説明

鶏卵のトレーサビリティシステム

【課題】 簡単な確認作業を行うだけで商品として出荷した鶏卵のトレーサビリティに関する情報の信頼性を向上させることができる鶏卵のトレーサビリティシステムを提供する。
【解決手段】 生産流通情報とこれに対応する識別コードとを主記憶手段に記憶させておき、鶏卵に添付した識別コードから生産流通情報を閲覧可能とした鶏卵のトレーサビリティシステムにおいて、鶏舎から鶏卵を集卵する集卵手段の稼働情報及び集卵個数に関する情報の少なくとも一つを含む集卵情報を記憶する副記憶手段を備え、さらに、識別コードと生産流通情報とを主記憶手段に送信する前に、副記憶手段に記憶された集卵情報を検証する検証手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏卵のトレーサビリティシステムに関し、詳しくは、商品として出荷した鶏卵のトレーサビリティに関する情報の信頼性を向上させることができる鶏卵のトレーサビリティシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鶏卵の取引(販売を含む)においては、JAS法、食品衛生法施行規則、生鮮食品品質表示基準等に基づき、名称(即ち鶏卵)、原産地、賞味期限、集卵者又は選別包装者の住所氏名、保存方法、使用方法、取引規格、等級等を表示するようにしている。また、重量の種類(L,M,S等)の表示を捕捉するために、表示書を色分けすることも行われている。このため、卵選別包装施設(GPセンター)では、鶏卵の選別、包装を行うとともに、卵やパック、表示書にこれらを印字して製品に添付するようにしている。
【0003】
さらに、近年は、一連の食品関連の事件や問題を契機として、「食の安全」に対する関心が高まっており、鶏卵においても、トレーサビリティシステムの導入が進みつつある。例えば、鶏卵の一つ一つに、賞味期限と、集卵日、生産農場の会社名、生産農場名、GPセンターの会社名、農場からの到着便と時間、販売会社名、物流センター名で構成された生産流通情報をコード化した識別コードとを印字するとともに、これらの生産流通情報を識別コードと共にデータベースセンターに送信して記憶手段に記憶させ、消費者がインターネットを介して前記識別コードを入力することにより、各鶏卵における生産流通情報を閲覧できるようにしたものが開発されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】「鶏鳴新聞」平成16年3月5日発行(第5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のシステムでは、各種情報をデータベースセンターへ機械的に送信しているため、送信する情報のチェックが十分になされず、誤った情報がデータベースセンターに送信されてしまうおそれがあった。データベースセンターの情報に誤りが生じた場合、消費者に正しい情報を提供することができなくなり、トレーサビリティシステム全体の信頼性が損なわれるだけでなく、誤った情報に対する責任も、前記情報を送信した側にあるのか、受信した側にあるのか明確ではないという問題もあった。これを回避するために情報の一つ一つをチェックするということは、鶏卵出荷量の多さから現実的ではない。
【0005】
そこで本発明は、簡単な確認作業を行うだけで商品として出荷した鶏卵のトレーサビリティに関する情報の信頼性を向上させることができる鶏卵のトレーサビリティシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の鶏卵のトレーサビリティシステムは、第1の構成として、鶏舎から集卵手段を介して集卵した鶏卵を、選別包装手段により選別包装して出荷するにあたり、出荷する鶏卵に、集卵した鶏舎の情報、集卵した日付に関する情報を含む鶏卵の生産流通情報をコード化した識別コードを添付するとともに、該識別コード及び前記生産流通情報を主記憶手段に送信する送信手段と、該送信手段から送信された前記識別コード及び前記生産流通情報を記憶する主記憶手段とを備え、該主記憶手段に記憶されている前記生産流通情報を、鶏卵に添付された前記識別コードから閲覧可能に構成された鶏卵のトレーサビリティシステムにおいて、前記集卵手段の稼働情報及び集卵個数に関する情報の少なくとも一つを含む集卵情報を記憶する副記憶手段を備え、さらに、前記主記憶手段に前記生産流通情報を送信する前に、前記副記憶手段に記憶された前記集卵情報を検証する検証手段を備えたことを特徴としている。
【0007】
