説明

1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸及びその誘導体の調製のための方法

【課題】操作手順が長く、面倒であり、明らかに生産コストに影響する化合物(I)の既存の合成方法を改善し、その工業的生産を可能にするための方法を提供する。
【解決手段】化合物(I)に係る1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸とその塩の調製のための方法であって、


下記の各工程を含む方法:a)ハロ酢酸を用いた、水中での、適当な前駆体のカルボキシメチル化反応;及びb)工程a)で添加された塩基と同じ塩基の添加による塩基性条件下での加水分解反応。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
式(I)
【化1】


に係る1,4,7,10−テトラアザシクロデカン−1,4,7−三酢酸(より一般的にはDO3Aとして知られる)は、式(VIII)
【化2】


に係るモノ−N−置換誘導体の合成のための主要中間体である。
ここで、R及びRは、独立に、水素原子、1〜10個の酸素原子を含む(C〜C20)アルキル、又はフェニル、フェニルオキシ、フェニルジオキシ基(これは、転じて、非置換又は(C〜C)アルキル若しくはヒドロキシ、(C〜C)アルコキシ、カルバモイル若しくはカルボキシル基で置換されている)である。
【0002】
このような化合物は、特に金属イオンとの錯体の合成、金属が常磁性である時には特に、磁気共鳴(MRI、磁気共鳴映像)として既知の診断技術のための非イオン性造影剤の調製のために使用され、中でも、プロハンス[ProHance(R)](ガドテリドール(Gadoteridol)、10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸のガドリニウム錯体)及びガドブトロール(Gadobutrol)([10−[2,3−ジヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7三酢酸のガドリニウム錯体)がそれである。
【0003】
【化3】

【0004】
化合物(I)の合成は、最初にEP 292,689及びEP 232,751に記載され、続いて論文(Dischino et al., Inorg. Chem., 1991, 30, 1265)が出版され、それは可能性のある合成経路を最も有効なものと比較したものであり、それは市販で入手可能な製品、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン二硫酸(II)から出発して、スキーム1に示されるものである。
【0005】
【化4】

【0006】
化合物(II)から化合物(III)への工程、すなわち5H,9bH,4a,7−オクタヒドロテトラアザシクロオクタ[cd]ペンタレンは、US 4085106に記載される慣用の方法にてもたらされ、水−アルコール媒体中での式(IV)に係る1−ホルミル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンの生成へと続く。
【0007】
この中間体は、続いて、ジメチルホルムアミド中、2.5℃で、ブロモ酢酸tert−ブチル(TBBA)によりトリカルボキシメチル化され、ついで二相性トルエン−水酸化ナトリウム混合物で処理されて、式(V)の化合物、すなわち10−ホルミル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸のトリス(1,1−ジメチルエチル)エステルを生じ、それは、ついで酸性溶液中で式(I)に係る化合物へと加水分解される。
【0008】
この合成の工業化は多くの重大な問題を含んでいる。すなわち:
−ブロモ酢酸tert−ブチル(TBBA)反応物は、極めて毒性が強く、非常に高価である;
−ジメチルホルムアミドは、有害で、催奇形性を有し、無視できない経費が掛かる;
−トルエンの使用は、静電気自己発火により爆発の危険をもたらす;
−二種の溶媒(DMF及びトルエン)の混合物の使用は、それら両者の回収を高価なものとする;
−操作手順が長く、面倒であり、明らかに生産コストに影響する。成功に導く合成に対しては多くのきわどい操作を含む。したがって方法制御に関し著しくコストが掛かること及び/又は合成の成功の機会の減少を暗示している。
【0009】
更に、化合物(V)から化合物(I)への加水分解工程において、気体のイソブタンが発生する。これは、環境上の理由から必然的に吸収(除去)されねばならない。
【0010】
最後に、コストが嵩む実験条件にもかかわらず、カルボキシメチル化及び加水分解反応の選択性は、高純度で、式(I)に係る化合物を得るには十分ではなく、それが故に、化合物(I)の精製工程、例えばクロマトグラフィー又は晶析を必要なものにする。
【0011】
したがって、工業的生産を可能にするために、化合物(I)の合成は、改善されるべきであること、可能ならば、合成工程の数を減らし、そして有機溶媒及び保護基の形成のための反応物の使用を制限すべきであることが明白である。
【0012】
驚くべきことに、今、スキーム2
【化5】


