説明

3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物又はその塩の製造法

【課題】 高品質の3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物又はその塩を簡易に効率よく得る。
【解決手段】 下記式(1)
【化1】


(式中、R1、R2、R3は水素原子又は反応に不活性な有機基を示し、Xは水素原子を示す)で表されるβ−ケトアミド−N−スルホン酸又はその塩と不活性溶剤の混合液と、酸無水物と不活性溶剤の混合液とを環化反応に付した後、さらに加水分解反応に付して、下記式(2)
【化2】


で表される化合物又はその塩を製造する際、(A)環化反応により得られた反応生成物を加水分解後の水層の硫酸濃度が30重量%以上となるように硫酸水溶液と混合して加水分解し、有機層と水層とを分離する工程、又は(B)加水分解反応後の有機層を濃度30重量%以上の硫酸水溶液で洗浄する工程を少なくとも実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工業における甘味料又はその原料、或いは精密化学品の中間原料等として有用な3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物又はその塩の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物及びその塩の製造方法として、不活性有機溶剤中、アセトアセトアミド−N−スルホン酸又はその塩にSO3を作用させ、環化反応に供して閉環させた後、加水分解反応に付すことにより、6−メチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド又はその塩を製造する方法が知られている(特許文献1〜3参照)。この方法では、上記加水分解は閉環工程の反応生成物と水とを混合することにより行われ、加水分解後に分液して得られる有機層から3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物を得ている。また、特許文献1には、前記加水分解後に分液して得られる有機層は水又は希薄水性硫酸を用いた抽出により精製できることが記載されている。しかし、環化反応生成物の加水分解に水を用いると、加水分解後に分液して得られる有機層の着色が著しく、その後の目的化合物の精製負荷が大きくなるという問題がある。また、上記有機層を水や希薄水性硫酸を用いた抽出に付しても有機層の色相はさほど改善されない。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−56481号公報
【特許文献2】特開昭62−129277号公報
【特許文献3】特開2005−263779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高品質の3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物又はその塩を簡易に効率よく得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、環化反応により得られた反応生成物を加水分解後の水層の硫酸濃度が特定濃度以上となるように硫酸水溶液と混合して加水分解し、有機層と水層とを分離したり、加水分解反応後の有機層を特定濃度の硫酸水溶液で洗浄すると、着色の少ない色相の良好な目的物含有有機溶剤溶液が簡易に効率よく得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化1】

(式中、R1、R2は、同一又は異なって、水素原子又は反応に不活性な有機基を示し、R3は水素原子又は反応に不活性な有機基を示し、Xは水素原子を示す)
で表されるβ−ケトアミド−N−スルホン酸又はその塩を不活性溶剤に溶解又は分散させた混合液と、酸無水物を不活性溶剤に溶解又は分散させた混合液とを環化反応に付した後、さらに加水分解反応に付して、下記式(2)
【化2】

(式中、R1、R2、R3は前記に同じ)
で表される3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物又はその塩を製造する方法であって、(A)環化反応により得られた反応生成物を加水分解後の水層の硫酸濃度が30重量%以上となるように硫酸水溶液と混合して加水分解し、有機層と水層とを分離する工程、及び(B)加水分解反応後の有機層を濃度30重量%以上の硫酸水溶液で洗浄する工程からなる群より選択された少なくとも1つの工程を含むことを特徴とする3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物又はその塩の製造法を提供する。
【0007】
この製造法において、工程(A)において加水分解に用いる硫酸水溶液としては、濃度15〜50重量%の硫酸水溶液であるのが好ましい。また、工程(B)で用いる硫酸水溶液としては、濃度45〜80重量%の硫酸水溶液であるのが好ましい。
【0008】
