説明

3つの作動変位を提供する装置を備える斜板型アキシャルピストン式油圧装置

【課題】斜板型アキシャルピストン式油圧装置の作動速度の高速化に伴い、斜板の変位精度の向上、トルク損失の低減が必要。
【解決手段】斜板型アキシャルピストン式油圧装置10は、装置内の斜板22の変位を制御するためにサーボピストン24を使用するハウジング12を備える。ハウジング12のエンドキャップ14の空洞内に配置されるサーボ部材46を用いて、アキシャルピストン式油圧装置10は、斜板22の角度に応じて3つの作動位置を提供することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜板型アキシャルピストン式油圧装置に関する。より詳細には、本発明は、斜板型アキシャルピストン式であって、3つの作動位置を有する油圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の斜板型アキシャルピストン式油圧装置は、斜板によって作動させられる複数の往復ピストンを内部に有するシリンダブロックを有するハウジングを備えている。斜板は、サーボスプリングによって作動させられるサーボピストンに連結されている。通常、油圧装置は、斜板の角度がサーボピストンによって制御される2位置装置である。
【0003】
最大角度(変位)は、サーボピストンがハウジングのエンドキャップと接する点によって定められる。一方、最小角度は、サーボピストンがハウジングと接する点によって定められる。制御入力は油圧であり、サーボピストンの最小変位から最大変位までの全移動距離は、一定である。このような構成においては、最大または最小の間の装置の変位を制御する方法はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧技術の発展に伴い、油圧ピストン式油圧装置の作動速度は、高速となりつつある。高速になると、速度範囲が大となるので、トルクの損失も大となる。さらに、高速になると、斜板の変位精度も低下して、クローラーおよびスキッドステアローダーのようなミストラッキング問題が起こった。
【0005】
従って、本発明の主目的は、変位を良好に制御しうるようになっている、改善された斜板型アキシャルピストン式油圧装置を提供することである。
【0006】
本発明のもう1つの目的は、斜板型アキシャルピストン式油圧装置において、多面的機能を発揮させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のこれらの目的、特徴、または利点については、本明細書および特許請求の範囲により明らかになると思う。
【0008】
アキシャルピストン式油圧装置は、ハウジングの内部に配置されている斜板によって作動させられる往復ピストンを有するシリンダブロックを備えている。サーボピストンは、第1端部に隣接して斜板に連結され、第2端部にまで延びている。内部に空洞を有すエンドキャップが、ハウジングに取り付けられている。エンドキャップの空洞内には、サーボピストンを受け入れるサーボ部材が設けられ、複数の作動状態を行わせるようになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1〜図3は、エンドキャップ14が連結されたハウジング12を有するアキシャルピストン式油圧装置10の第1実施形態を示す。この実施形態では、エンドキャップ14はハウジング12に着脱自在に取り付けられているが、別の実施形態として、エンドキャップ14とハウジング12を一体的構造とすることもある。
【0010】
ハウジング12内には、入力軸18が貫通して配置され、かつ複数の往復ピストン20を備えるシリンダブロック16が設けられている。往復ピストン20は、サーボピストン24の第1端部26に連結された斜板22によって作動させられる。ハウジング12には、サーボピストン24の第1端部26に対するストッパ27が設けられている。
【0011】
サーボピストン24は、その第1端部26から、サーボピストンヘッド30で終端する第2端部28まで延びている。サーボピストンヘッド30をエンドキャップ14に向けて押圧するサーボスプリング32が、サーボピストン24に嵌合されている。
【0012】
エンドキャップ14は、端壁36と、側壁38からなる空洞34が形成され、側壁38は、ハウジング12の内面に形成されているシート40で終端している。さらに、空洞34内を加圧するために、空洞34に通じている第1ポート42が、エンドキャップ14に貫設されている。さらに、側壁38には、圧力供給用の第2ポート44が設けられている。
【0013】
