説明

3次元画像生成装置

【課題】3次元画像データを生成するときの演算量を削減することができる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】デジタルカメラ1は、複数の2次元画像データから3次元画像データ30を生成する。メモリカード20には、撮影画像データ21〜24と、撮影画像データ21〜24のそれぞれの撮影条件を示す撮影条件情報21A〜24Aが記録される。デジタルカメラ1において、空間情報生成部151は、撮影条件情報21A〜24Aを用いて、撮影画像データ21〜24の撮影空間を示す撮影空間情報21B〜24Bを生成する。使用画像選択部152は、撮影空間情報21B〜24Bに基づいて、撮影画像データ21〜23の撮影空間21D〜23Dが互いに重なることを確認する。使用画像選択部152は、撮影画像データ21〜23を、3次元画像データ30の生成に用いる使用画像データとして選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の2次元画像データから3次元画像データを生成する3次元画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元画像データを生成する方法の一つとして、同一の被写体が撮影された複数の2次元画像データを用いる方法がある。ユーザは、3次元画像データにおいて描画対象となる被写体(建物や彫刻など)を異なる位置から撮影した複数の2次元画像データを用意する必要がある。
【0003】
複数の2次元画像データから3次元画像データを生成する場合、下記非特許文献1に示すように、2次元画像データごとに建物の頂点などの特徴点を決定する。複数の2次元画像データの間で特徴点を対応付けることによって、対応付けられた特徴点の3次元座標を算出することができる。
【0004】
2次元画像データにおいて特徴点を決める方法として、ユーザがマウスなどのポインタデバイスを用いて特徴点を指定する方法がある。また、下記非特許文献2に開示されているSIFT(Scale−Invariant Feature Transform)などのアルゴリズムを用いて、2次元画像データの特徴点を自動的に決定する方法がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「写真から作る3次元CG イメージ・ベースド・モデリング&レンダリング」,徐 剛著,近代科学社,2001年1月30日発行
【非特許文献2】「Gradientベースの特徴抽出 −SIFTとHOG−」,[online],藤吉 弘亘著,[2010年8月30日検索],インターネット<URL:http://www.vision.cs.chubu.ac.jp/SIFT/PDF/sift_tutorial.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ユーザが複数の2次元画像データの特徴点を指定する場合、2次元画像データの数に比例してユーザが指定する特徴点の数が多くなるため、ユーザにとって負担となる。このため、各2次元画像データの特徴点を自動的に決定することが望ましい。
【0007】
しかし、特徴点を検出するSIFTなどのアルゴリズムが複雑なため、1枚の2次元画像データの全ての特徴点を検出するための演算量が非常に多くなる。このため、複数の2次元画像データから3次元画像データの生成処理を自動的に行う場合、多くの時間を要するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、3次元画像データを生成するときの演算量を削減することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、3次元画像生成装置であって、複数の2次元画像データと、各2次元画像データの撮影条件を示す撮影条件情報とを記憶する記憶部と、各2次元画像データにより撮影された撮影空間を前記撮影条件情報に基づいて特定し、各2次元画像データの撮影空間を示す撮影空間情報を生成する空間情報生成部と、前記複数の2次元画像データのうち、撮影空間が互いに重なる二つの2次元画像データを前記撮影空間情報に基づいて検出した場合、前記二つの2次元画像データを3次元画像データの生成に用いる使用画像データとして選択する使用画像選択部と、を備える。