説明

2成分現像剤

【課題】高速画像形成装置で多数枚プリントを行っても、かぶりや、べた画像部で掃き寄せによる濃度むらの発生が無く、継続して高品質のプリント物を得ることができる2成分現像剤を提供することにある。
【解決手段】少なくとも結着樹脂と着色剤を有するコア粒子の表面にスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を有するシェル層を形成したコア・シェル構造のトナーと、キャリアから構成される2成分現像剤において、該トナーがその粒子表面に数平均1次粒子径70nm以上130nm以下のシリカ粒子を付着したもので、該キャリアが多孔質フェライト芯材の表面に樹脂被覆層を設けたものであることを特徴とする2成分現像剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーの流動性、帯電付与性、転写・クリーニング性向上等の目的で、種々の添加剤が用いられている。中でもテトラアルコキシシランの加水分解、縮合反応より得られるゾルゲル法シリカは、一般的なヒュームドシリカに比べ、形状が球形に近く、比較的大粒径でかつ粒度分布が均一である為に、トナー粒子の表面に一次粒子として付着させ、トナーの流動性を向上させると共に、感光体や中間転写体との付着力を低減させるため、転写性向上に大きく寄与することが知られている。またその強固な構造より、樹脂粒子に比べて現像装置中での撹拌ストレスに対しても強く、変形やトナー粒子内部へ埋没し難い為、帯電付与性、流動性、転写性の維持性にも優れている。その中でも、大径(例えば、数平均1次粒子径60〜300nm)のシリカを用いた場合にトナー粒子内部への外添剤の埋没が低減されるので、帯電付与性が維持できることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、大径の外添剤を付着させたトナーとキャリアからなる2成分現像剤を、高速の画像形成装置に用いると、べた画像部で掃き寄せによる濃度むらが発生するという問題が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−279607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高速画像形成装置で多数枚プリントを行っても、かぶりや、べた画像部で掃き寄せによる濃度むらの発生が無く、継続して高品質のプリント物を得ることができる2成分現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、下記構成により達成される。
【0007】
1.少なくとも結着樹脂と着色剤を有するコア粒子の表面にスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を有するシェル層を形成したコア・シェル構造のトナーと、キャリアから構成される2成分現像剤において、
該トナーがその粒子表面に数平均1次粒子径70nm以上130nm以下のシリカ粒子を付着したもので、
該キャリアが多孔質フェライト芯材の表面に樹脂被覆層を設けたものであることを特徴とする2成分現像剤。
【0008】
2.前記多孔質フェライト芯材の嵩密度が、1.1g/cm以上2.0g/cm以下であることを特徴とする前記1に記載の2成分現像剤。
【0009】
3.前記多孔質フェライト芯材の内部及び表面に存在する細孔の細孔径が、0.2μm以上0.7μm以下であることを特徴とする前記1又は2に記載の2成分現像剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の2成分現像剤は、高速画像形成装置で多数枚プリントを行っても、かぶりや、べた画像部で掃き寄せによる濃度むらの発生が無く、継続して高品質のプリント物が得られる優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】多孔質フェライト芯材の断面の一例を示す模式図である。
【図2】本発明で用いられるキャリアの製造工程を模式的に説明する図である。
【図3】上記画像パターンを出力した一例を示す。
【図4】画像スキャナシステムで取り込んだサンプル画像のY軸に対する濃度分布の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
かぶりの無い高品質の画像を継続して得る目的で、大径シリカを付着させたトナーを用いることが検討されている。
【0013】
しかしながら、大径シリカを付着させて得られたトナーは流動性が良く感光体表面とトナーとの付着力が弱くなり、感光体表面に形成されたべた画像部のトナーが磁気ブラシの穂によりべた画像部の端に掃き寄せられ、掃き寄せられたトナーによりべた画像部の端部が濃くなるという問題が発生していた。
【0014】
本発明者らは、高速で現像してもかぶりや、べた画像部で掃き寄せによる濃度むらの発生が無く、継続して高品質のプリント物が得られる2成分現像剤について検討を行った。
【0015】
種々検討の結果、トナー粒子の表面に数平均1次粒子径70nm以上130nm以下のシリカ粒子を付着したトナーと、多孔質フェライト芯材表面に樹脂被覆層を設けたキャリアから構成される2成分現像剤を用いると、本願発明の目的が達成できることを見出した。
【0016】
数平均1次粒子径が70nm以上のシリカ粒子はプリント中にトナー粒子中に埋没されにくく、数平均1次粒子径が130nm以下のシリカ粒子はプリント中にトナー粒子の表面から離脱しにくく、多数枚プリントしても、帯電付与性を継続して確保でき、かぶりの発生が防止できる。
【0017】
多孔質フェライト芯材の表面に樹脂被覆層を設けたキャリアを用いると、キャリアの比重が軽くなるので磁気ブラシの穂は軟らかくなる。この軟らかい磁気ブラシの穂は、感光体表面に形成されたべた画像部のトナーにソフトに接触するので、べた画像中のトナーが磁気ブラシによりべた画像の端に掃き寄せられるのが防止できる。
【0018】
さらに、嵩密度が1.1g/cm以上2.0g/cm以下であり、キャリアの内部及び表面に存在する細孔の細孔径が0.2μm以上0.7μm以下である多孔質フェライト芯材を用いると、磁気ブラシの穂がより軟らかくなり好ましい。
【0019】
多孔質フェライト芯材は、残留磁化を小さいので、キャリアの流動性がよくなり、より掃き寄せの発生を防止できる。
【0020】
数平均1次粒子径が70nm以上130nm以下のシリカ粒子を付着させたトナーと多孔質フェライト芯材の表面に樹脂被覆層を設けたキャリアから構成される2成分現像剤を用いることで、高速画像形成装置で現像してもかぶりが無く、べた画像部での掃き寄せによる濃度むらが無く、継続して高品質のプリント物が得られる。
