説明

鶏卵、鶏卵の生産方法および改良方法、ならびに採卵鶏用飼料

【課題】
産卵率を低下させることなく正常な産卵を維持するとともに、正常な胚発生及び対象卵対比で種々の鶏卵品質特性を向上させ且つ鶏卵中のコレステロール等を低減させる鶏卵の生産方法および改良方法を提供する。
【解決手段】
ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロールまたはおよび植物ステロール等の食用油脂の適当量を鶏用飼料に混合して得られる混合飼料を適当な期間において採卵鶏に給餌することを特徴とする鶏卵の生産方法および改良方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用油脂を初生雛から及び又は適切な時期から餌に混合して与えることにより鶏生体内の脂肪分をより適切に維持することによって得られる鶏卵、鶏卵の生産方法および改良方法、ならびに採卵鶏用飼料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古くから鶏卵の食品としての栄養的特質は非常に高いことから貴重なタンパク質等栄養源として世界的にも安定な消費を維持している。しかし一方で餌のタンパク源である餌用漁獲量及び特に依然として油脂分の品質劣化防止対策等には少なからず問題を含んでいる。
【0003】
また鶏卵の生産コスト面からより短期的に鶏卵生産効率が追求され高脂肪および高タンパクな餌が要求されており、鶏卵生産環境についても一部の動物保護団体が問題にするようなぎりぎりの環境下であるといっても過言でない。
【0004】
このような鶏用飼料の品質問題も含めた飼育環境で飼育された鶏は、初生雛から約750日で廃棄され、該廃棄された鶏の体内には想像以上の体脂肪が内臓等に付着していることが観察される。
【0005】
特許文献1に記載された従来の鶏卵の改良方法は、イノシット、フィチンまたはおよびフィチン酸から選択された1種以上を鶏の生体に投与した後、該鶏に産卵させる鶏卵の改良方法であり、表1に示されるように卵黄色を健康的で自然な色調に改良してカラーファンNo.を向上するとともに、普通卵に比べて低位なコレステロール含有の鶏卵の生産を実現するものであった。
【0006】
【表1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−79708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年の誤った知見またはおよび報道に端を発する卵中コレステロール含有の高さによる健康への影響に関する風評またはおよび偏見によって、栄養的特質が非常に高いことが周知である鶏卵の食品は、依然として消費の伸び悩みが見られるという問題があった。
【0009】
また産卵率を低下させることなく正常な産卵を維持させ、正常な胚発生及び対象卵対比で種々の鶏卵品質特性を向上させ且つ鶏卵中のコレステロール等を低減させる鶏卵の改善が求められている。
【0010】
さらに特許文献1に記載された鶏卵の改良方法は、普通卵に比べて低位なコレステロール含有の鶏卵の生産を実現するものであるが、必ずしも充分低位なコレステロール含有の鶏卵の生産を実現するものではないという問題があった。
【0011】
そこで本発明者らは、鶏卵生産効率の追求からの諸問題が、鶏卵品質に与える品質に対する影響を考慮するとともに、上述した現状を鑑みて人体の脂質代謝改善に効果のあると立証されている食用油脂類に着眼し、当該食用油脂類を鶏用飼料に混合して得られる混合飼料を採卵鶏に給餌することにより、鶏の脂質代謝の改善またはおよび維持も考慮して、対象卵対比において従来の鶏卵の改良方法以上に有効な鶏卵中のコレステロールの低減及び種々の鶏卵品質改善などを実現するという目的を達成する本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(請求項1に記載の第1発明)の鶏卵の生産方法は、
食用油脂を鶏用飼料に混合して得られる混合飼料を採卵鶏に給餌することにより、
前記採卵鶏が産卵した鶏卵のコレステロールを低減する
ものである。
【0013】
本発明(請求項2に記載の第2発明)の鶏卵は、
前記第1発明の鶏卵の生産方法により生産された
ものである。
【0014】
本発明(請求項3に記載の第3発明)の鶏卵の改良方法は、
食用油脂を鶏用飼料に混合して得られる混合飼料を採卵鶏に給餌することにより、
前記採卵鶏が産卵した鶏卵のコレステロールを低減する
ものである。
【0015】
