説明

2成分現像剤

【課題】帯電付与能力に優れ、継続して高濃度でハーフトーンに濃度ムラのないプリント画像を得ることができる2成分現像剤の提供。
【解決手段】少なくともトナーとキャリアを有する2成分現像剤において、前記キャリアは芯材の表面に樹脂コート層を有しており、前記芯材は体積基準メディアン径が15〜40μmであり、前記樹脂コート層は樹脂を用いた乾式コート法により形成されており、前記樹脂コート層は重量平均分子量が100,000〜1,000,000の樹脂Aと重量平均分子量が5,000〜50,000の樹脂Bから形成されており、前記樹脂Aと樹脂Bの含有量の比率が40質量部:60質量部〜90質量部:10質量部であることを特徴とする2成分現像剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の複写機やプリンターは、プリント速度の高速化が進んでおり、高速化に有利な2成分現像剤が主流となっている。2成分現像剤で用いるキャリアは、長期にわたって安定してトナーに帯電付与することが求められており、その手段として、磁性をもった芯材の表面に樹脂コート層をもうけた樹脂コートキャリアが知られている。
【0003】
樹脂コートキャリアの製造方法として、湿式コート法と乾式コート法が開示されている。湿式コート法は製造工程で溶剤を用いるため環境に対して問題が有り、樹脂粒子を直接被覆する乾式コート法が環境に優しく好ましいことが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
又、複写機やプリンターは、プリント速度の高速化により、従来のオフィス領域にとどまらず、プロダクションプリント市場で使用される機会が増加している。プロダクションプリント市場においては、出力画像そのものが商品であり、当然、高い画質が求められている。
【0005】
高画質な画像を得る方策の1つとして、キャリアを小粒径化することが有効である。しかし、乾式コート法では、キャリアを小粒径化すると、芯材とコートする樹脂粒子の質量差が小さくなり、コートするのに必要な衝撃力を樹脂粒子に与えることができなくなるため、均一に密着性高くコートすることができなかった。
【0006】
その結果、キャリアの帯電付与能力が低下したり、コート樹脂の耐摩耗性が低下したりして、画質が低下したり、キャリアの寿命が短くなってしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−51565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、帯電付与能力に優れ、継続して高濃度でハーフトーンに濃度ムラのないプリント画像を得ることができる2成分現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、下記構成を採ることにより達成される。
1.少なくともトナーとキャリアを有する2成分現像剤において、
前記キャリアは芯材の表面に樹脂コート層を有しており、
前記芯材は体積基準メディアン径が15〜40μmであり、
前記樹脂コート層は樹脂を用いた乾式コート法により形成されており、
前記樹脂コート層は重量平均分子量が100,000〜1,000,000の樹脂Aと重量平均分子量が5,000〜50,000の樹脂Bから形成され、
前記樹脂Aと樹脂Bの含有量の比率が40質量部:60質量部〜90質量部:10質量部であることを特徴とする2成分現像剤。
2.前記芯材は体積基準メディアン径が20〜35μmであることを特徴とする前記1に記載の2成分現像剤。
3.前記樹脂Aの重量平均分子量が300,000〜800,000、樹脂Bの重量平均分子量が10,000〜50,000であることを特徴とする前記1または2に記載の2成分現像剤。
4.前記樹脂Aと樹脂Bの含有量の比率が60質量部:40質量部〜90質量部:10質量部であることを特徴とする前記1〜3の何れかに記載の2成分現像剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の2成分現像剤は、帯電付与能力に優れ、継続して高濃度でハーフトーンに濃度ムラのないプリント画像を得ることができる優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】撹拌羽根付高速撹拌混合機の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係るカラー画像形成装置の一例を示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
帯電付与能力に優れ、継続して高濃度でハーフトーンに濃度ムラのないプリント画像を得るために、小径(例えば、15〜40μm)の芯材の表面に乾式コート法で樹脂コート層を形成しようとすると、芯材が小さいため良好な樹脂コート層を形成することができなかった。
【0013】
本発明者等は、小径芯材の表面に乾式コート法で良好な樹脂コート層を形成することを検討した。
【0014】
種々検討の結果、小径芯材の表面に低分子量の樹脂粒子と高分子量の樹脂粒子を適量混合した樹脂粒子を、乾式コート法で樹脂コート層を形成すると、良好な樹脂コート層を有するキャリアが得られることを見出した。
【0015】
このキャリアを用いた2成分現像剤で画像を形成すると、多数枚(例えば、25万枚)プリントしても樹脂コート層の剥離や減耗が少なく、帯電量を安定に保つことができ、高濃度でハーフトーンに濃度ムラのないプリント画像を継続して得られることを見いだした。
【0016】
