説明

1−ヒドロペルオキシ−16−オキサビシクロ[10.4.0]ヘキサデカンの調製方法

【課題】1−ヒドロペルオキシ−16−オキサビシクロ[10.4.0]ヘキサデカン(DDP−OOH)の調製方法を提供する。
【解決手段】1−ヒドロペルオキシ−16−オキサビシクロ[10.4.0]ヘキサデカン(DDP−OOH)の調製方法であって、13−オキサビシクロ[10.4.0]ヘキサデカ−1(12)−エン(DDP)及び過酸化水素を、強酸の存在下で希釈剤中で反応させ、
前記希釈剤が4.5以上のpKa値を有し、かつ
前記強酸が1.5以下のpKa値を有しており、
反応生起後に、該強酸が少なくとも0.9モル当量の塩基で中和されることを特徴とする方法、が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、13−オキサビシクロ[10.4.0]ヘキサデカ−1(12)−エン(DDP)から出発する1−ヒドロペルオキシ−16−オキサビシクロ[10.4.0]ヘキサデカン(DDPヒドロペルオキシド、DDP−OOH)の調製方法、及びこの方法で調製されたDDP−OOHからの11(12)−ペンタデセン−15−オリドの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物11−ペンタデセン−15−オリド、12−ペンタデセン−15−オリド及びこれらの混合物(11(12)−ペンタデセン−15−オリド)が知られており、ジャコウ香料として重要である。特定の(E)型、(Z)型及びこれらの混合物のいずれもが、香りの点で興味がある。EP−A 424 787は、これらの物質の香りの特性について述べている。同様にジャコウ香料として使用される、15−ペンタデカノリド(15−ヒドロキシペンタデカン酸ラクトン)は、水素化によって11(12)−ペンタデセン−15−オリドから得られることが同様に広く知られている。
【0003】
11(12)−ペンタデセン−15−オリドの調製は、有利には、13−オキサビシクロ[10.4.0]ヘキサデカ−1(12)−エン(DDP)から出発して進む。1−ヒドロペルオキシ−16−オキサビシクロ[10.4.0]ヘキサデカン(DDPヒドロペルオキシド、DDP−OOH)は、DDPへの過酸化水素の酸触媒付加によって得られる。DDP−OOHの大環状環型への開裂は、該11(12)−ペンタデセン−15−オリドを与える合成における第二の処理として考えられる。この開裂は、通常、触媒、例えばCu(OAc)2、適切な場合にはFeSO4の存在下で行われる。この反応段階を単に加熱の方法により行うと、該反応生成物は飽和化合物である15−ペンタデカノリドの相当な量を含むこととなり、該15−ペンタデカノリドは確かにジャコウの香りではあるが、11(12)−ペンタデセン−15−オリドとは異なる香りの特性を有しており、従って可能な限り最小量のみが形成されるべきである。さらに、残留物の高い形成(例えば、蒸留底の生成物)は、単なる加熱の方法により行う開裂の不利な点である。
【0004】
DDPは、2−(3−ヒドロキシプロピル)−1−シクロドデカノン(OCP)を、水の脱離を伴った、酸触媒による環化によって通常得られ、該OCPは次いで、シクロドデカノンへのアリルアルコールのフリーラジカル付加によって合成できる(例えば DE−OS 2 136 496)。
11(12)−ペンタデセン−15−オリドの調製方法は、以下の式によって図式化することができる:

【0005】
EP−A 424 787では、OCPは室温で4.6当量の氷酢酸中で均一化され、冷やした25%質量濃度の硫酸水性溶液(OCPに基づいて、約51モル%(約21質量%))が添加され、反応混合物がその後0℃まで冷やされた。その後、1.65モル当量のH22(70%質量濃度溶液)が添加され、温度が7℃まで上昇した。短い後反応時間の後、該形成された固形分(DDP−OOH)が濾取され、これを水及び水性NaHCO3溶液で洗浄し、乾燥した;収率は80%であった。
DDP−OOHの開裂は、1部のDDP−OOHをメタノール中のCu(OAc)2の飽和溶液(DDP−OOHに基づいて、約94モル%のCu(OAc)2及び12.3質量部のメタノールから調製された;この量のメタノールにおけるDDP−OOHの濃度は、約0.25モル/リットルであった)に導入することにより行われた。2部のFeSO4(いずれの場合も、DDP−OOHに基づいて、ちょうど約20モル%である)の添加、及び室温で一晩攪拌することが続いて行われた。後処理のために、該混合物は飽和NaCl水性溶液へ添加され、ジイソプロピルエーテルで抽出され、該抽出物はNaHCO3の飽和水性溶液及びNaClの飽和水性溶液で洗浄された。乾燥及び分別蒸留の後、8%の15−ペンタデカノリドを含有した11(12)−ペンタデセン−15−オリドの理論値の73%が得られた。
