説明

1成分現像剤用磁性トナー

【課題】良好な濃度の画像を形成でき、低温低湿環境における層乱れの発生を抑制できる、1成分現像剤用磁性トナーを提供すること。
【解決手段】1成分現像剤用磁性トナーを、ポリエステル樹脂中に、少なくとも、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料と、ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料と、磁性粉とを含み、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料のポリエステル樹脂中での平均分散径が0.2〜4μmであるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1成分現像剤用磁性トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真法又は静電記録法等においては、光導電性感光体又は誘電体等よりなる潜像担持体上にコロナ帯電等により帯電せしめた感光体上にレーザー、LED等により露光し形成された静電潜像をトナー等の現像剤を用い、可視化して又は静電潜像を反転現像により可視化して高品質な画像を得ている。一般にこれらの現像法に適用するトナーとしてはバインダーとしての熱可塑性樹脂に着色剤や帯電制御剤としての染料、顔料や離型剤を混合して混練、粉砕、分級を行い平均粒径5〜10μmのトナー粒子としたものが用いられる。そして、一般的にはトナーに流動性を付与したり、トナーの帯電制御を行ったり、記録媒体に転写されずに感光体上に残留したトナーのクリーニング性を向上させたりするためにシリカや酸化チタン等の無機微粉末、無機金属微粉末が添加される。
【0003】
現在、実用化されている種々の静電複写方式における乾式現像法としては、トナー及び鉄粉等のキャリアを用いる2成分現像方式と、キャリアを用いずトナー内部に磁性粉を含有するトナーを用いる磁性1成分現像方式が知られている。
【0004】
磁性1成分現像方式において用いられる磁性粉を含有するトナー(以下磁性トナーともいう)は、低コストであり耐久性に優れるというメリットがあるが、磁性粉がカーボンブラック等の着色剤に比べて着色力が弱いため、好適な画像濃度を有する画像を形成しにくいという欠点がある。
【0005】
磁性トナーに関するかかる欠点を解消するために、例えば、結着樹脂と磁性粉とを主成分とし、4級アンモニウム塩と、金属含有率が2.0重量%以上でありかつ融点が110℃〜145℃である脂肪酸金属塩と、ニグロシン染料とが添加された、1成分現像剤として使用される正帯電性磁性トナーが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平02−135368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のトナーのようにニグロシン染料が添加された1成分現像剤用の磁性トナーでは、ニグロシン染料が結着樹脂と相溶状態で結着樹脂中に分散する場合、良好な帯電性を得にくいため良好な画像を形成しにくい。一方、ニグロシン染料が結着樹脂中で凝集して分散する場合、結着樹脂がニグロシン染料によって十分に着色されないことと、磁性粉の着色力が弱いこととから、良好な濃度の画像を得にくい。
【0008】
また、定着性に優れることや、トナーに含まれる成分が結着樹脂中に均一に分散されやすいことから、結着樹脂としてポリエステル樹脂が使用されることが多い。しかし、結着樹脂がポリエステル樹脂であるニグロシン染料を含む磁性トナーでは、ニグロシン染料が結着樹脂中に凝集して分散し、トナー表面に正帯電性のサイトが形成された場合、ポリエステル樹脂が負帯電性であるため、低温低湿環境でトナー同士が電気的に凝集しやすい。このため、かかるトナーでは、低温低湿環境において、現像スリーブ上に形成されるトナー薄層の厚さの乱れ(層乱れ)が生じやすく、層乱れに伴う画像不良が発生しやすい問題がある。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、良好な濃度の画像を形成でき、低温低湿環境における層乱れの発生を抑制できる、1成分現像剤用磁性トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ポリエステル樹脂中に、少なくとも、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料と、ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料と、磁性粉とを含み、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料のポリエステル樹脂中での平均分散径が0.2〜4μmである1成分現像剤用磁性トナーにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
(1) ポリエステル樹脂中に、少なくとも、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料と、ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料と、磁性粉とを含み、
