説明

魚釣用リール

【課題】ハンドル軸に釣糸が絡み付くという絡み付き現象を好適に防止する。
【解決手段】ハンドル軸7に制動部材を介して摩擦結合された駆動歯車17と、駆動歯車17からの駆動力により回転駆動されるスプール6と、ハンドル軸7に螺合された制動力調節体20と、を備え、制動力調節体20の回動操作で制動部材を押圧し、駆動歯車17の摩擦結合力を変更することでスプール6の制動力を調節するようにした魚釣用リールであって、リール本体1からのハンドル軸7の取出部Cに、ハンドル軸7の径方向外側へ向けて突出し、ハンドル軸7へ向けて釣糸が移動するのを阻止する鍔部33が設けられている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来周知のように、リール本体の側板間にスプールを回転自在に支持した魚釣用リールが知られている(例えば、特許文献1参照)。この魚釣用リールでは、リール本体の一方の側板に回転自在に支持されたハンドル軸と、ハンドル軸に制動部材を介して摩擦結合された駆動歯車と、リール本体の側板間に支持され、駆動歯車からの駆動力により回転駆動されるスプールと、ハンドル軸に進退自在に螺合された制動力調節体と、を備えて構成されている。
【0003】
駆動歯車は、制動力調節体により制動部材を介して押圧されることで、摩擦結合力が調節されるようになっている。制動力調節体は、ハンドル軸に螺合される螺合部と、側板のハンドル側支持部の外周を覆う環状部と、指で回動操作される操作部と、を備えて構成されている。
【0004】
ところで、特許文献1の魚釣用リールでは、右側板の外側に向けて支持部が突設されており、この支持部の外周部に筒体が取付固定されている。一方、制動力調節体の基部側には、筒状の環状部が設けられている。この環状部は、筒体の径方向内側に間隙を有した状態で重合可能(オーバーラップ可能)に配置されている。
このような筒体と環状部とを配置することにより、側板の外面等に付着されている水分やゴミ等が内部に侵入するのを好適に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−210954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の魚釣用リールでは、筒体と環状部との間を通じて釣糸が内部に侵入するおそれがあった。筒体の内側には、板ばね等が配置されており、また、ハンドル軸には制動力調節体を螺合するためのねじが形成されているので、内部に釣糸が侵入すると、釣糸が汚れたり傷んだりするおそれがあり、これを改善したいという要望があった。
【0007】
また、このことは、リール本体から延出された端部にハンドルが固定されたハンドル軸を有する魚釣用スピニングリールにおいても同様に生じるおそれがあり、リール本体からのハンドル軸の取出部に釣糸が絡み付くおそれがあるため、これを改善したいという要望があった。
【0008】
本発明は、ハンドル軸に釣糸が絡み付くという絡み付き現象を好適に防止することができる魚釣用リールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決する本発明の魚釣用リールは、リール本体の一方の側板に回転自在に支持され、前記リール本体から延出された端部にハンドルが固定されたハンドル軸と、前記ハンドル軸に制動部材を介して摩擦結合された駆動歯車と、前記リール本体の側板間に支持され、前記駆動歯車からの駆動力により回転駆動されるスプールと、前記ハンドル軸に螺合された制動力調節体と、を備え、前記制動力調節体の回動操作で前記制動部材を押圧し、前記駆動歯車の摩擦結合力を変更することで前記スプールの制動力を調節するようにした魚釣用リールであって、前記リール本体からの前記ハンドル軸の取出部に、当該ハンドル軸の径方向外側へ向けて突出し、当該ハンドル軸へ向けて釣糸が移動するのを阻止する鍔部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
この魚釣用リールによれば、鍔部は、リール本体からのハンドル軸の取出部において、ハンドル軸の径方向外側へ向けて突出され、ハンドル軸へ向けて釣糸が移動するのを阻止するようになっているので、リール本体等に沿って取出部へ釣糸が巻き付いた場合に鍔部に釣糸が止まるようになり、ハンドル軸へ向けた釣糸の移動が規制される。
【0011】
また、本発明は、前記取出部において前記ハンドル軸に沿って前記リール本体側から前記ハンドル側へ延設された第1のカバー体と、前記取出部において前記ハンドル軸に沿って前記ハンドル側から前記リール本体側へ延設された第2のカバー体と、を備え、前記第1のカバー体と前記第2のカバー体とは、前記ハンドル軸の径方向に少なくとも一部がオーバーラップしており、前記鍔部は、オーバーラップする部位において、前記第1のカバー体と前記第2のカバー体とのうち、径方向内側に配置されるカバー体に設けられていることを特徴とする。
【0012】
この魚釣用リールによれば、取付部において、第1のカバー体と第2のカバー体とがハンドル軸の径方向に少なくとも一部がオーバーラップしており、鍔部は、オーバーラップする部位において、径方向内側に配置されるカバー体に設けられているので、リール本体側から取出部に巻き付いた釣糸も、ハンドル側から取出部に巻き付いた釣糸のいずれも、内側のカバー体に設けられた鍔部に止まり、これによってハンドル軸へ向けた釣糸の移動が確実に阻止されることとなる。
【0013】
また、本発明は、オーバーラップする部位において、径方向内側に配置されるカバー体は前記第1のカバー体であり、径方向外側に配置されるカバー体は前記第2のカバー体であり、前記鍔部の外径をD1、前記第2のカバー体の内径をD2、としたときに、これらの関係が、 D1 < D2 である、ことを特徴とする。
【0014】
この魚釣用リールによれば、オーバーラップする部位において、径方向内側に第1のカバー体が配置され、径方向外側に第2のカバー体が配置される構成において、第2のカバー体の径方向内側に隙間を空けて第1のカバー体の鍔部が配置されることとなる。
【0015】
また、本発明は、前記第1のカバー体と前記第2のカバー体とは、前記制動力調節体の回動操作でオーバーラップしない位置に退避可能であることを特徴とする。
【0016】
この魚釣用リールによれば、制動力調節体を回動操作することによって、第1のカバー体と第2のカバー体とをオーバーラップしない位置に退避させることができ、第1のカバー体と第2のカバー体とがオーバーラップしない状態に離すことができる。
