説明

魚釣用リール

【課題】部品点数および組み立て工数を削減できるとともに製造コストを効率良く低減できる小型で軽量な魚釣用リールを提供する。
【解決手段】本発明の魚釣用リールでは、転がり式一方向クラッチの外輪25に形成した回り止め係止部25aを、回転駆動軸8を回転自在に支持する軸受9の抜け止めを行なう抜け止め部材37(抜け止め部37b)に形成した係合部37aに係合可能とし、この抜け止め部材37を介して、一方向クラッチの外輪25をリール本体1に回り止め(抜け止め部材37の係合部37aはネジ30によってリール本体1に固定される)した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり式一方向クラッチを組み込んで回転駆動軸の逆転防止を図るようにした魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、魚釣用リールは、ハンドルを回転操作することで、動力伝達機構を介して釣糸をスプールに巻回するように構成されている。例えば、魚釣用リールとしてのスピニングリールでは、ハンドルの回転操作により駆動軸を介して釣糸案内部を有するロータを回転させ、スプールに釣糸を巻回する。また、このような魚釣用リールには、実釣時にスプールに巻回されている釣糸の繰り出しでロータが逆転しないように、逆転防止装置が装備されている。
【0003】
このような逆転防止装置としては、魚釣り操作時の逆転遊度を少なくしてフッキング操作の確実性の向上を図るために、転がり式一方向クラッチを採用したものが一般的に知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、一方向クラッチを回り止め嵌合支持するリール本体の嵌合支持部の強度的負担を軽減するために、一方向クラッチの外輪の開口縁部に回り止め係止用切欠部を形成し、この回り止め係止用切欠部に係合する回り止め部材をリール本体に固定して、回り止め部材を介して一方向クラッチの外輪をリール本体に回り止め固定したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3860051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された構造によれば、リール本体の嵌合支持部の強度的負担は軽減できるが、一方向クラッチの外輪を回り止めする別部材および固定部材が必要となるため、その分、部品点数および組み立て工数が増えて製造コストがアップする。また、部品点数増加の分、重量が増加する。
【0007】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、部品点数および組み立て工数を削減できるとともに製造コストを効率良く低減できる小型で軽量な魚釣用リールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、ハンドルで回転操作される回転駆動軸とリール本体との間に、一方向の回転を許容し他方向の回転を阻止する転がり式一方向クラッチを設けて、前記回転駆動軸の逆転を防止するようにした魚釣用リールにおいて、転がり式一方向クラッチの外輪に形成した回り止め係止部を、前記回転駆動軸を回転自在に支持する軸受の抜け止めを行なう抜け止め部材に形成した係合部に係合可能とし、この抜け止め部材を介して、前記一方向クラッチの外輪をリール本体に回り止めしたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、回転駆動軸を回転自在に支持する軸受の抜け止め部材を兼用して、一方向クラッチの外輪をリール本体に回り止めする構成としたため、部品点数および組み立て工数を削減でき、製造コストを効率良く低減できる。
【0010】
また、上記構成では、前記転がり式一方向クラッチの外輪が、前記回転駆動軸の挿通によってほぼ閉塞される閉塞端部と反対側の開放端部とを有する略筒状体として形成され、前記回り止め係止部が、前記一方向クラッチの外輪の開放端部に形成されて、前記抜け止め部材の係合部に係合されても良い。
【0011】
