説明

黒白ハロゲン化銀感光材料

【課題】経時による感度低下を抑制し、かつ鮮鋭度を、効率的に向上させることのできる黒白ハロゲン化銀感光材料を提供すること。
【解決手段】少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層と、少なくとも1層の非感光性層とを支持体の同一の面上に有するハロゲン化銀感光材料であって、該非感光性層がカーボン粒子を35mg/m以上含有し、かつ、該カーボン粒子を含む非感光性層が、全てのハロゲン化銀乳剤層よりも支持体に近い側に位置する、黒白ハロゲン化銀感光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は黒白ハロゲン化銀感光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
黒白ハロゲン化銀感光材料(以下、単に「感光材料」とも呼ぶ)は、使用時に通常可視光によって露光され、画像を記録するものである。この際の感光材料の重要な性能のひとつが鮮鋭度である。鮮鋭度は感光材料中の光の拡散によって大きく損なわれる。この感光材料中の光の拡散には大きく分けて次の二つがある。ひとつは感光材料に含まれる層の境界における反射による長距離の拡散でありハレーションと呼ばれる。もうひとつは感光層中のハロゲン化銀粒子やオイル分散物等による散乱でイラジエーションと呼ばれる。
これらを防止するために、感光材料中にアンチハレーション層(AH層)が設けられたり、染料が使用されたりする。
イラジエーションを防止するためには、感光層中に染料を添加することが効果的であるが、感光層中の染料はハロゲン化銀粒子の感光性に影響を与えたり、フィルターとなってハロゲン化銀粒子の光吸収を低下させたりするため、使用が制限される。
また、反射光を吸収するためにアンチハレーション層に染料を含有させることが一般的だが、アンチハレーション層に染料を固定する場合には、固体分散型の染料を用いたり、オイル中に色素を分散させたりする。前者の場合には、固体分散物の一部が溶解して、感光層に移動し、ハロゲン化銀乳剤の感度に影響を与えるという問題が有った。また、後者の場合には、色素の安定なオイル分散物を調製するために、多くの労力が必要であった。
更に、これらの技術を用いた場合は、アンチハレーション層の影響により、湿度の高い環境で一定期間保存した後の感度が、保存前の感度に対して低下するという問題があった。
アンチハレーション層を感光材料の感光層とは反対側の支持体面に設けることも可能であるが、ハレーション防止機能は、感光層と同じ側に設けた場合に比較して、大きく損なわれる。
また、支持体材料、例えばポリエチレンテレフタレートやトリエチルセルロースに染料を混入した、いわゆる着色支持体を用いて、ハレーション防止することも可能で、一部の感光材料では用いられているが、開発には多くの時間とコストが必要である。
なお、特許文献1には、5〜30mg/mの分散したカーボン粒子を含む感光材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−99069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような状況から、安価で感光層中のハロゲン化銀乳剤の性能に影響を与えないハレーション防止技術が望まれていた。
また、特許文献1に記載の感光材料では、感光性層中や感光性層よりも光源に近い側に、カーボン粒子が位置するために、感度が損なわれ、充分なハレーション防止効果が得られないことがわかった。
本発明の目的は、ハロゲン化銀感光材料の経時による感度低下を抑制し、かつ鮮鋭度を、効率的に向上させる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は以下の手段により達成することができる。
[1]
少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層と、少なくとも1層の非感光性層とを支持体の同一の面上に有する黒白ハロゲン化銀感光材料であって、
該非感光性層がカーボン粒子を35mg/m以上含有し、かつ、
該カーボン粒子を含む非感光性層が、全てのハロゲン化銀乳剤層よりも支持体に近い側に位置する、黒白ハロゲン化銀感光材料。
[2]
前記ハロゲン化銀乳剤層に含まれるハロゲン化銀粒子の平均球相当径が0.25μm以下である、上記[1]に記載の黒白ハロゲン化銀感光材料。
[3]
前記ハロゲン化銀乳剤層に含まれるハロゲン化銀粒子の形状が立方体である、上記[1]又は[2]に記載の黒白ハロゲン化銀感光材料。