本発明で云うキャリアとは、体積基準メディアン径15〜40μmの芯材の表面に、重量平均分子量100,000〜1,000,000の高分子量の樹脂Aと重量平均分子量5,000〜50,000の低分子量の樹脂Bの樹脂粒子を、配合比(樹脂A:樹脂B)40質量部:60質量部〜90質量部:10質量部で混合し、この混合物を用いて乾式コート法により樹脂コート層を形成したものを云う。
【0017】
尚、本発明においては、樹脂コート層中に必要に応じ無機微粒子や樹脂微粒子を含有させても良い。
【0018】
本発明の目的が達成できたのは、以下のように推察している。
【0019】
高分子量の樹脂Aと低分子量の樹脂Bを一定量の割合で配合した樹脂粒子を、乾式コート法で小径芯材の表面に被覆して樹脂コート層を形成すると、先ず小径芯材の表面に付着した低分子量の樹脂Bが、外部からの加熱と自己発熱により軟化して小径芯材の表面にアンカーコート層を形成する。このアンカーコート層がその後形成される樹脂コート層と小径芯材との接着性を確保し、樹脂コート層の剥離を防止する役割を果たす。
【0020】
その後、高分子量の樹脂Aと低分子量の樹脂Bとで樹脂コート層を形成し、高分子量の樹脂Aが磨耗を防止する役割を果たす。
【0021】
樹脂Aと樹脂Bを適量混合した樹脂粒子を用いて樹脂コート層を形成すると、芯材との接着性が良く、且つ耐磨耗性を有するキャリアが得られる。
【0022】
このキャリアを2成分現像剤に用いると、多数枚プリント中に樹脂コート層が剥離したり磨耗したりすることが防止できる。
【0023】
樹脂コート層が剥離したり磨耗したりしないキャリアを用いた2成分現像剤は、多数枚プリントしても、継続して高濃度のプリント画像を得ることができる。
【0024】
更に、樹脂Aと樹脂Bを同一又は類似組成とすることで、樹脂Aと樹脂Bが相溶し易く、均一な樹脂コート層が形成でき、トナーに対して安定した帯電付与能力を与えることができる。
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0026】
《2成分現像剤》
本発明の2成分現像剤は、特定のキャリアにトナーを混合して得られたものである。
【0027】
2成分現像剤は、モノクロのプリント画像形成、或いはフルカラーのプリント画像形成に用いられる。
【0028】
《キャリア》
先ず、キャリアを構成する部材(芯材、樹脂粒子)について説明する。
【0029】
(芯材)
本発明で用いられる芯材としては、特定の径を有する磁性体粒子であればよく、鉄粉、マグネタイト、各種フェライト系粒子又はそれらを樹脂中に分散したものを挙げることができる。好ましくはマグネタイトや各種フェライト系粒子である。
【0030】
フェライトとしては銅、亜鉛、ニッケル、マンガン等の重金属を含有するフェライトやアルカリ金属及びアルカリ土類金属の何れかを含有する軽金属フェライトが好ましく、特に好ましくはアルカリ金属及びアルカリ土類金属の何れかを含有する軽金属フェライトである。
【0031】
この軽金属フェライト或いはマグネタイトが好ましい理由としては、単に近年で盛んとなっている廃棄物、環境汚染問題のみでは無く、これらに加えてキャリア自体を軽量化することができ、トナーに対するストレスを軽減することができる利点を有しているからである。
【0032】
芯材の径としては、体積基準メディアン径で15〜40μm、好ましくは20〜35μmである。
【0033】
芯材の径を40μm以下とすることで、キャリアの表面積が大きくなり、トナーに対する帯電付与能力が向上し、高濃度のプリント画像が得られる。
【0034】
芯材の径を15μm以上とすることで、均一なコート層を形成することができ、ハーフトーン画像の濃度ムラが無い高品質のプリント画像が得られる。
【0035】
芯材自体が有する磁化特性としては、飽和磁化で20〜80Am/kgが好ましい。
【0036】
尚、芯材の体積基準メディアン径は、湿式分散器を備えてなるレーザ回折式粒度分布測定装置「HELOS」(シンパティック社製)により測定される。
【0037】
飽和磁化は、「直流磁化特性自動記録装置3257−35」(横河電機株式会社製)により測定される。
【0038】
(樹脂)
樹脂Aおよび樹脂Bは、乳化重合法で合成したものが好ましい。
【0039】
樹脂Aおよび樹脂Bを構成する樹脂の組成(単量体)は、同じか或いは類似のものが好ましい。ここで、「類似のもの」とは樹脂を構成する組成の内、少なくとも1種類の組成が共通のものを云う。
【0040】
樹脂Aおよび樹脂Bを構成する樹脂としては、特に限定はないが、好ましくはオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル樹脂、フッ素樹脂を挙げることができる。これらの中では、スチレン−アクリル系樹脂やアクリル系樹脂が帯電性、耐久性の観点からより好ましい。
【0041】
スチレン−アクリル系樹脂やアクリル系樹脂を作製する単量体としては、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル単量体、(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステル単量体、スチレン単量体、アルキルスチレン単量体などが好ましい。
【0042】
(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル単量体として、アクリル酸イソボルニル、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルフェニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中で、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステル単量体として、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどが挙げられる。これらの中で、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートを用いることが好ましい。
