説明

魚釣用リール

【課題】腕部の数を容易に変更することのできるハンドルを備えた魚釣用リールを提供すること
【解決手段】釣糸を巻回保持するスプール14をリール本体12aに支持し、リール本体12aの一側に回転可能に支持されたハンドル16の回転で、リール本体内部に収容された巻取駆動機構を駆動させることで、スプール14に釣糸を巻回する魚釣用リールにおいて、ハンドル16を、それぞれが握持用摘手50を取付けられた複数のハンドル腕部44から形成し、これらのハンドル腕部44の少なくとも1つを着脱可能に形成し、この着脱可能のハンドル腕部44を取外したときに形成される空間部86を、閉塞部材88で閉塞可能とした魚釣用リール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関し、特に、リール本体に設けられたハンドルの回転操作により、スプールに釣糸が巻回される魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用リールは、釣竿に固定するための竿取付部を一体的に形成したリール本体にスプールを支持し、このリール本体の一側に回転可能に支持したハンドルを通じてこのリール本体内に組込んだ巻取り駆動機構を駆動することにより、スプールに釣糸を巻回保持するのが一般的である。
【0003】
このようなハンドルは、リール本体に対してハンドルを回転可能に支持する回転軸から角度をなしてクランク状に延びる腕部を有し、この腕部の先端部に、釣糸を巻き取る際に釣り人が握持する摘手が回転自在に設けられている。釣糸をスプールに巻き取る際には、この腕部の先端に設けられた摘手を握持し、腕部および回転軸を介して巻取駆動機構を駆動し、スプール上に釣糸を巻回する。
【0004】
このように巻取り駆動機構を駆動するハンドルは、遠くまで仕掛けを投擲することなく、例えば海上の船から仕掛けの重さ等で釣糸を繰出す釣法の場合には、腕部および摘手を一つのみ装着し、糸絡みを抑制しかつ軽量構造に形成される、いわゆるシングルハンドルが用いられる。
【0005】
しかし、例えばルアーフィッシング等のように、仕掛けの投擲を頻繁に行い、あるいは、ハンドルの逆転を防止した状態でこのハンドルから手を離し、竿を大きく動かすことで仕掛けにアクションを与えるような釣法にシングルハンドルを装着した魚釣用リールを用いると、仕掛けの投擲時に、釣糸放出状態から釣糸巻取り状態への誤復帰が生じ、あるいは、仕掛けにアクションを与えるアクション動作時に、本来不要であるハンドルの動きが生じることが多い。このような誤復帰により、例えば仕掛けが所要の距離まで飛ばなかったり、あるいは、釣糸が切れる等のトラブルを誘発する虞がある。
【0006】
このような不都合を改善するため、両軸リールの多くに一般的に用いられているように、回転軸から例えば2本である複数本の回転バランスの良好な腕部を延出させたいわゆるダブルハンドルを用いることにより、仕掛け投擲時の誤復帰を防止し、アクション動作時にハンドルが不意に回転するのを抑制する魚釣用スピニングリールも開発されている。このようなダブルハンドルには、腕部の長さが等しいもの(例えば特許文献1参照)だけでなく、腕部の長さおよび形状の異なるもの(例えば特許文献2参照)等、種々のものがある。このような魚釣用リールのハンドルは、その釣法の用途に応じて使い分けられる。
【特許文献1】特許第3104683号公報
【特許文献2】実開平4−94969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のダブルハンドルは、いずれも複数の腕部が一体に形成されているため、シングルハンドルとダブルハンドルとを使い分ける場合のように、腕部の数を変更しようとする場合には、双方のハンドルを予め釣人が保有する必要がある。特に、ハンドルは、腕部を回転軸に固定するための複数の部材からなるユニットで形成されているため、ハンドルユニットの単価が高く、このように複数のタイプのハンドルの保有コストが高くなる。
【0008】
また、特許文献1に記載のような腕部の長さが等しいダブルハンドルと、特許文献2に記載のような腕部の長さおよび形状の異なるダブルハンドルとの双方を必要とする場合にも、複数のハンドルユニットを保有する以外には方法がなく、ユーザの負担が増大する。
【0009】
一方、製造する際においても、シングルハンドル用とダブルハンドル用とのそれぞれの金型に加え、同じダブルハンドルであってもその構造の異なるもの毎に多数の金型を必要としており、製造コストの低減が困難である。更に、交換用あるいは修理用のいわゆるアフターパーツとして保管する場合にも、シングルハンドルおよびダブルハンドル等それぞれのタイプの全てを保管する必要があり、在庫数および保管スペースの観点からもコストの増大が避けられない。