[4]
前記非感光性層が、更に固体分散染料を含む、上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の黒白ハロゲン化銀感光材料。
[5]
前記カーボン粒子を含む非感光性層としてアンチハレーション層を有する、上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の黒白ハロゲン化銀感光材料。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、経時による感度低下を抑制し、かつ鮮鋭度を、効率的に向上させることができるハロゲン化銀感光材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のハロゲン化銀感光材料は、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層と、少なくとも1層の非感光性層とを支持体の同一の面上に有する黒白ハロゲン化銀感光材料であって、該非感光性層が35mg/m以上のカーボン粒子を含有し、かつ、該カーボン粒子を含む非感光性層が、全てのハロゲン化銀乳剤層よりも支持体に近い側に位置する。カーボン粒子は種々の層に含有させることができるが、全て前記非感光性層に含有させることが好ましい。該非感光性層のカーボン粒子の濃度は0.5重量%以上6重量%以下が好ましく、特に好ましくは、0.8重量%以上3重量%以下である。また、該非感光性層の厚みは好ましくは0.2μm以上10μm以下であり、特に好ましくは1μm以上5μm以下である。該非感光性層は下記、アンチハレーション層であることが好ましい。
【0008】
非感光性層とは感光性を有さない層であり、例えばアンチハレーション層、保護層が挙げられる。
<アンチハレーション層>
本発明でいうアンチハレーション層とは、該ハロゲン化銀乳剤層の感光域に吸収波長を有している親水性コロイド層をいい、透過型支持体のハロゲン化銀乳剤層に対して反対側に位置する場合と、透過型、反射型支持体に拘わらず該ハロゲン化銀乳剤層と支持体の中間に位置する場合とを含む。
アンチハレーション層に用いる染料は、ハロゲン化銀写真感光材料のアンチハレーション染料として用いられる公知の染料を用いることができ、特に限定はないが、固体分散染料を用いることが特に好ましい。
本発明のハロゲン化銀感光材料は、全てのハロゲン化銀乳剤層よりも支持体に近い側に位置する非感光性層を少なくとも1層有するが、好ましくは2層以上有する場合であり、少なくともアンチハレーション層と保護層を支持体上のハロゲン化銀乳剤層と同じ側に有することが好ましい。
本発明のハロゲン化銀感光材料において、支持体の同一面上に、アンチハレーション層とハロゲン化銀乳剤層が塗布される場合には、アンチハレーション層はハロゲン化銀乳剤層よりも支持体に近い側に塗布されることが好ましい。1つのアンチハレーション層の厚みは好ましくは0.2μm以上10μm以下であり、特に好ましくは1μm以上5μm以下である。
【0009】
<カーボン粒子>
カーボン粒子の粒子サイズ(球相当直径)は、濃度、分散性等の性能に影響を与える。本発明においてはカーボン粒子の粒子サイズは特に限定はないが、好ましくは10nmから500nmであり、特に好ましくは30nmから100nmである。
また、カーボン粒子は、前述のサイズの粒子が凝集体を形成しても良い。
カーボン粒子の表面には親水性となるためのカルボキシル基や水酸基が存在することが好ましい。
カーボン粒子としては市販の粒子を使用することができる。例えば、三菱化学製、MA220(平均1次粒子径55nm:水分散物)、230(平均1次粒子径30nm:水分散物)、あるいは東海カーボン製トーカブラック等が挙げられる。これらのカーボン粒子は水分散物として用いることもできるが、ゼラチン水溶液に分散して用いるのが好ましい。
【0010】
本発明のハロゲン化銀感光材料は、高湿経時での感度低下抑制の観点から、非感光性層(より好ましくはアンチハレーション層)にカーボン粒子を35mg/m以上含有する。好ましくは非感光性層にカーボン粒子を50mg/m以上含有する。また、ハロゲン化銀感光材料で得られる像のミニマム濃度の観点から、100mg/m以下であることが好ましい。
【0011】
<固体分散染料>