【0006】
Russ.Chem.Bull.1998,47,1166−1169では、DDPは、最初に、0℃にて、5.2当量の氷酢酸に導入され、50%質量濃度の硫酸水性溶液(DDPに基づいて約26モル%(=11質量%))及び30%質量濃度の過酸化水素(約1.89モル当量)の混合物が添加された。短い後反応時間の後、該形成された固形分(DDP−OOH)を濾取し、該固形分は50%濃度の酢酸溶液(DDPに基づいて80質量%)で洗浄され、その後、数回の水洗(いずれの場合においてもDDPに基づいて、2質量部の水による4回の洗浄操作)が、洗浄液が中性になるまで行われた。該固形分を乾燥後、96%の純度を有するDDP−OOHの理論値の85%が得られた。
DDP−OOHの開裂は、1部のDDP−OOH懸濁液及び約3.8質量部の4−メチルペンタン−2−オン(MIBK)を、約3.8質量部のMIBK(DDP−OOHに基づいて)中のCu(OAc)2の沸騰溶液に、相対的に長時間にわたって秤量して加えることにより行われた。Cu(OAc)2の量は、DDP−OOHに基づいて0.15から7.0モル%の範囲で変化させ、著者によると最適量は5モル%Cu(OAc)2であった。沸点での3時間の後反応時間の後、該反応混合物は冷却され、沈殿した銅塩が取り除かれた。該濾過液は、熱水(いずれの場合でもDDP−OOHに基づいて7.7当量の水による2回の洗浄操作)で洗浄され、濃縮された。5モル%のCu(OAc)2を用いて、理論値の96.5%の11(12)−ペンタデセン−15−オリドの粗収率が得られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP−A 424 787
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Russ.Chem.Bull.1998,47,1166−1169
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの方法の不利な点は、特に、DDP−OOHの開裂の反応条件下における、元素銅及び/又は不溶性銅化合物の沈殿除去、及び該反応で使用される試薬及び補助物質の量が大量となることである。さらに言及すべき不利な点は、例えば、いくつかの場合には多数の高価な処理工程及び不満足な空間/時間収率である。DDP−OOH結晶の洗浄は、いくつかの場合では洗浄水が中性になるまで行われ、高価で環境に優しくないばかりか、続いて起こるフラグメント化の段階にとってDDP−OOHにおける酸の残留を回避すべきであることが明確になっている。高価なだけでなく、安全上の問題が存在するDDPヒドロペルオキシドの分離は、ヒドロペルオキシドが高い潜在的な危険性を有していることから、特に不利な点である。
このために、公知の合成方法は、工業的な反応に適していない。11(12)−ペンタデセン−15−オリドを簡単かつ安価な方法で提供する工業的な方法は、それ故に、大きな経済的関心事である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、前述の不利な点を克服し、工業的に好ましい方法を提供することが可能である。本発明に従った方法は、工業スケールの使用に特に適している。
本発明は、1−ヒドロペルオキシ−16−オキサビシクロ[10.4.0]ヘキサデカン(DDP−OOH)の調製方法を提供し、該方法において:
13−オキサビシクロ[10.4.0]ヘキサデカ−1(12)−エン(DDP)及び過酸化水素を強酸の存在下に希釈剤中で反応させ、
前記希釈剤が4.5以上のpKa値を有しており、
前記強酸が1.5以下のpKa値を有しており、
反応生起後、つまり典型的には、過酸化水素の添加が完了し及び続いて起こるいかなる後反応時間の後に、該強酸を少なくとも0.9モル当量の塩基で中和する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
該pKa値は、25℃(298K)における水中での酸度定数Kaの負の常用対数を意味するものとして理解されている:pKa=−log10Ka。pKa値は、酸の強度の指標である。
1.0以下のpKa値を有する強酸が有利であり、鉱酸及び直鎖状又は分枝状のフッ素化されたカルボン酸が、本発明では好ましい。