本発明(請求項4に記載の第4発明)の採卵鶏用飼料は、
鶏用飼料に対して食用油脂を混合して得られ、採卵鶏に対して給餌される混合飼料によって構成され、
前記食用油脂の前記混合飼料に対する混合割合が10重量%以下である
ものである。
【0016】
本発明(請求項5に記載の第5発明)の鶏卵の生産方法は、
前記第1発明において、
前記食用油脂が、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロールまたはおよび植物ステロールの少なくともいずれか1つを含有する
ものである。
【0017】
本発明(請求項6に記載の第6発明)の鶏卵の生産方法は、
前記第5発明において、
前記混合飼料に対する前記食用油脂の混合割合を給餌対象の採卵鶏の週令に応じて変化させる、または
給餌対象の採卵鶏が生誕して一定期間が経過した後、一定割合の前記食用油脂を混合した混合飼料を給餌開始する
ものである。
【発明の効果】
【0018】
上記構成より成る第1発明の鶏卵の生産方法は、食用油脂を鶏用飼料に混合して得られる混合飼料を採卵鶏に給餌するので、前記混合飼料を給餌して育成した採卵鶏が産卵した鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の品質改善が実現する鶏卵の生産を可能にするという効果を奏する。
【0019】
上記構成より成る第2発明の鶏卵は、上述した第1発明の鶏卵の生産方法により生産されたものであるので、生産された鶏卵の品質改善が実現されるという効果を奏する。
【0020】
上記構成より成る第3発明の鶏卵の改良方法は、食用油脂を鶏用飼料に混合して得られる混合飼料を採卵鶏に給餌するので、前記混合飼料を給餌して育成した採卵鶏が産卵した鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の品質改善が実現する鶏卵の改良を可能にするという効果を奏する。
【0021】
上記方法による第4発明の採卵鶏用飼料は、前記混合飼料に対する前記食用油脂の混合割合が10重量%以下であるので、給餌対象となる採卵鶏の摂餌意欲を損ねる事無く健全な成育を実現して、前記混合飼料を給餌して育成した採卵鶏が産卵した鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の鶏卵の品質改善が実現出来るという効果を奏する。
【0022】
上記構成より成る第5発明の鶏卵の生産方法は、前記第1発明において、前記食用油脂が、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロールまたはおよび植物ステロールの少なくともいずれか1つを含有するので、前記ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロールまたはおよび植物ステロールの少なくともいずれか1つを含有する混合飼料を給餌して育成した採卵鶏が産卵した鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の鶏卵の品質改善が実現出来るという効果を奏する。
【0023】
上記方法による第6発明の鶏卵の生産方法は、前記第5発明において、前記混合飼料に対する前記食用油脂の混合割合を給餌対象の採卵鶏の周令(週令)に応じて変化させるので、給餌対象となる採卵鶏の成育の段階に応じた適切な量の前記食用油脂を混合した混合飼料を給餌することにより、給餌対象となる採卵鶏の健全な成育を実現して、前記混合飼料を給餌して育成した採卵鶏が産卵した鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の鶏卵の品質改善が実現出来るという効果を奏する。
【0024】
上記方法による第6発明の鶏卵の生産方法は、前記第5発明において、給餌対象の採卵鶏が生誕して一定期間が経過した後、一定割合の前記食用油脂を混合した混合飼料を給餌開始するので、給餌対象となる採卵鶏の前記混合飼料から摂取する有効栄養素の摂取効率の良い成育段階より前記混合飼料を給餌することにより、給餌に際して必要となる前記食用油脂の必要量を抑制して前記混合飼料を給餌するためのコストを低下させ、前記混合飼料を給餌して育成し採卵鶏が産卵した鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の鶏卵の品質改善が実現出来るという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下上述した鶏卵、鶏卵の生産方法および改良方法、ならびに採卵鶏用飼料の各発明の実施の形態につき説明する。