【0017】
また、本発明は、前記制動力調節体は、前記リール本体側に向けて突出する操作ノブを有しており、前記ハンドル軸における前記ハンドルの固定部位を基準として、前記固定部位から前記第2のカバー体の前記リール本体側の端部までの前記ハンドル軸に沿う長さをLA、前記固定部位から前記操作ノブの前記リール本体側の端部までの前記ハンドル軸に沿う長さをLB、としたときに、これらの長さの関係が、 LA < LB である、ことを特徴とする。
【0018】
この魚釣用リールによれば、第2のカバー体の端部よりもリール本体側に操作ノブの端部が位置し、ハンドル軸に直交する方向から見たときに、第2のカバー体はハンドル軸方向に操作ノブで覆われるようにして配置されることとなる。
【0019】
また、本発明は、リール本体に回転自在に支持され、前記リール本体から延出された端部にハンドルが固定されたハンドル軸を有する魚釣用リールにおいて、前記リール本体からの前記ハンドル軸の取出部に、当該ハンドル軸の径方向外側へ向けて突出し、当該ハンドル軸へ向けて釣糸が移動するのを阻止する鍔部が設けられていることを特徴とする。
【0020】
この魚釣用リールによれば、鍔部は、リール本体からのハンドル軸の取出部において、ハンドル軸の径方向外側へ向けて突出され、ハンドル軸へ向けて釣糸が移動するのを阻止するようになっているので、リール本体等に沿って取出部へ釣糸が巻き付いた場合に鍔部に釣糸が止まるようになり、ハンドル軸へ向けた釣糸の移動が規制される。
【0021】
また、本発明は、前記ハンドル軸に、円筒状のハンドルスタンドが介設されており、前記鍔部は、前記取出部において前記ハンドルスタンドの縁部に対応するようにして前記リール本体側に設けられていることを特徴とする。
【0022】
この魚釣用リールによれば、鍔部は、取出部においてハンドルスタンドの縁部に対応するようにしてリール本体側に設けられているので、例えば、スピニングタイプの魚釣用リールにおいて、リール本体等に沿って取出部へ釣糸が巻き付いた場合に、鍔部に釣糸が止まるようになり、ハンドル軸へ向けた釣糸の移動が規制される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、リール本体等に沿って取出部へ釣糸が移動してきた場合に鍔部に釣糸が止まるようになり、ハンドル軸へ向けた釣糸の移動が規制されるので、ハンドル軸に直接、釣糸が絡み付くような絡み付き現象を好適に阻止することができる。したがって、絡み付きによる釣糸の汚れや傷みを好適に回避することができる。これにより、魚釣操作性の向上を図ることができる。
【0024】
また、ハンドル軸へ向けた釣糸の移動が規制されるので、制動力調節体を螺合しているねじ山部分に釣糸が入り込むことが防止され、ねじ山部分で釣糸が傷むのを好適に防止することができる。
【0025】
また、鍔部によりハンドル軸へ向けた釣糸の移動を規制することができるので、例えば、船縁等に釣竿を保持した際等に、鍔部に釣糸を積極的に引っ掛けて保持しておくことができ、鍔部を釣糸の引掛部として利用することもできる。したがって、魚釣操作性の向上を図ることができる。
【0026】
また、リール本体側からハンドル側へ延設された第1のカバー体と、ハンドル側からリール本体側へ延設された第2のカバー体と、を備え、オーバーラップする部位において、鍔部が、径方向内側に配置されるカバー体に設けられている構成では、リール本体側から取出部に巻き付いた釣糸も、ハンドル側から取出部に巻き付いた釣糸のいずれも、内側のカバー体に導かれて鍔部で移動が規制されることとなるので、ハンドル軸へ向けた釣糸の侵入を確実に阻止することができる。
【0027】
また、オーバーラップする部位において、径方向内側に第1のカバー体が配置され、径方向外側に第2のカバー体が配置され、鍔部の外径D1に対して第2のカバー体の内径D2が大きくなるように設定されている構成では、オーバーラップする部位において、ハンドル軸へ向けた釣糸の侵入を好適に阻止しながら、第1のカバー体に対する第2のカバー体の回動を好適に確保することができる。
また、リール本体側の第1のカバー体に鍔部が設けられているので、リール本体の側壁に沿って巻き付いてきた釣糸を、第1のカバー体の鍔部で直接的に受け止めることができ、ハンドル軸へ向けた釣糸の侵入を確実に阻止することができる。
【0028】
また、第1のカバー体と第2のカバー体とが、制動力調節体の回動操作でオーバーラップしない位置に退避可能である構成では、退避位置に移動させることによって、鍔部を露出させることができ、鍔部に止められた釣糸を容易に外すことができる。また、退避位置に移動させることによって、鍔部を露出させることができるので、鍔部の清掃等が行い易くなり、メンテナンス性が向上する。
【0029】
また、ハンドル軸に沿う長さ方向において、固定部位から第2のカバー体のリール本体側の端部までの長さLAに対して、固定部位から操作ノブのリール本体側の端部までの長さLBが大きくされた構成では、第2のカバー体の端部よりもリール本体側に操作ノブの端部が位置し、ハンドル軸に直交する方向から見たときに、第2のカバー体はハンドル軸方向に操作ノブで覆われるようにして配置されることとなるので、第2のカバー体に釣糸が巻き付き難くなる。つまり、リール本体側に釣糸が巻き付き易くなり、リール本体側に巻き付いた釣糸は、第1のカバー体の鍔部でハンドル軸へ向けた移動が直接的に規制される。したがって、ハンドル軸に釣糸が絡み付くことがない。
なお、操作ノブの端部を境にして、反リール本体側(反取出部側、ハンドル側)へ釣糸が導かれることによっても、ハンドル軸へ向けた釣糸の侵入が好適に阻止される。
【0030】
また、ハンドル軸に、円筒状のハンドルスタンドが介設され、鍔部は、取出部においてハンドルスタンドの縁部に対応するようにしてリール本体側に設けられている構成では、例えば、スピニングタイプの魚釣用リールにおいて、リール本体等に沿って取出部へ釣糸が巻き付いた場合に鍔部に釣糸が止まるようになり、ハンドル軸へ向けた釣糸の移動が規制されるので、絡み付きによる釣糸の汚れや傷みを好適に回避することができる。これにより、スピニングタイプの魚釣用リールにおいて、魚釣操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る魚釣用リールの全体構成を示す図である。
【図2】要部の拡大断面図である。
【図3】(a)は鍔部の周りの構成を示した拡大断面図、(b)は第1のカバー体の構成を示した拡大断面図である。