また、工程(B)において洗浄後に得られる洗浄液を工程(A)における加水分解用の硫酸水溶液として用いるのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、環化生成物の加水分解及び/又は加水分解後の有機層の洗浄を特定濃度の硫酸水溶液を用いて行うので、目的化合物を含む有機溶剤溶液の色相が良好となり、その後の精製負荷を大幅に軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、前記式(1)で表されるβ−ケトアミド−N−スルホン酸又はその塩を不活性溶剤に溶解又は分散させた混合液と、酸無水物を不活性溶剤に溶解又は分散させた混合液とを環化反応に付し、その後さらに加水分解反応に付して、前記式(2)で表される3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物又はその塩を製造する。
【0011】
前記式(1)中、R1、R2及びR3における反応に不活性な有機基としては、反応に対して不活性である限り特に制限されず、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アシル基、アラルキル基、及びアリール基などが例示できる。前記アルキル基には、直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などのC1-6アルキル基など)が含まれる。アルケニル基には、直鎖状又は分岐鎖状C2-10アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基などのC2-5アルケニル基など)が含まれる。アルキニル基には、直鎖状又は分岐鎖状C2-10アルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基などのC2-5アルキニル基など)が含まれる。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC3-10シクロアルキル基(好ましくはC4-8シクロアルキル基)が含まれる。アシル基には、直鎖状又は分岐鎖状C2-10脂肪族アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基など)、あるいはC7-11芳香族アシル基(例えば、ベンゾイル基、トルイル基、ナフトイル基など)などが含まれる。アラルキル基には、C6-10アリール−C1-4アルキル基(例えば、ベンジル基など)などが含まれ、アリール基としては、フェニル基などのC6-10アリール基などが含まれる。
【0012】
前記式(1)で表されるβ−ケトアミド−N−スルホン酸化合物の塩には、スルホン酸基が塩基により中和された塩(スルホン酸塩)、及びR3が水素原子である場合における式中の−NH−基が塩基により中和された塩が含まれる。このような塩(スルホン酸の塩、−NH−の塩)として、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基の塩などが挙げられる。前記金属塩としては、例えば、Li、Na、Kなどのアルカリ金属(周期表1A族金属)の塩;Mg、Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属(周期表2A族金属)の塩;Al、Gaなどの周期表3B族金属の塩;還移金属(例えば、周期表3A族金属、周期表4A族金属、周期表5A族金属、周期表6A族金属、Mnなどの周期表7A族金属、Feなどの周期表8族金属、Cu、Ag、Auなどの周期表1B族金属、Znなどの周期表2B族金属、周期表4B族金属、周期表5B族金属など)の塩等が挙げられる。好ましい金属塩には、1〜3価金属の塩、例えば、アルカリ金属(Na、Kなど)の塩、アルカリ土類金属(Mg、Caなど)の塩、Al塩、還移金属(Mn、Feなど)の塩などが含まれる。経済性及び安全性などを考慮すると、Na、Kなどのアルカリ金属の塩が特に好ましい。
【0013】
前記有機塩基としては、例えば、脂肪族アミン[第1級アミン(例えば、メチルアミン、エチルアミン等のC1-10モノアルキルアミンなど)、第2級アミン(例えば、ジメチルアミン、エチルメチルアミン等のジC1-10アルキルアミンなど)、第3級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリC1-10アルキルアミンなど)]、脂環式アミン(例えば、シクロヘキシルアミンなどのモノ、ジ又はトリC3-12シクロアルキルアミンなど)、芳香族アミン(例えば、アニリン、ジメチルアニリンなどのモノC6-10アリールアミン、ジフェニルアミンなどのジC6-10アリールアミン、トリフェニルアミンなどのトリC6-10アリールアミン、ベンジルアミンなどのアラルキルアミンなど)、環状アミン類(例えば、ピペリジン、N−メチルピペリジン、モルホリンなど)、含窒素芳香族複素環化合物(例えば、ピリジン、キノリンなど、又はそれらの誘導体など)などが例示できる。好ましい有機塩基には脂肪族アミンが含まれる。また、脂肪族に限らず第3級アミンも好ましい。
【0014】