また、本発明の鶏卵のトレーサビリティシステムの第2の構成は、成鶏舎内の複数の鶏舎からそれぞれ鶏卵を集卵する集卵手段と、該集卵手段で集卵した鶏卵を選別包装する選別包装手段と、該選別包装手段で包装した鶏卵を出荷するにあたり、出荷する各鶏卵に、集卵した鶏舎の情報、集卵した日付に関する情報を含む鶏卵の生産流通情報をコード化した識別コードを添付する識別コード添付手段と、前記識別コード及び前記生産流通情報を記憶する主記憶手段と、前記識別コード及び前記生産流通情報を前記主記憶手段に送信する送信手段とを備え、前記主記憶手段に記憶されている前記生産流通情報を、各鶏卵に添付された前記識別コードから閲覧可能に構成した鶏卵のトレーサビリティシステムにおいて、前記集卵手段の稼働情報及び集卵個数に関する情報の少なくとも一つを含む集卵情報を記憶する副記憶手段と、前記送信手段から前記主記憶手段に前記生産流通情報を送信する前に、送信する生産流通情報と前記副記憶手段に記憶された過去の集卵情報とを比較検証する検証手段と、該検証手段で検証した結果を表示して検証結果の確認を求める確認手段とを備えたことを特徴としている。特に、本構成においては、前記確認手段は、前記検証結果の表示に加えて、前記鶏舎に設けられている鶏舎コンベアの保守情報、前記鶏舎内の成鶏の情報を含む成鶏舎の状況に関する情報を表示することを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の鶏卵のトレーサビリティシステムは、上記各構成において、前記検証手段は、当日の集卵情報と、前記副記憶手段に記憶された前日の集卵情報とを比較すること、また、当日の集卵情報と、前記副記憶手段に記憶された過去のあらかじめ設定した日数範囲における集卵情報の平均とを比較すること、前記集卵情報を検証したときに、該検証結果があらかじめ設定した適合範囲内にあるか否かを評価することを特徴としている。
【0009】
また、前記集卵手段の稼働情報は、前記鶏舎に設けられている鶏舎コンベアの稼働時間、該鶏舎コンベアで搬送された鶏卵を前記選別包装手段に向けて搬送する集卵コンベアの稼働時間を含んでいること、前記集卵個数に関する情報は、鶏舎から集卵した鶏卵の集卵個数、選別包装して出荷した鶏卵の出荷個数を含んでいることを特徴としている。
【0010】
そして、前記生産流通情報は、鶏卵を選別、包装、出荷する卵選別包装施設において、卵選別包装施設に鶏卵を導入した成鶏舎に関する情報、選別、包装して出荷した日付、ロット及び個数に関する情報、選別包装機の保守情報を含む卵選別包装施設に関する情報、前記成鶏舎において、各鶏舎に集卵鶏を導入した育雛・育成場に関する情報、各鶏舎に育雛・育成場から成鶏を導入した日付及びロットに関する情報、盲腸便の検査に関する情報、鶏舎内の埃に関する情報、飼料及び水に関する情報、集卵した鶏舎に関する情報、集卵した日付、ロット及び個数に関する情報を含む成鶏舎に関する情報、前記育雛・育成場において、初生雛を導入した孵化場に関する情報、孵化場から初生雛を導入した日付及びロットに関する情報、成鶏出荷1週間前の盲腸便の検査に関する情報、鶏舎内の埃に関する情報、飼料及び水に関する情報を含む育雛・育成場に関する情報、前記孵化場において、種卵を導入した種鶏場に関する情報、種卵を導入した日付及びロットに関する情報、孵化した日付及びロットに関する情報、孵卵器及びハッチャーの保守に関する情報、鑑別時における胎便の検査に関する情報、ワクチン接種に関する情報を含む孵化場に関する情報、前記種鶏場において、種卵を集卵した日付及びロットに関する情報、種鶏成鶏の盲腸便の検査に関する情報、鶏舎内の埃に関する情報を含む種鶏場に関す情報を含んでいることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の鶏卵のトレーサビリティシステムによれば、生産流通情報をデータベースセンターの主記憶手段に送信する前に検証するので、誤った情報がデータベースセンターへ送られることを未然に防止できる。また、情報の検証作業を毎日行うことにより、情報をチェックするという意識が作業者に生まれるので、より確実に正確な情報をデータベースセンターへ送信することができる。また、万一、誤った情報が発生したとしても、集卵情報を遡って確認することにより、情報の信憑性に関する責任の所在を明らかにすることができる。これにより、消費者に対して正しい情報を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の一形態例を示す鶏卵のトレーサビリティシステムの説明図であって、成鶏舎11、卵選別包装施設(GPセンター)21、データベースセンター31及び消費者41の関係を示している。