このような構成によれば、合理的配置形態として一般に、回り止め係止部を有する外輪の開放端部が、回転駆動軸を回転自在に支持する前記軸受と対向する側に位置されることとなるため、外輪の開放端部が前記軸受から離れて面する(外輪の閉塞端部が軸受と対向する)配置形態の場合と比べて、リールの軸方向寸法を短くすることが可能になる。すなわち、一般に、魚釣用リールでは、前記軸受側から一方向クラッチ側へと延び且つ一方向クラッチを逆転可能位置と逆転防止位置との間で切り換えるための切換操作機構が設けられ、この切換操作機構の切換要素を外輪の内部の一方向クラッチの構成要素と接続するために、切換要素がリールの軸方向に延在するが、外輪の開放端部が前記軸受と対向する側に位置されていれば、外輪の開放端部が前記軸受から離れて面する配置形態の場合と比べて、切換操作機構の前記切換要素の軸方向延在長さ(切換要素のリール前方側への突出量)を短くすることができ、したがって、リールの軸方向寸法を短くできる(リールの小型化を量ることができる)とともに、その分、軽量化も可能になる。また、このように外輪の開放端部に回り止め係止部が形成されていれば、抜け止め部材を開放端部を通じて筒状の外輪内に嵌め込むことも可能になり、したがって、その嵌め込み量分だけ更にリールの軸方向寸法を短くすることができ、リールの小型化(軸方向寸法の短縮化)を更に促進させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、部品点数および組み立て工数を削減できるとともに製造コストを効率良く低減できる小型で軽量な魚釣用リールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る魚釣用リールの一部断面を伴う側面図である。
【図2】図1の魚釣用リールの要部拡大断面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図3のC−C線に沿う断面図である。
【図6】転がり式一方向クラッチの外輪の回り止め係止部と抜け止め部材の係合部との係合領域の部分拡大断面図である。
【図7】図6のD−D線に沿う断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る魚釣用リールの要部拡大断面図である。
【図9】図8のE−E線に沿う断面図である。
【図10】図8のF−F線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
図1〜図7は本発明の第1の実施形態に係る魚釣用リールとしてのスピニングリールを示している。図1に示されるように、本実施形態に係るスピニングリールのリール本体1には、釣竿に装着されるリール脚2が一体形成されており、その前方には、回転可能に支持されたロータ3と、ロータ3の回転運動と同期して前後動可能に支持されたスプール4とが配設されている。
【0016】
ロータ3は、スプール4の周囲を回転する一対(図1には一方だけが図示されている)の腕部3aを備えており、各腕部3aの夫々の前端部には、ベール3bの基端部を取り付けたベール支持部材3cが釣糸巻取り位置と釣糸放出位置との間で回動自在に支持されている。なお、ベール3bの一方の基端部は、ベール支持部材3cに一体的に設けられた釣糸案内部(図示せず)に取り付けられている。
【0017】
リール本体1内には、ハンドル軸5が回転可能に支持されており、その突出端部には、ハンドル6が取り付けられている。また、ハンドル軸5には、巻き取り駆動機構が係合しており、この巻き取り駆動機構は、ハンドル軸5に一体回転可能に装着された駆動ギヤ7と、この駆動ギヤ7に噛合すると共にハンドル軸5と直交する方向に延出し且つ内部に軸方向に延在する空洞部が形成された回転駆動軸としてのピニオン8とを備えている。
【0018】
ピニオン8は、軸受9を介してリール本体1内に回転可能に支持されるとともに、スプール4側に向けて延出しており、その先端部において、ロータ3が取り付けられている。なお、軸受9は、後述する転がり式一方向クラッチ10との間に介挿される抜け止め部材37によって軸方向の抜け止めがなされる。
【0019】
また、ピニオン8には、その中間部分(軸受9よりもリールの前方側(スプール4側))に転がり式一方向クラッチ10が取り付けられており、リール本体1の外部に設けられた切換操作レバー11を回動操作することで一方向クラッチ10を作動させ、ハンドル6(ロータ3)の釣糸繰出し方向の逆回転を防止する公知の逆転防止機構(ストッパ)を構成するようになっている。
【0020】
ピニオン8の内部に形成された空洞部には、ハンドル軸5と直交する方向に延出し、先端側にスプール4を装着したスプール軸12が軸方向に移動可能に挿通されている。また、ピニオン8には、スプール4(スプール軸12)を前後往復動させるための公知のスプール往復動装置13が係合している。
【0021】
このような構成を有する魚釣用スピニングリールにおいて、ハンドル6により巻き取り操作を行うと、ロータ3が巻き取り駆動機構を介して回転駆動される共に、スプール4がスプール往復動装置13を介して前後往復動されるので、釣糸は、前記釣糸案内部を介してスプール4の巻回胴部4aに均等に巻回されるようになる。