前記ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料の前記ポリエステル樹脂中での平均分散径が0.2〜4μmである、1成分現像剤用磁性トナー。
【0012】
(2) 前記ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料のゲルパーミーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が305〜535であり、前記ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が212以下である、(1)記載の1成分現像剤用磁性トナー。
【0013】
(3) 前記ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料の含有量が、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部である、(1)、又は(2)記載の1成分現像剤用磁性トナー。
【0014】
(4) 前記ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料の含有量が、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部である、(1)〜(3)何れか記載の1成分現像剤用磁性トナー。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、良好な濃度の画像を形成でき、低温低湿環境における層乱れの発生を抑制できる、1成分現像剤用磁性トナーを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0017】
本発明の1成分現像剤用磁性トナーは、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用い、ポリエステル樹脂中に、少なくともポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料と、ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料と、磁性粉とを含み、所望により、ポリエステル樹脂中に離型剤、ニグロシン染料以外の着色剤、ニグロシン染料以外の電荷制御剤等の任意の成分を含む。また、本発明のトナーは、その表面に外添剤が付着したものであってもよい。以下、本発明の1成分現像剤用磁性トナーの必須、又は任意の成分である、結着樹脂、ニグロシン染料、磁性粉、離型剤、ニグロシン染料以外の着色剤、ニグロシン染料以外の電荷制御剤、及び外添剤と、1成分現像剤用磁性トナーの製造方法とについて順に説明する。
【0018】
〔結着樹脂〕
本発明の1成分現像剤用磁性トナーは結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる。結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合、トナーに含まれる成分が結着樹脂中に均一に分散されやすい。また、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合、帯電性、及び用紙に対する定着性に優れるトナーを得やすい。ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合や共縮重合によって得られるものを使用できる。ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のアルコール成分やカルボン酸成分が挙げられる。
【0019】
アルコール成分としては2価又は3価以上のアルコールを使用できる。2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上のアルコール類が挙げられる。
【0020】
カルボン酸成分としては2価又は3価以上のカルボン酸を使用できる。2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、あるいはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキル又はアルケニルコハク酸等の2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の3価以上のカルボン酸等が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
【0021】
ポリエステル樹脂の軟化点は、80〜150℃が好ましく、90〜140℃がより好ましい。
【0022】
〔ニグロシン染料〕
本発明の1成分現像剤用磁性トナーは、トナーの着色と、トナーの帯電量の制御の目的でニグロシン染料を必須に含む。トナーに含有させるニグロシン染料の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、例えば、ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物や、ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料を用いることができる。
【0023】