アンチハレーションを抑え、ハロゲン化銀感光材料で得られる像の鮮鋭度を高める観点から、本発明のハロゲン化銀感光材料は、全てのハロゲン化銀乳剤層よりも支持体に近い側に位置する前記カーボン粒子を含有する非感光性層又は前記カーボン粒子を含有する非感光性層に隣接する非感光性層に、更に固体分散染料を含有することが好ましい。特に、前記カーボン粒子を含有する非感光性層と同じ層に固体分散染料を含有することが好ましい。固体分散染料については、特開昭56−12639号公報、同55−155350号公報、同55−155351号公報、同63−27838号公報、同63−197943号公報、欧州特許第15,601号等にも開示されている。
【0012】
固体分散染料とは、ハレーション防止、イラジエーション防止、セーフライト安全性向上、表裏判別性向上などの目的で、ハロゲン化銀乳剤層及び/又はその他の親水性コロイド層に含有させるもので、この染料は下記のような条件を満足することが必要である。
(1) 使用目的に応じた適正な分光吸収を有すること。
(2) 写真化学的に不活性であること。すなわちハロゲン化銀写真乳剤層の性能に化学的な意味での悪影響、たとえば感度の低下、潜像退行、又はカブリなどを与えないこと。
(3) 写真処理過程において脱色されるか、又は処理液中若しくは水洗水中に溶出して、処理後の写真感光材料上に有害な着色を残さないこと。
(4) 染着された層から他の層への拡散しないこと。
(5) 溶液中あるいは写真材料中での経時安定性に優れ変退色しないこと。
これらの条件を満たす染料としては、特開昭56−12639、同55−155350、同55−155351、同63−27838、同63−197943、欧州特許第15,601、同274,723、同276,566、同299,435、世界特許(WO)88/04794、特開平2−264936、特開平4−14035等記載の固体分散された染料を用いることができる。
【0013】
次に本発明に用いられる染料の具体例を挙げる。
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
本発明に用いられる染料は国際公開WO88/04794号、ヨーロッパ特許公開EP0274723A1号、同276,566号、同299,435 号、特開昭52−92716号、同55−155350号、同55−155351号、同61−205934号、同48−68623号、米国特許2527583号、同3486897号、同3746539号、同3933798号、同4130429号、同4040841号、特開平3−7931号、同2−282244号、同3−167546号等に記載された方法及びその方法に準じて容易に合成することができる。本発明における微結晶分散状とは染料自体の溶解度が不足であるため、目的とする着色層中に分子状態で存在することができず、実質的に層中の拡散が不可能なサイズの固体として存在する。調製方法については国際公開(WO)88/04794、ヨーロッパ特許公開(EP)0276566A1、特開昭63−197943等に記載されているが、ボールミル粉砕し、界面活性剤とゼラチンにより安定化するのが一般的である。
【0019】
本発明分散体中の染料は、平均粒径が0.1μmから0.6μmの範囲にあり、粒子サイズ分布の変動係数が50%以下の微細な固体として存在する。ここで特に好ましくは平均粒径が0.1〜0.5μmの範囲の染料であり、更に好ましくは平均粒径0.1〜0.5μmで変動係数が35%以下の染料分散体である。変動係数は投影面積を円近似したときの直径で表した分布において、標準偏差(S)を平均直径(d)で除した値(S/d)で表される。染料の使用量としては、5mg/m2〜300mg/m2、特に10mg/m2〜150mg/m2であることが好ましい。染料の分散固体をフィルター染料又はアンチハレーション染料として使用するときは、効果のある任意の量を使用できるが、光学濃度が0.05ないし3.5の範囲になるように使用するのが好ましい。添加時期は塗布される前のいかなる工程でも良い。
【0020】
本発明の方法を適用することのできる感光材料は、支持体上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層が設けられている。典型的な例としては、支持体上に、アンチハレーション層、ハロゲン化銀乳剤層、保護層を順に有するハロゲン化銀写真感光材料であって、アンチハレーション層にカーボン粒子と、固体分散染料を含有している。
本発明の黒白ハロゲン化銀感光材料のハロゲン化銀乳剤層に用いるハロゲン化銀乳剤について説明する。
<ハロゲン化銀乳剤>
ハロゲン化銀乳剤はオルソ乳剤、パンクロ乳剤、赤外線用乳剤、X線その他の不可視光記録用乳剤等を用いることが出来る。本発明を映画用サウンド記録材料として用いる場合には、各サウンド記録システムの露光波長に対応した波長域に十分な感度を持つように分光増感された乳剤を用いることが好ましい。
