説明

魚釣用リール

【課題】軽量化を図りつつ巻取操作時の荷重に耐え得る強度を有するとともに、操作フィーリングの向上を図る。
【解決手段】リール本体1内に設けられた巻取駆動機構を駆動するためのハンドル軸20と、このハンドル軸20に取り付けられ、端部に回転操作用のツマミ部40が設けられたアーム部30とを有するハンドル5を備えた魚釣用リールであって、アーム部30は、非金属製の板状の芯材35と、芯材35よりも薄く形成され、芯材35をハンドル軸20の軸心方向の両側から挟み込む金属製の補強板31と、を含む積層構造とされている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用リールとして一般的なスピニングリールや両軸受リールでは、リール本体の一方の側にハンドル軸を介して釣糸を巻取操作するハンドルが取り付けられており、このハンドルが回転操作されることで、ハンドル軸を介してリール本体内に設けられた巻取駆動機構が駆動され、この巻取駆動機構の駆動によってリ−ル本体に回転自在に支持されたロータが回転駆動されるように構成されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
ところで、ハンドルの構成部品のひとつとして前記したハンドル軸に固定されるアーム部は、単一の金属材からなり、金属成形やプレス加工等を経て形成されている。
そして、このように形成されるアーム部は、巻取操作時の荷重に耐え得るように強度を備える必要があり、一般的に肉厚に形成されている。
【0004】
しかしながら、肉厚に形成することによってアーム部の強度は確保されるものの、ハンドルの重量増加を来たすという難点が生じる。ハンドルの重量増加は、巻取操作性の低下や魚釣用リール全体の重量増加にもつながる問題であり、リール本体のハンドル装着側に重量が偏寄する等の不具合も生じて、釣竿装着時の左右の重量バランスに影響を及ぼす原因にもなる。
このため、従来は、ハンドルの重量を低減する目的で、アーム部に、例えば、アーム部の長手方向に沿う貫通孔を形成してアーム部の軽量化を図っていた。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3030528号公報
【特許文献2】特許第3473660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記したような貫通孔を形成することは、軽量化に対しては有効な手段であるが、巻取操作時に作用する荷重に対して強度を確保することを考慮すると、アーム部が単一の金属材からなることから、貫通孔による軽量化を行うことには限界がある。
【0007】
また、アーム部に貫通孔を形成すると、巻取操作時に、ハンドルを回転操作する手が貫通孔に当ったり、指が引っ掛かったりするおそれがあり、操作フィーリングが低下するおそれもあった。
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、軽量化を図りつつ巻取操作時の荷重に耐え得る強度を有するとともに、操作フィーリングの向上を図ることができる魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決する本発明の魚釣用リールは、リール本体内に設けられた巻取駆動機構を駆動するためのハンドル軸と、このハンドル軸に取り付けられ、端部に回転操作用のツマミ部が設けられたアーム部とを有するハンドルを備えた魚釣用リールであって、前記アーム部は、非金属製の板状の芯材と、前記芯材よりも薄く形成され、前記芯材を前記ハンドル軸の軸心方向の両側から挟み込む金属製の補強板と、を含む積層構造とされていることを特徴とするものである。
【0010】
この魚釣用リールによれば、非金属製の板状の芯材を、ハンドル軸の軸心方向の両側から補強板で挟み込むことにより、芯材と補強板とからなる積層構造のアーム部が得られる。芯材は非金属製であるので単一の金属材から形成した場合に比べてアーム部の軽量化を図ることができる。また、補強板は金属製であるのでアーム部に剛性を持たせることができる。
【0011】
また、本発明は、前記補強板には、打ち抜き孔が形成されており、前記打ち抜き孔を通じて前記補強板の外部に前記芯材の表面が出現する構成とするのがよい。
【0012】