本実施形態の食用油脂は、鶏用飼料に対して混合、添加されるもので、一般食用油、サラダ油、フライ用油、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、アイスクリーム、生クリーム代替物、ドレーシング、マヨネーズ、製菓用油脂食品などの製造に使用されるものである。
また本実施形態の食用油脂は、従来汎用的に使用されていた食用油やショートニング類と物理・化学的性質に差異がないか、殆どなく、従来の食用油やショートニング類の代替食品として使用することができ、共役リノール酸の生理学的効果を付加した食品を利用することができる。
例えば、本発明の食用油脂は、フライ用及び調理用の食用類製品、水中油型または油中水型食品としてフレンチドレッシング等のドレッシング類製品、マヨネーズ類製品、クリーム類製品、チョコレートとポテトチップのような製菓類製品、飲料製品、カプセル製品、タブレット製品、粉末製品、パンまたはクッキー等の製パン製品などに使用されるものである。
本実施形態の食用油脂は、粉末、粒子、カプセル、錠剤(pills)、錠剤(tablets)などの固体または分散物、エマルジョンなどの液体の形態など、制限はないとともに、また崩解剤、結合剤、賦形剤(excipients)などの一般的な添加剤および薬剤と共に調整することができる。
【0026】
上述の共役リノール酸は、遊離脂肪酸、エステル誘導体、またはトリグリセライドの形態で使用されている。
トリグリセライド形態の共役リノール酸としては、ピマシ油を原料に共役リノール酸とL−カルニチン(carnitine)またはL−カルニチン誘導体を使用した組成物、グリセリドの脂肪酸の位置に共役リノール酸を含む中鎖脂肪酸(medium
chain fatty acidm)、長鎖脂肪酸(long chain fatty acid)、ω−3脂肪酸、ω−9脂肪酸を含む組成物が知られている。
【0027】
本実施形態の採卵鶏用飼料の基本となる鶏用飼料は、60〜62%の穀類(とうもろこし、マイロ)と、15〜22%の植物性油かす類(大豆油かす、コーングルテンミール、なたね油かす、コーンジャムミール、ごま油かす)と、2〜10%の動物質性飼料(魚粉、肉骨粉、フィッシュソリュブル吸着飼料)と、1〜5%のそうこう類(米ぬか油かす、コーングルテンフィード、ふすま、米ぬか)と、10〜14%のその他(炭酸カルシウム、動物性油脂、アルファルファミール、りん酸カルシウム、ゼオライト、海藻、木酢精製液、ヨモギ、桑の葉、食塩、パプリカ抽出処理物、無水ケイ酸)等を挙げることができる。これらはあくまで、標準的なものであり、鶏の品種や日齢(鶏の年齢のようなもの)、飼育環境により、要求量は変わってくる。
【0028】
本実施形態の採卵鶏用飼料は、上述した鶏用飼料に対して、前記食用油脂が以下の割合で添加混合されるものである。例えば10重量%以下の混合割合の範囲で添加する場合、好ましくは0.005から5重量%以下の混合割合の範囲で添加する場合、さらに好ましくは0.01から2重量%以下の混合割合の範囲で添加する場合その他が採用可能である。食用油脂の下限は、初生雛の場合、食用油脂の添加量が分析により確認され得る程度の添加量である。
【0029】
本実施形態の食用油脂は、給餌時に、餌に混ぜないで、ある種の方法での食用油脂単独投与または、給水に乳化させ、給水機に添加したりして投与する場合も包合するものであり、あくまで、給餌時の養鶏飼料対比換算で、10%以下に該当する場合であれば包合されるものである。
【0030】
本実施形態の前記食用油脂に含有されるジアシルグリセロールまたはジグリセリドは、グリセリン(グリセロール)の脂肪酸エステルのうち、脂肪酸基2個が結合しているものをいう。
なお、グリセリドまたはアシルグリセロールは、グリセリン(グリセロール)の脂肪酸エステルの総称で、結合している脂肪酸基の数により、モノ、ジ、トリ‐グリセリドに区別され、また脂肪酸エステルのほかにリン酸基が結合しているものをオマホグリセリドという。モノ、ジグリセリドは、脂肪酸基の位置により1‐および2‐モノグリセリド、1,2‐および1,3‐ジグリセリドに区別される。
【0031】
本実施形態の前記食用油脂に含有されるトリアシルグリセロールまたはトリグリセリドは、トリセロール1モルに脂肪酸3モルがエステル結合したもので、脂肪酸の種類、グリセロール上での結合位置によりきわめて多くの分子種が存在し、それぞれ異なる物理化学的性質を示す。