(樹脂の重量平均分子量)
樹脂Aの重量平均分子量と樹脂Bの重量平均分子量は異なる。
【0044】
樹脂Aの重量平均分子量は、100,000〜1,000,000、好ましくは300,000〜800,000である。
【0045】
樹脂Bの重量平均分子量は、5,000〜50,000、好ましくは10,000〜50,000である。
【0046】
尚、樹脂の重量平均分子量、粒径は、乳化重合時の、重合開始剤、連鎖移動剤、界面活性剤、重合温度等で調整することができる。
【0047】
樹脂Aの重量平均分子量を上記範囲とすることで芯材と樹脂コート層の接着性と耐摩耗性が確保でき、樹脂Bの重量平均分子量を上記範囲とすることで乾式コート法でも小径芯材を良好に被覆でき、且つ樹脂コート層の剥離が防止できる。
【0048】
小径芯材を良好に被覆できるようになったのは、以下のように推察している。
1.樹脂Bが小径芯材の表面に付着される。
2.小径芯材の表面に付着した低分子量の樹脂Bが、外部からの加熱と自己発熱により軟化して小径芯材の表面にアンカーコート層が形成される。
3.このアンカーコート層は熱により延ばされ、小径芯材の表面を均一に覆う。
4.小径芯材の表面を均一に覆ったアンカーコート層の上高分子量の樹脂Aが固着される。
5.その結果、小径芯材の表面が露出することが無くなる。
【0049】
小径芯材の表面が露出しない均一な樹脂コート層が形成されることにより、小径芯材との接着性が確保でき、樹脂コート層の剥離を防止する役割を果たす。
【0050】
樹脂A及び樹脂Bの重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により以下の方法で測定される。
【0051】
装置「HLC−8220GPC」(東ソー社製)およびカラム「TSKguardcolumn SuperHZ−L+TSKgel SuperHZM−M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.35ml/minで流し、測定試料を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する重量平均分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出される。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
(樹脂の体積平均一次粒子径)
樹脂Aと樹脂Bの体積平均一次粒子径は、50〜300nmが好ましい。この範囲の樹脂粒子を用いると、小径の芯材の表面を良好に被覆することができ好ましい。
(樹脂Aと樹脂Bの混合比)
樹脂Aと樹脂Bの混合比は、40質量部:60質量部〜90質量部:10質量部、好ましくは60質量部:40質量部〜90質量部:10質量部の範囲である。混合比を上記範囲とすることにより小径芯材を良好に被覆でき、且つ剥離や減耗が少ない樹脂コート層を形成することができる。
【0052】
樹脂Aを40質量部より多くすることで、耐磨耗性を向上することができる。一方、樹脂Bを10質量部より多くすることで、芯材との接着性が良好になり剥離を防止できる。
(樹脂コート層の膜厚)
樹脂コート層の膜厚は、キャリアの耐久性と電気抵抗値調整の両立の観点より0.5〜3.0μmが好ましく、0.7〜2.0μmがより好ましい。
【0053】
樹脂コート層の膜厚は、以下の方法により算出される値である。
【0054】
集束イオンビーム試料作成装置「SMI2050」(エスエスアイナノテクノロジー(株)製)にてキャリアの中心を通る面でキャリアを切断して測定試料を作製し、その測定試料を透過型電子顕微鏡「JEM−2010F」(日本電子(株)製)にて5000倍の視野で観察し、その視野における最大膜厚となる部分と最小膜厚となる部分の平均値を樹脂コート層の膜厚とする。尚、測定数は50個とし、写真1視野で足りない場合には、測定数50になるまで視野数を増加させるものとする。
【0055】
次に、2成分現像剤の作製について説明する。
【0056】
《2成分現像剤の作製》
2成分現像剤は、キャリアとトナーを混合することで作製することができる。キャリアとトナーの混合比は、キャリア100質量部に対してトナー2〜15質量部が好ましい。キャリアとトナーの混合は、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を使用することができる。
【0057】
《キヤリアの作製》
本発明に係るキャリアは、芯材に乾式コート法で樹脂コート層を形成して作製することができる。
【0058】
乾式コート法とは、機械的衝撃や熱を加えてコートする方法があり、下記の如き工程により、芯材の表面に樹脂コート層を形成する方法である。
【0059】
1:樹脂コート層を形成しようとする芯材、樹脂粒子及び添加剤(必要に応じ添加)を適量配合した部材を、機械的に撹拌し、芯材表面に樹脂粒子と必要に応じ添加した添加剤を付着させる。
【0060】
2:その後、機械的衝撃や熱を加えて芯材表面に付着した樹脂粒子を溶融或いは軟化させて固着し、樹脂コート層を形成する。
【0061】
3:必要に応じ1〜2の工程を繰り返し、所望の厚さの樹脂コート層を形成する。
【0062】
必要に応じ添加する添加剤としては、カーボンブラック、シリカ微粒子、チタニア微粒子、マグネタイト微粒子、マグネシア微粒子、アルミナ微粒子、フッ素系樹脂微粒子等を挙げることができる。
【0063】