【図4】(a)は退避位置における第1のカバー体と第2のカバー体との位置関係を示す拡大断面図、(b)はさらに拡大した断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る魚釣用リールの要部の拡大断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る魚釣用リールの要部の拡大断面図である。
【図7】(a)は本発明の第4実施形態に係る魚釣用リールの側面図、(b)は図7(a)におけるB−B線断面図である。
【図8】(a)は要部の拡大断面図、(b)は鍔部の周りの構成を示した拡大断面図である。
【図9】(a)(b)は変形例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について図面を参照しながら説明する。各実施形態において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の説明において、「前後」「左右」を言うときは、図1に示した方向を基準とする。
【0033】
(第1実施形態)
本実施形態の魚釣用リールは、リール本体1と、左右フレーム2a、2bと、各フレーム2a、2bに対し、所定の空間をもって装着される左右側板3a、3bとを備えている。一方の右フレーム2bおよび一方の右側板3bには、ハンドル5を装着したハンドル軸7が回転可能に支持されている。左右側板3a、3bは、図示しないねじ等の固定部材で左右フレーム2a、2bに着脱可能に取付固定されている。
【0034】
左右フレーム2a、2b間には、スプール6が回転可能に支持されている。スプール6は、左フレーム2aの図示しない軸受および右フレーム2b側に設けた複数の軸受4a、4b、4c等(図2参照)で支持されているスプール軸6a(図2参照、以下同じ)に支持されている。
スプール6の前方(釣糸繰り出し側)の左右フレーム2a、2b間に形成された図示しない公知の収容部には、スプール駆動用モータMが収容保持されている。このスプール駆動用モータMの動力は、遊星歯車からなる減速機構8、歯車またはベルト等から構成される動力伝達部9を介してスプール軸6aに伝達されるようになっている。
【0035】
スプール軸6aの右フレーム2b側には、図2に示すように、太陽歯車10が回り止め固定され、この太陽歯車10には、遊星歯車12が噛合し、この遊星歯車12は、内歯歯車13に噛合している。遊星歯車12は、支持体11に回転可能に軸支されている。支持体11は、スプール6の側部に固定されたカバー部材14の基部内周に設けた軸受4bで支持されている。内歯歯車13は、スプール6の側部内側に一体的に形成されている。
カバー部材14の基部外周は、右フレーム2bの軸受4cに回転可能に支持されて、スプール6を左右フレーム2a、2b間に回転可能に支持している。
【0036】
支持体11の右側板3b側の端部には、回り止め係合部11aが形成されている。回り止め係合部11aには、ピニオン15のクラッチ係合部15aが係合している。ピニオン15は、右フレーム2bに設けた軸受4dと右側板3bに設けた軸受4eに回転自在、かつ軸方向移動可能に支持されている。クラッチ係合部15aは、ピニオン15のスプール6側の端部に形成されている。
クラッチ係合部15aは、釣糸巻取状態(クラッチON状態、図2参照)から、切換部材16(図1参照、以下同じ)を下方へ移動操作することで、係合状態が解除されるようになっており、これによってスプール6が釣糸放出状態(クラッチOFFのスプールフリー可能状態)に切換わるようになっている。
【0037】
切換部材16は、スプール6の後方において、左右フレーム2a、2b間に上下方向に変位可能に設けられている。切換部材16を下方へ移動操作すると、公知の作動部材を介して支持体11の回り止め係合部11aからクラッチ係合部15aが分離され、釣糸放出状態に切換わる。
また、このスプール6の釣糸放出状態からハンドル5を巻取方向に回転操作すると、図示しない公知の復帰機構を介してピニオン15がスプール6側に移動し、支持体11の回り止め係合部11aに再係合する。これによって、スプール6が釣糸巻取状態に復帰するようになっている。
【0038】
ハンドル軸7は、右フレーム2bに設けた軸受4fと右側板3bに設けた軸受22で回転自在に支持されており、リール本体1からのハンドル軸7の取出部Cには、図3(a)にも示すように、第1のカバー体30が設けられている。
第1のカバー体30は、図3(b)に示すように、段付きの円筒状を呈しており、リール本体1のハンドル軸支持部25の右端外周部には、周方向に段差部25aが形成されており、また、この段差部25aに連続して右側面には、右側方へ突出する円環突部25dが形成されている。
【0039】
第1のカバー体30は、取付部31と、これに連続して形成された断面三角形状の支持部32と、この支持部32の先端に一体的に形成された鍔部33とを備えて構成されている。第1のカバー体30は、リール本体1の右側板3bよりも高強度、高剛性の金属材料、例えば、チタン、ステンレス、高強度アルミ合金(#2000系、#5000系、#6000系、#7000系)を用いることが好ましい。
【0040】
取付部31は、右側板3bのハンドル軸支持部25の段差部25aに外嵌されるようになっており、段差部25aを形成している右側面25bに当接される左側面31bと、段差部25aの周面25cに当接される内周面31cと、を備えている。
支持部32は、円環突部25dに当接される支持側面32bと、鍔部33に向けて傾斜状に形成された傾斜周面32aと、内周面32cと、傾斜周面32aと鍔部33との間に形成される釣糸保持面33aと、を備えている。
【0041】
鍔部33は、支持部32の先端から周方向外方へ突出形成されており、鍔部33の左側面と釣糸保持面33aと傾斜周面32aとで、周方向に開口する凹状空間部を形成している。この凹状空間部は、取出部Cに巻き付いた釣糸を収容可能である。つまり、凹状空間部は、取出部Cに巻き付いた釣糸を収容保持するための空間部として機能するようになっている。
なお、取付部31の外周面31aの外径は、第2のカバー体20cの外周面の外径と略同じ大きさとされている。
【0042】
このような第1のカバー体30で取出部Cが覆われるハンドル軸7には、図2に示すように、回転可能状態で、制動部材としてのドラグ機構Dによって駆動歯車17が摩擦結合されている。駆動歯車17はピニオン15に噛合している。したがって、ハンドル5を回転操作すると、その回転力がハンドル軸7、ドラグ機構D、駆動歯車17、ピニオン15、支持体11、遊星歯車12、内歯歯車13等を介してスプール6に伝達され、釣糸がスプール6に巻回されるようになっている。