サーボ部材46が、エンドキャップ14の空洞34内に配置されている。図1〜図3の実施形態では、サーボ部材46は、端壁48と側壁50とで空洞52を形成している有底円筒体である。第1実施形態では、シーリングリング54が、サーボ部材46の外周に設けられ、空洞34内で、エンドキャップ14に接している。
【0014】
詳しく言うと、サーボ部材46は、エンドキャップ14の空洞34の端壁36から、ハウジング12のシート40までの間で可動であり、サーボ部材46の側壁50は、ハウジング12のシート40に当接しうる。さらに、サーボ部材46の空洞52と、エンドキャップ14の空洞34とを連通させる注入口56が、側壁50に設けられている。
【0015】
サーボ部材46により、このアキシャルピストン式油圧装置10は、複数の作動状態となる。具体的に言うと、図1に示す、第1作動状態は、アキシャルピストン式油圧装置10が最大角状態にある場合に起こる。最大角状態時、サーボピストン24およびサーボ部材46は、サーボピストンスプリング32により、エンドキャップ14に向って付勢される。
【0016】
図1で分かるように、第1作動状態で、この油圧装置10が、「中間ストローク」(最大角と最小角との間)状態への命令を受けると、第1ポート42は加圧される。第1ポート42が加圧されると、サーボ部材46の端壁48と、エンドキャップ14の端壁36との間の圧力が高まる。第1閾値圧力に達した時点で、サーボピストン24およびサーボ部材46は、サーボスプリング32の力に打克ち、サーボ部材46は、シート40においてハウジング12と係合するまで、斜板22に向って移動する。従って、サーボ部材46は、第1ポート42の加圧に応じて、第1距離X移動する。この時、ピストン式油圧装置10は、その最大角と最小角との間の位置で、図2に示す第2作動状態となる。
【0017】
最小角状態を命令するためには、エンドキャップ14の第2ポート44を加圧する。これにより、サーボピストン24のヘッド30に向かう力が、サーボ部材46の空洞52内に生じる。第2閾値圧力に達すると、サーボピストン24は、ハウジングのストッパ27と当接するまで移動する(図3)。
【0018】
端壁48とピストンヘッド30との間の移動距離は、第2距離Yである。この時点で、アキシャルピストン式油圧装置10は第3作動状態にあることとなる。従って、第1距離Xが第2距離Yより小である場合に、この油圧装置10は、3つの異なる変位または角度で作動する。
【0019】
油圧装置10の第2実施形態が、図4〜図6に示されている。図4〜図6では、第2ポート44は除去され、サーボ部材46は、筒状のピストンとされている。さらに、この実施形態では、エンドキャップ14に隣接する個所において、ハウジング12にはストッパ58が設けられ、サーボピストン24のヘッドには、サーボ部材46にサーボシーティング面62を提供するフランジ60が形成されている。具体的に言うと、サーボ部材46が有底円筒状ではなく、筒状ピストンであるこの実施形態では、端壁48は削除されて、加圧流体の第1ポート42と、サーボピストン24とは、直接連通させられている。
【0020】
第1作動状態では、サーボスプリング32が、サーボピストン24およびサーボ部材46を、エンドキャップ14の空洞34の端壁36に向って押圧するように、圧力が第1ポート42を経て加えられる。サーボ部材46に係合するフランジ60のために、サーボピストン24のヘッド30およびサーボ部材46の両方とも、端壁36に当接する。
【0021】
第1閾値圧力が、第1ポート42を通して流れる加圧流体によって生じた時点で、サーボピストンスプリングによるスプリング力は圧倒され、サーボ部材46は、ストッパ58に係合するまで、第1サーボピストン24およびサーボ部材46は斜板に向って移動する。サーボ部材46がストッパ58に当接する時、油圧ユニット10は第2作動状態にある。
【0022】
次に、第2閾値圧力に達するまで、圧力は、第1サーボピストン24のヘッド30に対して高まり続ける。この時、サーボ部材46は、ストッパ58に対して静止したままであるのに対して、サーボピストン24は、斜板22に向って移動する。サーボピストン24は、シート40に係合するまで斜板22に向って移動し続ける。シート40に係合すると、油圧ユニット10は第3作動状態となる。
【0023】
図4〜図6の実施形態では、各作動状態は、異なる斜板角度となっている。具体的に言うと、圧力が無い場合に、第1速度となり、そこでは、斜板は最大角状態にある。第1閾値圧力となり、サーボ部材46がストッパ58に当接する第2状態では、斜板最小と最大との斜板変位により、第2速度となる。第2閾値圧力に達した最小角の状態で、第3速度となる。従って、3つの別々かつ特異の作動状態が存在する。
【0024】