【0010】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、腕部の数を容易に変更することのできるハンドルを備えた魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明によると、釣糸を巻回保持するスプールをリール本体に支持し、リール本体の一側に回転可能に支持されたハンドルの回転で、リール本体内部に収容された巻取駆動機構を駆動させることで、前記スプールに釣糸を巻回する魚釣用リールにおいて、前記ハンドルは、それぞれが握持用摘手を取付けられた複数の腕部から形成され、これらの腕部の少なくとも1つは着脱可能に形成され、この着脱可能な腕部を取外したときに形成される空間部を、閉塞部材で閉塞可能とした魚釣用リールが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の魚釣用リールによると、少なくとも1つの腕部が着脱可能であることにより、腕部の数を容易に変更することができ、しかも、摘手を設けたこのような着脱可能な腕部のみを複数用意しておくだけで、回転軸に固定するための複数の部材を含めたユニットを複数保有する必要がなくなり、ユーザの負担が軽減される。
【0013】
また、製造の際、例えば腕部の形状を同一に形成する場合は、1つの金型で、ハンドル腕部の数の変更に対応することが可能となり、アフターパーツとして保管する際においても、例えば一種類の腕部を保管するのみでシングルハンドルやダブルハンドルの在庫として対応可能となり、製造コストおよび保管コストを低減することができる。
【0014】
特に、長さや形状が異なる複数の着脱可能な腕部を形成することで、例えば腕部の長さ違い、腕部の角度違い、腕部の数の変更等の様々な要求に対して対応可能であるため、従来の腕部の着脱が不可能なハンドルよりも低コスト化することができ、ユーザの負担を軽減することができる。
【0015】
更に、着脱可能な腕部を取外したときに形成される空間部を、閉塞部材で閉塞可能としたことにより、このような空間部を介する水滴や塵埃の進入を効果的に抑制することができ、このため、空間部の腐食や塵埃の詰まりにより、腕部が着脱不能となるのを効果的に防止し、長期間にわたって、腕部の容易な着脱操作を維持することができる。
【0016】
この閉塞部材が、着脱可能な腕部を取外す前の強度を維持可能な強度を有する場合には、腕部の数を変更したときに生じる空間部の影響による、残った腕部の強度低下を補うことができ、これにより、ハンドルの腕部の変形を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1から図8は本発明の第1の実施形態を示す。これらの図に示すように、本実施形態の魚釣用スピニングリール10は、剛性構造のリール本体12aと、リール本体12aから延出する脚部12bと、脚部12bの端部に形成され且つ釣竿に取り付けられる竿取付部12cとを有している。リール本体12a内には、スプール14に釣糸を巻回するための巻取駆動機構が設けられている。具体的には、この巻取駆動機構は、リール本体12a内に回転可能に支持され、ハンドル16をリール本体12aに対して回転自在に支える回転軸18(図2参照)を有する。この回転軸18はドライブギア20と一体構造に形成してあり、このドライブギア20にはピニオンギア22が噛合している。
【0018】
ピニオンギア22は、回転軸18に対して直交する方向に延び且つリール本体12aに2つの軸受24(1つのみを示す)を介して回転可能に支持された軸筒(回転軸筒)26に設けられている。また、軸筒26の先端部には、ベール28および釣糸案内部30を備えたロータ32が一体的に取り付けられている。この軸筒26を、回転軸18と直交する方向に延在するスプール軸34が貫通している。このスプール軸34は、軸筒26と同心的に配されており、オシレーティング機構36により、回転軸18と直交する方向すなわち筒軸26の軸方向にに沿って軸筒26内を前後動することができる。このスプール軸34の先端部に、釣糸が巻回されるスプール14が取り付けられる。
【0019】