機械的衝撃や熱を加える装置としては、例えばターボミル、ピンミル、クリプトロン等のローターとライナーを有する摩砕機又は撹拌羽根付高速撹拌混合機を挙げることができ、これらの中では撹拌羽根付高速撹拌混合機が良好に樹脂コート層を形成でき好ましい。
【0064】
加熱する場合には、60〜125℃が好ましい。前記範囲の温度で加熱するとキャリア同士の凝集が発生せず、芯材表面に樹脂を固着させることができる。
【0065】
図1は、撹拌羽根付高速撹拌混合機の一例を示す概略図である。
【0066】
図1において、11は本体上蓋で、該上蓋11には原料投入口12、投入弁13、フィルター14、点検口15が設けられている。原料投入口12より所定量の芯材及び被覆用樹脂粒子が投入され、投入された前記原料はモーター22により駆動される水平方向回転体18により撹拌される。該回転体18はその中心部18dに互いに120°の角度間隔で配置された撹拌羽根18a、18b及び18cが結合されていて、これらの羽根は底部10aの面に対して約35°傾けて取り付けられている。このため前記撹拌羽根18a、18b及び18cを高速回転させると、前記原料は上方へ掻き上げられ、本体容器10の上部内壁に衝突して落下するが途中、水平方向回転体19に衝突し、原料の撹拌の促進及び凝集の解砕が行われる。尚17は調温用ジャケット、16は温度計、20は製品取出口、21及び24は排出弁、23は容器内排気口である。
【0067】
《トナー》
本発明の2成分現像剤に用いられるトナーは、トナー母体粒子に外添剤を混合して得られたものが好ましい。
【0068】
〈トナー母体粒子〉
トナー母体粒子は、樹脂と着色剤と離型剤を含有するものが好ましい。
【0069】
トナー母体粒子を製造する方法としては、特に限定されるものではなく、粉砕法、乳化分散法、懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法、その他の公知の方法などが挙げられ、特に、微粉の形成が抑制され、また、小粒径のものを容易に得ることができるため、乳化重合凝集法によって得られたトナー母体粒子を用いることが好ましい。
【0070】
(樹脂)
トナー母体粒子が粉砕法、乳化分散法などによって製造される場合には、トナー母体粒子を構成する樹脂として、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフォン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などの公知の種々の樹脂を用いることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
一方、トナー母体粒子が懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法などによって製造される場合には、トナー母体粒子を構成する樹脂を得るための重合性単量体として、例えばスチレン、スチレン誘導体、メタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸エステル誘導体、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体などのビニル系単量体を挙げることができる。これらのビニル系単量体は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0072】
また、重合性単量体として例えばカルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基などのイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。
【0073】
さらに、重合性単量体として、多官能性ビニル類を用いて架橋構造の結着樹脂を得ることもできる。
【0074】
(着色剤)
トナー母体粒子が含有する着色剤としては特に限定されず、公知の種々のものを用いることができる。
【0075】
着色剤の添加量は、トナー100質量部に対して0.5〜20質量部添加されていることが好ましく、より好ましくは2〜10質量部である。
【0076】
(離型剤)
トナー母体粒子が含有する離型剤としては特に限定されず、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスとしては、特に低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、または酸化型のポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系ワックスを用いることが好ましい。
【0077】
このようにトナー母体粒子が離型剤を含有するものとして構成されることにより、トナーの定着性が向上される。
【0078】
離型剤の添加量は、トナー100質量部に対して0.1〜30質量部添加されていることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。
【0079】
〈外添剤〉
外添剤としては、特に限定されず、公知の種々の外添剤を用いることができる。例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸カルシウムなどよりなる無機酸化物や、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
これら無機化合物はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、表面処理が行われていることが好ましい。
【0081】