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の3次元画像生成装置において、前記使用画像データは、第1の2次元画像データと、前記第1の2次元画像データの撮影空間と重なる撮影空間を有する第2の2次元画像データと、を含み、前記3次元画像生成装置は、さらに、前記第1の2次元画像データの画像領域において、前記第2の2次元画像データの撮影空間が重複する重複領域を前記撮影空間情報に基づいて特定し、前記重複領域を前記第1の2次元画像データの特徴点を検出する検出領域として設定する検出領域設定部、を備える。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の3次元画像生成装置において、前記使用画像データは、前記第2の2次元画像データを含み、前記第1の2次元画像データの撮影空間と重なる撮影空間を有する2次元画像データのグループ、を含み、前記検出領域設定部は、前記グループの中から、前記第1の2次元画像データの撮影位置に近い位置で撮影された近傍画像データを前記撮影空間情報に基づいて特定し、前記近傍画像データの撮影空間情報に基づいて、前記検出領域を設定する。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項2に記載の3次元画像生成装置において、前記使用画像データは、前記第2の2次元画像データを含み、前記第1の2次元画像データの撮影空間と重なる撮影空間を有する2次元画像データのグループ、を含み、前記検出領域設定部は、前記第1の2次元画像データの画像領域において、前記グループを構成する全ての2次元画像データの撮影空間が重なった領域を、前記検出領域として設定する。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項2に記載の3次元画像生成装置において、前記使用画像データは、前記第2の2次元画像データを含み、前記第1の2次元画像データの撮影空間と重なる撮影空間を有する2次元画像データのグループ、を含み、前記検出領域設定部は、前記第1画像データの画像領域のうち、前記グループを構成する少なくとも一つの2次元画像データの撮影空間が含まれる領域を、前記検出領域として設定する。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の3次元画像生成装置において、さらに、被写体を撮影して前記複数の2次元画像データを生成する撮影部と、自装置の位置を検出して位置情報を生成する位置検出部と、自装置の姿勢を検出して撮影方向を示す方向情報を生成する姿勢検出部と、を備え、前記空間情報生成部は、前記被写体の撮影時における位置情報及び方向情報を、前記撮影条件情報として用いる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の3次元画像生成装置は、各撮影画像データの撮影空間を撮影条件情報に基づいて特定し、互いに撮影空間が重なる二つの撮影画像データを、使用画像データとして選択する。これにより、3次元画像データを生成するときに、3次元画像データの描画対象が撮影されていない撮影画像データに対して特徴点の検出処理などを行わなくてもよい。このため、3次元画像データを生成するときの演算量を削減することができる。
【0016】
本発明の3次元画像生成装置は、第1の2次元画像データにおいて特徴点を検出する検出領域を、第2の2次元画像データの撮影空間情報を用いて設定する。これにより、第1画像データの画像領域の全体にわたって特徴点を検出しなくてもよいため、3次元画像データを生成するときの演算量をさらに削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るデジタルカメラの機能ブロック図である。
【図2】3次元画像データの生成開始前に実行される処理のフローチャートである。
【図3】各撮影画像データの撮影条件情報をテーブルの形式で示す図である。
【図4】撮影空間を示す図である。
【図5】各撮影画像データの撮影空間を2次元平面上に配置した図である。
【図6】撮影画像データに設定された特徴点の検出領域を示す図である。
【図7】撮影画像データに設定された特徴点の検出領域を示す図である。
【図8】撮影画像データから検出された特徴点を示す図である。
【図9】現実空間の注視点の3次元座標を算出する原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
{1.デジタルカメラ1の全体構成}
