説明

2ゾーンワイヤレスパルプ洗浄機

供給原料に対する遠心力を発生させて、供給原料に含まれる液体を追い出してから、該原料のさらなる処理を行うための、同心の回転フィルターを有するワイヤレス2ゾーンパルプ洗浄装置。第二のフィルターが第一のフィルターを包囲し、脱水プロセスで供給原料から追い出された有用なパルプ繊維を捕捉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/563,066号(2004年、4月16日出願)の優先権を有する利点を主張するものである。
【0002】
本発明は、パルプの洗浄および/または濃縮に関するものであり、より詳しくはワイヤベルトを有しない二段階脱水ゾーンを持つ洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0003】
パルプ製造および製紙産業においては、多年にわたって、パルプおよび紙原料の洗浄および/または濃縮のための装置が普通に使用されている。Seifertほかによる米国特許第5,382,327号明細書に記載されている、先行技術の実施において使用されている一つの装置は、2ニップ(nip)濃縮装置(DNT)または簡単に洗浄装置と呼ばれており、これは、その主要要素が一対のワイヤ被覆円筒と該円筒が回転する大桶とであるという点で、円筒タイプの製紙機と構造および運転のやり方に関して、割合に良く似ている。
【0004】
DNTは、抽出装置として使用して、原料を濃縮することができ、あるいは主としてパルプ繊維の洗浄に使用することもできる。運転においては、パルプ原料が回転張出し(breast)円筒とそれに巻かれた(entrained)ワイヤとの間のニップに供給される。パルプは遠心力によって脱水され、ワイヤ上を移動して、さらなる脱水のための第二のローラーすなわちクーチローラーに送られる。パルプは重力とドクターブレードとによってクーチローラーから剥ぎ取られて、コンベヤー上に集められ、このコンベヤーが脱水されたパルプをDNTの下流に運ぶ。
【0005】
これらの先行技術の装置の多くにおいては、網目を有する(foraminous)エンドレスベルトまたは“ワイヤ”がロールのまわりに巻きつけられ(trained)、該ロールとともに、洗浄機の他の動作部分が配置されるスペースを定める。このワイヤは好ましくはプラスチック材料たとえば(i.e.)ポリエステル製とすることができる。この機械の製造物はパルプであり、ワイヤの模様が付くのが好ましくないシートではないので、ワイヤは、ピンシーム(pin seam)タイプとして、ワイヤベルトの端が、重なり合うループを含むようにすることができる。このループは、これらのループに通される金属“ピン”によって着脱自在に固定することができる。ピンシームワイヤの使用により、ワイヤがシームを有しないエンドレスループである場合に必要なロールの片持ち(cantilevering)をしないで、摩耗したとき、ワイヤを交換することができる。また、ワイヤ濃縮装置または洗浄装置は、ワイヤベルトその他の要素の摩耗の問題のために、回転速度が制限され、したがって、この機械の水力学的能力が回転速度により直接制限される。
【0006】
パルプの脱水プロセス中、パルプ原料は回転ワイヤ上に送られる。遠心力により、フィルター付きワイヤを通って外側に、不純物を含む液体がパルプから押し出され、この液体は通常有用な繊維も含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、フィルター物質としてのワイヤベルトを使用せず、さらなる遠心力を生成させてパルプからより多くの液体を除去するために濃縮装置の回転速度を増大させ、しかも有用なパルプ繊維の排出を防ぐような、パルプ濃縮装置または洗浄装置を提供することは、有益であると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、脱水システムにおいてパルプから液体を除去するパルプ洗浄装置または濃縮装置を提供する。この装置は、該装置にパルプ原料を供給するための供給マニホールド、該供給マニホールドから前記パルプ原料を受け取る第一の回転円筒フィルターであって前記パルプ原料に対する遠心力を発生させて液体を追い出すための第一の円筒フィルター、および、パルプ原料が脱水されたあと、前記パルプ原料を前記第一の円筒フィルターの内表面から剥ぎ取ることを助ける第一のドクターブレード、を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明を説明する。図1は、パルプ濃縮または脱水装置5の構造を示す。この構造物は、モーター10によって駆動され、供給原料を供給するためのヘッドボックス20とパルプを濃縮するための第一の円筒フィルター30とを有する。