【0043】
ハンドル軸7のモータ駆動軸側には、ハンドル5による回転力がスプール6に伝達されるように、一方向クラッチ19が設けられている。一方向クラッチ19は、転がり式であり、楔作用により、ハンドル軸7の巻取方向の正回転を許容し、逆回転を防止する逆転防止装置を構成している。
【0044】
ハンドル軸7の右端側には、ねじ部7aが形成されており、このねじ部7aに制動力調節体(ドラグ力調節部材)20が軸方向に進退可能に螺合されて取り付けられている。
制動力調節体20は、駆動歯車17の摩擦結合力(ドラグ力)を調節する部材であり、操作ノブ20aと、操作ノブ20aに一体的に形成され円筒状の第2のカバー体20cと、押圧体20dと、を含んで構成されている。操作ノブ20aは、ハンドル軸7から放射状に延びる複数のノブを備えており、端部がリール本体1側に向けて湾曲形成されている。
【0045】
第2のカバー体20cは、操作ノブ20aの基端部から左側方へ向けて延設されており、取出部Cにおいてハンドル軸7に沿ってハンドル5側からリール本体1(右側板3b)側へ突出形成されている。第2のカバー体20cは、その内側に配置される押圧体20d(図3(a)参照)や板ばね21(図3(a)参照)の一部を覆っている。
【0046】
このような第2のカバー体20cは、一般的なドラグ調整範囲において、図3(a)に示すように、ハンドル軸7の径方向において第1のカバー体30の鍔部33に、少なくとも端部20c1がオーバーラップするように配置されている。そして、オーバーラップする部位において、第2のカバー体20cの径方向内側に第1のカバー体30の鍔部33が配置されるようになっている。
【0047】
つまり、ハンドル軸7におけるハンドル5の固定部位を基準として(ハンドル5の側面5aを基準として、図3(a)参照、以下同じ)、固定部位から第1のカバー体30の鍔部33の先端部までのハンドル軸7に沿う長さをLCとし、固定部位から操作ノブ20aの第2のカバー体20cの端部20c1までのハンドル軸7に沿う長さをLAとしたときに、これらの関係が次式で表される関係を有するように構成されている。
LC < LA
すなわち、固定部位から第1のカバー体30の鍔部33の端部までの長さLCよりも、固定部位から第2のカバー体20cの端部20c1までの長さLAが長くなるようにされており、これによって、オーバーラップする部位において、第2のカバー体20cの径方向内側に第1のカバー体30の鍔部33が位置するようになっている。
【0048】
加えて、オーバーラップする部位において、鍔部33の外径をD1、第2のカバー体20cの内径をD2、としたときに、これらの関係が次式で表される関係を有するように構成されている。
D1 < D2
したがって、オーバーラップする部位において、第2のカバー体20cの径方向内側に第1のカバー体30の鍔部33が所定の隙間を空けて位置するようになっている。
なお、外径D1と内径D2との寸法差は、できるだけ小さく設定されることが好ましく、例えば、使用される釣糸の種類のうち最小外径と同等か、それよりも小さく設定することができる。
【0049】
ここで、一般的なドラグ調整範囲とは、魚釣用リールに設定された最大ドラグ力が得られる力で制動力調節体20を締め付けた状態から、最大ドラグ力の10%のドラグ力が得られる力で締め付けた状態の範囲をいう。
なお、最大ドラグ力が得られる力で制動力調節体20を締め付けた状態で、第1のカバー体30の傾斜周面32aと第2のカバー体20cの端部20c1との間には、取出部Cに巻き付いた釣糸が釣糸保持面33aに向けて挿通可能な隙間が形成されるようになっている。
【0050】
また、制動力調節体20を緩める回動操作を行うことにより、第1のカバー体30と第2のカバー体20cとは、オーバーラップしない位置に退避可能に構成されている。
つまり、図4(a)(b)に示すように、制動力調節体20を緩める回動操作を行うと(一般的なドラグ調整範囲から外れる範囲に制動力調節体20を緩めると)、固定部位から第2のカバー体20cの端部20c1までの長さLAよりも、固定部位から第1のカバー体30の鍔部33の先端部までの長さLCが大きくなる(LA < LC)ように設定されている。これにより、第2のカバー体20cの端部20c1よりも左方向に鍔部33を移動させることができ、鍔部33の左側方に形成される釣糸保持面33aを、第2のカバー体20cで覆われない位置(退避位置)に移動させることができ、取出部Cに釣糸保持面33aを露出させることができる。
【0051】
さらに、図3(a)に示すように、前記固定部位を基準として、固定部位から第2のカバー体20cの端部20c1(リール本体1側の端部)までのハンドル軸7に沿う長さをLA、固定部位から操作ノブ20aのリール本体1側の端部20bまでのハンドル軸7に沿う長さをLBとしたときに、これらの関係が次式で表される関係を有するように構成されている。
LA < LB
つまり、第2のカバー体20cのリール本体1側の端部20c1よりもリール本体1側に、操作ノブ20aのリール本体1側の端部20bが位置するようになっている。したがって、ハンドル軸7に直交する方向から見たときに、第2のカバー体20cはハンドル軸7方向に操作ノブ20aで覆われるようにして配置されることとなる。このことは、操作ノブ20aの端部20bを境として、第2のカバー体20cの端部20c1よりもリール本体1側寄りとなる位置で、操作ノブ20aの左右に巻き付いた釣糸が振り分けられるようになっている。
【0052】
次に、本実施形態の魚釣用リールによる作用を説明する。
図3(a)(b)に示すように、第1のカバー体30と第2のカバー体20cとがオーバーラップして配置されている状態において、例えば、リール本体1に沿うようにして図示しない釣糸が巻き付いてくると、その釣糸は、リール本体1のハンドル軸支持部25から外径の小さくされた取出部Cに移動してくる。
【0053】
取出部Cには、ハンドル軸支持部25に連続して第1のカバー体30が設けられているので、取出部Cに移動してきた釣糸は、ハンドル軸支持部25から第1のカバー体30上に移動し、第1のカバー体30の傾斜周面32a上を釣糸保持面33aに向けて移動する。釣糸保持面33aに移動した釣糸は、鍔部33の左側面に当接して釣糸保持面33a内に受け止められ(移動が規制され)、鍔部33を乗り越えることなく釣糸保持面33aに保持される。
【0054】
これにより、第1のカバー体30の内側に釣糸が入り込むことが阻止され、ハンドル軸7に釣糸が絡み付くことが阻止される。