オシレーティング機構36は、回転軸18と一体回転する歯車19に噛合する連動歯車38を有するいわゆるギヤ方式のものであり、連動歯車38に突設され且つ連動歯車38の回転中心軸から偏心して位置する係合突起(図示しない)を、スプール軸34の後端部に取り付けられた摺動子40のカム溝(図示しない)に係合させ、連動歯車38が回転したときに、摺動子40を図示しないガイドレールに沿って前後方向に案内することができる。このようなオシレーティング機構36は、回転軸18がハンドル16の回転操作によって回転されると、回転軸18上の歯車19と噛み合う連動歯車38が回転し、それに伴って、連動歯車38の係合突起が回転すると共に、この係合突起に係合するカムの案内によって摺動子40が前後に往復動する。したがって、摺動子40に取り付けられたスプール軸34が軸方向に沿って往復駆動(前後動)する。
【0020】
このように形成された魚釣用スピニングリール10は、ハンドル16を回転操作して回転軸18を回転させると、オシレーティング機構36を介してスプール軸34に取り付けられたスプール14が前後に往復動するとともに、ドライブギア20、ピニオンギア22、軸筒26を介してロータ32が回転駆動する。これにより、スプール14には、釣糸案内部30を介して、釣糸が均等に巻回される。
【0021】
なお、リール本体12a内には、ロータ32の逆回転(釣糸をスプールから繰出す方向の回転)を防止する周知の一方向クラッチを備えた逆転防止機構が配置されており、この逆転防止機構を、リール本体12aの後端壁部に設けた切換レバー42を通じて切換操作し、ロータ32が正逆転可能な状態と、正転可能でかつ逆転不能の状態とに切換えることができる。ロータ32がいずれの状態にあっても、ハンドル16を正転方向(釣糸をスプールに巻き取る方向の回転)に回転すると、図示しない復帰機構を介して、釣糸放出位置にあるベール28は、図1に示す釣糸巻取位置に復帰することができる。
【0022】
図1および図2に示すように、このような巻取駆動機構の回転軸18を回転する本実施形態のハンドル16は、少なくとも一方が着脱可能な腕部である2つのハンドル腕部44,44を備えたダブルハンドルとして形成してあり、締結装置46を介して回転軸18に取外し可能に固定される。本実施形態のハンドル腕部44,44は、互いに同一構造の独立しかつ着脱可能な腕部として形成してあり、締結装置46を介して回転軸18に取付けられて一体化され、ユニット構造のハンドル16を形成する。
【0023】
各ハンドル腕部44は、締結装置46で一体化される基端部48と、釣り人が指で握持する摘手であるツマミ部50を回転自在に設けられた先端部52とを有し、この先端部52から離隔した基端部48まで、回転軸18の軸線に近づくにつれてリール本体12aの側方に沿って滑らかに湾曲した非直線構造に形成してあり、基端部48が最もリール本体12aに近接し、先端部52が最もリール本体12aから離隔した位置に配置される。これに代え、先端部52が基端部48よりもリール本体12aに近接する状態に湾曲させ、あるいは、一体化したときに2つのハンドル腕部44が1本の棒状となるように直線状に形成してもよい。また、各ハンドル腕部44は、一方のツマミ部50を握持してハンドル16を回転する際に、他方のツマミ部50と干渉しない長さに形成するのが好ましい。いずれの場合も、各ハンドル腕部44は、後述する基端部48を除き、長さや形状等の異なる様々なタイプの組合せが可能である。
【0024】
図3から図6に示すように、各ハンドル腕部44の基端部48は滑らかに拡径あるいは膨出した膨大部として形成し、先端部52から最も離隔した位置の端面48aと、リール本体12aに近接する底面48bとを平坦面に形成してある。更に、各底面48bからは、図5に示すような半円筒状の突出部54が突出し、これらの突出部54の先端面と基端部48の端面48aとに開口する溝部56が各基端部48に形成される。これらの突出部54を、端面48aに垂直でかつ底面48bに平行に延びる貫通孔58が貫通する。
【0025】
このように形成した各ハンドル腕部44は、それぞれの基端部48の端面48a同士を当接させ、底面48bを面一状に整合させたときに、各基端部48の溝部56が互いに整合して断面矩形の有底孔を形成し、各基端部48の貫通孔58が互いに同軸状に整合した状態に配置される。これらの整合した貫通孔58には、ピン60が挿入される。このピン60は、貫通孔58内に挿入されたときに、突出部54の側面部から突出しない長さに形成される。
【0026】