好ましい鉱酸は、硝酸、塩酸、過塩素酸及び硫酸であり、硫酸が特に好ましい。50−98%質量濃度の硫酸が、本発明では有利である。
【0012】
本発明の趣旨において有利なフッ素化されたカルボン酸は、直鎖状又は分枝状のカルボン酸であり、2から6の炭素原子を含み、少なくとも一つのフッ素原子を含みかつ1.5以下のpKa値を有しているものである。1.0以下のpKa値を有する、高度にフッ素化をされたカルボン酸又は過フッ素化された酸が好ましい。高度にフッ素化をされたカルボン酸においては、C−H結合の水素原子の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%がフッ素原子で置換される。過フッ素化された酸は、好ましくは、トリフルオロ酢酸、ペルフルオロプロピオン酸、ペルフルオロ酪酸、ペルフルオロ吉草酸及びペルフルオロヘキサン酸である。トリフルオロ酢酸が特に好ましい。
加えて、他の強酸、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸も当然に使用することができる。強酸の混合物を使用することもできる。
強酸の好ましい量は、DDPに基づいて、0.1から10モル%の範囲であり、特に好ましくは0.5から5モル%の範囲である。
【0013】
極性プロトン希釈剤及び極性非プロトン希釈剤が、DDP−OOHの調製に特に適した希釈剤であり、該希釈剤は有利には、25℃で液状である。極性プロトン希釈剤が好ましい。
有利には、希釈剤は4.5以上かつ26以下の範囲のpKa値を有している。好ましい希釈剤は4.5以上かつ18以下の範囲のpKa値を有しており、特に好ましくは4.5以上かつ10以下の範囲のpKa値を有している。
本発明に従う希釈剤の混合物を使用することも可能である。
有機酸、特に炭素原子を2から6有する直鎖状若しくは分枝状の有機酸又は炭素原子を2から6有する有機酸の混合物が好ましい。酢酸、プロピオン酸又は酢酸とプロピオン酸の混合物が特に好ましい希釈剤である。
【0014】
希釈剤に対するDDPの質量割合として、本発明に従って好ましいのは、1:1から1:8の範囲であり、好ましくは1:2から1:4の範囲である。
有利には、希釈剤に加えて、反応媒体は水を付加的に含む。水に対するDDPの質量割合として、本発明に従って好ましいのは、10:1から1:1の範囲であり、より好ましくは5:1から2:1の範囲である。
【0015】
11(12)−ペンタデセン−15−オリドを与えるフラグメント化の段階で該DDP−OOHが使用される前に、本発明に従って、該強酸は少なくとも0.9モル当量の塩基で好ましくは完全に中和される。溶液として使用できる有機塩基又は無機塩基を、該中和に使用することができる。アルカリ金属水酸化物類、アルカリ土類金属水酸化物類、アルカリ金属カーボネート類、アルカリ土類金属カーボネート類及び炭素原子を1から6有する直鎖状又は分枝状の有機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が特に好ましい。
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属アセタート及びアルカリ金属プロピオナートが特に好ましい。好ましいアルカリ金属の代表例は、ナトリウムとカリウムである。
塩基の好ましい量は、強酸に基づいて、少なくとも1.0モル当量であり、該量は1.0から2.5モル当量の範囲が特に好ましく、1.005から1.5モル当量の範囲がさらに好ましい。複数の塩基の混合物も使用できる。
【0016】
含有量が変化する過酸化水素を、DDPに対するH22の添加に使用して、DDP−OOHを与えることができる。10から70%質量濃度の水性過酸化水素が典型的に用いられ、30から55%質量濃度が好ましく、30%質量濃度及び50%質量濃度の水性H22がさらに好ましい。
22の好ましい量は、DDPに基づいて、0.9から2モル当量であり、特に好ましくは1.2から1.6モル当量である。
22の添加を行う温度範囲は、好ましくは−20から+20℃であり、より好ましくは−10から+10℃である。温度範囲は、使用する希釈剤に従って専門家により当然に選択され、かつ最適化できる。+20℃以上の温度は避けることが好ましく、なぜならば、形成されたDDP−OOHは高い温度において安定性を欠き、温度の上昇に従ってますます分解するためである。
【0017】