ハロゲン化銀乳剤で使用するハロゲン化銀粒子について詳細に説明する。
本発明の粒子は均一な構造であっても、コア部とコア部を取り囲むシェル部から構成される、いわゆるコア/シェル構造であってもよい。コア部は90%以上が臭化銀であることが好ましい。コア部はハロゲン組成の異なる二つ以上の部分からなっていてもよい。シェル部は全粒子体積の50%以下であることが好ましく、20%以下であることが特に好ましい。沃化銀を含有する場合には、よりも多くのヨウ化物がシェル部(最表層)に含有されるのが好ましい。シェル部のヨウ化銀含有量は0.1モル%から10モル%であることが好ましく、0.2モル%から6モル%であることが特に好ましい。ヨウ化銀の全粒子中の含有量は6モル%以下が好ましく、2モル%以下が特に好ましい。
【0021】
本発明のハロゲン化銀平板粒子は平均粒子サイズ(球相当直径)は鮮鋭度向上の観点から好ましくは0.25μm以下であり、特に好ましくは0.1μm〜0.25μmである。本発明においては、上記粒子サイズを小サイズ化することと、前記カーボン粒子を用いることで、高画質化(鮮鋭度向上)と高湿経時での減感防止を両立することができる。
本発明のハロゲン化銀粒子の粒子サイズ分布は、多分散でも単分散でもよいが、単分散であることがより好ましい。
本発明のハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されないが、鮮鋭度、色素吸着、形態安定性の観点から立方体であることが好ましい。
【0022】
本発明のハロゲン化銀粒子には周期律表VIII族金属、即ちオスミウム、イリジウム、ロジウム、白金、ルテニウム、パラジウム、コバルト、ニッケル、鉄から選ばれた金属のイオン又はその錯イオンを単独又は組み合わせて用いることができる。更にこれらの金属は、複数種用いてもよい。
上記金属イオン提供化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に分散媒になるゼラチン水溶液中、ハロゲン化物水溶液中、銀塩数位溶液中、又はその他の水溶液中に添加するか、あるいは予め、金属イオンを含有せしめたハロゲン化銀微粒子の形でハロゲン化銀乳剤に添加し、この乳剤を溶解させる等の手段によって本発明のハロゲン化銀粒子に含有せしめることができる。また、金属イオンを該粒子中に含有せしめるには、粒子形成前、粒子形成、粒子形成直後のいずれかで行うことができるが、この添加時期は、金属イオンを粒子のどの位置にどれだけの量含有させるかによって変えることができる。
【0023】
本発明のハロゲン化銀粒子には、用いる金属イオンの提供化合物のうち50モル%以上、好ましくは80モル%以上が、より好ましくは100%がハロゲン化銀粒子表面から粒子体積の50%以下に相当するまでの表面層に局在しているのが好ましい。この表面層の体積は好ましくは30%以下である。金属イオンを表面層に局在させることは、内部感度の上昇を抑制し、高感度を得るのに有利である。こうしたハロゲン化銀粒子の表面層に集中させて金属イオン提供化合物を含有せしめるには、例えば表面層を、表面層以外の部分のハロゲン化銀粒子(コア)を形成した後、表面層を形成するための水溶性銀塩溶液とハロゲン化物水溶液の添加にあわせて金属イオン提供化合物を供給することで行うことができる。
【0024】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、第VIII族金属以外に、その乳剤粒子形成若しくは物理熟成の過程において種々の多価金属イオン不純物を導入することができる。これらの化合物の添加量は目的に応じて広範囲にわたるが、ハロゲン化銀1モルに対して、10−9〜10−2モルが好ましい。
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、通常化学増感される。化学増感法としてはいわゆる金化合物による金増感法(例えば米国特許第2,448,060号、同3,320,069号)、イリジウム、白金、ロジウム、パラジウム等の金属による増感法(例えば米国特許第2,448,060号、同2,566,245号、同2,566,263号)、含硫黄化合物を用いる硫黄増感法(例えば米国特許第2,222,264号)、セレン化合物を用いるセレン増感、テルル化合物を用いるテルル増感あるいは錫塩類、二酸化チオ尿素、ポリアミン等による還元増感法(例えば米国特許第2,487,850号、同2,518,698号、同2,521,925号)がある。これらの増感法は単独若しくは併用して用いることができる。