前記式(1)において、R1〜R3は適当に組み合わせることができるが、例えば、R1及びR2がそれぞれ水素原子又はC1-4アルキル基で、R3が水素原子又はC1-4アルキル基である組み合わせなどが好ましい。中でも、式(1)で表される化合物としては、R1がC1-4アルキル基、R2及びR3が水素原子であるアシルアセトアミド−N−スルホン酸が好ましく、特に、R1がメチル基であるアセトアセトアミド−N−スルホン酸が好ましい。また、式(1)で表される化合物の塩(スルホン酸塩)としては特に第3級アミンとの塩が好ましい。
【0015】
本発明において、前記酸無水物は式(1)で表されるβ−ケトアミド−N−スルホン酸又はその塩(以下、単に「基質」と称することがある)の環化剤(環化脱水剤など)として作用する。このような酸無水物としては、硫酸、ハロゲン化硫酸(フルオロ硫酸、クロロ硫酸など)、ピロリン酸(ピロリン酸;フルオロピロリン酸などのハロゲン化ピロリン酸など)、硝酸、ホウ酸(オルトホウ酸、メタホウ酸など)などの無機酸;スルホン酸、有機リン酸(メチルリン酸などのC1-4アルキルリン酸;リン酸モノメチルエステル、リン酸モノエチルエステルなどのリン酸モノC1-4アルキルエステルなど)などの有機酸などから形成される酸無水物が挙げられる。酸無水物は1分子の酸から水が脱離して生成した酸無水物、2分子以上の同一の酸から水が脱離して生成した酸無水物、2分子以上の異なる酸から水が脱離して生成した酸無水物(混合酸無水物)等の何れであってもよい。酸無水物は単独で又は2種以上混合して使用できる。好ましい酸無水物は、硫酸を含む酸から形成された酸無水物であり、特に好ましくは無水硫酸(SO3)である。
【0016】
酸無水物は、通常、基質1モルに対して少なくとも1モル以上(例えば1〜20モル)、好ましくは1〜10モル、特に好ましくは4〜8モル程度の割合で使用する。
【0017】
式(1)で表されるβ−ケトアミド−N−スルホン酸又はその塩の環化反応(環化脱水反応等)は溶媒の存在下で行う。反応溶媒としては、反応に不活性な(特に酸無水物と反応しない)各種無機又は有機溶剤が使用できるが、通常、反応に不活性な有機溶剤が使用される。また、反応溶媒としては、通常、実質的に無水の溶媒が使用される。
【0018】
本発明において、式(1)で表されるβ−ケトアミド−N−スルホン酸又はその塩を溶解又は分散させる不活性溶剤及び酸無水物を溶解又は分散させる不活性溶剤は同一であっても異なっていてもよい。前記不活性溶剤として、例えば、脂肪族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタンなど)、脂環式炭化水素(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレンなどのハロアルカンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルなどのカルボン酸エステル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの脂肪族ケトン;シクロヘキサノンなどの環状ケトンなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、セロソルブ、カルビトール、ジグライム、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの鎖状エーテル;アニソール、1,2−ジメトキシベンゼン、ジフェニルエーテルなどの芳香族エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどの環状エーテルなど)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホランなど)などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。好ましい溶剤としては、ハロゲン化炭化水素類が挙げられ、特に好ましくはジクロロメタンが使用される。
【0019】
環化反応は流通式連続反応器を用いて連続で行うのが好ましい。流通式連続反応器としては、管型反応器または静止型混合器が好ましく用いられる。環化反応の成績を向上させるため、反応に供される基質及び酸無水物はそれぞれ、前記の溶媒に溶解または分散させ、例えば10℃以下(−100℃〜10℃程度)、好ましくは−80℃〜10℃、特に好ましくは−30℃〜10℃にあらかじめ冷却しておくのが望ましい。反応器に供給する基質含有混合液中の基質濃度は、操作性等を損なわない範囲で適宜選択できるが、通常0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%(特に5〜15重量%)程度である。また、反応器に供給する酸無水物含有混合液中の酸無水物濃度も、操作性等を損なわない範囲で適宜選択でき、通常0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%程度である。
【0020】
反応溶媒の総使用量は、反応性や操作等を考慮して適宜選択できるが、一般に、基質1重量部に対して、1〜1000重量部程度の広い範囲から選択でき、好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜100重量部程度であり、特に15〜50重量部程度が好ましい。