【0010】
供給原料は、先行技術の濃縮装置または洗浄装置におけると同様に装置5に送られる。図3に示すヘッドボックス20は、供給原料のジェットを第一の円筒フィルター30の内表面32上に供給する。濃縮または脱水すべき供給原料は、通常の原料供給ポンプ(図示せず)からの供給ライン(図示せず)によって、ヘッドボックス20に供給される。
【0011】
図1および2に示すモーター10は、図4に示す軸受けジャーナル12内に収容された軸2を駆動する。モーター10は、ベルト14によって、第一の円筒フィルター30を回転させる。ヘッドボックス20は、供給原料を内表面32に送る。遠心力が、円筒フィルター30の回転によって発生させられ、モーター10の設定速度によって調節される。第一の円筒フィルター30が回転すると、遠心力によって、液体と他の不純物が供給原料から引き出される。遠心力は、液体のほかに有用な短いパルプ繊維を第一のフィルターの網(wire meshed body)を通して引き出すのに十分な強さがある。この液体、不純物、および有用な繊維を、第一の円筒フィルター30からの第一の排出物と呼ぶ。網の目は、供給原料中に含まれうるこの第一の排出物を該網を通過させて完全に流出させうるのに十分な大きさである。
【0012】
ヘッドボックス20からの供給原料ジェットは、第一の円筒30の内表面32の高いところに向けられる。原料の一部はただちに部分的に脱水される。というのは、ジェットの力により、液体が網を通過させられるからである。受入れ材料(accepts material)は、ドクターブレード50によって円筒30の内表面から剥ぎ取ることができる。ドクターアセンブリによって集められた受入れ原料は、排出管51によって送り出される。
【0013】
図3および4に移ると、第一の排出物は第一の円筒フィルター30の網を通過し、第二の円筒フィルター40の内表面42によって捕捉されるかまたは受け取られる。第二の円筒フィルター40は、第一の円筒フィルター30を包囲し、かつこれと同心である。また、好ましくは、第一のフィルター30よりも細かい目の網を有する。モーター10は、また、第二の円筒フィルター40をも回転させる。円筒32と40は、両方とも、ハブ16によって軸2に取りつけられた表面62に取りつけられているからである。遠心力は第二のフィルター40上のパルプにも発生させられる。図に示す実施形態の場合、第二のフィルター40の網は第一のフィルターよりも細かい目を有し、主として液体すなわち第二の排出物を排出し、パルプ繊維を排出しないようになっている。本発明の一つの側面においては、第二の円筒フィルター40の目的は、遠心力によって第一のフィルター30から排出される受入れ可能繊維を“捕捉”または保持して、脱水プロセスを続けることである。また、随意に、別の円筒フィルターを装置に追加して、第二のフィルター40の網を通過する有用な繊維をさらに濾別して“捕捉”するようにすることができる。
【0014】
図に示すように、第一および第二の円筒フィルターは、共通の駆動装置に取りつけられる。あるいは、二つのフィルターは、g力の最適化のために別々に駆動することができる。第一の円筒フィルターは、約30〜120 g力で駆動し、第二の円筒フィルターは、約60〜300 g力で駆動して、必要な濾液透明度と特性(capacity)が与えられるようにする。円筒フィルターの一方または両方に可変速度の駆動装置を備えて、g荷重と洗浄効率とを調節し、ある作業パラメータ範囲内におさまるようにすることができる。前述のように、多くの先行技術の装置と異なり、本発明の場合、ワイヤまたは類似の回転メッシュを円筒のまわりに巻きつけまたは配置して、円筒との間にニップを形成し、ニップ領域に配置されるパルプ懸濁液から液体を搾り出すようにするということをしない。したがって、装置5にかかる負荷は小さく、大きな回転速度を実現することができ、大きな水力学的性能と微粉分離効率を得ることができる。
【0015】