【0021】
さらに、コア・シェル構造のトナーにおいて、スチレン−アクリル樹脂をグラフトさせて得られたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を用いて形成されたシェル層は、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑な層を形成できるので、外添剤をトナー粒子の表面に均一に付着させることができ、帯電分布がシャープとなり、よりかぶりの発生を防止できる。
【0022】
さらに、コア・シェル構造のトナーにおいて、スチレン−アクリル樹脂でコア粒子を形成し、その上にスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を用いてシェル層を形成すると、コア粒子とシェル層の接着性が良くなり、多数枚プリントを行っても、コア粒子からシェル層が剥離しにくくなり、継続して高品質のプリント物がより得られる。
【0023】
以下、本発明について説明する。
【0024】
《2成分現像剤》
本発明で用いられる2成分現像剤は、トナーとキャリアとを含むものである。
【0025】
キャリアとトナーとの配合比は、キャリア100質量部に対してトナー3〜15質量部が好ましく、4〜10質量部がより好ましい。
【0026】
本発明で用いられる2成分現像剤は、キャリアとトナーを、混合装置を用い混合することで得ることができる。
【0027】
混合装置としては、例えばヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株)製)、ナウターミキサー(パウダーテック社製)、V型混合機を挙げることができる。
【0028】
〈トナー〉
本発明で用いられるトナーは、結着樹脂と着色剤を有するコア粒子の表面にスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を有するシェル層を形成して得られるトナー母体粒子の表面に、数平均1次粒子径70〜130nmのシリカ粒子(以下、単にシリカ粒子とも云う)を付着して得られたものである。
【0029】
数平均1次粒子径70nm以上のシリカ粒子を用いることで、プリント中にトナー母体粒子中へシリア粒子が埋没するのを防止できる。
【0030】
また、数平均1次粒子径が130nm以下のシリカ粒子を用いることで、トナー母体粒子表面へ良好にシリカ粒子を付着させることができる。
【0031】
本発明で用いられるトナーの体積基準におけるメディアン径(D50)は、3.0μm以上8.0μm以下のものであることが好ましい。体積基準におけるメディアン径(D50)を上記範囲とすることにより、たとえば、1200dpi(dpi;1インチ(2.54cm)あたりのドット数)レベルの非常に微小なドット画像を忠実に再現することも可能になる。
【0032】
(コア粒子)
コア粒子を形成する樹脂としては、スチレンアクリル樹脂が好ましい。スチレンアクリル樹脂を用いることで、コア粒子の上に設けるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を用いて形成するシェル層との接着性が良くなる。
【0033】
スチレンアクリル樹脂は、そのTgが35℃以上55℃以下のものが好ましい。スチレンアクリル樹脂のTgが35℃以上であると耐熱保管性が良好となり、Tgが55℃以下であると低温定着性を満足できる。
【0034】
スチレンアクリル樹脂は、そのMwが20,000〜40,000のものが好ましい。スチレンアクリル樹脂のMwが20,000以上であると耐熱保管性が良好となり、Mwが40,000以下であると低温定着性を満足できる。
【0035】
(シェル層)
シェル層を形成する樹脂としては、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を用いる。
【0036】
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂は、そのTgが50〜70℃のものが好ましい。スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のTgが50℃以上であると耐熱保管性が良好となり、Tgが70℃以下であると低温定着性を満足できる。
【0037】
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂は、そのMwが7,000〜19,000のものが好ましい。スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のMwが7,000以上であると耐熱保管性が良好となり、Mwが19,000以下であると低温定着性を満足できる。特に、Mwが7,000以上のスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を用いるとスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂のホモ凝集が起こりにくくなり、Mwが19,000以下のスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を用いるとコア粒子の表面にスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を集めやすくなり、コア粒子の表面にシェル層が形成されやすくなる。
【0038】
(トナー母体粒子)
本発明で用いられるトナー母体粒子は、コア粒子の表面にシェル層を設けて得られるコア・シェル構造の粒子である。トナー母体粒子中でコア粒子の占める割合とシェル層の占める割合(コア粒子の質量%:シェル層の質量%)は、90:10〜60:40が好ましい。
【0039】
スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を有すシェル層の占める割合が10質量%未満では十分な耐熱保管性が得られないおそれがあり、また、40質量%を超えると十分な低温定着性が得られないおそれがある。
【0040】
(シリカ粒子)
シリカ粒子は、表面処理をしていない粒子でも、耐熱保管性および環境安定性の観点からシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって表面処理がされた粒子でも好ましく用いられる。
【0041】