【0025】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、当業界で知られる金増感を施したものであることが好ましい。金増感を施すことにより、レーザー光等によって走査露光したときの写真性能の変動を更に小さくすることができるからである。金増感を施すには、塩化金酸若しくはその塩、チオシアン酸金塩類、チオ硫酸金類等の化合物を用いることができる。これらの化合物の添加量は場合に応じて変わるが、ハロゲン化銀1モルあたり5×10−7〜5×10−2モル、好ましくは1×10−6〜1×10−3モルである。これらの化合物の添加時期は、本発明に用いる化学増感が終了するまでに行われる。
本発明においては、金増感を他の増感法、例えば硫黄増感、セレン増感、テルル増感、還元増感あるいは金化合物以外を用いた貴金属増感と組み合わせることも好ましく行われる。
【0026】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止するあるいは写真性能を安定化させる目的で種々の化合物あるいはそれらの前駆体を添加することができる。これらの化合物の具体例は特開昭62−215272号の第39頁〜第72頁に記載のものが好ましく用いられる。本発明に用いる乳剤は、潜像が主として粒子表面に形成される、いわゆる表面潜像型乳剤が好ましい。
【0027】
1層のハロゲン化銀乳剤層の厚みは、好ましくは0.5μm以上5μm以下であり、特に好ましくは1μm以上3μm以下である。
ハロゲン化銀乳剤層の数は1層でも良いが、1層以上10層以下が好ましく、特に1層以上3層以下が好ましい。また、1層に含まれる銀量は0.5g/m2以上10 g/m2以下が好ましく、特に1g/m2以上5g/m2以下が好ましい。
本発明の感光材料の塗布銀量は、鮮鋭度を良化させるなどのため、0.5g/m2以上8.0g/m2以下が好ましく、1.0g/m2以上5.0g/m2以下が更に好ましく、1.5g/m2以上3.0g/m2以下が最も好ましい。
【0028】
<保護層>
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、支持体上に設けられた上記乳剤層の上に保護層を設けることが好ましい。また、支持体の裏側(乳剤層を持たない側)にバック層を有していても良い。上記ハロゲン化銀写真感光材料が、バック層、支持体、アンチハレーション層、乳剤層、中間層、紫外線吸収層及び保護層からなる構成を取っても良い。これらの層に、色素又は染料を使用する場合、本発明のメチン化合物を使用することが、脱色が容易であることから好ましい。
【0029】
本発明で用いられるハロゲン化銀写真乳剤には、保護コロイドとしてゼラチンのほかにフタル化ゼラチンやマロン化ゼラチンのようなアシル化ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロースや、カルボキシメチルセルロースのようなセルロース化合物;テキストリンのような可溶性でんぷん;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドやポリスチレンスルホン酸のような親水性ポリマー;寸度安定化のための可塑剤;ラテックスポリマーやマット剤を加えることができる。
【0030】
<支持体>
本発明のハロゲン化銀感光材料の支持体としては、透明であることが好ましい。支持体としては、ポリエステルフィルムが好適であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。又、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートも好ましい。前記ポリエステルフィルムは、逐次二軸延伸前、同時二軸延伸前、一軸延伸後で再延伸前、あるいは二軸延伸後のいずれであってもよい。
【0031】
中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、安定性、強靭さなどの点で、2軸延伸、熱固定されたポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0032】
ポリエステル支持体の厚さとしては、特に制限はなく、15〜500μmが一般的であり、中でも、取扱性、汎用性などの点で、40〜200μmが好ましい。また、基体は、透明性を維持し得る範囲で、染料化ケイ素、アルミナゾル、クロム塩、ジルコニウム塩などを含有していてもよい。
【0033】