遠心力が連続的に作用することにより、供給原料の液体成分が第一および第二のフィルターの網目(wire meshing)を通して搾り出され、一方、該供給原料に懸濁しているパルプ材は網に保持され、第一および第二の円筒フィルター30、40の内表面32、42上に層を形成する。第二の排出物として搾り出された液体は、出口60を通して装置5から追い出される。当業者には明らかなように、この液体は微細な固体粒子たとえばインク、PSA、その他を含んでいることが多い。これらの固体も、液体搬送体とともに出口から排出されるのが望ましい。示されているように、円筒40の内表面42上を移動する第二の受入れ材料は、ドクター52によって剥ぎ取られ、出口管55を通って移動する。
【0016】
円筒上の網(foraminous body)の機能は、フィルター物質として作用することであり、該フィルター物質は、供給原料からの繊維および供給原料の他の必要固体成分を、遠心力の作用に抗して該フィルター物質の内表面上に保持する。これが、保持されるパルプの脱水を起こす主要因である。図3および4に示す羽根35、33は、第一および第二の円筒フィルター30、40の周囲に沿って配置されている。これらの羽根は、開口を形成し、該羽根は、該羽根の間の開口を小さくしたり大きくしたりするために、ソレノイドスイッチその他の通常の制御手段によって制御することができる。羽根の間の開口を調節することにより、フィルター物質を通過する流量と流れ圧力とを、濃縮プロセスの基準と条件とに応じて変えることができる。マットの厚さは、フィルター開口面積およびフィルターを通過する材料の量に加えて、供給原料流量、供給コンシステンシー、および相対回転速度によって調節することができる。
【0017】
第一のドクターブレード50とそれに付随する出口管51とが、濃縮/脱水パルプを、第一のフィルターの内表面32から剥ぎ取る。濃縮/脱水パルプは、第一の円筒フィルター30の内表面32から製紙システムの下流のプロセスに送られる。スクリューコンベヤー(screw like conveyor)(図示せず)その他の移送手段を、管51に効果的に付随させてパルプの移送を助けることができる。マットがドクターブレードに接触すると、マットは空気を含みうる(airborne)。一方向に導かれる空気のジェットを使用することにより、マットが空気を含んだままに保たれるようにすることができ、マットを洗浄装置5からドクター捕捉アセンブリ内に吹き込むことができる。あるいは、真空を使用して、パルプを洗浄装置5から引き剥がすことができる。注意すべきことは、第一の受入れ材料に対しては、洗浄装置5からの剥ぎ取りに先立って、追加の濃縮操作を加えることができる、ということである。
【0018】
第二の円筒フィルター40の内表面42上の脱水パルプのために、第二のドクターブレードアセンブリ52とそれに付随する捕集管55とが備えられ、剥ぎ取りプロセスは上記と同じである。第二のドクターブレード52の目的は、フィルター物質を清掃し、第二のフィルター42のフィルター物質表面に詰まった繊維を回収することである。
【0019】
パルプのマットをフィルター物質から剥ぎ取るために、反対向きg力を上回るのに十分な大きさの圧力の水の逆流(backflush)を使用して、該逆流が、第一のドクターブレードアセンブリ50の前縁のわずかに上流において、または該前縁において、円筒表面にぶつかるようにすることができる。第一のドクターブレードアセンブリ50によって集められなかったパルプは、第一の円筒フィルター30によってふたたび濾別される。第二のドクターブレード52の前縁における第二の水の逆流を使用して、第二の円筒フィルター40上に保持されているパルプを集めて、フィルター物質が、時間が経過しても詰まらないようすることができる。
【0020】
本発明の代替実施形態においては、非接触ドクターブレードを使用して、濃縮マットを第一および第二の円筒フィルター30、40のフィルター物質から剥ぎ取ることができる。たとえば、水または空気の微細な高圧ジェットまたはファンを内側から吹き出してファイバーマットの下にはいるようにして、ファイバーマットをフィルター物質から持ち上げるようにすることができ、あるいは前記ジェットまたはファンにより、該マットを裏面から吹いて吹きはがすようにすることができる。
【0021】
