説明

2−(イソプロピルアミノ)エタノールの製造方法

【課題】メチルイソブチルケトンの副生を抑制し、大スケール反応においても収率よく2−(イソプロピルアミノ)エタノールを製造する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】水素化触媒の存在下に、アセトンを2−アミノエタノール及び水素と反応させて2−(イソプロピルアミノ)エタノールを製造するにあたり、反応系内にアセトンを供給しながら反応させることを特徴とする2−(イソプロピルアミノ)エタノールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−(イソプロピルアミノ)エタノールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−(イソプロピルアミノ)エタノールの製造方法としては、貴金属触媒の存在下、アセトンを2−アミノエタノール及び水素と反応させて定量的に製造する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
本発明者は、非特許文献1の方法について、製造プラントでの大スケール反応を検討するにあたり、かかる大スケール反応ではオートクレーブへの原料仕込みにかなりの時間を要するので、この影響を調べるために、原料仕込み時間を1時間と想定して実験室規模での反応、すなわち貴金属触媒、アセトン及び2−アミノエタノールをオートクレーブに仕込み、仕込み終了後1時間放置した後に水素を導入、昇温して反応を行った。その結果、触媒濾過後の反応終了液は、2−(イソプロピルアミノ)エタノール52.9%、2−アミノエタノール6.5%及びメチルイソブチルケトン17.0%を含有しており、メチルイソブチルケトンが大量に副生し、非特許文献1の実験例(収率94〜95%)に比べ、2−(イソプロピルアミノ)エタノールの収率が大きく低下していることがわかった(後述の比較例1)。
【非特許文献1】Organic Syntheses,1946年,26巻,36頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、メチルイソブチルケトンの副生を抑制し、大スケール反応でも収率よく2−(イソプロピルアミノ)エタノールを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上述の大スケール反応を想定した実験におけるメチルイソブチルケトンの大量副生の原因について検討を行った。その結果、想定実験では、アセトン及び2−アミノエタノールをオートクレーブに仕込んだ1時間後に水素を導入、昇温し反応を行ったため、その1時間の間にオートクレーブに仕込まれたアセトン同士の2分子縮合が生じることによって、メチルイソブチルケトンが大量に副生したものと推察した。かかる推察に基づいて、上記の課題を解決すべく本発明者が鋭意検討した結果、アセトンを反応系内に供給しながら反応を実施することによって、アセトン同士の2分子縮合によるメチルイソブチルケトンの副生が抑制できるため、2−(イソプロピルアミノ)エタノールを大スケール反応でも収率よく製造できる方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち本発明は、水素化触媒の存在下に、アセトンを2−アミノエタノール及び水素と反応させて2−(イソプロピルアミノ)エタノールを製造するにあたり、アセトンを反応系内に供給しながら反応させることを特徴とする2−(イソプロピルアミノ)エタノールの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法によれば、原料の仕込みに時間のかかる大スケール反応においてもメチルイソブチルケトンの副生を抑制できるため、本発明は、2−(イソプロピルアミノ)エタノールを大スケールで収率よく製造することができる方法である。よって、当該製造方法は工業的に有益なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の製造方法は、水素化触媒の存在下にアセトンを2−アミノエタノール及び水素と反応させるものであり、反応系内にアセトンを供給しながら反応を行う。このようにすれば、メチルイソブチルケトンの副生が抑制できるため、2−(イソプロピルアミノ)エタノールを大スケールで収率よく製造することができる。
【0008】
本発明の反応は、通常、オートクレーブに予め水素化触媒、2−アミノエタノール及び必要に応じて溶媒を仕込み、水素を導入して所定の水素圧にした後、所定の反応温度に昇温し、アセトンをオートクレーブに所定の速度で連続的又は断続的に供給しながら行う。水素は反応の進行とともに消費されるので適宜供給しながら反応を実施する。
【0009】
アセトンの使用量は、2−アミノエタノール1モルに対して、通常1.0モル以上、好ましくは1.0〜2.0モルである。アセトンの供給速度は、反応スケール等により適宜決定すればよいが、水素化触媒1g及び1時間当たりの供給速度として、通常20.0g/(hr・g−cat)以下、好ましくは2.0〜10.0g/(hr・g−cat)である。
【0010】