【0021】
環化反応は、好ましくは、冷媒用ジャケットや冷却槽(冷媒槽)などの外部から冷却する冷却装置を備えていてもよい流通式の管型反応器や静止型混合器に、式(1)で表されるβ−ケトアミド−N−スルホン酸又はその塩と不活性溶剤との混合液、および酸無水物と不活性溶剤との混合液を連続的に供給することにより行われる。環化反応の反応温度は反応速度等を考慮して適宜設定できる。
【0022】
管型反応器としては、一般的なステンレス鋼管、ガラス又はテフロン(登録商標)などのライニング管等が使用できるが、材質についてはこれらに限定されない。また、使用される管の内径は特に限定されないが、環化反応時の発熱の除去を考慮すると、好ましくは数十mm以下(例えば、0.2〜30mm程度)の内径とすることが好ましく、特に好ましくは10mm以下(例えば、0.2〜10mm程度)の内径とすることが好ましい。さらに、管の長さについては、反応に必要な滞留時間を満足するに必要な長さとする。滞留時間は0.001〜60秒程度であるが、好ましくは0.01〜40秒、さらに好ましくは0.1〜10秒(特に1〜10秒)である。なお、滞留時間(秒)は、反応器容量(ml)/原料混合液の総供給量(ml/秒)で計算される値である。
【0023】
前記管型反応器には、式(1)で表されるβ−ケトアミド−N−スルホン酸又はその塩と酸無水物との混合を促進するための装置として、撹拌式混合器、超音波式混合器、又はスタティックミキサーのような静止型混合器、配管継手(以下、これらを単に「予備混合器」と称することがある)を該管型反応器の入り口部に設置することができる。管型反応器の入り口部に予備混合器を設置した場合、予備混合器での滞留時間は、例えば0.0005〜30秒、好ましくは0.01〜20秒、さらに好ましくは0.1〜10秒(特に1〜10秒)程度であり、その後の管型反応器での滞留時間は、例えば0.001〜60秒、好ましくは0.01〜40秒、さらに好ましくは0.1〜30秒(特に1〜30秒)程度である。
【0024】
また、本発明では、反応器として、スタティックミキサーのような静止型混合器を使用することもできる。静止型混合器を反応器として使用する場合には、高い除熱能力を有することから、前記の管型反応器と比較して内径の大きなものを使用することが可能である。例えば、該静止型混合器の内径は0.2〜30mm程度、好ましくは0.5〜20mm程度である。なお、静止型混合器の型式については特に限定するものではないが、代表的な静止型混合器としてスルーザー型スタティックミキサー、ケニックス型スタティックミキサーなどが使用できる。反応器として静止型混合器を使用する場合の滞留時間は、例えば0.001〜60秒、好ましくは0.01〜40秒、さらに好ましくは0.03〜10秒程度である。なお、この場合にも、静止型混合器の入り口に前記のような予備混合器を設けてもよい。この場合の予備混合器での滞留時間は、例えば0.0005〜30秒、好ましくは0.01〜20秒、さらに好ましくは0.1〜10秒(特に1〜10秒)程度であり、その後の静止型混合器での滞留時間は、例えば0.001〜60秒、好ましくは0.01〜40秒、さらに好ましくは0.03〜10秒程度である。
【0025】
前記スタティックミキサーのエレメント数は、特に制限はないが、例えば5以上(5〜25程度)、好ましくは10以上である。
【0026】
上記環化反応により、通常、水又は塩基[基質として式(1)で表される化合物の塩を用いた場合等]が脱離して、前記式(2)で表される3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物が生成する。この場合、用いる酸無水物の種類や量により、式(2)で表される3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物と該酸無水物との付加物等が生成する場合がある。この場合には、上記環化反応の後さらに加水分解反応に付すことにより、式(2)で表される3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物を得ることができる。
【0027】
加水分解は、例えば、環化反応により得られた反応液に、必要に応じて適当な処理を施した後、水又は水含有液(例えば硫酸水溶液等)を混合することにより行われる。加水分解は、連続式、回分式、半回分式等の何れの方法で行ってもよい。連続的に加水分解する場合には、撹拌槽を用いるほか、前記の環化反応に用いる連続処理装置を用いることもできる。加水分解反応に供する水又は水含有液の温度及び反応温度は、例えば0〜50℃、好ましくは10〜40℃である。また、水(又は水含有液に含まれる水)の量は環化反応に使用した酸無水物1モルに対し、例えば1〜100モル、好ましくは1〜50モル、さらに好ましくは2〜20モル程度である。水を大過剰量用いてもよい。加水分解反応の反応時間(連続式の場合は滞留時間)は、例えば1時間以内(0.1分〜1時間程度)、好ましくは1〜10分程度である。
【0028】