に示される工程からなる、式(I)に係る化合物の調製のための方法(これが本発明の目的である)が見出された。:
ここで、
a)は、アルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物を添加し、pH:9.5〜12.5、化合物(IV)又は(III)に対するハロ酢酸のモル比:3〜5モル/モル、水中、温度:7〜50℃で、3〜48時間かけて行なう、化合物(III)又は(IV)から出発するカルボキシメチル化反応であり、式(VI)に係る中間体、すなわち10−ホルミル−1.4.7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸塩(使用された水酸化物に対応する金属カチオンとの塩)を生成するものである。これは、分離されることなく、工程b)に対応する加水分解反応を受ける;
b)は、工程a)におけるのと同じ塩基の添加による塩基性条件にて、pH:12.5以上、温度:65℃〜100℃で、5〜48時間かけて行なう、中間体(VI)の加水分解反応であり、式(VII)に係る塩の水溶液を生成するものである。これは、分離されることなく、工程c)の操作を受ける;
c)は、化合物(I)の分離工程である。これは、一般には不必要であり、例えば、イオン交換樹脂上のクロマトグラフィー・ステップにて行ない得る。
【0013】
本発明の更なる目的は、新規な化合物、すなわち化合物(I)の調製のための方法における中間体としての、式(VIa)に係る10−ホルミル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸、及び式(VI)
【化6】


に係るアルカリ又はアルカリ土類金属とそれとの塩である。
【0014】
特に好適には、ナトリウム、カリウム又はカルシウムとの、式(VI)に係る塩である。
特に好適には、カルボキシメチル化工程a)におけるブロモ酢酸及びクロロ酢酸の使用である。
【0015】
工程a)を実行するための好適な条件は次の通りである:
− 化合物(III)又は(IV)に対するハロ酢酸のモル比:3.2〜4.5;
− pH:10〜12。
【0016】
本発明の更なる目的は、式(VIII)
【化7】


に係る1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸(DO3A)モノ−N−置換誘導体の調製のための方法である。
ここで、R及びRは、独立に、水素原子、1〜10個の酸素原子を含む(C〜C20)アルキル、又はフェニル、フェニルオキシ、フェニルジオキシ基(これは、非置換又は(C〜C)アルキル若しくはヒドロキシ、(C〜C)アルコキシ、カルバモイル若しくはカルボキシル基で置換されている)であり、スキーム3に示された次の工程からなる:
【化8】


式(III)又は(IV)に係る化合物から出発し、上に定義したように、カルボキシメチル化反応a)による中間体(IV)の形成を経て、上に定義したように、引き続く加水分解b)により、式(VII)に係るアルカリ又はアルカリ土類金属塩のアルカリ性水溶液を生成する。これは、式(IX)に係るエポキシドでアルキル化され得る。ここで、R及びRは、上に定義された意味を有する。
【0017】
特に好適なものは、10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸の調製である。
【化9】


ここで、式(IX)に係るエポキシドは、プロピレンオキシドであり、そして、[10−[2,3−ジヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]−1,4,7,10テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸の調製である。
【化10】