この魚釣用リールによれば、補強板に打ち抜き孔が形成されているので、その分、補強板の軽量化を図ることができる。また、芯材に補強板を積層すると、打ち抜き孔を通じて補強板の外部に芯材の表面が出現するので、芯材の表面に例えば模様等を付しておくことにより、打ち抜き孔を通じてその模様等を外部に出現させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハンドルアームが、非金属製の板状の芯材と、この芯材をハンドル軸の軸心方向の両側から挟み込む金属製の補強板と、からなる積層構造とされているので、軽量化と剛性の確保とを同時に達成することができる。
また、ハンドルの構造が複雑化することがなく、簡易な構成にて軽量化と剛性の確保とを達成することができ、製造コストを抑えることができる。
また、ハンドルの軽量化を達成することができるので、巻取操作時等の操作フィーリングの向上を図ることができる。さらに、軽量化によりリール本体のハンドル装着側の重量偏寄が生じ難くなり、釣竿へ装着した際の左右の重量バランスに優れた魚釣用リールが得られる。
【0014】
また、本発明によれば、金属製の補強板に打ち抜き孔が形成されているので、ハンドルアームの剛性を確保しつつより一層の軽量化、ひいては魚釣用アーム全体としての軽量化を図ることができる。
また、補強板に形成された打ち抜き孔は、補強板が芯材に積層されることで、芯材で塞がれることとなるので、打ち抜き孔が形成されている構成でありながら、巻取操作時に打ち抜き孔に指や手が引っ掛かることがなくなる。したがって、スムーズなハンドルの巻取操作が可能となり、操作フィーリングに優れた魚釣用リールが得られる。
また、芯材の表面に模様等を付しておくことにより、打ち抜き孔を通じてその模様等を外部に出現させることができ、外観の見栄えがよく、高級感のあるハンドルを備えた魚釣用リールが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る魚釣用リールの一実施形態について図面を参照しながら説明する。
参照する図面において、図1は本発明の実施形態に係る魚釣用リールとしてのスピニングリールの全体構成を示す後方斜め上方から見た斜視図、図2はハンドルの分解斜視図、図3は図1に示すスピニングリールの断面背面図である。
なお、以下の説明において、「前、後」「左、右」「上、下」は、スピニングリールを釣竿R(図1参照)に取り付けた状態を基準とする。
【0016】
図1に示すように、スピニングリールは、釣竿Rに装着するための脚部1Aが形成されたリール本体1と、リール本体1の前方に回転可能に設けられたロータ2と、このロータ2の回転運動と同期して前後方向移動可能に設けられたスプール3とを有して構成される。
リール本体1の右側方には、ハンドル5が連結されており、このハンドル5は、ロータ2を回転駆動するためのハンドル軸20と、このハンドル軸20に取り付けられ、端部に回転操作用のツマミ部40が設けられた平板状のアーム部30とを備えてなる。
【0017】
図3に示すように、リール本体1は、その左側部に設けた開口部4を蓋体1Bで閉塞することで形成される収容部1Cを備え、この収容部1Cに、後記する駆動歯車6やピニオン7等からなる巻取駆動機構10、トラバース機構(スプール往復動装置)8が組み込まれている。
【0018】
リール本体1と蓋体1Bとの間には、一対の軸受11,12を介して駆動軸13が回転可能に支持されており、この駆動軸13には、蓋体1B側における外周に、駆動歯車6が回り止め固定されている。この駆動歯車6には、ピニオン7が噛合している。
【0019】
また、リール本体1の右側部には、略筒状のハンドル取付部14が外方(右方)へ突設されており、このハンドル取付部14の中心軸上に、軸受12に支持された駆動軸13の右端部が突出している。
【0020】
駆動軸13の右端部外周には、雄ネジ部13aが形成されている。この雄ネジ部13aには、ハンドル軸20の左端部のネジ穴に形成された雌ネジ部20aが螺合可能であり、この螺合によって駆動軸13にハンドル軸20(ハンドル5)が連結されるようになっている。
【0021】
ハンドル5は、前記したように、ハンドル軸20と、アーム部30と、ツマミ部40とを有して構成されており、回転操作によって駆動軸13に駆動力を付与し、駆動軸13に付与された駆動力によって、リール本体1内に設けられた巻取駆動機構10が駆動される。
【0022】
ハンドル軸20は、金属製であり、図4,図5に示すように、軸部21と、軸部21の右端部に設けられた鍔部22と、この鍔部22の左側に隣接して設けられた係止部23と、この係止部23の左側の近傍に設けられたネジ部(雄ネジ)24とを備えている。
軸部21は、アーム部30の上端部に形成された貫通孔32に挿通可能な外径を有しており、その左端部に形成されたネジ穴には、前記した駆動軸13(図3参照、以下同じ)の右端部外周に形成された雄ネジ部13a(図3参照、以下同じ)が螺合可能な雌ネジ部20aが形成されている。