【0022】
図2に示されるように、前記転がり式一方向クラッチ10は、ピニオン8に対して回り止め嵌合された内輪21と、内輪21の外側に配された保持器27と、保持器27の外側に配された外輪25とを有しており、保護カバー50によってその外周が保護されている。
【0023】
外輪25の内周面には、保持器27によって保持された複数の転動部材28がフリーに回転できるフリー回転領域と、複数の転動部材の回転を阻止する楔領域とが形成されており、各転動部材28は、保持器27に設けられたバネ部材によって楔領域に付勢されている。
【0024】
また、外輪25は、それに対するピニオン8の挿通によってほぼ閉塞される閉塞端部25cと反対側の開放端部25bとを有する略筒状体を形成しており、軸受9と転がり式一方向クラッチ10との間に介挿された前記抜け止め部材37によってリール本体1に対する回転が阻止されている。具体的には、図3に明確に示されるように、環状リングの形態を成す抜け止め部材37の周方向の一部には径方向外側に突出する一対の係合部37aが互いに周方向に180度の角度間隔を隔てて設けられており、これらの係合部37aが対応する位置に設けられた外輪25の切り欠き状の回り止め係止部25aに係止されている。そして、係合部37aに取着されるネジ30をリール本体1に螺合する(図3,5,6,7参照)ことにより、外輪25が係合部37aを介してリール本体1に対して回り止めされている。なお、本実施形態において、回り止め係止部25aは、外輪25の開放端部25bに形成されて抜け止め部材37の係合部37aに係合されている。すなわち、本実施形態において、外輪25は、その開放端部25bを軸受9に対向させた状態で配置されている。そのため、本実施形態では、リールの軸方向寸法を短くするべく、抜け止め部材37が開放端部25bを通じて筒状の外輪25内に嵌め込まれている(図2参照)。
【0025】
このように、本実施形態では、転がり式一方向クラッチ10の外輪25に形成した回り止め係止部25aを、ピニオン8を回転自在に支持する軸受9の抜け止めを行なう抜け止め部材37に形成した係合部37aに係合可能とし、この抜け止め部材37を介して、一方向クラッチ10の外輪25をリール本体1に回り止めするようにしている。なお、環状の抜け止め部材37は、その内周側の抜け止め部37bが軸受9の外輪9aと当接することにより(図3,5,6参照)、軸受9の軸方向の抜け止めを行なう。
【0026】
このような構成の一方向クラッチ10において、ピニオン8と共に内輪21が正回転(ロータ3が釣糸巻取り方向に回転)すると、保持器27の転動部材28が外輪25のフリー回転領域に位置され、そのため、内輪21の回転力が外輪25に伝達されず(外輪25によって阻止されず)、したがって、ピニオン8と共にロータ3が支障なく回転する。これに対して、ピニオン8と共に内輪21が逆回転(ロータ8が釣糸繰出し方向に回転)しようとすると、保持器27の転動部材28が外輪25の楔領域に位置するため、内輪21の回転力が外輪25に伝達され、これがストッパとなって、ピニオン8およびロータ3の回転(逆回転)が阻止される。
【0027】
また、このような一方向クラッチ10を伴う逆転防止機構の作動は前記切換操作レバー11によって切り換え制御できるようになっている。具体的には、図2および図3に示されるように、切換操作レバー11は、リール本体1内でスプール軸12と略平行に延びる切り換えカム33を有しており、この切り換えカム33の先端突部33aは保持器27の径方向に延びる延出部27aの係合孔52に係合して連結されている。したがって、この構成では、切換操作レバー11を回動操作することにより、切り換えカム33を介して保持器27を回動させれば、保持器27に保持される転動部材28をバネ部材の付勢力に抗して外輪25のフリー回転領域に強制的に保持させる逆転可能位置(ロータ3を逆回転させることができる位置)と、転動部材をバネ部材の付勢力によって外輪25の楔領域に位置させるようにする逆転防止位置(ロータ3の逆回転を防止する位置)との間で選択的に切り換えることができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の魚釣用リールは、回転駆動軸としてのピニオン8を回転自在に支持する軸受9の抜け止め部材37を兼用して、一方向クラッチ10の外輪25をリール本体1に回り止めする構成としたため、部品点数および組み立て工数を削減でき、製造コストを効率良く低減できる。
【0029】