外添剤の添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して0.05〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部とされる。
【0082】
(トナー粒子の粒径)
トナー粒子の粒径は、体積基準のメディアン径(D50)で2.5〜7.0μmであることが好ましい。体積基準のメディアン径が2.5〜7.0μmと小径であることにより、細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成できて高画質の印画物が得られる。
【0083】
トナーの体積基準のメディアン径(D50)は「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が5〜10%になるまでピペットにて注入する。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャー径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメディアン径とされる。
【0084】
《画像形成方法》
本発明の2成分現像剤は、モノクロのプリント画像形成方法、或いはフルカラーのプリント画像形成方法に用いることができる。
【0085】
以下、フルカラーのプリント画像形成方法に用いる画像形成装置について説明する。
【0086】
《画像形成装置》
図1は、本発明の2成分現像剤を使用することが可能なカラー画像形成装置の一例を示す概略図である。
【0087】
図1において、1Y、1M、1C、1Kは感光体、4Y、4M、4C、4Kは現像装置、5Y、5M、5C、5Kは1次転写手段としての1次転写ロール、5Aは2次転写手段としての2次転写ロール、6Y、6M、6C、6Kはクリーニング装置、7は中間転写体ユニット、画像形成部10Y、10M、10C、10Kは2成分現像剤を有する画像形成部、24は熱ロール式定着装置、70は中間転写体を示す。
【0088】
この画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状中間転写体ユニット7と、記録部材Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としての熱ロール式定着装置24とを有する。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0089】
各感光体に形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Y、該感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、1次転写手段としての1次転写ロール5Y、クリーニング手段6Yを有する。また、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、該感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、1次転写手段としての1次転写ロール5M、クリーニング手段6Mを有する。また、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、該感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、1次転写手段としての1次転写ロール5C、クリーニング手段6Cを有する。また、更に他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成部10Kは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1K、該感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、1次転写手段としての1次転写ロール5K、クリーニング手段6Kを有する。
【0090】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のロールにより巻回され、回動可能に支持された中間転写エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0091】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材として用紙等の記録部材Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ロール22A、22B、22C、22D、レジストロール23を経て、2次転写手段としての2次転写ロール5Aに搬送され、記録部材P上にカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された記録部材Pは、熱ロール式定着装置24により定着処理され、排紙ロール25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0092】
一方、2次転写ロール5Aにより記録部材Pにカラー画像を転写した後、記録部材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
【0093】
画像形成処理中、1次転写ロール5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の1次転写ロール5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
【0094】
2次転写ロール5Aは、ここを記録部材Pが通過して2次転写が行われるときにのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接する。
