説明

魚類捕獲具

【課題】 比較的小さな魚を傷つけることなく捕獲可能な遊戯用魚類捕獲具を提供する。
【解決手段】 上部12が開口し、側壁14に貫通孔16有し且つ沈水可能に構成された有底の深皿型容器18と、その容器18に一端が固定された釣糸22と、釣糸22の他端が固定された釣竿26と、を備える。釣竿26の一端を手で持ち、釣糸22を介して容器18を吊り下げ状態で、容18器内に魚の餌を入れて水中に入れる。所望の深さで容器18を静止させて魚を待ち、魚が容器内に入ったところで、容器18を引き上げる。当該魚類捕獲具によると、容器18が水中から上がった際に、側壁14の貫通穴16より低い位置の水は容器内に保たれるため、魚を傷つけることがない。また、釣針を使用しないため小魚の捕獲にも適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類を捕獲するための魚類捕獲具に関し、特に、釣堀等の遊戯施設において魚類を捕獲するための魚類捕獲具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚類を捕獲するための遊戯施設としては釣堀があり、そこでは、魚類捕獲具として釣針を用いて魚を釣る方法がとられている(例えば、特許文献1参照。)。また、その他遊戯としての魚を捕獲する場としては、縁日等の金魚すくいがあり、ここでは、円形の枠内に紙が張られた魚類捕獲具が用いられている(例えば、特許文献2参照。)。更に、その他の魚類捕獲具としては、一般に網等がある(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】 特開2002−272312
【特許文献2】 特開2002−210229
【特許文献3】 特開平7−8142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、釣針を用いた捕獲は、釣針に餌を付けたり、釣針に食いついた魚を手で外す必要があることから捕獲対象は比較的大きな魚に限られ、小さな魚の捕獲には不適である。また、釣針が魚の口に刺さるため、魚を傷つけ、弱めることになる。これに対して従来、養生用の池を釣堀と別途設ける方法もあるが、根本的に魚の損傷を防止するものではない。更に、釣針の刺さった魚を取り外すのは容易ではなく、直接魚に触れる必要があるため、特に女性等には敬遠されている。
【0004】
また、金魚すくいの魚類捕獲具は、水面のごく近傍を泳ぐ金魚をすくうためのものであり、水中に浸すとすぐに破れてしまうために、水槽の底部や中央部を泳ぐ魚類に対して使用することはできない。また、紙が破れて水中に散乱するため水が汚れてしまうという問題がある。
【0005】
更に、網による捕獲は、上記のような釣針や金魚すくいと比較すると、確実に捕獲できるが、その反面、遊戯としての醍醐味に欠ける。また、魚を水中から引き上げる際に、魚が網の中で暴れて、網によって魚が傷つけられる可能性もある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、魚を傷つけることなく捕獲することができ、比較的小さな魚の捕獲にも適し、水槽の底部や中央部の魚を捕獲可能で、且つ遊戯性を兼ね備えた魚類捕獲具を提供することを目的とする。
【課題を解決しようとするための手段】
【0007】
本発明に係る魚類捕獲具は、上部が開口し、側壁に貫通孔を有し且つ沈水可能に構成された有底の容器と、その容器に一端が固定された保持部材と、当該保持部材の他端が固定された棒状部材と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の魚類捕獲具は、棒状部材の保持部材が固定されていない側を手で持ち、棒状部材から保持部材を介して容器を吊り下げ状態で、当該容器内に魚の餌を入れて水中に入れると、容器が沈水可能なために水中に沈んでいく。所望の深さで容器を静止させて魚を待ち、餌を食べに魚が寄ってきて容器内に入ったところで、棒状部材を介して容器を引き上げる。この際に、容器が上昇すると開口より水が流入するが、貫通孔より水が排出されるため、引き上げる際の抵抗は、貫通孔が設けられていない場合に比べて小さい。また、流入して貫通孔より排水される水の流れによって魚が容器から逃げにくい。更に、容器が水中から上がった際に、側壁の貫通穴より低い位置の水を容器内に保つことができる。
【0009】
なお、容器の側壁に設ける貫通孔は複数個にし、側壁の全周にわたって均等に設けることが好ましい。これによると容器を引き上げる際の排水が均等に行われるため、水の流れが均等になり、容器が傾く可能性が低く魚がより逃げにくくなる。
【0010】
更に、保持部材を糸状体で形成して容器を吊り下げるようにすることできる。また、容器は、魚類が遊泳する水に対する比重が1以上の材料で製造されることによって沈水可能に構成しもよく、また容器に錘をつけることによって沈水可能に構成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明の魚類捕獲具によると、釣針を用いずに魚を捕獲することができるため、魚の損傷が少なく、また、釣針で捕獲することのできない小さな熱帯魚等を捕獲することもできる。そして水槽の底部、中央部等のどの位置にも容器を静止させることができるため、底部や中央部を泳ぐ習性のある魚も捕獲することができる。更に、容器を引き上げる際の力が水面より引き上げる場合に貫通孔が設けられていない場合と比較して水の抵抗が少ないため小さな力で引き上げることができる。また、引き上げる際に容器開口より容器内に進入して貫通孔から排水される水の流れによって捕獲した魚が逃げにくくなるため、一旦容器に入った魚を引き上げる際にある程度の確実性を持って引き上げることができ、遊戯者の興を削ぐことがない。そして、容器を水面から引き上げても、容器内に所定の水が保持されるため、水がないために魚が暴れて傷つく可能性が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明による魚類捕獲具の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態に係る魚類捕獲具10の概略斜視図である。当該魚類捕獲具10は、上部12が開口し、側壁14に貫通孔16を有し、沈水可能に構成された有底の容器18と、容器18に一端20が固定された4本のテグス等の釣糸22(保持部材、糸状部材)と、釣糸22の他端24が固定された釣竿26(棒状部材)と、を備える。