【0013】
まず、鶏卵を商品として出荷するためには、図示しない種鶏場で種卵を得ることに始まり、この種卵を孵化場にて孵化し、孵化した雛を育雛・育成場で集卵鶏に育て上げ、この集卵鶏を成鶏舎11で飼育しながら産卵させ、産卵した鶏卵をGPセンター21に設置した選別包装手段である選別包装機(GPマシン)22で選別、包装することにより、それぞれ所定の包装形態を有し、消費者41が手にする製品42となる。
【0014】
製品42のトレーサビリティを行うための生産流通情報としては各種情報を挙げることができるが、代表的な情報は以下の通りであり、他の製品に比べて非常に多岐にわたった情報を必要としている。
【0015】
まず、前記種鶏場に関する情報としては、種卵を集卵した日付及びロットに関する情報、種鶏成鶏の盲腸便の検査に関する情報、鶏舎内の埃に関する情報を含んでおり、この他の情報としては、鶏舎内の温度及び湿度に関する情報、飼料及び水に関する情報等がある。
【0016】
前記孵化場に関する情報としては、種卵を導入した種鶏場に関する情報、種鶏場から種卵を導入した日付及びロットに関する情報、孵化した日付及びロットに関する情報、孵卵器及びハッチャーの保守に関する情報、鑑別時における胎便の検査に関する情報、ワクチン接種に関する情報を含んでおり、この他の情報としては、温度及び湿度に関する情報等がある。
【0017】
前記育雛・育成場に関する情報は、初生雛を導入した孵化場に関する情報、孵化場から初生雛を導入した日付及びロットに関する情報、成鶏出荷1週間前の盲腸便の検査に関する情報、鶏舎内の埃に関する情報を含んでおり、この他の情報としては、鶏舎内の温度及び湿度に関する情報、飼料及び水に関する情報等がある。
【0018】
前記成鶏舎11に関する情報は、各鶏舎に集卵鶏を導入した育雛・育成場に関する情報、各鶏舎に育雛・育成場から成鶏を導入した日付及びロットに関する情報、盲腸便の検査に関する情報、鶏舎内の埃に関する情報、飼料及び水に関する情報を含んでおり、この他の情報としては、集卵した鶏舎に関する情報として、鶏舎の設置数、鶏舎の構造、鶏舎内の羽数、鶏舎内の温度及び湿度、鶏舎コンベアに関する情報等がある。
【0019】
前記GPセンター21に関する情報は、前記GPマシン22の型番や保守情報、集卵コンベアの情報等を含んでおり、この他の情報としては、該GPセンター21から出荷される鶏卵の出荷先及び流通手段に関する情報、集卵した日付、ロット及び個数に関する情報、集卵後の鶏卵の保存状態等がある。
【0020】
これらの情報は、データベースセンター31の主記憶手段32に記憶され、消費者41がインターネット等の通信回線を利用して閲覧可能な状態となっている。
【0021】
GPセンター21では、成鶏舎11に設けられている複数の鶏舎12a,12b,12c,…,12xの中の選択された1乃至複数の鶏舎から、集卵手段を構成する鶏舎コンベア13a,13b,13c,…,13x及び集卵コンベア14a,14bを介して集卵・集卵した鶏卵をGPマシン22により選別して包装し、製品42として出荷する。このGPセンター21には、前記鶏舎コンベア13a,13b,13c,…,13x及び集卵コンベア14a,14b(集卵手段)の稼働情報及び集卵個数に関する情報の少なくとも一つを含む集卵情報や、前記生産流通情報を記憶するハードディスク等の副記憶手段23を備えるとともに、生産流通情報を所定の手順でコード化して識別コードを発生する機能を備えたパソコン等からなる管理システム24と、該管理システム24からの情報に基づいて前記識別コードを鶏卵の表面等に印字するプリンタ25等からなる識別コード添付手段とを備えている。前記副記憶手段23には、成鶏舎11から集卵して選別、包装、出荷するまでの一連の作業に必要な情報の他、生産流通情報をコード化するために必要な各種情報が記憶されている。
【0022】
管理システム24では、まず、製品42の種類や出荷形態、数量に応じて複数の鶏舎12a,12b,12c,…,12xの中から最適な鶏舎を選択し、この選択情報が管理システム24から鶏舎データ(鶏舎集卵情報)としてGPマシン22に送られ、GPマシン22から成鶏舎11にデータが送信されることにより、選択された鶏舎の鶏舎コンベア及び集卵コンベア14a,14bが作動し、複数の鶏舎(1号鶏舎、2号鶏舎、3号鶏舎・・・)の中から選択された1又は複数の鶏舎で産卵された鶏卵をGPマシン22に向けて搬送する。