なお、釣糸保持面33aに釣糸が保持された状態で、鍔部33と第2のカバー体20cの端部20c1の内周部とが比較的小さい隙間をもって対峙しているので、仮に、釣糸保持面33aに収容された釣糸が緩んで第2のカバー体20c側に向けて膨らんでも、鍔部33と第2のカバー体20cの端部20c1の内周部との間を通じて第1のカバー体30の内側に移動することはない。
【0055】
また、例えば、ハンドル5側から図示しない釣糸が巻き付いてくると、その釣糸は、操作ノブ20aの端部20bを境にして、リール本体1側に移動するか、反リール本体1側に移動するかが振り分けられ、反リール本体1側に移動した場合には、ハンドル5等に掛かるか外れる等して、釣糸が傷むこともない。
一方、操作ノブ20aの端部20bを境にしてリール本体1側に釣糸が巻き付いた場合、釣糸は、取出部Cに巻き付いてくる。
【0056】
ここで、前記した LA < LB の関係により、第2のカバー体20cのリール本体1側の端部20c1は、操作ノブ20aのリール本体1側の端部20bよりも反リール本体1側に位置しているので、取出部Cに移動してきた釣糸は、第2のカバー体20cよりも第1のカバー体30側に導かれるようになる。これにより、前記と同様にして、釣糸保持面33a内に釣糸が受け止められ(移動が規制され)、鍔部33を乗り越えることなく釣糸保持面33aに釣糸が保持されることとなる。
なお、取出部Cに移動してきた釣糸が、仮に、第2のカバー体20c側に絡み付いた場合にも、第2のカバー体20c側から第1のカバー体30側に釣糸が導かれるようにして移動し、前記と同様にして、釣糸保持面33a内に釣糸が受け止められる(移動が規制される)。
【0057】
以上説明した本実施形態の魚釣用リールによれば、鍔部33は、リール本体1からのハンドル軸7の取出部Cにおいて、ハンドル軸7の径方向外側へ向けて突出され、ハンドル軸7へ向けて釣糸が移動するのを阻止するようになっているので、リール本体1等に沿って取出部Cへ釣糸が移動してきた場合に鍔部33に釣糸が止まるようになり、ハンドル軸7に直接、釣糸が絡み付くような絡み付き現象を好適に阻止することができる。したがって、絡み付きによる釣糸の汚れや傷みを好適に回避することができる。これにより、魚釣操作性の向上を図ることができる。
【0058】
また、ハンドル軸7へ向けた釣糸の移動が規制されるので、制動力調節体20を螺合しているねじ部7a部分に釣糸が入り込むことが防止され、ねじ部7aに接触したり巻き付いたりすることによって、釣糸が傷むのを好適に阻止することができる。
【0059】
また、鍔部33によりハンドル軸7へ向けた釣糸の移動を規制することができるので、例えば、船縁等に釣竿を保持した際等に、鍔部33に釣糸を積極的に引っ掛けて保持しておくこともでき、鍔部33を釣糸の引掛部として利用することもできる。したがって、魚釣操作性の向上を図ることができる。
【0060】
また、第1のカバー体30と第2のカバー体20cとがオーバーラップする部位において、鍔部33が、径方向内側に配置される第1のカバー体30に設けられているので、リール本体1側から取出部Cに巻き付いた釣糸も、ハンドル5側から取出部Cに巻き付いた釣糸も、内側の第1のカバー体30に導かれて鍔部33で移動が規制される。したがって、ハンドル軸7へ向けた釣糸の侵入を確実に阻止することができる。
【0061】
また、鍔部33の外径D1に対して第2のカバー体20cの内径D2が大きくなるように設定されているので、オーバーラップする部位において、ハンドル軸7へ向けた釣糸の侵入を好適に阻止しながら、第1のカバー体30に対する第2のカバー体20cの回動を好適に確保することができる。
また、リール本体1側の第1のカバー体30に鍔部33が設けられているので、リール本体1の側壁に沿って巻き付いてきた釣糸を、第1のカバー体30の鍔部33で直接的に受け止めることができ、ハンドル軸7へ向けた釣糸の侵入を確実に阻止することができる。
【0062】
また、第1のカバー体30と第2のカバー体20cとが、制動力調節体20の回動操作でオーバーラップしない位置に退避可能であるので、退避位置に移動させることによって、鍔部33を露出させることができ、鍔部33に止められた釣糸を容易に外すことができる。また、退避位置に移動させることによって、鍔部33を露出させることができるので、鍔部33の清掃等が行い易くなり、メンテナンス性が向上する。
【0063】
また、ハンドル軸7に沿う長さ方向において、固定部位から第2のカバー体20cのリール本体1側の端部20c1までの長さLAに対して、固定部位から操作ノブ20aのリール本体1側の端部20bまでの長さLBが大きくされ、第2のカバー体20cの端部20c1よりもリール本体1側に操作ノブ20aの端部20bが位置しているので、第2のカバー体20cに対して巻き付いてくる釣糸に操作ノブ20aの端部20bが接触し易くなり、第2のカバー体20cに釣糸が巻き付き難くなる。つまり、リール本体1側に釣糸が巻き付き易くなり、リール本体1側に巻き付いた釣糸は、第1のカバー体30の鍔部33でハンドル軸7へ向けた移動が直接的に規制される。したがって、ハンドル軸7に釣糸が絡み付くことがない。
なお、操作ノブ20aの端部20bを境にして、反リール本体1側(反取出部C側、ハンドル5側)へ釣糸が導かれることによっても、ハンドル軸7へ向けた釣糸の侵入が好適に阻止される。
【0064】
また、第1のカバー体30は、支持部32を有しており、支持部32には、ハンドル軸支持部25の円環突部25dに当接する支持側面32bを有しているので、この支持側面32bで第1のカバー体30を支持することができる。これにより、第1のカバー体30の取付部31への応力集中を回避することができ、第1のカバー体30の変形を好適に防止することができる。これにより、第1のカバー体30の取付剛性を高めることができる。
【0065】
また、第1のカバー体30は、右側板3bのハンドル軸支持部25に外嵌されて取り付けられており、回動不能に設けられているので、ハンドル5が回動操作されることによる影響を受けることがなく、第1のカバー体30の全周に絡み付くような現象を生じることがない。したがって、鍔部33の側方に保持された釣糸を簡単に外すことができ、取扱性に優れる。
【0066】
(第2実施形態)
図5を参照して第2実施形態の魚釣用リールについて説明する。本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、取出部Cにおいて第1のカバー体30Aが第2のカバー体20cの径方向外側でオーバーラップするように構成されている点である。