代替的な運転のやり方では、パルス化システムを使用して、脱水レベルを高め、パルプをより大きく濃縮することができる。これは、第一および第二のドクターブレード50、52をこれらに付随する回転円筒と選択的、間欠的に接触させて、第一および第二の円筒フィルター30、40の二回以上の回転ごとに、濃縮パルプを剥ぎ取るようにすることにより実現することができる。そうすることにより、パルプから強制的に液体を追い出すために、より長い時間にわたってパルプに遠心力を加えるようにすることができる。
【0022】
洗浄機5においては、第一および第二の円筒フィルター30、40のためのフィルター物質を交換することができる。一つの実施形態においては、フィルター物質は、第一および第二の円筒フィルター30、40に挿入されるカートリッジの形のものである。もう一つの実施形態においては、このフィルター物質を、第一および第二のフィルター30、40の代わりに取りつけて張力を加えることができる。
【0023】
図5は、本発明による好ましいパルプ供給装置すなわちヘッドボックス20を示す。ここで、このヘッドボックスは、接線方向または渦巻き入口90を有するサイクロン式分離器の形のものであり、パルプ懸濁液が、該入口90を通して、当業者には周知の高圧条件下で供給され、パルプ懸濁液がサイクロンを通過するときにパルプ懸濁液に回転パターンが与えられる。このサイクロン式分離器は、円錐部分72を有し、該円錐の直径は、入口からサイクロンの閉じた先端74に向って減少する。このヘッドボックスは、全体として、切頭円錐の形であり、軸95、土台部93、および閉じた先端74を有する。入口開口90は軸95から横方向にずれている。
【0024】
大体平面のハウジング表面76を有するスロット状開口78の形の細長いノズルが、軸95から横方向にずれた位置で、円錐体から接線方向に延びている。パルプ懸濁液は、このスロット状開口78を通ってサイクロンを出て行く。この開口は、第一のフィルター30の内表面32に隣接配置されている。
【0025】
前記スロット状開口78は、細長い開口を有し、その長さ方向は、内側円筒32の回転時に該円筒の表面が開口78に隣接配置されるとき、該表面に平行に配置される。
【0026】
図6に示すように、開口78を出て、第一のフィルターの内表面32に供給される懸濁液は、層化供給原料100の形を有し、この層化供給原料は、懸濁固体とパルプ懸濁液からの水分とを含むいくつかの層から成る積層配列を有する。重い微粉と短い繊維は、大体において、第一のフィルターの内表面32に隣接する第一の層80内に配置される。内表面からもっとも離れた頂層84は、主として、長い繊維と軽い微粉とから成り、中間層82は、微粉と繊維の混合物から成る。
【0027】
図6に示す層化供給原料の使用により、液体処理量が大きくなる。というのは、長い繊維と軽い材料がフィルター物質表面から少し離れたところに配置されるからである。これらの長い繊維と軽い材料は、円筒に直接接触するように配置されると、濃縮マットを形成する傾向があり、微粉が網目の開口に自由に接近することを妨害しうる。別の状況下では、図6に示す層化供給原料を裏返したタイプのノズル供給装置を有するのが好ましい。すなわち、図6に示す供給原料を裏返すために、アダプターその他をノズルに付随させることができ、そうすることによって、軽い微粉と長い繊維とを円筒の内表面に隣接するように配置し、短い繊維と重い微粉とが表面から離れた“頂”層に配置される。このタイプの層化供給原料の裏返し配置は、円錐体72の配置を図5に示す特定配置から180゜回転させることによっても、実現することができる。
【0028】
図7は、別の実施形態であり、裏返しノズル178が、図5に示すノズル78の代わりに使用される。ノズル178は、パルプ懸濁液をサイクロン式円錐体72の内部で時計方向に回転させたときに、大体2〜3時の位置にある噴出出口200を有する。スロット204で終わる、細長い、ハウジングを有する、丸みを付けられた流路202が、懸濁液を、裏返し配置においてフィルター表面32に供給する。
【0029】
図8に示すように、このタイプの、サイクロン式分離器からのノズル出口の使用により、パルプ懸濁液の向きが図6に示すものを裏返したものになり、したがって、軽い長い繊維84が表面32に沿って配置され、微粉と中間繊維から成る中間層82が、層84の上に配置され、重い微粉と短い繊維とから成る高密度の層80が、層82の上に配置される。
【0030】
