説明

鶏糞肥料ないし堆肥の製造法

【課題】供給過剰のまま処理に困惑している廃棄物の鶏糞を採算の合う良質な農作物の肥料ないし堆肥の形態にして悪臭等を伴うことなく提供する。
【解決手段】発酵鶏糞に米糠を混合し両者を主成分として更に発酵させる。その混合比率は、共に同じ水分含有率として換算したとき、発酵鶏糞1重量部に対し米糠0.5〜3重量部とする。更に粉粒状の炭を全体の5〜50重量%混合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、臭いが少なく植物生育作用に優れた肥料ないし堆肥の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、堆肥ないし有機肥料等を製造するにあたり、蓄糞、食品残渣、人糞汚泥等に多少の調製材を混ぜ、外気温、配合割合、水分含有率等の発酵条件に応じて切り返しを行なうなど、かなり難しい応用技術を要していた。
【0003】
またその際には悪臭、汚水等が発生するため、大掛りな脱臭装置や汚水処理装置が必要となり、しかも得られる製品は依然として悪臭を放ち、或いは一般廃棄物を利用することからその肥料成分組成も不安定なものとなっている。
【0004】
そこで単一廃棄物である鶏糞を好気性発酵させた発酵鶏糞も一部肥料化されているものの、水分含有率が30%以下では発酵が進まなかったり、臭いや衛生上の問題等から廃棄物処理法による制限をクリアーするにはコストがかかりすぎ、事実上、採算が合わないというのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように現状では、原料成分が安定しなかったり発酵が不十分であるために、堆肥ないし肥料の製品としてこれを農作物に使用すると、ガスの発生及び悪臭による苦情、不安定な肥料成分による肥料過多、窒素飢餓、作物の連作生涯等が起こりやすいなどの問題点が残されている。
【0006】
本発明はかかる問題点を解決して、未だ莫大な供給過剰のまま処理に困惑している廃棄物の鶏糞を、良質な農作物の肥料ないし堆肥として悪臭等を伴うことなく採算の合うかたちで提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決のために本発明者は様々な実施試験を重ねた結果、意外にも次のような手段により、所望する理想的な堆肥ないし肥料が複雑かつ高価な材料或いは設備類を要することなく得られることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、普及の妨げになっていた発酵鶏糞に米糠を混合し発酵させると、通常は必要な30%以上の水分が無くてもスムーズに発酵が進み、その際に何ら新たな微生物類を添加する必要もなく、高度に発酵が進んだ良質な堆肥ないし肥料が得られることが判明した。なお米糠以外に特別な新規微生物や混和剤等を用いなくても、両者を主成分とするのみで良好な結果が得られた。
【0009】
その際に特別な装置や特殊技巧を要しないが、混合比率については、共に同じ水分含有率として換算したとき、発酵鶏糞1重量部に対し米糠0.5〜3重量部であることが好ましい。適正な温度や湿度などの条件は在来の常識通りでよい。
【0010】
更に、粉粒状の炭を全体の5重量%以上混合すると脱臭効果が一層強まるとともにその微細空隙が保水力を高め、また発酵微生物の担体にもなるためか、より良好な堆肥ないし肥料になることも判明した。但しその混合比率が50重量%を超えると、物性や経済性等の点で無意味なことになる。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明によれば、現在有効に活用する手段が見出せなくて廃棄物公害源にもなっている鶏糞が臭いを伴うことなく大量に農作物用に使用できることになり、悪臭・汚水の環境汚染を防げるとともに肥料過多、窒素飢餓、作物の連作障害も防止できる。すなわち米糠の中にいる微生物が相関的に繁殖を活発にし、米糠を栄養源として発酵を進めるためと考えられるが、このように米糠を加えることにより、従来の方法では一度発酵させた発酵鶏糞は水分を50〜60%にしないと再度高温発酵しないものが、水分20%以下で外気温が低くても発酵できるようになる。更にこれに炭が加わるとそれが微生物の住処となって最適の環境を整えた堆肥となり、従って植物の根の張りが増し、風水害などで倒れにくく、病気に強い作物を作ることができ、施肥料も抑えられる。更に作物の品質向上や収穫量アップにもつながり、袋詰めなどの段階で臭いの抑制制御ができるため作業性もよく、肥料と堆肥の両方の特性をもった製品が随時得られるなどの効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