図1は、本実施の形態に係るデジタルカメラ1の機能ブロック図である。デジタルカメラ1は、被写体を撮影して2次元の撮影画像データを生成するとともに、複数の撮影画像データから3次元画像データを生成する機能を有する。図1に示すように、デジタルカメラ1は、撮影部11と、位置検出部12と、撮影方向検出部13と、画像処理部14と、3次元画像生成部15と、メモリカードスロット16とを備える。
【0020】
撮影部11は、図示しないレンズ及びCCDなどの撮像素子を備える。撮像部11は、レンズを介して入力する被写体像を結像することにより、非圧縮画像データを生成する。
【0021】
位置検出部12は、GPSアンテナなどを備え、GPS信号を受信してデジタルカメラ1の現在地を示す位置情報12Aを出力する。位置検出部12は、GPSアンテナの他に、高度センサなどを備えてもよい。これにより、GPSよりも、撮影時の高度を精度よく検出することができる。
【0022】
撮影方向検出部13は、デジタルカメラ1の姿勢を検出する。撮影方向検出部13は、地磁気センサあるいはジャイロスコープなどで構成される。撮影方向検出部13は、デジタルカメラ1の撮影方向を示す姿勢情報13Aを出力する。
【0023】
画像処理部14は、非圧縮画像データが作成されるたびに、作成された非圧縮画像データに対して色調補正処理、色空間変換、及び符号化処理などを行って撮影画像データ21〜24を生成する。画像処理部14は、撮影時刻に対応する位置情報12A及び姿勢情報13Aに基づいて、撮影条件情報21A〜24Aを撮影画像データ21〜24に付加する。撮影条件情報21A〜24Aは、撮影時刻におけるデジタルカメラ1の位置や撮影方向などを記録した情報である。撮影画像データ21〜24がJPEG形式である場合、撮影条件情報21A〜24Aは、Exif(Exchangeable Image File Format)形式で記述される。
【0024】
3次元画像生成部15は、撮影画像データ21〜24を用いて、3次元画像データ30を生成する。
【0025】
メモリカードスロット16は、フラッシュメモリなどの大容量のメモリカード20を挿入するためのインタフェースである。撮像画像データ21〜24と、撮影空間情報21B,22B,23B,24Bとが、メモリカード20に記憶される。撮影空間情報21B〜24Bについては後述する。
【0026】
次に、3次元画像生成部15の構成について説明する。3次元画像生成部15は、空間情報生成部151と、使用画像選択部152と、検出領域設定部153とを備える。
【0027】
空間情報生成部151は、撮影条件情報21A〜24Aに基づいて、撮影画像データ21〜24のそれぞれに対応する撮影空間情報21B〜24Bを生成する。たとえば、撮影空間情報21Bは、撮影画像データ21に画像として記録された空間(撮影空間)を特定することができる情報である。
【0028】
使用画像選択部152は、撮影画像データ21〜24の中から3次元画像データ30の生成に使用する使用画像データを選択する。使用画像データの選択には、撮影空間情報21B〜24Bが用いられる。
【0029】
検出領域設定部153は、使用画像データの画像領域において、使用画像データの局所的な特徴を示す特徴点を検出する対象となる検出領域を設定する。
【0030】
{2.デジタルカメラ1の動作}
図2は、デジタルカメラ1において3次元画像データ30の生成を開始する前に行われる前処理の流れを示すフローチャートである。まず、ユーザが、デジタルカメラ1を用いて、3次元画像データ30において描画の対象となる被写体を異なる複数の視点から撮影する(ステップS1)。これにより、撮影画像データ21〜24が生成される。
【0031】
3次元画像生成部15は、3次元画像データ30の生成が指示された場合、生成を開始する前にステップS2〜ステップS4の処理を実行する。具体的には、空間情報生成部151が、撮影画像データ21〜24のそれぞれに対応する撮影空間情報21B〜24Bを生成する(ステップS2)。使用画像選択部152が、撮影空間情報21B〜24Bを用いて、撮影画像データ21〜24の中から使用画像データを選択する(ステップS3)。検出領域設定部153は、特徴点の検出対象となる検出領域を使用画像データごとに設定する(ステップS4)。
【0032】
ステップS4の処理の後に、図示しない3次元画像生成処理が開始される。3次元画像生成部15は、各使用画像データの特徴点を検出する。3次元画像生成部15は、複数の使用画像データの間で、互いに対応する特徴点を決定する。対応付けられた特徴点の3次元座標が、使用画像データの位置情報に基づいて決定される。
【0033】
以下、図2に示すステップS1〜S4について詳しく説明する。
【0034】