ニグロシン染料を合成する場合、合成方法は特に限定されない。ニグロシン染料は、例えば、アニリン、アニリン塩酸塩等のアニリン化合物と、ニトロベンゼン、ニトロフェノール、ニトロクレゾール等のニトロベンゼン化合物とを、塩酸と鉄や塩化鉄との混合物、塩化鉄等の存在下に加熱して縮合させることにより製造できる。
【0024】
本発明では、結着樹脂であるポリエステル樹脂と非相溶であるニグロシン染料と、ポリエステル樹脂に相溶であるニグロシン染料とを併用する。ニグロシン染料がポリエステル樹脂に相溶であるか否かは、下記の方法に従い、結着樹脂として用いるポリエステル樹脂中でのニグロシン染料の分散状態を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することにより判別できる。
【0025】
<ニグロシン染料の相溶性の確認方法>
ポリエステル樹脂100質量部に対してニグロシン染料3質量部を添加し、ヘンシェルミキサー等の混合機により撹拌・混合した後、得られた混合物を2軸押出機により、シリンダー温度を、ポリエステル樹脂の融点より40℃低い温度〜ポリエステル樹脂の融点の範囲に設定して溶融混練する。相溶性確認用の試料として、ウルトラミクロトームにより得られた溶融混練物の厚さ200nmの薄片を調製する。得られた試料にカーボンを蒸着した後、透過型電子顕微鏡にて、倍率3000倍〜30000倍にて試料を観察し、ポリエステル樹脂中のニグロシン染料の分散粒子の有無を目視により確認する。ニグロシン染料の分散粒子が観察される場合、使用したニグロシン染料はポリエステル樹脂と非相溶であり、ニグロシン染料の分散粒子が観察されない場合、使用したニグロシン染料はポリエステル樹脂と相溶である。
【0026】
上記のニグロシン染料の相溶性の確認方法において用いる装置は、所定の工程を実施できる限り特に限定されない。例えば、2軸押出機としては、TEM−26SS(東芝機械株式会社製)を用いることができ、ウルトラミクロトームとしては、例えば、EM UC6(ライカ社製)を使用でき、透過型電子顕微鏡としては、例えば、JSM−7600F(日本電子株式会社製)を用いることができる。
【0027】
上記の温度条件でポリエステル樹脂とニグロシン染料とを溶融混練する場合、ポリエステル樹脂とポリエステル樹脂に相溶なニグロシン染料とが十分に混練されるため、ポリエステル樹脂に相溶なニグロシン染料であれば、倍率3000倍〜30000倍でTEM観察する場合にニグロシン染料の粒子が観察できない程度にポリエステル中に均一に分散される。
【0028】
また、本発明のトナーは、結着樹脂であるポリエステル樹脂中でのポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料の平均分散径が0.2〜4μmである。結着樹脂中のポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料の平均分散径をかかる範囲とすることで、良好な濃度で画像を形成できるトナーを得やすい。トナー中のニグロシン染料の平均分散径は、以下の方法により測定することができる。
【0029】
<トナー中のニグロシン染料の平均分散径の測定方法>
ニグロシン染料を含むトナーを、テクノビット2000LC(株式会社マルトー製)等の樹脂に包埋する。トナーを含む樹脂塊から、電子顕微鏡観察用の試料として、ウルトラミクロトーム(EM UC6(ライカ社製))により厚さ200nmの薄片を調製する。得られる試料にカーボンを蒸着した後、倍率3000倍〜30000倍にて透過型電子顕微鏡にて試料を観察する。透過型電子顕微鏡での観察により得られた画像を、WinROOF(三谷商事株式会社製)等の画像解析ソフトウェアを用いて解析して、トナーにおける結着樹脂中のニグロシン染料の平均分散径を測定する。なお、透過型電子顕微鏡写真において、ニグロシン染料と磁性粉とは識別可能である。また、トナーに、ニグロシン染料、及び磁性粉以外に、粒子状の物質が含まれる場合も、EDX(エネルギー分散型X線分光法)等の方法により、観察される粒子の種類を識別可能である。
【0030】
ニグロシン染料の平均分散径は、通常、ニグロシン染料の分子量に依存し、ニグロシン染料の分子量が大きいほど平均分散径も大きくなる。このため、ニグロシン染料の分子量を調整することにより、平均分散径を調整することが出来る。ニグロシン染料の分子量を調整する方法は特に限定されないが、例えば、ニグロシン染料を合成する際の反応時間を延長することにより分子量を大きくすることができる。具体的には、加熱されたアニリン化合物に、ニトロベンゼン化合物を少量ずつ添加してニグロシン染料を合成する場合、ニトロベンゼンの添加時間を調整することにより得られるニグロシン染料の分子量を調整できる。
【0031】
ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料は、ゲルパーミーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が305〜535であるのが好ましい。ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料の重量平均分子量がかかる範囲である場合、ポリエステル樹脂中のニグロシン染料の平均分散径を所望の範囲に調整しやすい。
【0032】