シリカ粒子の混合量は、トナー100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。
【0042】
シリカ粒子の数平均1次粒子径は、下記の方法によって測定されるものである。
【0043】
走査型電子顕微鏡にてトナーの3万倍写真を撮影し、この写真画像をスキャナーにより取り込む。画像処理解析装置「LUZEX AP」(ニレコ製)にて、該写真画像のトナー表面に存在する外添剤について2値化処理し、外添剤1種につき100個についての水平方向フェレ径を算出、その平均値を数平均1次粒子径とする。尚、外添剤の数平均1次粒子径が小径であり凝集体としてトナー表面に存在する場合は、該凝集体を形成する一次粒子の粒子径を測定するものとする。
【0044】
尚、本発明では、数平均1次粒子径70〜130nmのシリカ粒子以外に他の外添剤を添加することができる。他の外添剤としては、公知の無機微粒子や有機微粒子を挙げることができる。
【0045】
《トナーの製造方法》
トナーの製造方法としては、特に限定されないが、好ましい製造方法として乳化凝集法により作製する方法を挙げることができる。乳化凝集法では、コア粒子の水系分散液中にシェル層用樹脂粒子の分散液を添加し、コア粒子の表面にシェル層用樹脂粒子を凝集・融着させてトナー母体粒子を作製する。その後、外添剤をトナー母体粒子に付着させてトナーを作製する。
【0046】
本発明で云う「トナー母体粒子」とはコア粒子の表面にシェル層を有して成るコア・シェル構造を有する粒子のことで、「トナー粒子」とはトナー母体粒子の表面に外添剤を付着したものある。尚、「トナー」とはトナー粒子の集合体のことである。
【0047】
トナー母体粒子の作製方法としては、コア粒子の表面にシェル層用樹脂粒子を凝集・融着させて作製する方法を挙げることができる。この方法では、コア粒子の作製後に、シェル層用樹脂粒子を凝集・融着させシェル層を形成する方法である。すなわち、コア粒子の水系分散液にシェル層用樹脂粒子の分散液を添加する。シェル層用樹脂粒子の付着によってコア粒子の表面にシェル層を形成するときには、コア粒子の凝集・融着工程で所望の粒径に到達させるときの反応温度またはそれ以上の温度に設定することが好ましい。コア粒子に対するシェル層用樹脂粒子の付着を促進するために、コア粒子形成時に用いる凝集剤を適宜追加添加することができる。
【0048】
シェル層用樹脂粒子をコア粒子に凝集させた後は、通常、系の凝集力を消失させて粒子成長を停止し、加熱により融着させるとともにシェル層の被膜化・粒子の形状制御を行う。融着はシェル粒子のガラス転移点以上の温度に加熱することにより行えば良い。また凝集を進行させると同時に融着を行っても良い。
【0049】
以上のようにして得られるコア・シェル構造のトナー母体粒子の形状は、この凝集・融着工程の熟成処理段階における加熱条件を調整することで容易に制御することができる。得られたトナー母体粒子は、通常、洗浄処理、乾燥処理および外添処理がなされる。
【0050】
洗浄処理においては、酸性、場合によっては塩基性の水をトナー母体粒子に対して数倍の量で加え撹拌した後、ろ過して固形分を得る。これに純水を固形分に対して数倍加えて撹拌した後、ろ過を行なう。この操作を数回繰り返し、ろ過後のろ過のpHが約7になった時点で終了し、トナー母体粒子を得る。
【0051】
乾燥処理においては、洗浄処理して得たトナー母体粒子をガラス転移点以下の温度で乾燥する。乾燥処理方法としては、通常の振動型流動乾燥法、スプレードライ法、凍結乾燥法、フラッシュジェット法等、任意の方法を採用することができる。
【0052】
トナー母体粒子に外添剤を付着させる方法としては、乾燥済みのトナー母体粒子に外添剤を粉体で添加後、撹拌・混合する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の混合装置が挙げられる。
【0053】
〈キャリア〉
本発明で用いられるキャリアは、多孔質フェライト芯材の表面に樹脂被覆層を設けたものである。
【0054】
図1は、多孔質フェライト芯材を用いて作製したキャリアの断面の一例を示す模式図である。
【0055】
図1において、1は多孔質フェライト芯材、2は細孔、5は樹脂被覆層、6はキャリアを示す。
【0056】
〈多孔質フェライト芯材〉
本発明で使用される多孔質フェライト芯材は、その体積基準におけるメディアン径(D50)が15μmから80μmのものが好ましく、20μmから60μmのものがより好ましい。多孔質フェライト芯材の体積基準メディアン径を上記範囲とすることにより高画質のトナー画像を安定して形成することが可能になる。前記多孔質フェライト芯材及びキャリアの体積基準メディアン径は、湿式分散装置を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)(シンパテック社製)」により測定が可能である。
【0057】
多孔質フェライト芯材は、その表面に細孔を有するフェライトからなり、その嵩密度が、1.1g/cm以上2.0g/cmのものが好ましく、1.2g/cm以上1.8g/cm以下のものがより好ましい。
【0058】
嵩密度を1.1g/cm以上とすることで、現像剤収納部中で撹拌されても破砕されない強度の多孔質フェライト芯材が得られ、プリント中に破砕した微粒のキャリアが飛散するのを防止でき好ましい。
【0059】
嵩密度を2.0g/cm以下と軽量とすることで、磁気ブラシの穂を軟らかくことができる。
【0060】
また、現像装置中で長時間撹拌されてもキャリアへかかるストレスを小さくすることができ、樹脂被覆層の摩耗が抑えられ、キャリアの劣化が防止でき好ましい。
【0061】

ここで、嵩密度とは、芯材材料で形成される体積と多孔質フェライト芯材の内部及び表面に存在する気孔と呼ばれる空隙の体積の和を用いて算出される比重である。
【0062】
多孔質フェライト芯材の嵩密度は、金属粉の嵩密度試験法であるJIS−Z2504にしたがって測定される値である。
【0063】
多孔質フェライト芯材の細孔径は、例えば、水銀ポロシメータという装置を用いる水銀圧入法により測定が可能である。水銀圧入法は、大抵の物質と反応せず、漏れもない水銀に圧力を加えて固体の細孔中に圧入し、このときに加えた圧力と押し込まれた水銀の容積の関係を測定して細孔径を算出するものである。すなわち、高圧容器内に水銀を充填した試料セルを用意し、容器内を段階的に加圧していくことにより水銀は大きな細孔から小さな細孔へと順に侵入していくので、これを利用して圧入された水銀の容積から細孔径を算出することができる。
【0064】