ここで、式(IX)のエポキシドは、4,4−ジメチル−3,5,8−トリオキサビシクロ[5.1.0]オクタンである。
【0018】
したがって、本発明の方法は、水溶液中での化合物(IV)又は(III)のカルボキシメチル化を行なうことを可能にし、故に、望ましくない有機溶媒の使用を完全に避け得る。
【0019】
さらに特異的には、水溶液中での(III)又は(IV)のカルボキシメチル化は、列挙したpH及び温度条件において、僅かに過剰のハロ酢酸を必要とする。
【0020】
反応は、式(VI)に係る新規な化合物、すなわち10−ホルミル−1.4.7.10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸を、反応の終点においてハロ酢酸を過剰に含むアルカリ性水溶液中にて、高い選択性をもって、もたらす。
【0021】
化合物(VI)の構造の確認は、その高い反応性故に、分析データを、化合物(I)のホルミル化反応にて生成した物のそれらと比較することによって間接的に行なわれた。それは、実験のセクションの中で述べられるだろう。
【0022】
既に、EP 292,689中に記載された条件における、酸性媒体中でのホルミル基の脱保護は、本方法には適用されない。そこでは、ハロ酢酸の過剰な存在が、pHが再びアルカリ性(例えば、遊離−N−アルキル化工程において)にされるや否や化合物(I)のDOTAへの変換を引き起こす。
【0023】
したがって、本発明の更なる目的は、化合物(VI)の脱ホルミル化の前にハロ酢酸過剰を破壊するように、酸性条件におけるものに代えた、適当な塩基性条件における(VI)の加水分解である。
【0024】
カルボキシメチル化及び加水分解に関して記載された条件は、化合物(I)調製のための方法を劇的に容易にする。
【0025】
実際に、既に述べたように、スキーム4に記載の通り、中間体(IV)を調製することは必要でさえなく、そこではその前駆体、すなわち化合物(III)を使用し得、それによってホルミル基の加水分解の危険を限定し、そして、したがって、プロセス及び生産時間の制御の必要を限定的なものにする。
【0026】
【化11】