図7および8に示す実施形態においては、洗浄効率が高められうる。というのは、長い軽い繊維がフィルター物質の補充物として働き、濾過と収率の低下を防止するからである。前述のように、図5および6に示す層化供給原料は、ここでの場合、水力学的性能の向上が必要であるときに、選択される。
【0031】
図9に示すもう一つの実施形態は、ヘッドボックス20とドクター50との中間に配置された圧縮ロール188を有する第一のフィルター30を有している。本発明のこの形においては、パルプ懸濁液が、ドクター50によるマット剥ぎ取りの上流で、第一のフィルターの内表面32に沿うローラーのニップによって圧縮され、マットコンシステンシーが高められる。この図に示す構成は圧縮ローラーが第一のフィルターと協働するようになっているが、一つ以上の圧縮ローラーを第二のフィルターと協働するように使用して、剥ぎ取られるマットのコンシステンシーを高めるようにすることもできる。
【0032】
また、回転円筒のどちらかまたは両方に沿って洗浄シャワーノズルをも追加配置することができる。図10は一つのそのような構成を示し、この場合、シャワーノズル190がヘッドボックス20とドクター50との中間に備えられ、洗浄水を移動中のマットに供給することができる。その他の構成たとえば図11に示すようなものも可能であり、この場合、複数の供給ヘッダーと複数のドクターを、回転フィルター物質に沿って配置することができる。図11に示すように、供給ヘッダーとドクター剥ぎ取り手段との第二または下流の組が、第一の組の下流に備えられる。下流のヘッダー20bと下流のドクター50bとは、単一の回転フィルター表面に沿う複数のパルプ供給および剥ぎ取りサイクルを与える。その結果、非常に経済的な設計が可能になる。
【0033】
予備的な結果によれば、この2ゾーン洗浄装置は、たとえばコピー用紙、OCC、およびオフィスの雑多な廃棄物を含みうるパルプスラリーから、灰、インク、および粘着物(stickies)、ならびに微粉を除去するのに有効である。現在のところ、内側の網(wire medium)は外側の網よりも目を大きくするのが好ましい。現在のデータからは、灰の除去は60μmのフィルター物質の場合に最大になり、微粉の除去は200μmを使用した場合に最大になる、と考えられる。フィルター物質は、たとえば、約30〜600μmの目を有するナイロン、ポリエステル、その他のポリマーの網スクリーンとすることができる。現在のところ、正方形の目を有する織られたポリマー物質が好ましい。しかし、楔形ワイヤのフィルターカートリッジも、許容されるフィルター物質として挙げることができる。たとえば、約0.025〜0.254 mm(約0.001〜0.010インチ)のスロット開口を有する楔形ワイヤカートリッジを、約0.508〜1.14 mm(約0.020〜0.045インチ)の太さの滑らかなワイヤを用いて製造することができる。予備的な結果によれば、この2ゾーン洗浄装置は向上した灰除去を示す一方、最低限の繊維損失を示した。
【0034】
作業パラメータの一例として、約300 cmの長さを有する、同心配置の内側および外側円筒が挙げられる。一つの実施形態においては、内側円筒は、約250 cmの直径を有する。このように、この装置は、コンパクトにまとまっており、小さな床面積しか必要でない。スラリーに加わるg力は、一般に、約50〜350 Gの程度とすることができる。この2ゾーン洗浄装置への初期供給原料のコンシステンシーは、約0.1〜10%、好ましくは約0.5〜5.0%の程度とすることができる。
【0035】
以上、本発明をいくつかの好ましい実施形態に即して詳しく説明したが、他の実施形態も可能である。したがって、本発明の特許請求の範囲の各請求項に示す意図と特許請求の範囲とは、ここで示した好ましい実施形態の記述内容のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の洗浄装置の一つの実施形態の前面図である。
【図2】図1の洗浄装置の側面図である。
【図3】本発明による装置の内部要素の斜視前面図である。
【図4】図3に示す装置の斜視背面図である。
【図5】図3に示す装置の内側円筒すなわち第一の円筒に隣接配置される、本発明による好ましいパルプ供給装置の概略図である。
【図6】図5の内側円筒のフィルター表面に接触する層化パルプ供給原料の簡単化断面図である。
【図7】図3に示す装置の内側円筒すなわち第一の円筒に隣接配置される、もう一つのパルプ供給装置の概略図である。