水銀を圧入する際に加えられた圧力と、その圧力で水銀が侵入することの可能な細孔径の関係は、下記に示すWashbumの式より導かれる。すなわち、
D=−4γcosθ/P
上記式において、Pは加えられた圧力、Dは細孔径、γは水銀の表面張力、θは水銀と細孔壁面の接触角を表す。ここで、γとθは定数であることから、上記式より加えた圧力Pと細孔径Dの関係が求められ、そのときの水銀の侵入容積を測定することにより、細孔径とその容積分布の関係を導くことができる。
【0065】
本発明で使用される多孔質フェライト芯材の細孔径の具体的な測定方法としては、例えば、市販の水銀ポロシメータ「Pascal 140とPascal 1240(いずれもThermo Fischer Scientific社製)」を用いる方法がある。この水銀ポロシメータを使用する測定方法は、以下の手順で行う。すなわち、
(1)測定試料を複数の穴を開けた市販のゼラチン製のカプセルに投入し、当該カプセルを粉体用のディラトメータ「CD3P」内に入れる。
(2)「Pascal 1140」を用いて脱気処理を行った後、水銀を充填して低圧領域(0〜400kPa)下での測定を行い、これを1st Runとする。
(3)上記1st Runの後、再び脱気処理と前記低圧領域下での測定を行い、これを2nd Runとする。
(4)2nd Run実施後、前述したディラトメータ、水銀、カプセル、測定試料を合わせた質量を測定する。
(5)次に、「Pascal 1240」を用いて高圧領域(0.1MPa〜200MPa)下での測定を行い、この高圧領域下での測定で得られた水銀圧入量を用いて多孔質フェライト芯材の細孔容積、細孔径分布及びピーク細孔径を求める。
(6)なお、前記多孔質フェライト芯材の細孔容積、細孔径分布及びピーク細孔径は、水銀の表面張力を480dyn/cm、接触角を141.3°として算出し、前述した様に、ピーク細孔径を当該多孔質フェライト芯材の細孔径とする。
【0066】
多孔質フェライト芯材を構成するフェライトは、式:(MO)x(Fe)yで表される化合物で、フェライトを構成するFeのモル比yを30モル%から95モル%とすることが好ましく、組成比yが前記範囲の値となるフェライト粒子は、所望の磁化を得やすいので、キャリア付着を起こしにくいキャリアを作製する等のメリットを有する。式中のMはFeを除く、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、コバルト(Co)、リチウム(Li)の金属原子で、これらを単独または複数種類組み合わせて使用することが可能である。
【0067】
〈多孔質フェライト芯材の作製〉
本発明に使用される多孔質フェライト芯材は、公知の方法により作製が可能なもので、例えば、後述する実施例に記載の工程を経て作製することが可能である。以下、本発明に使用される多孔質フェライト芯材の代表的な作製方法を説明するが、本発明に使用可能な多孔質フェライト芯材は、以下の工程を経て作製されるものに限定されるものではない。
【0068】
(1)原材料の粉砕工程
この工程は、多孔質フェライト芯材の原材料を適量秤量した後、ボールミルあるいは振動ミル等に投入して乾式の粉砕処理を行う工程で、この粉砕処理は0.5時間以上行うものであり、1時間から20時間行うものが好ましい。この工程で配合する原材料の種類や原材料の粉砕度合いを制御することにより、多孔質フェライト芯材の空隙率、細孔径、細孔容積、後述する嵩密度や真密度を制御することが可能である。
【0069】
また、配合する原材料は、例えば、前述の式(MO)x(Fe)yで表される多孔質フェライト芯材を作製する場合、式中の金属酸化物を形成することが可能な水酸化化合物や炭酸化合物を用いることが好ましい。すなわち、水酸化化合物や炭酸化合物を原材料に使用して形成された多孔質フェライト芯材は、酸化化合物を原材料に用いて形成されたものに比べて、空隙率や連続空隙度が高いものになる傾向を有するので好ましい。
【0070】
(2)ペレット形成工程
前記粉砕処理により作製された粉砕物を加圧成形機等により、例えば、大きさ1mm角程度のペレットに成形する工程である。また、形成したペレットを所定目開きのふるいにかけ、混在する粗粉あるいは微粉の除去も行う。
【0071】
(3)仮焼成工程
形成したペレットを市販の電気炉に投入して、数時間の加熱処理を行う工程である。加熱温度は700℃から1200℃が好ましい。また、この工程で加熱温度や加熱時間を制御することにより、多孔質フェライト芯材の空隙率、細孔径、細孔容積、後述する嵩密度を制御することが可能である。
【0072】
なお、本発明に使用される多孔質フェライト芯材は、上記仮焼成工程を必ずしも経る必要はなく、仮焼成を行わずにペレットを湿式粉砕処理し、造粒、焼成等の後述する各工程を経ることにより多孔質フェライト芯材を作製することが可能である。仮焼成工程を経ずに作製された多孔質フェライト芯材は、細孔の空隙率や連続空隙度が高いものになる傾向を有する。この様な観点から、多孔質の多孔質フェライト芯材を作製する場合、仮焼成における加熱温度を低めに設定することが好ましい。
【0073】
(4)仮焼成物の粉砕工程
上記仮焼成処理を行ったペレット(仮焼成物)をボールミルあるいは振動ミル等を用いて乾式の粉砕処理を行う工程である。なお、乾式の粉砕処理を行う工程では、後述する実施例にも記載の様に、使用するメディアに粒径1mm以下のビーズを使用することが好ましく、原材料やペレットの均一かつ効果的な分散をより確実に行うことができる。また、使用するビーズの径、組成、粉砕処理時間を制御することにより、原材料やペレットの粉砕度合いを制御することが可能である。
【0074】
(5)湿式粉砕工程
上記粉砕処理により作製された粉砕物に水を添加し、湿式のボールミルや振動ミルを用いて粉砕処理を行い、所望の粒径を有する粉砕物を分散させたスラリーを作製する工程である。なお、この工程でスラリー中の粉砕物の粒径を制御することにより、多孔質フェライト芯材の細孔径を制御することが可能である。
【0075】
また、スラリーを形成する際に添加する水分量を制御することにより、多孔質フェライト芯材の空隙率、細孔径、細孔容積、後述する嵩密度を制御することが可能である。すなわち、スラリーを形成する際の水分量を多くすると、空隙が多く形成されるので、高い空隙率と連続空隙度、及び、低い嵩密度を有する多孔質フェライト芯材を形成する上で好ましいものである。
【0076】
(6)造粒工程
