説明

2−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−4,6−ジアルコキシ−1,3,5−トリアジンおよび2,4−ビスアリ−ルオキシ−6−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジンの合成並びに紫外線吸収剤としての利用

【課題】多量生産が容易な4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ルから実用的なベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤の提供。
【解決手段】2−クロロ−4,6−ジアルコキシ−1,3,5−トリアジンあるいは2,4−ビスアリ−ルオキシ−6−クロロ−1,3,5−トリアジンを、4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ルと脱塩酸縮合させて、2−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−4,6−ジアルコキシ−1,3,5−トリアジンおよび 2,4−ビスアリ−ルオキシ−6−[4−(6−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジンを合成し、相溶性、化学的安定性、光安定性、熱安定性(高温安定性)、耐蒸散性について調査した。λmaxの長波長部への移動も認められた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1,3,5−トリアジンの2,4,6−位に4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ基および2ケのアルコキシ基、あるいは代わりに2ケのアリ−ルオキシ基を有するベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤の合成と紫外線吸収剤としての利用に関する。詳しくは2−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン(Ia)、2−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−4,6−ジエトキシ−1,3,5−トリアジン(Ib)、2,4−ビスイソプロポキシ−6−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジン(Ic)、2,4−ビスヘキシルオキシ−6−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジン(Id)、 2,4−ビス(2−エチルヘキシル)オキシ−6−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジン(Ie)、2−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−4,6−ジフェノキシ−1,3,5−トリアジン(IIa)、2,4−ビス(p−トリルオキシ)−6−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジン(IIb)、 2,4−ビス(4−メトキシフェノキシ)−6−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジン(IIc)、2,4−ビス(4−tert−ブチルフェノキシ)−6−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジン(IId)および2,4−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノキシ]−6−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジン(IIe)の合成と紫外線吸収剤としての利用に関する。
【背景技術】
【0002】
4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ルは4−クロロ−2−ニトロアニリンとレゾルシノ−ルから容易に合成しうるものである。2−ニトロアニリンとレゾルシノ−ルから同じく容易に合成しうる4−(2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル(III)と比較した場合に、前者は比較的長波長部にλmaxが存在するのが特長であり、溶剤溶解性に幾らがの不安があるのが欠点である。そして後者は比較的短波長部にλmaxが存在するのが欠点であり、溶剤溶解性に優れているのが特長である。両者のレゾルシノ−ル構成部分の反応性にそれ程の差異はないと考えている。本発明者はIIIの2−クロロ−4,6−ジアルコキシ−1,3,5−トリアジンあるいは2,4−ビスアリ−ルオキシ−6−クロロ−1,3,5−トリアジンによる化学修飾についてはすでに相応の成果をえており、これは別に特許申請中である。当然の成り行きとして、次に同じ試薬による4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ルの化学修飾についての研究をおこない、その結果をここに報告する。この研究はベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤の化学修飾による物性の改善という大きい題目に属するものとして位置づけしうる。この範疇において報告された過去の研究を、研究の対象が4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ルであるものに限ってここに羅列することが背景技術について述べることになるだろう。すなわち、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−5−(ヘキサデシルオキシ)フェノ−ル(IV)、2,4,6−トリス[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジン(V)および5−(ベンゾイルオキシ)−2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)フェノ−ル(VI)があげられる。研究例が少ないのは、先ずIIIについての研究を完成し、好結果が得られれば4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ルについても同様な研究をするというのが一般の傾向であるとすれば理解できる。例は少ないとはいえ、VIがすでに上市されているのも事実である。IVは非特許文献1に参考文献として引用されている。また、VおよびVIは特許文献1および特許文献2として報告されている。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0003】
【非特許文献1】谷本、染料と薬品、41,295(1996).
【特許文献1】特開2000−178276号公報