【図8】図7の矢印8−8によって示される平面に沿う、裏返しパルプ原料供給ノズルの簡単化断面図である。
【図9】本発明による一つの回転フィルター円筒の別の実施形態の簡単化模式断面図であり、パルプ供給原料とドクター剥ぎ取り器との間の圧縮ローラーの配置を明瞭に示す。
【図10】本発明による一つの回転フィルター円筒の別の実施形態の簡単化模式断面図であり、移動するマットに対する洗浄水供給ノズルの配置を示す。
【図11】複数の、供給ヘッダーとドクター剥ぎ取り器との組を示す、さらに別の実施形態の簡単化模式断面図である。
【符号の説明】
【0037】
2 軸
5 脱水装置
10 モーター
12 軸受けジャーナル
14 ベルト
16 ハブ
20 ヘッドボックス
20b 下流のヘッダー
30 第一の円筒フィルター
32 30の内表面
33 羽根
35 羽根
40 第二の円筒フィルター
42 40の内表面
50 ドクターブレード
50b 下流のドクターブレード
51 排出管
52 ドクターブレード
55 出口管
60 出口
62 表面
72 円錐部分
74 閉じた先端
76 ハウジング表面
78 スロット状開口(ノズル)
80 第一の層
82 中間層
84 頂層
90 接線方向入口
93 土台部
95 軸
100 層化供給原料
178 裏返しノズル
188 圧縮ロール
190 シャワーノズル
200 噴出出口
202 流路
204 スロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水システムにおいてパルプ原料から液体を除去するためのパルプ濃縮装置であって、
前記装置にパルプ原料を供給するための供給マニホールド、
前記供給マニホールドから前記パルプ原料を受け取る第一の円筒フィルターであって、前記パルプ原料に対する遠心力を発生させて該フィルターを通して液体を追い出すための、該フィルターに接触する付属ワイヤ要素を有しない、第一の円筒フィルター、
前記パルプ原料を前記第一の円筒フィルターの表面から剥ぎ取るための第一の剥ぎ取り手段、
から成ることを特徴とするパルプ濃縮装置。
【請求項2】
さらに、前記第一の円筒フィルターを包囲して、前記第一のフィルターを通過して流れるパルプ繊維を集めるための第二の円筒フィルターであって、該フィルターに接触する付属ワイヤ要素を有しない第二の円筒フィルターを有することを特徴とする請求項1に記載のパルプ濃縮装置。
【請求項3】
さらに、前記パルプ原料を前記第二の円筒フィルターの表面から剥ぎ取るための第二の剥ぎ取り手段を有することを特徴とする請求項2に記載のパルプ濃縮装置。
【請求項4】
前記第二の円筒フィルターが前記第一の円筒フィルターよりも小さな目を有することを特徴とする請求項2に記載のパルプ濃縮装置。
【請求項5】
前記第一および第二の円筒フィルターが、両方とも、一つの共通軸のまわりに回転することができ、液体を前記パルプ原料から追い出す遠心力を発生させることを特徴とする請求項2に記載のパルプ濃縮装置。
【請求項6】
さらに、前記装置から液体を排出するための出口を有することを特徴とする請求項5に記載のパルプ濃縮装置。
【請求項7】
さらに、前記供給マニホールドと前記第一の剥ぎ取り手段との間に、前記第一の円筒フィルターに隣接する圧縮ローラーを有することを特徴とする請求項1に記載のパルプ濃縮装置。
【請求項8】
さらに、前記供給マニホールドと前記第一の剥ぎ取り手段との間に、前記第一の円筒フィルターに隣接する水洗ノズルを有することを特徴とする請求項1に記載のパルプ濃縮装置。
【請求項9】
前記供給マニホールドと第一の剥ぎ取り手段とが供給マニホールドと剥ぎ取り手段との第一の対を形成し、前記脱水システムが、さらに、前記第一の円筒フィルターと協働する供給マニホールドと剥ぎ取り手段とのもう一つの対を有することを特徴とする請求項1に記載のパルプ濃縮装置。
【請求項10】
パルプ原料を脱水する方法であって、
a. パルプ原料を第一のワイヤレス回転フィルターに送り、
b. 前記パルプ原料に遠心力を加え、
c. 前記第一の回転フィルターを通して、液体、短いパルプ繊維、および不純物を前記パルプ原料から追い出し、
d. 前記第一の回転フィルター上の、繊維その他の物質を含む第一の受入れ材料を集め、
e. 前記第一の受入れ材料を前記第一のフィルターから剥ぎ取る、
各ステップから成ることを特徴とする方法。
【請求項11】