また、基体面に対して下塗層を強固に接着させる目的で、予め、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸処理等の表面活性処理を施しておくことが好ましい。
【0034】
写真像を得るための露光は通常の方法を用いて行えば良い。すなわち、自然光(日光)、タングステン電灯、水銀灯、キセノンアーク灯、炭素アーク灯、キセノンフラッシュ灯、レーザー、LED、CRTなどの公知の光源をいずれでも用いることができる。露光時間は通常カメラで用いられる1/1000秒から1秒の露光時間はもちろん、1/1000秒より短い露光、例えばキセノン蛍光灯を用いた1〜104 〜1/108 秒の露光を用いることもできるし、1秒より長い露光を用いることもできる。必要に応じて色フィルターで露光にもちいられる光の分光組成を調節することができる。露光にレーザー光を用いることもできる。また電子線、X線、γ線、α線などによって励起された蛍光体から放出する光によって露光されてもよい。好ましくは、1/5秒から1秒の間のタングステン光源である。
【0035】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、映画用のサウンド記録用ネガフィルム、映画字幕作成用ネガフィルムとして、特に好ましい。本発明のハロゲン化銀写真感光材料の露光方法に特に限定はないが、好ましくは、現像処理済みの本発明ハロゲン化銀写真感光材料・画像情報の入ったインターミディエイト感光材料とを2枚重ねて、映画用ポジ感光材料に密着露光することが好ましい。具体的に露光する際に使用するプリンターとしては、Bell & Howell社製C型プリンターを用いてタングステン光源で露光する方法などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0036】
本発明の感光材料の写真処理には、例えば、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)176号第28〜30頁(RD−17643)に記載されているような公知の方法を利用することができ、その処理液には公知のものを用いることができる。また、処理温度は通常、18℃から50℃の間に設定されるが、18℃より低い温度又は50℃を超える温度としてもよい。本発明の感光材料の写真処理には、銀画像を形成する現像処理(黒白写真処理)を用いることが好ましい。
【0037】
黒白現像液には、ジヒドロキシベンゼン類(例えばハイドロキノン)、3−ピラゾリドン類(例えば1−フェニル−3−ピラゾリドン)、アミノフェノール類(例えばN−メチル−p−アミノフェノール)等の公知の現像主薬を単独或は組み合わせて用いることができる。
【0038】
この他L.F.A.メソン著「フォトグラフィック・プロセシン・ケミストリー」、フォーカル・プレス刊(1966年)の226〜229頁、米国特許第2,193,015号、同2,592,364号、特開昭48−64933号公報などに記載のものを用いてもよい。現像液はその他、アルカリ金属の亜硫酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、及びリン酸塩の如きpH緩衝剤、臭化物、及び有機カブリ防止剤の如き現像抑制剤ないし、カブリ防止剤などを含むことができる。又必要に応じて、硬水軟化剤、ヒドロキシルアミンの如き保恒剤、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールの如き有機溶剤、ポリエチレングリコール、四級アンモニウム塩、アミン類の如き現像促進剤、ナトリウムポロンハイドライドの如きかぶらせ剤、1−フェニル−3−ピラゾリドンの如き補助現像薬、粘性付与剤、米国特許第4,083,723号に記載のポリカルボン酸系キレート剤、西独公開(OLS)2,622,950号に記載の酸化防止剤などを含んでもよい。
【0039】
これら現像処理の中でも、「H-24 Processing Modules for Motion Picture Films」の中にある 「Processing KODAK Motion Picture Films, Module 15、Processing Black-and-White Films」記載の処理が最も好ましい。
【0040】
本発明の感光材料に用いられる各種添加剤、現像処理方法等に関しては、特に制限は無く、例えば下記箇所に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【実施例】
【0044】