EP−A 424 787に従う場合と同様に、DDP−OOHを調製するための出発物質として、OCPを用いることができる。環化してDDPを与える間に水が形成されるため、これに従って水の量を減らすことが有利である。
本発明に従う方法で調製されたDDP−OOHを、有利にはさらなる後処理や分離を行うことなく、換言すれば粗製の反応混合物の形で、フラグメント化の段階に導入して11(12)−ペンタデセン−15−オリドを与える。粗製のDDP−OOH反応混合物は、典型的には懸濁の形状で得られる。先行技術の観点において、DDP−OOHの分離処理工程及び/又は中性になるまでの洗浄が必要ないという事実は、特に驚くべきである。
【0018】
本発明はさらに、11(12)−ペンタデセン−15−オリドの調製方法を提供し、該方法においては、上述した本発明に従う方法により得られた反応混合物が、DDP−OOHを分離することなく使用される。
Cu(I)又はCu(II)化合物は、該反応混合物に含まれるDDP−OOHのフラグメント化のために有利に使用される。
この状況において、11(12)−ペンタデセン−15−オリドを与えるDDP−OOHのフラグメント化において使用されるCu(I)又はCu(II)化合物は、この工程において有利には、DDP−OOHの反応の反応条件下において、使用される高沸点希釈剤に対してある程度まで溶解できるものである。そのような銅化合物は、20℃の希釈剤中で、高沸点希釈剤1kg当たり少なくとも0.5g、好ましくは少なくとも1gの溶解性を有する。該銅化合物は、無水物の形態、又は水和物(結晶水)として使用できる。該結晶水中の水の量は臨界的ではない。
【0019】
Cu(II)化合物が有利であり、有機基を有するものが好ましい。Cu(II)2,4−ペンタンジオネート誘導体類に加えて、Cu(II)カルボキシレート類が、本発明においては特に適している。好ましいCu(II)2,4−ペンタンジオネート類は、Cu(II)アセチルアセトナート、Cu(II)1,1,1−トリフルオロアセチルアセトナート及び[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)]−Cu(II)である。炭素原子を2から5有するアルキルカルボン酸のCu(II)カルボキシレート類が、特にはCu(II)アセタート及びCu(II)プロピオナートが特に好ましい。
一以上の銅化合物が本発明に従って使用できる。11(12)−ペンタデセン−15−オリドを与えるDDP−OOHの反応において本発明に従って有利な銅化合物の量は、DDP−OOHに基づいて0.05から4モル%、好ましくは0.1から2.5モル%、特に好ましくは0.1から1.5モル%、さらに好ましくは0.3から1.5モル%、最も好ましくは0.5から1.5モル%である。
【0020】
11(12)−ペンタデセン−15−オリドを与えるDDP−OOHの反応にとって好ましい高沸点希釈剤は極性であってかつ高沸点を有し、そのため該希釈剤はフラグメント化反応の間反応器の中に残る。そのため高沸点希釈剤の沸点は、DDP−OOHを形成するための反応段階で使用される希釈剤の沸点、希釈剤及び水の共沸混合物及び生成物、すなわち、11(12)−ペンタデセン−15−オリドの沸点より高い。そのため、500Pa(5mbar)の圧力下で170℃以上の沸点を有する高沸点希釈剤が好ましい。
【0021】
ある種の高沸点希釈剤が、開裂の間に、銅及び/又は不溶性の銅化合物の沈殿を抑制することがさらに見出された。この点で、11(12)−ペンタデセン−15−オリドを与えるDDP−OOHの反応は、以下の式で表現できる高沸点希釈剤の存在下において好ましく行われる:
HX−[A]−YH
式中、X及びYは、相互に独立に、O又はN−Rを意味し、Rは炭素原子を1から10有する有機基又はHであり、かつ
Aは炭素原子を100まで有する有機基である。
Aは好ましくは炭素原子を50まで含み、特に好ましくは10から30の炭素原子を含む。基Rは、好ましくは1から4の炭素原子を含み、Rは好ましくはメチル又はエチルである。500Pa(5mbar)の圧力下で170℃以上の沸点を有する高沸点希釈剤が本発明では好ましい。
【0022】
該有機基Aは好ましくはヘテロ原子O又はNを含み、より好ましくはヒドロキシル基、エーテル基又はアミノ基の形態で含み、エーテル基及び二級アミノ基がさらに好ましい。
一以上の有機基群であって、相互に独立に直鎖状、分枝状、環状、複素環状、芳香環状又は複素環式芳香族状であることができ、ヘテロ原子を含む好ましい基がO又はNを有する基であるものが、該基Aの炭素骨格に結合できる。