また、本実施形態では、回り止め係止部25aが一方向クラッチ10の外輪25の開放端部25bに形成されて抜け止め部材37の係合部37aに係合されているため、すなわち、回り止め係止部25aを有する外輪25の開放端部25bがピニオン8を回転自在に支持する軸受9と対向する側に位置されているため、外輪25の開放端部25bが軸受9から離れて面する(外輪9の閉塞端部25cが軸受9と対向する)配置形態の場合と比べて、切換操作レバー11を含む切換操作機構の切換要素33,33aの軸方向延在長さを短くすることができ、したがって、リールの軸方向寸法を短くできる(リールの小型化を量ることができる)とともに、その分、軽量化も可能になる。更に、前記部品点数の削減効果と、前記切換要素33,33aの軸方向延在長さの短縮効果と、保持器27の位置が後方(軸受9の方向)になることから、リール全体の重心の位置をリール脚2の竿への取り付け側付け根の直下に近づけることができ、操作性が向上する。
【0030】
図8〜図10は本発明の第2の実施形態に係る魚釣用リールとしてのスピニングリールを示している。図8に示されるように、本実施形態に係るスピニングリールでは、一方向クラッチ10の外輪25の向きが第1の実施形態と逆になっている。すなわち、本実施形態の外輪25は、その閉塞端部25cが軸受9と対向するように配置されている。したがって、このような構成では、第1の実施形態と同様に抜け止め部材37に軸受9の抜け止め及び外輪25の回り止めとしての機能を兼ねさせるためには、外輪25の回り止め係止部25aおよび抜け止め部材37の係合部37aの構造を第1の実施形態と異ならせる必要がある。
【0031】
この目的のため、本実施形態において、抜け止め部材37は、外輪25へ向けて軸方向に突出する係合部37a’をその外周部に有し(図9参照)、一方、外輪25は、係合部37a’が係止できる切り欠き状の回り止め係止部25a’を閉塞端部25cの外周面に有している(図8,10参照)。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同一である。
【0032】
このように、外輪25の閉塞端部25cが軸受9と対向するように配置されている場合でも、抜け止め部材37に軸受9の抜け止め及び外輪25の回り止めとしての機能を兼ねさせることができ、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、外輪に形成する回り止め係止部や抜け止め部材に形成する係合部の位置や形状など、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは言うまでもない。例えば、前述した実施形態では、ピニオンの中間部分に転がり式一方向クラッチを配設した構成で説明したが、転がり式一方向クラッチをハンドル軸上に設けて構成しても良く、その位置は特定されない。また、前述した実施形態では、本発明がスピニングリールに適用されているが、両軸受型リールを含む他のリールに本発明を適用できることは言うまでもなく、リールのタイプも限定されない。
【符号の説明】
【0034】
1 リール本体
4 スプール
6 ハンドル
8 ピニオン(回転駆動軸)
9 軸受
10 転がり式一方向クラッチ
25 外輪
25a 回り止め係止部
25b 開放端部
25c 閉塞端部
37 抜け止め部材
37a 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルで回転操作される回転駆動軸とリール本体との間に、一方向の回転を許容し他方向の回転を阻止する転がり式一方向クラッチを設けて、前記回転駆動軸の逆転を防止するようにした魚釣用リールにおいて、
転がり式一方向クラッチの外輪に形成した回り止め係止部を、前記回転駆動軸を回転自在に支持する軸受の抜け止めを行なう抜け止め部材に形成した係合部に係合可能とし、この抜け止め部材を介して、前記一方向クラッチの外輪をリール本体に回り止めしたことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記転がり式一方向クラッチの外輪は、前記回転駆動軸の挿通によってほぼ閉塞される閉塞端部と反対側の開放端部とを有する略筒状体を形成し、
前記回り止め係止部は、前記一方向クラッチの外輪の開放端部に形成されて、前記抜け止め部材の係合部に係合されることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−252755(P2010−252755A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109471(P2009−109471)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】