付勢バネ84の付勢力を保持器52を介してローラ50に確実に作用させるために、操作杆76は長孔64a内で、対向する2つの長辺部のうち、付勢バネ80の付勢方向に対して反対側に位置する長辺部の間に僅かな間隙を形成するのが好ましい。
【0037】
このクラッチオン位置では、補助レバー82を実線で示す弱オン位置(付勢バネ80の作動部材64に作用する付勢力小)と、鎖線で示す強オン位置(付勢バネ80の作動部材64に作用する付勢力大)とに切換えることができる。
【0038】
この実施形態では、図1から図5の実施形態について説明した作用効果に加え、付勢バネ80は一つでよく、各ローラ50ごとに設ける必要がないため、逆転防止装置46を簡単な構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の好ましい実施形態による逆転防止装置を備えた魚釣用スピニングリールの内部構造を示す断面図。
【図2】図1の逆転防止装置を説明する概略的な斜視図。
【図3】図1の逆転防止装置を正逆転可能状態としたときの各部材の配置を示し、(A)は図1のA−A線に沿う断面図、(B)は(A)の一部の拡大図、(C)は図1のC−C線に沿う断面図。
【図4】図1の逆転防止装置を逆転防止状態で弱オン位置に配置したときの図3と同様な図。
【図5】図1の逆転防止装置を逆転防止状態で強オン位置に配置したときの図3と同様な図。
【図6】他の実施形態による逆転防止装置の正逆転可能状態を示す説明図。
【図7】図6の逆転防止装置の逆転防止状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0040】
10魚釣用スピニングリール、12…リール本体、16…ロータ(回転体)、26…ハンドル、50…ローラ(転がり部材)、52…保持器(保持部材)、56…付勢バネ(付勢部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルの回転に連動する回転体とリール本体との間に、保持部材で保持された転がり部材を配置し、この転がり部材が前記回転体とリール本体との間で楔作用することにより、リール本体に対する前記回転体の逆回転を防止する逆転防止状態と、この転がり部材が自由に回転することにより、リール本体に対する回転体の正回転および逆回転を可能とする正逆転可能状態とに、前記保持部材を介して切換可能とした魚釣用リールの逆転防止装置であって、
前記保持部材が逆転防止状態に切換えられたときに、前記転がり部材を楔作用させる方向に、この転がり部材を付勢する付勢部材の付勢力の大きさを切換可能としたことを特徴とする逆転防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−267707(P2007−267707A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100339(P2006−100339)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】