上記湿式粉砕工程で作製したスラリー中に、分散液やポリビニルアルコール等のバインダを添加し、粘度を調整した後、スプレードライヤーを用いて当該スラリーより造粒を行い、形成した造粒物を乾燥させる工程である。この工程でスラリー中に添加するバインダや水の量あるいは乾燥度合いを制御することにより、多孔質フェライト芯材の空隙率、細孔径、細孔容積、後述する嵩密度を制御することが可能である。
【0077】
(7)本焼成工程
上記造粒工程で造粒物を乾燥させた後、当該造粒物を電気炉等の加熱手段に投入し、窒素ガス供給等により酸素濃度を制御しながら、950℃から1400℃の温度で1時間から24時間加熱処理することにより焼成物を形成する工程である。なお、この工程で焼成方法や加熱温度(焼成温度)、加熱時間(焼成時間)、窒素ガスの供給量や水素ガスによる還元雰囲気の形成等を制御することにより、多孔質フェライト芯材の空隙率、細孔径、細孔容積、後述する嵩密度を制御することが可能である。
【0078】
また、本焼成を行う際に使用する加熱手段としては、大気雰囲気や窒素ガス雰囲気あるいは水素ガス投入による還元性雰囲気等の下で焼成処理が行える公知の電気炉が挙げられ、例えば、ロータリー式電気炉、バッチ式電気炉、トンネル式電気炉等がある。
【0079】
(8)解砕、分級処理工程
上記本焼成工程により形成された焼成物を解砕、分級処理して、所定粒径の多孔質フェライト芯材を形成する工程である。この工程では、公知の分級方法を実施することが可能で、例えば、公知の風力分級や、メッシュろ過法、沈降法等を用いることにより、形成した焼成物を所望の粒径に粒度調整することが可能である。
【0080】
また、解砕、分級処理を実施後、後述する実施例にも記載の様に、公知の磁力選鉱機を用いて、多孔質フェライト芯材より磁力の弱いものを選り分ける工程を加えることも可能である。ここで、磁力選鉱機とは、磁石の力を利用して、多孔質フェライト芯材中より磁力の高いものを選り分ける装置のことで、例えば、日本マグネティックス(株)製より磁力選鉱機として提供される棒磁石や電磁分離機等がある。
【0081】
上記工程を経て、本発明に使用される多孔質フェライト芯材を作製することが可能である。なお、必要に応じて加熱により多孔質フェライト芯材の表面に酸化物の被膜を形成する処理(酸化被膜形成処理)を施すことも可能である。酸化被膜形成処理は、例えば、前述したロータリー式電気炉やバッチ式電気炉等の一般的な電気炉を用い、300℃から700℃の加熱温度で熱処理を行うことにより実施可能である。また、酸化被膜形成処理を実施する前に還元処理を行うことも可能である。酸化被膜の厚さは、0.1nmから5μmが好ましく、上記範囲の多孔質フェライト芯材を用いて作製したキャリアがトナーに対して良好な帯電付与性能を長期にわたり安定して発現する等、多孔質フェライト芯材が適度な導電性を安定的に維持することができる。
【0082】
〈樹脂被覆層〉
本発明で云う樹脂被覆層とは、多孔質フェライト芯材の表面に被覆用樹脂で形成される層のことである。
【0083】
被覆用樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。例えば、以下に示すビニル系樹脂や縮合系樹脂等が挙げられる。
【0084】
先ず、ビニル系樹脂としては、以下のものがある。すなわち、
(1)ポリオレフィン系樹脂;たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレン等
(2)ビニル化合物あるいはビニリデン化合物の重合体樹脂;たとえば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等
(3)ビニル系共重合体樹脂;たとえば、スチレン−アクリル酸共重合体等
(4)フッ素樹脂;たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロフルオロエチレン等
また、縮合系樹脂としては、たとえば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂等がある。
【0085】
さらに、有機シロキサン結合を有するシリコーン樹脂やシリコーン樹脂にアルキッド樹脂やポリエステル樹脂等の樹脂を添加した変成シリコーン樹脂も使用可能である。変成シリコーン樹脂には、たとえば、アルキッド樹脂を用いたシリコーンアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂を用いたシリコーンポリエステル樹脂、エポキシ樹脂を用いたシリコーンエポキシ樹脂、アクリル樹脂を用いたシリコーンアクリル樹脂等が挙げられる。
【0086】
《キャリアの作製》
キャリアを作製する方法としては、乾式コート法、湿式コート法が挙げられるが、乾式コート法は多孔質フェライト芯材の細孔まで樹脂が入り込まず、多孔質フェライト芯材の表面に樹脂被覆層を形成できるので、より軽いキャリアを作製することができる。
【0087】
(乾式コート法)
乾式コート法は、機械的衝撃や熱を加えて結着樹脂を多孔質フェライト芯材の表面にコートする方法(以下、メカノケミカル法とも云う)であり、下記の工程により、樹脂被覆層を形成する方法である。
1:被覆用脂粒子を分散したコート材を、多孔質フェライト芯材とともに機械的に撹拌し、多孔質フェライト芯材の表面にコート材を付着させる
2:その後、機械的衝撃や熱を加えて多孔質フェライト芯材の表面に付着させたコート材中の結着樹脂粒子を溶融或いは軟化させて固着し、樹脂被覆層を形成する
3:必要に応じ1〜2の工程を繰り返し、所望の厚さの樹脂被覆層を形成する。
【0088】
機械的衝撃や熱を加えてコートする方法の装置としては、例えば「ターボミル」(ターボ工業社製)、ピンミル、「クリプトロン」(川崎重工社製)等のローターとライナーを有する摩砕機又は撹拌羽根付高速撹拌混合機を挙げることができ、これらの中では撹拌羽根付高速撹拌混合機が良好に樹脂被覆層を形成でき好ましい。
【0089】
加熱する場合には、加熱温度は60〜125℃が好ましい。前記範囲の温度で加熱すると樹脂被覆したキャリア同士の凝集が発生せず、多孔質フェライト芯材の表面に結着樹脂を固着させることができる。
【0090】
図2は、乾式コート法による多孔質フェライト芯材の表面に樹脂被覆層を形成する工程を模式的に説明する図である。
【0091】
図2において、1は多孔質フェライト芯材、2は細孔、3は樹脂粒子、4はキャリア中間体、5は樹脂被覆層、6は樹脂被覆キャリアを示す。
【0092】