【0067】
第1のカバー体30Aは、円筒状を呈しており、ハンドル軸支持部25の右端外周部に設けられた段差部25a1に外嵌されている。第1のカバー体30Aの右端部には、周方向外方へ突出する鍔部33Aが形成されている。第1のカバー体30Aは、右側板3bよりも高強度、高剛性の金属材料、例えば、チタン、ステンレス、高強度アルミ合金(#2000系、#5000系、#6000系、#7000系)を用いることが好ましい。
【0068】
第2のカバー体20cは、一般的なドラグ調整範囲において、第1のカバー体30の右端部の径方向内側に、少なくとも端部20c1がオーバーラップするように配置可能である(不図示)。
【0069】
このような魚釣用リールにおいて、例えば、リール本体1に沿うようにして図示しない釣糸が巻き付いてくると、その釣糸は、リール本体1のハンドル軸支持部25から第1のカバー体30A上に移動し、鍔部33Aの左側面に当接して受け止められる(移動が規制される)。そして、釣糸は鍔部33Aの左側方に保持される。これにより、第1のカバー体30Aの内側に釣糸が入り込むことが阻止され、ハンドル軸7に釣糸が絡み付くことが阻止される。
【0070】
なお、第2のカバー体20cは、第1のカバー体30Aの右端部の径方向内側において、少なくとも端部20c1がオーバーラップするように配置されており、第1のカバー体30Aと第2のカバー体20cとは、比較的小さい隙間をもって対峙しているので、仮に、鍔部33Aの左側方に保持された釣糸が緩んで第2のカバー体20c上にこれが移動しても、釣糸は鍔部33Aの右側面に当接して第2のカバー体20c上に保持され、第1のカバー体30Aの内側に入り込むことがない。
【0071】
本実施形態の魚釣用リールによれば、鍔部33Aに釣糸が止まるようになり、ハンドル軸7に直接、釣糸が絡み付く絡み付き現象を好適に阻止することができる。したがって、絡み付きによる釣糸の汚れや傷みを好適に回避することができる。これにより、魚釣操作性の向上を図ることができる。
【0072】
(第3実施形態)
図6を参照して第3実施形態の魚釣用リールについて説明する。本実施形態は、取出部Cにおいて第1のカバー体30Bが第2のカバー体20cの径方向外側でオーバーラップする点は前記第2実施形態と同様であるが、第2のカバー体20cに、鍔部33Bが形成されている点が異なる。
【0073】
第1のカバー体30Bは、軸方向に凹凸のない円筒状を呈しており、ハンドル軸支持部25の右端外周部25a2に外嵌されている。
【0074】
第2のカバー体20cは、一般的なドラグ調整範囲において、第1のカバー体30の右端部の径方向内側に、少なくとも端部20c1がオーバーラップするように配置されている。そして、端部20c1には、周方向外方へ突出する鍔部33Bが形成されている。第2のカバー体20cは、右側板3bよりも高強度、高剛性の金属材料、例えば、チタン、ステンレス、高強度アルミ合金(#2000系、#5000系、#6000系、#7000系)を用いることが好ましい。
【0075】
このような魚釣用リールにおいて、例えば、リール本体1に沿うようにして図示しない釣糸が巻き付いてくると、その釣糸は、リール本体1のハンドル軸支持部25から第1のカバー体30B上に移動し、第1のカバー体30B上から第2のカバー体20c上に移動する。そして、第2のカバー体20c上において、鍔部33Bの右側面に当接して受け止められ(移動が規制され)、鍔部33Bの右側方に保持される。これにより、第1のカバー体30Bの内側(第2のカバー体20cの内側)に釣糸が入り込むことが阻止され、ハンドル軸7に釣糸が絡み付くことが阻止される。
【0076】
なお、第2のカバー体20cの鍔部33Bは、第1のカバー体30Bの右端部の径方向内側において、オーバーラップするように配置されており、第1のカバー体30Bと鍔部33Bとは、比較的小さい隙間をもって対峙しているので、仮に、鍔部33Bの右側方に保持された釣糸が緩んで膨らんでも、釣糸は鍔部33Bの右側面に当接して依然として第2のカバー体20c上に保持されることとなり、第1のカバー体30B(第2のカバー体20c)の内側に入り込むことがない。
【0077】
本実施形態の魚釣用リールによれば、鍔部33Bに釣糸が止まるようになり、ハンドル軸7に直接、釣糸が絡み付くような絡み付き現象を好適に阻止することができる。したがって、絡み付きによる釣糸の汚れや傷みを好適に回避することができる。これにより、魚釣操作性の向上を図ることができる。
【0078】
(第4実施形態)
本実施形態が前記第1〜第3実施形態と異なるところは、魚釣用リールとしての魚釣用スピニングリールにおいて、ハンドル軸の取出部に鍔部を設けた点である。なお、以下の説明において、「前後」「左右」「上下」を言うときは、図7に示した方向を基準とする。
図7(a)に示すように、本実施形態の魚釣用スピニングリールのリール本体40には、図示しない釣竿に装着されるリール脚40Aが一体形成されており、その前方には回転可能に支持されたロータ41と、ロータ41の回転運動と同期して前後動可能に支持され、釣糸が巻回保持されるスプール42が配設されている。
【0079】
また、図7(b)に示すように、リール本体40内には、ロータ41を回転駆動するとともに、スプール42を前後往復動させるための(スプール42に釣糸を巻き取るべく構成された)公知の巻取駆動機構43が配設されている。この巻取駆動機構43には、スプール42の支軸に対して直交する方向に延出し、一対の軸受44,44を介して回転可能に支持された駆動軸として機能するハンドル軸45が連結されており、そのハンドル軸45の左端側には、巻取駆動機構43の一部を構成する駆動歯車(フェースギヤ)46が装着されている。
なお、駆動歯車46は、ハンドル軸45ととともに一体的に形成されていてもよく、また、別体として形成されてハンドル軸45に対して一体回転可能に装着されていてもよい。
【0080】
ハンドル軸45の両側には、図8(a)に示すように、ハンドル取り付け構造によってハンドル50の後記するハンドルスタンド51が着脱可能に装着(嵌合)されるようになっており、ハンドル50が装着されない側のハンドル軸45の端部には、リール本体40に対応して形成される取付開口47a(または47b)にキャップ(閉塞部材)48が被着されて閉塞される。すなわち、ハンドル取り付け構造によって、リール本体40の左右いずれにもハンドル50が装着可能となっている(ハンドル軸45に対するハンドルスタンド51の着脱によってハンドル50をリール本体40の左右で付け替え可能となっている)。