雌ネジ部20aが形成されるネジ穴は、段付き状とされており、雌ネジ部20aの奥側に、これよりも小径とされた雌ネジ部20bが形成されている。この小径とされた雌ネジ部20bには、駆動軸13の左端部外周に形成された雄ネジ部13b(図3参照、以下同じ)が螺合可能である。つまり、駆動軸13の左端部外周に形成された雄ネジ部13bに、ハンドル軸20の雌ネジ部20bを螺合することによって、ハンドル5をリール本体1の異なる側(左側)に連結することができる。
【0023】
鍔部22は、アーム部30の貫通孔32よりも大きな外径を有しており、軸部21を貫通孔32に挿通したときに、その貫通孔32の孔縁に鍔部22の左側面22bが当接するようになっている(図5参照)。鍔部22は、薄形円板状に形成されており、貫通孔32の孔縁にその左側面22bが当接した状態で、アーム部30の右側面からの突出量が小さくなるようにされている。
なお、鍔部22の頂部(右側部)には、締め付け用の工具を装着するための穴部22aが穿設されている。
【0024】
係止部23は、アーム部30の貫通孔32に挿入されて孔内に回り止め係止される部分であり、軸部21を貫通孔32に挿入して鍔部22の左側面22bを貫通孔32の孔縁に当接した状態において貫通孔32内に位置するようになっている。係止部23は、円弧部23a,23aと、この円弧部23a,23aに連続する直線部23b,23bとを備えており、縦断面形状が貫通孔32の断面形状に対応した略小判形状となっている。
【0025】
ネジ部24は、前記したように係止部23の左側の近傍に形成されており、アーム部30の貫通孔32に挿通可能な大きさのネジ径を有している。このネジ部24には、円筒状のカバー部材25の内面に形成されたネジ部26b(雌ネジ)が螺合可能である。本実施形態では、軸部21のネジ部24にカバー部材25のネジ部26bを螺合することによって、ハンドル軸20にカバー部材25を螺着することができ、軸部21をカバー部材25で覆うことができる。
【0026】
また、このハンドル軸20とカバー部材25との螺着によって、同時に、鍔部22とカバー部材25との間にアーム部30を挟持するようにしてハンドル軸20にアーム部30を固定することができる(図7参照)。つまり、螺着時の締め付けによって鍔部22の左側面22bとカバー部材25の右側面26cとの間の距離が狭まることを利用して、この間に、アーム部30の端部周り(貫通孔32の孔縁周り)を挟持することができ、これによって、ハンドル軸20にアーム部30を固定することができる。
【0027】
このようにハンドル軸20にアーム部30が固定された状態で、ハンドル軸20の軸部21に形成された係止部23は、図4に示すように、アーム部30の貫通孔32に係止されている。したがって、螺着によって鍔部22とカバー部材25との間にアーム部30を挟持すると、係止部23を介してハンドル軸20にアーム部30が回り止めされた状態で固定されることとなる。
【0028】
本実施形態では、ハンドル5による釣糸巻き上げ方向の回転操作時に、ハンドル軸20を介して前記螺着が締め付けられる方向の回転力が付与されるように、軸部21の前記ネジ部24とカバー部材25の前記ネジ部26bとのネジ方向が設定されている。
【0029】
カバー部材25は、金属材(アルミニウム合金、銅合金等)や硬質樹脂材等で形成され、図4に示すように、ハンドル軸20の軸部21を覆う円筒状の部材であり、図5に示すように、胴部25aと、この胴部25aの右側に一体的に設けられたフランジ部26と、胴部25aの左側に一体的に設けられた段付き円筒部27とを備える。
胴部25aには、軸方向(左右方向)に長く形成された長孔25bが周方向に等間隔を置いて計4つ(図5では3つのみ図示)形成されており、その内側には、補強材として機能する金属製の円筒部材28が内嵌されるようになっている。胴部25aの内面には、周方向に溝部25dが形成されており、この溝部25dに、円環の一部を欠損させた形態(例えばC字状)の抜止部材28aが嵌め入れられることで、円筒部材28の抜け落ちが防止されている(図4参照)。
【0030】
フランジ部26の中空部26aには、前記したハンドル軸20の軸部21が挿通可能であり、その内面には、ハンドル軸20の軸部21に形成されたネジ部(雄ねじ)24に螺合するネジ部(雌ねじ)26bが形成されている。また、フランジ部26の右端面26cは、平らな面(カバー部材25の軸線に対して垂直となる面)とされており、アーム部30の貫通孔32の孔縁に密着可能である。これによって、後記するように、ハンドル軸20にカバー部材25を螺着することによって、ハンドル軸20にアーム部30を固定すると、アーム部30の長手方向の軸線に対して、ハンドル軸20およびカバー部材25は直角に固定されることとなる。