【0027】
それ故に、化合物(VI)は、スキーム2に既に示された反応スキームに従って処理される。
【0028】
吸収されるべき気体状の副生物(例えばイソブテン)及び有機溶媒がないことは、結局、環境的及び経済的観点において方法の更なる有利な点である。
【0029】
発明方法が提供する有利な点の一つは、式(I)に係る化合物の水溶液が最終的に得られ、それが引き続く合成工程、例えばガドブトロール(Gadobutrol)及びガドテリドール(Gadoteridol)の調製のためにそれ自身を直接使用し得ることである。
【0030】
例えば、ガドテリドール(Gadoteridol)の調製の場合には、EP 292,689に記載のように、化合物(I)のアルカリ性水溶液はプロピレンオキシドで処理され、アルキル化反応の後に、10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸(一般に、HPDO3Aとして知られている)が生成する。これは引き続きガドリニウム塩と反応させられて、粗製ガドテリドール(Gadoteriol)が得られる。
【0031】
次記の例は、発明方法を実行するための最良の実験条件を説明している。
【0032】
反応の経過は、次記の方法を用い、HPLCで監視される:
カラム: ポリマーラボ(Polymer Labs)PLRP-S 250×4μm
溶離: アイソクラチック溶出
移動相: A/B=99/1
A:85%HPOにてpH4に調整された50mM
NHPO
B:メタノール
温度: 30℃
検出: 270nm
流速: 0.5ml/分
試料の調製: 約2mgの生成物を20mlのフラスコに入れ、ついで約0.1M CuCl・2HOの溶液0.5mlの溶液が加えられ、35℃で15分間、誘導体化され、ついで溶出液と共にカラムに導かれる。
【0033】
例1
ブロモ酢酸を用いる化合物(I)の調製
A)化合物(I)の水溶液
150mlの水中に40g(0.2モル)の化合物(IV)(US 4,085,106に記載された手順に従って調製されたもの)を含む溶液に122g(0.70モル)のブロモ酢酸溶液(80重量%)が加えられる。その結果としてのpH2は、192gのNaOH(30重量%水溶液)の添加で11.3に調整される。溶液は45℃に加熱される。反応の経過はHPLCで監視される。
4時間後、化合物(VI)への転化が完了。
72gのNaOHがpH13となるまで加えられ、そして溶液は、80℃で6時間加熱され、それにより所望の化合物67.8g(0.196モル)を含む溶液を得る。
収率:98%(三ナトリウム塩として;溶液のHPLC試験)。
【0034】
B)硫酸塩としての化合物(I)の分離
工程A)からの溶液は、192gの40%HSOで酸性にされ、そしてアセトンが加えられて、70.2g(0.158モル)の所望の化合物を沈澱させる。
収率:81%
【0035】
一方、工程A)からの溶液は、濃HClの添加でpH11に調整され、ついでスルホン型カチオン交換体のカラムを浸出させられる。脱イオン水で繰返し洗浄後、生成物は、2N NHにて溶離・回収される。適当なフラクションが残渣となるまで真空で濃縮される。これは、240mlの水に再溶解され、そして60gの濃硫酸で酸性にされる。アセトン(全部で250mL)を徐々に加えることによって、化合物(I)は、硫酸塩として沈澱する。回収量は、68.5g(0.154モル)である。
収率:79%
H−NMR、13C−NMR、IR及びMSスペクトルは、指示された構造と一致している。
【0036】
C)工程B)で得られた塩からの遊離酸
工程B)からの塩は、PVP樹脂に負荷される(Dischino et al., Inorg. Chem., 1991, 30, 1265に記載される手順に従って)。
49.25g(0.142モル)の化合物(I)が得られる。
収率:90%
H−NMR、13C−NMR、IR及びMSスペクトルは指示された構造と一致している。
【0037】
例2
クロロ酢酸を用いる化合物(I)の調製
150mlの水中に化合物(IV)(40g、0.2モル)を含む溶液に85g(0.9モル)のクロロ酢酸が加えられる。pHは、NaOHで11.3に調整され、そして混合物は、40℃の温度で48時間反応させられる。pHは、NaOHで13に調整され、75℃で12時間加熱される。三ナトリウム塩として所望の化合物66.5gを含む溶液が得られる。
収率:96%(溶液のHPLC試験)
【0038】
例3
化合物(III)から出発する化合物(I)の調製
100gの水に65.2gのブロモ酢酸(0.47モル)及び62.6gのNaOH(30重量%水溶液)が加えられ、pHが5に調整される。その結果としての溶液は、30℃に保たれ、0.138モルの化合物(III)が加えられ、NaOHの添加でpHを10に保つ。その後、pHは11.3に調整され、30℃の温度で、24時間、この値に保たれる。続いて、77.3g(0.58モル)の30%NaOHが加えられ、溶液は75℃で9時間加熱される。三ナトリウム塩として所望の化合物58gを含む溶液が得られる。
収率:97.5%(溶液のHPLC試験)
【0039】
例4
中間体の回収を行なうことなく、化合物(II)から出発する化合物(I)の調製
0.8%の水を含む、式(II)に係る1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン253.6g(1.46モル)が、窒素雰囲気下で4350gのトルエンに溶解せしめられる。混合物は、110℃に加熱され、トルエン−水共沸混合物が3.7リットルの残留体積まで留去される。その溶液は、60℃まで冷却され、1.26gのプロピオン酸が加えられ、ついで187.2g(1.46モル)のN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールが、30分かけてその中に滴下される。トルエン−水共沸混合物は90℃の温度で留去され、ついでその溶液は室温まで冷却され、15分かけて265gの脱イオン水が加えられる。18時間の撹拌後、水相は分離され、有機相は全部で835gの脱イオン水で二回洗浄される。洗液は水相に加えられ、その結果としての溶液に886gのブロモ酢酸(水中80%;5.11モル)が加えられる。pHは、2時間かけて加えられる30重量%NaOHで11.3に調整され、ついで混合物は45℃で4時間反応させられる。30重量%NaOH520gが加えられ、そしてその溶液は80℃で16時間加熱される。三ナトリウム塩としてDO3A455g(1.31モル)を含む水溶液が得られる。
収率:90%
【0040】
例5
化合物(III)の調製及びガドテリドール(Gadoteidol)の合成のために使用可能な1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸への即時転化
0.7重量%の水を含む110g(0.634モル)の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンが110gのアミルアルコールに溶解される。水−アミルアルコール共沸混合物及び過剰のアミルアルコールは減圧下で蒸留され、引き続いて、113g(0.761モル)のオルト蟻酸トリエチル及び1.2gのプロピオン酸が窒素雰囲気中で加えられる。混合物は、135℃で8時間加熱される(生成したエタノールは蒸留される)。ついで35℃に冷却され、流体油として化合物(IV)を得る。これは、370gの水の中に274g(1.972モル)のブロモ酢酸及び263gの30重量%のNaOHを溶解して調製した溶液に加えられる。粗製化合物(IV)の添加の間、pHはNaOHの添加により10に保たれ;その後、pHは、再び30重量%NaOHの添加により、11.3に増進せしめられ、混合物は30℃で24時間反応させられる。pHが13に調整され、溶液は75℃で9時間加熱される。三ナトリウム塩として、204g(0.589モル)の化合物(I)(HPLC試験で決定された含量)を含む水溶液が得られる。pHが濃HClで12.3に調整され、そして75g(1.29モル)のプロピレンオキシドが加えられる;35℃で3時間の反応後、溶液は20℃まで冷却され、濃HClでpH1.5まで酸性にされ、そしてこれらの温度及びpH条件で6時間反応させられる。
【0041】
pHは濃NaOHで再び4.1に調整され、ついで121g(0.334モル)の酸化ガドリニウムが加えられる。スラリーは98℃で5時間加熱され、ついで冷却され、不溶物はろ別され、溶液は、ナノフィルトレーションを受け、引き続いて、イオン交換樹脂の混合床(強酸性カチオン交換樹脂及び弱塩基性アニオン交換樹脂)上で溶離を受ける。精製されたガドテリドール(Gadoteriol)を含む適当な溶出液が小体積まで濃縮され、熱い間に、イソプロパノールが加えられる。懸濁液は室温まで冷却され、ついで結晶になった固体はろ過される。
10%の水和水を含む298g(0.482モル)のガドテリドール(Gadoteriol)が得られる。