{2.1.撮影処理(ステップS1)}
ユーザは、デジタルカメラ1を用いて、3次元画像データ30において描画対象となる被写体(建物や彫刻など)を撮影する。たとえば、ユーザが描画対象の家屋を異なる視点から撮影することにより、デジタルカメラ1は、撮影画像データ21〜23を生成する。撮影画像データ24は、描画対象の家屋を撮影していないとする。
【0035】
画像処理部14は、非圧縮画像データから撮影画像データ21〜24を生成する際に、撮影条件情報21A〜24Aを撮影画像データ21〜24に付加する。図3は、撮影条件情報21A〜24Aに記録された情報をテーブルの形式で示す図である。
【0036】
図3に示すように、撮影条件情報21A〜24Aには、緯度、経度、方位、仰角/俯角、及び拡大率が記録される。緯度及び経度は、撮影時のデジタルカメラ1の位置を示す情報であり、撮影時刻に対応する位置情報12Aに基づいて記録される。
【0037】
方位及び仰角/俯角は、撮影方向を示す情報であり、撮影時刻に対応する姿勢情報13Aに基づいて記録される。方位は、北、南西、東北東などの16方位で記録される。仰角/俯角は、撮影時刻におけるデジタルカメラ1の傾きを示すパラメータである。仰角/俯角の値がプラスの場合、撮影方向が上方向であることを示す。仰角/俯角の値がマイナスの場合、撮影方向が下方向であることを示す。仰角/俯角の値がゼロの場合、撮影方向が水平方向であることを示す。
【0038】
拡大率は、撮影時における撮影倍率を示す。撮影条件情報21Aのように、拡大率が100%であれば、撮影画像データ21の撮影時にズーム撮影が行われていないことを示す。撮影条件情報22Aのように、100%よりも大きい拡大率は、撮影画像データ22の撮影時にズーム撮影が行われていることを示す。
【0039】
{2.2.空間情報の生成(ステップS2)}
ユーザにより3次元画像データ30の生成が指示された場合、空間情報生成部151が、メモリカード20に記憶されている撮影画像データ21〜24のそれぞれに対応する撮影空間情報21B〜24Bを生成する(ステップS2)。
【0040】
図4は、撮影画像データ21の撮影空間21Dを示す情報である。図4を参照しながら、撮影空間情報21Bの生成について説明する。
【0041】
撮影空間21Dは、撮影画像データ21に記録される現実の空間である。撮影空間21Dは、撮影画像データ21Aの撮影位置P1を頂点とした四角錐状の形状である。空間情報生成部151は、撮影条件情報21Aに基づいて、撮影空間21Dを特定することができるパラメータを算出する。
【0042】
撮影空間21Dを特定するパラメータは、撮影位置P1、方向ベクトルV1、視野角A1,A2、及び距離K1である。撮影位置P1は、撮影条件情報21Aの緯度及び経度により決定される。方向ベクトルV1は、撮影画像データ21の撮影時におけるデジタルカメラ1の撮影方向を示す。方向ベクトルV1は、撮影条件情報21Aの方位(北北東)と仰角/俯角の値(0°)とから算出される。
【0043】
視野角A1,A2は、撮影位置P1から見た撮影空間21Dの広がりを示す。視野角A1は、撮影画像データ21の横方向に対応する。視野角A2は、撮影画像データ21の縦方向に対応する。一般的に、ズーム撮影が行われた場合、拡大率に応じて撮影可能な範囲が狭くなる。このため、拡大率が大きくなるに伴って、撮影空間21Dの広がりは、小さくなる。空間情報生成部151は、レンズの焦点距離、レンズの寸法と、撮影条件情報21Aの拡大率とから視野角A1,A2を算出する。レンズの焦点距離及び寸法は、空間情報生成部151に予め設定されている。
【0044】
距離K1は、四角錐の高さに相当するパラメータである。距離K1を撮影空間情報21Bに設定することにより、撮影空間21Dが際限なく広がることが防止される。距離K1は、ユーザがデジタルカメラ1を操作して設定してもよいし、予め空間情報生成部151に設定されている距離を設定してもよい。
【0045】
空間情報生成部151は、撮影位置P1、方向ベクトルV1、視野角A1,A2、及び距離K1が設定された撮影空間情報21Bを生成する。同様に、撮影画像データ22〜24の撮影空間を特定する撮影空間情報22B〜24Bが生成される。撮影空間情報21D〜24Dは、メモリカード20に記憶される。
【0046】
{2.3.使用画像データの選択(ステップS3)}
次に、使用画像選択部152が、撮影空間情報21B〜24Bを用いて、撮影画像データ21〜24の中から、3次元画像データ30の生成に使用する使用画像データを選択する(ステップS3)。
【0047】