2−アミノエタノールは、そのまま用いても良いし、水溶液或いは有機溶媒溶液として用いることもできる。水溶液或いは有機溶媒溶液として用いる場合、その濃度は特に制限されず、反応スケールにより適宜決定すればよい。
【0011】
水素化触媒としては、公知の水素化触媒を用いることができ、例えば、白金触媒(例えば、白金−アルミナ触媒、白金−カーボン触媒)、パラジウム触媒(例えば、パラジウム−カーボン触媒)等の貴金属触媒、還元ニッケル、これを安定化処理したもの(いわゆる、安定化ニッケル)、ラネーニッケル等のニッケル触媒、還元コバルト、ラネーコバルト等のコバルト触媒等が挙げられる。水素化触媒の使用量は、2−アミノエタノール1重量部に対して、通常0.001〜0.2重量部、好ましくは0.01〜0.1重量部である。
【0012】
本発明の製造方法では、必要に応じて溶媒を用いることもできる。溶媒としては、ケトン或いはアミンに対し不活性な溶媒であれば特に制限されず、例えばメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、水、或いはこれらの混合溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は特に制限されないが、2−アミノエタノール1重量部に対して、通常2.0重量部以下、好ましくは0.2〜1.0重量部である。-
【0013】
反応温度は、通常50〜200℃、好ましくは110〜150℃である。また、反応における水素圧は、通常1.0〜10.0MPaであり、好ましくは3.0〜6.0MPaである。反応による水素の消費に応じて水素を導入しながら上記水素圧に保ち、上記反応温度にて反応を行う。
【0014】
反応終了後、得られた反応混合物を濾過して触媒を濾別した後、蒸留等の所望の分離操作により1−(イソプロピルアミノ)エタノールを得ることができる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記の実施例におけるガスクロマトグラフィー(以下、GCという。)分析の条件は次の通りであり、各化合物の含有量は面積百分率法により算出し、その含有量をもとに2−(イソプロピルアミノ)エタノールの収率を算出した。
【0016】
[GC分析条件]
カラム;J&W社製DB−5、長さ30m、内径0.25mm、膜厚さ0.25μm
キャリアガス;ヘリウム
カラム温度;40℃から280℃に5℃/minで昇温
検出器;FID
検出器温度;300℃
注入口温度;250℃
分析時間;30分
スプリット比;50/1
【0017】
実施例1
オートクレーブに、2−アミノエタノール233g(3.81モル)、50重量%含水5重量%パラジウム−カーボン11.7g(2−アミノエタノールに対して5重量%)及びメタノール115gを仕込み、水素圧を4.5MPaとして、130℃に昇温した。同温度、同水素圧下でオートクレーブへの水素の導入及び攪拌をしながら、且つ高圧定量ポンプによりアセトン263g(4.52モル)を4時間かけてオートクレーブに供給しながら反応を行った。このときのアセトンの供給速度は5.9g/(hr・g−cat)であった。その後、同温度、同水素圧下でオートクレーブへの水素の導入しながら3時間撹拌し、反応液の冷却後、触媒を濾過し、濾液を得た。得られた濾液をGC分析した結果、1−(イソプロピルアミノ)エタノール79.2%、2−アミノエタノール不検出、アセトン0.9%及びメチルイソブチルケトン2.8%を含有しており、1−(イソプロピルアミノ)エタノールの収率は87%(2−アミノエタノール基準)であった。
【0018】
比較例1
オートクレーブに、2−アミノエタノール233g(3.81モル)、50重量%含水5重量%パラジウム−カーボン11.7g(2−アミノエタノールに対して5重量%)、メタノール115g及びアセトン263g(4.52モル)を仕込み、1時間放置後に水素圧を4.5MPaとして、130℃に昇温した。同温度、同水素圧下でオートクレーブへの水素の導入及び攪拌をしながら反応を行った。反応液の冷却後、触媒を濾過し、濾液を得た。得られた濾液をGC分析した結果、1−(イソプロピルアミノ)エタノール52.9%、2−アミノエタノール6.5%、アセトン不検出及びメチルイソブチルケトン17.0%を含有しており、1−(イソプロピルアミノ)エタノールの収率は53%(2−アミノエタノール基準)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化触媒の存在下に、アセトンを2−アミノエタノール及び水素と反応させて2−(イソプロピルアミノ)エタノールを製造するにあたり、反応系内にアセトンを供給しながら反応させることを特徴とする2−(イソプロピルアミノ)エタノールの製造方法。
【請求項2】
水素化触媒が、パラジウム−カーボンである請求項1に記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−173553(P2009−173553A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11017(P2008−11017)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000167646)広栄化学工業株式会社 (114)
【Fターム(参考)】