総収量:76%
IR及びMSスペクトルは指示された構造と一致する。
【0042】
例6
化合物(III)の調製及びガドテリドール(Gadoteridol)の合成のために使用可能な、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸への即時転化。
A)化合物(III)の調製
0.7重量%の水を含む、23.8kg(0.138キログラムモル)の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンが23.8kgのアミルアルコールに溶解せしめられる。水−アミルアルコール共沸混合物及び過剰のアミルアルコールは減圧で留去され、引き続いて、ついで24.5kg(0.166キログラムモル)のオルト蟻酸トリエチル及び355gのプロピオン酸が窒素雰囲気中で加えられる。混合物は125℃で11時間加熱される(生成したエタノールは蒸留される)。ついで、35℃まで冷却され、流体油として化合物(III)を得る。
【0043】
B)化合物(VI)の調製
工程A)からの化合物(III)が、100kgの水中に81.5kg(0.469キログラムモル)のブロモ酢酸及び約62.6kgの30重量%のNaOHを溶解して調製された溶液(pH5)に加えられる。粗製化合物(III)の添加の間、pHはNaOHの添加にて11に保たれる;その後、pHは、再び30重量%のNaOHの添加で、11まで増進せしめられ、そして混合物は35℃で24時間反応させられる。
【0044】
C)化合物(VII)の調製
30重量%のNaOH77.3kgが加えられ、そして混合物は70℃で9時間加熱される。0.131キログラムモルの化合物(VII)(HPLC試験で決定された含量)を含む水溶液が、三ナトリウム塩として得られる。
【0045】
D)ガドテリドール(Gadoteridol)の合成
pHは濃HClで12.3に調整され、15.2kg(0.262キロモル)のプロピレンオキシドが加えられる。40℃で4時間の反応後、溶液は50℃まで加熱され、そして0.135キログラムモルの三塩化ガドリニウムを含む120kgの水溶液が加えられる。1時間後、溶液は17℃まで冷却され、濃HClでpH1.7に酸性化され、そしてpHは2時間この値に制御される。ついで溶液は50℃に加熱され、pHは水酸化ナトリウムで7に調整され、溶液はこれらの条件で1時間保持される。
【0046】
E)粗製ガドテリドール(Gadoteridol)溶液の予備精製
先の工程からの粗製ガドテリドール(Gadoteridol)溶液は、冷却され、そしてインラインフィルタ及び150リットルのR&H社のアンバーライト(Amberlite)XAD 1600樹脂が充填されたカラムを介してデサル(Desal)DK4040Fエレメントが取り付けられたナノフィルトレーション・ユニットに移送される。反応器が空になったら、反応器、インラインフィルタ及びカラムは300リットルの脱イオン水で三回洗浄される。
その結果としての洗浄溶液は、ナノフィルトレーション・ユニット中(ここで生成物は濃縮され、32バール及び25℃で部分的に脱塩される)の生成物溶液と合わせられる。
2.9mS/cmの電導度を有する250リットルの粗製Gadoteridol溶液が最終的に得られる。
【0047】
F)最終的脱塩
ガドテリドール(Gadoteridol)溶液は、ついで4床のイオン交換装置に200リットル/hrでシリーズに供給される。ここで、第一カラム(C1)は、炭酸水素型の強塩基性アニオン交換体:リライト(Relite) 3ASfb、120リットルからなり、第二カラム(C2)は、H型の弱酸性カチオン交換体:リライト(Relite) CC、100リットルからなり、第三カラム(C3)は、OH型のリライト(Relite) 3ASfb、20リットルからなり、第四カラム(C4)は、H型のリライト(Relite) CC樹脂、20リットルからなる。全てのカラムは大気に開放されており、第二カラムからの液体は、ガス分離タンク(真空ポンプに連結されている)を通され、溶液から放出されたCOが除かれる。第四カラムからの出口には、溶出液中の生成物を検出するためにデンシティ・トランスミッタが備えられている。最初の180リットルの溶出液は捨てられ;溶出液は、ついでプロダクトリッチ・フラクションに集められる。全ての粗製ガドテリドール(Gadoteridol)溶液がイオン交換ユニットに負荷されたら、生成物は、600リットルの脱イオン水で溶離され、その溶出液は、ついでプロダクトリッチ・フラクションと合わされる。これは、無色で、実質的にイオン性の不純物を含まない(電導度2.2μS/cm)。
HPLC試験に基づいて決定された、最終脱塩の収率は98%である。
【0048】
G)生成物(ガドテリドール:Gadoteridol)の分離
プロダクトリッチ・フラクションは、ついで、粘凋な残渣まで熱的に濃縮される。これは、79℃で、350kgのイソプロパノールが加えられる。その結果としての懸濁液は1時間還流され、ついで冷却され、遠心分離され、減圧乾燥され、10%の水和水を含む68.2kg(0.111キログラムモル)のガドテリドール(Gadoteridol)を得る−HPLC試験98.5%(s.a.)。
総収率:80.7%
IR及びMSスペクトルは、指示された構造と一致した。
【0049】
例7
ガドテリドール(Gadoteridol)−薬学製剤:プロハンス(ProHance(R))−中に安定剤として使用される10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸カルシウム塩(カルテリドール:Calteridol)の調製
硫酸塩(例1−B)に記載されたように調製されたもの)として回収された、100g(0.225モル)の化合物(III)が100mlの脱イオン水に溶解せしめられ、そして27g(0.458モル)のプロピレンオキシドにより処理される(pHは10N・NaOHの添加で12.3にされている)。40℃で3時間の反応後、溶液は、濃HSOでpH1.7に酸性化され、そして1時間このpHに保たれる。その後、pHは、10N・NaOHにより3.8に調整され、そして溶液は、真空下、200ミリリットルまで濃縮される。400mlのメタノールが混合物に加えられ、60℃で1持間加熱され、ついで室温まで冷却され、無機塩類はろ別され、メタノールで洗浄される。
メタノールは、ろ液から留去され、水で補給される。結果としての溶液は、ポリビニルピリジン樹脂床で浸出を受ける。
生成物を含むフラクションは、400ミリリットルまで濃縮され、そして68g(0.676モル)のCaCOで処理される。混合物は90分間還流され、冷却され、不溶性塩類はろ別される。ろ液は、250ミリリットルまで濃縮され、そして2リットルのアセトンに加えられる。
室温で2時間後、生成物はろ過され、アセトンで洗浄され、ついで真空下、50℃で乾燥されて、所望の生成物88g(0.086モル)を得る。
収率:76%
H−NMR、13C−NMR、IR及びMSスペクトルは、指示された構造と一致する。
【0050】
例8
化合物(I)の溶液から出発するガドブトロール(Gadobutrol)の調製
例1で得られた化合物(I)のpH13の水溶液は、WO9324469に記載された手順に従い、4,4−ジメチル−3,5,8−トリオキサビシクロ[5.1.0]オクタンと反応させられ、所望の生成物を得る。
H−NMR、IR及びMSスペクトルは、指示された構造と一致する。
【0051】
例9
10−ホルミル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7三酢酸の調製
機械撹拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えた1リットルの5首フラスコに、例1−C)に記載されたようにして得られた、35gの化合物(I)及び253gの蟻酸が投じられ、ついで結果としての溶液を機械撹拌しつつ23℃で20分間保持した後、ついで74.6gの無水酢酸がすばやく加えられる。結果としての溶液は、55℃に加熱され、そしてこの温度に3時間保持される。23℃まで冷却後、290ミリリットルの無水アルコールがそこへ滴加される。結果としての溶液は、磁気撹拌しつつ、23℃の温度に3時間保持され、ついでロータリーエバポレータ中で油状残渣にまで濃縮される。
油状残渣は、真空中、スタティックドライヤで18時間乾燥され、重量44.47gののワックス状固体が得られる。これは、メタノールから再結晶化され、そして乾燥せしめられて25.7gの所望の生成物が得られる。
H−NMR、13C−NMR、IR及びMSスペクトルは、指示された構造と一致する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸及びその塩の調製のための方法であって、下記のスキーム
【化12】