【0023】
GPマシン22からは、選別時における外観検査や透光検査又は割卵検査を行った際の鶏卵の規格、例えば特級、1級、2級、級外といった等級、LL,L,M,MS,S,SSといった重量基準に対する種類、包装容器の外装や内装、容器寸法、その他の商品となる鶏卵に関する情報が管理システム24にデータ送信され、生産流通情報の一部として前記副記憶手段23に記憶される。
【0024】
前記副記憶手段23に記憶されたGPセンター21に関する情報、前記成鶏舎11に関する情報、集卵した鶏舎に関する情報、日付及びロットに関する情報、その他、鶏卵の規格に関する情報、出荷先に関する情報等を含む生産流通情報は、あらかじめ設定された手順でコード化されることによって識別コードとされ、プリンタ25によって鶏卵の表面又は鶏卵を包装した包装体の表面に直接印字される。なお、識別コードは、各種印字手段によってラベルに印字し、このラベルを鶏卵に貼付するようにしてもよく、これらを帳票、表示書に印字し、これを包装体内に封入又は包装体の外面に貼付するようにしてもよく、これらを組み合わせてもよい。このような識別コードを付加した製品42は、所定の流通ルートを介して消費者41の手元に渡る。
【0025】
一方、管理システム24では、前記識別コードと、これに対応する生産流通情報とを一組のデータとしてデータベースセンター31へ送信する準備を行う。送信する生産流通情報としては、前述のように、成鶏舎11に関する情報やGPセンター21に関する情報等であり、これらの情報の中で、固定的な情報としては、成鶏舎11やGPセンター21の名称、鶏舎の設備構成、GPマシン22の型番等の情報があり、定期的に更新される情報としては、各鶏舎に育雛・育成場から成鶏を導入した日付及びロットに関する情報や、盲腸便の検査に関する情報等があり、さらに、日々変化する情報(データ)として、集卵鶏舎番号、集卵日、包装日、集卵個数、出荷個数等の集卵情報がある。
【0026】
また、生産流通情報とは別に、設備の稼働状態を示す情報として、前記鶏舎コンベアや集卵コンベアの稼働時間、GPマシン22の稼働時間、プリンタ25の稼働時間(印字数)等がある。これらの稼働状態に関する情報も、管理システム24や成鶏舎11に設置されたパソコン等により収集され、副記憶手段23あるいは成鶏舎11に設けられた別の記憶手段15に記憶される。
【0027】
前述の集卵個数や出荷個数、集卵手段の鶏舎コンベアや集卵コンベアの稼働時間といった集卵情報は、日々変化する情報ではあるが、通常の稼働状態ならば大きな変化はなく、これらの前日の数値や、適当な期間の数値、例えば1週間前まであるいは10日前まで範囲の平均値と大きな差は生じない。したがって、これらの各情報のように、数値によって比較検証を容易に行える情報を選択して比較検証を行うことにより、当日の稼働状態を確実に確認することができ、データベースセンター31へ送信する情報を、より正確なものとすることができる。
【0028】
集卵情報の比較検証は、例えば、集卵情報として鶏舎コンベア及び集卵コンベアの稼働時間を各稼働日毎に副記憶手段23や記憶手段15に記憶させておき、当日の鶏舎コンベア及び集卵コンベアの各稼働時間と、前日の鶏舎コンベア及び集卵コンベアの各稼働時間、前日から10日前までの鶏舎コンベア及び集卵コンベアの各稼働時間の平均値とをパソコン等を利用した検証手段16で比較させることにより、当日の集卵情報が過去の集卵情報に対して適合する範囲にあるか否かを判定することによって行うことができる。
【0029】
検証手段16での検証結果に問題がなければ、当日の生産流通情報をそのままデータベースセンター31へ送信し、検証結果に問題があるときにのみ送信を一時停止してディスプレイ等に問題がある集卵情報を表示するように設定することもできるが、問題の有無に関係なく、検証手段16で検証した結果をディスプレイ等の確認手段17に表示して検証結果の確認を求めることが好ましい。そして、確認手段17に表示された集卵情報の検証結果を作業者が確認し、キーボード、マウス等の入力手段を使用して「確認」又は「了解」を入力することにより、送信手段18によるデータベースセンター31への生産流通情報の送信を開始するようにする。また、比較検証によって当日の集卵情報に異常が認められたときには、確認手段17に送信を中止する入力を行い、送信中止処理19を行って異常な数値が発生した原因の調査確認処理20を行う。なお、前記検証手段16における集卵情報の検証は、前日の数値や適当な期間の平均値を用いずに、集卵手段の稼働時間や集卵個数の基準値をあらかじめ設定しておき、この基準値と当日に副記憶手段23に記憶した集卵情報とを比較することによって行うことも可能である。