以下に実施例をあげ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
<実施例1>
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
65℃に保たれた表4の1液に、2液と3液を攪拌しながら同時に7分間かけて添加し、続いて10%臭化カリウム水溶液10.5cc、1N水酸化ナトリウム水溶液6.5cc及び0.05%1−アミノ−イミノスルフィン酸10ccを添加した。この後、表4の4液、5液を、pAgを7.15になるようにコントロールしながら34分間添加した。また、4液及び5液添加開始から29分後に0.1%エチルチオスルフォン酸ナトリウム18cc、31分後に0.001%6塩化イリジウム18ccを加えた。更に、1N硫酸11cc、10%ゼラチン水溶液を400g加えた。最終的に平均球相当直径0.23μm、平均沃度含量2モル%の単分散立方体沃臭化銀乳剤を得た(球相当直径の変動係数8%)。
その後、フロキュレーション法によって水洗し、ゼラチンとフェノキシエタノール9.6gを加えた後、35℃でpHを6.2に調整した。次に、塩化金酸とチオシアン酸カリウム、続いてチオ硫酸ナトリウム、増感剤1を添加し、68℃で最適感度となる様に化学増感を行った。更に塗布後の感度変動が最小になるように、化合物1を添加し、沃臭化銀立方体乳剤1(平均球相当直径0.23μm、平均沃度含量2モル%の単分散立方体沃臭化銀乳剤、球相当直径の変動係数8%)を得た。
【0046】
【表4】

【0047】
【化4】

【0048】
<実施例2>
粒子形成の温度65℃を70℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてハロゲン化銀粒子を形成し、平均球相当直径0.28μm、平均沃度含量2モル%の単分散立方体沃臭化銀乳剤2を得た(球相当直径の変動係数8%)。
【0049】
<実施例3>
感光材料試料1の作成
第1層塗布液(AH層)調製
ゼラチン 2.0g/m
固体分散染料1 表5又は6に記載
カーボン粒子(三菱化学社製MA220) 表5又は6に記載
油溶性染料1 20mg/m
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム 12mg/m
染料1 7mg/m
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 13mg/m
リン酸 4.5mg/m
プロキセル(アーチケミカル製) 9mg/m
【0050】
【化5】

【0051】
第2層(感光層)の塗布液調製
沃臭化銀立方体乳剤1 27.5g/m
ゼラチン 0.5g/m
増感色素1 7.4mg/m
増感色素2 3.6mg/m
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム 97mg/m
4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラアザインデン
114mg/m
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 29mg/m
リン酸 90mg/m
KBr 23mg/m
更に、硬膜剤として2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタンを207mg/mとなるよう加えた。
【0052】
【化6】

【0053】
第3層(保護層)の塗布液調製
ゼラチン 0.5mg/m
化合物−2 2mg/m
化合物−3 1mg/m
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 2mg/m
コロイダルシリカ 88mg/m
化合物−4 2mg/m
L−アスコルビン酸 20mg/m
1,5−ジヒドロキシ−2−ベンズアルドキシム 5mg/m
酢酸ナトリウム 100mg/m
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム 15mg/m
硫酸ストロンチウム 30mg/m
化合物−5 17mg/m
化合物−6 6mg/m
流動パラフィン(関東化学) 40mg/m
プロキセル(アーチケミカル製) 2mg/m
【0054】
【化7】

【0055】
下塗りを施したポリエチレンテレフタレート支持体(エスター支持体)上に、第1層から第3層の液の同時塗布、乾燥を行い、感光材料試料1を作製した。なお、第1層が基材側となるように塗布した。こうして試料1〜7を作成した。