【0032】
モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールは、脂肪酸のグリセリンエステルであり中性脂肪または中性脂質を指す。
【0033】
本実施形態の前記食用油脂に含有される植物ステロール(plant
sterol)またはフィトステロール(phyto sterol)は、植物界に存在するステロールであり、高等植物の主なものは、マチグスステロール、シトロステロール類であり、遊離の状態、エステル、グルコシドとして存在している。これらはホルモン系化合物の合成原料として重要であり、さらに、カンペステロール、α‐スピナステロール、ワースチグマステノールなどのステロールも高等植物に見い出されている。下等植物では、海藻類からフエスデロール、サルガステロールなどの化合物が得られる。
【0034】
フィトステロールまたは植物ステロールは、ステロール(ステロイドアルコール)に分類される一群の化合物であり、植物に含まれるフィトケミカルの一種である。
【0035】
本発明特許請求の範囲6項記載の鶏卵の生産方法は、混合飼料に対する前記食用油脂の混合割合を、上述の混合割合の範囲内において給餌対象の採卵鶏の週令に応じて変化させるものであるが、給餌対象の採卵鶏の週令に応じて前記混合割合を徐々にまたは段階的に増加させる実施形態を、給餌対象の採卵鶏の週令に応じて前記混合割合を徐々にまたは段階的に減少させる実施形態を採用することができる。
【0036】
本発明の鶏卵の生産方法および改良方法は、給餌対象の採卵鶏が生誕して一定期間が経過した後、一定割合の前記食用油脂を混合した混合飼料を給餌開始するものであるが、実施形態としては前記一定期間は生誕1週から25週の間の適当な週令に適宜設定出来るものである。
【0037】
以下本発明の実施の形態につき実施例に基づき、説明する。
【実施例1】
【0038】
本第1実施例の鶏卵、鶏卵の生産方法および改良方法、ならびに採卵鶏用飼料は、前記第1発明ないし第6発明の実施例であり、採卵鶏のボリスブラウンの飼料に対して混合する食用油脂の混合割合を前記ボリスブラウンの週令に応じて変化させた本第1実施例の採卵鶏用飼料としての混合飼料を給餌するものであり、以下その給餌方法について説明する。
【0039】
養鶏場のボリスブラウンについて、初生雛50羽を各10羽ずつの5区分に分ける、すなわち前記食用油脂類を飼料に混合しないで給餌する対照区分と、ジアシルグリセロール1〜100重量%を含有する食用油脂(以下、オイルNO.1)の週令に応じて変化させた量を飼料に混合して給餌するオイルNO.1区分と、トリアシルグリセロール1〜100重量%を含有する食用油脂(以下、オイルNO.2)の週令に応じて変化させた量を飼料に混合して給餌するオイルNO.2区分と、植物ステロール1〜100重量%を主成分とする食用油脂(以下、オイルNO.3)の週令に応じて変化させた量を飼料に混合して給餌するオイルNO.3区分と、前記ジアシルグリセロール、前記トリアシルグリセロールおよび前記植物ステロールを含有するまたは主成分とする食用油脂を1:1:1の割合で混合した食用油脂類(以下、オイルNO.4)の週令に応じて変化させた量を飼料に混合して給餌するオイルNO.4区分との5区分に分ける。
【0040】
鶏用飼料への上記4種類のオイルの添加混合割合は、給餌対象鶏が初生雛から10週令までの期間は0.01%を継続して添加混合し、給餌対象鶏が10週例から70週令までの期間は0.5%を継続して添加混合し、給餌対象鶏が70週例から101週令までの期間は1.0%を継続して添加混合するものである。
【0041】
前記5区分について20週令、70週令および100週令において採卵日から2日以内の鶏卵のサンプリングを行い、Roche社の推奨するロッシュヨークカラーファンの測定方法に準じてカラーファンNO.値を測定する。
【0042】
また前記5区分について20週令、70週令および100週令において採卵日から2日以内の鶏卵のサンプリングを行い、20代、40代および60代の各パネラーの官能によって3段階評価による卵臭評価および味覚評価を行う。なお味覚評価は、鶏卵が半熟卵の状態によって評価する。
【0043】
同様に前記5区分について20週令、70週令および100週令において採卵日から2日以内の鶏卵のサンプリングを行い、一時10℃以下の環境において冷蔵保管して、順次ヘキサン抽出後にガスクロマトグラフィーによってコレステロール値の測定を行う。
【0044】