【0030】
データベースセンター31に送信されて主記憶手段32に記憶された生産流通情報は、消費者41がインターネット等の通信回線43を利用し、鶏卵に付されている識別コードを入力してデータベースセンター31に問合せ44を行うと、受信した識別コードに対応した生産流通情報が主記憶手段32から引き出され、データベースセンター31から消費者41に回答45が送信される。これにより、消費者41は、手元の鶏卵に対する生産流通情報を知ることができる。
【0031】
前記確認手段17には、図2に示すような一覧表の状態で検証手段16による検証結果を表示することができる。この一覧表には、比較検証を行った「生産日の日付及び時刻」の表示と、各鶏舎コンベア13a,13b,13c,…,13xに対応したコンベア名称、ここでは、「鶏舎コンベアNo.1」、「鶏舎コンベアNo.2」、「鶏舎コンベアNo.3」、「集卵コンベア」が表示され、各コンベアにおける当日の稼働時間を示す「本日稼働時間」、本日稼働時間を前日の各コンベアの稼働時間と比較した結果を百分率で示す「前日比」、前日から10日前までの各コンベアの稼働時間の平均値と比較した結果を百分率で示す「前10日比」が数値データとして表示されるとともに、「前日比」及び「前10日比」の検証結果が、あらかじめ設定した適合範囲内にあるか否かを判定した「評価」が表示されている。
【0032】
評価の判定基準、即ち適合範囲は、成鶏舎11やGPセンター21の規模等に応じて任意に設定することができるが、例えば、各コンベアの稼働時間では、比較結果が±20%の範囲ならば「正常」と評価し、±21%から30%未満の範囲ならば「注意」と評価し、±30%以上となったときに「異常」の評価するように設定する。したがって、図2の例では、「鶏舎コンベアNo.1」及び「集卵コンベア」は「正常」、「鶏舎コンベアNo.3」は「注意」、「鶏舎コンベアNo.2」は「異常」と評価される。このような評価を行うことにより、検証結果を一目で確認することができ、作業者の負担を軽減できる。また、評価に応じて色分け表示することもできる。
【0033】
ここで、「注意」又は「異常」と評価されたコンベアがあった場合は、その原因を調査確認する。例えば、鶏舎12bに設けられている鶏舎コンベア13b(「鶏舎コンベアNo.2」)の稼働時間がゼロであるから、鶏舎12bの当日の状況を確認し、鶏舎12bの成鶏の入れ替え、鶏舎コンベア13bの保守点検等の理由により、鶏舎コンベア13bをその時点まで停止させていたときには、原因が明らかで納得できることであるから異常な状態ではないと確認できる。「鶏舎コンベアNo.3」の「注意」についても同様な確認作業を行い、原因が明らかで納得できる場合には「確認」又は「了解」(YES)の入力を行って生産流通情報を送信する。
【0034】
このとき、確認手段17に、当日の成鶏の入れ替えやコンベアの保守等、集卵に影響する作業の情報を前記一覧表と同時に表示させることにより、「注意」又は「異常」の評価原因を簡単に知ることができる。また、評価が「注意」の場合で、原因が特定できないときでも、前日までの数値(データ)を参照するなどして、その場で問題がないと判断できたときには、「確認」又は「了解」(YES)を入力して生産流通情報を送信する。さらに、前日に保守を行ったコンベアでは、前日の稼働時間がゼロあるいは短時間であることから、「前日比」だけを比較対象としたときには「異常」と評価されるが、「前10日比」では、10日の内の1日だけがゼロの場合の平均値は約90%の値となることから、「前10日比」での評価は、通常は「正常」となる。逆に、数日間連続して10%ずつ減少するような変化は、「前日比」では「正常」となるが、「前10日比」では「異常」となる。したがって、「前日比」と「前10日比」とを比較対象とすることにより、作業性や信頼性を向上させることができる。なお、「前日比」と「前10日比」とで評価結果が異なったときは、「正常」よりも「注意」又は「異常」を優先させて「評価」欄に表示するように設定することができ、あるいは、「前10日比」の評価結果を優先させて「評価」欄に表示するように設定することもできる。
【0035】