図5は、撮影空間21D〜24Dを撮影空間情報21B〜24Bに基づいて2次元平面上に配置した図である。撮影空間21Dを一点鎖線で示す。撮影空間22D,24Dを実線で示す。撮影空間23Dを破線で示す。ここでは、説明を簡単にするために、撮影空間21D〜24Dの仰角/俯角は考慮しない。
【0048】
図5に示すように、撮影空間21Dが、撮影空間22Dと重なっているため、使用画像選択部152は、撮影画像データ21,22を使用画像データとして決定する。つまり、撮影空間が互いに重なる二つの撮影画像データが、使用画像データとして選択され、3次元画像データ30の生成に用いられる。
【0049】
上述したように、3次元画像データ30の生成には、異なる視点で同一の被写体50を撮影した複数の撮影画像データが必要である。撮影空間21D,22Dが重なっていれば、撮影画像データ21,22には、同一の被写体50が撮影されていると考えることができる。このため、使用画像選択部152は、撮影画像データ21,22を3次元画像データ30の生成に使用できると判断して、使用画像データとして選択する。使用画像選択部152は、撮影空間23Dが撮影空間21D,22Dと互いに重なっているため、撮影画像データ21,22と同様に、撮影画像データ23を使用画像データとして選択する。
【0050】
撮影画像データ24の撮影空間24Dは、撮影空間21D〜23Dのいずれとも重なっていない。つまり、撮影画像データ24には、被写体50が撮影されていないと考えることができる。このため、使用画像選択部152は、撮影画像データ24を使用画像データとして選択しない。
【0051】
この結果、同一の被写体50が撮影されている撮影画像データ21〜23のみを3次元画像データ30の生成に用いることができる。3次元画像データ30における描画対象(被写体50)が撮影されていない撮影画像データに対して、特徴点検出処理などが行われることがないため、無駄な計算量を削減することが可能となる。
【0052】
{2.4.検出領域の設定(ステップS4)}
次に、使用画像データとして選択された撮影画像データ21〜23のそれぞれに対して、特徴点の検出領域を設定する。以下、撮影画像データ22を例にして、検出領域の設定について詳しく説明する。
【0053】
検出領域設定部153は、撮影空間21D,23Dのうち、撮影画像データ22の撮影位置P2に最も近い撮影位置を有する撮影空間を決定する。図5に示すように、撮影画像データ21の撮影位置P1が、撮影画像データ22の撮影位置P2に一番近くに位置する。このため、検出領域設定部153は、撮影画像データ22の検出領域の設定に、撮影画像データ21の撮影空間情報21Bを用いることを決定する。
【0054】
図6は、撮影画像データ22の検出領域40を示す図である。検出領域設定部153は、撮影空間情報21B,22Bを用いて、撮影画像データ22の画像領域において撮影空間21Dが含まれる範囲を算出する。算出された範囲が、検出領域40として設定される。図6において、撮影画像データ22の検出領域40を、ハッチングで示す。
【0055】
図5に示すように、撮影画像データ22Dの撮影位置P2からベクトルV2の方向(撮影画像データ22の撮影方向)を見た場合、撮影空間21Dが右から左方向へ横切るように配置されていることがわかる。このため、図6では、撮影画像データ22の検出領域40は、右から左方向へ広がるように形成される。これにより、撮影画像データ22の画像領域全体にわたって特徴点を検出しなくて済むため、3次元画像データ30の生成時の演算量を削減することが可能となる。撮影画像データ21,23の検出領域40も、同様にして設定される。
【0056】
撮影画像データ22の検出領域40の設定において、撮影画像データ22を除く他の使用画像データ(撮影画像データ21,23)の撮影空間21D,23Dの両者が重複する範囲を、設定領域40としてもよい。図7は、撮影画像データ22において撮影空間21D,23Dの両者が重複する範囲を示す図である。図7において、検出領域40をハッチングで示す。撮影空間21Dを一点鎖線で示す。撮影空間23Dを破線で示す。この場合、設定領域40が、図6に示す設定領域40よりも狭くなるため、3次元画像データ30の生成時の演算量を、さらに削減することができる。
【0057】
撮影画像データ22の検出領域40の設定において、撮影空間21D,23Dの少なくともいずれか一つの空間と重複する範囲を、設定領域40としてしてもよい。この場合、検出領域40が、図6に示す検出領域40よりも広くなる。たとえば、撮影画像データ22において、3次元画像データ30の描画対象(被写体)の一部が、検出領域40の外側に位置することを防ぐことできる。