【0031】
段付き円筒部27は、左端の開口へ向けて段付き状に拡径されており、その内空には、リール本体1の左側部に突設されたハンドル取付部14(図3参照)が収容可能である。
【0032】
アーム部30は、非金属製の平板状の芯材35と、この芯材35よりも薄く形成され、芯材35をハンドル軸20の軸心方向(左右方向)の両側から挟み込む金属製の薄板状の補強板31と、からなる3層の積層構造(サンドイッチ構造)としてある。
本実施形態では、アーム部30の形状が、図6(a)(b)に示すように、左右方向から見て、ハンドル軸20(図2参照)が固定される上部側が下部側よりも幅広(前後方向に大きい寸法)に形成されて剛性を持たせており、上部側から下部側に向けて巾が漸次狭まるようにされて、略中央部から下部側へ幅狭(前後方向に小さい寸法)に形成されている。
アーム部30の上部には、前記したハンドル軸20の軸部21(図2参照)が挿通される、アーム部30の取付用の貫通孔32が形成されている。貫通孔32は、円弧部32a,32aと、この円弧部32a,32aに連続する平行な直線部32b,32bとを備えており、断面形状が略小判形状とされている。本実施形態では、アーム部30が芯材35と2枚の補強板31とからなるので、各芯材35および補強板31には、貫通孔32を構成する円弧部32a,32aと、平行な直線部32b,32bとがそれぞれ形成されている。
また、アーム部30の下部には、後記するツマミ部40の取付軸41が挿通される、ツマミ部40の取付用の貫通孔34が形成されている。なお、芯材35に形成される貫通孔34は、補強板31に形成される貫通孔34よりも小径とされている。
【0033】
芯材35は、繊維を引き揃えて配列した後に樹脂材料を含浸させた繊維強化樹脂シート(繊維強化プリプレグ)を複数枚重ねて加熱硬化してなり、軽量で、強度が大きく、耐衝撃性に優れている。なお、使用される繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維、天然繊維、あるいは金属線等を用いることができる。また、異方性が小さい三軸織物の層等を最外層に設けて芯材35の表面に模様を付し、補強板31の後記する打ち抜き孔33を通じてその模様が外部に出現するように構成してもよい。
なお、芯材35は、硬質の合成樹脂材で形成してもよい。
【0034】
補強板31は、例えば、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金、銅合金、真鍮等の材料を採用して形成することができ、中央部に長手方向に沿う打ち抜き孔孔33が形成されている。なお、打ち抜き孔33は、補強板31に一つ形成したが、これに限られることはなく、補強板31の長手方向に沿って、複数個設けてもよい。また、打ち抜き孔の形状は、円形状、楕円形状、矩形状、多角形状等、種々の形状を採用することができる。
このようなアーム部30は、図2,図5,図6(b)に示すように、芯材35を左右両側から補強板31,31で挟み込むようにして、これらを重ね合わせることで構成される。
【0035】
ツマミ部40は、図4に示すように、金属製の取付軸41と、取付軸41に軸受46を介して回転可能に支持される基部42と、この基部42に装着される胴部40aを有して取付軸41に軸受47を介して回転可能に支持されるツマミ拡径部43と、このツマミ拡径部43の右側開口を閉じる蓋部45とを備えている。
【0036】
取付軸41の左端部には、アーム部30の下部に形成されたツマミ部40の取付用の貫通孔34に挿通可能な小径の鍔部41aが形成されている。アーム部30に取付軸41を固定する際には、この鍔部41aを貫通孔34に挿通してアーム部30の左側面側に突出させ、鍔部41aとアーム部30との間に抜止部材41b(C字形状等)を係止することで行うことができる。
貫通孔34に取付軸41を固定すると、取付軸41のフランジ部41cと鍔部41aに係止された抜止部材41bとの間に、アーム部30の下部側における芯材35と補強板31,31とが積層された状態で挟持固定される。
【0037】