図4から図6に示すように、各ハンドル腕部44を一体化する締結装置46は、巻取駆動機構の回転軸18(図2参照)に一端が連結されるハンドル軸62と、このハンドル軸62の他端に螺合される締付け部材64とを有する。本実施形態のハンドル軸62は、回転軸18に螺合する雌ネジ66を一端に有し、他端には雄ネジ68と、この雄ネジ68から軸方向に突出する突起部70とを有する。この突起部70は、各ハンドル腕部44の端面48a,48aを当接させたときに溝部56,56が形成する有底孔内に嵌合する寸法に形成され、これらの溝部56,56の底壁に対向する一対の平坦面70aと、これらの平坦面間を貫通し、ハンドル腕部44の貫通孔58と整合して上述のピン60が挿入される貫通孔72とが設けられている。ピン60をこれらの突起部70の貫通孔72と、ハンドル腕部44の2つの貫通孔56とに挿通するため、雄ネジ68は、これらの突起部70を締付け部材64から充分に突出することのできる長さにわたって形成されている。
【0027】
なお、このハンドル軸62の一端に形成された雌ネジ66は、径の異なる2つのネジ部66a,66b(図6参照)を軸方向に沿って併設してあり、回転軸18の両端部に形成された径の異なる双方の雄ネジと螺合することができ、したがって、ハンドル16をリール本体12aの左右のいずれの側にも取り付けることができる。このハンドル軸62と巻取駆動機構の回転軸18とは、通常と同様に、ハンドル16を正転方向に回転したときに締付ける方向に形成されている。
【0028】
ハンドル軸62に螺合する締付け部材64は、ハンドル軸62を収容するスリーブ状に形成され、リール本体12aに近接する一端側は、リール本体12a側から回転軸18の周部から突出する円形突条17(図2参照)よりも大径の拡径開口部74を形成してあり、ハンドル軸62を回転軸18に装着したときに、突条17を覆って不必要に異物が浸入するのを防止する。また、締付け部材64の他端側に形成した端壁部75には、各ハンドル腕部44の基端部48に形成した2つの突出部54をピン60と共に収容する断面円形状の凹部76を形成し、この凹部76の底壁部に開口して、ハンドル軸62の雄ネジ68に螺合する雌ネジ78が、端壁部75を貫通して形成される。この凹部76は締付け部材64の端面77で外方に開口しており、その深さすなわち軸方向寸法は、突出部54の突出長さよりも大きく、後述すように突出部54を収容したときに、この突出部54の先端面と凹部76の底壁部との間に僅かな間隙が形成される。
【0029】
更に、ハンドル腕部44に対して締付け部材64が回転するのを防止するため、締付け部材64の端壁部75には、回り止めネジ80を挿通する例えば6つの軸方向孔82が等間隔に形成され、ハンドル腕部44の基端部48に形成されてこの底面48aに開口する例えば4つのネジ孔84が等間隔に設けられ、互いに軸方向に整合した軸方向孔82とネジ孔84とを通して、回り止めネジ80を螺合することができる。これらの軸方向孔82とネジ孔84とは、図示の数に限らず適宜の数とすることが可能であり、回り止めネジ80も1本に限らず適宜本数を設けることもできる。
【0030】
このようなハンドル16を締結装置46で一体的に組立てる場合は、ハンドル軸62の雄ネジ68を締付け部材64の雌ネジ78に螺合し、突起部70を凹部76から外方に突出させる。一方、各ハンドル腕部44の基部48を、その端面48a同士を当接させ、溝部56,56で形成した有底孔内にハンドル軸62の突起部70を挿入し、溝部56,56の底壁部を貫通する貫通孔58と突起部70の貫通孔72とを同軸状に整合させる。これらの同軸状に整合した貫通孔58,72内に、ピン60を挿入し、ハンドル軸62に対して締付け部材64を回転しつつハンドル腕部44側に移動する。2つの突出部54が組合わされて円筒状の外面を形成し、ピン60の端部がこの突出部54の外周面から突出しないため、これらの突出部54とピン60とは締付け部材64の凹部76内に収容され、図4に示すように、締付け部材64の端面77がハンドル腕部44の基端部48の底面48bと当接する。
【0031】
図4の状態から締付け部材64を更に締付けると、ピン60を介して突出部54が凹部76の底面に向けて付勢され、一方、突出部54の外方の底面48aが締付け部材64の端面77で逆方向に付勢される。したがって、2つのハンドル腕部44は、この締結装置46のハンドル軸62と締付け部材64との強固な締付け力で一体化される。このように強固な一体構造に形成されたハンドル16は、回り止めネジ80で回り止めを施された後、ハンドル軸62の雌ネジ66を回転軸18の左右の側の端部のうち所要の側の端部に螺合し、リール本体12a内に設けられた巻取駆動機構に装着される。ハンドル軸62および回転軸18の軸線を中心として、その両側でバランスされる。なお、ハンドル軸62は回転軸18の延長部として機能するものであるため、回転軸18をリール本体12aから十分な長さにわたって一体的に突出形成させる場合、及び、左右変換可能としない場合には、別部材のハンドル軸62を省略可能なことは明らかである。