多孔質フェライト芯材1と樹脂粒子3を、該樹脂粒子のガラス転移点より低い温度で混合し、多孔質フェライト芯材の表面に樹脂粒子を付着させキャリア中間体4を作製する。このとき多孔質フェライト芯材の表面にある細孔2の入り口部は静電的に凝集した樹脂粒子が、その入り口部にブリッジを架けるように存在し塞ぐので、内部に樹脂粒子は入らない。この状態でキャリア中間体を該樹脂粒子のガラス転移点以上の温度にて撹拌すると、樹脂被覆層5が形成される。この工程においても多孔質フェライト芯材の細孔の口部付近は基本的にもとの状態が保たれ、細孔部はブリッジ状になった樹脂層により塞がれた状態で、樹脂被覆したキャリア6が形成される。
【0093】
多孔質フェライト芯材1と樹脂粒子3を、該樹脂粒子のガラス転移点より低い温度で混合し、多孔質フェライト芯材表面に樹脂粒子を付着させキャリア中間体4を作製する。このとき多孔質フェライト芯材表面にある細孔2の入り口部は静電的に凝集した樹脂粒子が、その入り口部にブリッジを架けるように存在し塞ぐので、内部に樹脂粒子は入らない。この状態でキャリア中間体を該樹脂粒子のガラス転移点以上の温度にて撹拌すると、樹脂被覆層5が形成される。この工程においても多孔質フェライト芯材の細孔の口部付近は基本的にもとの状態が保たれ、細孔部はブリッジ状になった樹脂層により塞がれた状態で、樹脂被覆したキャリア6が形成される。
【0094】
(湿式コート法)
湿式コート法は、下位のような方法で樹脂被覆層を形成する方法である。
(1)流動層式スプレーコート法
流動層式スプレーコート法(以下、溶剤コート法とも云う)は、結着樹脂を溶剤に溶解した塗布液を、流動性スプレーコート装置を用いて多孔質フェライト芯材の表面にスプレー塗布し、次いで乾燥して樹脂被覆層を作製する方法
(2)浸漬式コート法
浸漬式コート法は、結着樹脂を溶剤に溶解した塗布液中に多孔質フェライト芯材を浸漬して塗布処理し、次いで乾燥して樹脂被覆層を作製する方法
(3)重合法
重合法は、反応性化合物を溶剤に溶解した塗布液中に、多孔質フェライト芯材を浸漬して塗布処理し、次いで熱等を加えて重合反応を行って樹脂被覆層を作製する方法
本発明では、湿式コート法、乾式コート法、湿式コート法と乾式コート法を組み合わせたコート法により樹脂被覆層を形成できる。
【0095】
《画像形成装置》
本発明の2成分現像剤は、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法、画像形成装置に用いることができる。例えば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、1つの静電潜像担持体とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置および静電潜像担持体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法も用いることができる。
【0096】
本発明の2成分現像剤は、50枚/分(A4版)以上と高速で小型の画像形成装置に用いても、本発明の目的を達成できる優れたものである。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。
【0098】
《トナーの作製》
トナーは以下のようにして作製した。
【0099】
〈コア粒子用樹脂粒子の分散液作製〉
(1−1)第1段重合
撹拌装置、温度センサ、温度制御装置、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に予めアニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2.0質量部をイオン交換水2900質量部に溶解させたアニオン性界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。この界面活性剤溶液に重合開始剤「過硫酸カリウム:KPS」9.0質量部を添加し、内温を78℃とさせた後、
溶液(1)
スチレン 540質量部
n−ブチルアクリレート 270質量部
メタクリル酸 65質量部
n−オクチルメルカプタン 17質量部
上記溶液(1)を3時間かけて滴下し、滴下終了後、78℃において1時間にわたって加熱・撹拌することで重合(第1段重合)を行い「樹脂微粒子(a1)」の分散液を作製した。
【0100】
(1−2)第2段重合
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、
溶液(2)
スチレン 94質量部
n−ブチルアクリレート 60質量部
メタクリル酸 11質量部
n−オクチルメルカプタン 5質量部
上記溶液(2)に、離型剤としてパラフィンワックス(融点:73℃)51質量部を添加し、85℃に加温して溶解させて「単量体溶液(2)」を調製した。一方、アニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2質量部をイオン交換水1100質量部に溶解させた界面活性剤溶液を90℃に加温し、この界面活性剤溶液に「樹脂微粒子(a1)」の分散液を、樹脂微粒子(a1)の固形分換算で28質量部添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、4時間混合・分散させ、分散粒子径350nmの乳化粒子を含有する分散液を調製し、この分散液に重合開始剤「KPS」2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し、この系を90℃において2時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第2段重合)を行って「樹脂微粒子(a11)」の分散液を作製した。
【0101】
(1−3)第3段重合
上記の「樹脂微粒子(a11)」の分散液に、重合開始剤「KPS」2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し、80℃の温度条件下において、
溶液(3)
スチレン 230質量部
n−ブチルアクリレート 100質量部
n−オクチルメルカプタン 5.2質量部
上記溶液(3)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第3段重合)を行った。その後、28℃まで冷却し、アニオン性界面活性剤溶液中にコア粒子用樹脂粒子が分散した「コア粒子用樹脂粒子の分散液」を得た。
【0102】
〈シェル層用樹脂粒子の分散液作製〉
(スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した四つ口フラスコに、
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 500質量部