【0095】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0096】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とを有する。
【0097】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ロール71、72、73、74、76を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、1次転写ロール5Y、5M、5C、5K及びクリーニング手段6Aとからなる。
【0098】
筐体8の引き出し操作により、画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
【0099】
このように感光体1Y、1M、1C、1K上に帯電、露光、現像によりトナー像を形成し、無端ベルト状中間転写体70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して記録部材Pに転写し、定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。トナー像を記録部材Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、クリーニング装置6Aで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
【実施例】
【0100】
本発明の実施態様を具体的に述べるが、本発明はこの態様に限定されるものではない。
【0101】
《キャリアの作製》
キャリアは、以下のようにして作製した。
【0102】
〈樹脂の作製〉
(樹脂A1の作製)
界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの存在下で、シクロヘキシルメタクリレート50質量部とメチルメタクリレート50質量部とを乳化重合により合成し、樹脂A1(体積平均一次粒子径100nm)が分散されてなる樹脂粒子分散液を作製した。得られた樹脂粒子分散液を、限外濾過装置を用いて水洗し、その後スプレードライヤーで乾燥し、重量平均分子量(Mw)520,000、ガラス転移点(Tg)110℃の「樹脂A1」を作製した。
【0103】
尚、体積平均一次粒子径は、樹脂粒子分散液を動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて測定した。
【0104】
(樹脂粒A2〜A7の作製)
樹脂A1の作製で用いた単量体、組成比を、表1のように変更し、「樹脂A2〜A7」を作製した。尚、重合開始剤、連鎖移動剤、重合温度、単量体滴下速度などを適宜変更して、重量平均分子量を調整した。
【0105】
【表1】

【0106】
(樹脂B1〜B5の作製)
樹脂A1の作製で用いた単量体、組成比を、表2のように変更し、「樹脂B1〜B5」を作製した。尚、重合開始剤、連鎖移動剤、重合温度、単量体滴下速度などを適宜変更して、重量平均分子量を調整した。
【0107】
【表2】

【0108】
〈芯材の準備〉
芯材として、下記のものを準備した。
【0109】
芯材1:体積基準メディアン径が15μmのMn−Mgフェライト粒子
芯材2:体積基準メディアン径が25μmのMn−Mgフェライト粒子
芯材3:体積基準メディアン径が30μmのMn−Mgフェライト粒子
芯材4:体積基準メディアン径が40μmのMn−Mgフェライト粒子
芯材5:体積基準メディアン径が50μmのMn−Mgフェライト粒子
尚、芯材の粒径は、前記の方法で測定した値である。
【0110】
〈キャリア1の作製〉
図1に記載の撹拌羽根付高速撹拌混合機に、「芯材2」100質量部と「樹脂A1」3.7質量部、「樹脂B1」1.6質量部を混合し、混合物の温度が40℃以下になるように注意しながらブレード回転数1000rpmで15分撹拌して樹脂を芯材に付着させた。
【0111】
その後、ジャケットに温調したオイルを流しながらブレードを回転数1000rpmで回転させ、品温を118℃まで上昇させその温度を維持しながら40分更に撹拌し、樹脂を芯材の表面に被覆した。その後、400rpmで撹拌しながら冷却し「キャリア1」を作製した。尚、「キャリア1」の樹脂コート層の膜厚は1.0μmであった。尚、樹脂コート層の膜厚は、前記の方法により測定して得られた値である。
【0112】
〈キャリア2〜22の作製〉
キャリア1の作製で用いた芯材2、樹脂A1、樹脂B1を表3のように変更した以外は同様にして、「キャリア2〜22」を作製した。
【0113】
【表3】

【0114】
《トナー1の作製》
トナーは以下のようにして作製した。
【0115】
〈コア粒子用ラテックスの作製〉
撹拌機、温度計、コンデンサ、窒素吸入管を装着した反応容器中に、純水3,000質量部、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部を投入し、75℃に昇温させて界面活性剤溶液を調製した。次いで、この界面活性剤溶液に5%過硫酸カリウム水溶液60質量部を添加した後、さらに
スチレン 560質量部
n−ブチルアクリレート 160質量部
メタクリル酸 85質量部
からなる混合液を3時間かけて滴下し、その後、窒素雰囲気下で1時間の重合反応を行うことにより、ラテックス〔1〕を調製した。
【0116】
次に、反応容器中に、純水1,000質量部にポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部と上記のラテックス〔1〕180質量部を投入し、混合することにより、ラテックス〔1A〕を調製した。