有利には、高沸点希釈剤は、α,ω−ジオール類及びα,ω−アミノアルコール類である。
特に有利な態様において、ヘテロ原子として酸素だけを含む高沸点希釈剤が使用される。これらα,ω−ジオール類は、該有機基Aの炭素骨格において、好ましくは少なくとも2つの酸素原子を、より好ましくはエーテル基の形態で含む。
【0023】
ポリアルキレングリコール類、特にはポリエチレングリコール類(PEG)、ポリプロピレングリコール類又はポリテトラメチレングリコール類(ポリテトラヒドロフラン類)であって、500Pa(5mbar)の圧力下で少なくとも170℃の沸点を有するものが、特に好ましい高沸点希釈剤である。該ポリアルキレングリコール類は、高い分子量での多分散系であり、分子量の幅、例えば、PEG1000では典型的には、950から1,050の分子量の幅を有する。ポリエチレングリコール類が特に好ましい。PEG400からPEG1500が特に好ましく、ここでは順にPEG400、PEG600、PEG800及びPEG1000である。これらの製品は、商業的に入手可能である。
一以上の高沸点希釈剤を本発明に従って使用できる。11(12)−ペンタデセン−15−オリドを与えるDDP−OOHの反応において本発明に従って有利である高沸点希釈剤の量は、DDP−OOHに基づいて、5から100質量%、好ましくは10から70質量%、特に好ましくは15から60質量%、さらに好ましくは20から50質量%である。
【0024】
開裂が行われる温度範囲は、有利には70から120℃の範囲である。該開裂は、好ましくは85から110℃、より好ましくは90から100℃の範囲の温度で行われる。
DDP−OOHのフラグメント化が行われる有利な圧力範囲は、1Pa(0.01mbar)から200,000Pa(2bar)である。該方法は、101,300Pa(1,013mbar)より低い圧力で好ましく行われ、特に好ましくは5,000Pa(50mbar)から80,000Pa(800mbar)の範囲で行われる。
該フラグメント化は、銅化合物と高沸点希釈剤の混合物に、DDP−OOHの懸濁液を滴下して添加することにより有利に行われる。
【0025】
廃棄物の低い量が、本方法のさらなる有利な点である。本方法では廃水が全く生成せず、DDP−OOHの調製に用いた溶媒は、蒸留の後に再度本方法に用いることができる。
これは、環境面及び経済面から特に有利である。
11(12)−ペンタデセン−15−オリド(種々の異性体の合計)の理論値の約87%の11(12)−ペンタデセン−15−オリドの分離した収率が、本発明に従った方法によって達成できる。加えて、約1−2%のペンタデカン−15−オリド及び再度本方法で使用することができる5−7%のDDPが典型的に得られる。
【実施例】
【0026】
(例)
(実験の一般的な構成)
実験は、二重壁の攪拌反応器中で行われ、該反応器はクライオスタット又はサーモスタットによる温度制御がなされた。ヒドロペルオキシドの調製が生起した反応器の底の出口は、ホースポンプを経由してフラグメント化反応器の秤量ラインに接続された。
【0027】
(例1)
633g(2.85モル)のDDP、1,800gのプロピオン酸、180gの水及び15gのトリフルオロ酢酸が、第一の反応器に一緒にされ、−10℃に冷却される。265gの50%質量濃度の過酸化水素の水性溶液が−10から+10℃で滴下して添加される。1時間の後反応時間が続き、その間にヒドロペルオキシドが結晶化する。その後、53gの10%質量濃度の水酸化ナトリウム溶液を添加する。
形成された懸濁液を3時間のうちにフラグメント化反応器に移し、該フラグメント化反応器には、200gのポリジオール400及び4gの銅(II)アセタート一水和物が最初に90℃で導入されている。ここでプロピオン酸/水の混合液が蒸留される。
この方法で得られた粗生成物は、30cmの充填塔で蒸留後、665gの蒸留物を与え、該蒸留物は89質量%の11(12)−ペンタデセン−15−オリド(種々の異性体の合計;該異性体は、約40%、27%及び22%の量まで存在する)、2質量%のペンタデカン−15−オリド及び5質量%のDDPを含有する。これは、11(12)−ペンタデセン−15−オリド(異性体の合計)の理論値で87%の収率に相当する。
【0028】
(例2)
633g(2.85モル)のDDP、1,800gのプロピオン酸、180gの水及び15gのトリフルオロ酢酸が第一の反応器に一緒にされ、−10℃に冷却される。245gの50%質量濃度の過酸化水素の水性溶液を、−10から+10℃で滴下して加える。