また、ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が212以下であるのが好ましい。ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料の重量平均分子量がかかる範囲である場合、ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料がポリエステル樹脂中に良好に分散しやすく、画像濃度の良好なトナーを得やすい。
【0033】
ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料の使用量と、ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料の使用量とは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料の使用量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましく、ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料の使用量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜2質量部がより好ましい。
【0034】
ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料の使用量と、ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料の使用量の比率は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料の使用量が、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料100質量部に対して、1〜300質量部であるのが好ましく、10〜100質量部であるのがより好ましい。
【0035】
〔磁性粉〕
本発明の1成分現像剤用磁性トナーは、磁性トナーであるため、結着樹脂中に磁性粉を必須に含有する。結着樹脂中に配合される磁性粉の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。好適な磁性粉の例としては、フェライト、マグネタイト等の鉄;コバルト、ニッケル等の強磁性金属;鉄、及び/又は強磁性金属を含む合金;鉄、及び/又は強磁性金属を含む化合物;熱処理等の強磁性化処理を施された強磁性合金;二酸化クロムが挙げられる。
【0036】
磁性粉の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されない。具体的な磁性粉の粒子径は、0.1〜1.0μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。かかる範囲の粒子径の磁性粉を用いる場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させやすい。
【0037】
磁性粉は、結着樹脂中での分散性を改良する目的等で、チタン系カップリング剤やシラン系カップリング剤等の表面処理剤により表面処理されたものを使用できる。
【0038】
磁性粉の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な磁性粉の使用量は、トナー全量を100質量部とした場合に、35〜60質量部が好ましく、40〜60質量部がより好ましい。磁性粉の使用量が過多である場合、長期間にわたり印刷する場合に画像濃度が低下しやすかったり、定着性が極度に低下したりする場合がある。磁性粉の使用量が過少である場合、かぶりが発生しやすかったり、長期間にわたり印刷する場合に画像濃度が低下しやすかったりする場合がある。
【0039】
〔離型剤〕
1成分現像剤用磁性トナーは、定着性や耐オフセット性を向上させる目的で、離型剤を含んでいてもよい。トナーに添加する離型剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。離型剤としてはワックスが好ましく、ワックスの例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックス等が挙げられる。これらのワックスは2種以上を組み合わせて使用できる。かかる離型剤をトナーに添加することにより、オフセットや像スミアリング(画像をこすった際の画像周囲の汚れ)の発生をより効率的に抑制することができる。
【0040】
離型剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜5質量部が好ましい。離型剤の使用量が過少である場合、オフセットや像スミアリングの発生の抑制について所望の効果が得られない場合があり、離型剤の使用量が過多である場合、トナー同士の融着によって保存安定性が低下する場合がある。
【0041】
〔電荷制御剤〕
本発明の1成分現像剤用磁性トナーは、本発明の目的を阻害しない範囲で、トナーの帯電性を調整する目的で、ニグロシン染料以外の正帯電性の電荷制御剤を含んでいてもよい。
【0042】
ニグロシン染料と共に使用できる正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディーブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0043】