さらに、この実施形態では、第1および第2閾値圧力は、第1および第2サーボピストンの受圧面積に応じて調整することができる。同様に、ポート42を、外部圧力源、例えば比例減圧カートリッジ、または3つの異なる圧力源に関連する3位置弁などに連結し、油圧装置10に必要な圧力を供給することができる。
【0025】
図7〜図9は、アキシャルピストン式油圧装置10の第3実施形態を示す。この実施形態では、サーボ部材46は、エンドキャップ14の空洞34内に配置された環状リングである。この実施形態では、サーボピストン24のヘッド30は、ヘッド30からサーボピストン24の第1端26の方へ広がる環状フランジ64を有している。さらに、この実施形態では、エンドキャップ14は、エンドキャップシート66を有し、サーボ部材46は中間位置スプリング68によって、エンドキャップシート66に向って付勢されている。
【0026】
図9に示す実施形態では、サーボ部材46は、ハウジング12のストッパ58に係合するために環状リング66から延びる環状フランジ70をさらに備えている。サーボピストン24のヘッド30の環状フランジ64およびサーボ部材46は、サーボスプリング32を囲んでいる。
【0027】
図9に最も良く示す第1状態における作動時に、サーボピストン24のヘッド30は、空洞34の端壁36、およびエンドキャップ14に向って付勢させられる。同様にサーボ部材46は、中間位置スプリング68によって、エンドキャップシート66に向って付勢させられる。図示のように、第1距離Xは、サーボピストン24の環状フランジ64とサーボ部材46との間に存在する。
【0028】
図9に示すように、第1状態から移動するように命令された場合に、このアキシャルピストン式油圧装置10は、ピストンのヘッド30を空洞34の端壁36から離すように移動させ、サーボスプリング32を圧倒する圧力を、ポート42内に供給する。ピストンヘッド30が第1距離Xだけ移動すると、サーボ部材46は、図7に最も良く示すように、ピストンヘッド30の環状フランジ64を受け入れ、係合する。この時、ポート42からの圧力は、サーボスプリング32のスプリング力と、中間位置スプリング68のスプリング力の組み合わせを圧倒するのに十分ではない。その結果、サーボピストン24の移動、その結果として斜板22は、斜板22の最大角と最小角との間の角度で停止させられる。この時点で、この油圧装置は、第2状態にあると見なされる。
【0029】
アキシャルストン式油圧装置10を、第3状態とする必要がある場合に、サーボスプリング32および中間位置スプリング68の力が圧倒されるまで、追加の圧力は、ポート42を経て、空洞34内に供給される。この時、サーボ部材46は、エンドキャップシート66から離脱し、かつピストンヘッド30が空洞34の端壁36から、第2距離Yだけ移動するように、ピストンヘッド30およびサーボ部材46は、サーボピストン24の第1端部26の方へ移動し始める。サーボピストン24の第1端部26が、ハウジング12のストッパ27に係合する(図1参照)か、あるいはサーボ部材46の環状フランジ70が、ハウジング12の第2のストッパ58に係合する(図9参照)まで、ピストンのヘッド30およびサーボ部材46は移動し続ける。
【0030】
各実施形態では、サーボピストンのヘッド30の移動が、空洞34の端壁36から最も離れた位置で停止する場合に、このアキシャルピストン式油圧装置は第3状態にあると見なされる。空洞34の端壁36からの最小変位から最大変位へのサーボピストンの全移動を表わす変位は、図に示す第2距離Yである。
【0031】
サーボ部材46を、一実施形態としての環状リングとして説明したが、サーボ部材46は、任意の中間ストッパであってよい。具体的に言うと、中間ストッパは、中間位置スプリング68によって、エンドキャップ14に向って、前もって既知の負荷を加えられる。従って、第1圧力の下で、十分な力が、サーボピストン24とエンドキャップ12との間で発生し、サーボピストンが、この中間ストッパに当接するまで、サーボピストン24を移動させる。
【0032】
第1圧力によって生じる力は、サーボスプリング32によって前もって加えられる負荷を圧倒するのに十分であるが、第1圧力は、中間位置スプリング68によって前もって加えられる負荷を圧倒するのに十分ではなく、従ってサーボピストンヘッドは、中間ストッパに当接する。
【0033】
シフト圧力がより大きい第2圧力に増大した時点で、中間位置スプリング68の力を圧倒する十分な力があり、サーボピストン24は、モーターハウジング12のストッパ27または58に接するまで、この力を受けて移動する。従って、サーボ部材46が、3つの作動状態において、3位置モーターの機能性発揮させることができる。
【0034】