さらに、前記短いパルプ繊維と不純物とを第二のワイヤレス回転フィルター上に受けるステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ワイヤレスパルプ濃縮システムであって、
二つの円筒フィルターを有し、該フィルターがパルプ原料を供給するための供給ラインを備え、該フィルターに遠心力を与えてパルプ原料から水と不純物とを追い出すためのものであることを特徴とするシステム。
【請求項13】
パルプ原料を濃縮するための方法であって、
a. 第一のフィルター物質を備えた第一の回転円筒を備え、
b. 第二のフィルター物質を備えた第二の回転円筒を備え、
c. パルプ原料懸濁液を前記第一の回転円筒内に供給し、
d. 前記第一の回転円筒内の前記パルプ原料懸濁液に遠心力を加えて、液体、短い繊維、および不純物を、前記第一のフィルター物質を通過させて追い出し、前記第一のフィルター物質から第一の受入れ原料を集め、
e. 前記追い出された液体、短い繊維、および不純物を前記第二の回転円筒内に送り、
f. 前記第二の回転円筒内の前記追い出された液体、短い繊維、および不純物に遠心力を加えて、液体を、前記第二のフィルター物質を通過させて追い出し、前記第二のフィルター物質から第二の受入れ原料を集める、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
さらに、前記第一のフィルター物質を通過する前記パルプ懸濁液の流量を調節するために、前記第一の回転円筒の周囲に沿って第一の羽根手段を備えることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記第二のフィルター物質を通過する前記パルプ懸濁液の流量を調節するために、前記第二の回転円筒の周囲に沿って第二の羽根手段を備えることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第二のフィルター物質が前記第一のフィルター物質よりも小さな目を有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップ(c)が、前記第一の回転円筒の内表面上に前記パルプ懸濁液の層化供給原料を供給することから成ることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記層化供給原料が、前記パルプ懸濁液の複数層の配列を有し、該配列が前記内表面に接触する短い繊維と重い微粉から成る第一の層を有することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数層の配列が、前記第一の層に重なり、前記内表面から離れた長い繊維と軽い微粉から成る上部層を有することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第二の回転円筒が、前記第一の回転円筒を包囲して、該円筒と同心に配置されていることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項21】
パルプ原料懸濁液を濃縮するための装置であって、
a. 第一のフィルター物質を支持する第一の回転円筒、
b. 第二のフィルター物質を支持する第二の回転円筒、
c. 前記第一の回転円筒内にパルプ原料懸濁液を供給するための手段、
d. 前記第一および第二の回転円筒を回転させてこれらの円筒に遠心力を発生させる手段であって、ここで、前記第一の回転円筒内のパルプ原料懸濁液が前記第一のフィルター物質にぶつかって、第一の受入れ原料が前記第一のフィルター物質の一つの側面に形成され、また前記パルプ原料懸濁液からの液体その他の物質を前記第一のフィルター物質を通過させて押し出し、前記第二のフィルター物質に接触させ、ここで、第二の受入れ原料が前記第二のフィルター物質上に集まるような手段、
e. 前記第一のフィルター物質上に形成される受入れ原料を集めるための手段、
f. 前記第二のフィルター物質上に形成される受入れ原料を集めるための手段、
g. 前記第一および第二のフィルター物質を通過する物質を前記装置から運び出す手段、
から成ることを特徴とする装置。
【請求項22】