に従った下記の工程を含むことを特徴とする方法:
a)化合物(III)又は化合物(IV)から出発し、水中で、塩基性条件下、ハロ酢酸と反応させ、中間体(VI)を生ぜしめるカルボキシメチル化反応、(該中間体(VI)は分離することなく、引き続く工程b)で述べられる加水分解反応を受けさせる)工程;
b)工程a)におけるのと同じ塩基の添加による塩基性条件下に、中間体(VI)を加水分解し、式(VII)に係る塩の水溶液を得る工程;、及び該塩が分離されることなく使用されるか又は
c)引き続く化合物(I)の回収を行なう工程。
【請求項2】
式(VI)に係る中間体が、ナトリウム、カリウム、カルシウムから選ばれる金属の塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記のハロ酢酸が、ブロモ酢酸、クロロ酢酸から選ばれる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)において、ハロ酢酸に対する化合物(III)又は化合物(IV)のモル比が3〜5モル/モルであり、pHがアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の添加により9.5〜12.5に調整され、その温度が7〜50℃の範囲で、時間が3〜48hrの範囲である、請求項1乃至3のいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
前記のハロ酢酸が化合物(III)又は(IV)に対し3.2〜4.5のモル比で加えられ、pHが10〜12の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1の方法における中間体としての、式(VIa)
【化13】