そして、「注意」又は「異常」の評価を受けてその場で原因を明らかにできなかったときには、送信を中止する入力(NO)を行うことにより、誤った情報を含む生産流通情報がデータベースセンター31へ送信されることがなくなる。したがって、データベースセンター31には正確な情報のみが集まることになり、消費者に対して正しい情報を提供することができ、トレーサビリティシステム全体の信頼性を向上させることができる。なお、「注意」又は「異常」の評価を受けた鶏卵に対しては、成鶏舎11やGPセンター21の名称、集卵日といった確実な情報のみをデータベースセンター31に送るようにすればよい。
【0036】
また、確認手段17に表示される集卵手段等の稼働状態を毎日確認して「注意」又は「異常」の原因を調査確認することにより、コンベア等の装置の状態や、各鶏舎内の成鶏の状態等を把握することが可能となり、早めに対応することができるので、例えば、コンベアが突然故障して集卵が不可能になるなどの事故を回避することができ、生産性の向上も図れる。
【0037】
さらに、確認手段17によるこれらの情報の確認作業を毎日行うことにより、情報をチェックするという意識が作業者に生まれるので、より確実に正確な情報をデータベースセンター31へ送信することができる。また、万一、誤った情報が発生したとしても、各集卵日(生産日)の情報を遡って確認することにより、情報の信憑性に関する責任の所在を明らかにすることができる。
【0038】
なお、当日の情報と前日や前10日等の情報との比較は、各鶏舎から集卵した鶏卵の個数や集卵コンベアで搬送した全体の鶏卵の個数に関する集卵個数に関する情報を利用して行うこともでき、選別包装して出荷した鶏卵の出荷個数、品種別の出荷個数、サイズ毎の出荷個数、出荷重量等の情報も前記集卵個数に関する情報に含めて比較検証の対象とすることも可能である。さらに、前記集卵手段の稼働情報及び集卵個数に関する情報の両者を同時に利用して行うこともできる。
【0039】
また、過去の集卵情報としては、前述のような「前日」「前10日」だけでなく、任意に設定することが可能であり、「前々日」や「3日前」等を含めて、複数の日の集卵情報をそれぞれ検証対象として採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一形態例を示す鶏卵のトレーサビリティシステムの説明図である。
【図2】検証手段における比較結果の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
11…成鶏舎、12a,12b,12c,12x…鶏舎、13a,13b,13c,13x…鶏舎コンベア、14a,14b…集卵コンベア、15…記憶手段、16…検証手段、17…確認手段、18…送信手段、19…送信中止処理、20…調査確認処理、21…卵選別包装施設(GPセンター)、22…選別包装機(GPマシン)、23…副記憶手段、24…管理システム、25…プリンタ、31…データベースセンター、32…主記憶手段、41…消費者、42…製品、43…通信回線、44…問合せ、45…回答

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏舎から集卵手段を介して集卵した鶏卵を、選別包装手段により選別包装して出荷するにあたり、出荷する鶏卵に、集卵した鶏舎の情報、集卵した日付に関する情報を含む鶏卵の生産流通情報をコード化した識別コードを添付するとともに、該識別コード及び前記生産流通情報を主記憶手段に送信する送信手段と、該送信手段から送信された前記識別コード及び前記生産流通情報を記憶する主記憶手段とを備え、該主記憶手段に記憶されている前記生産流通情報を、鶏卵に添付された前記識別コードから閲覧可能に構成された鶏卵のトレーサビリティシステムにおいて、前記集卵手段の稼働情報及び集卵個数に関する情報の少なくとも一つを含む集卵情報を記憶する副記憶手段を備え、さらに、前記主記憶手段に前記生産流通情報を送信する前に、前記副記憶手段に記憶された前記集卵情報を検証する検証手段を備えたことを特徴とする鶏卵のトレーサビリティシステム。
【請求項2】
成鶏舎内の複数の鶏舎からそれぞれ鶏卵を集卵する集卵手段と、該集卵手段で集卵した鶏卵を選別包装する選別包装手段と、該選別包装手段で選別包装した鶏卵を出荷するにあたり、出荷する各鶏卵に、集卵した鶏舎の情報、集卵した日付に関する情報を含む鶏卵の生産流通情報をコード化した識別コードを添付する識別コード添付手段と、前記識別コード及び前記生産流通情報を記憶する主記憶手段と、前記識別コード及び前記生産流通情報を前記主記憶手段に送信する送信手段とを備え、前記主記憶手段に記憶されている前記生産流通情報を、各鶏卵に添付された前記識別コードから閲覧可能に構成した鶏卵のトレーサビリティシステムにおいて、前記集卵手段の稼働情報及び集卵個数に関する情報の少なくとも一つを含む集卵情報を記憶する副記憶手段と、前記送信手段から前記主記憶手段に前記生産流通情報を送信する前に、送信する生産流通情報と前記副記憶手段に記憶された過去の集卵情報とを比較検証する検証手段と、該検証手段で検証した結果を表示して検証結果の確認を求める確認手段とを備えたことを特徴とする鶏卵のトレーサビリティシステム。