前記第二のフィルター物質が前記第一のフィルター物質よりも小さな目を有することを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記第二の回転円筒が、前記第一の回転円筒を包囲し、該円筒と同心であることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記第一の回転円筒が、前記第一の回転円筒の周囲に沿って調節自在の羽根手段の第一の組を有し、該羽根それぞれの間の間隙を選択的に調節して、前記第一の回転円筒を通過する前記パルプ原料懸濁液の流量を調節するようになっていることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項25】
前記第二の回転円筒が、前記第二の回転円筒の周囲に沿って調節自在の羽根手段の第二の組を有し、該羽根の前記第二の組のそれぞれの羽根の間の間隙を選択的に調節して、前記第二のフィルター物質を通過する前記パルプ懸濁液の流量を調節するようになっていることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
フィルター物質表面にパルプ懸濁液を供給するのに適したヘッドボックス供給装置であって、
中心軸、土台端、および閉じた頂部端を有する閉じた切頭円錐の形のサイクロン式分離器、
前記土台端にあって、前記軸から横方向にずれていて、前記パルプ懸濁液が前記円錐にはいるときに該懸濁液に回転ベクトルを付与する入口開口、
前記土台端と前記閉じた頂部端との間で前記円錐に接続され、前記パルプ懸濁液のための出口を与える供給スロットマニホールド、
から成ることを特徴とするヘッドボックス供給装置。
【請求項27】
前記供給スロットマニホールドが切頭円錐から離れる方向に延びるハウジング部分を有することを特徴とする請求項26に記載のヘッドボックス供給装置。
【請求項28】
前記供給スロットマニホールドが前記軸から横方向にずれていることを特徴とする請求項27に記載のヘッドボックス供給装置。
【請求項29】
前記ハウジングが、前記切頭円錐から離れる方向に延びる第一の脚と一つのスロットで終わる丸みをつけられた部分とを有することを特徴とする請求項27に記載のヘッドボックス供給装置。
【請求項30】
フィルター表面にパルプ懸濁液を供給する方法であって、
a. 分離器を備え、
b. 前記パルプ懸濁液を前記分離器内に受入れ、
c. 前記分離器内に前記懸濁液の層化配列を形成し、該配列が、重い微粉、短い繊維、および不純物から成る第一の層と、長い繊維および軽い微粉から成る第二の層とを含み、
d. 前記層化配列を前記フィルター表面に供給する、
ことから成ることを特徴とする方法。
【請求項31】
前記ステップ(d)が、前記第一の層が前記フィルター表面に接触し、前記第二の層が前記第一の層に重なるように配置することから成ることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ステップ(d)が、長い繊維および軽い微粉から成る前記第二の層が前記フィルター表面に接触し、前記第一の層が前記第二の層に重なるように配置することから成ることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項33】
さらに、微粉および繊維から成る中間層を生成させ、該中間層を前記第一および第二の層の間に配置することを含むことを特徴とする請求項30に記載のパルプ懸濁液をフィルター表面に供給する方法。
【請求項34】
前記分離器が、請求項26から29の中のいずれか一つに記載のヘッドボックス供給装置であることを特徴とする請求項30に記載のパルプ懸濁液をフィルター表面に供給する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−534851(P2007−534851A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508426(P2007−508426)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/012176
【国際公開番号】WO2005/099554
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(504151963)カデント ブラック クローソン インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】