【0058】
このように、デジタルカメラ1は、撮影画像データ21〜24のうち、3次元画像データ30の生成に用いる使用画像データを、撮影画像データ21〜24の撮影空間情報21B〜24Bに基づいて決定する。これにより、3次元画像データ30を生成するときに、撮影画像データ21〜24のうち、同一の被写体が撮影されていない撮影画像データ24の特徴点を検出しなくてもよい。このため、3次元画像データ30の生成時の演算量を削減することができる。
【0059】
また、使用画像データとして選択された撮影画像データ21〜23のそれぞれに対して、特徴点の検出領域40を、撮影空間情報21B〜23Bを用いて設定する。これにより、撮影画像データ21〜23の画像領域の全体にわたって特徴点検出処理を行う必要がないため、3次元画像データ30の生成時の演算量をさらに削減することができる。
【0060】
{3.3次元画像データ30の生成}
以下、使用画像データの特徴点を検出してから、各特徴点の3次元座標を算出するまでの流れの概略を説明する。3次元画像生成部15は、撮影画像データ21〜23の検出領域40内に存在する特徴点を、SIFTなどのアルゴリズムを用いて検出する。撮影画像データ22の特徴点を検出する場合、3次元画像生成部15は、複数のガウシアンフィルタを用いて、各ガウシアンフィルタに対応する撮影画像データ22の平滑化画像を生成する。平滑化画像同士の差分により得られるDoG(Difference−of−Gaussian)画像から極値を検出する。DoG画像において極値が検出された点が、撮影画像データ22の特徴点となる。特徴点は、128次元の特徴量(ベクトル)として表現される。
【0061】
図8は、図6に示す検出領域40から検出された特徴点を示す図である。図8において特徴点を黒丸で示す。特徴点は、撮影画像データ22の検出領域40の中から検出されており、検出領域40の外にある太陽や雲からは検出されていないことがわかる。
【0062】
次に、撮影画像データ21〜23において検出された特徴点の対応を求める。つまり、撮影画像データ21〜23で検出された特徴点群の中から、現実空間において同一点を示している特徴点(対応点)を抽出する。
【0063】
たとえば、撮影画像データ22の特徴点CP2(図9参照)の対応点を、撮影画像データ21の特徴点から求めることができる。特徴点CP2の特徴量と、撮影画像データ21の各特徴点の特徴量とのユークリッド距離を算出する。ユークリッド距離が最小となる撮影画像データ21の特徴点が、特徴点CP2が示す現実空間の点(注視点)と同じ点を指す対応点として同定される。
【0064】
上述のように、検出領域40を設定することにより、撮影画像データ21〜23において検出される特徴点の数が減少する。このため、ある特徴点に対する対応点を同定する場合にも、演算量(ユークリッド距離の算出回数)を削減することができる。
【0065】
次に、特徴点CP2の3次元座標を、撮影画像データ21,22の位置情報などを用いて算出する。図9は、特徴点CP2の3次元座標を算出する原理を説明する図である。図9において、撮影画像データ21,22の撮影位置P1,P2が、デジタルカメラ1のレンズの焦点に対応する。撮影画像データ21の特徴点CP1は、特徴点CP2の対応点である。レンズの光軸を一点鎖線で示す。光軸は、撮影画像データ21,22の画像中心を通過する。
【0066】
3次元画像生成部15は、レンズの焦点から見た特徴点CP1,CP2のベクトルDV1,DV2を算出する。特徴点CP1のベクトルDV1は、撮影画像データ21の撮影位置P1から見た注視点Mの方向を示す。特徴点CP2のベクトルDV2は、撮影画像データ22の撮影位置P2から見た注視点Mの方向を示す。撮影位置P1,P2の位置情報と、ベクトルDV1,DV2とを用いて、三角測量の原理で注視点Mの3次元座標を算出することができる。このようにして、各特徴点が指す現実空間の注視点の3次元座標が算出される。3次元画像生成部15は、算出された注視点の3次元座標に基づいて多角形を構成する。構成された多角形の面に、対応する撮影画像データなどが貼り付けられることにより、3次元画像データ30が生成される。
【0067】
本実施の形態では、デジタルカメラ1が3次元画像データ30を生成する例を説明したが、これに限られない。たとえば、3次元画像データを作成する機能を有するソフトウェアに、空間情報生成部151、使用画像選択部152、及び検出領域設定部153として機能させるプログラムを組み込んでもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 デジタルカメラ