更に、第2層の沃臭化銀立方体乳剤1を表5に示す乳剤に変更した以外は、感光材料試料1と同様に感光材料試料8〜11を作製した。
【0056】
(写真性の評価)
(露光)
キセノンランプ及びグリーンフィルター(中心波長540nm、半値幅59nm)を用いて1/8000秒間露光した。
【0057】
(現像処理;コダックD97処理)
上記のような露光を施した試料に下記処理工程及び処理液によって現像処理を施した。
<工程>
工程名 処理温度(℃) 処理時間(秒) 補充量(ml)
(35mm×30.48m当たり)
1.現像 21.0±0.1 210 650
2.水洗 21 50 1200
3.定着 21 360 600
4.水洗 21 600 1200
5.乾燥
【0058】
<処理液>
1リットル当たりの組成を示す。
工程名 薬品名 タンク液 補充液
現像
富士フイルム(株)製モノール 0.5g 0.7g
亜硫酸ナトリウム 40.0g 70.0g
富士フイルム(株)製ハイドロキノン 3.0g 11.0g
炭酸ナトリウム 20.0g 20.0g
臭化ナトリウム 1.75g 1.30g
水酸化ナトリウム −− 2.0g
定着
チオ硫酸ナトリウム 153.0g 153.0g
亜硫酸ナトリウム 15.0g 15.0g
酢酸(28%) 48.0ml 48.0ml
ホウ酸 7.5g 7.5g
カリミョウバン 15.0g 15.0g
【0059】
処理の終了した試料を、富士フイルム(株)社製TCD型濃度測定装置を用いて反射濃度を測定した。感度はカブリ濃度よりも1.0高い発色濃度を与えるのに必要な露光量の逆数とし、試料1の感度を100とした場合の相対値で表した。
【0060】
(鮮鋭度の評価)
鮮鋭度はMTFにより評価した。試料を、MTF測定パターンを用いてキセノンランプで1/10秒露光し、前述の現像処理を行った。MTFは400×2μm2のアパーチャーで測定し、空間周波数20サイクル/mmのMTF値を用いて、光学濃度が1.0の部分にて評価した。
【0061】
(経時安定性の評価)
試料を、暗所で、40℃、80%RHの条件で3日間保存(経時)した後、前記写真性の測定を行い、経時前の感度を100とした場合の相対値で、経時安定性を評価した。結果を表5に示す。
【0062】
【表5】

【0063】
表5の結果より、本発明に係る感光材料は、鮮鋭度改良効果を示すと同時に、同じ鮮鋭度を示す試料において、固体分散染料を用いた場合よりも、高い湿度で経時されても感度変動(減感)が少ないことがわかった。
【0064】
また、カーボン粒子の効果のハロゲン化銀粒子サイズ依存性とカーボン粒子塗布位置依存性を調べて、表6に示した。表6の試料では鮮鋭度がほぼ等しくなるようにカーボン粒子あるいは染料を塗布した。
【0065】
【表6】

【0066】
表6の結果より、高い湿度で経時された場合の感度変動(高湿減感)は、特に、鮮鋭性に優れる小サイズのハロゲン化銀粒子を用いた場合に大きいが、本発明に係るカーボン粒子層を有する感光材料は、小サイズでも減感が少なく、本発明のカーボン粒子層による、高湿減感改良効果は少サイズ粒子で大きいことがわかった。結果として、高い鮮鋭度と安定した感度を両立できた。更に、カーボン粒子を感光層に用いた場合に比較して、非感光層である第1層(AH層)に用いた場合に高湿経時減感の効果が大きいことがわかった。また、経時前感度はカーボン粒子を感光層にもちいた場合に、大きく損なわれた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層と、少なくとも1層の非感光性層とを支持体の同一の面上に有する黒白ハロゲン化銀感光材料であって、
該非感光性層がカーボン粒子を35mg/m以上含有し、かつ、
該カーボン粒子を含む非感光性層が、全てのハロゲン化銀乳剤層よりも支持体に近い側に位置する、黒白ハロゲン化銀感光材料。
【請求項2】
前記ハロゲン化銀乳剤層に含まれるハロゲン化銀粒子の平均球相当径が0.25μm以下である、請求項1に記載の黒白ハロゲン化銀感光材料。
【請求項3】
前記ハロゲン化銀乳剤層に含まれるハロゲン化銀粒子の形状が立方体である、請求項1又は2に記載の黒白ハロゲン化銀感光材料。
【請求項4】
前記非感光性層が、更に固体分散染料を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の黒白ハロゲン化銀感光材料。
【請求項5】
前記カーボン粒子を含む非感光性層としてアンチハレーション層を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の黒白ハロゲン化銀感光材料。