なお測定により得られたカラーファンNO.値、卵臭評価、味覚評価およびコレステロール値は、以下に示す表2のようになり、さらに前記5区分について101週令の廃鶏の体脂肪を測定する。
【0045】
【表2】

【0046】
初生雛からオイルNO.1ないしオイルNO.4の食用油脂を鶏用飼料に所定量混合した混合飼料を前記ボリスブラウンに給餌することによって、表2に示されるようにオイルNO.1区分ないしオイルNO.4区分において得られた鶏卵は、対照区分において得られた鶏卵および特許文献1に記載された従来の鶏卵の改良方法により得られた鶏卵に対して、コレステロール値はおよそ20%以上減少するとともに、カラーファンNO.値はおよそ2〜3ポイント上昇した。
【0047】
またオイルNO.1区分ないしオイルNO.4区分において得られた鶏卵は、卵臭評価および味覚評価においても対照区分において得られた鶏卵および市販卵に対して20代、40代および60代の各パネラーのいずれにおいても最高評価点を記録した。
【0048】
さらにオイルNO.1区分ないしオイルNO.4区分における101週令の廃鶏の体脂肪は、対照区分における廃鶏の体脂肪対比およそ70%〜80%であり、低減が確認された。
【0049】
上記構成より成る本第1実施例の鶏卵、鶏卵の生産方法および改良方法、ならびに採卵鶏用飼料の効果について、説明する。
【0050】
上記構成より成る本第1実施例の鶏卵の生産方法および改良方法は、表2に示されるように食用油脂類を添加混合した本発明の採卵鶏用飼料としての混合飼料を給餌した前記オイルNO.1区分ないし前記オイルNO.4区分において生産、改良された鶏卵のカラーファンNO.値が食用油脂類を添加混合されていない鶏用飼料を給餌した対照区分において生産された鶏卵に対して上昇するため、卵黄色の濃い鶏卵に対する消費者の需要を満たす商品価値の高い鶏卵を生産、改良する事が出来るという効果を奏する。
【0051】
上記構成より成る本第1実施例の鶏卵の生産方法および改良方法は、表2に示されるように食用油脂類を添加混合した混合飼料を給餌した前記オイルNO.1区分ないし前記オイルNO.4区分において生産、改良された鶏卵の生玉子臭が食用油脂類を添加混合されていない鶏用飼料を給餌した対照区分において生産された鶏卵の生玉子臭に比べて改善されるため、生玉子臭の良い鶏卵に対する消費者の需要を満たす商品価値の高い鶏卵を生産、改良する事が出来るという効果を奏する。
【0052】
上記構成より成る本第1実施例の鶏卵の生産方法および改良方法は、表2に示されるように食用油脂類を添加混合した混合飼料を給餌した前記オイルNO.1区分ないし前記オイルNO.4区分において生産、改良された鶏卵の旨味が食用油脂類を添加混合されていない鶏用飼料を給餌した対照区分において生産された鶏卵の旨味に比べて増加するため、味の良い鶏卵に対する消費者の需要を満たす商品価値の高い鶏卵を生産、改良する事が出来るという効果を奏する。
【0053】
上記構成より成る本第1実施例の鶏卵の生産方法および改良方法は、表2に示されるように食用油脂類を添加混合した混合飼料を給餌した前記オイルNO.1区分ないし前記オイルNO.4区分において生産、改良産された鶏卵中のコレステロール値が食用油脂類を添加混合されていない鶏用飼料を給餌した対照区分において生産された鶏卵中のコレステロール値に対して大幅に低減するため、低位なコレステロール含有の鶏卵に対する消費者の需要を満たす商品価値の高い鶏卵を生産、改良する事が出来るという効果を奏する。
【0054】
上記構成より成る本第1実施例の鶏卵の生産方法および改良方法は、食用油脂類を添加混合した混合飼料を給餌した前記オイルNO.1区分ないし前記オイルNO.4区分における101週令の廃鶏の体脂肪が、給餌される鶏の脂質代謝の改善またはおよび維持が達成されるとともに鶏卵生産効率の追求に伴う必要以上に高脂肪・高タンパクな餌を給餌することによる鶏の生体へのストレスが緩和されることにより、食用油脂類を添加混合されていない鶏用飼料を給餌した対照区分における101週令の廃鶏の体脂肪に対して20〜30%減少して、健全な鶏から鶏卵を採卵する事が可能となるため、より安全な鶏卵を提供する事が出来るという効果を奏する。
【0055】
上記構成より成る本第1実施例の鶏卵の生産方法は、前記食用油脂を鶏用飼料に混合して得られる前記混合飼料を採卵鶏に給餌するので、前記混合飼料を給餌して育成した採卵鶏が産卵した鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の品質改善が実現する鶏卵の生産を可能にするという効果を奏する。
【0056】