このようにして得られた式(2)で表される3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物は、例えば、洗浄、分液、濃縮、溶媒交換、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段により分離精製できる。例えば、加水分解終了後の反応液を目的化合物を含む有機層(不活性溶剤層)と水層とに分離し、該有機層を水又は水含有液(例えば硫酸水溶液等)で洗浄した後、濃縮、溶媒交換、晶析等の操作を行うことにより目的化合物を単離することができる。また、前記水層に、水と非相溶性(又は非混和性)の溶媒[環化反応に用いた溶媒や有機モノ又はジカルボン酸のエステル(前記反応溶媒の項で例示のエステル類など)など]を添加して水層中に残存する目的化合物を抽出、回収することができる。
【0029】
本発明の製造法の重要な特徴は、環化反応後の工程において、(A)環化反応により得られた反応生成物を加水分解後の水層の硫酸濃度が30重量%以上となるように硫酸水溶液と混合して加水分解し、有機層と水層とを分離する工程、及び(B)加水分解反応後の有機層を濃度30重量%以上の硫酸水溶液で洗浄する工程からなる群より選択された少なくとも1つの工程を含む点にある。工程(A)を行うと、加水分解後の反応混合液を有機層(目的化合物を含む)と水層とに分液させる際、きれいに分液し、不純物(着色物質等)の有機層への移行、分配が抑制され、色相が良好で(着色度が低く)不純物含量の少ない有機層(目的化合物含有溶液)を得ることができる。また、工程(B)を行うと、有機層中に含まれている不純物(着色物質等)が硫酸水溶液からなる水層に移行して、有機層の色相や不純物含量が大幅に改善される。そのため、工程(A)及び/又は工程(B)を実施することにより、後の精製工程を簡素化でき、精製負荷を軽減でき、よって高品質の目的化合物を簡易に且つ効率よく得ることができる。より具体的に説明すると、環化反応及び加水分解に起因する着色成分は、後の精製工程、例えば晶析操作や活性炭処理を行っても除去しにくいという特徴がある。また、一般に、前記式(2)で表される化合物はその塩に誘導されるが、式(2)で表される化合物に着色成分が含まれていると、その塩の精製工程においても脱色のため幾度も晶析操作を行わなければならない。さらに、上記塩の精製として晶析操作を行う際には、濾液中の製品ロスが多く、収率が低下するため、上記塩の製造工程では濾液の再使用が必須となるが、着色成分は上記塩の晶析濾液の色相を著しく悪化させるため、再使用が困難となる。本発明の製造法によれば、着色成分を効率よく除去できるので、後の式(2)で表される化合物の塩の晶析操作を例えば1〜2回に低減でき、精製工程を簡素化できる。また、晶析操作で生じた濾液を再使用することができ、収率が向上する。
【0030】
本発明の製造法は、工程(A)と工程(B)のうち少なくとも一方の工程を含んでいればよい。例えば、工程(A)を行う場合には、加水分解反応後の有機層の洗浄を、必ずしも濃度30重量%以上の硫酸水溶液で行う必要はなく、例えば、水や濃度30重量%未満の硫酸水溶液等を用いて洗浄を行ってもよく、洗浄操作を省いてもよい。また、工程(B)を行う場合には、環化反応により得られた反応生成物の加水分解を、必ずしも加水分解後の水層の硫酸濃度が30重量%以上となるように硫酸水溶液と混合して行う必要はなく、例えば、水を用いて加水分解を行ってもよい。しかし、より品質の高い目的化合物をより簡易に且つ効率よく得るには、工程(A)及び工程(B)の何れをも実施するのが好ましい。
【0031】
工程(A)において、加水分解後の水層の硫酸濃度は30重量%以上(例えば、30〜80重量%)であればよいが、好ましくは35〜75重量%、より好ましくは40〜70重量%、さらに好ましくは45〜70重量%である。加水分解後の水層の硫酸濃度が低すぎると、分液して得られる有機層の色相が悪化しやすく、分液性も低下しやすくなる。一方、加水分解後の水層の硫酸濃度が高すぎると、分液後の有機層が白濁したり、分液性が低下する場合がある。加水分解に用いる硫酸水溶液の濃度は15〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜45重量%、特に好ましくは20〜40重量%程度である。加水分解に用いる硫酸水溶液の濃度が低すぎると、得られる有機層の色相が悪化しやすく、また分液性も低下しやすくなる。一方、加水分解に用いる硫酸水溶液の濃度が高すぎると、有機層が白濁したり、分液性が低下したり、目的化合物の有機層への分配率が低下する場合がある。加水分解に用いる硫酸水溶液の量は、加水分解に必要な量の水を含んでおり、且つ加水分解後の硫酸濃度が前記の範囲となるような量であればよい。例えば、加水分解に用いる硫酸水溶液の量は、酸無水物の種類や使用量等によっても異なるが、一般には、酸無水物の使用量100重量部に対して、80〜400重量部、好ましくは100〜300重量部程度である。
【0032】