【請求項3】
前記確認手段は、前記検証結果の表示に加えて、前記鶏舎に設けられている鶏舎コンベアの保守情報、前記鶏舎内の成鶏の情報を含む成鶏舎の状況に関する情報を表示することを特徴とする請求項2記載の鶏卵のトレーサビリティシステム。
【請求項4】
前記検証手段は、当日の集卵情報と、前記副記憶手段に記憶された前日の集卵情報とを比較することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の鶏卵のトレーサビリティシステム。
【請求項5】
前記検証手段は、当日の集卵情報と、前記副記憶手段に記憶された過去のあらかじめ設定した日数範囲における集卵情報の平均とを比較することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の鶏卵のトレーサビリティシステム。
【請求項6】
前記検証手段は、前記集卵情報を検証したときに、該検証結果があらかじめ設定した適合範囲内にあるか否かを評価することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の鶏卵のトレーサビリティシステム。
【請求項7】
前記集卵手段の稼働情報は、前記鶏舎に設けられている鶏舎コンベアの稼働時間、該鶏舎コンベアで搬送された鶏卵を前記選別包装手段に向けて搬送する集卵コンベアの稼働時間を含んでいることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の鶏卵のトレーサビリティシステム。
【請求項8】
前記集卵個数に関する情報は、鶏舎から集卵した鶏卵の個数、選別包装して出荷した鶏卵の出荷個数を含んでいることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の鶏卵のトレーサビリティシステム。
【請求項9】
前記生産流通情報は、
鶏卵を選別、包装、出荷する卵選別包装施設において、卵選別包装施設に鶏卵を導入した成鶏舎に関する情報、選別、包装して出荷した日付、ロット及び個数に関する情報、選別包装機の保守情報を含む卵選別包装施設に関する情報、
前記成鶏舎において、各鶏舎に集卵鶏を導入した育雛・育成場に関する情報、各鶏舎に育雛・育成場から成鶏を導入した日付及びロットに関する情報、盲腸便の検査に関する情報、鶏舎内の埃に関する情報、飼料及び水に関する情報、集卵した鶏舎に関する情報、集卵した日付、ロット及び個数に関する情報を含む成鶏舎に関する情報、
前記育雛・育成場において、初生雛を導入した孵化場に関する情報、孵化場から初生雛を導入した日付及びロットに関する情報、成鶏出荷1週間前の盲腸便の検査に関する情報、鶏舎内の埃に関する情報、飼料及び水に関する情報を含む育雛・育成場に関する情報、
前記孵化場において、種卵を導入した種鶏場に関する情報、種卵を導入した日付及びロットに関する情報、孵化した日付及びロットに関する情報、孵卵器及びハッチャーの保守に関する情報、鑑別時における胎便の検査に関する情報、ワクチン接種に関する情報を含む孵化場に関する情報、
前記種鶏場において、種卵を集卵した日付及びロットに関する情報、種鶏成鶏の盲腸便の検査に関する情報、鶏舎内の埃に関する情報を含む種鶏場に関す情報
を含んでいることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の鶏卵のトレーサビリティシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−18420(P2006−18420A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193693(P2004−193693)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000201641)全国農業協同組合連合会 (69)
【出願人】(597017812)株式会社ナベル (56)