テレフタル酸 117質量部
フマル酸 82質量部
エステル化触媒(オクチル酸スズ) 2質量部
を入れ、230℃で8時間縮重合反応させ、さらに、8kPaで1時間反応させ、160℃まで冷却した後、
アクリル酸 10質量部
スチレン 30質量部
ブチルアクリレート 7質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 10質量部
の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下し、滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を継続させた後、200℃に昇温し、10kPaで1時間保持した後、未反応のアクリル酸、スチレン、ブチルアクリレート、生成した水を除去することにより、「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂」を作製した。
【0103】
この「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂」のガラス転移点は60℃、軟化点は105℃であった。
【0104】
上記で作製した「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂」100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)を用いてV−LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、体積基準におけるメディアン径(D50)が250nmであるシェル層用樹脂微粒子が分散された「シェル層用樹脂微粒子の分散液」を作製した。
【0105】
〈トナー1の作製〉
(着色剤分散液の作製)
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「モーガルL」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤の粒子を分散して有する着色剤分散液を調製した。この分散液の粒子径を、マイクロトラック粒度分布測定装置UPA−150(日機装社製)を用いて測定したところ、117nmであった。
【0106】
(トナー母体粒子1の作製)
撹拌装置、温度センサ、冷却管を取り付けた反応容器に、「コア粒子用樹脂粒子の分散液」を固形分換算で288質量部、イオン交換水2000質量部を投入後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。その後、「着色剤分散液」を固形分換算で40質量部投入した。次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールターベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準におけるメディアン径(D50)が6.0μmになった時点で、「シェル層用樹脂粒子の分散液」を固形分換算で72質量部を30分間かけて投入し、反応液の上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、平均円形度の測定装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.945になった時点で30℃に冷却し、「トナー母体粒子1の分散液」を作製した。
【0107】
上記で作製した「トナー母体粒子1の分散液」を遠心分離機で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して「トナー母体粒子1」を作製した。
【0108】
上記の「トナー母体粒子1」に、「疎水性シリカ(数平均1次粒子径=80nm)」1質量%および疎水性チタニア(数平均1次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、「トナー1」を作製した。
【0109】
〈トナー2〜5の作製〉
トナー1の作製で用いた疎水性シリカ(数平均1次粒子径=80nm)を、表1のように変更した以外は同様にして「トナー2〜5」を作製した。
【0110】
表1に、トナー1〜5の作製で用いた疎水性シリカの数平均1次粒子径を示す。
【0111】
【表1】

【0112】
《キャリアの作製》
先ず、芯材粒子を作製した。
【0113】
〈芯材粒子の作製〉
(芯材粒子1の作製)
MnO:35mol%、MgO:14.5mol%、Fe:50mol%及びSrO:0.5mol%になるように原料を秤量し、水と混合した後、湿式のメディアミルで5時間粉砕してスラリーを得た。
【0114】
得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥し、真球状の粒子を得た。空隙率ならびに連続空隙度を調整するために、MnO原料としては炭酸マンガンを、MgO原料としては水酸化マグネシウムを用いた。この粒子を粒度調整した後、950℃で2時間加熱し、仮焼成を行った。次いで、空隙率を高めにしつつ適度な流動性を得るために、直径0.3cmのステンレスビーズを用いて湿式ボールミルで1時間粉砕したのち、さらに直径0.5cmのジルコニアビーズを用いて4時間粉砕した。このスラリーに分散剤を適量添加し、又造粒される粒子の強度を確保し、空隙率ならびに連続空隙度を調整する目的で、バインダとしてポリビニルアルコール樹脂(PVA)を固形分に対して0.8質量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1150℃、酸素濃度0体積%(窒素ガス置換)で3.5時間保持し、本焼成を行った。
【0115】
その後、解砕し、さらに分級して粒度調整し、その後磁力選鉱により低磁力品を分別し、「芯材粒子1」を作製した。
【0116】
芯材粒子1の嵩密度は、1.72、細孔の径は0.43μmであった。尚、嵩密度、細孔の径は前記の方法で測定した値である。
【0117】
(芯材粒子2の作製)
芯材粒子1の作製で用いた炭酸マンガンの代わりに二酸化マンガンを用い、添加するバインダの量を0.5質量%にし、電気炉にて、温度1200℃、酸素濃度1.5体積%で6時間保持し、本焼成を行った以外は、芯材粒子1の作製と同様にして、「芯材粒子2」を作製した。
【0118】
(芯材粒子3の作製)
芯材粒子1の作製で用いた炭酸マンガンの代わりに四酸化三マンガンを用い、電気炉にて、温度1125℃、酸素濃度0.5体積%で4時間保持し、本焼成を行った以外は、「芯材粒子1」の作製と同様にして、「芯材粒子3」を作製した。