取付軸41の左端部には、ツマミ拡径部43が軸受47を介してネジ48で固定されている。ツマミ拡径部43に連続する胴部40aには、その内空に金属製の円筒部材44が内嵌されており、胴部40aに形成された孔部40bを通じて円筒部材44の表面が外部に出現可能となっている。したがって、円筒部材44の表面に模様等を付しておくことによって、孔部40bを通じてその模様等を外部に出現させることができ、外観の見栄えがよく、高級感を醸し出すことができる。また、孔部40bが設けられていることによって、ツマミ部40の軽量化も可能である。
なお、ツマミ拡径部43の右側開口は、蓋部45で閉じられることとなるが、その内部には、広い空間が形成されており、軽量化が図られている。
【0038】
次に、ハンドル5の組立手順について説明する。
始めに、アーム部30を構成する芯材35と補強板31とを用意し、図6(b)に示すように、芯材35の左右両側に補強板31,31を配置し、芯材35を左右両側から補強板31で挟み込むようにしてこれらを重ね合わせる(図6(a)参照)。
そして、芯材35および補強板31,31に形成された各貫通孔32を位置合わせして、これにハンドル軸20の軸部21を挿通する。このとき、貫通孔32に軸部21を根元部分まで挿通して軸部21に形成された係止部23を貫通孔32内に位置させてこれに係止する。
【0039】
この状態で、軸部21の左端部から軸部21にカバー部材25を被せ、軸部21のネジ部24にカバー部材25のネジ部26bを螺合する。
そして、さらに、カバー部材25を締め付けてゆき、鍔部22の左側面22bとカバー部材25の右側面25cとの間の距離を狭めて、この間に、アーム部30の端部周り(貫通孔32の孔縁周り)を挟持固定する。
【0040】
このとき、ハンドル軸20の軸部21に形成された係止部23は、図4に示すように、アーム部30の貫通孔32に係止されているので、ハンドル軸20に対してアーム部30が回り止めされた状態で固定される。したがって、アーム部30が鍔部22とカバー部材25とによって挟持されて固定されることと相俟って、ハンドル軸20とアーム部30との強固な固定が実現される。
【0041】
その後、アーム部30の下端部に形成された貫通孔34にツマミ部40の取付軸41を挿通し、貫通孔34から突出した取付軸41の鍔部41aに抜止部材41bを係止する。
これによって、アーム部30の下端部にツマミ部40が回転可能に取り付けられる。
なお、アーム部30を構成している芯材35と補強板31,31とは、接着剤やその他の接着手法を利用して一体的に接合するようにしてもよい。
【0042】
以上説明した本実施形態の魚釣用リールによれば、繊維強化樹脂材(非金属製)からなる板状の芯材35を、ハンドル軸20の軸心方向の左右両側から補強板31,31で挟みこむことにより、芯材35と補強板31,31とからなる3層の積層構造(サンドイッチ構造)とされたアーム部30が得られる。芯材35は非金属製であるので単一の金属材から形成した場合に比べてアーム部30の軽量化を図ることができる。また、補強板31は金属製であるのでアーム部に剛性を持たせることができる。
したがって、軽量化と剛性の確保とを同時に達成することができるハンドル5を備えた魚釣用リールが得られる。
【0043】
また、ハンドル5の構造が複雑化することがなく、簡易な構成にて軽量化と剛性の確保とを達成することができ、製造コストを抑えることができる。
【0044】
また、ハンドル5の軽量化を達成することができるので、巻取操作時等の操作フィーリングの向上を図ることができる。さらに、軽量化によりリール本体1のハンドル5の装着側の重量偏寄が生じ難くなり、釣竿Rへ装着した際の左右の重量バランスに優れた魚釣用リールが得られる。
【0045】
また、補強板31に、打ち抜き孔33が形成されているので、その分、補強板31の軽量化を図ることができる。
また、打ち抜き孔33を通じて芯材35の表面を補強板31の外部に出現させることができるので、芯材35の表面に例えば模様等を付しておくことにより、打ち抜き孔33を通じてその模様等を外部に出現させることができる。
したがって、外観の見栄えがよくなり、高級感のあるハンドル5を備えた魚釣用リールが得られる。
【0046】
また、組み付け時には、ハンドル軸20の軸部21のネジ部24にカバー部材25のネジ部26bを螺着することで、鍔部22とカバー部材25との間にアーム部30を挟持固定することができ、ハンドル軸20とアーム部30との取付構造が簡素化され、軽量化が可能となる。また、組み付け作業が簡単であるのでコストの低減を図ることができる。
【0047】
また、ハンドル軸20の軸部21には、アーム部30の貫通孔32に回り止め固定される係止部23が設けられているので、ハンドル軸20にカバー部材25を螺着して、鍔部22とカバー部材25との間にアーム部30を挟持固定すると、貫通孔32に係止部23が係止され、ハンドル軸20に対してアーム部30を好適に回り止め固定することができる。したがって、ハンドル軸20とアーム部30との強固な固定が実現される。