【0032】
図7は、上述のようにダブルハンドルとして組立てたハンドル16を、シングルハンドルに変換する状態を示す。
組立てる場合とは逆に、回り止めネジ80を外した後、締結装置46の締付け部材64をハンドル軸62に対して後退させ、凹部76からハンドル腕部44の突出部54およびハンドル軸62の突起部70を突出する。ピン60を突出部54の貫通孔58から抜出し、一方のハンドル腕部44を取外す。そして、図7の(A)に示すように、取外したハンドル腕部44の基端部48が占めていた部分が形成する空間部86に、閉塞部材88を装着する。
【0033】
本実施形態の閉塞部材88は、ハンドル腕部44の膨大部として形成された基部48の外面と連続する滑らかな球面状の湾曲外面を有し、残ったハンドル腕部44の端面48aに当接する端面88aと、締付け部材64の端面77に当接する底面88bとが平坦面として形成されている。更に、この底面88bからは、突出部54と同様な半円筒状の突出部90が突出し、溝部56と共に有底孔を形成してハンドル軸62の突起部70を収容する溝部94が端面88aと突出部90の先端面とに開口する。更に、ピン60を挿通する貫通孔92が、端面88aに垂直でかつ底面88bに平行な方向に延びる。
【0034】
この閉塞部材86は、ハンドル腕部44の基端部48と同様な材料で形成することが好ましいが、シングルハンドルとして形成したハンドル16のガタ付きを防止できる強度を有し、水や塵埃等の異物の進入を阻止できるものであれば適宜の材料で形成することができる。好ましい材料としては、Al,Mg,SUS,Ti等の金属や、カーボンやガラスの繊維が混入された繊維強化樹脂、ABSやポリカーボネイト等の高強度樹脂等、強度を維持することが可能な材料が適している。
【0035】
このような閉塞部材88により、ハンドル腕部44を取外したときに形成される空間部86を閉塞することにより、2つのハンドル腕部44と締結装置46とでダブルハンドルのハンドル16を組立てる場合と同様に、図7の(B)に示すように、1つのハンドル腕部44と締結装置46とで簡単にシングルハンドルのハンドル16を組立てることができる。なお、回り止めネジ80を1本のみ用いる場合は、締結装置46の軸方向孔82を通してハンドル腕部44のネジ孔84に螺合することが好ましい
図8は、ハンドル16を2本のハンドル腕部44を取付けてダブルハンドルに形成した状態(A)と、一方のハンドル腕部44を閉塞部材88と交換してシングルハンドルに形成した状態(B)とを示す。一方のハンドル腕部44と閉塞部材88とを交換するだけで、必要に応じて、いずれのタイプのハンドル16にも迅速かつ簡単に変換することができる。
【0036】
図9は変形例によるハンドル16Aを示す。この変形例では、ハンドル腕部44Aの数を1本から3本まで自由に変換することができると共に、2本のハンドル腕部44Aからなるダブルハンドルとする場合には、これらのハンドル腕部44A間の配置角度を変更することもできる。
【0037】
すなわち、図9の(A)は、3本のハンドル腕部44Aを締結装置46Aで一体化した状態を示す。同図の(B)および(C)は1本のハンドル腕部44Aを取外し、2本のハンドル腕部44Aを用いた状態を示し、同図の(D)は2本のハンドル腕部44Aを取外し、1本のハンドル腕部44Aを備えたシングルハンドルに変換した状態を示す。
【0038】
空間部を閉塞する閉塞部材98は、図9の(B)に示すよううに、取外したハンドル腕部44Aの基端部48が占めていた部分と同じ形状に形成し、あるいは、同図の(C)に示す閉塞部材98Aのように基端部48の占めていた空間部の半分の大きさに形成することもできる。閉塞部材98Aのように、閉塞する空間部を分割した形状および大きさの複数の閉塞部材98Aを形成することにより、残ったハンドル腕部44A間の角度を適宜に変更することができる。図9の(D)に示す閉塞部材98Bについても、1つの閉塞部材で形成することに代え、例えば同図の(C)に示すように空間部を分割した形状および大きさの複数の閉塞部材98Aを用いることも可能である。
【0039】
なお、これらの閉塞部材98,98A,98Bは、着脱が容易にできるものであれば、例えば取付けネジを用いる等適宜の手段を用いることが可能である。
【0040】