上記構成より成る本第1実施例の鶏卵は、上述した本第1実施例の鶏卵の生産方法により生産されたものであるので、生産された鶏卵の上述した表2その他に示される各種の評価項目の品質改善が実現されるという効果を奏する。
【0057】
上記構成より成る本第1実施例の鶏卵の改良方法は、前記食用油脂を鶏用飼料に混合して得られる前記混合飼料を採卵鶏に給餌するので、前記混合飼料を給餌して育成した採卵鶏が産卵した鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の品質改善が実現する鶏卵の改良を可能にするという効果を奏する。
【0058】
上記構成より成る本第1実施例の鶏卵の生産方法は、表2に示されるように前記食用油脂であるジアシルグリセロール、トリアシルグリセロールまたはおよび植物ステロールの少なくともいずれか1つを含有する前記オイルNO.1区分ないし前記オイルNO.4区分において採卵された鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の鶏卵の品質改善が実現出来るという効果を奏する。
【0059】
上記構成より成る本第1実施例の採卵鶏用飼料は、前記鶏用飼料に対する前記食用油脂の混合割合が給餌対象鶏の週令に応じて0.01重量%ないし1.00重量%の範囲で段階的に増加させるものであるので、給餌対象となる採卵鶏の摂餌意欲を損ねる事無く健全な成育を実現して、前記混合飼料を給餌して育成した採卵鶏が産卵した鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の鶏卵の品質改善が実現出来るという効果を奏する。
【0060】
上記構成より成る本第1実施例の鶏卵の生産方法は、前記鶏用飼料に対する前記食用油脂の混合割合を給餌対象の採卵鶏の周令に応じて変化させるので、給餌対象となる採卵鶏の成育の段階に応じた適切な量の前記食用油脂を混合した混合飼料を給餌することにより、給餌対象となる採卵鶏の健全な成育を実現して、前記混合飼料を給餌して育成した採卵鶏が産卵した鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の鶏卵の品質改善が実現出来るという効果を奏する。
【実施例2】
【0061】
本第2実施例の鶏卵、鶏卵の生産方法および改良方法、ならびに採卵鶏用飼料は、前記第1発明ないし第6発明の実施例であり、採卵鶏のボリスブラウンが生誕して14週が経過した後に、すなわち前記ボリスブラウンにおいては15週令から飼料に対して1.0%の食用油脂を連続的に添加混合して得られる本発明の採卵鶏用飼料としての混合飼料を給餌するものであり、以下その給餌方法について上述した第1実施例との相違点を中心に説明する。
【0062】
鶏用飼料への前記4種類のオイルの添加混合割合は、給餌対象鶏が15週令の期間を一律1.00%を継続して添加混合するものである。
【0063】
本第2実施例においては前記5区分について30週令、80週令および100週令において採卵日から2日以内の鶏卵のサンプリングを行い、上述の第1実施例と同様にカラーファンNO.値およびコレステロール値の測定と生玉子臭および旨味の評価を行う。
【0064】
前記5区分についてのカラーファンNO.値およびコレステロール値の測定方法、前記5区分についての卵臭評価および味覚評価の評価方法および前記5区分について101週令の廃鶏の体脂肪の測定方法は、上述した第1実施例と同様の方法によって行う。
【0065】
本第2実施例の鶏卵の生産方法および改良方法における給餌方法において得られた鶏卵の、測定により得られたカラーファンNO.値、卵臭評価、味覚評価およびコレステロール値は、以下に示す表3のようになった。
【0066】
【表3】

【0067】
上記構成より成る本第2実施例の鶏卵の生産方法および改良方法の効果について、説明する。
【0068】
上記構成より成る本第2実施例の鶏卵の生産方法および改良方法は、表3に示されるように食用油脂類を添加混合した混合飼料を給餌した前記オイルNO.1区分ないし前記オイルNO.4区分において生産、改良された鶏卵のカラーファンNO.値が食用油脂類を添加混合されていない鶏用飼料を給餌した対照区分において生産された鶏卵に対して上昇するため、卵黄色の濃い鶏卵に対する消費者の需要を満たす商品価値の高い鶏卵を生産、改良する事が出来るという効果を奏する。
【0069】