容器18は、深皿状の容器であって、捕獲する魚を遊泳させる水に対する比重が1以上である素焼きの陶製皿であって、底部の内面には、餌を入れるための窪み18aが設けられている。側壁14の貫通孔16は複数個設けられており、各々同じ円形で容器18の側壁14の同一水平位置に均等に形成されている。また、側壁14の貫通孔16より上の縁部には、同一水平位置に均等に4つの糸通し孔28が設けられている。釣糸22は、4本が各々同じ長さであって糸通し孔28に一端が結ばれている。そして釣糸の他端24は、4本まとめて釣竿26の先端30に固定されている。
【0013】
次に本実施形態の作用を図2を用いて説明する。まず、釣竿の、容器18が吊り下げられていない基端部32を手で持ち、釣竿26から釣糸22を介して容器18を吊り下げる。そして当該容器18内の窪み18aに錠剤状の餌や練り餌等の魚の餌34を入れて水中に入れると、容器18は自重によって水中に沈んでいく。所望の深さで釣竿26を静止させて魚を待つ。そして餌を食べに魚36が寄ってきて容器18内に入ったところで、釣竿26を上げて容器18を引き上げる。
【0014】
この際に、図3に示すように開口より流入する水38は貫通孔16より横に排水されるため、引き上げる際の力は貫通孔16が設けられていない場合に比べて小さくてすむ。
【0015】
また、貫通孔16は側壁14の全周にわたって複数個均等に設けられているため、容器18を引き上げる際の排水が均等に行われ、引き上げる際に容器が傾く可能性が小さく魚36が逃げにくい。
【0016】
更に、引き上げる際に容器18の上部12より容器18内に進入する水が貫通孔16から排水される水の流れによって、捕獲した魚が逃げにくくなる。
【0017】
また容器18が水から引き上げられても、図4に示すように容器18内には一定量の水が保たれる。故に、水がないために魚36が暴れて傷つく可能性が少ない。
【0018】
以上、本発明の魚類捕獲具10によると、釣針を用いずに魚を捕獲することができるため、魚の損傷が少なく、小さな熱帯魚等を捕獲することもできる。また、水槽の底部、中央部等どの位置にも容器18を配置することができるため、底部や中央部を泳ぐ習性のある魚も捕獲することができる。
【0019】
なお、容器の材質は陶製に限定されず、どのような材質であっても良い。例えば透明なガラス容器を用いた場合は、容器内部の魚の様子を観察できるという効果がある。また、水より軽いプラスチックの容器を用いた場合は、錘をつけて水に沈むようにすることが必要であるが、この場合容器が安価に作成でき、且つ丈夫であるという効果がある。
【0020】
また、容器の形状は、皿状に限定されず、例えば、バケツ型、角筒型等どのような形でも良い。また、容器18の底部に設けた餌用の窪み18aは任意である。そして設けない場合は底部に餌を配置等すればよく、設ける場合も底部に限定されず、壁部等他の場所に設けても良い。
【0021】
貫通孔の形状も円形に限定されず、例えば四角であってもよく、また、貫通孔の数も任意である。但し、複数個の場合は容器の側壁に均等に設けることによって、水中に持ち上げる際に均等に力が加わるようになる。
【0022】
保持部材も釣糸に限定されず、他の糸状部材であってもよく、また糸状部材に限らず、細棒や紐状部材であってもよい。
【0023】
また、保持部材の数も4に限定されない。例えば、図5(a)に示すように1箇所で固定する場合や(b)に示すように2箇所、また(c)に示すように3ヶ所で固定することもできる。1箇所で固定した場合は、安定性に欠けるため、より遊戯的要素が高まることになる。
【0024】
更に、棒状部材は、竹、ファイバー等何れの材質であってもよく、リールなどを取り付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】 本発明の実施形態に係る魚類捕獲具の概略図である。
【図2】 図1の魚類捕獲具の使用状態を示した図である。
【図3】 図1の魚類捕獲具を水中より引き上げる際の水の流れを示した図である。
【図4】 図1の魚類捕獲具が水中より引き上げられた状態を示した図である。
【図5】 本発明の変形例を示した図であり、(a)は保持部材が1本の場合、(b)は保持部材が2本の場合、(c)は保持部材が3本の場合である。
【符号の説明】
【0026】
10 魚類捕獲具
12 上部
14 側壁
16 貫通孔
18 容器
22 釣糸(保持部材、糸状部材)
26 釣竿(棒状部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口し、側壁に貫通孔を有し、且つ沈水可能に構成された有底の容器と、
該容器に一端が固定された保持部材と、
該保持部材の他端が固定された棒状部材と、を備えたことを特徴とする魚類捕獲具。
【請求項2】
前記貫通孔が複数個あり、容器側壁の全周にわたって均等に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の魚類捕獲具。
【請求項3】
前記保持部材が、糸状体であって前記容器を吊り下げて保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の魚類捕獲具。
【請求項4】
前記容器が、魚類が遊泳する水に対する比重が1以上の材料で製造されることによって沈水可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の魚類捕獲具。
【請求項5】
前記容器に錘をつけることによって沈水可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の魚類捕獲具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−166886(P2006−166886A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−382510(P2004−382510)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(301075204)
【Fターム(参考)】