【0117】
一方、別の反応容器に、
スチレン 168質量部
n−ブチルアクリレート 78質量部
メタクリル酸 26質量部
n−オクチルメルカプタン 4質量部
からなる混合液を投入し、70℃に昇温させた後、撹拌しながら脂肪酸エステル系化合物であるベヘン酸ベヘニル118質量部を少量ずつ添加することにより、ワックス含有モノマー溶液〔W〕を調製した。
【0118】
上記のラテックス〔1A〕を窒素雰囲気下で撹拌しながら73℃に昇温させた後、上記のワックス含有モノマー溶液〔W〕を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)によって10分間分散処理を行うことにより、乳化分散液を得た。この乳化分散液を投入した反応容器に、撹拌機、温度計、コンデンサ、窒素吸入管を装着し、窒素雰囲気下で撹拌しながら78℃に昇温させた。さらに5%過硫酸カリウム水溶液80質量部を投入し、その10分間後にn−オクチルメルカプタン4質量部を投入した後、1時間かけて重合反応を行うことにより、ラテックス〔2〕を調製した(第1段(NP)重合)。
【0119】
さらに、この反応系を35分間かけて80℃まで昇温させ、その後、5%過硫酸カリウム水溶液125質量部を添加し、さらに、
スチレン 270質量部
n−ブチルアクリレート 125質量部
メタクリル酸 43質量部
n−オクチルメルカプタン 7質量部
からなる混合液を1時間かけて滴下し、85℃まで昇温させた後、1時間半かけて重合反応を行うことにより、コア粒子用ラテックス〔3〕を調製した(第2段(SP)重合)。
【0120】
〈シェル層用ラテックスの作製〉
撹拌機、温度計、コンデンサ、窒素吸入管を装着した反応容器中に、純水3,000質量部、ドデシル硫酸ナトリウム7質量部を投入し、80℃に昇温させて界面活性剤溶液を調製した。次いで、この界面活性剤溶液に5%過硫酸カリウム水溶液200質量部を添加した後、さらに
スチレン 500質量部
n−ブチルアクリレート 185質量部
メタクリル酸 175質量部
n−オクチルメルカプタン 14質量部
からなる混合液を3時間かけて滴下し、さらに、90℃に昇温した後、窒素雰囲気下で1時間の重合反応を行い、その後、冷却処理を行うことにより、シェル層用ラテックス〔4〕を調製した。
【0121】
〈着色剤微粒子分散液の調製〉
ドデシル硫酸ナトリウムの10質量%水溶液900質量部を撹拌しながら、着色剤「C.I.ピグメントブルー15;3」210質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「SCミル」(三井鉱山社製)を用いて分散処理することにより、着色剤分散液〔1〕を調製した。この着色剤分散液〔1〕中の着色剤微粒子の体積平均分散径を動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて測定したところ、200nmであった。
【0122】
〈トナー母体粒子の作製〉
(コア粒子の形成)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
コア粒子用ラテックス〔3〕 425質量部(固形分換算)
イオン交換水 900質量部
着色剤分散液〔1〕 25質量部(固形分換算)
を投入して撹拌し、内温を30℃に調整した後、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
【0123】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物40質量部をイオン交換水40質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて反応系に添加し、3分間放置した後に昇温を開始して、この系を60分間かけて75℃まで昇温させて会合を開始した。この状態で「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、会合粒子の粒径が体積基準のメディアン径(D50)で5.0μmとなった時点で、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水200質量部に溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させることにより、コア粒子〔1〕を得た。
【0124】
(シェル層の形成)
次に、上記のコア粒子〔1〕を作製した反応容器を80℃に調整し、これにシェル層用ラテックス〔4〕75質量部(固形分換算)を添加した。さらに、塩化マグネシウム・6水和物8質量部をイオン交換水8質量部に溶解した水溶液を10分間かけて添加した後、85℃(シェル化温度)まで昇温し、1時間にわたって撹拌を継続してコア粒子の表面にシェル層用ラテックス〔4〕中の微粒子を凝集・融着させ、その後、90℃で2時間熟成処理を行った。
【0125】
熟成処理後、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水200質量部に溶解した水溶液を添加し、30℃まで冷却することにより、コア−シェル粒子〔1〕が分散された分散液を得た。
【0126】
(洗浄、および、乾燥)
凝集・融着工程にて生成した粒子を、バスケット型遠心分離機により固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥してトナー母体粒子〔1〕を作製した。このトナー母体粒子〔1〕は、体積基準のメディアン径(D50)が5.5μmであり、コア−シェル構造を有するものであった。
(トナー1の作製)