【0081】
ハンドル50に備わるハンドルスタンド51は、円筒状(テーパ状)に構成されており、その内孔の内周面にはその開口端部から順次に大径雌ねじ部51aと小径雌ねじ部51bとが形成されている。一方、ハンドル軸45には、小径雌ねじ部51bと螺合可能な小径雄ねじ部45bが右端外周面に形成されるとともに、大径雌ねじ部51aと螺合可能な大径雄ねじ部45aが左端外周面に形成されている。
【0082】
また、リール本体40の左右両側にはそれぞれ、キャップ48を着脱自在に取り付けるための取付フランジ40a,40bが設けられており、各取付フランジ40a,40bの外周面には雄ねじ40a1,40b1が形成されている。また、これらの取付フランジ1a,1bには、ハンドル50を取り付けるための前記した取付開口47a,47bが形成されている。
取付フランジ40a,40bの先端には、シール部材49a,49bが着脱自在に取り付けられている。
また、キャップ48は、開口端付近の内周面に、取付フランジ40a,40bの雄ねじ40a1,40b1に螺合可能な雌ねじ48aが形成されている。
【0083】
取付フランジ40a,40bの基端部には、鍔部60,60がそれぞれ設けられている。ここで、鍔部60は、取付フランジ40a,40bの両側で同じものであるので、一方の取付フランジ40b側に設けられる鍔部60について説明する。
取付フランジ40bには、図8(b)に示すように、側面40cと外周面40dとからなる段差部40eが形成されている。
鍔部60は、段差部40eに外嵌される円環状の基部61に一体的に設けられており、径方向外側へ突出形成されている。基部61は、段差部40eの側面40cに当接する左側面61cと、段差部40eの外周面40dに当接する内周面61dを有している。
【0084】
鍔部60の左側には、取付フランジ40bに形成された傾斜面40b2との間に釣糸保持面61aが形成されている。また、鍔部60および基部61の右側面61bは、ハンドル軸45に垂直な面とされており、右側方に配置されたハンドルスタンド51の端部51cに対峙している。つまり、鍔部60は、取出部Cにおいてハンドルスタンド51の端部51c(縁部)に対応するようにしてリール本体40側に設けられている。なお、鍔部60は、ハンドルスタンド51の端部51cの外周面よりも径方向外側へ突出している。
【0085】
このような魚釣用スピニングリールにおいて、例えば、リール本体40に沿うようにして図示しない釣糸が巻き付いてくると、その釣糸は、リール本体40の取付フランジ40bの傾斜面40b2に沿って鍔部60の左側方の釣糸保持面61a上に移動し、鍔部60の左側面に当接して受け止められる(移動が規制される)。そして、釣糸は鍔部60の左側方において釣糸保持面61a上に保持される。これにより、鍔部60を越えてハンドルスタンド51の内側(内方)に釣糸が入り込むことが阻止され、取付フランジ40bの外周面の雄ねじ40b1や、さらにその内側のハンドル軸45に釣糸が絡み付くことが阻止される。
【0086】
この魚釣用スピニングリールによれば、鍔部60によりハンドル軸45へ向けた釣糸の移動が規制され、取付フランジ40bの外周面の雄ねじ40b1や、さらにその内側のハンドル軸45に釣糸が絡み付くような絡み付き現象を好適に阻止することができる。したがって、絡み付きによる釣糸の汚れや傷みを好適に回避することができる。これにより、魚釣操作性の向上を図ることができる。
【0087】
また、ハンドル軸45に、円筒状のハンドルスタンド51が介設され、鍔部60は、取出部Cにおいてハンドルスタンド51の端部51cに対応するようにしてリール本体40側に設けられているので、リール本体40等に沿って取出部Cへ釣糸が巻き付いてきた場合に鍔部60に釣糸が止まるようになり、ハンドルスタンド51の端部51c(縁部)との間に釣糸が侵入するのを規制することができるので、絡み付きによる釣糸の汚れや傷みを好適に回避することができる。これにより、魚釣操作性の向上を図ることができる。
【0088】
図9(a)(b)に本実施形態の変形例を示す。
図9(a)に示した例では、ハンドルスタンド51の端部51cの径方向内側(端部51cの内方)に、鍔部60Aがオーバーラップして配置された構成を有している。
【0089】
カバー体62は、取付部63と、これに連続して形成された支持部64と、この支持部64の先端に一体的に形成された鍔部60Aとを備えて構成されている。カバー体62は、リール本体40よりも高強度、高剛性の金属材料、例えば、チタン、ステンレス、高強度アルミ合金(#2000系、#5000系、#6000系、#7000系)を用いることが好ましい。
【0090】
取付部63は、取付フランジ40bの段差部40eに外嵌されるようになっており、段差部40eの側面40gに当接される左側面63bと、段差部40eの外周面40hに当接される内周面63cと、外周面63aと、を備えている。
支持部64は、段差部40eの外周面40jに当接される支持側面64dと、鍔部60Aに向けて傾斜状に形成された傾斜周面64aと、傾斜周面64aと鍔部60Aとの間に形成される釣糸保持面65aと、を備えている。
【0091】
鍔部60Aは、支持部64の先端から周方向外方へ一体的に突出形成されており、ハンドルスタンド51の端部51cの径方向内側に隙間を空けて配置されている。鍔部60Aは、鍔部60Aの左側面と釣糸保持面65aと傾斜周面64aとで、周方向に開口する凹状空間部を形成している。この凹状空間部は、取出部Cに巻き付いた釣糸を収容可能である。
【0092】
このような魚釣用スピニングリールにおいて、例えば、リール本体40に沿うようにして図示しない釣糸が巻き付いてくると、その釣糸は、リール本体40の取付フランジ40bの傾斜面40b2に沿ってカバー体62の外周面63aに移動し、その後、外周面63aから傾斜周面64aを移動してこれに連続する釣糸保持面65aに移動する。そうすると、釣糸は鍔部60Aの左側面に当接して受け止められ(移動が規制され)、釣糸保持面65a上に収容されるようにして配置される。
これにより、鍔部60Aを越えてハンドルスタンド51の内側(内方)に釣糸が入り込むことが阻止され、取付フランジ40bの外周面の雄ねじ40b1や、さらにその内側のハンドル軸45に釣糸が絡み付くことが阻止される。
【0093】
このような魚釣用スピニングリールによれば、鍔部60Aによりハンドル軸45へ向けた釣糸の移動が規制され、取付フランジ40bの外周面の雄ねじ40b1や、さらにその内側のハンドル軸45に釣糸が絡み付く絡み付き現象を好適に阻止することができる。したがって、絡み付きによる釣糸の汚れや傷みを好適に回避することができる。これにより、魚釣操作性の向上を図ることができる。