等量の発酵鶏糞と米糠を均一によく撹拌し、体積発酵させる。その際、撹拌機、又は耕運機かトラクターで両者をむらなく均一に混ぜるようにする。1〜2日で堆肥物の温度は60〜70℃になり、その後、徐々に温度は下がるので、常温になったところで再度切り返し発酵させる。これを3〜5回繰り返し、土色となり又は米糠の臭いが消えると発酵処理工程が終わるが、その間、堆積した堆肥の上をむしろやこもなどで覆い、堆肥上部の乾燥、外気との接触による温度低下を防ぎ、堆肥を上部までむらなく発酵させるようにする。なお、ブロアー等による強制発酵は最初の数時間に止め、後は微生物によりじっくり発酵させる。
【0013】
更に粒の細かい粉粒状の炭を添加して撹拌機で撹拌・混合する。その際、撹拌しながら臭いの有無を確認して添加量を決める。これを篩分けし、計量・袋詰めして製品化する。
【0014】
このようにして出来上がった製品には米糠と発酵鶏糞のそれぞれの利点と炭による相乗効果により多くの微生物が生存し、土壌中の微生物の働きも継続して活発となり、途中における悪臭・悪水の発生もきわめて少なく、また肥料としても堆肥としても使用できる(炭素窒素比13)ものにすることができた。
【0015】
ちなみにイチゴ栽培において、各4アールの試験区と対称区に定植前に緩効性肥料を施し、9月中旬にイチゴ定植し、10月後半に試験区に上記の炭のない堆肥を約400kg、畝間に入れた。気になる程の臭いは無く、その後マルチをかけたが心配したガスの発生は無く、肥料としての使用も可能であることが判った。その試験区での株のでき方、葉の色、実のなり方が対称区或いは従来よりも良く、いつまでもいきいきとした株で、4月始めに株を引いたところ、対称区と異なり根の張り方が強くて引きにくい程であった。また実はとても甘く、試食者は全て試験区のものを好んだ。
【0016】
また別の試験区および対称区におけるイチゴ栽培では、試験区の方が土が柔らかく、イチゴの葉が大きく、苗に勢いがあり、花が咲いて結実した実はL〜LLサイズ中心で対称区より1ランクアップし、甘味もあり試食者に好評であった。
【0017】
その他、ほうれん草畑において堆肥として使用を試みたところ、例年になくよい出来であった。また白菜、キュウリ、トマト、ナスでも作物は美味しく感じられ収量も十分であった。特に葉物野菜ではよく出来た。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の鶏糞肥料ないし堆肥化の方法は、特に不安定で希少な微生物又は材料や複雑かつ高コストな設備装置等を必要とせず、廃棄物の有効利用が臭い等の二次弊害を伴うことなく極めて現実的に実現できるものであるから、産業上の利用可能性は十分にあるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵鶏糞に米糠を混合し両者を主成分として更に発酵させることを特徴とする鶏糞肥料ないし堆肥の製造法。
【請求項2】
上記発酵鶏糞と米糠の混合比率が、共に同じ水分含有率として換算したとき、発酵鶏糞1重量部に対し米糠0.5〜3重量部である請求項1記載の鶏糞肥料ないし堆肥の製造法。
【請求項3】
更に粉粒状の炭を全体の5〜50重量%混合させる請求項1又は請求項2記載の鶏糞肥料ないし堆肥の製造法。

【公開番号】特開2007−269618(P2007−269618A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122664(P2006−122664)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(506143377)有限会社光玉朋園 (1)
【Fターム(参考)】