工程(B)において、加水分解反応後の有機層の洗浄に用いる硫酸水溶液の濃度は30重量%以上(例えば、30〜80重量%)であればよいが、好ましくは45〜80重量%、より好ましくは50〜80重量%、さらに好ましくは60〜78重量%である。上記洗浄に用いる硫酸水溶液の濃度が低すぎると有機層の色相の改善効果が小さく、また分液性も低下しやすくなる。一方、上記洗浄に用いる硫酸水溶液の濃度が高すぎると、有機層が白濁したり、分液性が低下する場合がある。上記洗浄に用いる硫酸水溶液の量は、例えば、洗浄に供する有機層100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部程度である。洗浄された有機層からは、前記のように、濃縮、溶媒交換、晶析等の操作を行うことにより、品質の良好な目的化合物を得ることができる。
【0033】
工程(B)において洗浄後の洗浄液は、そのまま又は適宜希釈若しくは濃縮して、前記工程(A)における加水分解用の硫酸水溶液として使用できる。洗浄液を加水分解用の硫酸水溶液として使用することにより、廃棄物の処理量や廃棄量を大幅に低減することができるとともに、洗浄液中に含まれている式(2)で表される化合物を回収することができる。
【0034】
なお、式(2)で表される3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物の塩は、式(2)で表される化合物(R3が水素原子である化合物)を、塩基と反応させるなど慣用の塩形成反応に付すことにより得ることができる。式(2)で表される3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物の塩として、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基の塩などが挙げられる。金属塩の種類、有機塩基の種類、好ましい例は、前記式(1)で表されるβ−ケトアミド−N−スルホン酸化合物の塩の場合と同様である。特に好ましい塩は、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属の塩である。
【0035】
式(2)で表される3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物のアルカリ金属塩は、式(2)で表される化合物(R3が水素原子である化合物)を、例えば、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)、アルカリ金属炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)等のアルカリ金属を含む塩基と反応させることにより得ることができる。
【0036】
式(2)で表される3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物の塩は、例えば、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段により分離精製できる。
【0037】
式(2)で表される3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物又はその塩の代表的な例として、6−メチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド、6−エチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド、6−n−プロピル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド、6−i−プロピル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイドなどの6−C1-4アルキル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド;6−フェニル−3,4−ジヒドロ−1,2,3,−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイドなどの6−アリール−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド;5−メチル−6−メチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3,−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド、5−メチル−6−エチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイドなどの5,6−ジC1-4アルキル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド;5−フェニル−6−メチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイドなどの5−アリール−6−C1-4アルキル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド;5−メチル−6−フェニル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイドなどの5−C1-4アルキル−6−アリール−