上記構成より成る本第2実施例の鶏卵の生産方法および改良方法は、表3に示されるように食用油脂類を添加混合した混合飼料を給餌した前記オイルNO.1区分ないし前記オイルNO.4区分において生産、改良された鶏卵の生玉子臭が食用油脂類を添加混合されていない鶏用飼料を給餌した対照区分において生産された鶏卵の生玉子臭に比べて改善されるため、生玉子臭の良い鶏卵に対する消費者の需要を満たす商品価値の高い鶏卵を生産、改良する事が出来るという効果を奏する。
【0070】
上記構成より成る本第2実施例の鶏卵の生産方法および改良方法は、表3に示されるように食用油脂類を添加混合した混合飼料を給餌した前記オイルNO.1区分ないし前記オイルNO.4区分において生産、改良された鶏卵の旨味が食用油脂類を添加混合されていない鶏用飼料を給餌した対照区分において生産された鶏卵の旨味に比べて増加するため、味の良い鶏卵に対する消費者の需要を満たす商品価値の高い鶏卵を生産、改良する事が出来るという効果を奏する。
【0071】
上記構成より成る本第2実施例の鶏卵の生産方法および改良方法は、表3に示されるように食用油脂類を添加混合した混合飼料を給餌した前記オイルNO.1区分ないし前記オイルNO.4区分において生産、改良された鶏卵中のコレステロール値が食用油脂類を添加混合されていない鶏用飼料を給餌した対照区分において生産された鶏卵中のコレステロール値に対して大幅に低減するため、低位なコレステロール含有の鶏卵に対する消費者の需要を満たす商品価値の高い鶏卵を生産、改良する事が出来るという効果を奏する。
【0072】
上記構成より成る本第2実施例の鶏卵の生産方法および改良方法は、食用油脂類を添加混合した混合飼料を給餌した前記オイルNO.1区分ないし前記オイルNO.4区分における101週令の廃鶏の体脂肪が、給餌される鶏の脂質代謝の改善またはおよび維持が達成されるとともに鶏卵生産効率の追求に伴う必要以上に高脂肪・高タンパクな餌を給餌することによる鶏の生体へのストレスが緩和されることにより、食用油脂類を添加混合されていない鶏用飼料を給餌した対照区分における101週令の廃鶏の体脂肪に対して20〜30%減少して、健全な鶏から鶏卵を採卵する事が可能となるため、より安全な鶏卵を提供する事が出来るという効果を奏する。
【0073】
上記構成より成る本第2実施例の鶏卵の生産方法は、前記食用油脂を鶏用飼料に混合して得られる前記混合飼料を採卵鶏に給餌するので、前記混合飼料を給餌して育成した採卵鶏が産卵した鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の品質改善が実現する鶏卵の生産を可能にするという効果を奏する。
【0074】
上記構成より成る本第2実施例の鶏卵は、上述した本第2実施例の鶏卵の生産方法により生産されたものであるので、生産された鶏卵の上述した表3その他に示される各種の評価項目の品質改善が実現されるという効果を奏する。
【0075】
上記構成より成る本第2実施例の鶏卵の改良方法は、前記食用油脂を鶏用飼料に混合して得られる前記混合飼料を採卵鶏に給餌するので、前記混合飼料を給餌して育成した採卵鶏が産卵した鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の品質改善が実現する鶏卵の改良を可能にするという効果を奏する。
【0076】
上記構成より成る本第2実施例の鶏卵の生産方法は、表3に示されるように前記食用油脂であるジアシルグリセロール、トリアシルグリセロールまたはおよび植物ステロールの少なくともいずれか1つを含有する前記オイルNO.1区分ないし前記オイルNO.4区分において採卵された鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の鶏卵の品質改善が実現出来るという効果を奏する。
【0077】
上記構成より成る本第2実施例の採卵鶏用飼料は、前記鶏用飼料に対する前記食用油脂の混合割合が1.00重量%であるので、給餌対象となる採卵鶏の摂餌意欲を損ねる事無く健全な成育を実現して、前記混合飼料を給餌して育成した採卵鶏が産卵した鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の鶏卵の品質改善が実現出来るという効果を奏する。
【0078】
上記構成より成る本第2実施例の鶏卵の生産方法は、給餌対象の採卵鶏が生誕して一定期間が経過した後、一定割合の前記食用油脂を混合した混合飼料を給餌開始するので、給餌対象となる採卵鶏の前記混合飼料から摂取する有効栄養素の摂取効率の良い成育段階より前記混合飼料を給餌することにより、給餌に際して必要となる前記食用油脂の必要量を抑制して前記混合飼料を給餌するためのコストを低下させ、前記混合飼料を給餌して育成した採卵鶏が産卵した鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の鶏卵の品質改善が実現出来るという効果を奏する。