このようなハンドル16,16Aを備えることにより、魚釣用リール10のハンドル16,16Aのハンドル腕部44,44Aの数を容易に変更することができ、しかも、摘手50を設けたこのような着脱可能なハンドル腕部44,44Aを複数用意しておくだけで、回転軸18に固定するための締結装置46,46Aを含めたユニットを複数保有する必要がなく、ユーザの負担が軽減される。
【0041】
また、製造の際、例えばハンドル腕部44,44Aのそれぞれの形状を同一に形成する場合は、1つの金型で、ハンドル腕部44,44Aの数の変更に対応することが可能となり、アフターパーツとして保管する際においても、例えば一種類のハンドル腕部44,44Aを保管するのみでシングルハンドルやダブルハンドル等の種々のタイプのハンドルの在庫として対応可能となり、製造コストおよび保管コストを低減することができる。
【0042】
特に、長さや形状が異なる複数の着脱可能なハンドル腕部44,44Aを形成することで、例えばハンドル腕部44,44Aの長さ違い、ハンドル腕部44,44Aの回転軸18に対する角度違い、ハンドル腕部44,44Aの数の変更等の様々な要求に対して対応することが可能となり、従来のハンドル腕部の着脱が不可能なハンドルよりも低コスト化することができ、ユーザの負担を軽減することができる。
【0043】
更に、着脱可能なハンドル腕部44,44Aを取外したときに形成される空間部86を、閉塞部材88,98,98A,98Bで閉塞可能としたことにより、このような空間部86を介する水滴や塵埃の進入を効果的に抑制することができ、このため、空間部86の腐食や塵埃の詰まりにより、ハンドル腕部44,44Aが着脱不能となるのを効果的に防止し、長期間にわたって、ハンドル腕部44,44Aの容易な着脱操作を維持することができる。
【0044】
この閉塞部材88,98,98A,98Bが、着脱可能なハンドル腕部44,44Aを取外す前の強度を維持可能な強度を有する場合には、ハンドル腕部44,44Aの数を変更したときに生じる空間部86の影響による、残ったハンドル腕部44,44Aの強度低下を補うことができ、これにより、ハンドル16,16Aのハンドル腕部44,44Aの変形を効果的に抑制することができる。
【0045】
なお、ハンドル腕部44,44Aの数は上述のように2本あるいは3本に限るものではなく、それ以上のハンドル腕部を有するハンドルを用いる可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の好ましい実施形態による魚釣用リールの側面図。
【図2】図1に示す魚釣用リールの一部を欠截した状態で示す後方からの断面図。
【図3】図1に示す魚釣用リールのハンドルの基端部を示し、(B)は(A)のB−B線に沿う図。
【図4】ハンドル腕部を締結装置で結合した状態の断面図。
【図5】2つのハンドル腕部の結合直前の状態を示し、それぞれ図4のA−A線およびB−B線に沿う図。
【図6】ハンドル腕部と締結装置との分解図。
【図7】一方のハンドル腕部を取外し、閉塞部材を取付ける状態を示す説明図。
【図8】2つのハンドル腕部を用いた状態と、1つのハンドル腕部用いた状態とを示すハンドルの説明図。
【図9】3本のハンドル腕部と閉塞部材との組合せにより種々のタイプのハンドルに変換する状態の説明図。
【符号の説明】
【0047】
10…魚釣用リール、12a…リール本体、14…スプール、16…ハンドル、18…回転軸、44…ハンドル腕部、88…閉塞部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸を巻回保持するスプールをリール本体に支持し、リール本体の一側に回転可能に支持されたハンドルの回転で、リール本体内部に収容された巻取駆動機構を駆動させることで、前記スプールに釣糸を巻回する魚釣用リールにおいて、前記ハンドルは、それぞれが握持用摘手を取付けられた複数の腕部から形成され、これらの腕部の少なくとも1つは着脱可能に形成され、この着脱可能な腕部を取外したときに形成される空間部を、閉塞部材で閉塞可能としたことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記閉塞部材は、着脱可能な腕部に代えて取付けられたときに、この着脱可能な腕部を取外す前の強度を維持可能な強度を有することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−25762(P2006−25762A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213147(P2004−213147)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】