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド;6−シクロペンチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド、6−シクロヘキシル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイドなどの6−C3-8シクロアルキル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド;5−シクロペンチル−6−メチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド、5−シクロヘキシル−6−メチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイドなどの5−C3-8シクロアルキル−6−C1-4アルキル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド;5−メチル−6−シクロペンチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド、5−メチル−6−シクロヘキシル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイドなどの5−C1-4アルキル−6−C3-8シクロアルキル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン2,2−ジオキサイド;6−ビニル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイドなどの6−C2-4アルケニル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド;6−アセチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイドなどの6−C2-6アシル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド、及びこれらの塩などが挙げられる。
【0038】
特に、前記式(2)においてR1がメチル基である3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物(例えば、6−メチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイドなど)は、その生理的に許容される塩(例えば、Na,K,Caなどとの塩)の一部が、食品工業における甘味料として用いられるため好ましい。中でも、カリウムとの塩は、アセスルファム(アセスルファムK)として特に有用である。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0040】
実施例1
内径3.4mm、長さ10cm、エレメント数17のケニックス型スタティックミキサーを原料混合器(予備混合器)として備えた、内径4mm、有効な長さ2mのステンレス鋼管を反応器として使用し反応を実施した。アセトアセトアミド−N−スルホン酸トリエチルアンモニウム0.47molをジクロロメタン1885gに溶解し、−10℃まで冷却した。また、無水硫酸2.70mmolをジクロロメタン1784gに溶解し、同じく−10℃まで冷却した。−30℃の冷媒中に浸漬した前記反応器に、アセトアセトアミド−N−スルホン酸トリエチルアンモニウム溶液を201g/min、無水硫酸溶液を200g/minの速度で連続的に10分間注入した。滞留時間は5.1秒であった。反応液は、2Lのセパラブルフラスコに500rpmで撹拌しながら、連続的に抜き取り、加水分解用に40重量%硫酸水溶液を37g/minの速度で同時に供給した。15〜25℃で加水分解反応を行い、反応液を連続的に抜き取り、静置し、ジクロロメタン層と水層を分離した。水層の硫酸濃度は52重量%であった。ジクロロメタン層の344nmでの吸光度分析を行ったところ、吸光度は0.531であった。なお、ジクロロメタン層に含まれる6−メチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイドをHPLCで定量した結果、その収率(アセトアセトアミド−N−スルホン酸トリエチルアンモニウム基準)は70%であった。
【0041】
実施例2