【特許文献2】特開2000−119261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IV〜VIのうち、上市されているのはVIだけである。オレフィンポリマ−用として適当と考えられているIVについては合成の反応条件を考えれば経済性に乏しいためか、上市されていない。Vについては純粋な状態にまで精製することが容易ではない。これは慣用の溶剤に難溶であるためと考えられる。本発明が解決しょうとする課題はVIと同様に上市されうる、すなわち、精製をも含めて比較的合成し易く、相溶性、化学的安定性、光安定性、熱安定性(高温安定性)、耐蒸散性等の何れの点においても特別の欠点が無く平均以上であるベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤を、4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ルの化学修飾によって合成することである。このさい、分子量の増大に伴う耐蒸散性における改善は確実であり、得られたものの化学構造式から考えて、化学的安定性、光安定性、熱安定性(高温安定性)において問題になることはない。塩素原子を有するベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤に往々にして見られる相溶性における難点がどの程度であるかということである。合成に際して、精製に際して、そして添加使用に際して使用しうる溶剤がトルエンのような慣用の溶剤であるということであれば、4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ルの化学修飾としては成功であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
非特許文献2に述べてあるように、2−クロロ−4,6−ジアルコキシ−1,3,5−トリアジンおよび2,4−ビスアリ−ルオキシ−6−クロロ−1,3,5−トリアジンは容易に合成しうる化合物である。これらと4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ルの脱塩酸縮合をおこなった。IIIとの脱塩酸縮合がアセトンと水の混合溶媒中で炭酸カリウムを用いて円滑に進行するので、ここにおいても炭酸カリウムをアセトンと水の混合溶媒中で脱塩酸剤として用いた。もちろん、得られたものが精製をも含めて合成し易く、そして相溶性、化学的安定性、光安定性、熱安定性(高温安定性)、耐蒸散性等の点において如何であるかについては実験的に確かめねばならないが、化学構造式からもそれらのうちの難点は相溶性以外にはない。
【0006】
【非特許文献2】谷本、染料と薬品、40,325(1995).
【発明の効果】
【0007】
本研究において合成したIおよびIIについては、Ib,Ic、Idを除いてλmax340〜343nm,εmax>24800であり、そして化学的安定性、光安定性、熱安定性(高温安定性)、耐蒸散性に殆んど問題はなく、むしろ最後の耐蒸散性については表1に見られる通り著しく改善されたものであることが認められた。市場に上げられているVIと比較した場合にそれらの紫外線吸収剤としての有効性においては殆んど差が無いものと考えている。添加対象物についての選択は今後の課題であろうが、本発明者はIaおよびIIeを特に推薦したい。前者は耐蒸散性については他のものと比較して少し見劣りするが、代わりに特に美しい結晶として得られている。また、後者は長鎖アルキル基を有する化合物特有の外観を示し、耐蒸散性の点では格別にすぐれている。慣用の溶剤であるトルエンを用いて再結晶しうるのも特長の一つであるが、メチルイソブチルケトンも再結晶溶媒として使用しうる。 最後に、Ib,Ic,Idのλmaxが短波長部に移動しているのは、4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ基の3−ヒドロキシ基とトリアゾ−ル環との間の分子内水素結合を介しての電子移動が円滑に進行しないためと考えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下の実施例は本発明をさらに詳細に説明するために例として示したものであり、本発明を制限しようとするものではない。示されている融点は末端開口毛細管内で測定したものであり、補正されてはいない。得られたものはすべて新規化合物であるので元素分析値を付してある。また、H−NMRスペクトルについてはここに記載されていないが、すべてが所期の構造であることを示している。
【実施例1】
【0009】
4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル 2.62g(0.01mol)にアセトン120mlを加えて溶解させ、これに炭酸カリウム1.38g(0.01mol)を水20mlに溶かした水溶液を加えてかきまぜた。引き続きかきまぜながら、これに2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン1.84g(0.0105mol)の飽和アセトン溶液を室温で3時間かけて滴下した。滴下後、3時間かきまぜながら還流煮沸した。反応後、15〜20%の塩酸で反応混合物を弱酸性にしてから減圧でアセトンの大部分を留去した。残留を多量の水に加えて析出した沈殿を濾過しとった。これを2−プロパノ−ルを用いての洗浄後に、トルエンで再結晶してから減圧下で減量が認められなくなるまで加熱乾燥して無色のIa 2.91gを得た。収率73%、融点241.6〜242.0℃、元素分析実験値(%)C50.83,H3.01,N20.95;C1713ClNに対する計算値(%)C50.94、H3.27,N20.97。
【実施例2】
【0010】
実施例1における2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン1.84g(0.0105mol)の代わりに2−クロロ−4,6−ジエトキシ−1,3,5−トリアジン2.14g(0.0105mol)を用い、これを実施例1と同様にして4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル2.62g(0.01mol)と脱塩酸縮合させ、同様にして析出した沈殿を濾過しとった。これをトルエン−2−プロパノ−ルを用いて再沈殿精製してから減圧下で減量が認められなくなるまで加熱乾燥して微黄色のIb 2.76gを得た。収率64%、融点153〜156℃、元素分析実験値(%)C52.99,H3.98,N19.51;C1917ClNに対する計算値(%)C53.21,H4.00,N19.60。
【実施例3】
【0011】
実施例1における2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン1.84g(0.0105mol)の代わりに2,4−ビスイソプロポキシ−6−クロロ−1,3,5−トリアジン2.48g(0.0105mol)を用い、これを実施例1と同様にして4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル2.62g(0.01mol)と脱塩酸縮合させ、同様にして析出した沈殿を濾過しとった。これをトルエン−2−プロパノ−ルを用いて再沈殿精製してから減圧下で減量が認められなくなるまで加熱乾燥して微黄色のIc 3.45gを得た。収率76%、融点147〜150℃、元素分析実験値(%)C55.15,H4.42,N18.19;C2121ClNに対する計算値(%)C55.20,H4.63,N18.40。
【実施例4】
【0012】