4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂もニグロシン染料と共に正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するポリスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0044】
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂において、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0045】
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
【0046】
ニグロシン染料以外の正帯電性の電荷制御剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。ニグロシン染料以外の正帯電性の電荷制御剤の使用量は、典型的には、ニグロシン染料100質量部に対して、1〜500質量部が好ましく、10〜300質量部がより好ましい。
【0047】
〔着色剤〕
本発明の1成分現像剤用磁性トナーは、本発明の目的を阻害しない範囲で、トナーの色相をより好ましい色相に調整する目的で、ニグロシン染料以外の着色剤として、公知の青色の染料又は顔料を含んでいてもよい。
【0048】
ニグロシン染料以外の着色剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、ニグロシン染料100質量部に対して、0.1〜500質量部が好ましく、10〜300質量部がより好ましい。
【0049】
〔外添剤〕
本発明の1成分現像剤用磁性トナーは、所望によりその表面を外添剤により処理することができる。外添剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナー用に使用されている外添剤から適宜選択できる。好適な外添剤の具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。また、これらの外添剤は、アミノシランカップリング剤やシリコーンオイル等の疎水化剤により疎水化して使用することもできる。疎水化された外添剤を用いる場合、高温高湿下での帯電量の低下を抑制しやすく、流動性に優れるトナーを得やすい。
【0050】
外添剤の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、典型的には0.01〜1.0μmが好ましい。
【0051】
外添剤の体積固有の抵抗値は、外添剤の表面に酸化スズ及び酸化アンチモンからなる被覆層を形成し、被覆層の厚さや、酸化スズと酸化アンチモンとの比率を変えることにより調整できる。
【0052】
外添剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。外添剤の使用量は、典型的には、外添処理前のトナー粒子100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。
【0053】
〔1成分現像剤用磁性トナーの製造方法〕
1成分現像剤用磁性トナーは、結着樹脂に、ニグロシン染料と、磁性粉と、必要に応じて、離型剤、ニグロシン染料以外の着色剤、ニグロシン染料以外の電荷制御剤等の任意の成分とを配合した後に、溶融混練、冷却、粉砕・分級により所望の粒子径に調整して得られる。
【0054】
結着樹脂に、ニグロシン染料と、磁性粉と、必要に応じて、離型剤、ニグロシン染料以外の着色剤、ニグロシン染料以外の電荷制御剤等の任意の成分とを配合してトナーを製造する方法は、結着樹脂中にこれらの成分を良好に分散できる限り特に限定されない。トナーの好適な製造方法の具体例としては、結着樹脂と、ニグロシン染料と、磁性粉と、必要に応じ、離型剤、ニグロシン染料以外の着色剤、ニグロシン染料以外の電荷制御剤等の任意の成分とを混合機等により混合した後、一軸又は二軸押出機等の混練機により結着樹脂と結着樹脂に配合される成分とを溶融混練し、冷却された混練物を粉砕・分級する方法が挙げられる。トナーの平均粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、一般的には5〜10μmが好ましい。
【0055】
また、トナー粒子の表面に外添剤を付着させる方法は特に限定されず、従来知られる方法から適宜選択できる。具体的には、外添剤の粒子がトナーの表面に埋め込まれないように処理条件を調整し、ヘンシェルミキサーやナウターミキサー等の混合機によってトナーと外添剤とを混合する方法により、外添剤による処理が行われる。
【0056】
以上説明した本発明の1成分現像剤用磁性トナーによれば、良好な濃度の画像を形成でき、低温低湿環境における現像装置の現像ローラー表面に形成されたトナー層に層乱れが発生するのを抑制できる。このため、本発明の1成分現像剤用磁性トナーは、磁性1成分現像方式の種々の画像形成装置において好適に使用される。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0058】
実施例、及び比較例において結着樹脂として使用するポリエステル樹脂、及びニグロシン染料を以下の調製例1〜3に記載の方法により製造した。
【0059】
〔調製例1〕
(ポリエステル樹脂調製)