【0094】
なお、鍔部60Aは、ハンドルスタンド51の端部51cの径方向内側(端部51cの内方)に位置しているので、ハンドルスタンド51の外周面をリール本体40へ向けて巻き付いてきた釣糸は、鍔部60Aの左側方の釣糸保持面65a上に好適に導かれ、鍔部60Aに止まるようにして保持される。したがって、この場合にも、取付フランジ40bの外周面の雄ねじ40b1や、さらにその内側のハンドル軸45に釣糸が絡み付く絡み付き現象を好適に阻止することができる。したがって、絡み付きによる釣糸の汚れや傷みを好適に回避することができる。これにより、魚釣操作性の向上を図ることができる。
【0095】
図9(b)に示した例では、取付フランジ40bに一体的に鍔部60Bが形成されており、鍔部60Bの左側方に釣糸保持面66aが形成されている。
【0096】
このような魚釣用スピニングリールにおいて、例えば、リール本体40に沿うようにして図示しない釣糸が巻き付いてくると、その釣糸は、リール本体40の取付フランジ40bの傾斜面40b2に沿って釣糸保持面66aに移動し、鍔部60Bの左側面に当接して受け止められる(移動が規制される)。これにより、釣糸は、釣糸保持面66a上に収容されるようにして配置される。
これにより、鍔部60Bを越えてハンドルスタンド51の内側(内方)に釣糸が入り込むことが阻止され、取付フランジ40bの外周面の雄ねじ40b1や、さらにその内側のハンドル軸45に釣糸が絡み付くことが阻止される。したがって、絡み付きによる釣糸の汚れや傷みを好適に回避することができる。これにより、魚釣操作性の向上を図ることができる。
【0097】
前記各実施形態で説明した鍔部33(30等)の形状は、その側面に釣糸を保持することができるものであれば、四角形状のものに限られることはなく、鉤形形状等、種々の形状を採用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 リール本体
1a 取付フランジ
3a 左側板
3b 右側板
5 ハンドル
6 スプール
7 ハンドル軸
20 制動力調節体
7a ねじ部
8 減速機構
9 動力伝達部
10 太陽歯車
20a 操作ノブ
20b 端部
20c 第2のカバー体
20c1 端部
30 第1のカバー体
33 鍔部
33A 鍔部
33B 鍔部
D ドラグ機構(制動部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体の一方の側板に回転自在に支持され、前記リール本体から延出された端部にハンドルが固定されたハンドル軸と、前記ハンドル軸に制動部材を介して摩擦結合された駆動歯車と、前記リール本体の側板間に支持され、前記駆動歯車からの駆動力により回転駆動されるスプールと、前記ハンドル軸に螺合された制動力調節体と、を備え、前記制動力調節体の回動操作で前記制動部材を押圧し、前記駆動歯車の摩擦結合力を変更することで前記スプールの制動力を調節するようにした魚釣用リールであって、
前記リール本体からの前記ハンドル軸の取出部に、当該ハンドル軸の径方向外側へ向けて突出し、当該ハンドル軸へ向けて釣糸が移動するのを阻止する鍔部が設けられていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記取出部において前記ハンドル軸に沿って前記リール本体側から前記ハンドル側へ延設された第1のカバー体と、前記取出部において前記ハンドル軸に沿って前記ハンドル側から前記リール本体側へ延設された第2のカバー体と、を備え、
前記第1のカバー体と前記第2のカバー体とは、前記ハンドル軸の径方向に少なくとも一部がオーバーラップしており、
前記鍔部は、オーバーラップする部位において、前記第1のカバー体と前記第2のカバー体とのうち、径方向内側に配置されるカバー体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
オーバーラップする部位において、径方向内側に配置されるカバー体は前記第1のカバー体であり、径方向外側に配置されるカバー体は前記第2のカバー体であり、
前記鍔部の外径をD1、前記第2のカバー体の内径をD2、としたときに、
これらの関係が、
D1 < D2 である、
ことを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記第1のカバー体と前記第2のカバー体とは、前記制動力調節体の回動操作でオーバーラップしない位置に退避可能であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記制動力調節体は、前記リール本体側に向けて突出する操作ノブを有しており、
前記ハンドル軸における前記ハンドルの固定部位を基準として、
前記固定部位から前記第2のカバー体の前記リール本体側の端部までの前記ハンドル軸に沿う長さをLA、
前記固定部位から前記操作ノブの前記リール本体側の端部までの前記ハンドル軸に沿う長さをLBとしたときに、
これらの長さの関係が、
LA < LB である、
ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
リール本体に回転自在に支持され、前記リール本体から延出された端部にハンドルが固定されたハンドル軸を有する魚釣用リールにおいて、
前記リール本体からの前記ハンドル軸の取出部に、当該ハンドル軸の径方向外側へ向けて突出し、当該ハンドル軸へ向けて釣糸が移動するのを阻止する鍔部が設けられていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項7】
前記ハンドル軸には、円筒状のハンドルスタンドが介設されており、
前記鍔部は、前記取出部において前記ハンドルスタンドの縁部に対応するようにして前記リール本体側に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の魚釣用リール。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−249546(P2012−249546A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122636(P2011−122636)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】