実施例1における2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン1.84g(0.0105mol)の代わりに2,4−ビスヘキシルオキシ−6−クロロ−1,3,5−トリアジン3.32g(0.0105mol)を用い、これを実施例1と同様にして4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル2.62g(0.01mol)と脱塩酸縮合させ、同様にして析出した沈殿を濾過しとった。これをトルエン−2−プロパノ−ルを用いて再沈殿精製してから減圧下で減量が認められなくなるまで加熱乾燥して微黄色のId 3.77gを得た。収率70%、融点162〜165℃、元素分析実験値(%)C59.84,H5.93,N15.52;C2733ClNに対する計算値(%)C59.94,H6.15,N15.53。
【実施例5】
【0013】
実施例1における2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン1.84g(0.0105mol)の代わりに2,4−ビス(2−エチルヘキシル)オキシ−6−クロロ−1,3,5−トリアジン3.91g(0.0105mol)を用い、これを実施例1と同様にして4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル2.62g(0.01mol)と脱塩酸縮合させ、同様にして析出した沈殿を濾過しとった。これを2−プロパノ−ルを用いての洗浄後に、トルエンで再結晶してから減圧下で減量が認められなくなるまで加熱乾燥して殆んど無色のIe 3.94gを得た。収率66%、融点190〜192℃、元素分析実験値(%)C62.14 H6.86,N13.91;C3141ClNに対する計算値(%)C62.35,H6.92,N14.08。
【実施例6】
【0014】
4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル2.62g(0.01mol)にアセトン110〜120mlを加えて少しの懸濁状態を残して溶解させ、これに炭酸カリウム1.38g(0.01mol)を水20mlに溶かした水溶液を加えてかきまぜた。反応混合物が示す淡黄色の呈色状態が変わらなくなってから、これに2−クロロ−4,6−ジフェノキシ−1,3,5−トリアジン3.06g(0.0102mol)の飽和アセトン溶液を室温で3〜4時間かけて滴下した。滴下後、3時間かきまぜながら還流煮沸した。反応後、15〜20%の塩酸で反応混合物を弱酸性にしてから減圧でアセトンの大部分を留去した。残留を多量の水に加えて析出した沈殿を濾過しとった。これを2−プロパノ−ルを用いての洗浄後に、トルエンで再結晶してから減圧下で減量が認められなくなるまで加熱乾燥して灰白色のIIa 3.90gを得た。収率74%、融点207〜210℃、元素分析実験値(%)C61.66、H3.05,N15.97;C2717ClNに対する計算値(%)C61.78,H3.26,N16.01。
【実施例7】
【0015】
実施例6における2−クロロ−4,6−ジフェノキシ−1,3,5−トリアジン3.06g(0.0102mol)の代わりに2,4−ビス(p−トリルオキシ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン3.34g(0.0102mol)を用い、これを実施例6と同様にして4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル2.62g(0.01mol)と脱塩酸縮合させ、同様にして析出した沈殿を濾過しとった。これを2−プロパノ−ルを用いての洗浄後に、トルエンで再結晶してから減圧下で減量が認められなくなるまで加熱乾燥して灰白色のIIb 4.04gを得た。収率78%、融点183〜186℃、元素分析実験値(%)C62.73,H3.64,N15.08;C2921ClNに対する計算値(%)C62.99,H3.83,N15.20。
【実施例8】
【0016】
実施例6における2−クロロ−4,6−ジフェノキシ−1,3,5−トリアジン3.06g(0.0102mol)の代わりに2,4−ビス(4−メトキシフェノキシ)−6−クロロ−1,3,6−トリアジン3.67g(0.0102mol)を用い、これを実施例6と同様にして4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル2.62g(0.01mol)と脱塩酸縮合させ、同様にして析出した沈殿を濾過しとった。これを2−プロパノ−ルを用いての洗浄後に、酢酸エチルで再結晶してから減圧下で減量が認められなくなるまで加熱乾燥して無色のIIc 3.93gを得た。収率67%、融点186〜188℃、元素分析実験値(%)C59.53,H3.46,N14.12;C2921ClNに対する計算値(%)C59.54,H3.62,N14.37。
【実施例9】
【0017】
実施例6における2−クロロ−4,6−ジフェノキシ−1,3,5−トリアジン3.06g(0.0102mol)の代わりに2,4−ビス(4−tert−ブチルフェノキシ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン4.20g(0.0102mo1)を用い、これを実施例6と同様にして4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル2.62g(0.01mol)と脱塩酸縮合させ、同様にして析出した沈殿を濾過しとった。これを2−プロパノ−ルを用いての洗浄後に、トルエンで再結晶してから減圧下で減量が認められなくなるまで加熱乾燥して無色のIId4.50gを得た。収率71%、融点161〜162℃、元素分析実験値(%)C65.82、H4.99,N13.01;C3533ClNに対する計算値(%)C65.98,H5.22,N13.19。
【実施例10】
【0018】
実施例6における2−クロロ−4,6−ジフェノキシ−1,3,5−トリアジン3.06g(0.0102mol)の代わりに2,4−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノキシ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン5.35g(0.0102mol)を用い、これを実施例6と同様にして4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ル2.62g(0.01mol)と脱塩酸縮合させ、同様にして析出した沈殿を濾過しとった。これを2−プロパノ−ルを用いての洗浄後に、トルエンで再結晶してから減圧下で減量が認められなくなるまで加熱乾燥して殆んど無色のIIe 5.71gを得た。収率76%、融点186〜187℃、元素分析実験値(%)C68.71,H6.58,N11.05;C4349ClNに対する計算値(%)C68.92,H6.59,N11.22。
【実施例11】
【0019】
IおよびIIの100.0mgのおのおのを、上部開口試験管中において加熱ブロックで200℃に5.5時間加熱し、加熱することによるそれぞれの重量およびUVスペクトルにおける変化を表1に示す。なお比較のために、VIおよび2−tert−ブチル−6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−4−メチルフェノ−ル(VII)についての同様な試験結果をあわせ示す。
【化7】