【0048】
また、ハンドル5は、釣糸巻き取り方向の回転操作時に、ハンドル軸20を介してハンドル軸20とカバー部材25との螺着が締め付けられる方向に回転力を付与する構成であるので、荷重がかかる釣糸巻き取り操作時には、常にハンドル軸20とカバー部材25との螺着が締め付けられる状態が維持されることとなり、ハンドル軸20の軸部21とカバー部材25との螺着が緩むことを確実に防止することができ、ハンドル軸20に対してアーム部30がガタつくのを好適に阻止することができる。したがって、ハンドル軸20とアーム部30との挟持固定を長期的に維持することができ、スムーズなハンドル5の回転操作が得られて操作フィーリングが向上された魚釣用リールが得られる。
【0049】
また、アーム部30は、鍔部22とカバー部材25との間に挟持固定されるので、従来のようにネジ部材で取付固定したときのようなハンドル軸20とアーム部30との取付部分の緩みを防止することができる。これによって、ハンドル軸20とアーム部30との取り付け強度が向上される。
【0050】
また、アーム部30の右側方には、扁平な鍔部22が突出するだけで済むので、従来のようにネジ部材の頭部を大きく形成して取付固定を行ったときに比べて、アーム部30の側方へ突出する部分の突出量を小さくすることができ、これによって、実釣時に釣糸が絡むのを好適に防止することができる。
【0051】
また、アーム部30の側方には、扁平な鍔部22が突出するだけで済むので、鍔部22を径方向に大型化することも可能であり、このように、鍔部22を大型化することによって、強固な挟持固定を実現することができる。これによって、ハンドル軸20とアーム部30との取付部分の緩みを効果的に防止することができる。
【0052】
前記実施形態では、魚釣用リールとしてスピニングリールに適用したものを例示したが、これに限られることはなく、両軸用リールのハンドルに対して適用してもよい。
【0053】
また、前記実施形態では、アーム部30を平板状としたが、これに限られることはなく、芯材35や補強板31に折曲部分や湾曲部分を形成して、これらが積層されてなる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールとしてのスピニングリールの全体構成を示す後方斜め上方から見た斜視図である。
【図2】ハンドルの分解斜視図である。
【図3】図1に示すスピニングリールの断面背面図である。
【図4】ハンドルの断面図である。
【図5】ハンドルの要部を分解した状態の断面図である。
【図6】(a)はアーム部の全体を示す斜視図、(b)は同じくアーム部の分解斜視図である。
【図7】ハンドル軸とアーム部との組み付けを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 リール本体
5 ハンドル
10 巻取駆動機構
14 ハンドル取付部
20 ハンドル軸
21 軸部
22 鍔部
23 係止部
23a 円弧部
23b 直線部
24 ネジ部
25 カバー部材
26 フランジ部
26b ネジ部
30 アーム部
31 補強板
32 貫通孔
33 打ち抜き孔
35 芯材
40 ツマミ部
R 釣竿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体内に設けられた巻取駆動機構を駆動するためのハンドル軸と、このハンドル軸に取り付けられ、端部に回転操作用のツマミ部が設けられたアーム部とを有するハンドルを備えた魚釣用リールであって、
前記アーム部は、
非金属製の板状の芯材と、
前記芯材よりも薄く形成され、前記芯材を前記ハンドル軸の軸心方向の両側から挟み込む金属製の補強板と、を含む積層構造とされていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記補強板には、打ち抜き孔が形成されており、前記打ち抜き孔を通じて前記補強板の外部に前記芯材の表面が出現することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−119354(P2010−119354A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297249(P2008−297249)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】