【0119】
(芯材粒子4の作製)
直径0.5cm径のジルコニアビーズに代えて、0.15mmのステンレスビーズを用い、添加する添加するバインダの量を1.0質量%にし、電気炉にて、温度1100℃で本焼成を行った以外は、芯材粒子1の作製と同様にして、「芯材粒子4」を作製した。
【0120】
(芯材粒子5の作製)
芯材粒子1の作製の仮焼成温度を950℃から1100℃に変更、その後の粉砕時間を12時間、本焼成を1300℃にて2時間、酸素濃度2.5%で行った以外は、芯材粒子1の作製と同様にして、「芯材粒子5」を作製した。
【0121】
(芯材粒子6の作製)
芯材粒子1の作製の電気炉の温度条件を、1350℃にて6時間保持し、本焼成を行った以外は、芯材粒子1の作製と同様にして、「芯材粒子6」を作製した。
【0122】
(芯材粒子7の作製)
フェノール200質量部、37%ホルマリン260質量部、体積平均粒子径0.3μmの球状マグネタイト1600質量部、28%アンモニア水31.2質量部、フッ化カルシウム4質量部、水200質量部を攪拌しながら投入し、毎分1℃で85℃まで昇温し、同温度で3時間反応、硬化させ、「芯材粒子7」を作製した。
【0123】
〈キャリア1の作製〉
「芯材粒子1」100質量部と、メタクリル酸エステル系樹脂よりなる被覆用樹脂粒子(ガラス転移点:115℃、数平均1次粒子径(D50):100μm)5質量部を撹拌装置付き混合撹拌槽に投入し、予備混合工程として、周速1m/secで2分間低速混合した。そして、キャリア中間体形成工程として、ジャケットに冷水を通過させ、40℃にて周速8m/secで20分間混合・撹拌した。その後、キャリア粒子形成工程として、ジャケットに蒸気を通過させ、120℃にて30分間撹拌してキャリア粒子よりなる「キャリア1」を作製した。
【0124】
〈キャリア2〜7の作製〉
キャリア1の作製で用いた芯材粒子1を、「芯材粒子2〜7」に変更した以外は同様にして「キャリア2〜7」を作製した。
【0125】
表2に、キャリア1〜7の作製に用いた芯材粒子、その構成、粒子径、嵩密度、細孔径等を示す。
【0126】
【表2】

【0127】
《2成分現像剤の作製》
上記で作製した「トナー1〜5」と「キャリア1〜7」を用いて「2成分現像剤1〜11」を作製した。
【0128】
具体的には、キャリア100質量部に対してトナー8質量部を配合し、常温常湿(20℃、50%RH)環境下で、Vブレンダを用い、回転数を20rpm、撹拌時間を20分にして処理を行い、さらに、混合物を目開き125μmのメッシュで篩い分けて作製した。
【0129】
表3に、2成分現像剤の作製で用いたトナーとキャリアを示す。
【0130】
【表3】

【0131】
《評価》
評価は、画像形成装置「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)に、上記で作製した2成分現像剤を順次装填して行った。
【0132】
(かぶり)
かぶりは、常温常湿(20℃、50%RH)のプリント環境で、印字率5%の文字画像を20万枚プリント後、白紙をプリントし、転写材の白紙濃度を測定して評価した。転写材の白紙濃度はA4判の20カ所を測定し、その平均値を白紙濃度とする。濃度測定は反射濃度計「RD−918」(マクベス社製)を用いて行った。尚、かぶりは、0.01以下を合格とする。
【0133】
(掃き寄せ)
掃き寄せは、縦×横が30mm×20mmのべた画像の次にべた白画像が続く画像を出力して、以下の方法で掃き寄せ部分を数値化して評価をした。
【0134】
図3は、上記画像パターンを出力した一例を示す。
【0135】
図3のように出力した画像を画像スキャナシステムでパソコン内に取り込み、画像濃度を0〜255の数値データに変換する。
【0136】
図4は、画像スキャナシステムで取り込んだサンプル画像のY軸に対する濃度分布の一例を示す。
【0137】
図4において、Yb〜Ycの範囲がYa〜Ybの範囲よりも濃度が大きい領域で、はき寄せ領域となる。図4中の斜線部分がはき寄せ濃度の積分値であり、1ミリメートルあたりの濃度変化をはき寄せ値として用いた。図4で示したはき寄せデータの場合、はき寄せ領域Yb−Ycの値が4(mm)、はき寄せ濃度の積分値(図中斜線部分が160(dig)である。したがって、はき寄せ値は160/4=40(dig/mm)となる。
【0138】
尚、掃き寄せ値は、20以下を合格とする。
【0139】
表4に、評価に用いた2成分現像剤と評価結果を示す。
【0140】
【表4】

【0141】
表4に示す様に、実施例の「2成分現像剤1〜5、8〜9」は、かぶり、掃き寄せ共に問題が無く、本発明の効果を奏していることが確認された。一方、比較例の「2成分現像剤6、7、10、11」は、上記評価項目の何れかに問題があり本発明の効果を奏していないことが確認された。
【符号の説明】
【0142】
1 多孔質フェライト芯材
2 細孔
3 樹脂粒子
4 キャリア中間体
5 樹脂被覆層
6樹脂被覆キャリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂と着色剤を有するコア粒子の表面にスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を有するシェル層を形成したコア・シェル構造のトナーと、キャリアから構成される2成分現像剤において、
該トナーがその粒子表面に数平均1次粒子径70nm以上130nm以下のシリカ粒子を付着したもので、
該キャリアが多孔質フェライト芯材の表面に樹脂被覆層を設けたものであることを特徴とする2成分現像剤。
【請求項2】
前記多孔質フェライト芯材の嵩密度が、1.1g/cm以上2.0g/cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の2成分現像剤。
【請求項3】
前記多孔質フェライト芯材の内部及び表面に存在する細孔の細孔径が、0.2μm以上0.7μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の2成分現像剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−44915(P2013−44915A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182327(P2011−182327)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】