1時間の後反応時間が続き、その間にDDP−OOHが結晶化する。その後、65gの23%質量濃度のプロピオン酸ナトリウム溶液を添加する。
形成された懸濁液を、3時間のうちにフラグメント化反応器に移し、該フラグメント化反応器には、200gのポリジオール400及び4gの銅(II)アセタート一水和物が最初に90℃で導入されている。ここでプロピオン酸/水の混合液が蒸留される。
この方法で得られた粗生成物は、30cmの充填塔で蒸留後、662gの蒸留物を与え、該蒸留物は81質量%の11(12)−ペンタデセン−15−オリド(種々の異性体の合計)、1質量%のペンタデカン−15−オリド及び7質量%のDDPを含有している。
これは、11(12)−ペンタデセン−15−オリド(種々の異性体の合計;該異性体群は、約40%、27%及び22%の量までで存在する)の理論値で80%の収率に相当する。
【0029】
(例3)
633g(2.85モル)のDDP、1,800gのプロピオン酸、180gの水及び6.6gの濃硫酸(96%濃度)が第一の反応器に一緒にされ、−10℃に冷却される。
245gの50%質量濃度の過酸化水素の水性溶液を、−10から+10℃で滴下して加える。1時間の後反応時間が続き、その間にヒドロペルオキシドが結晶化する。その後、63gの10%質量濃度の水酸化ナトリウム水溶液を添加する。
形成された懸濁液を、3時間のうちにフラグメント化反応器に移し、該フラグメント化反応器には、200gのポリジオール400及び4gの銅(II)アセタート一水和物が最初に90℃で導入されている。ここでプロピオン酸/水の混合液が蒸留される。
この方法で得られた粗生成物は、30cmの充填塔で蒸留後、663gの蒸留物を与え、該蒸留物は88質量%の11(12)−ペンタデセン−15−オリド(種々の異性体の合計)、1質量%のペンタデカン−15−オリド及び3質量%のDDPを含有している。
これは、11(12)−ペンタデセン−15−オリド(種々の異性体の合計;該異性体は、約40%、27%及び22%の量まで存在する)の理論値で86%の収率に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−ヒドロペルオキシ−16−オキサビシクロ[10.4.0]ヘキサデカン(DDP−OOH)から11(12)−ペンタデセン−15−オリドを調製する方法であって、反応混合物をDDP-OOHの分離をせずに使用し、前記反応混合物が以下の工程:

13−オキサビシクロ[10.4.0]ヘキサデカ−1(12)−エン(DDP)及び過酸化水素を、強酸の存在下で希釈剤中で反応させる工程であって、前記希釈剤が4.5以上のpKa値を有し、かつ前記強酸が1.5以下のpKa値を有し、反応生起後に、該強酸が少なくとも0.9モル当量の塩基で中和される前記工程、

により得られることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
11(12)−ペンタデセン−15−オリドを与えるDDP−OOHの反応が、銅化合物及び高沸点希釈剤の存在下で行われ、該銅化合物が20℃における高沸点希釈剤中で、該高沸点希釈剤1kg当たり少なくとも0.5gの溶解性を有していることを特徴とする、請求項1に記載する方法。
【請求項3】
該高沸点希釈剤が、500Pa(5mbar)の圧力下で少なくとも170℃の沸点を有することを特徴とする、請求項2に記載する方法。
【請求項4】
該高沸点希釈剤が以下の式の一以上の化合物から選択されることを特徴とする、請求項3に記載する方法:
HX−[A]−YH
式中、X及びYは相互に独立に、O又はN−Rを意味し、Rは炭素原子を1から10有する有機基又はHであり、及び
Aは100までの炭素原子を有する有機基である。

【公開番号】特開2011−105762(P2011−105762A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33022(P2011−33022)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【分割の表示】特願2006−534756(P2006−534756)の分割
【原出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(503236223)シムライズ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンジツト・ゲゼルシヤフト (51)
【Fターム(参考)】