トナー母体粒子〔1〕100質量部に、外添剤として疎水性シリカ(数平均一次粒子径=10nm)1.3質量部、疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.6質量部、ステアリン酸亜鉛(体積基準のメディアン径=10μm)0.15質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井鉱山社製)を用い、周速40m/secで25分間混合して「トナー1」を作製した。
【0127】
《現像剤の作製》
上記で作製した各「キャリア1〜22」100質量部と、「トナー1」7質量部を順次V型混合機で5分間混合し、「2成分現像剤1〜22」を調製した。
【0128】
《評価》
評価装置としてデジタルカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ製)を準備し、上記で作製した「トナー1」と「2成分現像剤1〜22」を順次装填し、25万枚のプリントを行った。
【0129】
尚、プリントは、常温常湿(20℃、55%RH)の環境で、印字率5%の文字画像をA4の上質紙(64g/m)に行った。
【0130】
〈画像濃度〉
先ず、印字されていない白紙について、マクベス反射濃度計「RD−918」を用いて5ヶ所の絶対画像濃度を測定して平均し、白紙濃度とする。
【0131】
実写0枚、及び25万枚プリント時点でベタ画像をプリントし、白紙濃度に対する出力画像の相対反射濃度を5ヶ所について測定し、その平均値を画像濃度とした。
【0132】
画像濃度が1.20以上のものを実用的問題ないものと判断した。
【0133】
〈磨耗量率(被覆量の減少率)〉
本発明では、芯材からの樹脂コート層の剥離量と磨耗量を区別して測定できないので、両方を加味した被覆量の減少率で評価した。
【0134】
被覆量の減少率は、下記の方法で測定した。
(前準備)プリント開始前と25万枚プリント後の2成分現像剤をそれぞれビーカーに入れ、それに少量の中性洗剤を含有する純水を入れてよくなじませ、ビーカー底に磁石を当てながら上澄み液を捨てる。更に、純水を入れて上澄み液を捨てることで、トナー及び中性洗剤を除き、キャリアのみを分離する。40℃にて乾燥し、プリント開始前と20万枚プリント後のキャリアを得る。
(測定)プリント開始前と25万枚プリント後のキャリア2gをビーカーに精秤し、このビーカーに樹脂コート層のアクリル樹脂を溶解するメチルエチルケトンを100ml入れ、樹脂コート層を溶解して除去した後、芯材を分離乾燥し、芯材の質量を測定する。精秤したキャリアの質量と芯材の質量の差から樹脂コート層の質量を算出する。
(計算)キャリアの質量をA、芯材の質量をMとすると、樹脂コート層の質量XはA−Mで求められる。芯材に対する樹脂コート層の割合は、(A−M)/M×100(%)で求められる。
【0135】
磨耗による樹脂コート層の磨耗量率(%)は、初期被覆量をX%、20万枚プリント後の被覆量をX%とすると、樹脂コート層の被覆量の減少率(%)は(X−X)/Xで求められる。尚、被覆量の減少率は30%以下を合格とする。
【0136】
〈ハーフトーン画像の濃度ムラ評価〉
ハーフトーン画像の濃度ムラ評価は、25万枚プリント終了後に、25%ハーフトーン画像をプリントし、プリントして得られたハーフトーン画像の画質を目視にて評価した。
【0137】
評価基準
◎:ハーフトーン画像に濃度ムラが見られない。
【0138】
○:ハーフトーン画像に濃度ムラがやや見られるが画質は問題ない。
【0139】
×:ハーフトーン画像に濃度ムラが見られ画質に問題あり。
【0140】
表4に、評価結果を示す。
【0141】
【表4】

【0142】
表4に示すように、本発明に該当する実施例1〜15の「2成分現像剤1〜15」は何れの評価項目も良好な結果が得られた。一方、本発明外の比較例1〜7の「2成分現像剤16〜22」はこれらの評価項目の何れかに問題が見られ、本発明の効果が発現されていないことが確認できた。
【符号の説明】
【0143】
1 感光体(感光体ドラム)
4 現像装置(トナーカートリッジ)
6 クリーニング装置
7 中間転写ベルト
10 画像形成部
24 定着装置
240 加熱ロール
241 シームレスベルト
P 転写材(記録材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともトナーとキャリアを有する2成分現像剤において、
前記キャリアは芯材の表面に樹脂コート層を有しており、
前記芯材は体積基準メディアン径が15〜40μmであり、
前記樹脂コート層は樹脂を用いた乾式コート法により形成されており、
前記樹脂コート層は重量平均分子量が100,000〜1,000,000の樹脂Aと重量平均分子量が5,000〜50,000の樹脂Bから形成され、
前記樹脂Aと樹脂Bの含有量の比率が40質量部:60質量部〜90質量部:10質量部であることを特徴とする2成分現像剤。
【請求項2】
前記芯材は体積基準メディアン径が20〜35μmであることを特徴とする請求項1に記載の2成分現像剤。
【請求項3】
前記樹脂Aの重量平均分子量が300,000〜800,000、樹脂Bの重量平均分子量が10,000〜50,000であることを特徴とする請求項1または2に記載の2成分現像剤。
【請求項4】
前記樹脂Aと樹脂Bの含有量の比率が60質量部:40質量部〜90質量部:10質量部であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の2成分現像剤。

【図1】
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【図2】
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