11 撮影部
12 位置検出部
13 撮影方向検出部
14 画像処理部
15 3次元画像生成部
16 メモリカードスロット
20 メモリカード
21,22,23,24 撮影画像データ
21A,22A,23A,24A 撮影条件データ
21B,22B,23B,24B 撮影空間情報
30 3次元画像データ
40 検出領域
151 空間情報生成部
152 使用画像選択部
153 検出領域設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の2次元画像データと、各2次元画像データの撮影条件を示す撮影条件情報とを記憶する記憶部と、
各2次元画像データにより撮影された撮影空間を前記撮影条件情報に基づいて特定し、各2次元画像データの撮影空間を示す撮影空間情報を生成する空間情報生成部と、
前記複数の2次元画像データのうち、撮影空間が互いに重なる二つの2次元画像データを前記撮影空間情報に基づいて検出した場合、前記二つの2次元画像データを3次元画像データの生成に用いる使用画像データとして選択する使用画像選択部と、
を備える3次元画像生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元画像生成装置において、
前記使用画像データは、
第1の2次元画像データと、
前記第1の2次元画像データの撮影空間と重なる撮影空間を有する第2の2次元画像データと、
を含み、
前記3次元画像生成装置は、さらに、
前記第1の2次元画像データの画像領域において、前記第2の2次元画像データの撮影空間が重複する重複領域を前記撮影空間情報に基づいて特定し、前記重複領域を前記第1の2次元画像データの特徴点を検出する検出領域として設定する検出領域設定部、
を備える3次元画像生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の3次元画像生成装置において、
前記使用画像データは、
前記第2の2次元画像データを含み、前記第1の2次元画像データの撮影空間と重なる撮影空間を有する2次元画像データのグループ、
を含み、
前記検出領域設定部は、前記グループの中から、前記第1の2次元画像データの撮影位置に近い位置で撮影された近傍画像データを前記撮影空間情報に基づいて特定し、前記近傍画像データの撮影空間情報に基づいて、前記検出領域を設定する3次元画像生成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の3次元画像生成装置において、
前記使用画像データは、
前記第2の2次元画像データを含み、前記第1の2次元画像データの撮影空間と重なる撮影空間を有する2次元画像データのグループ、
を含み、
前記検出領域設定部は、前記第1の2次元画像データの画像領域において、前記グループを構成する全ての2次元画像データの撮影空間が重なった領域を、前記検出領域として設定する3次元画像生成装置。
【請求項5】
請求項2に記載の3次元画像生成装置において、
前記使用画像データは、
前記第2の2次元画像データを含み、前記第1の2次元画像データの撮影空間と重なる撮影空間を有する2次元画像データのグループ、
を含み、
前記検出領域設定部は、前記第1画像データの画像領域のうち、前記グループを構成する少なくとも一つの2次元画像データの撮影空間が含まれる領域を、前記検出領域として設定する3次元画像生成装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の3次元画像生成装置において、さらに、
被写体を撮影して前記複数の2次元画像データを生成する撮影部と、
自装置の位置を検出して位置情報を生成する位置検出部と、
自装置の姿勢を検出して撮影方向を示す方向情報を生成する姿勢検出部と、
を備え、
前記空間情報生成部は、前記被写体の撮影時における位置情報及び方向情報を、前記撮影条件情報として用いる3次元画像生成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−59042(P2012−59042A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202020(P2010−202020)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】