に係る化合物とそのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩。
【請求項7】
ナトリウム、カリウム、カルシウム塩から選ばれる、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
式(VIII)
【化14】


に係る化合物の調製のための方法:
ここで、R及びRは、独立に、水素原子、1〜10個の酸素原子を含む(C〜C20)アルキル、又はフェニル、フェニルオキシ、フェニルジオキシ基(これは、転じて、非置換又は(C〜C)アルキル若しくはヒドロキシ、(C〜C)アルコキシ、カルバモイル若しくはカルボキシル基で置換されている)であり;
その方法は、塩基性pHで、請求項1〜5に記載の方法で得られた式(VII)に係る化合物の水溶液と、式(IX)
【化15】


に係るエポキシド(ここで、R及びRは上に定義した意味を有する)の反応を含むものである。
【請求項9】
が水素であり、Rがメチルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
化合物(VIII)において、R及びRがヒドロキシメチルであり、式(IX)に係るエポキシドが4,4−ジメチル−3,5,8−トリオキサビシクロ[5.1.0]オクタンである、請求項8に記載の方法。

【公開番号】特開2009−242405(P2009−242405A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−133854(P2009−133854)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【分割の表示】特願平11−501554の分割
【原出願日】平成10年6月8日(1998.6.8)
【出願人】(599000153)ブラッコ インターナショナル ベースローテン フェンノートシャップ (2)