温度計、ステンレススチール製撹拌機、ガラス製窒素導入管、及び流下式コンデンサーを備える容量2リットルの4つ口フラスコを反応容器として用いた。エチレングリコール54モル%、テレフタル酸39モル%、トリメリット酸無水物7モル%を、単量体の質量の合計が1.5kgとなるように反応容器に仕込んだ。反応容器をマントルヒーター上に置き、ガラス製窒素導入管より窒素ガスを反応容器内に導入して、反応容器内を不活性雰囲気とした。次いで、単量体の混合物を撹拌しながら反応容器の内温を220℃に昇温し、同温度で撹拌を継続して重合反応を行った。重合反応中に、反応容器中の樹脂を少量採取して酸価の測定を行い、酸価が8mgKOH/gに達した時点で重合反応を停止した。反応容器の内容物をステンレス製のバットに取り出し、室温まで冷却し、ポリエステル樹脂を得た。
【0060】
〔調製例2〕
(ニグロシン染料(A)の調製)
アニリン500g、濃度30質量%の塩酸水溶液150g、乾燥塩化第一鉄12g、及び鉄粉12gを反応容器に仕込んだ後、混合物を180℃に昇温した。次いで、同温度にてニトロベンゼン150gを反応混合物に4時間かけて滴下した。その後、反応混合物を200℃に昇温し、ニトロベンゼンが殆どなくなるまで縮合反応を行った。なお、ニトロベンゼンの滴下、及び縮合反応の間、水、アニリン、及びニトロベンゼンが反応容器から留出するが、これらの留出物から水を除去した後に、留出物を反応容器に戻した。反応終了後、反応混合物に反応混合物と同量の濃度10質量%の水酸化ナトリウムを加え、80℃で2時間撹拌して生成物を洗浄した。洗浄後の混合物に食塩を加えた後に、混合物を分液ロートに移して静置し、染料相と水酸化ナトリウム水溶液相とに分液し、染料相を回収した。染料相を静置した後、析出物をろ過により除去した。次いで、減圧蒸留によりろ液からアニリンやニトロベンゼンを除去してニグロシン染料(A)を得た。得られたニグロシン染料(A)の分子量をGPC(HLC−8220(東ソー株式会社製))により測定したところ、重量平均分子量(Mw)385であった。
【0061】
以下の方法に従い、ポリエステル樹脂中でのニグロシン染料の平均分散径を測定して、ニグロシン染料(A)のポリエステル樹脂への溶解性を評価した。ニグロシン染料の分散径が小さいほどポリエステル樹脂に対するニグロシン染料の溶解性が高い。ポリエステル樹脂中でのニグロシン染料(A)の平均分散径を表1に記す。
【0062】
<ニグロシン染料の平均分散径の測定方法>
調製例1で得たポリエステル樹脂100質量部に対してニグロシン染料(A)3質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−20B(日本コークス工業株式会社製))により2000rpmの条件で4分間、撹拌・混合した後、得られた混合物を2軸押出機(TEM−26SS(東芝機械株式会社製))により、シリンダー温度100℃、回転数100rpm、処理速度50g/minにて溶融混練した。平均分散径測定用の試料として、ウルトラミクロトーム(EM UC6(ライカ社製))により得られた溶融混練物の厚さ200nmの薄片を調製した。得られた試料にカーボンを蒸着した後、透過型電子顕微鏡(TEM)(JSM−7600F(日本電子株式会社製))により、倍率3000〜30000倍にて試料を観察し、ポリエステル樹脂中のニグロシン染料(A)の平均分散径を画像解析ソフトウェア(WinROOF(三谷商事株式会社製))により測定した。
【0063】
〔調製例3〕
(ニグロシン染料(B〜G)の調製)
ニトロベンゼンの添加時間を、下記表1に記載の時間に変更することの他は、ニグロシン染料Aと同様にして、ニグロシン染料(B〜G)を調製した。ニグロシン染料(B〜G)の重量平均分子量と、ポリエステル樹脂中での平均分散径とをニグロシン染料(A)と同様に測定した。ニグロシン染料(B〜G)の重量平均分子量(Mw)と、ポリエステル樹脂中での平均分散径とを表1に記す。
【0064】
【表1】

【0065】
なお、調製例1で得たポリエステル樹脂を用いる場合、ポリエステル樹脂と、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料のみとを混練する場合でも、ポリエステル樹脂に、ニグロシン染料、磁性粉、及び離型剤を加えて混練する場合でも、100℃で溶融混練することにより、ポリエステル樹脂中でのポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料の分散は十分に進行する。このため、ポリエステル樹脂と、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料のみとを混練して測定したニグロシン染料の平均分散径は、トナー中でのニグロシン染料の平均分散径と同一視できる。
【0066】
〔実施例1〕
ポリエステル樹脂100質量部、磁性粉(TN−15(三井金属株式会社製))90質量部、ニグロシン染料(A)3質量部、ニグロシン染料(B)3質量部、及び離型剤(カルナウバワックス(東亜化成株式会社製))4質量部をヘンシェルミキサー(FM−20B(日本コークス工業株式会社製))により、回転数200rpmの条件で、4分間撹拌・混合した後、得られた混合物を2軸押出機(TEM−26SS(東芝機械株式会社製))によりシリンダー温度100℃、回転数100rpm、処理速度50g/分の条件にて溶融混練した。得られた溶融混練物をジェットミル(ミクロンジェット MJT−1(ホソカワミクロン株式会社製))に投入し、粉砕処理と分級処理とを同時に行って、平均粒子径8μmの粉砕粒子を得た。