【0079】
上述の実施例は、説明のために例示したもので、本発明としてはそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および図面の記載から当業者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更および付加が可能である。
【0080】
上述の第1実施例および第2実施例の鶏卵の生産方法および改良方法は、オイルNO.4区分においてオイルNO.1、オイルNO.2およびオイルNO.3を1:1:1の割合において混合した食用油脂を前記鶏用飼料に混合した混合飼料を給餌対象の採卵鶏に給餌する例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、オイルNO.1、オイルNO.2およびオイルNO.3の3つの食用油脂から選択的に2種類を混合した食用油脂を鶏用資料に混合した混合資料を給餌対象の採卵鶏に給仕する実施形態を採用することが出来るとともに、各食用油脂の混合割合についても1:2または1:2:3その他の適宜の混合割合を適用可能であり、本発明の鶏卵の生産方法、改良方法およびその効果を逸脱しない範囲において適宜選択実施出来るものである。
【0081】
上述の第1実施例および第2実施例の鶏卵の生産方法および改良方法は、前記食用油脂を鶏用飼料に添加混合した前記採卵鶏用飼料を給餌対象の採卵鶏に給餌する例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記食用油脂を給餌対象の採卵鶏に単独投与する形態または、給餌対象の採卵鶏の給水に乳化させ、給水機に添加して投与する形態を採用することが出来るとともに、給餌時の養鶏飼料対比換算で、10重量%以下の割合で前記食用油脂を採卵鶏の体内に取り込むことが出来るものであれば、本実施形態の鶏卵の生産方法および改良方法において、適宜選択実施出来るものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
食用油脂を鶏用飼料に混合して得られる混合飼料を採卵鶏に給餌するので、前記混合飼料を給餌して育成した採卵鶏が産卵した鶏卵中のコレステロール値が減少するとともに、種々の品質改善が実現する鶏卵の生産を可能にするという用途に適用出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂を鶏用飼料に混合して得られる混合飼料を採卵鶏に給餌することにより、
前記採卵鶏が産卵した鶏卵のコレステロールを低減する
ことを特徴とする鶏卵の生産方法。
【請求項2】
請求項1の鶏卵の生産方法により生産された
ことを特徴とする鶏卵。
【請求項3】
食用油脂を鶏用飼料に混合して得られる混合飼料を採卵鶏に給餌することにより、
前記採卵鶏が産卵した鶏卵のコレステロールを低減する
ことを特徴とする鶏卵の改良方法。
【請求項4】
鶏用飼料に対して食用油脂を混合して得られ、採卵鶏に対して給餌される混合飼料によって構成され、
前記食用油脂の前記混合飼料に対する混合割合が10重量%以下である
ことを特徴とする採卵鶏用飼料。
【請求項5】
請求項1において、
前記食用油脂が、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロールまたはおよび植物ステロールの少なくともいずれか1つを含有する
ことを特徴とする鶏卵の生産方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記混合飼料に対する前記食用油脂の混合割合を給餌対象の採卵鶏の週令に応じて変化させる、または
給餌対象の採卵鶏が生誕して一定期間が経過した後、一定割合の前記食用油脂を混合した混合飼料を給餌開始する
ことを特徴とする鶏卵の生産方法。

【公開番号】特開2010−284086(P2010−284086A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138721(P2009−138721)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(593153093)
【出願人】(593153118)
【Fターム(参考)】