【表1】

【産業上の利用可能性】
【0020】
Ib、IcおよびIdを除いてのIおよびIIにより光安定化される有機材料としては、他のベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤について示されたものとほぼ同じであろう。機能部分である2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)フェノ−ルの部分構造に変化がない限りにおいて、有効性に大小はあっても有効であることに変わりはない、ただ、特長をより生かした、すなわち特長がより強調されるような添加対象物を選ぶべきであろう。本研究で得られたものは優れた熱安定性(高温安定性)および耐蒸散性を有することから高温加工用ポリマ−に添加してその有効性が示されると考えている。大きい耐蒸散性を有することはその使用量を抑えることにもなり、低コスト化にもつながるものである。このような場面でトルエンのような慣用の溶剤が用いられうることは注目してよい。
【0021】
産業上の利用可能性には相当しないが、IおよびIIに関しては別の期待がある。すなわち、これらは添加対象物中において光フリ−ス反応をおこなう可能性を有している。特許文献3には2,4−ジメトキシ−6−(4−メチルフェノキシ)−1,3,5−トリアジン(VIII)および類似化合物の光フリ−ス反応について示されているが、同じ部分構造を有するIあるいはIIの光フリ−ス反応についても可能性がある。しかし、このことは特許請求の範囲に含まれていないので、その可能性についての正否は現時点で判断できぬまま結論は先送りしたい。
【化8】

【0022】
【特許文献3】特開平3−190864号公報
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の化合物IaのUVスペクトル
【図2】本発明の化合物IIeのUVスペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ルと2−クロロ−4,6−ジアルコキシ−1,3,5−トリアジンの脱塩酸縮合による 2−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−4,6−ジアルコキシ−1,3,5−トリアジン(I)の合成
【化1】

【請求項2】
Iで示される2−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−4,6−ジアルコキシ−1,3,5−トリアジンの紫外線吸収剤としての利用
【請求項3】
4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)レゾルシノ−ルと2,4−ビスアリ−ルオキシ−6−クロロ−1,3,5−トリアジンの脱塩酸縮合による2,4−ビスアリ−ルオキシ−6−「4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ]−1,3,5−トリアジン(II)合成
【化2】

【請求項4】
IIで示される2,4−ビスアリ−ルオキシ−6−[4−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ−ル−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ−1,3,5−トリアジンの紫外線吸収剤としての利用

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−314501(P2007−314501A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174538(P2006−174538)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(301000675)シプロ化成株式会社 (33)
【Fターム(参考)】