【0067】
得られた粉砕粒子100質量部に、シリカ微粒子(RA200(日本アエロジル株式会社製))0.6質量部、及び酸化チタン(EC100(チタン工業株式会社製))0.8質量部を加え、ヘンシェルミキサーにより混合してトナーを得た。
【0068】
得られたトナーについて、下記の方法に従い、トナー量0.5mg/cmにおける画像濃度、実機における画像濃度、実機におけるかぶり、及び層乱れの評価を行った。実施例1のトナーの評価結果を表2に示す。
【0069】
<トナー量0.5mg/cmにおける画像濃度評価>
ページプリンター(FS−4020DN(京セラミタ株式会社製))の改造機を用いて評価を行った。現像器にトナー150gを充填し、被記録紙上に2.5cm×2.5cmのベタ画像を出力し、定着前の被記録紙上のトナーを吸引して、単位面積(cm)当たりのトナーの質量(mg)を算出する。現像バイアスを調整して、被記録紙上の単位面積当たりのトナー量が0.5mg/cmとなる現像バイアスを決定した。次いで、決定された現像バイアスにおいて、2.5cm×2.5cmのベタ画像を出力して定着画像を得た。得られたベタ画像の画像濃度を反射濃度計(TC−6DS(有限会社東京電色製))を用いて測定した。画像濃度1.25以上を○と評価し、1.25未満を×と評価した。
【0070】
<実機における画像濃度評価>
評価用の実機として、ページプリンター(FS−4020DN(京セラミタ株式会社製))を用いた。現像器にトナー150gを充填し、2.5cm×2.5cmのベタ画像を出力した。得られたベタ画像の画像濃度を反射濃度計(TC−6DS(有限会社東京電色製))を用いて測定した。画像濃度1.3以上を○と評価し、1.3未満を×と評価した。
【0071】
<実機におけるかぶりの評価>
評価用の実機として、ページプリンター(FS−4020DN(京セラミタ株式会社製))を用いた。現像器にトナー150gを充填し、2.5cm×2.5cmのベタ画像を出力した。ベタ画像が形成された被記録紙の非印字部、及び未使用の被記録紙の画像濃度を反射濃度計(TC−6DS(有限会社東京電色製))を用いて測定した。ベタ画像が形成された被記録紙の非印字部の画像濃度と、未使用の被記録紙の画像濃度との差をかぶり濃度とした。かぶり濃度0.01以下を○と評価し、0.01超を×と評価した。
【0072】
<層乱れ評価>
10℃20%RHの低温低湿環境に、ページプリンター(FS−4020DN(京セラミタ株式会社製))とトナーとを12時間静置した。次いで、ページプリンターの現像器にトナー150gを充填して10分間エージングした。エージング後、白紙を出力し、出力された白紙を観察して層乱れを評価した。層乱れが生じている場合、現像スリーブ上にトナー層が厚い部分が形成せれており、この場合、トナー層の厚い部分に起因して、現像スリーブの周期でかぶりが白紙上に印字される。
【0073】
〔実施例2〜4、及び比較例1〜4〕
ニグロシン染料の種類、及び量を表2、又は表3に記載されるように変更することの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。なお、表2、及び表3に記載のニグロシン染料の使用量は、ポリエステル樹脂100質量部に対する質量部である。実施例1と同様に、実施例2〜4、及び比較例1〜4のトナーの画像濃度(トナー量0.5mg/cm)、画像濃度(実機評価)、かぶり(実機評価)、及び層乱れの評価を行った。実施例2〜4のトナーの評価結果を表2に示し、実施例1〜4のトナーの評価結果を表3に示す。
【0074】
〔比較例5〕
ニグロシン染料を用いないことの他は、実施例1と同様にして外添処理されたトナーを得た。実施例1〜4、及び比較例1〜4のトナーがニグロシン染料を含有するため正帯電性トナーである一方で、比較例5のトナーは、正帯電性を示すニグロシン染料を含まないため、ポリエステル樹脂の帯電極性の影響により負帯電性を示した。このため、比較例5のトナーでは、実施例1における各評価で用いた画像形成装置により画像を形成できず、画像濃度(トナー量0.5mg/cm)、画像濃度(実機評価)、かぶり(実機評価)、及び層乱れの評価を行わなかった。
【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
実施例1〜4によれば、ポリエステル樹脂中に、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料と、ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料とを含み、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料のポリエステル樹脂中での平均分散径が0.2〜4μmであるトナーであれば、かぶりを生じることなく、良好な濃度で画像を形成でき、低温低湿環境における層乱れも生じないことが分かる。
【0078】