内径3.4mm、長さ10cm、エレメント数17のケニックス型スタティックミキサーを原料混合器(予備混合器)として備えた、内径4mm、有効な長さ2mのステンレス鋼管を反応器として使用し反応を実施した。アセトアセトアミド−N−スルホン酸トリエチルアンモニウム0.47molをジクロロメタン1885gに溶解し、−10℃まで冷却した。また、無水硫酸2.70mmolをジクロロメタン1784gに溶解し、同じく−10℃まで冷却した。−30℃の冷媒中に浸漬した前記反応器に、アセトアセトアミド−N−スルホン酸トリエチルアンモニウム溶液を201g/min、無水硫酸溶液を200g/minの速度で連続的に10分間注入した。滞留時間は5.1秒であった。反応液は、2Lのセパラブルフラスコに500rpmで撹拌しながら、連続的に抜き取り、加水分解用に40重量%硫酸水溶液を37g/minの速度で同時に供給した。15〜25℃で加水分解反応を行い、反応液を連続的に抜き取り、静置し、ジクロロメタン層と水層を分離した。水層の硫酸濃度は52重量%であった。抜き取ったジクロロメタン層に対して、75重量%硫酸水溶液を、前記ジクロロメタン層1重量部に対して0.05重量部の割合で添加し、十分撹拌した。撹拌後、静置して分液させた。得られた有機層(ジクロロメタン層)の344nmでの吸光度分析を行ったところ、吸光度は0.261であった。なお、有機層(ジクロロメタン層)に含まれる6−メチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイドをHPLCで定量した結果、その収率(アセトアセトアミド−N−スルホン酸トリエチルアンモニウム基準)は65%であった。
洗浄工程において、収率5%の低下があるが、洗浄後の洗浄液(硫酸水溶液層)は、加水分解工程における加水分解用の硫酸水溶液の一部として使用できるため、洗浄液中に含まれる6−メチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイドは全量回収可能である。
【0042】
比較例1
内径3.4mm、長さ10cm、エレメント数17のケニックス型スタティックミキサーを原料混合器(予備混合器)として備えた、内径4mm、有効な長さ2mのステンレス鋼管を反応器として使用し反応を実施した。アセトアセトアミド−N−スルホン酸トリエチルアンモニウム0.82molをジクロロメタン3390gに溶解し、−10℃まで冷却した。また、無水硫酸4.90mmolをジクロロメタン3241gに溶解し、同じく−10℃まで冷却した。−30℃の冷媒中に浸漬した前記反応器に、アセトアセトアミド−N−スルホン酸トリエチルアンモニウム溶液を362g/min、無水硫酸溶液を363g/minの速度で連続的に10分間注入した。滞留時間は2.8秒であった。反応液は、2Lのセパラブルフラスコに500rpmで撹拌しながら、連続的に抜き取り、加水分解用の水を100g/minの速度で同時に供給した。15〜25℃で加水分解反応を行い、反応液を連続的に抜き取り、静置し、ジクロロメタン層と水層を分離した。水層の硫酸濃度は26重量%であった。ジクロロメタン層の344nmでの吸光度分析を行ったところ、吸光度は0.845であった。なお、ジクロロメタン層に含まれる6−メチル−3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイドをHPLCで定量した結果、その収率(アセトアセトアミド−N−スルホン酸トリエチルアンモニウム基準)は70%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、R1、R2は、同一又は異なって、水素原子又は反応に不活性な有機基を示し、R3は水素原子又は反応に不活性な有機基を示し、Xは水素原子を示す)
で表されるβ−ケトアミド−N−スルホン酸又はその塩を不活性溶剤に溶解又は分散させた混合液と、酸無水物を不活性溶剤に溶解又は分散させた混合液とを環化反応に付した後、さらに加水分解反応に付して、下記式(2)
【化2】

(式中、R1、R2、R3は前記に同じ)
で表される3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物又はその塩を製造する方法であって、(A)環化反応により得られた反応生成物を加水分解後の水層の硫酸濃度が30重量%以上となるように硫酸水溶液と混合して加水分解し、有機層と水層とを分離する工程、及び(B)加水分解反応後の有機層を濃度30重量%以上の硫酸水溶液で洗浄する工程からなる群より選択された少なくとも1つの工程を含むことを特徴とする3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物又はその塩の製造法。
【請求項2】
工程(A)において加水分解に用いる硫酸水溶液が濃度15〜50重量%の硫酸水溶液である請求項1記載の3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物又はその塩の製造法。
【請求項3】
工程(B)で用いる硫酸水溶液が濃度45〜80重量%の硫酸水溶液である請求項1記載の3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物又はその塩の製造法。
【請求項4】
工程(B)において洗浄後に得られる洗浄液を工程(A)における加水分解用の硫酸水溶液として用いる請求項1又は3記載の3,4−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキサイド化合物又はその塩の製造法。

【公開番号】特開2008−37778(P2008−37778A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212263(P2006−212263)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)