従って、複数の作動状態を提供するために、サーボ部材46を使用するアキシャルピストン式油圧装置10が提供される。具体的に言うと、サーボ用円筒体を備える第1実施形態と、第2サーボピストンを備える第2実施形態と、そして中間サーボストッパを備える第3実施形態との、3つの作動状態が存在する。
【0035】
従って、可動のサーボ部材46は、斜板型アキシャルピストンユニット用の3つの速度を有するものとすることができる。3つの速度を有することにより、トルク損失は、高トルク移動速度を最小化することによって埋め合わせをされる。さらに、第3位置を追加することによる斜板の変位精度の向上により、クローラーおよびスキッドステアローダーのような機械に関連するミストラッキング問題は回避される。従って、少なくとも前記した目的のすべては、達成されることとなる。
【0036】
他のさまざまな変更態様を、本発明の精神を逸脱することなく、想到しうることは、当業者によって自明であると思う。従って、このような変更態様および変形は、すべて特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】アキシャルピストン式油圧装置の断面図である。
【図2】作動状態のサーボピストンの断面図である。
【図3】作動状態のサーボピストンの断面図である。
【図4】作動状態のサーボピストンの断面図である。
【図5】作動状態のサーボピストンの断面図である。
【図6】作動状態のサーボピストンの断面図である。
【図7】作動状態のサーボピストンの断面図である。
【図8】作動状態のサーボピストンの断面図である。
【図9】作動状態のサーボピストンの断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 アキシャルピストン式油圧装置
12 ハウジング
14 エンドキャップ
16 シリンダブロック
18 入力軸
20 往復ピストン
22 斜板
24 サーボピストン
26 第1端部
27 ストッパ
28 第2端部
30 サーボピストンのヘッド
32 サーボスプリング
34 空洞
36 端壁
38 側壁
40 シート
42 第1ポート
44 第2ポート
46 サーボ部材
48 端壁
50 側壁
52 空洞
54 シーリングリング
56 注入口
58 ストッパ
60 フランジ
62 サーボシーティング面
64 環状フランジ
66 エンドキャップシート
68 中間位置スプリング
70 環状フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜板によって作動させられる往復ピストンを有するシリンダブロックを内部に有するハウジングと、
第1端部に隣接して、前記斜板に連結されている第1サーボピストンと、
前記ハウジングに取り付けられ、内部に空洞が設けられているエンドキャップと、
前記エンドキャップの空洞内に配置され、少なくとも3つの作動状態を発揮するために、前記サーボピストンを受け入れているサーボ部材、
とを備えるアキシャルピストン油圧装置。
【請求項2】
斜板によって作動させられる往復ピストンを有するシリンダブロックを内部に有するハウジングと、
第1端部に隣接して、前記斜板に連結されている第1サーボピストンと、
前記ハウジングに取り付けられ、内部に空洞が設けられているエンドキャップと、
前記エンドキャップの空洞内に配置され、少なくとも3つの作動状態を発揮するために、前記サーボピストンを受け入れている第2サーボピストン、
とを備えるアキシャルピストン油圧装置。
【請求項3】
斜板によって作動させられる往復ピストンを有するシリンダブロックを内部に有するハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられ、内部にエンドキャップシートが配置されている空洞を有するエンドキャップと、
第1端部に隣接して前記斜板に連結され、前記エンドキャップの空洞内に配置されているサーボヘッドで終端する第2端部まで延びているサーボピストンと、
前記サーボピストンを囲み、中間位置スプリングによって、エンドキャップシートに向って付勢されて、少なくとも3つの作動状態を提供する中間サーボストッパ、
とを備えるアキシャルピストン油圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−36207(P2009−36207A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−197217(P2008−197217)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(501004464)サウアー ダンフォス インコーポレイテッド (31)
【Fターム(参考)】