比較例1によれば、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料を用い、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料のポリエステル樹脂中での平均分散径を0.2〜4μmとしても、ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料を用いない場合、良好な濃度で画像を形成しにくいことが分かる。また、比較例1のトナーでは、低温低湿環境における層乱れを抑制できないことが分かる。トナー表面のニグロシン染料が凝集している正帯電性のサイトにおいてチャージアップが起こり、トナー表面のポリエステル樹脂部分は負に帯電しているため、トナー同士の電気的な凝集が起こったためと考えられる。
【0079】
比較例2によれば、ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料を用いても、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料を用いない場合、トナー量が0.5mg/cmである場合には良好な画像濃度が得られるが、実機において良好な画像濃度を得にくいことが分かる。また、比較例2のトナーではかぶりが生じやすいことが分かる。比較例2のトナーは、ポリエステル樹脂に非相溶なニグロシン染料を含まないため、トナー表面にニグロシン染料が凝集した正帯電性のサイトが形成されていない。このため、比較例2のトナーは帯電性に問題があり、かぶりが発生しやすいと考えられる。
【0080】
比較例3によれば、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料とポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料とを用いても、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料のポリエステル樹脂中での平均分散径が4μmを超える場合、トナー量が0.5mg/cmである場合には良好な画像濃度が得られるが、実機において良好な画像濃度を得にくいことが分かる。また、比較例3のトナーではかぶりが生じやすいことが分かる。比較例3のトナーは、ポリエステル樹脂中でのポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料の平均分散径が大きいため、トナー表面における正帯電性のサイトの数が少ない。このため、比較例3のトナーは帯電性に問題があり、かぶりが発生しやすいと考えられる。
【0081】
比較例4によれば、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料とポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料とを用いても、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料のポリエステル樹脂中での平均分散径が0.2μm未満である場合、トナー量が0.5mg/cmである場合には良好な画像濃度が得られるが、実機において良好な画像濃度を得にくいことが分かる。また、比較例4のトナーではかぶりが生じやすいことが分かる。比較例4のトナーは、ポリエステル樹脂中でのポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料の平均分散径が小さすぎるため、比較例4のトナーは良好に帯電しにくく、かぶりが発生しやすいと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂中に、少なくとも、ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料と、ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料と、磁性粉とを含み、
前記ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料の前記ポリエステル樹脂中での平均分散径が0.2〜4μmである、1成分現像剤用磁性トナー。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料のゲルパーミーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が305〜535であり、前記ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が212以下である、請求項1記載の1成分現像剤用磁性トナー。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂と非相溶なニグロシン染料の含有量が、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部である、請求項1、又は2記載の1成分現像剤用磁性トナー。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂と相溶なニグロシン染料の含有量が、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部である、請求項1〜3何れか記載の1成分現像剤用磁性トナー。

【公開番号】特開2012−220640(P2012−220640A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84828(P2011−84828)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】